説明

管継手及び管継手連結システム

【課題】第1継手と第2継手とが位置ずれした状態でこれらの連結が進められることにより生じる不具合を抑えることが可能な管継手、及び管継手連結システムを提供する。
【解決手段】管継手連結システム90は、雄型継手21を有する雄部材20と、雄型継手21が差し込まれることにより雄型継手21と連結される雌型継手31を有する雌部材30と、雄部材20に設けられたガイドピン23と、雌部材30に設けられてガイドピン23が挿入可能なガイド孔34を有するガイド部材33と、を備えた管継手10と、雄部材20を移動させる移動装置91とを備える。ガイドピン23の先端部23aに圧電素子60が配設されており、移動装置91は、圧電素子60からの電圧信号を受けて、雌部材30へ向けた雄部材20の移動を停止させる制御部93を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌型継手に雄型継手が差し込まれることにより互いに連結されて流体が流通可能になる管継手、及び雄型継手と雌型継手との距離を短くする装置を用いて雄型継手と雌型継手とを互いに連結させる管継手連結システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雌型継手に雄型継手が差し込まれることにより互いに連結されて流体が流通可能になる管継手が知られている。また、こうした管継手に関し、特許文献1には、雄型継手を差し込み方向に沿って移動させる移動装置を用いて、雌型継手と雄型継手とを連結する管継手連結システムが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の管継手連結システムは、複数の雄型継手が平板状の雄側基体に固設された雄部材と、各雄型継手に対応する複数の雌型継手が平板状の雌側基体に固設された雌部材と、雄側基体を差し込み方向に沿って移動させる移動装置とを備えている。雄側基体には、先細りしたかたちをなして差し込み方向に延びるガイドピンが所定の位置に突設されており、このガイドピンを基準として各雄型継手が配列されている。一方、雌側基体には、上記ガイドピンが挿入されるガイド孔を有するガイド部材が配設されており、このガイド孔を基準として各雌型継手が配列されている。
【0004】
雌型継手に雄型継手を差し込む際には、まず、ガイド孔とガイドピンとが差し込み方向で対向するように雌側基体と雄側基体とが配置される。そして、移動装置を用いて雄側基体を差し込み方向に移動させると、ガイド孔にガイドピンが挿入されることで各雌型継手に雄型継手が案内される。こうして各雄型継手は、対応する雌型継手へと差し込まれる。
【0005】
また、上記管継手連結システムには、各雌型継手と各雄型継手との連結が完了したことを検知する検知手段が備えられている。この検知手段は、雄側基体に形成されたエア吐出口と、雌側基体に形成されたエア受け座と、エア吐出口にエアを供給する配管内の圧力を検出する圧力センサーとで構成されている。エア吐出口は、ガイドピンを基準とした所定の位置に配設されており、エア受け座は、エア吐出口に対応する位置にガイド部材を基準として配設されている。そして、雌型継手に雄型継手が差し込まれると、エア吐出口がエア受け座によって塞がれることで配管内の圧力が上昇し、圧力センサーの計測値が所定の値を超えることで雌型継手と雄型継手との連結が完了したことが検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−256739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した構成の管継手連結システムにおいては、ガイドピンが先細りするように形成されていることから、ガイド孔にガイドピンが挿入されやすくなっている。そのため、雌型継手と雄型継手との間に多少の位置ずれが生じていたとしても雌型継手に雄型継手を差し込むことができる。
【0008】
しかしながら、ガイド部材の端面にガイドピンの先端が当接してしまうような大きな位置ずれが雌型継手と雄型継手との間に生じている場合もある。上述した検知手段は、雌型継手と雄型継手との連結が完了したことを検知することが可能ではあるものの、雌型継手と雄型継手との間に生じている位置ずれを検知することは困難である。そのため、ガイド部材の端面にガイドピンが当接していたとしても移動装置が駆動され続けてしまい、ガイドピンが変形したり破損したりする虞があるばかりか、雌型継手や雄型継手までもが変形したり破損したりする虞があった。
