管継手用ガイドリング及び管継手
【課題】管継手に対する管の接続作業性を高めることができるガイドリングを提供する。
【解決手段】管継手における内筒体14の外周面に設けられ、かつ当該外周面に対して管Pを装着する際に前記内筒体14に取り付けられた弾性シール部材を管Pに先行して径方向内方へ押圧し、当該管Pの先端内縁が前記弾性シール部材に接触するのを防止する、管継手用ガイドリング60であって、環状に形成されるとともに、管Pの先端面を当接させる当接面61aを管装着方向X2の後方側に有している当接部61と、前記当接部61から管装着方向X2の後方側へ延び、径方向に変形可能なガイド部62と、を備えており、前記ガイド部62が、前記当接面61aよりも管装着方向X2の先方側に径方向に変形する際の基点部を有し、前記ガイド部62の先端部が、前記当接面61aよりも管装着方向X2の後方側に突出して管の筒内に挿入される。
【解決手段】管継手における内筒体14の外周面に設けられ、かつ当該外周面に対して管Pを装着する際に前記内筒体14に取り付けられた弾性シール部材を管Pに先行して径方向内方へ押圧し、当該管Pの先端内縁が前記弾性シール部材に接触するのを防止する、管継手用ガイドリング60であって、環状に形成されるとともに、管Pの先端面を当接させる当接面61aを管装着方向X2の後方側に有している当接部61と、前記当接部61から管装着方向X2の後方側へ延び、径方向に変形可能なガイド部62と、を備えており、前記ガイド部62が、前記当接面61aよりも管装着方向X2の先方側に径方向に変形する際の基点部を有し、前記ガイド部62の先端部が、前記当接面61aよりも管装着方向X2の後方側に突出して管の筒内に挿入される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手用ガイドリング及び管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に配慮したクリーンな給湯システムとしてヒートポンプ式給湯装置が普及してきている。ヒートポンプ式給湯装置は、冷凍サイクルにより温水を生成する冷媒回路を内蔵したヒートポンプユニットと、ヒートポンプユニットで生成された温水を貯水する貯水ユニットとを備えている。また、ヒートポンプ式給湯装置においては、現地据付工事に際して、ヒートポンプユニットと貯水ユニットとの間で温水を循環させるための連絡配管や、貯水ユニットから浴槽等の温水利用機器に温水を供給するための連絡配管が引き回され、各ユニットや温水利用機器に接続される。
【0003】
一般に、各ユニットや温水利用機器に連絡配管(以下、単に「管」ともいう)を接続するためには、管継手が用いられている。例えば、下記特許文献1には、図12に示されるように、管Pが外装される円筒部114を有する継手本体170と、継手本体170の円筒部114の外周部に装着される弾性圧縮可能なシール部材136と、継手本体の円筒部114の外周に隙間Sを形成して固設される保護キャップ115と、を備えた管継手110が開示されている。
【0004】
管継手110のシール部材136は、管Pの内周面に圧接するために円筒部114の外周面よりも径方向外方に膨出している。そのため、管Pを円筒部114と保護キャップ115との隙間Sに挿入するときに、管Pの先端内縁に面取りが形成されていないと、当該先端内縁がシール部材136に引っかかり、シール部材136を損傷させてしまう恐れがある。このような問題を未然に防止するため、特許文献1記載の管継手110には、管Pを挿入する際に管Pに先行してシール部材136の膨らみを押さえつけることによって、管Pの先端内縁とシール部材136との直接的な接触を防止するガイドリング160が設けられている。
【0005】
このガイドリング160は、図13にも示されるように、管Pの先端面に当接する鍔部(当接部)161と、鍔部161の内径側から延出し、管Pの先端筒内に挿入される円筒部(ガイド部)162とからなっている。そして、管Pを継手本体170の円筒部114と保護キャップ115との隙間Sに挿入する際に、管Pの先端面を鍔部161に当接させるとともに、ガイドリング160の円筒部162を管Pの筒内に挿入し、鍔部161及び円筒部162によってシール部材136を押さえつけながら管Pを挿入する。これにより、管Pの先端内縁がシール部材136に引っかかることがなく、シール部材136の損傷を防止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−336712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のガイドリング160は、継手本体170の円筒部114と保護キャップ115との隙間Sに管Pを挿入するときにシール部材136を押さえつけるため、シール部材136からガイドリング160に付与される抵抗力(摩擦力等)に抗する強い力で管Pを挿入する必要がある。
【0008】
一方、ガイドリング160は、円筒部162を管Pの筒内に容易に挿入させるために、円筒部162の外径が管Pの内径よりも余裕をもって小さく形成され、円筒部162の外径と管Pの内径との間には隙間が形成される。この隙間は円筒部162を管Pの筒内に挿入させるときには必要であるが、円筒部162がシール部材136を押さえつけるときには不要となる。これは、隙間を形成するために円筒部162がより径方向内側に配置され、シール部材136を余分に押さえつけてしまうからである。そのため、特許文献1のガイドリング160は、管Pを挿入するために非常に強い力(挿入力)が必要となり、管Pの接続作業性が悪化していた。
【0009】
また、ガイドリング160の円筒部162は、その軸方向の長さが長いほど管Pの内周面に沿うように径方向に変形しやすくなり、管Pの挿入力を低下させるのに役立つ。また、円筒部162が軸方向に長いと、管Pの端面が斜めになっているような場合でも適切に円筒部162を筒内に挿入させることができる。
しかし、特許文献1のガイドリング160の場合、円筒部162を軸方向に長くすると、同時にガイドリング160全体も軸方向に長くなってしまう。ガイドリング160は、その軸方向長さが長くなるほど、シール部材136を軸方向に長い範囲で押さえつけることになるため、管Pを挿入するために強い力を長い時間付与しなければならなくなる。したがって、特許文献1の技術では、円筒部162を軸方向に長くしたとしても、それほど管Pの接続作業性を改善させることはできなかった。
【0010】
本発明は、上記の実情に鑑み、管継手に対する管の接続作業性を高めることができる管継手用ガイドリング及び管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、管継手における内筒体の外周面に設けられ、かつ当該外周面に対して管を装着する際に前記内筒体に取り付けられた弾性シール部材を管に先行して径方向内方へ押圧し、当該管の先端内縁が前記弾性シール部材に接触するのを防止する、管継手用ガイドリングであって、
環状に形成されるとともに、管の先端面を当接させる当接面を管装着方向の後方側に有している当接部と、
前記当接部から管装着方向の後方側へ延び、径方向に変形可能なガイド部と、を備えており、
前記ガイド部は、前記当接面よりも管装着方向の先方側に径方向に変形する際の基点部を有し、
前記ガイド部の先端部が、前記当接面よりも管装着方向の後方側に突出して管の筒内に挿入されることを特徴とする。
【0012】
