説明

管継手、管接続構造および管接続方法

【課題】 管体の外周面の凹凸によらず優れた防水性を有し、管体の接続が容易な、管継手、管接続構造および管接続方法を提供する。
【解決手段】 波付き管13aを挿入する際には、保持爪15のテーパ形状によって、波付き管13aは保持爪15に引っ掛かることなく挿入可能である。波付き管13bは、管継手1に完全に挿入されて保持された状態である。この状態においては、波付き管13bの先端でパッキン5bが押しつぶされる。パッキン5bは極めて大きな変形量を有するため、波付き管13bの先端形状に追従することができ、確実に止水をすることができる。この状態においては、波付き管13bの谷部25全周にわたり保持爪15が引っ掛かり、波付き管13bは管継手1から抜けることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から水が浸入することがなく防水性に優れ、管体の接続が容易な、管継手、管接続構造および管接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線等の保護管として、鋼管や樹脂性の波付き可撓管等が使用されている。これらの保護管は、必要に応じて保護管同志が接続され、または保護管と配線ボックスやスイッチボックス等とが接続されて使用される。これら保護管の接続部には、管継手が使用される。管継手の内部には、電線等が通されるため、特に屋外に使用される管継手には高い防水性が要求される。
【0003】
このような、防水性を有する管継手としては、例えば、締め付けナットおよびゴム製のパッキンに管体を挿入し、さらに管体と管体の被覆層との間に筒状のスリーブを挿入し、継手本体をスリーブに被せるように締め付けナットと接合する被覆電線管用継手がある(特許文献1)。
【0004】
また、合成樹脂製のシール体を用い、環状のシール体の一部を切断し、シール体に管体を挿入して、シール体を挟み込むように締め付けナットと継ぎ手本体とを接続可能な電線管用継手のシール体がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−98369号公報
【特許文献2】特実平06−77421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような被覆電線管用継手では、部品点数が多いため、接続するのに手間がかかり、コストも高いという問題がある。特に、管体の取り付けには、継手本体と締め付けナットとを螺合させるため、取付には手間がかかる。また、被覆電線管の外周面が平滑でない場合には、パッキンが被覆電線管の外周面の凹凸に追従できずに防水性が劣る恐れがあるという問題がある。さらに、被覆電線管は切断時や接続時に外形が変形する場合があり、また、被覆電線管が可撓性を有すれば、被覆電線管の曲げ部近傍は、被覆電線管の外形が完全な真円とはならないため、パッキンと被覆電線管との間に隙間を生じる恐れがあり、この場合、防水性が劣る恐れがあるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2によるシール体も同様に、管体の取り付けには、継手本体と締め付けナットとを螺合させるため、取付には手間がかかるとい問題がある。また、管体の外周面が平滑でない場合には防水性が劣り、さらに、管体の切断時や接続時等における外形の変形によって、シール体と管体との間に隙間を生じる恐れがあり、この場合、防水性が劣る恐れがあるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、管体の外周面の凹凸によらず優れた防水性を有し、管体の接続が容易な、管継手、管接続構造および管接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、円筒状の本体部と、前記本体部の内部に設けられ、内径が縮径された突き当て部と、前記突き当て部に設けられた水膨張性の止水部材と、前記本体部に設けられ、独立波を有する波付き管を保持する保持部と、を具備し、前記水膨張性の止水部材は、リング状のウレタンフォームあるいはゴムパッキンにウレタンフォームあるいは吸水性不織布を重ねてリング状に構成したものであり、前記保持部は、前記本体部の端部近傍の内周に