【0009】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、第1継手と第2継手とが位置ずれした状態でこれらの連結が進められることにより生じる不具合を抑えることが可能な管継手、及び管継手連結システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の管継手は、第1継手を有する第1部材と、第2継手を有する第2部材と、前記第1部材に設けられて、前記第2継手に対して前記第1継手が連結する方向に沿って延びるガイドピンと、前記第2部材に設けられて、前記第1継手に対して前記第2継手が連結する方向に沿って延びるガイド孔を有したガイド部材と、を備え、前記ガイドピンが前記ガイド孔に差込まれることによって前記第1継手と前記第2継手とが連結可能になる管継手において、前記ガイドピン及び前記ガイド部材の少なくとも一方には、当該一方の先端部と他の部材とが接触することにより信号を出力する信号出力部が設けられていることを要旨とする。
【0011】
請求項1に記載の管継手によれば、第1継手と第2継手とが連結される際に、信号出力部からの信号に基づき、ガイドピンの先端部及びガイド部材の先端部の少なくとも一方が他の部材と接触したか否かを検知することができる。それゆえに、ガイド孔及びガイドピンの少なくとも一方が視認できない状態であっても、第1継手と第2継手との間に位置ずれが生じていることを検知することが可能である。ひいては、ガイド孔及びガイドピンの少なくとも一方が視認できない状態であっても、これらの間に位置ずれが検知されたときに、第1継手と第2継手との連結動作を止めることが可能である。それゆえに、第1継手と第2継手との間の位置ずれに起因して生じる不具合を抑えることができる。
【0012】
請求項2に記載の管継手は、前記ガイドピンが前記ガイド孔に差し込まれることによって前記第1継手及び前記第2継手のいずれか一方が他方に差込み可能になることを要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の管継手によれば、第1継手と第2継手との間に位置ずれが生じている場合には、第1継手に第2継手が差し込まれる前にガイドピンの先端面とガイド部材の先端面とが接触する。すなわち、第1継手と雄型継手との間に位置ずれが生じていたとしても、雌型継手と雄型継手とが接触することを抑えることができる。その結果、雌型継手及び雄型継手を優先的に保護することができる。
【0014】
請求項3に記載の管継手は、前記信号出力部が圧電素子であることを要旨とする。
請求項3に記載の管継手によれば、ガイドピンの先端部及びガイド部材の先端部の少なくとも一方が他の部材と接触することによって、圧電素子の収縮量に応じた電圧信号が出力される。こうした圧電効果を利用することによって、信号出力部に対して駆動電力を供給することなく、ガイドピンの先端部及びガイド部材の先端部の少なくとも一方が他の部材と接触したことを検知することができる。
【0015】
請求項4に記載の管継手は、前記ガイドピン及び前記ガイド部材の少なくとも一方が弾性部材によって支持されていることを要旨とする。
請求項4に記載の管継手によれば、ガイドピン及びガイド部材の少なくとも一方が弾性部材によって支持されていることから、ガイドピンとガイド部材とが接触したときに生じる衝撃を緩和することができる。それゆえに、ガイドピン及びガイド部材が変形及び破損することを抑えることができる。
【0016】
請求項5に記載の管継手連結システムは、第1継手を有する第1部材と、第2継手を有する第2部材と、前記第1部材に設けられて前記第2継手に対して前記第1継手が連結する方向に沿って延びるガイドピンと、前記第2部材に設けられて前記第1継手に対して前記第2継手が連結する方向に沿って延びるガイド孔を有したガイド部材とを有し、前記ガイドピンが前記ガイド孔に差込まれることによって前記第1継手と前記第2継手とが連結可能になる管継手と、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方を前記第1部材と前記第2部材とが連結する方向に沿って移動させる移動装置と、を備える管継手連結システムにおいて、前記ガイドピンの先端部及び前記ガイド部材の先端部の少なくとも一方には、当該先端部以外の他の部材との接触により信号を出力する信号出力部が設けられ、前記移動装置は、前記信号出力部から出力された前記信号を受けて、前記連結する方向に沿った移動を停止させる制御部を備えることを要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の管継手連結システムによれば、信号出力部からの信号が入力された移動装置は、第1継手と第2継手とが連結する方向に沿ったこれらの移動を停止する。それゆえに、第1継手と第2継手とが位置ずれした状態でこれらの連結が進められることによる不具合を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る管継手を構成する雄部材及び雌部材の斜視構造を示す斜視図であって、非連結状態を示した図。
【図2】図1における2−2線に沿った断面構造を示す断面図であって、雄部材及び雌部材の左側半分の断面構造を示した図。
【図3】連結状態における雄部材及び雌部材の断面構造を示す断面図であって、雄部材及び雌部材の左側半分の断面構造を示した図。