本発明のガイドリングは、ガイド部が径方向に変形する際の基点部が、当接部の当接面よりも管装着方向の先方側に位置し、ガイド部の先端部が、前記当接面よりも管装着方向の後方側に突出している。このような構成により、ガイドリング全体を軸方向に長くしなくてもガイド部を軸方向に長く形成することができる。そのため、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力を好適に低減することができ、管の接続作業性を高めることができる。
【0013】
(2)前記ガイド部の基点部における外径寸法は、前記当接面の軸方向位置における前記ガイド部の外径寸法よりも大きく設定されていることが好ましい。
このような構成によって、管の内径に応じてガイド部が基点部を支点に径方向外方へ変形すると、ガイド部の内径寸法が拡大され、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力をより弱めることができる。したがって、内筒体に対して管を装着するために要する力をより低減させることができる。
【0014】
(3)前記ガイド部の基点部における外径寸法は、管の内径寸法よりも大きく設定されていてもよい。
このような構成によって、管の内径に応じてガイド部が基点部を支点に径方向外方へ変形すると、ガイド部の内径寸法がより拡大され、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力をより弱めることができる。したがって、内筒体に対して管を装着するために要する力をより低減することができる。
【0015】
(4)前記当接面の軸方向位置における前記ガイド部の外径寸法は、管の内径寸法と同一かこれより小さく設定されていてもよい。
このような構成によって、管の筒内にガイド部の先端部を確実に挿入することができる。
【0016】
(5)前記当接面から前記ガイド部の基点部までの軸方向寸法L3と、前記当接部の軸方向の長さ寸法L2とは、
(1/2)×L2≦L3<L2
の関係に設定されていることが好ましい。
このような構成によって、ガイドリング全体の軸方向長さを大きくしなくても、ガイド部の径方向に変形可能な部分の長さを十分に確保することができ、ガイド部をより径方向に変形させ易くすることができる。
【0017】
(6)前記ガイド部は、管装着方向の後方側ほど径方向内側に位置するように傾斜していてもよい。
このような構成によって、ガイド部を管の筒内に挿入し易くすることができる。
【0018】
(7)前記ガイド部は、周方向に間隔をあけて複数形成されていることが好ましい。
このような構成によって、ガイド部は、弾性シール部材を周方向に関して部分的に押さえつけることになり、その分、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力を弱めることができる。したがって、内筒体に対して管を装着するために要する力をより低減することができる。
【0019】
(8)各ガイド部は、管装着方向の後方側へ向かうに従い漸次周方向の幅寸法が減少していることが好ましい。
このような構成によって、各ガイド部の先端部を管の筒内へ挿入し易くすることができるとともに、各ガイド部をより径方向に変形させ易くすることができる。
【0020】
(9)本発明の管継手は、外周面に管が装着される内筒体と、この内筒体の外周面に設けられ、当該内筒体に装着された管の内周面に圧接する弾性シール部材と、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の管継手用ガイドリングと、を備えていることを特徴とする。
【0021】
(10)上記の管継手において、前記内筒体の径方向外側に外筒体が設けられ、
前記外筒体の内周面に、管の外周面に係止して管を保持する保持環が設けられており、
前記ガイドリングは、当該管継手に対する管の装着前の状態で、前記保持環の内周面に嵌合されていることが好ましい。
この構成によれば、ガイドリングを利用して保持環のがたつきを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、管継手に対する管の接続作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガイドリングを適用した管継手を示す斜視図である。
【図2】図1に示される管継手の断面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】管継手における弾性シール部材及び保持環の装着部分を拡大して示す断面図である。
【図5】ガイドリングの正面図である。
【図6】図5のA−A矢視断面図である。
【図7】ガイドリングと管との寸法関係を示す拡大断面図である。
【図8】管継手に対する管の接続作業を説明する概略的な断面図である。
【図9】管継手に対する管の接続作業を説明する概略的な断面図である。
【図10】実施例と従来例との管の挿入力を比較して示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るガイドリングと管との寸法関係を示す拡大断面図である。
【図12】従来技術に係るガイドリングを適用した管継手の断面図である。
【図13】従来技術に係るガイドリングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガイドリングを適用した管継手を示す斜視図である。
本実施形態の管継手10は、液体や気体等の流体が流れる管Pと、この流体を利用する各種の機器Uとを接続するために用いられるものであり、その軸方向の先端部が管Pの端部に接続され、軸方向の基端部が機器Uに接続される。したがって、管継手10の軸方向先端側には、管Pを挿入するための挿入口11が形成され、軸方向基端側には、機器U側の配管(被接続箇所)U1の端部に設けられた雄ネジに螺合するナット(ネジ筒)16が設けられている。
【0025】
なお、本実施形態の管継手10は、主として常温(例えば、5℃〜35℃)において相変化をしない水、海水、薬品、ブライン等の液体を扱う機器Uと管Pとの接続のために好適に使用される。特に、給湯装置、空気調和装置、及び床暖房装置等における熱源ユニットと配管との接続等に好適に使用される。また、管Pは、耐食性や耐熱性が良好な架橋ポリエチレン管やボリブデン管等の硬質樹脂管や、アルミニウム等の金属管の内面及び外面を樹脂材で被覆した三層管等の金属強化樹脂管が使用される。硬質樹脂管や三層管は、耐熱性が高いため、例えば、CO2冷媒を使用した熱源ユニットのように90℃以上の非常に高温の温水を生成するシステムで好適に使用される。
【0026】
図2は、図1に示される管継手の断面図である。なお、この図に示される管継手10は、管Pが接続される先端部が図における左側に示され、機器Uの被接続箇所U1に接続される基端部が図における右側に示されている。
管継手10は、主として内筒体14と、外筒体15と、ナット16とから構成されている。内筒体14、外筒体15、及びナット16は、脱鉛青銅、砲金等の金属材料や硬質の樹脂材料からなる。内筒体14は、円筒形状に形成され、その先端部の外周面には環状の切欠溝17が形成され、この切欠溝17よりも基端側(図2の右側)には、弾性シール部材36を装着するための環状の装着溝(シール装着部)18が形成されている。内筒体14の基端部の内周面は、基端側へ向かうに従って内径が拡大するテーパー面19に形成されている。
【0027】
