説明

管継手および管継手に対するパイプの接続方法

【課題】パイプを簡単に接続することができる管継手を提供する。
【解決手段】継手本体1と、この継手本体1に相対回転自在でかつ軸心方向移動不能に取り付けられた筒状の操作スリーブ2と、この操作スリーブ2の内周に設けられかつパイプPを挿入可能な内周面3aを有する環状のパッキン2とを備えている。パッキン3は、周方向に複数に分割された複数の分割パッキン4からなり、分割パッキン4は、周方向一方側へ向かって厚さが増大している。操作スリーブ2の内周面に、分割パッキン4の外面4aに接触するように周方向一方側へ向かって軸心Cからの距離が大きくなっている傾斜面5が複数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイプを接続する管継手として、パイプを挿入可能な継手本体と、この継手本体とパイプとの間に介在するパッキンと、パッキンの軸心方向隣りに設けられた環状のロックリングと、継手本体の軸端部に形成されたネジ部に螺合するナットとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。この管継手では、ナットを継手本体のネジ部に螺合させていくと、ナットがロックリングを軸心方向に押して移動させ、ロックリングがパッキンを圧縮する。これにより、パッキンはパイプの外周面に密着する。さらに、特許文献1の管継手では、継手本体の内周面に軸心に対して傾斜するテーパ面が設けられており、ロックリングがこのテーパ面に沿って軸心方向に移動することで、当該ロックリングは縮径する。そして、このロックリングがパイプを締め付け、パイプを管継手に接続することができる。
【0003】
【特許文献1】実開平6−40565号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定長さの管路を得るため、パイプを所定の長さに切断し、当該パイプを管継手に接続させる作業が行なわれる。従来の前記管継手にパイプを接続する場合、継手本体のテーパ面に沿ってロックリングを軸心方向に移動させ、当該ロックリングを縮径させている。ロックリングは軸心方向に移動しながらパイプを締め付けているため、当該パイプも軸心方向に移動してしまう。
このように、パイプを管継手に接続する際に、当該パイプが軸心方向に移動してしまうと、前記のとおりパイプを所定の長さに切断していても、前記所定長さの管路の寸法が違ってしまうおそれがある。このために、前記所定の長さに余裕長を持たせてパイプを切断する必要がある等、従来の管継手の場合、パイプの接続作業が難しくなってしまう。
【0005】
本発明は、パイプを簡単に接続することができる新たな技術的手段を備えた管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、パイプを接続する管継手において、内部に流路が形成された継手本体と、この継手本体の軸心回りに相対回転自在でかつ軸心方向移動不能に当該継手本体に取り付けられた筒状の操作スリーブと、この操作スリーブの内周に設けられかつ前記パイプを前記流路と同軸状にして挿入可能な内周面を有する断面環状のパッキンとを備え、前記パッキンは、周方向に複数に分割され、周方向一方側へ向かって厚さが増大している複数の分割パッキンからなり、前記操作スリーブの内周面には、前記分割パッキンの外面に接触するように周方向一方側へ向かって前記軸心からの距離が大きくなっている傾斜面が複数形成され、前記操作スリーブを周方向一方側へ回転させると、前記傾斜面が前記分割パッキンの前記外面を径方向内側へ押し、前記複数の分割パッキンを縮径させる。
【0007】
この管継手によれば、操作スリーブの内周に設けられている断面環状のパッキンに、パイプを挿入することができる。そして、パッキンは周方向に分割され、分割パッキンは周方向一方側へ向かって厚さが増大しており、操作スリーブの傾斜面は周方向一方側へ向かって軸心からの距離が大きくなっている形状であるため、操作スリーブを周方向一方側へ回転させると、傾斜面が分割パッキンの外面を周方向に押すとともに径方向内側へも押し、複数の分割パッキンを縮径させる。これにより、複数の分割パッキンによってパイプは径方向内方へ締め付けられ、パイプを管継手に簡単に接続することができる。
【0008】