沿って、前記波付き管の谷部を保持する複数の爪部と、前記爪部を内周方向に締め付ける締め付け部と、を有し、前記保持部の一方の端部には、円筒軸方向に複数の切れ目が設けられて、先端部の内面に前記爪部が設けられ、前記締め付け部を前記本体部へ完全に締め込んだ状態で前記保持部の先端側から前記波付き管を挿入する際には、前記爪部は、前記本体部の内面に突出するとともに前記波付き管の挿入に抵抗となり難いようにテーパ形状を有し、前記波付き管を抜き去る際には前記波付き管に引っ掛かるような爪形状であり、前記締め付け部と前記保持部との間の一部にはギャップが形成され、前記締め付け部が前記本体部へ完全に締めこまれた状態では、前記爪部の外周は、前記締め付け部の先端内面によって押さえられて、前記波付き管を挿入するとともに保持することが可能であり、前記締め付け部が緩められると、前記爪部の外周には前記ギャップが位置し、前記爪部が外周方向に変形可能となって挿入された前記波付き管の取り外し状態となることを特徴とする管継手である。
【0010】
第1の発明によれば、水膨張性の止水部材が管継手の突き当て部に設けられるため、接続する管体の端部において止水をすることができ、また、止水部材は水膨張性を有するため、確実に管継手の防水を行うことができる。特に、管体の端部で止水を行うため、管体の外周面に凹凸があっても止水性が劣ることがなく、また、管体の外形が変形しても、止水性が劣ることがない。
【0011】
また、水膨張性の止水部材がウレタンフォームであれば、管体が管継手に挿入された際に、管体の端部によって、ウレタンフォームが極めて大きな変形量によって押しつぶされて止水されるため、管体の端部の切断面に凹凸がある場合でも、ウレタンフォームが管体端部の凹凸に追従して変形しつつ押し付けられるため、確実に止水を行うことができる。
【0012】
また、管体が波付き管である場合には、複数の爪部によって、波付き管の波部を保持するため、波付き管と管継手とを確実に固定することができ、さらに、波付き管を管継手に挿入するのみで、波付き管と管継手とが接続されるため、管体の接続がきわめて容易である。
【0013】
管継手は、一対の管体を両側より挿入して、それぞれの管体を保持できれば、管体同士の接続を、防水性を確保しつつ容易に行うことができ、また、一方の側に管体を挿入して、他方の側を配線ボックスやスイッチボックス等の周辺部材に取り付けることができれば、管体と周辺部材とを防水性を確保しつつ容易に接続することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明にかかる管継手に波付き管が挿入され、前記締め付け部を前記本体部へ完全に締め込んだ状態で、前記爪部の先端が前記本体部の内周側に前記波付き管の外周側山部の径よりも小さくなる程度に突出し、前記波付き管が挿入される際には、前記爪部の先端の突出を波付き管の外周側山部での径よりも小さくなる程度に保つことが可能であり、前記波付き管の端部が前記突き当て部に設けられた前記水膨張性の止水部材に押し付けられ、前記波付き管によって前記水膨張性の止水部材が押しつぶされた状態で、前記波付き管と前記管継手とが接続されることを特徴とする管接続構造である。
【0015】
前記保持部の前記爪部が設けられた側とは他方の端部には、外周に突起が設けられ、前記締め付け部の内部にはリブが内周方向に設けられ、前記締め付け部を前記本体部へ完全に締め込んだ状態で、前記リブは、前記突起と噛み合って、前記突起が前記突き当て部の方向に前記締め付け部によって押さえつけられてもよい。
【0016】
第2の発明によれば、管継手の突き当て部に設けられた水膨張性の止水部材が、管体の端部によって押しつぶされた状態で、管体と管継手とが接続されるため、管体の外周面に凹凸があっても止水性が劣ることがなく、また、管体の外形が変形しても、止水性が劣ることがない。さらに、管体が管継手に挿入された際に、管体の端部によって、水膨張性の止水部材が押しつぶされて止水されるため、管体の端部の切断面に凹凸がある場合でも、水膨張性の止水部材が管体端部の凹凸に追従して変形しつつ押し付けられるため、確実に止水を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、管体の外周面の凹凸によらず優れた防水性を有し、管体の接続が容易な、管継手、管接続構造および管接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】管継手1の分解斜視図。
