説明

管継手構造

【課題】多大な手間と時間を要することなく、内部の流体圧による不平均力に対抗できる強度を有する管継手構造とする。
【解決手段】受口2内に挿し口1を挿入し、その受口2の内周面と挿し口1の外周面との間の環状空間にゴム輪12を介在させ、前記挿し口1の外周に押し輪11を取り付けて、その押し輪11で前記ゴム輪12を前記環状空間内に押し込んで固定した管継手構造において、前記押し輪11にピン孔21を形成し、そのピン孔21は前記押し輪11の内周面に臨む開口22を有しているとともに、そのピン孔21にロックピン23を挿入することにより、前記開口22を通じて前記ロックピン23の周面が前記挿し口1の外周面を押圧し、その押圧により、前記受口2からの前記挿し口1の抜け出しを防止している構成とした。ロックピン23の挿入で不平均力に対抗して継手部の抜け出しを防止できることから、管継手構造を構築するための手間と時間の縮小に寄与し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道、ガス、下水道等に用いる流体輸送用配管の管継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道、ガス、下水道等の各種流体輸送用配管において、その配管を構成する管体は、一方の管端部に、内径がやや拡径された受口を形成し、他方の管端部には、その受口に差込み可能な挿し口を形成したものが用いられる。その管体同士の継手部は、管体の受口内へ隣り合う他の管体の挿し口を挿入し、その受口の内周面と挿し口の外周面との間の環状の隙間へ、ゴム輪等を介在させることにより、水密性が維持されている。
【0003】
例えば、図11に示す水道管用ダクタイル管の継手部9では、受口2の内周面と挿し口1の外周面との間の環状の隙間に、ゴム輪(止水リング)12を挿入し、そのゴム輪12を押し輪11で押し込むことによって、受口2と挿し口1とが水密に接続されている。
この構成によって、継手部9を構成する管体p,p同士の管軸方向へのある程度の伸縮機能と、その管体p,p同士の離脱防止機能とを発揮している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、管体p,p同士の離脱防止機能を高めるため、前記ゴム輪12に加えて、硬質の抜け止めリングを挿し口1の外面に宛がうようにしたものもある(例えば、特許文献2,3,4参照)。
【0005】
ところで、建物や道路が交錯する市街地等の配管では、図12に符号pで示すような直線状の管体、いわゆる直管(以下、管体p又は直管pと称する)だけでは管路を形成することができない。このため、地形や道路の形態に合わせて、例えば、図12に符号p’で示すような曲がり管や、あるいは分岐部を有するT字管、Y字管等のいわゆる異形管が使用される場合が多い。
【0006】
これらの異形管(以下、管体p’又は異形管p’と称する)には、内部の流体圧によって、例えば、図中の矢印Aで示すように、継手部9を脱管させる方向への外力(不平均力)が作用する傾向がある。
【0007】
この不平均力による継手部9の脱管を防止するため、その継手部9の周囲にコンクリート防護を行う場合がある。このコンクリート防護は、例えば、図12に示すように、異形管p’の外周とその前後の直管pとの継手部9の外周を囲むように、コンクリートブロック8を打設して行っている。
【0008】
これは、コンクリートブロック8及び管体p,p’等の自重によって周囲の地盤との間に生じる摩擦力と、そのコンクリートブロック8の背面に生じる周囲の地盤からの受働土圧とによって、不平均力に対抗するものである。なお、図中の矢印Bは受働土圧を、矢印Cはその摩擦力を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−278967号公報
【特許文献2】実開昭51−54820号公報
【特許文献3】実開昭52−41017号公報
【特許文献4】実開昭56−37779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このコンクリート防護を行うためには、型枠の設置やコンクリートの混練及び打設の工程が必要である。また、コンクリートが硬化して所定の強度を発現するまでには、相当の養生期間を必要とする。
