説明

管継手の防食構造

【課題】Oリングと留め金具とにより配管の接続を行う管継手において、流体中に含まれる腐食性イオンや溶存酸素の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止して、腐食の発生を防止する。
【解決手段】管継手100を流通する流体Mが滞留する滞留部の発生を抑制して、又は、滞留部における雌側継手3及び雄側継手4の表面と流体Mとの接触を抑制して、その流体M中に含まれる腐食性イオン及び溶存酸素の一方又は両者の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止する電池形成防止部17を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状の雌側継手に管状の雄側継手を差し込み接続し、前記雄側継手の外周溝に備えられたOリングを前記雌側継手の内周面に圧接させ、留め金具により前記雌側継手への前記雄側継手の差し込み接続を保持する管継手の防食構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような管継手は、例えば、家庭用給湯器等の配管を接続するために用いられている。一方の配管を雌側継手に接続し、他方の配管を雄側継手に接続し、雌側継手に雄側継手を差し込み接続することで、雄側継手の外周面と雌側継手の内周面との間にOリングを圧接させて流体の封止を行っている。そして、留め金具を雌側継手及び雄側継手に係合させる状態で取り付けて、雌側継手への雄側継手の差し込み接続を保持している(例えば、特許文献1参照。)。
このような管継手は、ねじ込み式のものや、継手のフランジをボルトで締め付けて接続するものと比べて、製造時の省力化や構成の簡素化を図ることができることから、例えば小口径の配管の接続等で普及が進んでいる。
【0003】
そして、管継手の材料としては、極めて加工性に富む銅や銅合金等が使用されてきた。なかでも黄銅は、比較的安価な亜鉛を含み、良好な加工性と低廉な価格であるというメリットを有することから長年使用されてきている。しかしながら、例えば、流通する流体が水道水であると、その水道水に溶存酸素や腐食性イオン等が含まれる場合、「脱亜鉛腐食」と呼ばれる卑成分(亜鉛成分)脱離腐食が発生することがあった。そこで、最近、その亜鉛の溶出を防ぐため、錫等の添加剤を加えた耐脱亜鉛銅合金が開発され、その耐脱亜鉛銅合金を雌側継手や雄側継手に使用した管継手が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−32598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者らの実験により、上述のような、Oリングと留め金具とにより配管の接続を行う管継手において、雌側継手や雄側継手に耐脱亜鉛銅合金を使用しても、腐食の発生が確認された。そこで、発明者らがその腐食の原因について追求した結果、流体の流通部と滞留部における溶存酸素や腐食性イオン濃度の差によって濃淡電池が形成され、その濃淡電池の形成が腐食の原因であることが分かった。
【0006】
以下、流通部と滞留部における溶存酸素の濃度差による濃淡電池の形成について、図4に基づいて説明する。
まず、管継手の構成について説明する。
例えば、管継手は、図4に示すように、一方の第1配管1が接続された円管状の雌側継手3と他方の第2配管2が接続された円管状の雄側継手4とを備えている。雌側継手2は、その軸方向(図4中X方向)において第1配管1が接続される側から順に、第1配管1を外嵌接続する雌側基端部位5、その雌側基端部位5よりも拡径されて雄側継手4の雄側先端部位9が挿脱自在な凹部Cを有する雌側先端部位6を備えている。雄側継手4は、その軸方向(図4中X方向)において第2配管2が接続される側から順に、第2配管2を外嵌接続する雄側基端部位7、その雄側基端部位7よりも拡径された雄側中間部位8、その雄側中間部位8よりも縮径された雄側先端部位9を備えている。雄側先端部位9には、外周溝10が形成されており、その外周溝10にOリング11が備えられている。
雌側先端部位6の凹部Cに雄側先端部位9を挿入させて、雌側継手3に雄側継手4を差し込み接続すると、Oリング11が雄側先端部位9の外周面と雌側先端部位6の内周面の間に圧接されて流体の封止を行う。また、雌側継手3に雄側継手4を差し込み接続すると、雌側先端部位6の先端面と雄側中間部位8の先端面とが当接する。そして、雌側先端部位6に形成された鍔状の雌側フランジ12と雌側中間部位8に形成された鍔状の雄側フランジ13とを挟持する状態で留め金具14を取り付けて、雌側継手3への雄側継手4の差し込み接続を保持している。
【0007】
このような管継手では、雌側継手3に雄側継手4を差し込み接続することで、雌側継手3に形成されている雌側中空部位15と雄側継手4に形成されている雄側中空部位16とが直線的に連通する。よって、雌側中空部位15及び雄側中空部位16を流体(例えば水道水)が流通することになり、この雌側中空部位15及び雄側中空部位16が流通部R(図4中長い実線にて示す領域)となる。
