説明

管継手、並びにこれを用いた給湯装置、空気調和装置、及び床暖房装置

【課題】安価な構造で管及び被接続管に対する接続作業性が良好な管継手を提供する。
【解決手段】管継手10は、内筒体14と、この内筒体14の径方向外側に配置され、当該内筒体14との間に管Pを挿入可能なスペースSを形成する外筒体15と、内筒体14に対して相対回転可能な状態で外筒体15の基端部に一体回転可能に設けられ、かつ被接続箇所U1に螺合されるネジ部を有しているネジ筒16と、内筒体14に設けられ、スペースSに挿入された管Pの周面に食い込んで係止する軸方向に複数の環状の突部38からなるシール部36と、外筒体15におけるシール部36に径方向外側に対向する位置に設けられ、スペースSに挿入された管Pと外筒体15との相対回転を許容した状態で管Pの周面を径方向に押圧して保持する保持機構47と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手、並びにこれを用いた給湯装置、空気調和装置、及び床暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に配慮したクリーンな給湯システムとしてヒートポンプ式給湯装置が普及してきている。ヒートポンプ式給湯装置は、冷凍サイクルにより温水を生成する冷媒回路を内蔵したヒートポンプユニットと、ヒートポンプユニットで生成された温水を貯水する貯水ユニットとを備えている。また、ヒートポンプ式給湯装置においては、現地据付工事に際して、ヒートポンプユニットと貯水ユニットとの間で温水を循環させるための連絡配管や、貯水ユニットから浴槽等の温水利用機器に温水を供給するための連絡配管が引き回され、各ユニットや温水利用機器に接続される。
【0003】
一般に、各ユニットや温水利用機器に連絡配管を接続するためには、管継手が用いられている。従来の管継手として、複数の環状の突部を軸方向に並設してなる所謂タケノコ型のシール部を外周面に形成し、このシール部に管の端部を嵌合すると共に、当該端部の外周面を締結バンドによって締め付けて固定する形式のものが知られている。この管継手は、非常に安価であるという利点を有するものの、軟質の樹脂管にしか適用することができず、硬質の樹脂管や金属強化樹脂管には適用することができない。しかし、最近では、ヒートポンプ式給湯装置の冷媒回路に自然冷媒であるCO冷媒が用いられ、このCO冷媒によって非常に高温の温水が生成されるようになっているため、より耐熱性の高い硬質樹脂管や金属強化樹脂管を使用するケースが増大している。
【0004】
硬質樹脂管等の接続のために利用される管継手は、例えば図13に示されるように、内筒体114と、この内筒体114の径方向外側に配置され、当該内筒体114との間に管を挿入することができるスペースを形成する外筒体115と、内筒体114の基端部側(図13の右端部側)に設けられたネジを有するネジ筒116と、内筒体114の外周面に装着された弾性シール部材136と、外筒体115の内周面に装着された保持管142とを備えている(例えば、下記特許文献1参照)。内筒体114とネジ筒116とは一体に形成され、外筒体115は内筒体114の基端側にネジ結合されている。
【0005】
また、従来、図14に示される管継手210も知られている。この管継手210は、内筒体214と、この内筒体214の径方向外側に一体的にねじ結合された外筒体215と、内筒体214の基端側(図の右側)に相対回転可能に連結されたナット216とを備えている。内筒体214の外周面には弾性シール部材236が装着され、外筒体215の内周面には保持環242が装着されている。内筒体214の基端部は、ナット216の先端側(図の左側)に挿入されるとともに、ナット216の内周面に形成した溝219にCリング等の抜け止め部材220を圧入することによってナット216に対して抜け止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−138378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図13及び図14に示されている管継手110は、タケノコ型の管継手と比較して構造が複雑で部品点数も多く、組立ても煩雑となり、高価であるという欠点がある。
また、図13に示される管継手110を連絡配管と給湯ユニット等の被接続箇所とに接続するには、まず管継手110のネジ筒116を被接続箇所に螺合して取り付け、その後、内筒体114と外筒体115との間に形成されたスペースSに連絡配管を挿入するのが一般的である。しかし、据付環境によっては先に連絡配管に管継手110を装着してから、当該管継手を被接続箇所に接続することが望ましい場合もある。
このような場合、図13に示されている管継手110は、内筒体114、外筒体115、及びネジ筒116が一体化されているので、管継手110を連絡配管に接続した状態で当該管継手110のネジ筒を被接続箇所に螺合しようとすると、内筒体114及び外筒体115とともに連絡配管が回ってよじれてしまったり、連絡配管の内周面に弾性シール部材136が擦れたりしてシール性能が低下し、流体の漏れが発生する可能性が高くなる。
【0008】
一方、図14に示されている管継手210は、内筒体214に対してナット216が相対回転可能に結合されているので、管継手210を先に連絡配管に接続しても、ナット216を単独で回転させて被接続箇所に螺合することができる。しかし、この管継手210は、ナット216に対して抜け止め用のCリング220を組み込む必要があるため、部品点数が多くなるとともに組立て作業が煩雑となり、製造コストの増大を招くものであった。
【0009】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、安価な構造で管及び被接続管に対する接続作業性が良好な管継手、並びにこれを用いた給湯装置、空気調和装置、床暖房装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る管継手は、軸方向の先端側が管に接続され、かつ軸方向の基端側が被接続箇所に接続される管継手であって、
内筒体と、この内筒体の径方向外側に配置され、当該内筒体との間に管を挿入可能なスペースを形成する外筒体と、前記内筒体及び前記外筒体のうち一方の筒体に対して相対回転可能な状態で他方の筒体の基端部に一体回転可能に設けられ、かつ被接続箇所に螺合されるネジ部を有しているネジ筒と、前記一方の筒体に設けられ、前記スペースに挿入された管の周面に食い込んで係止する軸方向に複数の環状の突部からなるシール部と、前記他方の筒体における前記シール部に径方向に対向する位置に設けられ、前記スペースに挿入された管と前記他方の筒体との相対回転を許容した状態で当該管の周面を径方向に押圧して保持する保持機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、シール部は、複数の環状の突部によって所謂タケノコ型に形成され、このシール部の径方向の対向位置には保持機構が設けられている。そのため、保持機構が管Pの周面を径方向に押圧することで、管をシール部に強く押し付けることができ、シール部によるシール性能を高めることができる。したがって、タケノコ型のシール部を備えた管継手であっても硬質樹脂管や金属強化樹脂管等の接続のために利用することができ、高温の流体が流れる環境下での利用も可能となる。また、シール部をタケノコ型に形成することで管継手を安価な構成とすることができる。
