説明

管継手構造

【課題】多大な手間と時間を要することなく、内部の流体圧による不平均力に対抗できる強度を有する管継手構造とする。
【解決手段】受口2内に挿し口1を挿入し、その受口2の内周面と挿し口1の外周面との間の環状空間にゴム輪12を介在させ、前記挿し口1の外周に環状の押し輪11を取り付けて、その押し輪11で前記ゴム輪12を前記環状空間内に押し込んで固定した管継手構造において、前記押し輪11の内周に内径方向に向く凸部21を設け、前記挿し口1の外周に凹部22を設け、その凸部21が前記凹部22に入り込むことにより、前記受口2からの前記挿し口1の抜け出しを防止している管継手構造とした。また、前記押し輪11は、複数の円弧状部材15,15が周方向に沿って連結されることにより環状に形成されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道、ガス、下水道等に用いる流体輸送用配管の管継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道、ガス、下水道等の各種流体輸送用配管において、その配管を構成する管体は、一方の管端部に、内径がやや拡径された受口を形成し、他方の管端部には、その受口に差込み可能な挿し口を形成したものが用いられる。その管体同士の継手部は、管体の受口内へ隣り合う他の管体の挿し口を挿入し、その受口の内周面と挿し口の外周面との間の環状の隙間へ、ゴム輪等を介在させることにより、水密性が維持されている。
【0003】
例えば、図10、図11に示す水道管用ダクタイル管の継手部9では、受口2の内周面と挿し口1の外周面との間の環状の隙間に、ゴム輪(止水リング)12を挿入し、そのゴム輪12を押し輪11で押し込むことによって、受口2と挿し口1とが水密に接続されている。
この構成によって、継手部9を構成する管体p,p同士の管軸方向へのある程度の伸縮機能と、その管体p,p同士の離脱防止機能とを発揮している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、管体p,p同士の離脱防止機能を高めるため、前記ゴム輪12に加えて、硬質の抜け止めリングを挿し口1の外面に宛がうようにしたものもある(例えば、特許文献2,3,4参照)。
【0005】
ところで、建物や道路が交錯する市街地等の配管では、図9に符号pで示すような直線状の管体、いわゆる直管(以下、管体p又は直管pと称する)だけでは管路を形成することができない。このため、地形や道路の形態に合わせて、例えば、図9に符号p’で示すような曲がり管や、あるいは分岐部を有するT字管、Y字管等のいわゆる異形管が使用される場合が多い。
【0006】
これらの異形管(以下、管体p’又は異形管p’と称する)には、内部の流体圧によって、例えば、図中の矢印Aで示すように、継手部9を脱管させる方向への外力(不平均力)が作用する傾向がある。
【0007】
この不平均力による継手部9の脱管を防止するため、その継手部9の周囲にコンクリート防護を行う場合がある。このコンクリート防護は、例えば、図9に示すように、異形管p’の外周とその前後の直管pとの継手部9の外周を囲むように、コンクリートブロック8を打設して行っている。
【0008】
これは、コンクリートブロック8及び管体p,p’等の自重によって周囲の地盤との間に生じる摩擦力と、そのコンクリートブロック8の背面に生じる周囲の地盤からの受働土圧とによって、不平均力に対抗するものである。なお、図中の矢印Bは受働土圧を、矢印Cはその摩擦力を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−278967号公報
【特許文献2】実開昭51−54820号公報
【特許文献3】実開昭52−41017号公報
【特許文献4】実開昭56−37779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このコンクリート防護を行うためには、型枠の設置やコンクリートの混練及び打設の工程が必要である。また、コンクリートが硬化して所定の強度を発現するまでには、相当の養生期間を必要とする。
このため、継手部の接合後、実際に通水を開始できるようになるまで、多大な手間と時間を要するという問題がある。コンクリート防護に手間と時間を要することは、コスト高の原因ともなっており、また、工期に及ぼす影響も大きいことから改善が望まれている。
【0011】