また、前記管継手は、前記操作スリーブを周方向一方側へ回転させ前記複数の分割パッキンを縮径させた周方向所定位置にある当該操作スリーブを、周方向他方側へ相対回転不能とする拘束部を更に備えているのが好ましい。この構成によれば、前記周方向所定位置にある操作スリーブを、周方向他方側へ相対回転不能とすることで、前記複数の分割パッキンによってパイプが締め付けられた状態が維持される。
【0009】
また、前記管継手は、前記継手本体に装着されて使用されるアタッチメント部材と、このアタッチメント部材を前記継手本体に着脱可能とする接続部材とを更に備え、前記アタッチメント部材を、前記継手本体の前記流路を塞ぐ蓋部材、又は、前記継手本体の前記流路に別の流路を接続させるフランジ部材とすることができる。この管継手によれば、接続部材によってアタッチメント部材は継手本体に着脱可能となる。すなわち、アタッチメント部材を取り換えることができるので、この管継手の用途を広げることが可能となる。アタッチメント部材として蓋部材を継手本体に取り付けた場合、この管継手を塞ぐことができる。また、アタッチメント部材としてフランジ部材を取り付けた場合、管継手によって、パイプと別の流路とを接続することが可能となる。
【0010】
また、前記継手本体は、前記流路を内部に形成していると共に前記パイプの挿入口側へ延びて設けられている内管を有し、縮径する前記複数の分割パッキンは、前記内管を前記パイプと共に締め付けるのが好ましい。この構成によれば、縮径する複数の分割パッキンは、内管及びパイプを締め付けることから、分割パッキンと内管との間、及び、分割パッキンとパイプとの間で、内管内の流路を流れる液体を、止水することができる。このため、前記操作スリーブは前記継手本体に軸心回りに相対回転自在でかつ軸心方向移動不能に取り付けられていることから、操作スリーブと継手本体との間に隙間が生じていても、操作スリーブと継手本体との間に他の止水部材を設ける必要がない。
【0011】
また、前記操作スリーブの内周面に、当該操作スリーブを周方向他方側へ回転させると、前記分割パッキンの周方向一方側の端面を周方向他方側へ押す当接面が形成されているのが好ましい。この構成によれば、操作スリーブを周方向他方側へ回転させることで、操作スリーブの当接面が分割パッキンの端面を押し、分割パッキンをパイプから剥がす力を生じさせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の管継手によれば、操作スリーブを周方向一方側へ回転させると、操作スリーブの傾斜面が分割パッキンの外面を周方向に押すとともに径方向内側へも押し、パッキンがパイプを締め付けることができ、パイプを管継手に簡単に接続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の管継手の実施の一形態を示す縦断面図である。図2は図1のII−II断面における横断面図である。この管継手Jは、継手本体1と、この継手本体1と同軸状に設けられた断面が環状の操作スリーブ2と、この操作スリーブ2の内周に設けられた断面が環状のパッキン3とを備えている。
【0014】
継手本体1は、内部に軸心(継手軸心)Cが設けられており、筒状(断面環状)の本体部21と、この本体部21に挿入され固定された内管22とを有している。この内管22の内部に、前記軸心Cに沿って流路1aが形成されており、この流路1aは、管継手Jに接続する円形のパイプPの流路と連通する。内管22は、パイプPの挿入口(貫通孔32a)側へ延びて設けられており、内管22は本体部21の内周面に密接していることから、内管22と本体部21と間で流路1a内の流体は通過することができない。また、前記本体部21の側面には、軸心Cを中心とした周方向に沿って第一溝23及び第二溝24が形成されている。第一溝23は、溝の奥部が広がっている形状である。
【0015】
操作スリーブ2は筒形状であり、筒部31と、この筒部31の端部と連続した環状部32とを有している。筒部31の側面に突起部33が形成されており、この突起部33は前記第一溝部23と係合すると共に、当該第一溝23に誘導される。これにより、操作スリーブ2は、継手本体1に軸心C回りに回転自在でかつ軸心方向移動不能に取り付けられた構成となる。
前記環状部32の内周面は、前記筒部31の内周面よりも直径が小さく、接続するパイプPを挿通させる貫通孔32aとなる。この貫通孔32aが管継手JにおけるパイプPの挿入口となる。この環状部32の側面には、軸心Cを中心とした周方向に沿って第三溝34が形成されている。