【0012】
また、管に管継手を接続した状態でネジ筒を被接続箇所に螺合して取り付ける場合、他方の筒体はネジ筒と一体回転するが、一方の筒体はネジ筒に対して相対回転可能であるために停止した状態を維持し、管も停止した状態を維持する。このため、管がよじれたり、管の周面がシール部に擦れて傷ついたりしてしまうことがなく、シール性能が低下してしまうこともない。また、ネジ筒と他方の筒体とは、一つの素材で一体に形成することにより単一部品で構成することも可能であり、この場合には、部品点数を少なくすることができるとともに部品の組立てを容易にすることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0013】
上記構成において、前記ネジ筒は、前記内筒体に対して相対回転可能な状態で前記外筒体の基端部に一体回転可能に設けられ、前記シール部は、前記内筒体の外周面に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、管に管継手を接続した状態でネジ筒を被接続箇所に螺合して取り付ける場合、ネジ筒とともに外筒体が回転し、内筒体及び管はネジ筒に連れ回りすることなく停止した状態を維持することになる。
【0014】
さらに、前記内筒体は、前記ネジ筒の基端側から前記外筒体内に軸方向に挿入され、前記内筒体と前記ネジ筒とには、当該ネジ筒に対する前記内筒体の先端側への軸方向移動を制限する位置規制部が設けられていてもよい。
このような構成によって、ネジ筒と内筒体とを容易に抜け止めした状態で連結することができ、しかも図14に示されるような抜け止め用のCリング220が不要となるので、部品点数が増加することもなく、より製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
本発明の第2の観点に係る管継手は、軸方向の先端側が管に接続され、軸方向の基端側が被接続箇所に接続される管継手であって、
内筒体と、この内筒体の径方向外側に配置されるとともに当該内筒体に一体回転可能に設けられ、かつ当該内筒体との間に管を挿入可能なスペースを形成する外筒体と、前記内筒体及び前記外筒体の基端部に相対回転可能な状態で連結され、かつ被接続箇所に螺合されるネジ部を有しているネジ筒と、前記内筒体及び前記外筒体のうちの一方の筒体に設けられ、前記スペースに挿入された管の周面に食い込んで係止する軸方向に複数の突部からなるシール部と、前記内筒体及び前記外筒体のうちの他方の筒体における前記シール部に径方向に対向する位置に設けられ、前記スペースに挿入された管の周面を径方向に押圧して保持する保持機構と、を備えており、
前記内筒体、又は、前記内筒体及び前記外筒体が、前記ネジ筒の基端側から先端側へ向けて当該ネジ筒内に軸方向に挿入され、前記内筒体又は前記外筒体と、前記ネジ筒とには、当該ネジ筒に対する前記内筒体又は前記外筒体の先端側への軸方向移動を制限する位置規制部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、シール部は、複数の環状の突部によって所謂タケノコ型に形成され、このシール部の径方向の対向位置には保持機構が設けられている。そのため、保持機構が管Pの周面を径方向に押圧することによって、管をシール部に強く押し付けることができ、当該シール部のシール性能を高めることができる。したがって、タケノコ型のシール部を備えた管継手であっても硬質樹脂管や金属強化樹脂管等の接続のために利用することができ、高温の流体が流れる環境下での利用も可能となる。また、シール部をタケノコ型に形成することで管継手を安価な構成とすることができる。
【0017】
また、管に管継手を接続した状態でネジ筒を被接続箇所に螺合して取り付ける場合、内筒体及び外筒体を停止させたままネジ筒を単独で回転させることができるので、管がよじれたり、管の周面がシール部に擦れて傷ついたりすることはほとんどなく、シール性能が低下してしまうこともない。また、内筒体、又は、内筒体及び外筒体が、ネジ筒の基端側から先端側へ向けて当該ネジ筒内に軸方向に挿入され、内筒体又は外筒体とネジ筒との間には、当該ネジ筒に対する内筒体又は外筒体の先端側への軸方向移動を制限する位置規制部が設けられているので、内筒体、又は、内筒体及び外筒体と、ネジ筒とを容易に抜け止めした状態で連結することができる。したがって、図14に示されるような抜け止め用のCリング220が不要となり、部品点数を削減して製造コストの低減を図ることができる。また、内筒体と外筒体とは、一つの素材で一体に形成することにより単一部品で構成することが可能となり、この場合には、部品点数をより少なくすることができるとともに部品の組立てをより容易に行うことができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0018】
上記第1及び第2の観点に係る管継手において、前記保持機構は、管の周面とこれに径方向に対向する前記外筒体又は前記内筒体の周面とに当接し、径方向寸法が縮小又は拡大可能に構成された保持環と、前記保持環を管の周面に押し付けるべく、当該保持環の径方向寸法を縮小又は拡大させる作用部と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、保持環を管に押し付けることによって内筒体と外筒体との間のスペースからの管の離脱を確実に防止することができる。
【0019】
前記保持機構において、前記作用部は、前記保持環の軸方向一端部側を管の周面に押し付けるための第1作用面と、前記保持環の軸方向他端部側を管の周面に押し付けるための第2作用面と、を有しており、前記第1,第2作用面は、管の周面との径方向間隔が軸方向先端側ほど狭くなるように傾斜する傾斜面とされ、かつ互いに段差面を介して離間して形成されていることが好ましい。
【0020】
このような構成によって、傾斜面からなる第1,第2作用面によって保持環が管の周面に押し付けられることにより、内筒体と外筒体との間のスペースからの管の離脱を防止することができ、さらに、保持環を軸方向に広い範囲で管の周面に押し付け、当該管の週面をシール部に強く押し付けることができるので、シール部材のシール性能をより高めることができる。また、第1,第2作用面が、段差面を介して離間して形成されているので、保持環の径方向の厚さ寸法を可及的に小さくすることが可能となる。つまり、第1,第2作用面が連続した傾斜面によって構成されていると、当該作用面全体として径方向への拡がりが大きくなり、当該作用面に沿う厚さで保持環を分厚く形成する必要があるが、第1,第2作用面の間に段差面を形成して離間することで保持環を可及的に薄く形成することが可能となる。