【図2】管継手1の組み立て斜視図。
【図3】管継手1の断面図。
【図4】管継手1に波付き管13が挿入された状態の断面図。
【図5】管継手30の分解斜視図。
【図6】管継手301の組み立て斜視図。
【図7】管継手30の断面図。
【図8】管継手30に波付き管13が挿入された状態の断面図。
【図9】管継手40の断面図。
【図10】管継手50の断面図。
【図11】防水試験装置60を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態にかかる管継手1について説明する。図1は、管継手1の分解斜視図であり、図2は、管継手1の組み立て斜視図である。
【0020】
管継手1は、主に、本体3、パッキン5、チャックリング7、締め付け部9等から構成される。本体3は樹脂製の筒状部材である。本体3の両端には、雄ねじ部11が設けられる。なお、本体3の内部構造等の詳細については後述する。
【0021】
パッキン5はリング状であり、パッキン5の外径は、本体3の内径と略同じである。パッキン5は、水膨張性を有しており、変形量が大きいことが望ましい。例えば、パッキン5は、厚さが3mm以上であり、圧縮率で70%以上であることが望ましい。厚さが3mm以上かつ圧縮率が70%以上であれば、管体の接続時に、管体の端部の凹凸等に容易に追従できるとともに、パッキン5のセットや管体の挿入作業が容易となる。パッキン5としては、例えばウレタンフォームであることが望ましく、この場合、パッキン5は、極めて大きな変形が可能である。パッキン5の材質は、ウレタンフォーム単体を用いる他、この他にもネオプレンゴムスポンジにウレタンフォームを貼り付けたものや、ネオプレンゴムスポンジに吸水性不織布を貼り付けたものを使用するのが望ましく、同様の効果を得ることができる。尚、前記のように、パッキン5を2つの材質で、2段に構成する場合は、ネオプレンゴムスポンジの代わりに通常のゴムパッキンを用いて、これにウレタンフォームや吸水性不織布を重ねて構成することもできる。この場合に、2つの材料は貼り付けて固定する方が良いが、必ずしも固定せずに、重ねておくだけか、あるいは重ねてゴムパッキンにウレタンフォームや吸水性不織布をはめ込むだけでも良い。
【0022】
チャックリング7は、円筒状の樹脂性部材であり、可撓性を有する。チャックリング7の一方の端部には、円筒軸方向に複数の切れ目が設けられる。チャックリング7の内形は本体3の内径と略同じである。なお、チャックリング7の形状の詳細については後述する。
【0023】
締め付け部9は、円筒状の部材であり、内部には、雌ねじ部12が設けられる。雌ねじ部12は、雄ねじ部11と螺合可能である。したがって、図2に示すように、管継手1が組み立てられた状態では、締め付け部9a、9bが本体3の両端に取り付けられる。管継手1の内部には、パッキン5a、5b、チャックリング7a、7bがそれぞれ収まる。管体である波付き管13a、13bは、管継手1の両端の締め付け部9a、9bおよび内部のチャックリング7a、7b内に挿入されて接続される。
【0024】
次に、管継手1の内部構造および管継手1による波付き管13の接続構造について説明する。図3は、組み立てられた状態の管継手1の断面図である。
【0025】
円筒状の本体3の内部には、本体3の軸方向のほぼ中央に突き当て部23が設けられる。突き当て部23は、本体3の内径が縮径された部位である。管継手1に波付き管13が挿入された際には、波付き管13の端部は、突き当て部に突き当たる。すなわち、管継手1の内径は、接続する波付き管13の外径よりも小さく、突き当て部23の内径は波付き管13の外形よりも小さい。また、波付き管13の内径よりも突き当て部23の内径が大きければ、内部に電線等を挿入する際に電線等が突き当て部23に引っ掛かることがないため望ましい。
【0026】
突き当て部23の両側には、パッキン5a、5bがそれぞれ設けられる。パッキン5は、突き当て部23に対して、あらかじめ接着剤等によって接着されて固定される。この場合、例えばパッキン5の片面にあらかじめ両面テープを貼り付けておき、突き当て部23と接着してもよい。パッキン5の外径は突き当て部23の内径よりも十分大きいため、パッキン5は突き当て部23を超えて押し込まれることはない。