そこで、この発明は、多大な手間と時間を要することなく、内部の流体圧による不平均力に対抗できる強度を有する管継手構造とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は、受口内に挿し口を挿入し、その受口の内周面と挿し口の外周面との間の環状空間にゴム輪を介在させ、前記挿し口の外周に押し輪を取り付けて、その押し輪で前記ゴム輪を前記環状空間内に押し込んで固定した管継手構造において、前記押し輪の内周に内径方向に向く凸部を設け、前記挿し口の外周に凹部を設け、その凸部が前記凹部に入り込むことにより、前記受口からの前記挿し口の抜け出しを防止していることを特徴とする管継手構造とした。
【0013】
凸部が凹部に入り込むことで受口からの挿し口の抜け出しを防止し、管体に生じる前記不平均力に対抗できることから、従来行っていたコンクリート防護の規模を縮小し、あるいは、コンクリート防護自体を省略することができる。このため、管継手構造を構築するための手間と時間の縮小に寄与し得る。
【0014】
この管継手構造は、直管同士の継手部においても所定の効果を発揮できるが、不平均力が比較的大きい、曲がり管や、あるいは分岐部を有するT字管、Y字管等のいわゆる異形管が関わる継手部においては、特に、その効果が顕著である。
すなわち、異形管と異形管との継手部や、異形管と直管との継手部において採用すると、その効果が顕著である。言い換えれば、継手部の受口と挿し口のうち、少なくとも一方が異形管の管端部に設けられたものである場合である。
【0015】
これらの各構成において、前記押し輪は、複数の円弧状部材が周方向に沿って連結されることにより環状に形成されている構成とすることができる。
【0016】
押し輪が周方向に分割されていることによって、押し輪の取り付けの際に、その押し輪の凸部が挿し口の外面に食い込んで傷つけたり、あるいは、防食のために施された外面塗装を損傷させたりする事態を防ぐことができる。
これは、押し輪が環状に一体に成型されていると、その取り付けに際し、挿し口の外周に環状の押し輪を嵌めて、管軸方向に位置合わせする動作が発生するのに対し、押し輪が分割されていると、その分割された各部材を、それぞれ挿し口の外面に管径方向外側から宛がう動作で足りるからである。
【0017】
このように、押し輪を複数の円弧状部材で構成した場合において、その円弧状部材同士の連結は、前記各円弧状部材の端部に設けた連結部を重ね、その連結部同士を連結ボルトで接合して行われる構成とすることができる。
【0018】
このとき、連結部同士は、管軸方向に重ねてもよいし、挿し口の外周に沿って周方向に重ねてもよい。連結部同士を管軸方向に重ねる場合は、連結ボルトはその軸心が管軸方向へ向き、連結部同士を周方向に重ねる場合は、連結ボルトはその軸心が挿し口周りの周方向へ向くこととなる。
【0019】
また、押し輪を用いた一般的な継手部の構成として、次のようなものがある。
すなわち、押し輪は、管軸方向に伸びる筒状の本体部と、その本体部から管径方向外側に立ち上がるフランジ部とを備え、前記本体部の前端が、前記ゴム輪の後端部に当接している構成である。その押し輪のフランジ部に、管軸方向に伸びる貫通孔とねじ孔とを設け、前記受口の端部には、管径方向外側に立ち上がるフランジ部が設けられており、前記受口のフランジ部にねじ孔が設けられている。
【0020】
このように、受口と押し輪にそれぞれフランジ部を備えた構成において、前記押し輪の貫通孔と前記受口のねじ孔とに挿通された接合ボルトにナットをねじ込むことで、前記ゴム輪が前記環状空間内に押し込まれるようになっており、さらに、前記押し輪のねじ孔にねじ込まれた屈曲防止ボルトの前端が、前記受口のフランジ部の端面に当接している構成を採用することができる。
【0021】
屈曲防止ボルトの前端が、前記受口のフランジ部の端面に当たることで、受口からの挿し口の抜け出しをさらに確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明は、凸部が凹部に入り込むことで受口からの挿し口の抜け出しを防止できることから、多大な手間と時間を要することなく、内部の流体圧による不平均力に対抗できる強度を有する管継手構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第一の実施形態を示し、(a)は側面図、(b)は(a)の断面図、(c)は押し輪の側面図
【図2】(a)(b)は、第一の実施形態の押し輪の斜視図
【図3】(a)〜(e)は、管継手構造を構築する際の手順を示す説明図
【図4】異形管の敷設状態を示す平面図
【図5】第二の実施形態を示し、(a)は側面図、(b)は(a)の断面図
【図6】(a)(b)は、第二の実施形態の押し輪の詳細図
【図7】第三の実施形態を示し、(a)は側面図、(b)(c)は(a)の断面図