一方、軸方向(図4中X方向)に対向する雌側先端部位6の凹部Cの底面と雄側先端部位9の先端面との間、及び、径方向(図4中Y方向)に対向する雌側先端部位6の内周面と雄側先端部位9の外周面との間には、隙間が形成される。この隙間は、Oリング11により閉じられており、Oリング11にて流体の流通が止められて、この隙間のうちOリング11にて閉じられた位置までの部位が滞留部T(図4中短い実線にて示す領域)となる。
【0008】
そして、滞留部Tでは、流通部Rよりも溶存酸素の濃度が低くなる場合がある。例えば、流体が水道水である場合には、流通部Rの溶存酸素濃度が5〜50ppm程度であるのに対して、滞留部Tの溶存酸素濃度が7〜8ppmとなる。したがって、滞留部Tの金属表面がアノード(陽極)となり、流通部Rの金属表面がカソード(陰極)となって、濃淡電池が形成される場合がある。濃淡電池が形成されると、アノード側(滞留部T側)が腐食し、腐食生成物によって、酸素や塩素の拡散が阻害されて、さらに濃淡差が増して腐食が進行する。
【0009】
また、流体中に含まれる腐食性イオン(例えば塩素イオン)についても、溶存酸素と同様に、流通部と滞留部との間で濃度差が生じると、その濃度差によって濃淡電池が形成され、その濃淡電池の形成が腐食の原因となることが考えられる。
【0010】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、Oリングと留め金具とにより配管の接続を行う管継手において、流体中に含まれる腐食性イオンや溶存酸素の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止して、腐食の発生を防止できる管継手の防食構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係る管継手の防食構造の特徴構成は、管状の雌側継手に管状の雄側継手を差し込み接続し、前記雄側継手の外周溝に備えられたOリングを前記雌側継手の内周面に圧接させ、留め金具により前記雌側継手への前記雄側継手の差し込み接続を保持する管継手の防食構造において、
前記管継手を流通する流体が滞留する滞留部の発生を抑制して、又は、前記滞留部における前記雌側継手及び前記雄側継手の表面と流体との接触を抑制して、その流体中に含まれる腐食性イオン及び溶存酸素の一方又は両者の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止する電池形成防止部を備えている点にある。
【0012】
本特徴構成によれば、電池形成防止部は、管継手を流通する流体が滞留する滞留部の発生を抑制するので、滞留部が存在すること自体を防止することができ、流通部と滞留部との間で流体中に含まれる腐食性イオンや溶存酸素の濃度差が発生することを防止することができる。よって、その濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止することができる。
また、電池形成防止部は、滞留部における雌側継手及び雄側継手の表面と流体との接触を抑制するので、流通部と滞留部との間で流体中に含まれる腐食性イオンや溶存酸素の濃度差が発生しても、その濃度差の発生に伴って濃淡電池の形成を防止することができる。このように、電池形成防止部を備えることで、流体中に含まれる腐食性イオン及び溶存酸素の一方又は両者の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止することができるので、腐食の発生を適切に防止することができる。
【0013】
本発明に係る管継手の防食構造の更なる特徴構成は、前記電池形成防止部は、前記雌側継手に前記雄側継手を差し込み接続した場合に、前記雌側継手及び前記雄側継手の軸方向において前記雌側継手の凹部の底面と前記雄側継手の先端面とを設定間隔以上離れた位置に位置させるとともに、前記雄側継手の外周面と前記雌側継手の内周面との間の隙間への流体の流入を防止する流入防止具を備えて、前記滞留部の発生を抑制する滞留部発生抑制部である点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、滞留部発生抑制部は、雌側継手の凹部の底面と雄側継手の先端面とを雌側継手及び雄側継手の軸方向に設定間隔以上離れた位置に位置させるので、雌側継手の凹部の底面と雄側継手の先端面との間に流体が流通できるだけの空間を確保することができ、雌側継手の凹部の底面と雄側継手の先端面との間が滞留部となるのを抑制することができる。しかも、滞留部発生抑制部は、流入防止具によって雄側継手の外周面と雌側継手の内周面との間の隙間への流体の流入を防止するので、雌側継手の凹部の底面と雄側継手の先端面との間の隙間等から、雄側継手の外周面と雌側継手の内周面との間の隙間のうち、Oリングにて閉じられた部位に流体が流入するのを防止できる。よって、雄側継手の外周面と雌側継手の内周面との間が滞留部となるのを抑制することができる。このようにして、滞留部発生抑制部を備えることで、滞留部の発生を適切に抑制して、濃淡電池の形成を確実に防止することができる。