【図4】本発明に係る管継手連結システムの概略構成を示す図。
【図5】ガイドピンがガイド部材に接触した状態を模式的に示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る管継手及び管継手連結システムの一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
(管継手の全体構成)
まず、管継手10の全体構成について図1を参照して説明する。図1に示されるように、管継手10は、第1継手としての雄型継手21を有した第1部材としての雄部材20と、該雄型継手21が軸線方向Aに沿って差し込まれることで該雄型継手21と連結される第2継手としての雌型継手31を有した第2部材としての雌部材30と、によって構成される。
【0020】
雄部材20を構成する矩形平板状の雄側基体22には、その長手方向に沿って2つの雄型継手21が所定の間隔で固設されているとともに、これら2つの雄型継手21を長手方向で挟む位置には、略円柱形状をなした2つのガイドピン23が立設されている。また雄側基体22には、雄型継手21及びガイドピン23を取り囲むように四角筒状の防御壁24が立設されている。また雄側基体22の各隅部には、図示しない貫通孔が穿設されており、この貫通孔には、例えばブラケット等に雄部材20を取り付ける際に用いられるボルト25が裏面22bからそのねじ部が突出するように貫挿されている。
【0021】
一方、雌部材30を構成する矩形平板状の雌側基体32には、その長手方向に沿って2つの雌型継手31が雄型継手21と同じ間隔で固設されているとともに、これら2つの雌型継手31を長手方向で挟む位置には、略円筒形状をなした2つのガイド部材33が立設されている。ガイド部材33は、雄部材20に形成された2つのガイドピン23の各々に対応する位置に立設されており、該ガイドピン23が挿通可能なガイド孔34が形成されている。また雌側基体32の各隅部には、図示しない貫通孔が穿設されており、この貫通孔には、例えばブラケット等に雌部材30を取り付ける際に用いられるボルト35が裏面32bからそのねじ部が突出するように貫挿されている。
【0022】
そして、雄部材20と雌部材30とが連結される際には、ガイド部材33のガイド孔34に各ガイドピン23が進入するように、雄部材20と雌部材30とが軸線方向Aで対向する。次いで、雄部材20と雌部材30とが互いに近づけられると、各雄型継手21は、ガイド孔34に進入したガイドピン23によって案内されながら雌型継手31に差し込まれる。なお、連結状態においては、雄型継手21と雌型継手31とが防御壁24によって取り囲まれた状態となる。
(雄部材20)
図2に示されるように、雄側基体22には、取付座22cによって裏面22b側で縮径された多段円柱形状の取付孔41を貫挿するように雄型継手21が配設されている。雄型継手21は、外部の配管が接続される雄側接続体42と、雄側接続体42に支持される雄側筒体43とを備えている。
【0023】
雄側接続体42は、内側に流路44が形成されて軸線方向Aに沿って延びる多段円筒形状をなしており、その中心軸が取付孔41の中心軸と一致するように配設されている。雄側接続体42は、取付孔41内に配設されて取付座22cに係合する係合部45と、係合部45よりも小さな外径で形成されて雄側基体22の裏面22bから突出する接続部46とが一体形成されている。
【0024】
雄側筒体43は、雄側接続体42の接続部46の内径よりも大きく且つ係合部45の内径よりも小さい外径を有して軸線方向Aに沿って延びる略円筒形状をなしている。雄側筒体43は、その中心軸が取付孔41の中心軸と一致するように、その一端が雄側接続体42の係合部45の内側に遊嵌された状態で配設されており、その内側に雄側接続体42の流路44に連通する流路47が形成されている。
【0025】
雄側筒体43の下端には、雄側接続体42の係合部45の外径と略等しい外径を有して、取付孔41内に配設される鍔部43aが形成されている。雄側筒体43は、鍔部43aが雄側接続体42の係合部45に当接することにより雄側接続体42に支持される。また雄側筒体43の外周面と雄側接続体42の係合部45の内周面とがなす隙間には、当該隙間を通じて内部の流体が漏出しないように環状のシール部材49が配設されている。
【0026】
そして、雄型継手21は、雄側接続体42の係合部45と雄側筒体43の鍔部43aとが取付孔41内に配設された状態で、該鍔部43aを覆う固定板50が図示しないねじによって雄側基体22の表面22aに螺着されることによって雄側基体22に対して固定されている。
【0027】
一方、雄側筒体43の上端には、雌型継手31に差し込まれて後述する雌側弁体84を押圧面51aで押圧する雄側押圧部51が形成されている。雄側押圧部51においては、雄側弁座52によって雄側筒体43の流路47よりも小さな径を有する雄側弁孔53が押圧面51aで開口しているとともに、外周面の全周にわたって凹設された溝部に環状のシール部材54が装着されている。
