説明

管継手およびそれを用いた管継手施工方法

【課題】管体に対して何等の加工を施す必要がなく、二つの管体を容易に且つ速やかに接続することが出来る、新規な構造の管継手およびそれを用いた管継手施工方法を提供することを、目的とする。
【解決手段】二本の管体14a,14bにおける各一方の開口端部の突き合わせ部分に対して環状シール部材18を外周面から密着させてシールした。また、環状シール部材18の軸方向両側において、それぞれ、管体14a,14bの外周面に対して当接係止されることにより管体14a,14bの突き合わせ方向と反対側への移動を阻止しつつ管体14a,14bの突き合わせ方向への移動を許容するワンウェイロック部材32を設けた。更に、ワンウェイロック部材32を管体14a,14bに向けて付勢して管体14a,14bへの当接係止状態に保持する付勢手段38を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や上下水道等の配管に用いられる管継手および管継手施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学プラントやその他の多くの工場および上下水道等においては、流体の性状を有する原料や生成体の他、媒体や動力源、上水、下水等の各種流体を流通させる流路を形成するために、配管構造体が利用されている。配管構造体は、製造上や施工上、或いは、管理上の理由によって所定長さの管体を複数本接続することにより、所望の流路を形成している。
【0003】
ところで、このような配管構造体における管体の接続では、一般に、フランジを利用したボルト締結による管継手が採用されている。即ち、相互に接続する二本の管体の各開口端部にそれぞれフランジを形成し、各管体の開口端部を突き合わせてフランジ同士を周上の複数箇所において締付ボルトで締付固定することによって管体を接続している。
【0004】
しかしながら、このような管継手においては、フランジを管体の開口端部に溶接する必要があった。加えて、二つの管体のフランジ同士を、周上で複数のボルトで固定して接続することが必要とされる。そのために、管体の接続に際して多くの労力と時間が必要とされるという問題があった。
【0005】
なお、特開2002−340258号公報(特許文献1)には、管体へのフランジ溶接の必要がなく、しかも周上での複数本のボルト固定を不要にした管継手が提案されている。
【0006】
ところが、特許文献1に記載の管継手では、金属管に押圧係止力を及ぼす複数の鋼球が必要であり、構造が複雑で製造コストも高い。しかも、管体に外挿されるネジスリーブを締め付けることによって、その締付力を、鋼球を介して管体に固定力として及ぼすものであることから、管径が大きくなるとネジスリーブが大型化して管継手が非常に大型化してしまうと共に、ネジスリーブの締付作業が困難になるという問題もある。それ故、特許文献1に記載の管継手は、管体を容易に且つ速やかに接続するという上述の課題に関して、有効な解決策を与えるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−340258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、管体に対して何等の加工を施す必要がなく、二つの管体を容易に且つ速やかに接続することが出来る、新規な構造の管継手およびそれを用いた管継手施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
本発明は、二本の管体における各一方の開口端部を突き合わせ状態で相互に流体密に接続して連通させる管継手において、前記二本の管体における前記各一方の開口端部の突き合わせ部分に対して環状シール部材を外周面から密着させてシールする一方、該環状シール部材の軸方向両側において、それぞれ、該管体の外周面に対して当接係止されることにより該管体の突き合わせ方向と反対側への移動を阻止しつつ該管体の突き合わせ方向への移動を許容するワンウェイロック部材を設けると共に、該ワンウェイロック部材を該管体に向けて付勢して該管体への当接係止状態に保持する付勢手段を設けたことを、特徴とする。
【0011】
このような本発明に従う構造とされた管継手においては、管体の突き合わせ方向とは反対側への移動、即ち管体の引抜方向への移動が、ワンウェイロック部材の管体外周面への当接係止作用に基づいて阻止される。特に、ワンウェイロック部材は、付勢手段で管体外周面への当接係止状態に保持されることから、管体の引抜方向への移動阻止効果が安定して発揮される。
【0012】