【0015】
本発明に係る管継手の防食構造の更なる特徴構成は、前記電池形成防止部は、前記雌側継手に前記雄側継手を差し込み接続した場合に、前記滞留部に撥水性を有するペースト材を充填して、前記滞留部における前記雌側継手及び前記雄側継手の表面と流体との接触を抑制する接触抑制部である点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、接触抑制部は、滞留部に撥水性を有するペースト材を充填しているので、その充填したペースト材の撥水効果により滞留部への流体の流入を抑制することができる。このようにして、接触抑制部を備えることで、滞留部への流体の流入を抑制して、滞留部における雌側継手及び雄側継手の表面と流体との接触を適切に抑制して、濃淡電池の形成を確実に防止することができる。
【0017】
本発明に係る管継手の防食構造の更なる特徴構成は、前記雌側継手及び前記雄側継手の材料が、耐脱亜鉛腐食性を有する銅合金である点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、耐脱亜鉛腐食性を有する銅合金にて雌側継手及び雄側継手を構成することで、上述のような濃淡電池の形成に伴う腐食だけでなく、流体に溶存酸素や腐食性イオン等が含まれることによる、脱亜鉛腐食と呼ばれる卑成分(亜鉛成分)脱離腐食をも適切に防止することができる。
【0019】
本発明に係る管継手の防食構造の更なる特徴構成は、前記管継手が、燃料電池システムに流体を供給する配管を接続するために用いられている点にある。
【0020】
燃料電池システムを運転させる場合に、例えば、水道水等の流体の供給を断続する(流体が流れる状態と停止する状態が発生する)ことがあり、このような流体の供給の断続を行うことで、流通部と滞留部との間で腐食性イオン及び溶存酸素に濃度差が発生し易くなる。よって、燃料電池システムでは、上述の特徴構成で述べた如く、電池形成防止部を備えて、流体中に含まれる腐食性イオン及び溶存酸素の一方又は両者の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止することが大変有用なものとなる。また、燃料電池システムでは、配管等の交換周期として、例えば、約10年という比較的長期間が求められていることから、電池形成防止部を備えて、濃淡電池の形成に伴う腐食を防止することで、その求められている交換周期に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態における管継手の防食構造を示す断面図
【図2】第2実施形態における管継手の防食構造を示す断面図
【図3】別実施形態における管継手の防食構造を示す断面図
【図4】従来の管継手の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る管継手の防食構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
まず、管継手100について説明する。
この管継手100は、燃料電池システム(図示省略)に流体M(例えば水道水)を供給する配管を接続するために用いられている。管継手100は、図4を用いて発明が解決しようとする課題の欄でも説明した如く、図1に示すように、一方の第1配管1が接続された円管状の雌側継手3と他方の第2配管2が接続された円管状の雄側継手4とを備えている。第1配管1及び第2配管2の材料については、例えば、銅である。そして、ロウ付け又は溶接により、第1配管1が雌側継手3に接続され、且つ、第2配管2が雄側継手4に接続されている。雌側継手3及び雄側継手4の材料については、耐脱亜鉛腐食性を有する銅合金であり、例えば、黄銅に錫等の添加剤(例えば0.5%)を加えたものである。
【0023】
雌側継手3は、その軸方向(図1中X方向)において第1配管1が接続される側から順に、第1配管1を外嵌接続する雌側基端部位5、その雌側基端部位5よりも拡径されて雄側継手4の雄側先端部位9が挿脱自在な凹部Cを有する雌側先端部位6を備えている。雄側継手4は、その軸方向(図1中X方向)において第2配管2が接続される側から順に、第2配管2を外嵌接続する雄側基端部位7、その雄側基端部位7よりも拡径された雄側中間部位8、その雄側中間部位8よりも縮径された雄側先端部位9を備えている。雄側先端部位9には、外周溝10が形成されており、その外周溝10にOリング11が備えられている。
【0024】