【0016】
さらに、管継手Jは、継手本体1に操作スリーブ2を回転方向に拘束する拘束部9を更に備えている。図4は図1の実施形態の拘束部9の断面を示している説明図である。拘束部9は筒部材6であり、筒部材6は、継手本体1及び操作スリーブ2に対して軸心方向に移動自在でかつ、継手本体1及び(後述の)周方向所定位置とした操作スリーブ2に外嵌することで、継手本体1に対して操作スリーブ2を相対回転不能とするものである。具体的に説明すると、継手本体1の外周面1bに第一スプライン部11が形成されており、操作スリーブ2の外周面2aに第二スプライン部12が形成されている。筒部材6の内周面に、第一スプライン部11及び第二スプライン部12に嵌合する第三スプライン部13が形成されている。
図1において、操作スリーブ2の挿入口側の端部から、第一スプライン部11及び第二スプライン部12が形成されている取付部まで、筒部材6を軸心方向に移動させることで、筒部材6を取付部に取り付ける。筒部材6の第三スプライン部13が、継手本体1の第一スプライン部11及び操作スリーブ2の第二スプライン部12に嵌合することで、継手本体1に対して操作スリーブ2は回転することができない。なお、この拘束部9の機能については、後に説明する。
【0017】
また、図1において、管継手Jは、継手本体1に装着されて使用されるアタッチメント部材7と、このアタッチメント部材7を継手本体1に着脱可能とする接続部材とを更に備えている。図1の管継手Jのアタッチメント部材7は、別のパイプ10が接続されたフランジ板7bである。前記接続部材はナット部材8からなり、ナット部材8は、内周面にネジ部が形成されている本体筒部8aと、径方向内側へ突出している内鍔部8bとを有している。そして、継手本体1の外周面1bにネジ部が形成されており、このネジ部にナット部材8を螺合させることで、フランジ板7bを内鍔部8bと継手本体1との間で軸心方向に挟んだ状態とすることができる。これにより、フランジ板7bが継手本体1に装着された状態となる。一方、ナット部材8を継手本体1から外すことで、フランジ板7bを継手本体1から簡単に取り外すことができる。管継手Jによって、蛇腹状であり可撓性のあるパイプ10とパイプPとを接続することができる。
【0018】
パッキン3は、全体として筒形状であるが、周方向に複数に分割されている。図2のパッキン3は四つの分割パッキン4からなっている。図3は分割パッキン4の斜視図である。また、図1において、パッキン3は、操作スリーブ2の筒部31の径方向内側に設けられており、パッキン3の軸心方向の略半分の部分が継手本体1の内管22の径方向外側に設けられている。また、パッキン3は、操作スリーブ2の環状部32と継手本体1との間に設けられており、分割パッキン4の軸心方向端面に形成されている凸部35a,35b(図1と図3参照)が、前記第二溝24及び第三溝34に挿入された状態にある。この凸部35a,35bと内管22との一方又は双方によって、パッキン3が内側に脱落するのを防止し、かつ、四つの分割パッキン4によって構成されたパッキン3の内周面3aが、接続するパイプPを前記流路1aと同軸状にして挿入可能とする円形となるように、四つの分割パッキン4を位置決めしている。分割パッキン4は、縮径可能な部材であり、弾性変形可能な素材によって形成されており、例えばゴム製である。なお、継手本体1、操作スリーブ2、ナット部材8及び筒部材6は、樹脂製又は金属製である。
【0019】
図2と図3において、分割パッキン4の内面4bは、接続するパイプPの外周面の四分の一と同じ形状の円弧面となっている。分割パッキン4の外面4aは、周方向一方側(図2の矢印R1側)へ向かって軸心Cからの距離が大きくなるように形成されている。つまり、外面4aは、周方向一方側へ向かって半径が大きくなっている円弧面である。これにより、分割パッキン4の内面4bは軸心Cを中心とする半径が一定の円弧であるため、分割パッキン4は周方向一方側へ向かって漸次厚さが増大している構成となる。また、分割パッキン4の肉厚側の周方向端面は、第一端面41と第二端面42とから構成されている。
第一端面41は径方向外側に向いており、第二端面42は径方向内側に向いており、第一端面41と第二端面42とにより分割パッキン4の周方向端部は凸形状となっている。そして、一つの分割パッキン4の前記第二端面42は、隣りにある別の分割パッキン4の薄肉側の周方向端面43と面接触している。周方向端面43は径方向外側に向いている。