【0027】
本体3の両端部には波付き管13の保持部であるチャックリング7a、7bがセットされる。チャックリング7の一方の端部には複数の切れ目があり、チャックリング7の先端部には複数の保持爪15が内周方向に向けて設けられる。保持爪15は、チャックリング7の先端側から波付き管13を挿入する際には、波付き管13の挿入に抵抗となり難いようなテーパ形状を有し、波付き管13を抜き去る際には波付き管13に引っ掛かるような爪形状を有する。
【0028】
チャックリング7の保持爪15が設けられた側とは他方の端部には、外周に突起21が設けられる。突起21は締め付け部9によって押さえつけられる部位である。
【0029】
締め付け部9は、本体3の雄ねじ部11と締め付け部9の雌ねじ部12とで接合される。締め付け部9の内部にはリブ19が内周方向に設けられる。リブ19は、締め付け部9を本体3へ締めこんで接合した際に、チャックリング7の突起21と噛み合って、チャックリング7を本体3方向に押さえつける。
【0030】
締め付け部9のリブ19と先端部との間には、チャックリング7との間にギャップ17が形成される。締め付け部9を本体3へ完全に締めこんだ状態では、チャックリング7の先端の外周は、締め付け部9の先端内面によって押さえられるため、保持爪15の外周方向への変形が抑制される。したがって、保持爪15は確実に波付き管13を保持する。一方、締め付け部9を緩めると、保持爪15の外周には、ギャップ17が位置するため、保持爪15は容易に外周方向に変形可能となり、波付き管13を取り外すことが可能となる。
【0031】
図4は、管継手1に波付き管13a、13bを挿入した状態を示す図である。波付き管13aが管継手1に挿入される(図中矢印A方向)。波付き管13aを挿入する際には、保持爪15のテーパ形状によって、波付き管13aは保持爪15に引っ掛かることなく挿入可能である。
【0032】
波付き管13bは、管継手1に完全に挿入されて保持された状態である。この状態においては、波付き管13bの先端でパッキン5bが押しつぶされる。パッキン5bは極めて大きな変形量を有するため、波付き管13bの先端形状に追従することができ、確実に止水をすることができる。この状態においては、波付き管13bの谷部25全周にわたり保持爪15が引っ掛かり、波付き管13bは管継手1から抜けることはない。
【0033】
以上説明したように、第1の実施の形態にかかる管継手1によれば、防水性を確保しつつ波付き管13同士を容易に接続することができる。また、パッキン5は水膨張性を有し、極めて大きな変形が可能であるため、確実に防水性を得ることができる。特に、波付き管13を接続現場で切断した際であって、切断面に大きな凹凸がある場合であっても、パッキン5が凹凸に追従可能であるため、高い防水性を確保することができる。
【0034】
パッキン5は突き当て部23に設けられ、波付き管13は、波付き管13の端部でパッキン5と接触し、パッキン5が押し付けられて変形する。このため、波付き管13の外周の凹凸形状によらず確実に防水性を得ることができる。さらに、波付き管13の外形が変形し、波付き管13の真円度が悪くなった場合であっても確実に防水することができる。
【0035】
特に、特許文献1や特許文献2のように、波付き管13の外周と本体3の内周面との間に止水部材等が設けられないため、波付き管13の挿入の際に止水部材等により波付き管13の挿入性に影響がなく、容易に管継手1に波付き管13を挿入することができる。また、波付き管13の挿入時に、止水部材が本体3内周面に対して摺動して、止水部材がめくれ上がったり、破損したりすることがない。
【0036】
また、管継手1には、複数の保持爪15が設けられ、波付き管13を挿入する際には、ワンタッチで挿入が可能であり、波付き管13は、管継手1へ挿入後には確実に管継手1に接合される。したがって、都度パッキン等を波付き管13へ取り付けることなく、極めて容易に一対の波付き管13同士を接合することができる。
【0037】