【0028】
また、雄側筒体43内には、雄側筒体43の内部を軸線方向Aに沿って摺動可能な雄側弁体55が配設されている。雄側弁体55は、略有蓋円筒形状をなしており、その中心軸が雄側筒体43の中心軸と一致するように配設されているとともに、雄側接続体42に下端が支持されたコイルばね56によって雄側弁孔53に向けて付勢されている。
【0029】
雄側弁体55は、雄側筒体43の内径よりも僅かに小さい外径を有する基端部55aと、該基端部55aよりも小さな外径であって雄側弁孔53を塞ぐかたちの先端部55bとが一体形成されている。雄側弁体55は、基端部55aが雄側弁座52に当接することにより、先端部55bの端面が雄側押圧部51の押圧面51aと面一にある位置で雄側弁孔53側への変位が規制されている。基端部55aの周壁には、コイルばね56の付勢力に抗して雄側弁体55が雄側接続体42側へと変位したときに、雄側弁孔53と雄側接続体42の流路44とを連通させる連通孔55cが穿設されている。また先端部55bの外周面に形成された溝部には、雄側弁体55と雄側押圧部51との隙間を通じて雄型継手21内の流体が漏出することを抑える環状のシール部材57が装着されている。
【0030】
また、雄側基体22には、雄型継手21の左側方にガイドピン23が配設されている。ガイドピン23は、軸線方向Aに沿って延びる略円柱形状をなしており、上方に向けて徐々に縮径した部位である先端部23aの端面には、信号出力部としての圧電素子60が固着されている。この圧電素子60には、ガイドピン23の内部を通して図示しない電気配線が接続されている。
【0031】
ガイドピン23のうち、下方に向けて拡径した部位である基端部23bは、ケース体61内に配設されている。ケース体61は、軸線方向Aに沿って延びる略円筒形状をなしてガイドピン23の基端部23bを収容している。ケース体61は、ガイドピン23の基端部23bが軸線方向Aに沿って摺動可能な内径を有しており、雄側基体22の表面22aに凹設された凹部62に嵌入されて雄側基体22に着脱可能に固定されている。ケース体61は、該ケース体61の頂部における開口が狭窄されており、ガイドピン23の基端部23bがケース体61の内側から該頂部に当接することによって、雄側基体22から離間する方向へのガイドピン23の変位を規制する。
【0032】
ケース体61内には、凹部62の底面に下端が支持された弾性部材としてのコイルばね63が配設されている。コイルばね63は、軸線方向Aに沿ってガイドピン23を雄側基体22から離間させるように付勢している。すなわち、ガイドピン23は、コイルばね63の付勢力に基づく変位がケース体61の頂部に規制される位置と、コイルばね63が最も縮んだ位置との間で軸線方向Aに沿って変位する。なお、ガイドピン23は、軸線方向Aにおいて、コイルばね63が最も縮んだ状態にあっても先端部23aが雄側押圧部51の押圧面51aよりも軸線方向Aの上側に配置される長さで形成されている。
(雌部材30)
図2に示されるように、雌側基体32には、取付座32cによって裏面32b側で縮径された多段円柱形状の取付孔66を貫挿するように雌型継手31が配設されている。雌型継手31は、外部の配管が接続される雌側接続体67と、雌側接続体67に支持される雌側筒体68とを備えている。
【0033】
雌側接続体67は、内側に流路69が形成されて軸線方向Aに沿って延びる多段円筒形状をなしており、その中心軸が取付孔66の中心軸と一致するように配設されている。雌側接続体67は、取付孔66内に配設されて取付座32cに係合する係合部70と、係合部70よりも小さな外径で形成されて雌側基体32の裏面32bから突出する接続部71とが一体形成されている。
【0034】
雌側筒体68は、雌側接続体67の接続部71の内径よりも大きい内径を有して軸線方向Aに沿って延びる多段円筒形状をなしている。雌側筒体68は、その内側に流路72が形成されているとともに、その中心軸が取付孔66の中心軸と一致するように配設されている。雌側筒体68は、取付孔66内に基端部が配設される大径部73と、大径部73の先端部に段差部74を介して連結された小径部75とが一体形成されている。小径部75は、雄側筒体43が摺動可能な大きさに形成されており、その先端部には外側に拡開されて雄側筒体43が差し込まれる差込口を形成する差込部75aが形成されている。
【0035】
大径部73の基端部には、大径部73の外径よりも大きく且つ雌側接続体67の係合部70の内径よりも僅かに小さい外径で形成され、該係合部70に嵌入される嵌入部73aが形成されている。雄側筒体43は、この嵌入部73aが係合部70に嵌入されることにより雌側接続体67に支持される。また嵌入部73aの外周面に形成された溝部には、嵌入部73aと雌側接続体67の係合部70との隙間を通じて雌型継手31内の流体が漏出しないように環状のシール部材76が配設されている。