しかも、本発明では、二本の管体の接続部における流体密性が、両管体の固定力を利用しない環状シール部材で確保される。それ故、二本の管体の接続部におけるシール性を充分に確保しつつ、ワンウェイロック部材で、二本の管体を簡単な操作で接続することが可能となる。要するに、本発明は、ワンウェイロック部材を採用しただけでなく、それを環状シール部材と組み合わせて採用したことで、そのような特別な技術的効果を達成し得たのである。
【0013】
また、本発明では、前記二本の管体の接続側の各開口端部が軸方向両側から差し入れられる環状の継手ハウジングを用い、該継手ハウジングに設けられた支軸回りでの揺動変位によって該管体の外周面に対して当接及び離隔変位されるロック用カムを設けて、該ロック用カムによって前記ワンウェイロック部材を構成すると共に、該ロック用カムの支軸を該管体の外周側で該管体の接線と平行にし、且つ該支軸から該管体の突き合わせ側開口端部に向かって該ロック用カムを延び出させて、該支軸よりも該管体の突き合わせ側開口端部側で該ロック用カムを該管体の外周面に対して当接係止させた態様が、好適に採用される。
【0014】
本態様では、管体を引抜方向へ移動させる際に、ロック用カムと管体との間で発生する摩擦力が、ロック用カムに対して、支軸回りの回転モーメントとして作用する。このロック用カムを支軸回りに揺動させる力を利用して、ロック用カムを管体に係止させることが出来る。
【0015】
一方、管体を差込方向へ移動させる際には、ロック用カムと管体との間で発生する摩擦力が、ロック用カムに対して、反対向きの回転モーメントとして作用する。それ故、ロック用カムは、付勢手段の付勢力に抗して管体から離隔する方向へ揺動されて、管体の差込方向への移動が許容され得る。
【0016】
また、本発明では、前記二本の管体の接続側の各開口端部が軸方向両側から差し入れられる環状の継手ハウジングを用い、該継手ハウジングに対して少なくとも一方の該管体を仮固定する仮固定手段を設けた態様が、好適に採用される。
【0017】
本態様では、一方の管体の継手ハウジングへの差し込み量だけを予め決定しておくことで、二本の管体の突き合わせ部を、環状シール部材に対して容易に位置合わせ出来る。即ち、一方の管体を継手ハウジングに所定量だけ差し込んで仮固定手段で仮固定した後、該一方の管体に当接するまで他方の管体を継手ハウジングに差し込めば良く、該他方の管体の適正差込量を知らなくても良い。
【0018】
また、本発明では、前記付勢手段による前記ワンウェイロック部材の前記管体への当接係止状態を解除して、その解除状態を維持する解除状態維持手段を設けた態様が、好適に採用される。
【0019】
本態様では、解除状態維持手段により、ワンウェイロック部材を管体に対する非係止状態に保持し続けることが出来る。それ故、管体の撤去や交換、点検等に際して、継手ハウジングから管体を容易に引き抜くことが可能となる。
【0020】
一方、本発明に従う管継手施工方法の特徴とするところは、上述の本発明に従う構造とされた管継手を用いた管継手施工方法であって、(a)継続的に使用される継続使用管体に対して、交換対象となる被交換管体を決定する交換管体決定工程と、(b)前記被交換管体と差し替えられる交換用管体と、前記継続使用管体との何れか一方に対して前記管継手を外挿する管継手外挿工程と、(c)前記継続使用管体と前記交換用管体の各一方の開口端部を突き合わせる交換用管体配置工程と、(d)前記管継手を前記交換用管体と前記継続使用管体の何れか他方の側へスライド変位させて、該交換用管体の開口端部と該継続使用管体の開口端部の突き合わせ部分に対して前記環状シール部材を外挿配置し、該環状シール部材の軸方向一方の側で該交換用管体の外周面に前記ワンウェイロック部材を当接係止させると共に、該環状シール部材の軸方向他方の側で該継続使用管体の外周面に前記ワンウェイロック部材を当接係止させる管体ロック工程とを、含む管継手施工方法にある。
【0021】
本発明方法に従えば、流路の中間部分を形成する管体であっても、その交換を容易に且つ速やかに実施できる。
【0022】
また、本発明方法では、前記交換管体決定工程が、特定の管体の軸方向中間部分を切断して切断後の該管体の一方を前記被交換管体とするものであっても良い。これにより、例えば、管体の一部が腐蝕した場合に、その腐蝕部分を切断して、残りの部分をそのまま使用し続けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態としての管継手による管体の接続構造を示す縦断面図。
【図2】図1におけるII−II断面図。
【図3】図1に示されたロック用カムの係止解除状態を拡大して示す縦断面図。