【図8】第三の実施形態の押し輪の側面図
【図9】従来の異形管の敷設状態を示す平面図
【図10】従来例の管継手構造を示す断面図
【図11】従来例の管継手構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施形態の管継手構造を、図面に基づいて説明する。ここでは、図4に示すように、水道管用ダクタイル管の45度の曲がり管(異形管)p’と、その前後の直管pとの継手部10を想定している。ただし、この管継手構造を適用できる継手部10は、このような曲がり管p’の継手部10には限定されず、他の形態からなる異形管p’の継手部10にも採用できる。また、直管p同士の継手部にももちろん採用できる。
【0025】
(第一の実施形態)
第一の実施形態の継手部10の構成は、図1に示すように、受口2の内周面と挿し口1の外周面との間の環状の隙間に、ゴムなどの弾性体で一体に形成された環状のゴム輪12が介在している。
【0026】
ゴム輪12の内周面は円筒面であり、挿し口1の外周面の円筒面に密着している。また、ゴム輪12の外周面は、図1の左側に示す後端部12b側から、右側に示す前端部12c側に向かうにつれて(受口2側に近づくにつれて)徐々に縮径する傾斜面12aとなっている。なお、この管継手構造は、「K形継手」と呼ばれる。図中の符号cは、この継手部10近傍における管軸中心を示している。
【0027】
また、ゴム輪12の後端部12b側に隣接して、挿し口1の外周には、環状の押し輪11が取り付けてられている。この押し輪11は、管軸方向に伸びる筒状の本体部11aと、その本体部11aの中ほどから管径方向外側に立ち上がるフランジ部11bとを備える。その本体部11aの前端11cは、前記ゴム輪12の後端部12bに当接している。
【0028】
その押し輪11のフランジ部11bには、管軸方向に伸びる貫通孔11dが形成されている。また、受口2の端部には、管径方向外側に立ち上がるフランジ部4が設けられており、そのフランジ部4には、ねじ孔5が形成されている。押し輪11の貫通孔11dと受口2のねじ孔5とは同数であり、管軸周り同一方位に設けられて対応する貫通孔11dとねじ孔5とが管軸方向に対向している。
【0029】
この貫通孔11dとねじ孔5とに、図1に示すように接合ボルト13が挿通される。接合ボルト13にはナット14がねじ込まれて、そのナット14により、フランジ部11b,4間が近寄る方向に締付けられる。この締付けにより、押し輪11の本体部11aの前端11cが、ゴム輪12の後端部12bを押して、そのゴム輪12が前記環状の隙間に押し込まれる。
【0030】
このとき、受口2の内面には、図1(b)に示すように、その奥部に向かうにつれて徐々に内径側に近づく傾斜面2aが形成されている。また、ゴム輪12の傾斜面12aは、その受口2の傾斜面2aに摺接している。
このため、ゴム輪12が押し輪11によって受口2の奥部へ押し込まれることによって、そのゴム輪12は、前記傾斜面2a,12a間の摺動とともに、全周に亘って徐々に受口2の内面と挿し口1の外面との密着度合いを増して、最終的に受口2と挿し口1とが水密に接続される。
【0031】
なお、そのナット14による締付けは、ゴム輪12の前端部12cが、受口2の前記傾斜面2aの奥部に設けられた段部2bに当接したところで、ゴム輪12と受口2の内面及び挿し口1の外面とが所定の密着度合いとなって、終了するように設定されている。
【0032】
また、この継手部10には、押し輪11と挿し口1との管軸方向への相対移動を規制するロック機構20が備えられている。ロック機構20の構成は、図1(b)及び図2(a)(b)に示すように、前記押し輪11の内周には、内径方向に向かって突出する凸部21が設けられている。この実施形態では、凸部21は、管軸周りの全周に亘って、等しい幅及び等しい突出高さで連続的に形成された突条となっている。また、この実施形態では、その突条の中心線方向は、その継手部10を構成する前記受口2及び前記挿し口1における管軸方向に対して直交する面内に配置されている。
【0033】
また、前記挿し口1の外周には、凹部22が設けられている。凹部22は、管軸周りの全周に亘って、等しい幅及び等しい深さで連続的に形成された溝となっている。また、この実施形態では、その溝の中心線方向は、その継手部10を構成する前記受口2及び前記挿し口1における管軸方向に対して直交する面内に配置されている。
【0034】
なお、凹部22の幅及び深さは、凸部21がしっくりと入り込むことができるものとなっている。凹部22内に凸部21が入り込んだ後は、挿し口1の外周面と押し輪11の内周面とが面接触し、さらに、その凹部22と凸部21とが噛み合うことで、挿し口1と押し輪11とががたつかないようになっている。