このため、継手部の接合後、実際に通水を開始できるようになるまで、多大な手間と時間を要するという問題がある。コンクリート防護に手間と時間を要することは、コスト高の原因ともなっており、また、工期に及ぼす影響も大きいことから改善が望まれている。
【0011】
そこで、この発明は、多大な手間と時間を要することなく、内部の流体圧による不平均力に対抗できる強度を有する管継手構造とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は、受口内に挿し口を挿入し、その受口の内周面と挿し口の外周面との間の環状空間にゴム輪を介在させ、前記挿し口の外周に押し輪を取り付けて、その押し輪で前記ゴム輪を前記環状空間内に押し込んで固定した管継手構造において、前記押し輪にピン孔を形成し、そのピン孔は前記押し輪の内周面に臨む開口を有しているとともに、そのピン孔にロックピンを挿入することにより、前記開口を通じて前記ロックピンの周面が前記挿し口の外周面を押圧し、その押圧により、前記受口からの前記挿し口の抜け出しを防止していることを特徴とする管継手構造とした。
【0013】
ロックピンの挿入によって、挿し口の外面が押圧され、また、その反力は押し輪に伝わる。すなわち、挿し口と押し輪との管軸方向への相対移動に対する摩擦力が増大する。この摩擦力の増大により、挿し口が受口から抜け出すことを抑制することができる。すなわち、流体圧によって生じた継手部を逸脱させる方向への前記不平均力に対し、その継手部が抜け出さないように対抗することができる。
ロックピンの挿入で不平均力に対抗できることから、従来行っていたコンクリート防護の規模を縮小し、あるいは、コンクリート防護自体を省略することができる。このため、管継手構造を構築するための手間と時間の縮小に寄与し得る。
【0014】
この管継手構造は、直管同士の継手部においても所定の効果を発揮できるが、不平均力が比較的大きい、曲がり管や、あるいは分岐部を有するT字管、Y字管等のいわゆる異形管が関わる継手部においては、特に、その効果が顕著である。
すなわち、異形管と異形管との継手部や、異形管と直管との継手部において採用すると、その効果が顕著である。言い換えれば、継手部の受口と挿し口のうち、少なくとも一方が異形管の管端部に設けられたものである場合である。
【0015】
これらの各構成において、ロックピンの方向は、そのロックピンの周面が挿し口の外周面を押圧し、その押圧により、受口からの挿し口の抜け出しを防止し得る限りにおいて、自由に設定できる。
【0016】
その中で、特に、ロックピンの軸心が、継手部を構成する受口及び挿し口における管軸方向に対して直交する面内に配置されている構成とすることができる。この構成によれば、受口から挿し口が抜け出そうとする管軸方向への動きに対し、ロックピンの軸心方向が直交する方向となるので、より高い抜け出し防止の効果が期待できる。
【0017】
また、これらの各構成において、ロックピンの周面に、一方の軸端部側から軸方向中央部側に向かって徐々に拡径するテーパー面を設けた構成とすることができる。
このようなテーパー状の部分があれば、ロックピンをピン孔に挿入する際に、そのテーパー状の部分を先端側に向けることによってその挿入が案内され、また、その後の押し込みも軽やかである。
この場合、そのテーパー面による挿し口の外周面に対する押圧度合いが、ロックピンの挿入深さによって徐々に増加し、最終的にそのテーパー面が挿し口の外周面に当たった状態で所定の押圧力に至る構成とすることができる。これによって、挿し口の外周面に作用している押圧力が、継手部の抜け防止のために充分なものとなっていることを、ロックピンのピン孔に対する軸方向位置で把握できるので便利である。
【0018】
また、このロックピンが挿し口の外周面を押圧するに際し、前記挿し口の外周面を押圧することにより、その挿し口の素材を塑性変形させている構成とすることができる。このとき、ロックピンは、挿し口の外周面の素材よりも硬い素材である構成とすることが望ましい。
【0019】
さらに、ロックピンを挿入する前の状態で、前記挿し口の外周面に溝が設けられており、ピン孔に挿入されたロックピンは、その溝内に入り込んでいる構成とすることができる。