【図4】図3におけるIV−IV断面図。
【図5】本発明方法を説明するための縦断面図。
【図6】管継手外挿工程を説明するための管路の正面概略図。
【図7】交換管体決定工程を説明するための管路の正面概略図。
【図8】交換用管体配置工程を説明するための管路の正面概略図。
【図9】管体ロック工程を説明するための管路の縦断面図。
【図10】交換管体決定工程を説明するための管路の正面概略図。
【図11】管継手外挿工程を説明するための管路の正面概略図。
【図12】交換用管体配置工程を説明するための管路の正面概略図。
【図13】管体ロック工程を説明するための管路の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0025】
図1及び図2には、本発明の一実施形態としての管継手10を備えた配管構造体としての管路が示されている。管継手10は、環状の継手ハウジング12を備えている。そして、この継手ハウジング12に二本の管体14a,14bが軸方向両側から差し入れられて接続されることによって管路が構成されている。
【0026】
より詳細には、継手ハウジング12は、円筒形状を有しており、軸方向両端部には径方向内方に向かって突出する円環板形状の両壁部13,13が一体形成されている。これにより、継手ハウジング12には、内周面に開口する環状凹所16が全周で連続して形成されている。なお、継手ハウジング12は、両壁部13,13を含めて、金属や合成樹脂等の硬質材で形成されている。
【0027】
さらに、環状凹所16の開口部分には、略円筒形状の環状シール部材18が略同一中心軸上に配設されている。この環状シール部材18は、弾性変形可能で且つ管体14a,14b内を流動する流体に対する不透過性や耐久性等を考慮した材料によって形成されている。
【0028】
特に本実施形態では、環状シール部材18の軸方向両端部分において、径方向外方へ向かって突出する環状シール片20,20が全周に亘って一体形成されている。そして、これら一対の環状シール片20,20は、軸方向外側の面が、それぞれ、環状凹所16の内面を構成する両壁部13,13に密着されている。なお、継手ハウジング12への組み付けによる当接反力以外には環状シール部材18に特別な外力が及ぼされていない状態でも、環状シール片20,20が両壁部13,13に押し付けられていることが望ましい。これにより、環状凹所16の開口部が覆蓋されて、環状凹所16が作用空気室22とされている。
【0029】
また、環状凹所16の軸方向両側の開口周縁部には、それぞれ、軸方向外方へ延び出す円筒形状の延出片24が一体形成されている。各延出片24には、複数の開口窓26が周方向に適当な間隔で形成されている。開口窓26は、延出片24を貫通して、軸方向に所定長さで延びるスリット状の長孔とされている。
【0030】
各開口窓26の周方向両縁部には、延出片24の外周面に突出する一対の支持壁28,28が形成されている。これら一対の支持壁28,28の間に掛け渡されて、支軸30が配設されている。即ち、この支軸30は、開口窓26に対して延出片24の外周側に離隔して、延出片24の接線方向に延びている。しかも、この支軸30は、開口窓26上において、延出片24の軸方向延出端側に偏倚して位置している。
【0031】
そして、この支軸30に対して、ワンウェイロック部材としてのロック用カム32が装着されている。ロック用カム32は、板カムであり、略水滴形の平面形状を有している。その小幅端部側(水滴形の先端部側)には、板厚方向に貫通する支持孔34が形成されている。この支持孔34に支軸30が挿通されることにより、ロック用カム32が、支軸30回りで揺動可能に組み付けられている。また、支軸30回りでの揺動に伴い、ロック用カム32の大幅端部側(水滴形の下端部側)が、開口窓26から延出片24の内周側に突出するようになっている。
【0032】
この開口窓26から突出するロック用カム32の大幅端部側の側周面には、鋸歯様の多数の係止歯35が形成されている。これら係止歯35は、開口窓26から内方に突出して、管体14a,14bの外周面に当接するようになっている。各係止歯35は、ロック用カム32の側面視において尖鋭形状とされている。より好適には、各係止歯35が、支軸30と反対側に向かって傾斜して突出している。即ち、ロック用カム32の外周面において、各係止歯35は、突出先端部に行くに連れて小幅端部側から大幅端部側に向かって傾斜して突出している。これにより、管体14a,14bの表面に当接することにより、後述するとおり、管体14a,14bに対してワンウェイのロック機能を発揮するようになっている。