【0036】
そして、雌型継手31は、雌側接続体67の係合部70と大径部73の嵌入部73aとが取付孔66内に配設された状態で、該嵌入部73aを覆う固定板77が図示しないねじで雌側基体32の表面32aに螺着されることによって雌側基体32に対して固定されている。
【0037】
また、雌側筒体68内には、雄側弁体55を押圧する弁押体80が配設されている。弁押体80の一端には、120°間隔で放射状に延出された3つの固定部80aが形成されている。弁押体80は、固定部80aの先端が雌側接続体67と雌側筒体68とに挟持されることによって雌側筒体68内に固定されている。弁押体80には、3つの固定部80aの中心部から差込部75a側へ向けて略円柱形状の延出部80bが延出形成されている。
【0038】
延出部80bの外周面には、3つの固定部80aの間に向けて軸線方向Aに沿って凹設され、雌側接続体67の流路69と雌側筒体68の流路72とを連通させる連通路81が形成されている。
【0039】
延出部80bの先端には、略円柱形状の雌側押圧部82が形成されている。雌側押圧部82は、中心軸が取付孔66の中心軸と一致するように配設されており、延出部80bの径よりも大きな径であって、且つ雄側弁孔53に挿通可能な外径で形成されている。雌側押圧部82の外周面に形成された溝部には、環状のシール部材83が装着されている。
【0040】
また、雌側筒体68内には、雌側押圧部82と雌側筒体68との間の環状の隙間を塞ぐかたちをなす雌側弁体84が配設されている。雌側弁体84は、軸線方向Aに沿って延びる略円筒形状をなしており、中心軸が取付孔66の中心軸と一致するように配設されている。雌側弁体84は、雌側押圧部82の外周面を摺動可能な内径と、雌側筒体68の小径部75を摺動可能な外径とを有する略円筒形状に形成されている。雌側弁体84の外周面に形成された溝部には、雌側弁体84と雌側筒体68との隙間を通じて雌型継手31内の流体が漏出することを抑える環状のシール部材85が装着されている。なお、雌側押圧部82に装着されたシール部材85は、雌側押圧部82と雌側弁体84との隙間を通じて雌型継手31内の流体が漏出することを抑える。
【0041】
雌側弁体84は、弁押体80の固定部80aに一端が支持されたコイルばね86によって差込部75a側へ付勢されている。雌側弁体84には、雌側接続体67側の端部における外周面に鍔部84aが突設されている。この鍔部84aは、雌側筒体68の段差部74に当接することにより、雌側弁体84の端面が雌側押圧部82の押圧面82aと面一になる位置で雌側弁体84の差込部75a側への変位を規制する。
【0042】
また、雌側筒体68には、弾性材からなる筒状の隠蔽部材88が小径部75に外装されている。隠蔽部材88は、雌側筒体68の差込部75aよりも雄型継手21側に突出する突出部88aが蛇腹状に形成されている。この突出部88aは、雄側筒体43に対して十分大きい内径を有しており、雌型継手31に雄型継手21が差し込まれると、雄側基体22に螺着された固定板50に当接することによって、収縮した状態で雄型継手21を覆い隠す。こうした隠蔽部材88を取り付けることによって、連結状態にある雄型継手21及び雌型継手31から漏出した流体が周囲に飛散することを抑えることができる。
【0043】
雌側基体32における雌型継手31の左側には、ガイド部材33が配設されている。ガイド部材33は、軸線方向Aに沿って延びる有底円筒形状をなしており、底部から延出形成されたねじ部89によって雌側基体32に螺着されている。ガイド部材33には、その端面33aに開口を有して軸線方向Aに沿って延びるガイド孔34が形成されている。ガイド孔34は、ガイドピン23の外径よりも大きな径で形成されているとともにガイドピン23を収容可能な長さに形成されている。なお、ガイド部材33は、軸線方向Aにおいて、その端面33aが雌型継手31の差込部75aよりも軸線方向Aの下側に配置される長さで形成されている。すなわち、ガイド部材33にガイドピン23に進入してから雌型継手31に雄型継手21が差し込まれるようになっている。
【0044】
また、ガイド孔34とガイドピン23とが同一軸線上に配置される状態で差込部75aと雄側押圧部51とが同一軸線上に配置されるように、上述したガイド孔34とガイドピン23とが配設されている。さらにまた、ガイド孔34の内径とガイドピン23の内径との差が差込部75aの内径と雄側押圧部51の外径との差よりも小さくなるように、これらガイド孔34、ガイドピン23、差込部75a、及び雄側押圧部51が形成されている。
【0045】
上述した雄型継手21を有する雄部材20と、雌型継手31を有する雌部材30とで構成される管継手10の作用について図3を参照して説明する。