挿し口の外周面に予め溝が形成されていれば、ロックピンの挿入の際に要する力を低減できる。なお、挿し口の外周面に予め溝が形成されている場合においても、前述の塑性変形を伴うように設定することもできる。これらの塑性変形を伴わせるかどうか、また、どの程度の塑性変形とするかは、溝の深さや形状と、ロックピンの外径、及び両者の位置関係によって適宜設定できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、ロックピンの挿入で不平均力に対抗できることから、多大な手間と時間を要することなく、内部の流体圧による不平均力に対抗できる強度を有する管継手構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施形態を示し、(a)は側面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図
【図2】第一の実施形態の押し輪とロックピンの斜視図
【図3】(a)(b)は、図1(c)の要部拡大図
【図4】押し輪の詳細を示し、(a)は側面図、(b)は管軸から径方向外側を臨む底面図、(c)は正面からの断面図
【図5】異形管の敷設状態を示す平面図
【図6】第二の実施形態を示す側面図
【図7】第二の実施形態の押し輪とロックピンの斜視図
【図8】第二の実施形態の押し輪の変形例を示す側面図
【図9】(a)(b)は、第三の実施形態を示す要部拡大図
【図10】(a)(b)は、第四の実施形態を示す要部拡大図
【図11】従来例の管継手構造を示す断面図
【図12】従来の異形管の敷設状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態の管継手構造を、図面に基づいて説明する。ここでは、図5に示すように、水道管用ダクタイル管の45度の曲がり管(異形管)p’と、その前後の直管pとの継手部10を想定している。ただし、この管継手構造を適用できる継手部10は、このような曲がり管p’の継手部10には限定されず、他の形態からなる異形管p’の継手部10にも採用できる。また、直管p同士の継手部にももちろん採用できる。
【0023】
(第一の実施形態)
第一の実施形態の継手部10の構成は、図1に示すように、受口2の内周面と挿し口1の外周面との間の環状の隙間に、ゴムなどの弾性体で一体に形成された環状のゴム輪12が介在している。
【0024】
ゴム輪12の内周面は円筒面であり、挿し口1の外周面の円筒面に密着している。また、ゴム輪12の外周面は、図1(b)(c)の左側に示す後端部12b側から、右側に示す前端部12c側に向かうにつれて(受口2側に近づくにつれて)徐々に縮径する傾斜面12aとなっている。なお、この管継手構造は、「K形継手」と呼ばれる。図中の符号cは、この継手部10近傍における管軸中心を示している。
【0025】
また、ゴム輪12の後端部12b側に隣接して、挿し口1の外周には、環状の押し輪11が取り付けてられている。この押し輪11は、管軸方向に伸びる筒状の本体部11aと、その本体部11aの中ほどから管径方向外側に立ち上がるフランジ部11bとを備える。その本体部11aの前端11cは、前記ゴム輪12の後端部12bに当接している。
【0026】
その押し輪11のフランジ部11bには、管軸方向に伸びる貫通孔11dが形成されている。また、受口2の端部には、管径方向外側に立ち上がるフランジ部4が設けられており、そのフランジ部4には、ねじ孔5が形成されている。押し輪11の貫通孔11dと受口2のねじ孔5とは同数であり、管軸周り同一方位に設けられて対応する貫通孔11dとねじ孔5とが管軸方向に対向している。
【0027】
この貫通孔11dとねじ孔5とに、図1に示すように接合ボルト13が挿通される。接合ボルト13にはナット14がねじ込まれて、そのナット14により、フランジ部11b,4間が近寄る方向に締付けられる。この締付けにより、押し輪11の本体部11aの前端11cが、ゴム輪12の後端部12bを押して、そのゴム輪12が前記環状の隙間に押し込まれる。
【0028】
このとき、受口2の内面には、図1(b)(c)に示すように、その奥部に向かうにつれて徐々に内径側に近づく傾斜面2aが形成されている。また、ゴム輪12の傾斜面12aは、その受口2の傾斜面2aに摺接している。