雌側先端部位6の凹部Cに雄側先端部位9を挿入させて、雌側継手3に雄側継手4を差し込み接続すると、Oリング11が雄側先端部位9の外周面と雌側先端部位6の内周面の間に圧接されて流体Mの封止を行う。また、雌側継手3に雄側継手4を差し込み接続すると、雌側先端部位6の先端面と雄側中間部位8の先端面とが当接する。そして、雌側先端部位6に形成された鍔状の雌側フランジ12と雄側中間部位8に形成された鍔状の雄側フランジ13とを挟持する状態で留め金具14を取り付けて、雌側継手3への雄側継手4の差し込み接続を保持している。雌側継手3へ雄側継手4を差し込み接続することで、雌側継手3に形成されている雌側中空部位15と雄側継手4に形成されている雄側中空部位16とが直線的に連通して、雌側中空部位15及び雄側中空部位16を流体Mが流通することになる。
【0025】
この管継手100は、防食構造として、流体Mが滞留する滞留部Tの発生を抑制して、流体中に含まれる腐食性イオン及び溶存酸素の一方又は両者の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止する電池形成防止部を備えている。
発明が解決しようとする課題の欄でも説明した如く、図4において、軸方向(図4中X方向)に対向する雌側先端部位6の凹部Cの底面と雄側先端部位9の先端面との間、及び、径方向(図4中Y方向)に対向する雌側先端部位6の内周面と雄側先端部位9の外周面との間に形成される隙間のうち、Oリング11にて閉じられた位置までの部位が滞留部Tとなる。
【0026】
そこで、本実施形態では、その滞留部Tの発生自体を防止するために、電池形成防止部として、図1に示すように、雌側継手3に雄側継手4を差し込み接続した場合に、軸方向(図1中X方向)において雌側継手3の凹部Cの底面と雄側継手4の先端面とを設定間隔(例えば3mm)以上離れた位置に位置させるとともに、雄側継手4の外周面と雌側継手3の内周面との間の隙間への流体Mの流入を防止する流入防止具18を備えて、流体Mが滞留する滞留部Tの発生を抑制する滞留部発生抑制部17を備えている。ここで、軸方向(図1中X方向)において雌側継手3の凹部Cの底面と雄側継手4の先端面との間隔について、従来の管継手である図4に示すものでは、例えば約0.5mmとなっていた。
つまり、軸方向(図1中X方向)に対向する雌側先端部位6の凹部Cの底面と雄側先端部位9の先端面との間隔を設定間隔(例えば3mm)以上とすることで、流体Mが流通できるだけの空間を確保している。これにより、雌側中空部位15及び雄側中空部位16だけでなく、雌側先端部位6の凹部Cの底面と雄側先端部位9の先端面との間の隙間も、流体Mが流通する流通部Rとすることができ、滞留部Tとなるのを防止している。そして、雌側先端部位6の凹部Cの底面と雄側先端部位9の先端面との間の隙間において、径方向(図1中Y方向)の外端部に、流入防止具18として、U字状のリングパッキンが備えられている。この流入防止具18(リングパッキン)は、径方向(図1中Y方向)の内側から圧力がかかると、径方向(図1中Y方向)の外側に膨らむように構成されている。これにより、流入防止具18(リングパッキン)は、雌側先端部位6の凹部Cの底面と雄側先端部位9の先端面との間の隙間から、径方向(図1中Y方向)に対向する雌側先端部位6の内周面と雄側先端部位9の外周面との間の隙間への流体の流入を防止して、径方向(図1中Y方向)に対向する雌側先端部位6の内周面と雄側先端部位9の外周面との間の隙間が滞留部Tとなるのを防止している。
【0027】
このように、本実施形態では、滞留部発生抑制部17を備えることで、滞留部Tの発生自体を防止することができるので、流体中に含まれる腐食性イオン(例えば塩素イオン)や溶存酸素の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止でき、腐食の発生を防止することができる。
【0028】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、上記第1実施形態における電池形成防止部の別実施形態であり、その他の構成については、上記第1実施形態と同様である。以下、図2に基づいて、第2実施形態における電池形成防止部を中心に説明する。
【0029】
上記第1実施形態では、電池形成防止部として、滞留部発生抑制部17を備えることで、滞留部Tの発生自体を防止している。それに対して、この第2実施形態では、電池形成防止部として、滞留部Tにおける雌側継手3及び雄側継手4の表面と流体との接触を抑制する接触抑制部19を備えている。
【0030】