【0033】
また、ロック用カム32には、支軸30回りで揺動変位する位置で、且つ開口窓26に入り込まない部分において、板厚方向に貫通するピン孔36が形成されている。即ち、ピン孔36は、ロック用カム32において、開口窓26から内方に突出する部分とは揺動方向で略反対側に位置している。
【0034】
また、ロック用カム32の揺動方向外方には、付勢手段としての板ばね38が設けられている。板ばね38は、ばね鋼等で形成されており、全体として長手板形状を呈している。このような板ばね38は、一対の支持壁28,28を開口窓26よりも軸方向内方側(延出片24の基端側)で連結する連結壁40において、その長手方向一端が支持された状態で配設される。これにより、ロック用カム32は、板ばね38の付勢力に抗して、開口窓26から出る方向へ揺動変位することとなる。
【0035】
更にまた、各延出片24には、複数のネジ孔42が周方向に適当な間隔で形成されている。そして、これら複数のネジ孔42には、それぞれ、仮固定手段としての位置決めボルト44が螺着されている。
【0036】
このような構造とされた継手ハウジング12に対して、二本の管体14a,14bが軸方向両側から差し入れられる。二本の管体14a,14bは、それぞれ、略一定の内外径寸法で延びており、本実施形態では、鋼管や鋳鉄管等の金属管体が採用されている。
【0037】
また、二本の管体14a,14bが継手ハウジング12に対して軸方向両側から差し入れられた状態で、二本の管体14a,14bの突き合わせ部分は、環状シール部材18の内周側に位置している。この状態で、作用空気室22に給排手段としての圧力給排装置46から空気が送り込まれると、作用空気室22の圧力が上昇して、環状シール部材18が二本の管体14a,14bの突き合わせ部分に対して外周面から密着される。また、環状シール片20,20が、継手ハウジング12に形成された環状凹所16の内面に密着されて作用空気室22の密封性が確保される。
【0038】
なお、圧力給排装置46による圧力空気の供給に先立って、先ず、三方切換弁54を切り換えて、空気圧源48を作用空気室22に接続する。三方切換弁54は、圧力給排装置46が備える空気圧源48と環状凹所16の底壁に設けられた給排用金具50とを接続する空気圧管路52上に配設されている。これにより、作用空気室22に所定圧力の空気を充填し、作用空気室22内が目的とする圧力になったことを確認する。この圧力確認は、空気圧管路52上に配設された圧力センサ56で確認できる。三方切換弁54を切り換えた後は、作用空気室22が密閉状態に保持されて圧力保持される。また、作用空気室22からの圧力空気の排出は、三方切換弁54を切り換えて、作用空気室22を大気中に接続することで為される。
【0039】
更にまた、上述の如く二本の管体14a,14bが継手ハウジング12に差し入れられた状態下、ロック用カム32は、開口窓26に入り込んだ状態で、延出片24の基端側へ延び出しており、支軸30よりも延出片24の基端側で管体14a,14bの外周面に当接係止されている。この状態で、ロック用カム32は板ばね38を揺動方向外方へ押している。これにより、板ばね38の付勢力がロック用カム32に及ぼされて、ロック用カム32の管体14a,14bへの当接係止状態が保持される。
【0040】
続いて、上述の如き管継手10を用いた管継手施工方法について、説明する。先ず、一方の管体14aの管継手10への差込量を予め測定して、外周面に罫書き等で目印を付ける。このように目印が付けられた一方の管体14aを、軸方向一方の側から所定の差込量だけ差し込む。
【0041】
その際、ロック用カム32は、板ばね38の付勢力に抗して、一方の管体14aから離隔する方向へ揺動する。この揺動駆動力は、一方の管体14aとの間で発生する摩擦力が、ロック用カム32を支軸30回りに一方の管体14aから離隔させる方向へ揺動させるモーメントとして作用することで発揮される。これにより、ロック用カム32の一方の管体14aへの当接係止状態が、板ばね38の付勢力に基づいて、保持される。
【0042】
また、ロック用カム32が当接係止された状態で一方の管体14aを引き抜こうとすると、ロック用カム32の係止歯35が、一方の管体14aの外周面に対して更に食い込む。即ち、管体14aがロック用カム32に及ぼす摩擦力に基づく回転モーメントの作用で、ロック用カム32による管体14aの係止力が発揮される。従って、ロック用カム32が一方の管体14aに当接係止された状態では、一方の管体14aの引抜方向への移動が阻止される。
【0043】