【0020】
そして、操作スリーブ2の内周面2aには、四つの分割パッキン4の外面4aに対応した形状(円弧形状)である傾斜面(カム面)5が四箇所に形成されている。すなわち、各傾斜面5は、分割パッキン4の外面4aに面で接触するように、周方向一方側(図2の矢印R1側)へ向かって軸心Cからの距離が大きくなっている。つまり、傾斜面5は、周方向一方側へ向かって半径が大きくなっている円弧面である。
【0021】
このように構成した管継手JにパイプPを接続する方法を説明する。図1において、パイプPを管継手Jの挿入口(貫通孔32a)に挿入する。内管22の端部に小径の筒部22aが設けられており、パイプPの端部は、この筒部22aに外嵌すると共に内管22の端面に当接した状態となる。これにより、パイプPは径方向及び軸心方向の位置が決定される。パイプPを挿入する際、パイプPの外周面と分割パッキン4の内面4bとは僅かに隙間が生じている状態にある。
【0022】
そして、図2において、操作スリーブ2を周方向一方側(矢印R1側)へ、所定角度について回転させ、周方向所定位置とする。操作スリーブ2の傾斜面5及び分割パッキン4の外面4aは、周方向一方側へ向かって軸心Cからの距離が大きくなっている円弧形状であるため、操作スリーブ2を前記周方向所定位置まで回転させると、四つの傾斜面5が四つの分割パッキン4の外面4aをそれぞれ周方向に押すとともに径方向内側へも押す。このように径方向について分割パッキン4及び傾斜面5を有する操作スリーブ2の内径部がくさび形状であるため、傾斜面5によって分割パッキン4は径方向内方へ押し潰され、さらに、四つの分割パッキン4からなるパッキン3を同時に縮径させることができ、このパッキン3(四つの分割パッキン4)によってパイプP及び内管22は径方向内方へ締め付けられる。
なお、前記所定角度は30°以上60°以下とすることができ、実施形態では45°(45°±5°)とする。また、前記周方向所定位置は、操作スリーブ2を周方向一方側へ回転させ複数の分割パッキン4を縮径させた位置であって、パッキン3がパイプPを締め付け抜け止め固定した状態となる位置である。
そして、操作スリーブ2を周方向所定位置まで回転させた状態で、前記筒部材6を、当該操作スリーブ2と継手本体1とを跨ぐようにして取り付ける。この筒部材6により、周方向所定位置にある操作スリーブ2を、継手本体1に対して、周方向他方側へ相対回転不能とすることができ、パッキン3によってパイプPが締め付けられた状態が維持される。
【0023】
以上のように、パイプPを管継手Jに挿入し、操作スリーブ2を回転させることによって、パイプPを管継手Jに簡単に接続することができる。そして、この接続に際し、パッキン3は軸方向に移動していないために、パイプPには軸心方向の力が作用しておらず、従来のように、パイプPを軸心方向に移動させない。
そして、筒部材6を取り外し、操作スリーブ2を周方向他方側(図2のR1と反対の方向)へ回転させると、傾斜面5によるパッキン3の締め付けは解除され、パイプPを管継手Jから抜くことができる。このため、パイプPの取り換えが容易となる。
【0024】
パッキン3は、縮径することによってパイプPを締め付けて抜け止めする機能を備えていると共に、当該パッキン3は内管22及びパイプPに密接することから、パイプP内の流体が外部へ漏れるのを防止するシール機能を備えている。つまり、縮径する複数の分割パッキン4は、内管22及びパイプPを締め付けることから、分割パッキン4と内管22との間、及び、分割パッキン4とパイプPとの間で、内管22内の流路1aを流れる液体を、止水することができる。そして、操作スリーブ2は継手本体1に軸心C回りに相対回転自在でかつ軸心方向移動不能に取り付けられていることから、操作スリーブ2と継手本体1との間に軸心方向の隙間が生じているが、操作スリーブ2と継手本体1との間に他の止水部材を設ける必要がない。
【0025】
図5は、管継手の他の実施形態を示している縦断面図である。この管継手Jは、図1の実施形態と比べて、拘束部9の構成が異なっているが、その他の構成は同じである。図6は図5のVI矢視からの説明図であり、(a)は継手本体1を示しており、(b)は操作スリーブ2を示している。図7は図5の拘束部9を拡大した説明図である。