ただし、凹部22内に凸部21がスムーズに入り込むことができるよう、両者の間に幅方向に対して多少の隙間が介在することはさしつかえない。
【0035】
このように、押し輪11の内周の凸部21が、挿し口1の外周の凹部22に入り込むことにより、前記受口から前記挿し口が抜け出そうとする力(図1(b)の矢印a,b、矢印c,d参照)に対し、その凸部21と凹部22とが噛み合うことでその抜け出し力に対抗している。すなわち、凸部21が凹部22に入り込むことで受口2からの挿し口1の抜け出しを防止し、管体p,p’に生じる前記不平均力に対抗できることから、従来行っていたコンクリート防護の規模を縮小し、あるいは、コンクリート防護自体を省略することができる。このため、管継手構造を構築するための手間と時間の縮小に寄与している。
【0036】
この管継手構造を有する継手部10の構築方法を、図3に基づいて説明すると、まず、図3(a)から(b)に示すように、挿し口1の外周にゴム輪12を嵌めて取り付ける。
【0037】
つぎに、そのゴム輪12の後端側に、図3(c)に示すように、押し輪11を取り付ける。押し輪11は、図1(c)及び図2に示すように、その内周側に円筒状の部材(前記本体部11aに相当)を有する対の円弧状部材15,15によって構成されている。
【0038】
すなわち、押し輪11は、半円状の円弧状部材15,15同士が、その端部にそれぞれ設けた連結部15a,15aを介して連結されて、環状を成すようになっている。
連結部15a,15aは、管軸方向にフラット面を有する板状を成し、それぞれその板状の部分を表裏に貫通する貫通孔15b,15bを有している。
【0039】
その各連結部15a,15aを管軸方向に重ね、対応する貫通孔15b,15bが同一の位置に来るようにする。さらに、その貫通孔15b,15bに連結ボルト16を挿通してナット16aで締付けて、円弧状部材15,15同士を環状に連結する(図2(b)参照)。この連結ボルト16は、受口2のフランジ部4に設けたねじ孔5にも挿通されるから、そのナット16aの締付けによって、前記接合ボルト13及びナット14と同じ機能も発揮するようになっている。
なお、この連結ボルト16とナット16aに関し、受口2のねじ孔5には挿通しないで(接合ボルト13及びナット14と同じ機能を有さないで)、専ら、円弧状部材15,15同士を環状に連結することのみを目的とした構成を採用してもよい。
【0040】
ナット16aを締付けて押し輪11が環状になり、図3(c)から(d)に示すように、凸部21が凹部22に入り込んで、挿し口1と押し輪11とが動かないように固定される。最後に、図3(d)から(e)に示すように、前記接合ボルト13にナット14を締めつける。
このとき、前記連結ボルト16とナット16a、及び、前記接合ボルト13とナット14の各締付け度合いは、それぞれ一気に最後まで締付けるのではなく、両者が均等な締付け力を維持しながら、徐々にゴム輪12が環状空間内に押し込まれていくよう、交互に少しずつ締付けていく手法を採用することができる。
【0041】
このように、押し輪11が周方向に分割されていることによって、押し輪11の取り付けの際に、その押し輪11は、図3(c)に矢印で示すように、挿し口1の外周面にあてがえばよく、管軸方向にスライドさせて位置合わせする必要がない。このため、その押し輪11の凸部21が挿し口1の外周面に食い込んで傷つけたり、あるいは、防食のために施された外面塗装を損傷させたりする事態を防ぐことができる。また、凹部22と凸部21の噛み合わせによって、その位置合わせも容易である。
【0042】
さらに、この実施形態では、前記凸部21を成す突条の中心線方向、及びそれが入り込み凹部22を成す溝の中心線方向とは、前記受口2及び前記挿し口1における管軸方向に対して直交する面内に配置されている。このため、前記不平均力Aが生じた際に、受口2から挿し口1が抜け出そうとする管軸方向への動きに対し、その中心線方向が直交する方向となって、より高い抜け出し防止の効果が期待できる。
【0043】
なお、その変形例として、前記凸部21を成す突条の中心線方向、及びそれが入り込み凹部22を成す溝の中心線方向が、前記受口2及び前記挿し口1における管軸方向に対して直交する面に対して交差する方向であっても、凹部22に凸部21が噛み合っていれば、所定の抜け出し防止の効果が発揮できることには変わりない。
【0044】