まず、ガイドピン23がガイド孔34に進入するように軸線方向Aに沿って雄部材20と雌部材30とが配置される。そして、雄部材20と雌部材30とが近づけられると、雄型継手21は、ガイド孔34に進入したガイドピン23に案内されながら雌型継手31に差し込まれる。雌型継手31に雄型継手21が差し込まれると、雄側筒体43が雌側筒体68の小径部75を摺動し、やがて雄側押圧部51と雌側弁体84とが当接するとともに雄側弁体55と雌側押圧部82とが当接する。
【0046】
この状態から、さらに雌型継手31に雄型継手21が差し込まれると、図3に示されるように、隠蔽部材88の突出部88aが雄部材20の固定板50によって収縮されるとともに、雄側押圧部51が、コイルばね86の付勢力に抗して雌側弁体84を押圧し、雌側弁体84を雌側接続体67側へと変位させる。また雌側押圧部82が、コイルばね56の付勢力に抗して雄側弁体55を押圧し、雄側弁体55が雄側接続体42側へと変位する。こうした連結状態においては、雄側接続体42の流路44と雌側接続体67の流路69とが互いに連通して流体の流通が可能となる。なお、連結状態においては、雄側押圧部51の外周面に装着されたシール部材54は、雄側筒体43の外周面と雌側筒体68の内周面との隙間を通じて流体が漏出することを抑える。
(管継手連結システム90)
次に、上述した雄部材20と雌部材30とで構成される管継手10を連結する管継手連結システム90について、図4を参照して説明する。
【0047】
ちなみに、上述した管継手10は、例えば、電気自動車のバッテリーを冷却する冷却システムに用いられる。この冷却システムにおいては、車体側に配設された冷却装置で冷却される冷却水を車体とバッテリーとの間で循環させている。電気自動車では車体に対してバッテリーが着脱可能に搭載されているため、上述した管継手10は、例えば、車体側の配管部材に雌部材30の接続部71が接続され、バッテリー側の配管部材に雄部材20の接続部46が接続される。そして、バッテリーを車体に取り付ける際には、固定された車体に向けてバッテリーを移動させる装置が用いられる。
【0048】
図4に示されるように、管継手連結システム90は、上述した雄部材20及び雌部材30に加えて移動装置91を備えている。移動装置91は、例えば、バッテリーを軸線方向Aに沿って移動させる装置であって、該バッテリーには、ガイドピン23の延出方向が軸線方向Aとなるように雄部材20が固設されている。
【0049】
同図4に示されるように、移動装置91を構成する入出力部92は、スタートボタンやストップボタン、移動量入力ボタン等で構成される図示しない操作ボタンや移動装置91の状況が表示される表示画面などで構成されている。入出力部92は、移動装置91を統括制御する制御部93に対して作業者による操作ボタンの操作に基づいた操作信号を出力したり、該制御部93からの信号に基づく情報を表示画面に表示したりする。
【0050】
制御部93は、図示しないCPU、各種制御プログラムや各種データが格納されたROM、各種データが一時的に格納されるRAM等で構成されている。制御部93は、入出力部92からの操作信号に基づいて駆動部94を駆動し、雄部材20が固設されたバッテリーを軸線方向Aに沿って移動させたり、その移動を停止させたりする。
【0051】
また制御部93には、図示しない電気配線を介して、ガイドピン23の先端部23aに固着された圧電素子60が電気的に接続されている。制御部93は、所定値よりも大きな電圧を示す電圧信号が所定時間連続して入力されると駆動部94に対して停止信号を出力する。すなわち、制御部93は、駆動部94が駆動されているときにガイドピン23の先端が例えばガイド部材33に接触すると、駆動部94を直ちに停止するようになっている。
(作用)
次に、上述した管継手10及び管継手連結システム90の作用について図5を参照して説明する。
【0052】
管継手連結システム90においては、ガイド孔34にガイドピン23が進入するように雄部材20と雌部材30とが配置されると、続いて移動装置91の入出力部92が操作されて雄部材20の移動が開始される。移動装置91は、入出力部92からの操作信号に基づいて駆動部94を駆動して、入力された移動量だけ雌部材30に向けて雄部材20を移動させる。雄部材20は、ガイドピン23がガイド孔34に進入するように配置されているものの、雄部材20の位置がずれているときには、図5に示されるように、ガイドピン23の先端がガイド部材33の端面33aに衝突することになる。
【0053】
この際、ガイドピン23は、ケース体61内に配設されたコイルばね63の付勢力に抗して雄側基体22側に変位する。また、ガイドピン23の先端に固着された圧電素子60が収縮して、その収縮にともなう電圧信号が移動装置91の制御部93に出力される。制御部93は、上記電圧信号が所定時間連続して入力されると、雌部材30に対する雄部材20の位置がずれているものと判断して、駆動部94に停止信号を出力して雄部材20の移動を停止させる。そして、入出力部92の表示画面にその旨を表示させる。
【0054】
以上説明したように、上記実施形態に係る管継手10及び管継手連結システム90によれば、以下列記するような効果が得られるようになる。