【0021】
前記外筒体は、第1筒部と、この第1筒部の先端側に螺合される第2筒部とからなり、前記保持環は、第2筒部の内周面に設けられると共に、第1筒部に対する第2筒部の締め付けによって縮径されることが好ましい。
この構成によれば、第2筒部を第1筒部に螺合することによって保持環を強固に管Pに押し付けることができ、シール性能をより高めることができる。
【0022】
上述の管継手は、管としての硬質樹脂管又は金属強化樹脂管と被接続箇所との接続に用いられるものであってもよい。
また、上述の管継手は、常温で相変化しない流体が流れる管と被接続箇所との接続に用いられるものであってもよい。
【0023】
本発明の第3の観点に係る給湯装置は、冷凍サイクルにより温水を生成する冷媒回路を有する熱源ユニットと、この熱源ユニットにおいて生成された温水を貯留する貯水ユニットと、この貯水ユニットに貯留された温水を排出する給湯機器と、前記熱源ユニットと前記貯水ユニットとの間、前記貯水ユニットと前記給湯機器との間で温水を流通させる連絡配管と、を備えている給湯装置であって、
前記熱源ユニットと前記連絡配管との接続部分、前記貯水ユニットと前記連絡配管との接続部分、及び前記給湯機器と前記連絡配管との接続部分のうち、少なくとも1つの接続部分に、上述した管継手が用いられていることを特徴とするものである。
【0024】
本発明に第4の観点に係る空気調和装置は、冷凍サイクルにより冷温水を生成する冷媒回路を有する熱源ユニットと、この熱源ユニットで生成された冷温水を貯留する貯水ユニットと、この貯水ユニットに貯留された冷温水を熱交換媒体として室内空気の温度を調整する空気調和ユニットと、前記熱源ユニットと前記貯水ユニットとの間、前記貯水ユニットと前記空気調和ユニットとの間で冷温水を流通させる連絡配管と、を備えている空気調和装置であって、
前記熱源ユニットと前記連絡配管との接続部分、前記貯水ユニットと前記連絡配管との接続部分、及び前記空気調和ユニットと前記連絡配管との接続部分のうち、少なくとも1つの接続部分に、上述した管継手が用いられていることを特徴とするものである。
【0025】
本発明に第5の観点に係る床暖房装置は、冷凍サイクルにより温水を生成する冷媒回路を有する熱源ユニットと、この熱源ユニットで生成された温水により床面の温度を調整する床暖房ユニットと、両ユニット間で温水を流通させるための連絡配管と、を備えている床暖房装置であって、
前記熱源ユニットと前記連絡配管との接続部分、及び/又は、前記床暖房ユニットと前記連絡配管との接続部分に、上述した管継手が用いられていることを特徴とするものである。
【0026】
上記のような給湯装置、空気調和装置、及び床暖房装置に備わった熱源ユニットの冷媒回路には、CO冷媒が用いられていることが好ましい。
CO冷媒を用いた熱源ユニットは、非常に高温の温水を生成することができ、耐熱性の高い硬質樹脂管や金属強化樹脂管の使用が要求されるが、本発明の管継手は、非常に安価でありながら、硬質樹脂管等の接続のためにも使用することができるので、CO冷媒を用いて温水を生成する熱源ユニットを備えた上記の各装置に好適に適用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、安価な構造で管及び被接続管に対する接続作業を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る管継手を示す斜視図である。
【図2】図1に示される管継手の断面図である。
【図3】管継手におけるシール部及び保持環の装着部分を拡大して示す断面図である。
【図4】(a)は保持環の断面図、(b)は保持環の正面図である。
【図5】管継手にキャップを装着した状態を示す断面図である。
【図6】給湯装置を概略的に示す構成図である。
【図7】空気調和装置を概略的に示す構成図である。
【図8】床暖房装置を概略的に示す構成図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る管継手の断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る管継手の断面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る管継手の断面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態に係る管継手の断面図である。
【図13】従来技術に係る管継手を示す断面図である。
【図14】他の従来技術に係る管継手を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
《第1の実施の形態》
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。
(管継手10の全体構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る管継手10を示す斜視図である。
本実施の形態の管継手10は、液体や気体等の流体が流れる管Pと、この流体を利用する各種の機器Uとを接続するために用いられるものであり、その軸方向の先端部が管Pの端部に接続され、軸方向の基端部が機器Uに接続される。したがって、管継手10の軸方向先端側には、管Pを挿入するための挿入口11が形成され、軸方向基端側には、機器U側の配管(被接続箇所)U1の端部に設けられた雄ネジに螺合する、ネジ筒としてのナット16が設けられている。
【0030】
なお、本実施の形態の管継手10は、主として常温(例えば、5℃〜35℃)において相変化をしない水、海水、薬品、ブライン等の液体を扱う管Pと機器Uとの接続のために好適に使用される。また、管Pは、耐食性や耐熱性が良好な架橋ポリエチレン管やボリブデン管等の硬質樹脂管や、アルミニウム等の金属管の内面及び外面を樹脂材で被覆した三層管等の金属強化樹脂管が使用される。ただし、管Pとして、硬質なものに限らず軟質樹脂管等の軟質なものを使用することも可能である。
【0031】
図2は、図1に示される管継手10の断面図、図3は、管継手10におけるシール部36及び保持環42の部分を拡大して示す断面図である。なお、この図2に示される管継手10は、管Pが接続される先端部が図における左側に示され、機器Uの被接続箇所U1に接続される基端部が図における右側に示されている。