外筒体15は、円筒形状に形成され、内筒体14の径方向外側に、当該内筒体14と同心状に配置されている。そして、この外筒体15の内周面と内筒体14の外周面との間には、管Pを挿入することができるスペースS(以下、「挿入スペース」ともいう)が形成されている。外筒体15の先端部の外周面は、基端側に向かうに従って外径が大きくなるテーパー面24に形成されている。外筒体15の先端部の内周面には、後述する保持環42を収容するための環状の保持凹部25が形成されている。この保持凹部25は、内筒体14に形成された切欠溝17と装着溝18の径方向外側に重複した位置に配置されている。
【0028】
ナット(ネジ筒)16は、外筒体15の基端部に一体に形成されている。つまり、ナット16と外筒体15とは、一つの素材を機械加工することによって単一の部品で構成されている。このナット16の外周面27は、スパナ等の工具を嵌合させることが可能な六角形状に形成され、内周面には雌ネジ28が形成されている。なお、ネジ筒16は、機器U側の被接続箇所U1の形状に応じて、外周面に雄ネジを有する形態とすることも可能である。
【0029】
図3は、図2の一部を拡大して示す断面図である。
内筒体14の基端部には、径方向外方に突出する環状の第1突条部21が形成されている。また、第1突条部21の先端側(図3の左側)に隣接した位置には、当該第1突条部21よりも小さい突出量で径方向外方へ突出する環状の第2突条部22が形成されている。一方、ナット16の先端側には、径方向内方に突出する環状の第3突条部29が形成されている。
【0030】
図2に示されるように、内筒体14は、ナット16の基端側(図2における右側)からナット16の内部に挿入され、さらにナット16よりも先端側(図2における左側)へ突出して外筒体15の内部に配置される。この際、図3に示されるように、内筒体14の第1突条部21がナット16の第3突条部29の軸方向後端面(規制面)29aに当接することによって、ナット16に対する内筒体14の先端側への移動が制限されている。すなわち、第3突条部29は、ナット16に対する内筒体14の先端側への移動を規制する位置規制部を構成し、第1突条部21は、位置規制部29によって移動が規制される被規制部を構成している。
【0031】
このように、ナット16の第3突条部29と内筒体14の第1突条部21とを軸方向に当接させることによって、ナット16に対する内筒体14の先端側への移動を制限しているので、ナット16に対する内筒体14の抜け止めをするためにCリング等の他の抜け止め用の部品を別途設ける必要がなく、管継手10の組立てを非常に簡単に行うことができるとともに、部品点数の削減を図ることができる。
【0032】
内筒体14に形成された第2突条部22は、挿入スペースSに対する管Pの挿入限界を設定するストッパとしての機能を有している。本実施形態では、第2突条部22に対して管Pが直接的に当接するのではなく、後述するガイドリング60が当接している。
【0033】
ナット16の内部には、環状のパッキン33が設けられており、このパッキン33は、内筒体14の基端面と、機器U側の被接続箇所U1の先端面との間に挟まれ、両者の間からの流体の漏れを防止している。また、管継手10の不使用時や、管継手10に管Pのみを接続した状態では、ナット16に対する内筒体14の基端側への移動が制限されないため、ナット16には、内筒体14の基端側への移動を制限するキャップ(図示略)が適宜螺合される。
【0034】
図2に示されるように、内筒体14に形成された装着溝18には、環状の弾性シール部材36が装着されている。この弾性シール部材36は、弾性変形可能な素材、例えばニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、フッ素系ゴム等によって形成されている。弾性シール部材36の軸方向幅は、装着溝18の軸方向幅よりも小さく形成されている。
【0035】
図4は、管継手における弾性シール部材及び保持環の装着部分を拡大して示す断面図である。弾性シール部材36の外周面には、径方向外方へ円弧状に膨出する2つの環状のシール部38a,38bが軸方向に並べて形成されている。これらシール部38a,38bは、装着溝18に挿入された状態で内筒体14の外周面よりも径方向外方へ突出している。そして、これらシール部38a,38bは、挿入スペースS内に挿入された管Pの内周面に密着することによって、内筒体14と管Pとの間の流体の漏れを防止する機能を有している。
【0036】
本実施形態の弾性シール部材36は、軸方向に2つのシール部38a,38bを一体に備えた構成となっているが、2つのシール部38a,38bが別体に形成され、互いに独立した構成とされていてもよい。例えば、弾性シール部材36は、1つのシール部を構成するOリング等を軸方向に2つ並設することによって構成されていてもよい。さらにシール部は1つのみであってもよい。また、内筒体14に対して軸方向の2箇所以上に弾性シール部材36が設けられていてもよい。
【0037】
図4に示されるように、外筒体15の内周面に形成された保持凹部25内には保持環42が収容されている。この保持環42は、周方向の一部分が欠落したC字形状に形成されており、この欠落した部分の間隔を狭めるように弾性変形させることによって径方向寸法を縮小できるようになっている。
【0038】
保持環42の内周面における軸方向先端部(左端部)には、径方向内方に突出する第1爪部(第1保持部)46が形成され、軸方向基端部(右端部)には、径方向内方に突出する第2爪部(第2保持部)45が形成されている。この第1爪部46と第2爪部45とは、保持環42の径方向寸法を縮小させることによって管Pの外周面に強く押し付けられて食い込み、管Pを強固に保持する機能を有している。
【0039】
保持環42の外周面における軸方向先端部には、基端側(図4における右側)に向かうにしたがって外径が大きくなるように傾斜する第1傾斜面49が形成されている。また、この第1傾斜面49よりも基端側には、基端側に向かうにしたがって外径が大きくなるように第1傾斜面49と略同一の角度で傾斜する第2傾斜面48が形成されている。第1傾斜面49と第2傾斜面48との間には第1段差面50が形成されており、この第1段差面50は、中心軸線Oに略平行に形成されている。
【0040】
外筒体15に形成された保持凹部25の底面は、保持環42の第1傾斜面49と略同一の角度で傾斜し、当該第1傾斜面49に当接する第3傾斜面54と、保持環42の第2傾斜面48と略同一の角度で傾斜し、当該第2傾斜面48に当接する第4傾斜面53とを有している。また、第3傾斜面54と第4傾斜面53との間には中心軸線Oに略平行な第2段差面55が形成されている。
【0041】
外筒体15と内筒体14との間の挿入スペースS内に管Pが挿入され、管Pの内部を流れる流体の圧力等によって管Pに挿入スペースSから離脱する方向(矢印X1)への力が作用すると、保持環42は、管Pとともに先端側へ移動するとともに、第1〜第4傾斜面49,48,54,53の作用で外筒体15によって径方向内方へ押され、径方向寸法が縮小する。そして、保持環42の径方向寸法が縮小することによって、第1爪部46及び第2爪部45が強く管Pの外周面に押し付けられ、挿入スペースSからの管Pの離脱が確実に防止される。特に、保持環42は、軸方向両側の第1,第2傾斜面49,48の2箇所において径方向内方に押されるため、保持環42を軸方向の略全体の範囲で管Pの周面に強く押し付けることができる。
【0042】