(1)雌型継手31に雄型継手21が差し込まれる際に、ガイドピン23の先端とガイド部材33の端面33aとが接触することによって圧電素子60から電圧信号が出力される。そして、この電圧信号に基づいて、雌型継手31と雄型継手21との間に位置ずれが生じていることが検知される。これにより、ガイド孔34とガイドピン23とが視認できないときであっても、雌型継手31へ向けた雄型継手21の移動を停止することができる。その結果、雌型継手31と雄型継手21との間の位置ずれによって、ガイドピン23、ガイド部材33の変形や破損を抑えることができるとともに、雌型継手31、雄型継手21の変形や破損を抑えることができる。それゆえに、雌型継手31と雄型継手21とが位置ずれした状態でこれらの連結が進められることにより生じる不具合を抑えることができる。
【0055】
(2)ガイドピン23の圧電素子60が雄型継手21の押圧面51aよりも軸線方向Aにおいて雄側基体22から遠い位置に配置され、またガイド部材33の端面33aが雌型継手31の差込部75aよりも軸線方向Aにおいて雌側基体32から遠い位置に配置されている。すなわち、雄型継手21と雌型継手31との間に位置ずれが生じている場合には、雌型継手31に雄型継手21が差し込まれる前にガイドピン23の圧電素子60とガイド部材33の端面33aとが接触する。これにより、雌型継手31と雄型継手21との間に位置ずれが生じているときに、雌型継手31と雄型継手21とが接触することを抑えることができる。それゆえに、接触時の衝撃によってガイドピン23やガイド部材33に変形や破損が生じたとしても、雌型継手31及び雄型継手21に変形や破損が生じることを抑えることができる。
【0056】
(3)圧電素子60は、ガイドピン23の圧電素子60とガイド部材33の端面33aとの接触によって、その収縮量に応じた電圧信号を出力する。こうした圧電効果を利用することによって、位置ずれを検知するための素子に対して電力を供給することなく、雌型継手31と雄型継手21の位置ずれを検知することができる。その結果、上記位置ずれを検知するうえで必要な電力を抑えることができる。
【0057】
(4)また、ガイドピン23の圧電素子60がガイド部材33の端面33aに当接した後、ガイドピン23が直ちにガイド孔34に進入したときには、圧電素子60が収縮している期間が短いことから、電圧信号の時間的な変化に基づいて位置ずれを検知することもできる。
【0058】
(5)コイルばね63によってガイドピン23が付勢されていることから、ガイドピン23の圧電素子60とガイド部材33の端面33aとの衝突時における衝撃を緩和することができる。これにより、ガイドピン23及びガイド部材33に変形や破損が生じることをさらに抑えることができる。
【0059】
なお、上記実施の形態は、以下のような態様をもって実施することもできる。
・上記実施形態では、ガイドピン23とガイド部材33との衝突時における衝撃を緩和すべく、弾性部材であるコイルばねによってガイドピン23が支持されている。これを変更して、ガイド部材33が弾性部材によって支持されているようにしてもよいし、ガイドピン23とガイド部材33との双方が弾性部材で支持されていてもよい。なお、支持する部材もコイルばねに限らず、板ばねなどであってもよい。
【0060】
・上記実施形態では、電気的な信号を出力する信号出力部として、圧電素子を用いた。これを限らず、例えば、ガイドピン23とガイド部材33の端面33aとが接触することによって短絡される電極を上記信号出力部として用いてもよい。要は、ガイドピン23の先端部がガイドピン23以外の他の部材と接触することで該接触を示す信号を出力するものであればよい。また、信号出力部が配設される部位も、ガイドピン23の先端部に限られず、例えばガイドピン23の基端部であってもよく、要は、ガイドピン23の先端部がガイドピン23以外の他の部材と接触することで該先端部における変位を検知することの可能な部位であればよい。
【0061】
・また、上述した信号出力部がガイドピン23に配設されているが、こうした信号出力部は、ガイド部材33に配設されていてもよく、あるいはガイドピン23及びガイド部材33の双方に配設されていてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、ガイド孔34にガイドピン23の先端が挿入された後に雌型継手31に雄型継手21が差し込まれるようにした。これを変更して、例えば、雌型継手31の差込部75aを軸線方向Aにさらに延出形成することによって、ガイド孔34にガイドピン23が挿入される前に、雌型継手31に雄型継手21の差し込みが開始される態様であってもよい。
【0063】
・上記実施形態の雄部材20及び雌部材30には、それぞれ2つの雄型継手21及び雌型継手31が配設されているが、雄部材20及び雌部材30に配設される雄型継手21及び雌型継手31の数はこれに限られるものではない。
【0064】