管継手10は、主として内筒体14と、外筒体15と、ナット16とから構成されている。内筒体14、外筒体15、及びナット16は、脱鉛青銅、砲金等の金属材料や硬質の樹脂材料からなる。内筒体14は、円筒形状に形成され、その基端部側の内周面は、基端側へ向かうに従って内径が拡大するテーパー面19に形成されている。
【0032】
図3に示されるように、内筒体14の先端部の外周面には、複数の環状の切欠溝17が軸方向に並べて形成されている。そして、内筒体14の外周面には、複数の切欠溝17に相対する関係で、複数の環状の突部38が形成され、これら複数の突部38によって、所謂タケノコ型のシール部36が構成されている。
シール部36は、内筒体14と外筒体15との間のスペースSに挿入された管Pの内周面に対して後述の保持環42の作用で強く密着し、内筒体14と管Pとの間の流体の漏れを防止する機能を有している。
【0033】
図2に示されるように、内筒体14の基端には、径方向外方に突出する環状の第1突条部21が形成されている。また、第1突条部21の先端側(図2の左側)に隣接した位置には、当該第1突条部21よりも小さい突出量で径方向外方へ突出する環状の第2突条部22が形成されている。
【0034】
外筒体15は、円筒形状に形成され、内筒体14の径方向外側に、当該内筒体14と同心状に配置されている。そして、この外筒体15の内周面と内筒体14の外周面との間には、管Pを挿入することができるスペース(以下、「挿入スペース」ともいう)Sが形成されている。外筒体15の先端部の外周面は、基端側に向かうに従って外径が大きくなるテーパー面24に形成されている。外筒体15の先端部の内周面には、後述する保持環42を収容するための環状の保持凹部25が形成されている。この保持凹部25は、内筒体14に形成されたシール部36の径方向外側に対向した位置に配置されている。
【0035】
外筒体15は、その基端側(図2の右側)に配置された第1筒部74と、先端側(図2の左側)に配置された第2筒部75とからなっている。そして、第1筒部74の先端部の外周面には雄ネジ74aが形成され、第2筒部75の基端部の内周面には雌ネジ75aが形成され、この雄ネジ74aと雌ネジ75aとを螺合することによって第1筒部74と第2筒部75とが結合されている。また、保持環42を収容するための保持凹部25は、第2筒部75の内周面に形成されている。第2筒部75の基端側の外周面75bは、スパナ等の工具を嵌合させることができる六角形状に形成されている。
【0036】
外筒体15が第1筒部74と第2筒部75とから構成され、第2筒部75に保持凹部25が形成されているので、この保持凹部25に保持環42を収容した状態で第2筒部75を第1筒部74に螺合することができる。これにより、外筒体15に対して容易に保持環42を装着することができる。ただし、第1筒部74と第2筒部75とを連結した状態で、保持環42の外径を後述の如く縮小させ、第2筒部75の先端開口から保持環42を挿入して保持凹部25に装着することも可能である。
【0037】
図2に示されるように、ナット(ネジ筒)16は、外筒体15の基端部に一体に形成されている。つまり、ナット16と外筒体15とは、一つの素材を機械加工することによって単一の部品で構成されている。このナット16の外周面27は、スパナ等の工具を嵌合させることが可能な六角形状に形成され、内周面には雌ネジ28が形成されている。また、ナット16の先端側には、径方向内方に突出する環状の第3突条部29が形成されている。なお、ネジ筒16は、機器U側の被接続箇所U1の形状に応じて、外周面に雄ネジを有する形態とすることも可能である。
【0038】
内筒体14は、ナット16の基端側(図2の右側)からナット16の内部に挿入され、さらにナット16よりも先端側(図2の左側)へ突出して外筒体15の内部に配置される。この際、内筒体14の第1突条部21がナット16の第3突条部29に軸方向に当接することによって、ナット16に対する内筒体14の先端側への移動が制限されている。したがって、内筒体14の第1突条部21とナット16の第3突条部29とは、ナット16に対する内筒体14の先端側への移動を制限するための位置規制部31を構成している。
【0039】
なお、内筒体14に形成された第2突条部22は、挿入スペースSに対する管Pの挿入限界を設定するストッパとしての機能を有している。
また、ナット16の内部には、環状のパッキン33が設けられており、このパッキン33は、内筒体14の基端面と、機器U側の被接続箇所U1の先端面との間に挟まれ、両者の間からの流体の漏れを防止している。また、管継手10の不使用時や、管継手10に管Pのみを接続した状態では、ナット16に対する内筒体14の基端側への移動が制限されないため、図5に示されるように、ナット16には、内筒体14の基端側への移動を制限するキャップ34が取り付けられる。
【0040】
(保持環42の構成)
図4(a)は保持環42の断面図、図4(b)は保持環42の正面図である。
図3及び図4に示されるように、外筒体15の内周面に形成された保持凹部25内には保持環42が収容されている。この保持環42は、周方向の一部分43が欠落したC字形状に形成されており、この欠落した部分43の間隔を狭めるように弾性変形させることによって径方向寸法を縮小できるようになっている。
【0041】
図3に示されるように、保持環42の内周面における軸方向基端部(図3の右端部)には、径方向内方に突出する第1爪部(第1保持部)45が形成され、軸方向先端部(図3の左端部)には、径方向内方に突出する第2爪部(第2保持部)46が形成されている。この第1爪部45と第2爪部46とは、保持環42の径方向寸法を縮小させることによって管Pの外周面に強く押し付けられて食い込み、管Pを強固に保持する機能を有している。
【0042】
保持環42の外周面における軸方向先端部には、基端側に向かうにしたがって外径が大きくなるように傾斜する第2傾斜面49が形成されている。また、この第2傾斜面49よりも基端側には、基端側に向かうにしたがって外径が大きくなるように傾斜する第1傾斜面48が形成されている。したがって、第1,第2傾斜面48,49は、挿入スペースS内に挿入された管Pの外周面に対して、先端側ほど径方向の間隔が狭くなるように形成されている。また、第1傾斜面48と第2傾斜面49との間には第1段差面50が形成されており、この第1段差面50は、中心軸線Oに略平行に形成されている。
【0043】
第1傾斜面48と第2傾斜面49とは、互いに略同一の傾斜角度に形成されている。また、第1傾斜面48と第2傾斜面49とは、第1段差面50を間に挟んで軸方向に離れて配置されている。なお、保持環42の外周面における第1傾斜面48よりもさらに基端側は、基端側ほど外径が小さくなるような傾斜面52とされている。
【0044】
外筒体15に形成された保持凹部25の底面は、保持環42の第1傾斜面48と略同一の角度で傾斜し、当該第1傾斜面48に当接する第3傾斜面53と、保持環42の第2傾斜面49と略同一の角度で傾斜し、当該第2傾斜面49に当接する第4傾斜面54とを有している。また、第3傾斜面53と第4傾斜面54との間には中心軸線Oに略平行な第2段差面55が形成されている。