なお、一方の管体14aを差し込み過ぎた場合には、図3及び図4に示されているように、ロック用カム32に形成されたピン孔36に解除ピン58を差し込んで、解除ピン58を一対の支持壁28,28のそれぞれの突出端面に係止させることにより、ロック用カム32を一方の管体14aから離隔させて、ロック用カム32の一方の管体14aへの当接係止状態を解除する。これにより、一方の管体14aの引抜方向への移動が許容される。その結果、一方の管体14aを引抜方向へ移動させながら、一方の管体14aの差込量を調整することが出来る。このことから明らかなように、本実施形態では、ロック用カム32に形成されたピン孔36と、ピン孔36に挿通される解除ピン58と、解除ピン58が係止される一対の支持壁28,28によって、解除状態維持手段が構成されている。
【0044】
そして、一方の管体14aが所定の差込量だけ差し込まれた状態で、位置決めボルト44を締め付けて、位置決めボルト44の先端を一方の管体14aの外周面に押し当てる。これにより、一方の管体14aの差込方向への移動も阻止して、一方の管体14aを管継手10に仮固定する。
【0045】
また、このように一方の管体14aが仮固定された管継手10に対して、軸方向他方の側から他方の管体14bを差し込む。その際、ロック用カム32は、一方の管体14aに当接係止されたロック用カム32と同様に、板ばね38の付勢力に抗して、他方の管体14bから離隔する方向へ揺動する。これにより、ロック用カム32の他方の管体14bへの当接係止状態も、板ばね38の付勢力に基づいて保持される。また、他方の管体14bの引抜方向への移動も、一方の管体14aがロック用カム32の当接係止作用で引抜方向への移動が阻止されるのと同様に、ロック用カム32の当接係止作用に基づいて阻止される。なお、他方の管体14bの差し込みは、一方の管体14aに当接するまで行われても良いし、予め測定しておいた寸法だけ行われても良い。
【0046】
その後、作用空気室22へ空気を送り込んで、環状シール部材18を二本の管体14a,14bの突き合わせ部分に対して外周面から密着させる。これにより、二本の管体14a,14bが、各一方の開口端部を突き合わせた状態で相互に流体密に接続される。
【0047】
また、上述の如き管継手10を用いれば、図5に示されているように、軸方向両端が管継手10a,10bによって継続使用管体14c,14dに接続された被交換管体14eを交換用管体14fと差し替えることが出来る。なお、後述する図6乃至8では、管継手10a,10bの詳細な構造の図示は省略してある。
【0048】
先ず、被交換管体14eの軸方向両端に外挿されている管継手10a,10bの全てのロック用カム32を管体14c,14d,14eへの当接係止状態から解除する。また、継続使用管体14cと被交換管体14eの突き合わせ部分に外挿されている管継手10aに設けられた作用空気室22aに充填されている空気を抜く。これにより、継続使用管体14cと被交換管体14eの突き合わせ部分に密着された環状シール部材18aの密着状態を解除する。また、被交換管体14eと継続使用管体14dの突き合わせ部分に外挿されている管継手10bに設けられた作用空気室22bに充填されている空気を抜く。これにより、被交換管体14eと継続使用管体14dの突き合わせ部分に密着された環状シール部材18bの密着状態を解除する。
【0049】
続いて、図6に示されているように、被交換管体14eの軸方向両端に外挿されている管継手10a,10bを、スライド変位させる。即ち、管継手10a,10bを、被交換管体14eの軸方向外方へスライド変位させて、継続使用管体14c,14dだけに外挿された状態にする管継手外挿工程を実施する。その後、図7に示されているように、被交換管体14eを継続使用管体14c,14dの間から移動させる交換管体決定工程を実施する。
【0050】
次に、図8に示されているように、交換用管体14fを継続使用管体14c,14dの間に入れて、開口端部同士を突き合わせる交換用管体配置工程を実施する。この状態から、図9に示されているように、管継手10a,10bを交換用管体14f側へスライド変位させて、管継手10aに設けられた環状シール部材18aを継続使用管体14cと交換用管体14fの突き合わせ部分に位置合わせする。また、管継手10bに設けられた環状シール部材18bを交換用管体14fと継続使用管体14dの突き合わせ部分に位置合わせする。そして、各管継手10a,10bに設けられた全てのロック用カム32から解除ピン58を取り外して、ロック用カム32を管体14c,14d,14fに当接係止させる管体ロック工程を実施する。なお、管継手10a,10bの位置合わせは、交換用管体14fや継続使用管体14c,14dの外周面に罫書き等で目印を付けておき、その目印に合わせることで容易に行うことが出来る。