・上記実施形態では、雄部材20にガイドピン23が配設されており、雌部材30にガイド部材33が配設されているが、これを変更して、雄部材20にガイド部材33、雌部材30にガイドピン23を配設してもよい。
【0065】
・上記実施形態の雄部材20及び雌部材30には、それぞれ2つのガイドピン23及びガイド部材33が配設されているが、雄部材20及び雌部材30に配設されるガイドピン23及びガイド部材33の数はこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0066】
A…軸線方向、10…管継手、20…雄部材、21…雄型継手、22…雄側基体、22a…表面、22b…裏面、22c…取付座、23…ガイドピン、23a…先端部、23b…基端部、24…防御壁、25…ボルト、30…雌部材、31…雌型継手、32…雌側基体、32a…表面、32b…裏面、32c…取付座、33…ガイド部材、33a…端面、34…ガイド孔、35…ボルト、41…取付孔、42…雄側接続体、43…雄側筒体、43a…鍔部、44…流路、45…係合部、46…接続部、47…流路、49…シール部材、50…固定板、51…雄側押圧部、51a…押圧面、52…雄側弁座、53…雄側弁孔、54…シール部材、55…雄側弁体、55a…基端部、55b…先端部、55c…連通孔、56…コイルばね、57…シール部材、60…圧電素子、61…ケース体、62…凹部、63…コイルばね、66…取付孔、67…雌側接続体、68…雌側筒体、69…流路、70…係合部、71…接続部、72…流路、73…大径部、73a…嵌入部、74…段差部、75…小径部、75a…差込部、76…シール部材、77…固定板、80…弁押体、80a…固定部、80b…延出部、81…連通路、82…雌側押圧部、82a…押圧面、83…シール部材、84…雌側弁体、84a…鍔部、85…シール部材、86…コイルばね、88…隠蔽部材、88a…突出部、89…ねじ部、90…管継手連結システム、91…移動装置、92…入出力部、93…制御部、94…駆動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1継手を有する第1部材と、
第2継手を有する第2部材と、
前記第1部材に設けられて、前記第2継手に対して前記第1継手が連結する方向に沿って延びるガイドピンと、
前記第2部材に設けられて、前記第1継手に対して前記第2継手が連結する方向に沿って延びるガイド孔を有したガイド部材と、を備え、
前記ガイドピンが前記ガイド孔に差込まれることによって前記第1継手と前記第2継手とが連結可能になる管継手において、
前記ガイドピン及び前記ガイド部材の少なくとも一方には、当該一方の先端部と他の部材とが接触することにより信号を出力する信号出力部が設けられている
ことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記ガイドピンが前記ガイド孔に差し込まれることによって前記第1継手及び前記第2継手のいずれか一方が他方に差込み可能になる
請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記信号出力部が圧電素子である
請求項1または2に記載の管継手。
【請求項4】
前記ガイドピン及び前記ガイド部材の少なくとも一方が弾性部材によって支持されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の管継手。
【請求項5】
第1継手を有する第1部材と、第2継手を有する第2部材と、前記第1部材に設けられて前記第2継手に対して前記第1継手が連結する方向に沿って延びるガイドピンと、前記第2部材に設けられて前記第1継手に対して前記第2継手が連結する方向に沿って延びるガイド孔を有したガイド部材とを有し、前記ガイドピンが前記ガイド孔に差込まれることによって前記第1継手と前記第2継手とが連結可能になる管継手と、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方を前記第1部材と前記第2部材とが連結する方向に沿って移動させる移動装置と、
を備える管継手連結システムにおいて、
前記ガイドピンの先端部及び前記ガイド部材の先端部の少なくとも一方には、当該先端部以外の他の部材との接触により信号を出力する信号出力部が設けられ、
前記移動装置は、前記信号出力部から出力された前記信号を受けて、前記連結する方向に沿った移動を停止させる制御部を備える
ことを特徴とする管継手連結システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2502(P2013−2502A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132444(P2011−132444)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】