【0045】
外筒体15と内筒体14との間の挿入スペースS内に管Pが挿入され、管Pの内部を流れる流体の圧力等によって管Pに挿入スペースSから離脱する方向(矢印X)への力が作用すると、保持環42は、管Pとともに先端側へ移動するとともに、第1〜第4傾斜面48,49,53,54の作用で外筒体15によって径方向内方へ押され、径方向寸法が縮小する。そして、保持環42の径方向寸法が縮小することによって、第1爪部45及び第2爪部46がより強く管Pの外周面に押し付けられ、挿入スペースSからの管Pの離脱が確実に防止される。特に、保持環42は、軸方向両側の第1,第2傾斜面48,49の2箇所において径方向内方に押されるため、保持環42の軸方向の略全体の範囲を管Pの周面に強く押し付けることができる。
【0046】
ここに、第1〜第4傾斜面48,49,53,54は、管Pの離脱方向Xへの移動により保持環42の径方向寸法を縮小させる作用部を構成し、この作用部と保持環42とで、挿入スペースSに挿入された管Pを保持する保持機構47が構成されている。また、作用部は、第1傾斜面48と第3傾斜面53との組によって構成された第1作用面と、第2傾斜面49と第4傾斜面54との組によって構成された第2作用面とからなる。
【0047】
なお、作用部は、保持環42に形成された第1傾斜面(第1作用面)48と第2傾斜面(第2作用面)49のみによって構成されていてもよく、この場合、保持凹部25の底面には、第1傾斜面48及び第2傾斜面49に当接する部分(例えば角部)が存在していればよい。逆に、作用部は、第3傾斜面(第1作用面)53及び第4傾斜面(第2作用面)54のみによって構成されていてもよく、この場合、保持環42の外周面には、第3傾斜面53及び第4傾斜面54にそれぞれ当接する部分(例えば角部)が存在していればよい。
【0048】
管Pは、長期の使用で強度が劣化すると挿入スペースSから離脱しやすくなっていくが、上記のように挿入スペースSから離脱する方向Xへの管Pの移動によって保持環42が管Pを強固に保持するため、管Pの離脱は確実に防止される。
また、本実施の形態では、保持環42がシール部36の径方向外側に対向する位置に配置されているので、保持環42の径方向寸法が縮小して第1,第2爪部45,46が管Pの外周面に強く押し付けられると、管Pの内周面がシール部36に強く押し付けられ、シール部36によるシール性能が高められる。そのため、管Pとしての硬質樹脂管や金属強化樹脂管に対して本実施の形態の管継手10を好適に適用することができる。
【0049】
図2に示されるように、管継手10の先端側に管Pを接続する際、外筒体15の第1筒部74の雄ネジ74aに対して第2筒部75の雌ネジ75aを緩く螺合し、両者の間に若干の締め代tを残した状態としておく。これにより、挿入スペースSに対して管Pを容易に挿入することができる。そして、管継手10の挿入スペースSに管Pを挿入した後、雄ネジ74aに対して雌ネジ75aを締め込むことによって、保持環42の径方向寸法を縮小させる。これにより、保持環42によって管Pの外周面をより強固に保持することができ、さらに管Pの内周面をシール部36により強く押し付けてシール性能を高めることができる。
【0050】
また、本実施の形態の管継手10は、挿入口11から挿入スペースS内に管Pを差し込むとともに、ナット16を機器Uの被接続箇所U1に螺合することによって管Pと機器Uとを接続するが、この際、管継手10を先に管Pに接続してもよいし、先に機器Uに接続してもよい。
前者の場合、例えば図2に示されるように、管継手10の挿入スペースSに管Pを差し込んだ状態で、機器Uとの接続にためにナット16を回転させると、ナット16と一体に形成された外筒体15も連れ回りする。一方、内筒体14は、ナット16及び外筒体15に対して位置規制部31によって先端側への移動が制限されるのみであり、ナット16及び外筒体15に対して相対回転可能であるので、ナット16の回転に連れ回りすることなく停止した状態を維持することになる。
【0051】
また、管Pに押し付けられている保持環42は、外筒体15の保持凹部25の底面に当接しているだけであるため、外筒体15がナット16と共に回転しても、保持環42は保持凹部25の底面上を滑って連れ回りせず、管Pも停止した状態を維持することになる。したがって、ナット16とともに回転するのは外筒体15のみとなり、ナット16の回転に伴って管Pがよじれたり、管Pの内周面がシール部36に過度に擦れて損傷を受けたりすることはない。そのため、シール部36によるシール性能を好適に維持することができる。
【0052】
後者の場合は、管継手10のナット16を機器U側の被接続箇所U1に螺合するときは勿論のこと、その後、管継手10の挿入スペースSに管Pを差し込むときにも、管Pがよじれたり管Pの内周面がシール部36に擦れて損傷を受けたりすることはほとんどない。したがって、なんら問題なく管Pと機器Uとを接続することができる。
【0053】
図3に示されるように、保持環42に形成された第1,第2傾斜面48,49、及び保持凹部25に形成された第3,第4傾斜面53,54は、いずれも間に第1,第2段差面50,55が介在している。これにより、次のような利点がある。
例えば、第1段差面50を省略し、第2傾斜面49をそのまま基端側に延長して第1傾斜面48に連続させると、当該第1,第2傾斜面48,49は径方向外側に大きく拡がり、保持環42が径方向に分厚く形成されることになる。そして、保持環42が径方向に分厚く形成されると、重量が増大するとともに剛性も高くなる。保持環42の剛性が高くなると、保持環42の径方向寸法を縮小させた状態で外筒体15の先端開口から挿入し、保持凹部25へ装着する作業が困難になるという欠点がある。同様に、保持凹部25の第2段差面55を省略し、第4傾斜面54をそのまま基端側に延長して第3傾斜面53に連続させると、保持凹部25は、径方向外方へ深く形成されることになる。その分、外筒体15の径方向寸法を大きくしなければならず、管継手10が大型化する。また、保持凹部25が深くなると、当然に保持環42も径方向に分厚く形成しなければならない。
【0054】
この点、本実施の形態では、第1傾斜面48と第2傾斜面49との間には第1段差面50が形成され、第3傾斜面53と第4傾斜面54との間には第2段差面55が形成されているので、保持環42の径方向の厚みをそれほど大きくすることなく、また、保持凹部25をそれほど深く形成することなく、保持環42を軸方向の広い範囲で管Pの外周面に強く押し付けることができる。
なお、第1,第2段差面50,55は、管継手10の中心軸線Oに平行な面とするに限らず、第1〜第4傾斜面48,49,53,54よりも緩やかな角度でこれらと同じ向き傾斜する面や、第1〜第4傾斜面48,49,53,54とは逆向きに傾斜する面とすることができる。