次に、第2の実施の形態にかかる管継手30について説明する。以下の実施の形態において、図1〜図4に示す管継手1と同一の機能を果たす構成要素には、図1〜図4と同一番号を付し、重複した説明を避ける。第2の実施の形態にかかる管継手30は管継手1とほぼ同様の構成であるが、次の点で異なる。すなわち、管継手30は管継手1に対して、一方の端部に雄ねじ部31およびフランジ33が設けられる点で異なる。
【0038】
図5は、管継手30の分解斜視図であり、図6は、管継手30の組み立て斜視図である。管継手30は、主に、本体3a、パッキン5、チャックリング7、締め付け部9、ナット35等から構成される。
【0039】
本体3aは筒状部材であり、一方の端部に、締め付け部9と接合可能な雄ねじ部11を有する。本体3aの他方の端部近傍には、外周方向に張り出したフランジ33が全周にわたって設けられる。本体3aの端部は、雄ねじ部31が設けられる。雄ねじ部31は、ナット35と螺合可能である。
【0040】
キャップ37は、雄ねじ部31の内部に挿入可能であり、雄ねじ部31の内部に、水分や誇り等が浸入することを防ぐ。
【0041】
図6に示すように、波付き管13は、締め付け部9およびチャックリング7へ挿入される。また、他方の雄ねじ部31は、配線ボックスやスイッチボックスなどの周辺部材の壁体39に挿入され、壁体39の反対側よりナット35で固定される。したがって、波付き管13が壁体39に接続される。
【0042】
図7は、組み立てられた状態の管継手30の断面図である。本体3aのフランジ33近傍の内面には、突き当て部23が設けられる。突き当て部23の締め付け部9側には、パッキン5が設けられる。
【0043】
壁体39には、あらかじめ雄ねじ部31が挿入可能な孔が設けられる。孔の径は、フランジ33よりも小さいため、管継手30は、壁体39とフランジ33で接触する。壁体39の反対面側からは、ナット35が雄ねじ部31と接合される。したがって、管継手30は、壁体39にナット35及びフランジ33で挟み込まれて固定される。雄ねじ部31の内部には、キャップ37が設けられる。キャップ37は、管継手30に電線等が挿入される際には撤去される。
【0044】
なお、管継手30に挿入される波付き管13の内径よりも、雄ねじ部31の内径が大きければ、内部に電線等を挿入する際に電線等が雄ねじ部31内部に引っ掛かることがないため望ましい。また、壁体39とフランジ33との間に、パッキン等の止水部材を設ければ、より確実に防水性を確保することができる。
【0045】
図8は、管継手30に波付き管13を挿入した状態を示す図である。波付き管13が完全に管継手30に挿入されると、波付き管13の端部でパッキン5が押しつぶされる。この際、波付き管13は、保持爪15によって保持される。
【0046】
第2の実施の形態にかかる管継手30によれば、第1の実施の形態にかかる管継手1と同様の効果を得ることができる。また、波付き管13の防水性を確保しつつ、容易に、周辺部材である配線ボックスやスイッチボックス等へ接続することができる。
【実施例】
【0047】
本願発明にかかる管継手1と、従来の管継手40、50との防水性能を比較した。図9は、従来の管継手40を示し、図10は従来の管継手50を示す図である。
【0048】
管継手40は、鋼管等の金属管49a、49bを接続する管継手である。管継手40内には、内径が縮径された突き当て部43が設けられる。突き当て部43の両側の内周面には、溝45a、45bが周方向に設けられる。溝45a、45bにはそれぞれパッキン41a、41bが設けられる。パッキン41a、41bは、T字状断面を有し、管継手40内面に一部が突出している。
【0049】
管継手40の両側より金属管49a、49bを挿入し、それぞれ突き当て部43まで挿入すると、金属管49a、49bの外周面はパッキン41a、41bと接触して防水される。金属管49a、49bはボルト47によって固定され、金属管49a、49bが管継手40に固定される。
【0050】
一方、管継手50は、波付き管57a、57b同士を接続する管継手である。管継手50内には、内径が縮径された突き当て部53が設けられる。挿入される波付き管57a、57bの端部近傍には、あらかじめOリング51a、51bが設けられる。
【0051】