図2に示されるように、本実施形態の管継手10には、挿入スペースSに対して管Pを挿入する際に、管Pの内周端縁が弾性シール部材36に引っかかることによって当該弾性シール部材36を損傷させることがないように、管Pと弾性シール部材36との直接的な接触を防止しつつ、管Pの挿入を案内するガイドリング60が設けられている。このガイドリング60は、合成樹脂製であり、管継手10に対して管Pを挿入する前の状態で図8に示す位置にセットされている。
【0043】
図5は、ガイドリングの正面図、図6は、図5のA−A矢視断面図である。また、図7は、ガイドリングと管との寸法関係を示す拡大断面図である。
図3及び図5〜図7に示されるように、ガイドリング60は、当接部61と、ガイド部62とを有している。当接部61は、円環状に形成されるとともに、管Pの挿入方向(装着方向)X2における後方側(図3における左側;以下、「X2方向後方側」ともいう)に位置する側面が、管Pの先端面に当接する当接面61aとされている。また、当接部61の管Pの挿入方向X2における先方側(図3における右側;以下、「X2方向先方側」ともいう)に位置する側面が、内筒体14の第2突条部22に当接するストッパ面61bとされている。
【0044】
当接部61のX2方向先方側における外周面は、同先方側ほど外径が小さくなる傾斜面61cに形成されている。ガイドリング60は、管継手10の挿入口11(図2参照)から挿入スペースS内に挿入されることによって管継手10に装着されるが、この際に、当接部61に傾斜面61cが形成されていることによって、当該当接部61が外筒体15に引っ掛かりにくくなる。そのため、ガイドリング60を容易に管継手10に装着することが可能となる。
【0045】
ガイド部62は、当接部61の径方向内側部におけるX2方向先方側から同方向X2後方側へ向けて延びている。また、ガイド部62は、図5及び図6に示されるように、周方向に間隔をあけて複数設けられている。各ガイド部62は、X2方向後方側ほど周方向の幅が小さくなるように先細り形状(略三角形状)に形成されている。また、各ガイド部62は、X2方向後方側ほど径方向内側に位置するように傾斜している。
【0046】
より具体的には、図7に示されるように、ガイド部62は、その径方向外側の付け根部P3が、当接面61aよりもX2方向先方側に位置し、その先端部62aが、当接面61aよりもX2方向後方側へ突出している。また、ガイド部62は、付け根部P3を基点として径方向に弾性変形可能に構成されている。したがって、ガイド部62の付け根部P3は、弾性変形の基点部とされている。また、ガイド部62と当接部61との径方向の間には、ガイド部62の径方向の弾性変形を許容する空間部Rが形成されている。この空間部Rの存在によって、当接部61は、管Pの先端面の径方向外側の範囲のみに当接し、径方向内側には当接しないように構成されている。したがって、管Pの先端内縁P4は、当接部61には直接当接していない。
【0047】
ガイド部62は、ほぼ当接面61aの軸方向位置Yを境にして軸方向両側の傾斜角度が互いに相違している。すなわち、当接面61aよりもX2方向先方側(図7の右側)ではガイド部62の傾斜角度が急となり、当接面61aよりもX2方向後方側(図7の左側)ではガイド部62(先端部62a)の傾斜角度が緩やかとなっている。したがって、ガイド部62は、当接面61aの軸方向位置Yに屈曲部P2を有している。
【0048】
ガイドリング60の径方向内側面は、弾性シール部材36を押さえつけるための押さえ面60aとされている。この押さえ面60aは、ガイドリング60の軸方向の全長L1にわたって形成され、X2方向先方側ほど直径(内径)が大きくなる傾斜面に形成されている。この押さえ面60aが管Pに先行して弾性シール部材36の外周面を押さえることによって、管Pの先端内縁P4が弾性シール部材36に接触するのを防止する。
【0049】
図8及び図9は、管継手に対する管の接続作業を説明する概略的な断面図である。
ガイドリング60は、図8に示されるように、弾性シール部材36のほぼ径方向外側に位置するように装着される。ガイドリング60の押さえ面60aは、弾性シール部材36のX2方向後方側の端部を予め押さえた状態となっている。また、ガイドリング60のガイド部62は、その先端部62aが装着溝18内に入り込むことによって、内筒体14の外周面よりもやや沈んだ(凹んだ)位置に配置されている。ただし、ガイドリング60は、ガイド部62の先端部62aが切欠溝17の内部に入り込むように、弾性シール部材36よりもX2方向後方側に装着されていてもよい。
【0050】
管Pを挿入口11から挿入スペースSに挿入すると、管Pの内周面にガイド部62の先端部62aが挿入され、管Pの先端面がガイドリング60の当接面61aに当接する。そして、管PをX2方向先方側(図8における右側)へさらに押し込むと、図9に示されるように、管Pに先行してガイドリング60の面60aが弾性シール部材36を押さえつける。そして、図2に示されるように、ガイドリング60が内筒体14の第2突条部22に当接する位置まで管Pを押し込むことによって管継手10に対する管Pの接続が完了する。以上により、管Pの先端内縁が弾性シール部材36に接触することはなく、弾性シール部材36を損傷させてしまうこともない。
【0051】
なお、管継手10に管Pを接続した状態で、管Pは内筒体14の第2突条部22に直接接触しておらず、管Pと第2突条部22との間には合成樹脂製のガイドリング60が介在している。このため、管Pが三層管であり、内筒体14が金属製である場合には、三層管の金属層が直接的に内筒体14に触れなくなるため、両者の間を電気的に絶縁することができる。
また、ガイドリング60の当接部61が、三層管の金属層に直接的に触れない形状に形成されている場合、例えば、当接面61aに三層管の金属層との接触を避ける凹み等が形成れているか、当接面61a自体が、三層管の内径側又は外径側の一方の樹脂部分のみに当接する範囲に形成されている場合は、ガイドリング60を金属によって形成することも可能である。
【0052】
ここで、再び図7に戻って、ガイドリング60と管Pとの寸法関係について詳細に説明する。
ガイドリング60における当接面61aからガイド部62の付け根部P3までの距離L3、換言すると空間部Rの軸方向の深さL3は、当接部61の軸方向の長さL2に対して次の式(1)の関係を有している。
(1/2)×L2≦L3<L2 ・・・(1)
【0053】
また、ガイドリング60の軸方向の全長L1は、ガイド部62の軸方向長さL4及び当接部61の軸方向長さL2に対して次の式(2)の関係を有している。
L1<L2+L4 ・・・(2)
【0054】
一方、ガイドリング60におけるガイド部62の付け根部(基点部)P3の外径寸法H3は、当接面61aの軸方向位置Yにおけるガイド部62の外径寸法H2、すなわち、屈曲部P2の外径寸法H2に対して、次の式(3)の関係を有している。
H2<H3 ・・・(3)
また、ガイド部62の先端部62aの最小外径寸法H1は、屈曲部P2における外径寸法H2に対して、次の式(4)の関係を有している。
H1<H2 ・・・(4)
【0055】
他方、当接面61aの軸方向位置Yにおけるガイド部62(屈曲部P2)の外径寸法H2は、管Pの内径寸法H4に対して次の式(5)の関係を有している。
H2≦H4 ・・・(5)
すなわち、ガイド部62の屈曲部P2の外径寸法H2は、管Pの内径寸法H4と同じか、これよりも小さくなるように設定されている。
【0056】
また、ガイド部62の付け根部P3における外径寸法H3は、管Pの内径寸法H4に対して次に式(6)の関係を有している。
H3>H4 ・・・(6)
【0057】