【0055】
(管継手10の適用例)
図6〜図8は、本発明の管継手10を適用することができる各種機器について示している。
図6は、給湯装置80を概略的に示す構成図であり、この給湯装置80は、熱源ユニット57と、貯水ユニット58とを備え、両者は連絡配管59によって接続されている。また、貯水ユニット58は、浴槽等の給湯機器(温水利用機器)60に対して連絡配管59によって接続されている。
【0056】
熱源ユニット57は、いわゆるヒートポンプユニットであり、貯水ユニット58から連絡配管59を介して供給された水を冷凍サイクルによって加熱し、温水にした状態で貯水ユニット58に戻す機能を有している。熱源ユニット57は、冷媒が流動する冷媒回路を備えており、この冷媒回路は、低温低圧の冷媒を外気との間で熱交換して蒸発させ、蒸発させた高温の冷媒を圧縮した後に、貯水ユニット58から供給された水との間で熱交換することにより冷媒を凝縮し、水を加熱する。そして、凝縮された冷媒を膨張弁によって減圧し、再度、外気との間で熱交換を行う冷凍サイクルを繰り返し行う。冷媒回路は、冷媒として例えばCO冷媒が使用されており、このCO冷媒によって90℃以上の温水を生成することが可能となっている。なお、熱源ユニット57は、冷媒の逆循環によって水を冷却する機能をも有していてもよい。
【0057】
貯水ユニット58は、水道管等の水源から供給された水を熱源ユニット57に送ると共に、熱源ユニット57において生成された温水を貯水タンクで貯留し、さらに貯留された温水を給湯機器60に送る機能を有している。
【0058】
熱源ユニット57及び貯水ユニット58における水(湯)の出入り口には、止水弁63が設けられており、本実施の形態の管継手10は、管Pとしての連絡配管59と、機器Uとしての熱源ユニット57及び貯水ユニット58における止水弁63(被接続箇所U1)とを接続するために用いられている。また、給湯機器60における水の出入り口にも止水弁63が設けられており、この止水弁63と連絡配管59とを接続するために本実施の形態の管継手10が用いられている。なお、止水弁63と連絡配管59との複数箇所の接続部分のうち、いずれかに対して本実施の形態の管継手10が用いられていてもよい。
【0059】
CO冷媒を使用した熱源ユニット57は、90℃以上の非常に高温の温水を生成することができるため、連絡配管59として耐熱性の高い硬質樹脂管や三層管を使用することが推奨されており、これらの管を使用する場合において、上述したような管の離脱防止効果や、長期使用による流体漏れの防止効果の高い本実施の形態の管継手10を使用することが極めて有効である。
【0060】
図7は、空気調和装置81を概略的に示す構成図であり、この空気調和装置81は、熱源ユニット66と、貯水ユニット67と、空気調和ユニット68とを有している。熱源ユニット66及び貯水ユニット67は給湯装置80における熱源ユニット57及び貯水ユニット58と略同様の構成であり、空気調和ユニット68は、熱源ユニット66によって生成された冷温水を冷媒として室内の空気と熱交換を行い、室内の温度や湿度を調整する。熱源ユニット66,貯水ユニット67及び空気調和ユニット68における水(湯)の出入り口や、所定の連絡管59の途中位置には止水弁63が設けられている。また、熱源ユニット66と貯水ユニット67とは連絡配管59によって接続され、貯水ユニット67と空気調和ユニット68とは連絡配管59によって接続されている。また、連絡配管59の適宜箇所にはポンプ65が設けられる。
【0061】
そして、各ユニット66〜68や連絡配管59に設けられた止水弁63と、連絡配管59との接続部分のいずれか又は全てに対して本実施の形態の管継手10を用いることができる。
【0062】
図8は、床暖房装置82を概略的に示す構成図であり、この床暖房装置82は、熱源ユニット70と、床暖房ユニット71とを有している。熱源ユニット70は給湯装置80の熱源ユニット57と略同様の構成であり、床暖房ユニット71は、室内の床下に埋設されるともに温水が流れる放熱管72を有する床暖房パネル73を備えている。熱源ユニット70と床暖房パネル73の放熱管72とは連絡配管59によって接続されており、熱源ユニット70の止水弁63と連絡配管59との接続部分、及び床暖房パネル73と連絡配管59との接続部分のいずれか又は全てに本実施の形態の管継手10を用いることができる。
【0063】
《第2の実施の形態》
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る管継手10の断面図である。
本実施の形態の管継手10は、外筒体15が、第1の実施の形態のように第1筒部74と第2筒部75とから構成されておらず、単一の部品によって構成されている。また、外筒体15の内周面にはシール部36が設けられ、このシール部36の径方向内方に対向する内筒体14の外周面には保持凹部25が形成され、この保持凹部25に保持環42が収容されている。
【0064】
保持環42は、その外周面に第1爪部45と第2爪部46とを備えており、挿入スペースSから離脱する方向Xへの管Pの移動により保持凹部25の底面で径方向外側へ押されることで径方向寸法が拡大し、第1爪部45と第2爪部46が管Pの内周面に押し付けられることで管Pを強固に保持するように構成されている。
本実施の形態の管継手10におけるその他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、したがって、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0065】
《第3の実施の形態》
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る管継手10の断面図である。
本実施の形態の管継手10は、外筒体15とナット16とが別体で形成され、互いに結合されることによって一体回転可能に構成されている。具体的に、本実施の形態のナット16の先端側(図10の左側)の外周面には雄ネジ16aが形成され、外筒体15の基端側(図10の右側)の内周面には雌ネジ15aが形成され、この雄ネジ16aと雌ネジ15aとを螺合することによってナット16と外筒体15とが一体的に結合されている。
【0066】
本実施の形態の管継手10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、したがって、本実施の形態の管継手10においても第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。なお、外筒体15とナット16とは、雄ネジ16aと雌ネジ15aの螺合による結合に限らず、圧入等の他の手段により結合されていてもよい。
【0067】
《第4の実施の形態》