操作スリーブ2の軸心方向端面に、軸心Cに平行な方向に突出した突出部25が設けられている。また、継手本体1の軸心方向端面に、前記突出部25を収容可能であり、操作スリーブ2が周方向に回転すると当該突出部25を移動させる凹溝26が形成されている。
【0026】
そして、図7において、継手本体1に、径方向に進退可能に設けられ、かつ、進出方向(径方向内方)にバネ18によって付勢された球面部材16が設けられている。また、操作スリーブ2の前記突出部25に、前記球面部材2が進出して入り込むことができる窪み部17が形成されている。そして、操作スリーブ2を周方向一方側へ回転させる前は、球面部材16と窪み部17とは嵌合していないが、パイプPを管継手Jに接続するために、前記実施形態と同様に、操作スリーブ2を周方向一方側の所定位置(前記周方向所定位置)まで回転させると、球面部材16が窪み部17に入り込む構成となっている。球面部材16が窪み部17に入り込むと、継手本体1に対して操作スリーブ2は回転することができなくなる。前記周方向所定位置は、操作スリーブ2の回転によって傾斜面5が分割パッキン4を径方向内方へ押圧し、パッキン3が縮径し、縮径するパッキン3がパイプPを締め付けて固定することができる位置である。以上より、図5の実施形態では、球面部材16と窪み部17とを有した拘束部9が構成されている。
【0027】
そして、操作スリーブ2を所定の回転力以上で周方向他方側へ回転させると、その回転と共に、窪み部17に嵌合していた球面部材16は、バネ18の付勢力に抗して径方向外側へ後退し、球面部材16が窪み部17から離脱する。これにより、操作スリーブ2は周方向他方側へ容易に回転でき、パイプPを管継手Jから抜くことができる状態となる。
なお、球面部材16は、継手本体1と操作スリーブ2との内の一方に設けられ、窪み部17は、継手本体1と操作スリーブ2との内の他方に設けられていればよい。つまり、図示しないが、球面部材16及びバネ18が操作スリーブ2に設けられており、窪み部17が形成されている突出部25が継手本体1に設けられていてもよい。
【0028】
また、前記各実施の形態において、分割パッキン4の内面4bは粗面加工が施されており(複数のカエリ部が形成されており)、パイプPの抜け止めを強化している。また、分割パッキン4は多層構造となっており、径方向内側が外側よりも軟質の部材(ゴム)であり、外側が内側よりも硬質の部材(ゴム)とするのが好ましい。これにより、傾斜面5が分割パッキン4の外面4aを部分的に押圧したとしても、外周側部が硬質な部材であるため、分割パッキン4の内周側部の全体を径方向内方へ変形させることができる。そして、内周側部が軟質な部材であるため、分割パッキン4はパイプPと密着しやすく、密封性が高まる。
【0029】
さらに、操作スリーブ2を周方向一方側(図2の矢印R1側)へ回転させると、傾斜面5によって分割パッキン4の特に肉厚側の部分を径方向内側へ押し潰すことができる。そして、前記のとおり、一つの分割パッキン4の肉厚側の周方向端面にある第二端面42は、隣りにある別の分割パッキン4の薄肉側の周方向端面43と面接触している。このため、操作スリーブ2を周方向一方側へ回転させると、くさびの作用によって、肉厚端部の第二端面42が薄肉端部の周方向端面43をパイプPに向かって押し付けることができ、当該薄肉端部がパイプPを締め付けることができる。これにより、パッキン3はパイプPを全周にわたって締め付けることができる。
【0030】
また、図2において、操作スリーブ2の内周において、隣り合う傾斜面5,5の間に当接面44が形成されている。つまり、操作スリーブ2の内径部には複数(四つ)の突起部45が形成された構成となっており、この突起部45の面として当接面44が形成されている。この当接面44は周方向他方側(図2のR1と反対の方向)へ向く面である。このため、接続したパイプPを管継手Jから抜くために、操作スリーブ2を周方向他方側へ回転させると、当接面44が、分割パッキン4の第一端面41を周方向他方側へ押圧する。これにより、分割パッキン4をパイプPに対して周方向他方側へ移動させることができ、分割パッキン4とパイプPとが密着していても、両者を引き剥がすことができる。そして、傾斜面5によるパッキン3の締め付けは解除され、パイプPを管継手Jから抜くことができる。
【0031】