図2に示すように、接触抑制部19では、雌側継手3に雄側継手4を差し込み接続した場合に、滞留部Tに撥水性を有するペースト材20を充填している。ペースト材20については、例えば、ポリテトラフルオロエチレンにて構成されている。軸方向(図2中X方向)において雌側継手3の凹部Cの底面と雄側継手4の先端面との間隔については、上記第1実施形態よりも短い、例えば1mm程度となっている。そして、上述の如く、滞留部Tについては、軸方向(図2中X方向)に対向する雌側先端部位6の凹部Cの底面と雄側先端部位9の先端面との間、及び、径方向(図2中Y方向)に対向する雌側先端部位6の内周面と雄側先端部位9の外周面との間に形成される隙間のうち、Oリング11にて閉じられた位置までの部位が滞留部Tとなっている。そこで、その滞留部Tに撥水性を有するペースト材20を充填することで、滞留部Tへの流体Mの流入を防止することができるので、雌側継手3及び雄側継手4の表面と流体との接触を抑制することができる。これにより、流体中に含まれる腐食性イオン(例えば塩素イオン)や溶存酸素の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止でき、腐食の発生を防止することができる。
【0031】
撥水性を有するペースト材20の充填方法については、例えば、撥水性を有するペースト材20を予め滞留部Tの形状に合わせて成形しておき、その撥水性を有するペースト材20の成形物を滞留部Tに嵌め込み設置することができる。このような充填方法を採用することで、既存の管継手100に対しても、簡易に接触抑制部19を備えさせることができる。
【0032】
〔別実施形態〕
(1)上記第1、第2実施形態における電池形成防止部について、例えば、図3に示すように、電池形成防止部として、雌側継手3に雄側継手4を差し込み接続した場合に、滞留部Tに防錆塗装21を施すこともできる。ここで、防錆材としては、例えば、一般的に用いられる水道用エポキシ系樹脂塗料が用いられる。
【0033】
(2)上記第1、第2実施形態において、雌側継手3及び雄側継手4の形状については適宜変更が可能であり、留め金具14の形状についても適宜変更が可能である。
【0034】
(3)上記第1、第2実施形態では、管継手100を、燃料電池システムに流体M(例えば水道水)を供給する配管を接続するために用いているが、例えば、家庭用給湯器等に流体(例えば水道水)を供給する配管を接続するために用いることもできる。このように、管継手をどのような配管を接続するために用いるかについては適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、管状の雌側継手に管状の雄側継手を差し込み接続し、前記雄側継手の外周溝に備えられたOリングを前記雌側継手の内周面に圧接させ、留め金具により前記雌側継手への前記雄側継手の差し込み接続を保持する管継手において、流体中に含まれる腐食性イオンや溶存酸素の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止して、腐食の発生を防止できる各種の管継手の防食構造に適応可能である。
【符号の説明】
【0036】
3 雌側継手
4 雄側継手
10 外周溝
11 Oリング
14 留め金具
17 滞留部発生抑制部
18 流入防止具
19 接触抑制部
20 ペースト材
C 雌側継手の凹部
R 流通部
T 滞留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の雌側継手に管状の雄側継手を差し込み接続し、前記雄側継手の外周溝に備えられたOリングを前記雌側継手の内周面に圧接させ、留め金具により前記雌側継手への前記雄側継手の差し込み接続を保持する管継手の防食構造であって、
前記管継手を流通する流体が滞留する滞留部の発生を抑制して、又は、前記滞留部における前記雌側継手及び前記雄側継手の表面と流体との接触を抑制して、その流体中に含まれる腐食性イオン及び溶存酸素の一方又は両者の濃度差の発生に伴う濃淡電池の形成を防止する電池形成防止部を備えている管継手の防食構造。
【請求項2】
前記電池形成防止部は、前記雌側継手に前記雄側継手を差し込み接続した場合に、前記雌側継手及び前記雄側継手の軸方向において前記雌側継手の凹部の底面と前記雄側継手の先端面とを設定間隔以上離れた位置に位置させるとともに、前記雄側継手の外周面と前記雌側継手の内周面との間の隙間への流体の流入を防止する流入防止具を備えて、前記滞留部の発生を抑制する滞留部発生抑制部である請求項1に記載の管継手の防食構造。
【請求項3】
前記電池形成防止部は、前記雌側継手に前記雄側継手を差し込み接続した場合に、前記滞留部に撥水性を有するペースト材を充填して、前記滞留部における前記雌側継手及び前記雄側継手の表面と流体との接触を抑制する接触抑制部である請求項1に記載の管継手の防食構造。
【請求項4】
前記雌側継手及び前記雄側継手の材料が、耐脱亜鉛腐食性を有する銅合金である請求項1〜3の何れか1項に記載の管継手の防食構造。
【請求項5】
前記管継手が、燃料電池システムに流体を供給する配管を接続するために用いられている請求項1〜4の何れか1項に記載の管継手の防食構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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