なお、管Pの内径寸法H4が、公差を含む寸法である場合、例えば、内径寸法の設計値H4’に対して±αの公差が設定される場合、管Pの内径寸法H4は、式(7)で表すことができる。
H4=H4’±α ・・・(7)
【0058】
そしてこの場合、上記式(5)は、
H2≦H4’−α ・・・(5’)
とされることが好ましい。
【0059】
また、上記式(6)は、
H3>H4’+α ・・・(6’)
とされることが好ましい。
【0060】
上記式(5’)における、(H4’−α)は、公差を考慮した管Pの最小内径寸法となる。製品として製造された管Pは、その内径寸法H4が、設計値(基準値)H4’を中心とする公差±αの範囲内で概ね正規分布のばらつきを生じると考えることができる。したがって、上記式(5’)の条件を満たすことによって、ガイド部62における屈曲部P2の外径寸法H2と、管Pの内径寸法H4とが同一になることは少なく、大抵の場合、H2<H4となる。したがって、図7に示されるように、ガイド部62と管Pの先端内縁P4との間には、大抵の場合に隙間tが生じ、この隙間t内でガイド部62が径方向外方へ弾性変形可能となる。
【0061】
また、上記式(6’)における、(H4’+α)は、公差を考慮した管Pの最大内径寸法となる。したがって、上記式(6’)の条件を満たすことによって、ガイド部62の付け根部P3における外径寸法H3は、公差αを考慮しても管Pの内径寸法H4よりも大きくなる。
【0062】
以下に、ガイドリング60及び管Pの各寸法の一例を示す。
ガイドリング60における各寸法は、H1=11.4mm、H2=11.8mm、H3=13.4mm、L1=4.0mm、L2=2.5mm、L3=1.4mm、L4=2.9mm、L5=1.5mmとすることができる。L5は、ガイド部62の先端部62aの軸方向の長さである。
このようなガイドリング60に対して、管Pの内径寸法(設計値)H4’は、H4’=12.0mm、公差αは、α=0.2とすることができる。よって管Pの内径寸法H4は、H4=12.0±0.2mmの範囲に設定される。
【0063】
ガイド部62は、その付け根部P3が当接面61aよりもX2方向先方側に配置されているので、ガイドリング60の軸方向の全長L1はそれほど長くなくても、ガイド部62の軸方向長さL4を可及的に長くし、ガイド部62を径方向に弾性変形させ易くすることができる。ガイド部62が径方向に弾性変形し易いと、管Pの内周面に対するガイド部62の追従性がよくなり、ガイド部62の先端部62aが管Pの内周面にぴったりと沿い、ガイド部62が弾性シール部材36を押さえつける力が弱められる。そのため、管Pを挿入スペースSへ挿入する力(挿入力)を低減し、管継手10に対する管Pの接続作業性を高めることができる。
【0064】
また、ガイド部62の付け根部P3(基点部)の外径寸法H3が、屈曲部P2の外径寸法H2よりも大きく設定されているため(上記式(3)参照)、ガイド部62が径方向外側へ弾性変形することによってガイド部62の内径寸法をより大きくすることができる。さらに、ガイド部62の付け根部P3の外径寸法H3が、管Pの内径寸法H4よりも大きく設定されていることによっても(上記式(6)又は式(6’)参照)、ガイド部62が径方向外側へ弾性変形することによってガイド部62の内径寸法をより拡大することができる。また、ガイド部62の弾性変形量は、ガイド部62の屈曲部P2の外径寸法H2が、管Pの内径寸法H4と同じかこれよりも小さく設定されていることによって(上記式(5)又は(式5’)参照)、可及的に大きくすることができる。以上より、弾性シール部材36を押さえつける力をより弱めることができ、管Pを挿入するための力(挿入力)をより低減することができる。
【0065】
また、ガイドリング60の当接面61aからガイド部62の付け根部P3までの距離L3と、当接部61の軸方向の長さL2とが、上記式(1)の関係にあるので、ガイド部62の軸方向長さL4をより長くすることができ、ガイド部62をより径方向に弾性変形することができる。
【0066】
ここで、挿入スペースSに管Pを挿入するために必要な力(挿入力)について、本実施形態と従来技術(例えば、特許文献1)とを比較しながら説明する。図10は、実施形態と従来技術との管の挿入力を比較して示すグラフである。
図10のグラフは、管の挿入力の変化を管の挿入量との関係で示している。グラフの下側に示された模式図は、上側が本実施形態のガイドリング60を使用した場合、下側が従来技術のガイドリング160を使用した場合を示している。
【0067】
本実施形態のガイドリング60と従来技術のガイドリング160とでは全長が略同じ寸法とされている。そして、本実施形態のガイドリング60は、ガイド部62の付け根部P3が当接面よりもX2方向先方側に位置しているため、ガイド部62の軸方向の長さ(径方向に弾性変形可能な部分の長さ)が、従来技術のガイドリング160のガイド部162よりも長くなっている。
【0068】
管の挿入力は、ガイドリング60,160が弾性シール部材36,136を押さえ始めてからガイドリング60,160が弾性シール部材36,136を完全に通過するまでの間でピークに達し、弾性シール部材36,136を通過してからは略一定に推移している。本実施形態のガイドリング60は、従来技術のガイドリング160と軸方向の全長が略同じであるため、管の挿入力が一定に落ち着くまでの管の挿入量も略同じとなる。
【0069】
しかしながら、本実施形態のガイドリング60は、ガイド部62の軸方向の長さが従来技術のガイド部162よりも長く形成されているので、ガイド部62が径方向に弾性変形し易くなり、管Pの内周面に沿い易くなる。しかも、図7に示されるように、ガイド部62における弾性変形の基点部(付け根部P3)の外径寸法H3が、ガイドリング60の屈曲部P2の外径寸法H2、及び管Pの内径寸法H4よりも大きいので、ガイド部62を径方向外側へより大きく弾性変形させ、ガイド部62の内径寸法をより拡大させることができる。これにより、ガイド部62が弾性シール部材36を押さえつける力を弱めることが可能となっている。したがって、本実施形態のガイドリング60は、従来技術のガイドリング160よりも管を挿入する際に必要な挿入力を低減することができ、管継手に対する管の接続作業性を高め、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0070】
図8に示されるように、ガイドリング60は、管継手10に装着された状態で、保持環42の内周面に嵌合している。保持環42は、管Pを挿入したときに径方向へ若干拡径することができるように、保持凹部25の底面との間に若干の隙間があり、その隙間内で保持環42が移動すると、外筒体15に接触して衝突音が発生する。本実施形態のガイドリング60は、保持環42の内周面に嵌合することによって、隙間内で保持環42が移動しないように保持環42を支持している。これにより、保持環42と外筒体15との接触による衝突音の発生を防止することができる。
【0071】
ガイド部62は、周方向に複数設けられているので、各ガイド部62を径方向に弾性変形させ易くすることができる。また、ガイド部62は周方向に間隔をあけて複数設けられているので、弾性シール部材36は、外周面全周ではなく、部分的にガイド部62によって押さえつけられる。そのため、ガイド部62が弾性シール部材36を押さえつける力を弱めることができ、管Pを挿入するために要する力をより低減することができる。
【0072】