また、この実施形態では、押し輪11のフランジ部11bは、本体部11aの管軸方向中ほどから立ち上がる構成としたが、このフランジ部11bは、従来例のように本体部11aの後端部付近から立ち上がる場合も想定され、この実施形態の形状の押し輪11に限定されるものではない。これは、後述の各実施形態においても同様である。
【0045】
(第二の実施形態)
第二の実施形態を図5及び図6に示す。この実施形態は、前述の第一の実施形態に対し、前記各円弧状部材15,15の連結部15a,15aの形態を変更したものである。
【0046】
すなわち、押し輪11は、半円状の円弧状部材15,15同士が、その端部にそれぞれ設けた連結部15a,15aを介して連結されて、環状を成すようになっている点は、第一の実施形態と同様である。
連結部15a,15aは、管軸c周りの周方向に直交する方向にフラット面を有する板状を成し、それぞれその板状の部分を表裏に貫通する貫通孔15b,15bを有している。この実施形態では、各連結部15aのフラット面の面方向は、前記管軸cを通る面方向(管軸c周りの周方向に直交する方向)となっているが、その面方向は、対向する連結部15a,15a同士を重ねあわすことができ、且つ、連結ボルト16及びナット16aで締付け可能であれば任意の方向であってよい。
【0047】
その各連結部15a,15aを、挿し口1周りの周方向に重ね、対応する貫通孔15b,15bが同一の位置に来るようにする。さらに、その貫通孔15b,15bに連結ボルト16を挿通してナット16aで締付けて、円弧状部材15,15同士を環状に連結する(図5(a)参照)。接合ボルト13及びナット14の扱い等については、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
(第三の実施形態)
第三の実施形態を図7及び図8に示す。この実施形態は、押し輪11と受口2との間に、屈曲防止ボルト17を設けたものである。
【0049】
この実施形態において、押し輪11のフランジ部11bには、周方向に沿って、管軸方向に伸びる複数のねじ孔11eが設けられている。この実施形態では、接合ボルト13に対応する前記貫通孔11dと、このねじ孔11eとを周方向に沿って一つずつ交互に配置している。
【0050】
このねじ孔11eに、屈曲防止ボルト17が挿し口1側から受口2側へ向かってねじ込まれている。また、その屈曲防止ボルト17の前端17bは、受口2のフランジ部4の挿し口1側端面に当接している。
【0051】
このように、屈曲防止ボルト17の前端17bが、前記受口2のフランジ部4の端面に当たることで、前記不平均力の発生に伴う、受口2からの挿し口1の抜け出しをさらに確実に防止することができる。例えば、図中に矢印e,fで示すような曲げ方向の外力に対し、屈曲防止ボルト17と受口2のフランジ部4とが、矢印g,hのように対抗し得るのである。
【0052】
この管継手構造を有する継手部10の構築方法を説明すると、前述の図3(a)〜(e)と同じ手法、手順により、押し輪11の貫通孔11dと前記受口2のねじ孔5とに挿通された接合ボルト13にナット14をねじ込むことで、ゴム輪12が前記環状空間内に押し込まれる(図7(b)参照)。
【0053】
その後、前記押し輪11の全てのねじ孔11eに、図7(c)に示すように、屈曲防止ボルト17をねじ込み、その前端17bを受口2のフランジ部4の端面に当接させ、作業が完了する。
【0054】
なお、この実施形態では、接合ボルト13と屈曲防止ボルト17とを周方向に沿って交互に配置しているが、その配置は、自由に設定できる。例えば、周方向に沿って、接合ボルト13、屈曲防止ボルト17、屈曲防止ボルト17、接合ボルト13、屈曲防止ボルト17、接合ボルト13・・・といった順に、周方向に隣り合う接合ボルト13,13の間に2本の屈曲防止ボルト17を配置してもよいし、逆に、周方向に隣り合う屈曲防止ボルト17,17の間に2本の接合ボルト13を配置するなどしてもよい。
なお、屈曲防止ボルト17を採用する際、押し輪11の連結部15aの形態については、図7及び図8に示す態様以外のものも採用し得る。例えば、図5及び図6に示すものであってもよいし、環状に一体に形成された押し輪11であってもよい。
【0055】
上記の各実施形態では、凸部21と凹部22の態様については、凸部21は、管軸周りの全周に亘って、等しい幅及び等しい突出高さで連続的に形成された突条とし、その突条の中心線方向は、その継手部10を構成する前記受口2及び前記挿し口1における管軸方向に対して直交する面内に配置している。また、前記挿し口1の外周の凹部22は、その凸部21に対応して、同じく、管軸周りの全周に亘って、等しい幅及び等しい深さで連続的に形成された溝としている。