図11は、本発明の第4の実施の形態に係る管継手10の断面図である。
本実施の形態の管継手10は、上述の第1〜第3の実施の形態のように外筒体15とナット16とが一体回転可能に構成されているのではなく、外筒体15と内筒体14とが一体回転可能に構成され、この外筒体15及び内筒体14と、ナット16とが相対回転可能に構成されたものである。
【0068】
より具体的には、内筒体14における第2突条部22の外周面には雄ネジ14bが形成されており、外筒体15の基端部の内周面には雌ネジ15bが形成されている。そして、この雄ネジ14bと雌ネジ15bとを螺合することによって外筒体15と内筒体14とが一体的に結合されている。
【0069】
本実施の形態において、管継手10は、次のように組み立てられる。まず、外筒体15から分離した状態の内筒体14を、ナット16の基端側からナット16の内部に挿入する。この際、ナット16の第3突条部29と内筒体14の第1突条部21とを軸方向に当接させることによって、ナット16に対する内筒体14の先端側への移動が制限される。そして、ナット16から先端側へ突出した内筒体14を外筒体15の内部に挿入し、雄ネジ14bと雌ネジ15bとを螺合する。外筒体15の基端面は、ナット16の先端面に摺動可能に当接し、第1突条部21との間でナット16の第3突条部29を挟持している。したがって、外筒体15、内筒体14、及びナット16の相対的な軸方向の移動が完全に制限される。
【0070】
本実施の形態の管継手10を管Pに接続し、その後、機器Uの被接続箇所U1に接続する場合、ナット16は、内筒体14及び外筒体15に相対して単独で回転可能であるので、挿入スペースSに挿入した管Pがよじれたり、管Pの周面がシール部36に擦れて損傷を受けたりすることはなく、適切に管Pと機器Uとを接続することができる。
【0071】
また、内筒体14は、ナット16に対して基端側から挿入され、第1突条部21及び第3突条部29とからなる位置規制部31によってナット16に対する内筒体14の先端側への移動が制限されているので、内筒体14と外筒体15とが一体回転可能に構成された図14に示される従来技術の管継手10よりも組立てが容易になるとともに、抜け止め用のCリング220が不要であるため、部品点数の削減を図ることができる。
【0072】
《第5の実施の形態》
図12は、本発明の第5の実施の形態に係る管継手10の断面図である。
本実施の形態の管継手10は、第4の実施の形態に係る管継手(図11参照)と同様に、外筒体15と内筒体14とが一体回転可能に構成され、この外筒体15及び内筒体14と、ナット16とが相対回転可能に構成されたものである。そして、本実施の形態では、外筒体15と内筒体14とが1つの素材を機械加工することによって単一の部品として構成されている。
【0073】
また、外筒体15は、ナット16の基端部側からナット16内に挿入可能とされ、位置規制部31を構成する第1突条部21が外筒体15の基端部から径方向外側に突出して形成されている。したがって、外筒体15及び内筒体14は、第1突条部21と第3突条部29とが軸方向に当接することによってナット16に対する先端側への移動が制限されている。
【0074】
その他の構成は、第4の実施の形態と同じであり、この第4の実施の形態と同様の作用効果を奏する。また、外筒体15と内筒体14とが一体形成されているので、部品点数がより少なくなり、製造コストの低減を図ることができる。
【0075】
なお、上述の第2〜第5の実施の形態において説明した各管継手10についても、図6〜図8に示されるような給湯装置80、空気調和装置81、床暖房装置82における各ユニットと連絡配管との接続部分に適用できることは勿論である。
【0076】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更できるものである。
例えば、保持環42は、第1爪部(第1保持部)45と第2爪部(第2保持部)46とを別体に備えていてもよい。つまり、第1爪部45を有する第1の保持環と、第2爪部46を有する第2の保持環とによって本発明の保持環42が構成されていてもよい。
【0077】
本発明の管継手10は、液体だけでなく気体を扱う管Pと機器Uとを接続するために用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
10: 管継手
14: 内筒体
15: 外筒体
16: ナット
31: 位置規制部
36: シール部
38: 突部
42: 保持環
45: 第1爪部(第1保持部)
46: 第2爪部(第2保持部)
47: 保持機構
48: 第1傾斜面(第1作用面)
49: 第2傾斜面(第2作用面)
50: 第1段差面
53: 第3傾斜面(第1作用面)
54: 第4傾斜面(第2作用面)
55: 第2段差面
57: 熱源ユニット
58: 貯水ユニット
59: 連絡配管
60: 給湯機器
63: 止水弁(被接続箇所)
66: 熱源ユニット
67: 貯水ユニット
68: 空気調和ユニット
70: 熱源ユニット
71: 床暖房ユニット
80: 給湯装置
81: 空気調和装置
82: 床暖房装置
P: 管
U1:被接続箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の先端側が管(P)に接続され、かつ軸方向の基端側が被接続箇所(U1)に接続される管継手であって、
内筒体(14)と、
この内筒体(14)の径方向外側に配置され、当該内筒体(14)との間に管(P)を挿入可能なスペース(S)を形成する外筒体(15)と、
前記内筒体(14)及び前記外筒体(15)のうち一方の筒体に対して相対回転可能な状態で他方の筒体の基端部に一体回転可能に設けられ、かつ被接続箇所(U1)に螺合されるネジ部を有しているネジ筒(16)と、
前記一方の筒体に設けられ、前記スペース(S)に挿入された管(P)の周面に食い込んで係止する軸方向に複数の環状の突部(38)からなるシール部(36)と、
前記他方の筒体における前記シール部(36)に径方向に対向する位置に設けられ、前記スペース(S)に挿入された管(P)と前記他方の筒体との相対回転を許容した状態で当該管(P)の周面を径方向に押圧して保持する保持機構(47)と、
を備えていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記ネジ筒(16)が、前記内筒体(14)に対して相対回転可能な状態で前記外筒体(15)の基端部に一体回転可能に設けられ、
前記シール部(36)が、前記内筒体(14)の外周面に設けられている、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記内筒体(14)が、前記ネジ筒(16)の基端側から前記外筒体(15)内に軸方向に挿入され、