管継手50の両側より波付き管57a、57bを挿入し、それぞれ突き当て部53まで挿入すると、波付き管57a、57bの外周面はOリング51a、51bによって防水される。波付き管57a、57bは、図示を省略した抑え部材を締め付け穴55でボルト等により締め付けることで固定され、波付き管57a、57bが管継手40に固定される。
【0052】
次に、防水試験方法について説明する。防水試験は、JIS C0920:2003の「電気機械器具の外郭による保護等級」に準じて行った。
【0053】
JIS C0920:2003により規定される電気機械器具の外郭による保護等級(以下単に「IPコード」と称する)は、防水性能を示す試験として、IPX0〜IPX8まで規定されている。たとえば、IPX5(噴流試験)は、試験体の全周に対して、ノズル径6.3mmの放水ノズルを用いて、距離2.5〜3mの位置から毎分12.5Lの水を放水し、外郭の表面積1m当たり1分(最低3分)後の水の浸入を確認するものである。
【0054】
また、同様にIPX6(暴噴流試験)は、試験体の全周に対して、ノズル径12.5mmの放水ノズルを用いて、距離2.5〜3mの位置から毎分100Lの水を放水し、外郭の表面積1m当たり1分(最低3分)後の水の浸入を確認するものである。
【0055】
IPコードは数値が大きいほど厳しい試験であるため、より数値の大きなIPコードを有する管継手(より数値の大きなIPX試験を合格した管継手)がより高い防水性を有するといえる。今回は、JIS C0920:2003で規定されるIPX5〜7の試験を各管継手において実施した。
【0056】
図11は、一例としてIPX7(一時的潜水試験)に相当する防水試験装置60を示す図である。防水試験装置60は、水槽65、錘板67、水71等から構成される。試験方法は以下のとおりである。
【0057】
まず、水槽65の内部に錘板67を設置する。錘板67にはあらかじめ針金69が設置される。試験体(管継手1、40、50)を針金69で錘板67に水に浮かびあがらないように固定する。試験体61に接続された管体63a、63b(波付き管13a、13b、金属管49a、49b、波付き管57a、57b)を水槽65の上方に伸ばし、管体63a、63bの端部を水槽65から出す。この状態で、水槽65に深さBが1mとなるように水71を投入し、30分間の防水試験を行った。試験後に試験体61を取り出し、内部への水の浸入を確認した。各試験結果は表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
本発明にかかる管継手1は、IPX7試験においても水の侵入がなく、極めて高い防水性能であることがわかる。
【0060】
一方、管継手40は、IPX7試験において水の侵入が確認された。これは、金属管49a、49bの挿入時に、パッキン41a、41bと金属管49a、49bとの摺動によって、パッキン41a、41bが完全に金属管49a、49bへ密着されず、または、金属管49a、49bの固定時に、金属管49a、49bが管継手40の中心からずれてしまい、パッキン41a、41bの密着性が不均一となったため、防水性能が落ちたものと考えられる。
【0061】
また、管継手50は、IPX6試験においても水の侵入が確認された。これは、波付き管57a、57bの挿入時に、Oリング51a、51bがずれてしまい、Oリング51a、51bと波付き管57a、57bとの密着性が悪くなったか、または、波付き管57a、57bの外形の変形によって、Oリング51a、51bと波付き管57a、57bとの密着性が不均一になったことが原因と考えられる。
【0062】
本発明による管継手1は、管体が波付き管であっても、確実に防水することができ、極めて高い防水性を有することがわかる。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば、管継手1は、保持爪15に代えてボルト等によれば、金属管等の接続にも使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、30、40、50………管継手
3、3a………本体
5………パッキン
7………チャックリング
9………締め付け部
11………雄ねじ部
12………雌ねじ部
13………波付き管
15………保持爪
17………ギャップ
19………リブ
21………突起
23………突き当て部
25………谷部
31………雄ねじ部
33………フランジ