また、図1及び図5の管継手Jでは、アタッチメント部材7を、パイプPとは別のパイプ10が接続されたフランジ板7bとした場合を説明したが、図8の説明図に示しているように、アタッチメント部材7は、継手本体1の前記流路1aを軸心方向から塞ぐ蓋部材7aであってもよい。この場合、この管継手Jの流路を塞ぐことができる。
また、既に説明したように、ナット部材8によってアタッチメント部材7を継手本体1に取り換え可能としていることから、アタッチメント部材7として、継手本体1の流路1aに別の流路を接続させるフランジ部材に交換することができ、このフランジ部材は、ホース用フランジ7b3、雄ネジ付きのフランジ7b1、雌ネジ付きのフランジ7b2、バルブVのフランジ7b4等とすることができる。これらフランジ部材を取り付けた場合、継手本体1によって、パイプPと別の流路とを接続することができる。このように、アタッチメント部材を取り換えることができるので、この管継手Jの用途を広げることが可能となる。
また、フランジ部材の別のパイプ10(図1参照)が、可撓性、軸心方向の伸縮性を有するものである場合、設置位置の不等沈下、熱膨張やウォータハンマリング等によるパイプの伸縮及び応力発生にも対応することができる。
【0032】
また、本発明の管継手Jは、家屋内の水・ドレン配管、地中等に埋設された配管又は床暖房のための配管等に用いられ、操作スリーブ2を回転させることでパイプPを接続することができることから、当該操作スリーブ2を回転させる作業者の手乃至工具が入れば、狭い場所でも適用することができる。また、火気が禁止されている場所でも適用することができる。
【0033】
図9は、管継手の他の実施形態を示している縦断面図である。図9(a)は、連結部材49を介して連結させた対の継手本体1,1を有しており、これら継手本体1,1の軸心方向両側に、操作スリーブ2、パッキン3、ナット部材8及び拘束部9がそれぞれ設けられた場合である。連結部材49は、前記アタッチメント部材7のようにフランジ部(鍔部)49aを有しており、このフランジ部(鍔部)49a及びナット部材8によって、連結部材49に継手本体1を接続することができる。なお、図9(a)では一方に接続するパイプP1と他方に接続するパイプP2とは同径であるが、(図示しないが)操作スリーブ2及びパッキン3等を小径又は大径とすることによって、異なる直径のパイプP1とパイプP2とを接続することができる。また、図示しないが、連結部材49を二分割とし、これらの間に接続パイプが介在したものであってもよい。このように、本発明の管継手Jを、二本のパイプ同士を直線的に接続するソケットとすることができる。
また、図9(b)は、図1で示した管継手J、及び、連結部材49を備えており、連結部材49内の流路が分岐部47を有している。この管継手Jは、三本のパイプP1,P2,P3を接続することができ、本発明の管継手Jを、三本のパイプをT字型に接続するチーズとすることができる。
【0034】
また、本発明の管継手は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、拘束部9、及び、アタッチメント部材7を継手本体1に着脱可能とする接続部材は他の形態であってもよい。
また、図9(a)はパイプP1とパイプP2とを直線的に接続する管継手(ソケット)であるが、連結部材49内の流路を屈曲させることによって、パイプP1とパイプP2とを折れ角度を持たせて接続する管継手(エルボ)としてもよい。なお、エルボとする場合、その折れ角度を90°や45°とすることができる。
また、図9(b)の前記分岐部47から分かれる枝流路を更に一本増加させ、パイプを四本接続することができる管継手としてもよい。
【0035】
また、前記各実施形態(特に、図9に示した形態)では、管継手Jによって接続するパイプP1とパイプP2(パイプP3)とに関して、直径が同じである場合を説明したが、これ以外として、接続するパイプの直径が異なる管継手としてもよい。この場合、複数の挿入口を有する一つの管継手Jにおいて、一つのパイプを接続させる部分に設けられるパッキン3(分割パッキン4)及び操作スリーブ2の内径寸法に対して、径が異なる他のパイプを接続させる部分に設けられるパッキン3(分割パッキン4)及び操作スリーブ2の内径寸法を異ならせればよく、接続対象とするパイプの直径(外径)に応じた内径寸法を有するものとすればよい。