この凸部21と凹部22の他の態様としては、例えば、突条からなる凸部21の幅や突出高さ、あるいはその両方が周方向に沿って途中で変化する態様としてもよい。このとき、対応する溝からなる凹部22もそれに合わせて、凸部21がしっくりと入り込むことができる態様とすることはもちろんである。このようにすると、挿し口1に対する押し輪11の取り付け方位(管軸c周りの方位)が決定される。
【0056】
また、これらの各態様における突条や溝の中心線方向は、その継手部10を構成する前記受口2及び前記挿し口1における管軸方向に対して直交する面に交差する方向に配置してもよい。
【0057】
さらに、その凸部21を周方向に沿って連続的とせず、断続的としてもよい。また、単一の又は複数の凸部21を、押し輪11の内周面の任意の位置に設けてもよい。それぞれの態様において、凹部22は、その凸部21に対応した形状、大きさ、位置とすることはもちろんである。
【0058】
また、上記の各実施形態では、半円状の円弧状部材15を二つ一組で用いて押し輪11を構成したが、押し輪11は環状に一体成型されたものでもよいし、三つ一組、四つ一組、あるいはそれ以上の数からなる円弧状部材15を環状に連結して押し輪11を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 挿し口
2 受口
4 フランジ部
5 ねじ孔
9,10 継手部
11 押し輪
11a 本体部
11b フランジ部
11d 貫通孔
11e ねじ孔
12 ゴム輪
13 接合ボルト
14 ナット
15 円弧状部材
16 連結ボルト
17 屈曲防止ボルト
17b 前端
20 ロック機構
21 凸部(突条)
22 凹部(溝)
p 直管(管体)
p’ 異形管(管体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受口(2)内に挿し口(1)を挿入し、その受口(2)の内周面と挿し口(1)の外周面との間の環状空間にゴム輪(12)を介在させ、前記挿し口(1)の外周に環状の押し輪(11)を取り付けて、その押し輪(11)で前記ゴム輪(12)を前記環状空間内に押し込んで固定した管継手構造において、
前記押し輪(11)の内周に内径方向に向く凸部(21)を設け、前記挿し口(1)の外周に凹部(22)を設け、その凸部(21)が前記凹部(22)に入り込むことにより、前記受口(2)からの前記挿し口(1)の抜け出しを防止していることを特徴とする管継手構造。
【請求項2】
前記受口(2)又は前記挿し口(1)は、異形管の管端部に設けられたものであることを特徴とする請求項1に記載の管継手構造。
【請求項3】
前記押し輪(11)は、複数の円弧状部材(15,15)が周方向に沿って連結されることにより環状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管継手構造。
【請求項4】
前記円弧状部材(15,15)同士の連結は、前記各円弧状部材(15,15)の端部に設けた連結部(15a,15a)を重ね、その連結部(15a,15a)同士を連結ボルト(16)で接合して行われることを特徴とする請求項3に記載の管継手構造。
【請求項5】
前記押し輪(11)は、管軸方向に伸びる筒状の本体部(11a)と、その本体部(11a)から管径方向外側に立ち上がるフランジ部(11b)とを備え、前記本体部(11a)の前端(11c)が、前記ゴム輪(12)の後端部(12b)に当接しており、
前記押し輪(11)のフランジ部(11b)に、管軸方向に伸びる貫通孔(11d)とねじ孔(11e)とを設け、前記受口(2)の端部には、管径方向外側に立ち上がるフランジ部(4)が設けられており、前記受口(2)のフランジ部(4)にねじ孔(5)が設けられて、
前記押し輪(11)の貫通孔(11d)と前記受口(2)のねじ孔(5)とに挿通された接合ボルト(13)にナット(14)をねじ込むことで、前記ゴム輪(12)が前記環状空間内に押し込まれるようになっており、前記押し輪(11)のねじ孔(11e)にねじ込まれた屈曲防止ボルト(17)の前端が、前記受口(2)のフランジ部(4)の端面に当接していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の管継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−203580(P2010−203580A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52201(P2009−52201)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】