また、ガイド部62は、X2方向後方側ほど周方向の幅が狭くなる先細り形状に形成されているので、各ガイド部62の先端部62aを管Pの筒内に容易に挿入することができる。また、ガイド部62は、X2方向後方側ほど径方向内方に位置するように傾斜しているので、各ガイド部62の先端部62aを管の筒内に容易に挿入することができる。
【0073】
<第2の実施形態>
図11は、本発明の第2の実施形態に係るガイドリングと管との寸法関係を示す拡大断面図である。
本実施形態では、ガイドリング60におけるガイド部62の付け根部P3の外径寸法H3が、管Pの内径寸法H4又は公差を含む最小内径寸法(H4’−α)よりも小さくなっている点で、第1の実施形態とは異なっている。したがって、本実施形態では、ガイド部62が径方向外方へ弾性変形したときのガイド部62の最小内径寸法が、第1の実施形態に比べて若干小さくなり、弾性シール部材36を押さえる力が若干高まる可能性がある。しかしながら、本実施形態においても、概ね第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更できるものである。
例えば、上記実施形態においては、ガイドリング60のガイド部62は、径方向に弾性変形可能とされているが、その弾性限界を超えて一部又は全部が径方向に塑性変形するものであってもよい。
【0075】
図7及び図11において示したガイドリング60の各寸法関係については、適宜変更することが可能である。例えば、ガイドリング60におけるガイド部62の付け根部P3の外径寸法H3と、ガイド部62の屈曲部P2の外径寸法H2とは、H3<H2の関係とすることができる。
また、ガイド部62の先端部62aの最小外径寸法H1と、屈曲部P2の外径寸法H2とは、H1=H2とすることもできる。
【0076】
ガイドリング60の当接部61は、管Pの先端面の全体に対して当接面61aを当接させるものであってもよい。
上記実施形態のガイドリング60は、周方向に複数のガイド部62を備えていたが、円環状の1つのガイド部62を備えていてもよい。この場合、ガイド部62の弾性変形を容易にするために、ガイド部62の適所に切り込み(切り欠け)を形成することが好ましい。
【0077】
図7に示されるように、ガイドリング60のガイド部62は、ほぼ直線状に2段階で傾斜しているが、特に、当接面61aの軸方向位置YよりもX2方向の先方側の部分においては曲線状(円弧状)に傾斜していても良い。押さえ面60については、軸方向全体が曲線状に傾斜していても良い。
また、ガイド部62の付け根部P3は、直線と直線とが交わる屈曲点に限らず、直線と曲線とが交わる変曲点や、R状に湾曲した部分に設定されていてもよい。いずれの場合においても、ガイド部62の付け根部P3は、当接部61とガイド部62との境界部で肉厚が大きく変化する部分に設定される。
【0078】
本発明の管継手10は、液体だけでなく気体を扱う管Pと機器Uとを接続するために用いることができる。また、管継手10は、外筒体15を備えず、内筒体14とナット16とから構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 管継手
14 内筒体
15 外筒体
36 弾性シール部材
42 保持環
60 ガイドリング
61 当接部
61a 当接面
62 ガイド部
62a ガイド部の先端部
P 管
P3 付け根部(基点部)
P4 管の先端内縁
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手用ガイドリング及び管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に配慮したクリーンな給湯システムとしてヒートポンプ式給湯装置が普及してきている。ヒートポンプ式給湯装置は、冷凍サイクルにより温水を生成する冷媒回路を内蔵したヒートポンプユニットと、ヒートポンプユニットで生成された温水を貯水する貯水ユニットとを備えている。また、ヒートポンプ式給湯装置においては、現地据付工事に際して、ヒートポンプユニットと貯水ユニットとの間で温水を循環させるための連絡配管や、貯水ユニットから浴槽等の温水利用機器に温水を供給するための連絡配管が引き回され、各ユニットや温水利用機器に接続される。
【0003】
一般に、各ユニットや温水利用機器に連絡配管(以下、単に「管」ともいう)を接続するためには、管継手が用いられている。例えば、下記特許文献1には、図12に示されるように、管Pが外装される円筒部114を有する継手本体170と、継手本体170の円筒部114の外周部に装着される弾性圧縮可能なシール部材136と、継手本体の円筒部114の外周に隙間Sを形成して固設される保護キャップ115と、を備えた管継手110が開示されている。
【0004】
管継手110のシール部材136は、管Pの内周面に圧接するために円筒部114の外周面よりも径方向外方に膨出している。そのため、管Pを円筒部114と保護キャップ115との隙間Sに挿入するときに、管Pの先端内縁に面取りが形成されていないと、当該先端内縁がシール部材136に引っかかり、シール部材136を損傷させてしまう恐れがある。このような問題を未然に防止するため、特許文献1記載の管継手110には、管Pを挿入する際に管Pに先行してシール部材136の膨らみを押さえつけることによって、管Pの先端内縁とシール部材136との直接的な接触を防止するガイドリング160が設けられている。
【0005】
このガイドリング160は、図13にも示されるように、管Pの先端面に当接する鍔部(当接部)161と、鍔部161の内径側から延出し、管Pの先端筒内に挿入される円筒部(ガイド部)162とからなっている。そして、管Pを継手本体170の円筒部114と保護キャップ115との隙間Sに挿入する際に、管Pの先端面を鍔部161に当接させるとともに、ガイドリング160の円筒部162を管Pの筒内に挿入し、鍔部161及び円筒部162によってシール部材136を押さえつけながら管Pを挿入する。これにより、管Pの先端内縁がシール部材136に引っかかることがなく、シール部材136の損傷を防止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−336712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のガイドリング160は、継手本体170の円筒部114と保護キャップ115との隙間Sに管Pを挿入するときにシール部材136を押さえつけるため、シール部材136からガイドリング160に付与される抵抗力(摩擦力等)に抗する強い力で管Pを挿入する必要がある。
【0008】
一方、ガイドリング160は、円筒部162を管Pの筒内に容易に挿入させるために、円筒部162の外径が管Pの内径よりも余裕をもって小さく形成され、円筒部162の外径と管Pの内径との間には隙間が形成される。この隙間は円筒部162を管Pの筒内に挿入させるときには必要であるが、円筒部162がシール部材136を押さえつけるときには不要となる。これは、隙間を形成するために円筒部162がより径方向内側に配置され、シール部材136を余分に押さえつけてしまうからである。そのため、特許文献1のガイドリング160は、管Pを挿入するために非常に強い力(挿入力)が必要となり、管Pの接続作業性が悪化していた。
【0009】
また、ガイドリング160の円筒部162は、その軸方向の長さが長いほど管Pの内周面に沿うように径方向に変形しやすくなり、管Pの挿入力を低下させるのに役立つ。また、円筒部162が軸方向に長いと、管Pの端面が斜めになっているような場合でも適切に円筒部162を筒内に挿入させることができる。