前記内筒体(14)と前記ネジ筒(16)とには、当該ネジ筒(16)に対する前記内筒体(14)の先端側への軸方向移動を制限する位置規制部(31)が設けられている、請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
軸方向の先端側が管(P)に接続され、軸方向の基端側が被接続箇所(U1)に接続される管継手であって、
内筒体(14)と、
この内筒体(14)の径方向外側に配置されるとともに当該内筒体(14)に一体回転可能に設けられ、かつ当該内筒体(14)との間に管(P)を挿入可能なスペース(S)を形成する外筒体(15)と、
前記内筒体(14)及び前記外筒体(15)の基端部に相対回転可能な状態で連結され、かつ被接続箇所(U1)に螺合されるネジ部を有しているネジ筒(16)と、
前記内筒体(14)及び前記外筒体(15)のうちの一方の筒体に設けられ、前記スペース(S)に挿入された管(P)の周面に食い込んで係止する軸方向に複数の環状の突部(38)からなるシール部(36)と、
前記内筒体(14)及び前記外筒体(15)のうちの他方の筒体における前記シール部に径方向に対向する位置に設けられ、前記スペース(S)に挿入された管(P)の周面を径方向に押圧して保持する保持機構(47)と、を備えており、
前記内筒体(14)、又は、前記内筒体(14)及び前記外筒体(15)が、前記ネジ筒(16)の基端側から先端側へ向けて当該ネジ筒(16)内に軸方向に挿入され、
前記内筒体(14)又は前記外筒体(15)と、前記ネジ筒(16)とには、当該ネジ筒(16)に対する前記内筒体(14)又は前記外筒体(15)の先端側への軸方向移動を制限する位置規制部(31)が設けられていることを特徴とする管継手。
【請求項5】
前記保持機構(47)が、管(P)の周面とこれに径方向に対向する前記外筒体(15)又は前記内筒体(14)の周面とに当接し、径方向寸法が縮小又は拡大可能に構成された保持環(42)と、
前記保持環(42)を管(P)の周面に押し付けるべく、当該保持環(42)の径方向寸法を縮小又は拡大させる作用部(48,49,53,54)と、を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の管継手。
【請求項6】
前記作用部(48,49,53,54)は、前記保持環(42)の軸方向一端部側を管(P)の周面に押し付けるための第1作用面(48,53)と、
前記保持環(42)の軸方向他端部側を管(P)の周面に押し付けるための第2作用面(49,54)と、を有しており、
前記第1,第2作用面(48,53,49,54)は、管(P)の周面との径方向間隔が軸方向先端側ほど狭くなるように傾斜する傾斜面とされ、かつ互いに段差面(50,55)を介して離間して形成されている、請求項5に記載の管継手。
【請求項7】
前記外筒体(15)が、第1筒部(74)と、この第1筒部(74)の先端側に螺合される第2筒部(75)とからなり、
前記保持環(42)が、前記第2筒部(75)の内周面に設けられるとともに、前記第1筒部(74)に対する前記第2筒部(75)の締め付けによって縮径される請求項1〜6のいずれか1項に記載の管継手。
【請求項8】
管(P)としての硬質樹脂管又は金属強化樹脂管と被接続箇所(U1)との接続に用いられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の管継手。
【請求項9】
常温で相変化しない流体が流れる管(P)と被接続箇所(U1)との接続に用いられる請求項1〜8のいずれか1項に記載の管継手。
【請求項10】
冷凍サイクルにより温水を生成する冷媒回路を有する熱源ユニット(57)と、この熱源ユニット(57)において生成された温水を貯留する貯水ユニット(58)と、この貯水ユニット(58)に貯留された温水を排出する給湯機器(60)と、前記熱源ユニット(57)と前記貯水ユニット(58)との間、前記貯水ユニット(58)と前記給湯機器(60)との間で温水を流通させる連絡配管(59)と、を備えている給湯装置であって、
前記熱源ユニット(57)と前記連絡配管(59)との接続部分、前記貯水ユニット(58)と前記連絡配管(59)との接続部分、及び前記給湯機器(60)と前記連絡配管(59)との接続部分のうち、少なくとも1つの接続部分に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の管継手が用いられていることを特徴とする給湯装置。
【請求項11】
前記熱源ユニット(57)の冷媒回路に、CO冷媒が用いられている請求項10に記載の給湯装置。
【請求項12】
冷凍サイクルにより冷温水を生成する冷媒回路を有する熱源ユニット(66)と、この熱源ユニット(66)で生成された冷温水を貯留する貯水ユニット(67)と、この貯水ユニット(67)に貯留された冷温水を熱交換媒体として室内空気の温度を調整する空気調和ユニット(68)と、前記熱源ユニット(66)と前記貯水ユニット(67)との間、前記貯水ユニット(67)と前記空気調和ユニット(68)との間で冷温水を流通させる連絡配管(59)と、を備えている空気調和装置であって、
前記熱源ユニット(66)と前記連絡配管(59)との接続部分、前記貯水ユニット(67)と前記連絡配管(59)との接続部分、及び前記空気調和ユニット(68)と前記連絡配管(59)との接続部分のうち、少なくとも1つの接続部分に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の管継手が用いられていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項13】
前記熱源ユニット(66)の冷媒回路に、CO冷媒が用いられている請求項12に記載の空気調和装置。
【請求項14】
冷凍サイクルにより温水を生成する冷媒回路を有する熱源ユニット(70)と、この熱源ユニット(70)で生成された温水により床面の温度を調整する床暖房ユニット(71)と、両ユニット間で温水を流通させるための連絡配管(59)と、を備えている床暖房装置であって、
前記熱源ユニット(70)と前記連絡配管(59)との接続部分、及び/又は、前記床暖房ユニット(71)と前記連絡配管(59)との接続部分に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の管継手が用いられていることを特徴とする床暖房装置。
【請求項15】
前記熱源ユニット(70)の冷媒回路に、CO冷媒が用いられている請求項14に記載の床暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−47226(P2012−47226A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188447(P2010−188447)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】