このため、ゴム輪12が押し輪11によって受口2の奥部へ押し込まれることによって、そのゴム輪12は、前記傾斜面2a,12a間の摺動とともに、全周に亘って徐々に受口2の内面と挿し口1の外面との密着度合いを増して、最終的に受口2と挿し口1とが水密に接続される。
【0029】
なお、そのナット14による締付けは、ゴム輪12の前端部12cが、受口2の前記傾斜面2aの奥部に設けられた段部2bに当接したところで、ゴム輪12と受口2の内面及び挿し口1の外面とが所定の密着度合いとなって、終了するように設定されている。
【0030】
この継手部10は、ロック機構20を備えている。ロック機構20の構成は、まず、前記押し輪11の本体部11aに、図2に示すように、ピン孔21が形成されている。この実施形態では、ピン孔21は、管軸周りの周方向に沿って2箇所に形成されている。
【0031】
各ピン孔21は、その両端が押し輪11の外周面に臨む端部開口21a,21aを有しており、その端部開口21a,21a間の中ほどにおいて、押し輪11の内周面に臨む内側開口22を有している。内側開口22は、図4(a)(b)に示すように、ピン孔21の伸びる方向に沿って細長く形成されている。
【0032】
この内側開口22を設けた部分において、本体部11aの部材厚(径方向への肉厚)t2は、図1(a)及び図2に示すように、他の部分の部材厚t1よりもやや厚く形成されている。この部材厚の厚い部分は、本体部11aの外周面において、突出部11gとなって現れている。
【0033】
前記ピン孔21の前記端部開口21a,21aは、その突出部11gの周方向端付近に開口している。このため、ピン孔21の形成によって、本体部11aのうち、前記突出部11g以外の部分(部材厚t1の部分)の肉厚がほとんど減少しないように配慮されている。
【0034】
前記ナット14の締付けを終了した状態で(受口2と挿し口1とが水密に接続された状態で)、このピン孔21にロックピン23を挿入する。
【0035】
ロックピン23が挿入されると、前記開口22を通じて前記ロックピン23の外周面が前記挿し口1の外周面を押圧する。
これは、ロックピン23がピン孔21に差し込まれた状態において、そのロックピン23の外周面のうち、管軸cに対して最内径寄りとなる部分が、図4(a)に示すように、押し輪11の内周面(内周円筒面)の延長線上に形成した円形ラインrよりも、距離wだけやや内径側に入り込んだ位置となるからである。
【0036】
この第一の実施形態では、その距離wを、最大で0.5〜2.0mmに設定している。また、押し輪11の内周面におけるその内径は、挿し口1の外径の交差最大のものに対して、僅かな隙間を生じさせる寸法としている。すなわち、押し輪11を挿し口1の外周に嵌めることができるに足りる隙間が設けられている。これらの寸法は、その配管の継手部10に求められる性能に応じて、適宜決定することができる。
【0037】
このロックピン23の挿入によって、図4(a)に矢印Dで示すように、挿し口1の外周面が押圧され、また、その反力は、図中の矢印Eで示すように、押し輪11に伝わる。すなわち、挿し口1の外周面が押圧されると、押し輪11の内周面も押圧され、挿し口1と押し輪11との間に摩擦力が発生する。
【0038】
このため、前記不平均力の発生によって、挿し口1と押し輪11とが管軸方向への相対移動(図1(b)の矢印a,b参照)をしようとした際に、その摩擦力により、挿し口1、ロックピン23、押し輪11、接合ボルト13及びナット14、受口2の順に伝達される抜け出し力に対抗することができる(同矢印c,d参照)。すなわち、挿し口1が受口2から抜け出すことを抑制することができる。
【0039】
ロックピン23の挿入で不平均力に対抗できることから、配管の周囲に施工していたコンクリート防護の規模を縮小し、あるいは、コンクリート防護自体を省略することができる。
【0040】
このとき、前記ロックピン23の周面には、図4(a)(b)に示すように、一方の軸端部側から軸方向中ほど、すなわち、挿し口1の外周面に当たる部分に向かって徐々に拡径するテーパー部23cが設けられている。また、そのテーパー部23cの後方は、同一外径で続く円柱状の並行部23bとなっている。ロックピン23を完全に押し込んだ状態で、挿し口1の外周面に当たるロックピン23の外周面は、この並行部23bの外周面となっている。