しかし、特許文献1のガイドリング160の場合、円筒部162を軸方向に長くすると、同時にガイドリング160全体も軸方向に長くなってしまう。ガイドリング160は、その軸方向長さが長くなるほど、シール部材136を軸方向に長い範囲で押さえつけることになるため、管Pを挿入するために強い力を長い時間付与しなければならなくなる。したがって、特許文献1の技術では、円筒部162を軸方向に長くしたとしても、それほど管Pの接続作業性を改善させることはできなかった。
【0010】
本発明は、上記の実情に鑑み、管継手に対する管の接続作業性を高めることができる管継手用ガイドリング及び管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、管継手における内筒体の外周面に設けられ、かつ当該外周面に対して管を装着する際に前記内筒体に取り付けられた弾性シール部材を管に先行して径方向内方へ押圧し、当該管の先端内縁が前記弾性シール部材に接触するのを防止する、管継手用ガイドリングであって、
環状に形成されるとともに、管の先端面を当接させる当接面を管装着方向の後方側に有している当接部と、
前記当接部から管装着方向の後方側へ延び、径方向に変形可能なガイド部と、を備えており、
前記ガイド部は、前記当接面よりも管装着方向の先方側に径方向に変形する際の基点部を有し、
前記ガイド部の先端部が、前記当接面よりも管装着方向の後方側に突出して管の筒内に挿入されることを特徴とする。
【0012】
本発明のガイドリングは、ガイド部が径方向に変形する際の基点部が、当接部の当接面よりも管装着方向の先方側に位置し、ガイド部の先端部が、前記当接面よりも管装着方向の後方側に突出している。このような構成により、ガイドリング全体を軸方向に長くしなくてもガイド部を軸方向に長く形成することができる。そのため、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力を好適に低減することができ、管の接続作業性を高めることができる。
【0013】
(2)前記ガイド部の基点部における外径寸法は、前記当接面の軸方向位置における前記ガイド部の外径寸法よりも大きく設定されていることが好ましい。
このような構成によって、管の内径に応じてガイド部が基点部を支点に径方向外方へ変形すると、ガイド部の内径寸法が拡大され、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力をより弱めることができる。したがって、内筒体に対して管を装着するために要する力をより低減させることができる。
【0014】
(3)前記ガイド部の基点部における外径寸法は、管の内径寸法よりも大きく設定されていてもよい。
このような構成によって、管の内径に応じてガイド部が基点部を支点に径方向外方へ変形すると、ガイド部の内径寸法がより拡大され、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力をより弱めることができる。したがって、内筒体に対して管を装着するために要する力をより低減することができる。
【0015】
(4)前記当接面の軸方向位置における前記ガイド部の外径寸法は、管の内径寸法と同一かこれより小さく設定されていてもよい。
このような構成によって、管の筒内にガイド部の先端部を確実に挿入することができる。
【0016】
(5)前記当接面から前記ガイド部の基点部までの軸方向寸法L3と、前記当接部の軸方向の長さ寸法L2とは、
(1/2)×L2≦L3<L2
の関係に設定されていることが好ましい。
このような構成によって、ガイドリング全体の軸方向長さを大きくしなくても、ガイド部の径方向に変形可能な部分の長さを十分に確保することができ、ガイド部をより径方向に変形させ易くすることができる。
【0017】
(6)前記ガイド部は、管装着方向の後方側ほど径方向内側に位置するように傾斜していてもよい。
このような構成によって、ガイド部を管の筒内に挿入し易くすることができる。
【0018】
(7)前記ガイド部は、周方向に間隔をあけて複数形成されていることが好ましい。
このような構成によって、ガイド部は、弾性シール部材を周方向に関して部分的に押さえつけることになり、その分、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力を弱めることができる。したがって、内筒体に対して管を装着するために要する力をより低減することができる。
【0019】
(8)各ガイド部は、管装着方向の後方側へ向かうに従い漸次周方向の幅寸法が減少していることが好ましい。
このような構成によって、各ガイド部の先端部を管の筒内へ挿入し易くすることができるとともに、各ガイド部をより径方向に変形させ易くすることができる。
【0020】
(9)本発明の管継手は、外周面に管が装着される内筒体と、この内筒体の外周面に設けられ、当該内筒体に装着された管の内周面に圧接する弾性シール部材と、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の管継手用ガイドリングと、を備えていることを特徴とする。
【0021】
(10)上記の管継手において、前記内筒体の径方向外側に外筒体が設けられ、
前記外筒体の内周面に、管の外周面に係止して管を保持する保持環が設けられており、
前記ガイドリングは、当該管継手に対する管の装着前の状態で、前記保持環の内周面に嵌合されていることが好ましい。
この構成によれば、ガイドリングを利用して保持環のがたつきを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、管継手に対する管の接続作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガイドリングを適用した管継手を示す斜視図である。
【図2】図1に示される管継手の断面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】管継手における弾性シール部材及び保持環の装着部分を拡大して示す断面図である。
【図5】ガイドリングの正面図である。
【図6】図5のA−A矢視断面図である。
【図7】ガイドリングと管との寸法関係を示す拡大断面図である。
【図8】管継手に対する管の接続作業を説明する概略的な断面図である。
【図9】管継手に対する管の接続作業を説明する概略的な断面図である。
【図10】実施例と従来例との管の挿入力を比較して示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るガイドリングと管との寸法関係を示す拡大断面図である。
【図12】従来技術に係るガイドリングを適用した管継手の断面図である。
【図13】従来技術に係るガイドリングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガイドリングを適用した管継手を示す斜視図である。
本実施形態の管継手10は、液体や気体等の流体が流れる管Pと、この流体を利用する各種の機器Uとを接続するために用いられるものであり、その軸方向の先端部が管Pの端部に接続され、軸方向の基端部が機器Uに接続される。したがって、管継手10の軸方向先端側には、管Pを挿入するための挿入口11が形成され、軸方向基端側には、機器U側の配管(被接続箇所)U1の端部に設けられた雄ネジに螺合するナット(ネジ筒)16が設けられている。