【0051】
その後、一方の継続使用管体14cと交換用管体14fが軸方向両側から差し込まれた管継手10aの作用空気室22aへ空気を送り込む。これにより、一方の継続使用管体14cと交換用管体14fの突き合わせ部分の外周面に環状シール部材18aを密着させる。また、交換用管体14fと他方の継続使用管体14dが軸方向両側から差し込まれた管継手10bの作用空気室22bへ空気を送り込む。これにより、交換用管体14fと他方の継続使用管体14dの突き合わせ部分の外周面に環状シール部材18bを密着させる。その結果、継続使用管体14c,14dと交換用管体14fが、開口端部同士を突き合わせた状態で相互に流体密に接続される。
【0052】
更にまた、上述の如き管継手10を用いれば、一本の管体14gを丸ごと交換する必要もなくなる。具体的には、例えば、図10に示されているように、管体14gが部分的に腐蝕している場合、先ず、その管体14gを切断する。腐蝕している部分(以下、被交換管体14hと称する)と、腐蝕していない部分(以下、継続使用管体14iと称する)に分離することにより、被交換管体14hを決定する交換管体決定工程を実施するのである。
【0053】
次に、図11に示されているように、継続使用管体14iに管継手10を外挿する管継手外挿工程を実施する。その後、図12に示されているように、継続使用管体14iと交換用管体14jの各一方の開口端部を突き合わせる交換用管体配置工程を実施する。なお、図11及び図12では、管継手10の詳細な構造の図示は省略してある。
【0054】
この状態から、図13に示されているように、管継手10を交換用管体14j側へスライド変位させる。即ち、管継手10に設けられた環状シール部材18を継続使用管体14iと交換用管体14jの突き合わせ部分に位置合わせする。そして、管継手10に設けられた全てのロック用カム32から解除ピン58を取り外す。これにより、ロック用カム32を継続使用管体14iと交換用管体14jに当接係止させる管体ロック工程を実施する。なお、管継手10の位置合わせは、交換用管体14jや継続使用管体14iの外周面に罫書き等で目印を付けておき、その目印に合わせることで容易に行うことが出来る。
【0055】
その後、作用空気室22へ空気を送り込んで、環状シール部材18を継続使用管体14iと交換用管体14jの突き合わせ部分に対して外周面から密着させる。これにより、継続使用管体14iと交換用管体14jが、各一方の開口端部を突き合わせた状態で相互に流体密に接続される。
【0056】
このような構造とされた管継手10においては、ロック用カム32が管体14の外周面に当接係止された状態で、管体14の引抜方向への移動が阻止されている一方、管体14の差込方向への移動が許容されている。これにより、何等の加工も施していない管体14を差し込むだけで、二本の管体14,14を接続することが出来る。その結果、二本の管体14,14を簡単且つ速やかに接続することが可能となる。
【0057】
また、ロック用カム32の管体14への当接係止状態が、板ばね38の付勢力によって保持されているので、目的とする引抜阻止力が安定して発揮される。即ち、重力に対する管体14の向きやロック用カム32の配設位置等によって、ロック用カム32が管体14の外周面から離隔することが防止される。これにより、二本の管体14,14の接続状態の安定化を図ることが可能となる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0059】
例えば、前記実施形態において、環状凹所16内に中空チューブを収容し、中空チューブの内部空間を作用空気室22としても良い。具体的には、例えば特開2005−16722号公報に記載されている如き各種の環状シール部材で構成されたシール構造が採用可能である。
【0060】
また、採用されるロック用カム32の数や配設位置等は、前記実施形態の記載に限定されるものではない。管径が大きい場合や管に作用する力が大きい場合等には、ロック用カムを多く配設することが有効であり、その場合には、周方向に設けるだけでなく、軸方向で異なる位置にロック用カムを設けても良い。
【0061】
さらに、前記実施形態において、板ばね38は延出片24の延出端側で長手方向の一端が係止等によって固定されていても良い。板ばねに代えてコイルスプリング等の公知の付勢手段を採用することが出来る。更にまた、前記実施形態において、ピン孔36に解除ピン58を差し通す際に、板ばね38を取り外すようにしても良い。
【0062】