35………ナット
37………キャップ
39………壁体
41a、41b………パッキン
43………突き当て部
45a、45b………溝
47………ボルト
49a、49b………金属管
51a、51b………Oリング
53………突き当て部
55………締め付け部
57a、57b………波付き管
60………防水試験装置
61………試験体
63a、63b………管体
65………水槽
67………錘板
69………針金
71………水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、内径が縮径された突き当て部と、
前記突き当て部に設けられた水膨張性の止水部材と、
前記本体部に取り付けられ、独立波を有する波付き管を保持する保持部と、
を具備し、
前記止水部材は、リング状のウレタンフォームあるいはゴムパッキンにウレタンフォームあるいは吸水性不織布を重ねてリング状に構成したものであり、
前記保持部は、
前記保持部の端部近傍の内周に沿って、前記波付き管の谷部を保持する複数の爪部と、前記爪部を内周方向に締め付ける締め付け部と、を有し、
前記保持部の一方の端部には、円筒軸方向に複数の切れ目が設けられて、先端部の内面に前記爪部が設けられ、
前記締め付け部を前記本体部へ完全に締め込んだ状態で前記保持部の先端側から前記波付き管を挿入する際には、前記爪部は、前記保持部の内面に突出するとともに前記波付き管の挿入に抵抗となり難いようにテーパ形状を有し、前記波付き管を抜き去る際には前記波付き管に引っ掛かるような爪形状であり、
前記締め付け部と前記爪部の外周面との間の一部にはギャップが形成され、前記締め付け部が前記本体部へ完全に締めこまれた状態では、前記爪部の外周は、前記締め付け部の先端内面によって押さえられて、前記波付き管を挿入可能であるとともに前記波付管を保持することが可能であり、前記締め付け部が緩められると、前記爪部の外周には前記ギャップが位置し、前記爪部が外周方向に変形可能となって挿入された前記波付き管の取り外し状態となることを特徴とする管継手。
【請求項2】
請求項1記載の管継手に波付き管が挿入され、
前記締め付け部を前記本体部へ完全に締め込んだ状態で、前記爪部の先端が前記保持部の内周側に波付き管の外周側山部の径よりも小さくなる程度に突出し、前記波付き管が挿入される際には、前記爪部の先端の突出を前記波付き管の外周側山部の径よりも小さくなる程度に保つことが可能であり、
前記波付き管の端部が前記突き当て部に設けられた前記水膨張性の止水部材に押し付けられ、
前記波付き管によって前記水膨張性の止水部材が押しつぶされた状態で、前記波付き管と前記管継手とが接続されることを特徴とする管接続構造。
【請求項3】
前記保持部の前記爪部が設けられた側とは他方の端部には、外周に突起が設けられ、
前記締め付け部の内部にはリブが内周方向に設けられ、
前記締め付け部を前記本体部へ完全に締め込んだ状態で、前記リブは、前記突起と噛み合って、前記突起が前記本体部の方向に前記締め付け部によって押さえつけられることを特徴とする請求項2に記載の管接続構造。
【請求項4】
請求項1記載の管継手を用いた管接続方法であって、
前記締め付け部を前記本体部へ完全に締め込み、挿入対象の波付き管の外周側山部の径よりも小さくなる程度に、前記爪部の先端を前記保持部の内周側に突出させた状態で、前記波付き管を前記保持部に挿入し、
前記波付き管を完全に挿入した状態で、前記爪部によって前記波付き管を保持することを特徴とする管接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−154488(P2012−154488A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88146(P2012−88146)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2008−128356(P2008−128356)の分割
【原出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(501314396)古河樹脂加工株式会社 (26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】