このようなテーパー部23cがあれば、ロックピン23をピン孔21に挿入する際に、そのテーパー部23cを先端側に向けることによってその挿入が案内され、また、その後、円柱状の前記並行部23bが挿し口1の外周面に当たるまでの押し込みも軽やかである。
【0041】
また、ピン孔21に挿入された前記ロックピン23の軸心23aは、前記受口2及び前記挿し口1における管軸方向に対して直交する面内に配置されている。また、その軸心23aの方向は、前記挿し口1の外周面の1接点における接線方向、あるいはその接線方向に並行であるから、受口2から挿し口1が抜け出そうとする管軸方向への動きに対し、ロックピン23の軸心23aの方向が直交する方向となって、より高い抜け出し防止の効果が期待できる。
【0042】
なお、この実施形態では、ロックピン23の軸心23aの方向が、前記受口2及び前記挿し口1における管軸方向に対して直交する面内に位置するようにロックピン23を配置したが、ロックピン23の軸心23aの方向は、受口2から挿し口1が抜け出そうとする管軸方向への動きに対抗し得る限りにおいて、この実施形態に限定されない。
例えば、ロックピン23の軸心23aの方向が、前記受口2及び前記挿し口1における管軸方向に対して直交する面に対して交差する方向であってもよい。
【0043】
また、この実施形態では、押し輪11のフランジ部11bは、本体部11aの管軸方向中ほどから立ち上がる構成としたが、このフランジ部11bは、従来例のように本体部11aの後端部付近から立ち上がる場合も想定され、この実施形態の形状の押し輪11に限定されるものではない。これは、後述の各実施形態においても同様である。
【0044】
(第二の実施形態)
図6及び図7に第二の実施形態を示す。この実施形態は、第一の実施形態が、管軸周りの周方向に沿って2本のロックピン23を配置していたのに対し、管軸周りの周方向に沿って合計6本のロックピン23を配置している。ロックピン23の本数が多くなれば、受口2と挿し口1との抜け止めの性能も高くなる。
【0045】
また、合計6本のロックピン23を配置するため、図6に示すように、押し輪11には、ピン孔21が6箇所に設けられている。この実施形態では、6箇所のピン孔21を周方向に沿って等分方位に設けている。
【0046】
なお、一箇所の継手部10に対し、複数本のロックピン23を配置する場合は、このように、全てのロックピン23が等分方位に配置されていることが望ましいが、特定の方位のみ抜け止めの効果を強調したい場合等には、ロックピン23が必ずしも等分方位に配置されてなくとも、所定の抜け止めの効果を発揮できる。
【0047】
また、ロックピン23の配置本数は、継手部10に求められる性能に応じて自由に選択できるから、例えば、一箇所の継手部10に対し1本のみ配置してもよいし、管軸周りの周方向に沿って3本、4本、5本、6本、あるいはそれ以上の本数を配置してもよい。
【0048】
なお、図8は、第二の実施形態の押し輪11の変形例を示す。この変形例の押し輪11は、フランジ部11bの側面視形状を変更して軽量化を図ったものである。
具体的には、図8に示すように、フランジ部11bは、前記接合ボルト13を挿通する前記貫通孔11d周囲に形成された環状を成す部分、すなわち環状部11eと、周方向に隣り合う環状部11e,11e同士を結ぶ連結部11fとを備えている。
【0049】
この変形例では、前記連結部11fにおいて、第二の実施形態を示す図6の押し輪11と比較して、部材の径方向高さが縮小されているので、押し輪11全体として軽量化を図ることができる。
【0050】
(第三の実施形態)
図9に第三の実施形態を示す。この実施形態は、前記ロックピン23が、前記挿し口1の外周面を押圧することにより、その挿し口1の素材を塑性変形させている構成としたものである。なお、前述の各実施形態では、挿し口1の外周面における塑性変形を伴わずとも、その挿し口1の外周面やロックピン23、押し輪11が弾性変形することによって、前記距離wを吸収できるようにしていたものである。挿し口1の素材の塑性変形を許容する場合においても、ロックピン23や押し輪11の弾性変形が伴っていることは差し支えない。