また、前記実施形態において、交換用管体がストレートな管体の他、エルボ管やT字管等である場合にも、本発明は同様に適用可能である。
【0063】
また、本発明では、溶接等することなく二本の管体を接続することが出来るので、接続される二本の管体は、同じ材料で形成されている必要はない。例えば、塩化ビニル等の合成樹脂材で形成された管体と、アルミニウムや鋳鉄,ステンレス,チタン等の金属材で形成された管体を接続したり、互いに異なる材料で形成された金属製の管体を接続しても良い。
【0064】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
10:管継手,12:継手ハウジング,14:管体,18:環状シール部材,28:支持壁,30:支軸,32:ロック用カム,36:ピン孔,38:板ばね,44:位置決めボルト,58:解除ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の管体における各一方の開口端部を突き合わせ状態で相互に流体密に接続して連通させる管継手において、
前記二本の管体における前記各一方の開口端部の突き合わせ部分に対して環状シール部材を外周面から密着させてシールする一方、該環状シール部材の軸方向両側において、それぞれ、該管体の外周面に対して当接係止されることにより該管体の突き合わせ方向と反対側への移動を阻止しつつ該管体の突き合わせ方向への移動を許容するワンウェイロック部材を設けると共に、該ワンウェイロック部材を該管体に向けて付勢して該管体への当接係止状態に保持する付勢手段を設けたことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記二本の管体の接続側の各開口端部が軸方向両側から差し入れられる環状の継手ハウジングを用い、該継手ハウジングに設けられた支軸回りでの揺動変位によって該管体の外周面に対して当接及び離隔変位されるロック用カムを設けて、該ロック用カムによって前記ワンウェイロック部材を構成すると共に、該ロック用カムの支軸を該管体の外周側で該管体の接線と平行にし、且つ該支軸から該管体の突き合わせ側開口端部に向かって該ロック用カムを延び出させて、該支軸よりも該管体の突き合わせ側開口端部側で該ロック用カムを該管体の外周面に対して当接係止させた請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記二本の管体の接続側の各開口端部が軸方向両側から差し入れられる環状の継手ハウジングを用い、該継手ハウジングに対して少なくとも一方の該管体を仮固定する仮固定手段を設けた請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項4】
前記付勢手段による前記ワンウェイロック部材の前記管体への当接係止状態を解除して、その解除状態を維持する解除状態維持手段を設けた請求項1乃至3の何れか1項に記載の管継手。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の管継手を用いた管継手施工方法において、
継続的に使用される継続使用管体に対して、交換対象となる被交換管体を決定する交換管体決定工程と、
前記被交換管体と差し替えられる交換用管体と、前記継続使用管体との何れか一方に対して前記管継手を外挿する管継手外挿工程と、
前記継続使用管体と前記交換用管体の各一方の開口端部を突き合わせる交換用管体配置工程と、
前記管継手を前記交換用管体と前記継続使用管体の何れか他方の側へスライド変位させて、該交換用管体の開口端部と該継続使用管体の開口端部の突き合わせ部分に対して前記環状シール部材を外挿配置し、該環状シール部材の軸方向一方の側で該交換用管体の外周面に前記ワンウェイロック部材を当接係止させると共に、該環状シール部材の軸方向他方の側で該継続使用管体の外周面に前記ワンウェイロック部材を当接係止させる管体ロック工程と
を、含むことを特徴とする管継手施工方法。
【請求項6】
前記交換管体決定工程が、特定の管体の軸方向中間部分を切断して切断後の該管体の一方を前記被交換管体とする請求項5に記載の管継手施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−223381(P2010−223381A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72898(P2009−72898)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(595086018)
【Fターム(参考)】