また、本発明の管継手Jは、例えば、給水管用の管継手として使用することができ、また、排水管用の管継手として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の管継手の実施の一形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II断面における横断面図である。
【図3】分割パッキンの斜視図である。
【図4】図1の実施形態の拘束部の断面を示している説明図である。
【図5】管継手の他の実施形態を示している縦断面図である。
【図6】図5のVI矢視の説明図であり、(a)は継手本体を示しており、(b)は操作スリーブを示している。
【図7】図5の拘束部を拡大した説明図である。
【図8】管継手のアタッチメント部材の説明図である。
【図9】管継手の他の実施形態を示している縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1:継手本体、1a:流路、1b:外周面、2:操作スリーブ、2a:外周面、3:パッキン、3a:内周面、4:分割パッキン、4a:外面、5:傾斜面、6:筒部材、7:アタッチメント部材、7a:蓋部材、7b:フランジ板(フランジ部材)、8:ナット部材(接続部材)、9:拘束部、11:第一スプライン部、12:第二スプライン部、13:第三スプライン部、22:内管、41:第一端面(端面)、44:当接面、C:軸心、J:管継手、P:パイプ、R1:周方向一方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを接続する管継手において、
内部に流路が形成された継手本体と、この継手本体の軸心回りに相対回転自在でかつ軸心方向移動不能に当該継手本体に取り付けられた筒状の操作スリーブと、この操作スリーブの内周に設けられかつ前記パイプを前記流路と同軸状にして挿入可能な内周面を有する断面環状のパッキンと、を備え、
前記パッキンは、周方向に複数に分割され、周方向一方側へ向かって厚さが増大している複数の分割パッキンからなり、
前記操作スリーブの内周面には、前記分割パッキンの外面に接触するように周方向一方側へ向かって前記軸心からの距離が大きくなっている傾斜面が複数形成され、
前記操作スリーブを周方向一方側へ回転させると、前記傾斜面が前記分割パッキンの前記外面を径方向内側へ押し、前記複数の分割パッキンを縮径させることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記操作スリーブを周方向一方側へ回転させ前記複数の分割パッキンを縮径させた周方向所定位置にある当該操作スリーブを、周方向他方側へ相対回転不能とする拘束部を更に備えている請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記継手本体に装着されて使用されるアタッチメント部材と、このアタッチメント部材を前記継手本体に着脱可能とする接続部材と、を更に備え、
前記アタッチメント部材は、前記継手本体の前記流路を塞ぐ蓋部材、又は、前記継手本体の前記流路に別の流路を接続させるフランジ部材である請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項4】
前記継手本体は、前記流路を内部に形成していると共に前記パイプの挿入口側へ延びて設けられている内管を有し、
縮径する前記複数の分割パッキンは、前記内管を前記パイプと共に締め付ける請求項1〜3のいずれか一項に記載の管継手。
【請求項5】
前記操作スリーブの内周面に、当該操作スリーブを周方向他方側へ回転させると、前記分割パッキンの周方向一方側の端面を周方向他方側へ押す当接面が形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−264543(P2009−264543A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117285(P2008−117285)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【特許番号】特許第4237244号(P4237244)
【特許公報発行日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(508129953)
【Fターム(参考)】