【0051】
また、この第三の実施形態では、挿し口1の塑性変形により、図9(b)に示すように、ロックピン23をピン孔21に挿入した際に、挿し口1の外周面に塑性変形による凹み24が形成されている。ロックピン23がこの凹み24に引っ掛かることによって、さらに高い抜け出し防止の効果が期待できる。
【0052】
なお、この実施形態では、前記ロックピン23の素材を、挿し口1の外周面の素材、すなわち、管体p,p’の素材よりも硬い素材を採用しているので、その塑性変形が生じやすくなっている。
【0053】
(第四の実施形態)
図10に第四の実施形態を示す。この実施形態は、前記ロックピン23を挿入する前の状態で、前記挿し口1の外周面に溝25が設けられており、前記ピン孔21に挿入されたロックピン23は、その溝25内に入り込む構成としたものである。ロックピン23がこの溝25に引っ掛かることによって、さらに高い抜け出し防止の効果が期待できる。なお、この溝25を設けた構成においても、前述の塑性変形を許容する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 挿し口
2 受口
4 フランジ部
5 ねじ孔
9,10 継手部
11 押し輪
11a 本体部
11b フランジ部
12 ゴム輪
13 接合ボルト
14 ナット
20 ロック機構
21 ピン孔
21a 端部開口
22 内側開口
23 ロックピン
23a 軸心
23b 並行部
23c テーパー部
24 凹み
25 溝
p 直管(管体)
p’ 異形管(管体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受口(2)内に挿し口(1)を挿入し、その受口(2)の内周面と挿し口(1)の外周面との間の環状空間にゴム輪(12)を介在させ、前記挿し口(1)の外周に押し輪(11)を取り付けて、その押し輪(11)で前記ゴム輪(12)を前記環状空間内に押し込んで固定した管継手構造において、
前記押し輪(11)にピン孔(21)を形成し、そのピン孔(21)は前記押し輪(11)の内周面に臨む開口(22)を有しているとともに、そのピン孔(21)にロックピン(23)を挿入することにより、前記開口(22)を通じて前記ロックピン(23)の周面が前記挿し口(1)の外周面を押圧し、その押圧により、前記受口(2)からの前記挿し口(1)の抜け出しを防止していることを特徴とする管継手構造。
【請求項2】
前記受口(2)又は前記挿し口(1)は、異形管の管端部に設けられたものであることを特徴とする請求項1に記載の管継手構造。
【請求項3】
前記ロックピン(23)の軸心(23a)は、前記受口(2)及び前記挿し口(1)における管軸方向に対して直交する面内に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管継手構造。
【請求項4】
前記ロックピン(23)の周面に、一方の軸端部側から軸方向中央部側に向かって徐々に拡径するテーパー面(23a)を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の管継手構造。
【請求項5】
前記ロックピン(23)は、前記挿し口(1)の外周面を押圧することにより、その挿し口(1)の素材を塑性変形させていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の管継手構造。
【請求項6】
前記ロックピン(23)は、前記挿し口(1)の外周面の素材よりも硬い素材であることを特徴とする請求項5に記載の管継手構造。
【請求項7】
前記ロックピン(23)を挿入する前の状態で、前記挿し口(1)の外周面に溝(25)が設けられており、前記ピン孔(21)に挿入されたロックピン(23)は、その溝(25)内に入り込んでいることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の管継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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