【0025】
なお、本実施形態の管継手10は、主として常温(例えば、5℃〜35℃)において相変化をしない水、海水、薬品、ブライン等の液体を扱う機器Uと管Pとの接続のために好適に使用される。特に、給湯装置、空気調和装置、及び床暖房装置等における熱源ユニットと配管との接続等に好適に使用される。また、管Pは、耐食性や耐熱性が良好な架橋ポリエチレン管やボリブデン管等の硬質樹脂管や、アルミニウム等の金属管の内面及び外面を樹脂材で被覆した三層管等の金属強化樹脂管が使用される。硬質樹脂管や三層管は、耐熱性が高いため、例えば、CO2冷媒を使用した熱源ユニットのように90℃以上の非常に高温の温水を生成するシステムで好適に使用される。
【0026】
図2は、図1に示される管継手の断面図である。なお、この図に示される管継手10は、管Pが接続される先端部が図における左側に示され、機器Uの被接続箇所U1に接続される基端部が図における右側に示されている。
管継手10は、主として内筒体14と、外筒体15と、ナット16とから構成されている。内筒体14、外筒体15、及びナット16は、脱鉛青銅、砲金等の金属材料や硬質の樹脂材料からなる。内筒体14は、円筒形状に形成され、その先端部の外周面には環状の切欠溝17が形成され、この切欠溝17よりも基端側(図2の右側)には、弾性シール部材36を装着するための環状の装着溝(シール装着部)18が形成されている。内筒体14の基端部の内周面は、基端側へ向かうに従って内径が拡大するテーパー面19に形成されている。
【0027】
外筒体15は、円筒形状に形成され、内筒体14の径方向外側に、当該内筒体14と同心状に配置されている。そして、この外筒体15の内周面と内筒体14の外周面との間には、管Pを挿入することができるスペースS(以下、「挿入スペース」ともいう)が形成されている。外筒体15の先端部の外周面は、基端側に向かうに従って外径が大きくなるテーパー面24に形成されている。外筒体15の先端部の内周面には、後述する保持環42を収容するための環状の保持凹部25が形成されている。この保持凹部25は、内筒体14に形成された切欠溝17と装着溝18の径方向外側に重複した位置に配置されている。
【0028】
ナット(ネジ筒)16は、外筒体15の基端部に一体に形成されている。つまり、ナット16と外筒体15とは、一つの素材を機械加工することによって単一の部品で構成されている。このナット16の外周面27は、スパナ等の工具を嵌合させることが可能な六角形状に形成され、内周面には雌ネジ28が形成されている。なお、ネジ筒16は、機器U側の被接続箇所U1の形状に応じて、外周面に雄ネジを有する形態とすることも可能である。
【0029】
図3は、図2の一部を拡大して示す断面図である。
内筒体14の基端部には、径方向外方に突出する環状の第1突条部21が形成されている。また、第1突条部21の先端側(図3の左側)に隣接した位置には、当該第1突条部21よりも小さい突出量で径方向外方へ突出する環状の第2突条部22が形成されている。一方、ナット16の先端側には、径方向内方に突出する環状の第3突条部29が形成されている。
【0030】
図2に示されるように、内筒体14は、ナット16の基端側(図2における右側)からナット16の内部に挿入され、さらにナット16よりも先端側(図2における左側)へ突出して外筒体15の内部に配置される。この際、図3に示されるように、内筒体14の第1突条部21がナット16の第3突条部29の軸方向後端面(規制面)29aに当接することによって、ナット16に対する内筒体14の先端側への移動が制限されている。すなわち、第3突条部29は、ナット16に対する内筒体14の先端側への移動を規制する位置規制部を構成し、第1突条部21は、位置規制部29によって移動が規制される被規制部を構成している。
【0031】
このように、ナット16の第3突条部29と内筒体14の第1突条部21とを軸方向に当接させることによって、ナット16に対する内筒体14の先端側への移動を制限しているので、ナット16に対する内筒体14の抜け止めをするためにCリング等の他の抜け止め用の部品を別途設ける必要がなく、管継手10の組立てを非常に簡単に行うことができるとともに、部品点数の削減を図ることができる。
【0032】
内筒体14に形成された第2突条部22は、挿入スペースSに対する管Pの挿入限界を設定するストッパとしての機能を有している。本実施形態では、第2突条部22に対して管Pが直接的に当接するのではなく、後述するガイドリング60が当接している。
【0033】
ナット16の内部には、環状のパッキン33が設けられており、このパッキン33は、内筒体14の基端面と、機器U側の被接続箇所U1の先端面との間に挟まれ、両者の間からの流体の漏れを防止している。また、管継手10の不使用時や、管継手10に管Pのみを接続した状態では、ナット16に対する内筒体14の基端側への移動が制限されないため、ナット16には、内筒体14の基端側への移動を制限するキャップ(図示略)が適宜螺合される。
【0034】
図2に示されるように、内筒体14に形成された装着溝18には、環状の弾性シール部材36が装着されている。この弾性シール部材36は、弾性変形可能な素材、例えばニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、フッ素系ゴム等によって形成されている。弾性シール部材36の軸方向幅は、装着溝18の軸方向幅よりも小さく形成されている。
【0035】
図4は、管継手における弾性シール部材及び保持環の装着部分を拡大して示す断面図である。弾性シール部材36の外周面には、径方向外方へ円弧状に膨出する2つの環状のシール部38a,38bが軸方向に並べて形成されている。これらシール部38a,38bは、装着溝18に挿入された状態で内筒体14の外周面よりも径方向外方へ突出している。そして、これらシール部38a,38bは、挿入スペースS内に挿入された管Pの内周面に密着することによって、内筒体14と管Pとの間の流体の漏れを防止する機能を有している。
【0036】
本実施形態の弾性シール部材36は、軸方向に2つのシール部38a,38bを一体に備えた構成となっているが、2つのシール部38a,38bが別体に形成され、互いに独立した構成とされていてもよい。例えば、弾性シール部材36は、1つのシール部を構成するOリング等を軸方向に2つ並設することによって構成されていてもよい。さらにシール部は1つのみであってもよい。また、内筒体14に対して軸方向の2箇所以上に弾性シール部材36が設けられていてもよい。
【0037】
図4に示されるように、外筒体15の内周面に形成された保持凹部25内には保持環42が収容されている。この保持環42は、周方向の一部分が欠落したC字形状に形成されており、この欠落した部分の間隔を狭めるように弾性変形させることによって径方向寸法を縮小できるようになっている。
【0038】
保持環42の内周面における軸方向先端部(左端部)には、径方向内方に突出する第1爪部(第1保持部)46が形成され、軸方向基端部(右端部)には、径方向内方に突出する第2爪部(第2保持部)45が形成されている。この第1爪部46と第2爪部45とは、保持環42の径方向寸法を縮小させることによって管Pの外周面に強く押し付けられて食い込み、管Pを強固に保持する機能を有している。
【0039】
保持環42の外周面における軸方向先端部には、基端側(図4における右側)に向かうにしたがって外径が大きくなるように傾斜する第1傾斜面49が形成されている。また、この第1傾斜面49よりも基端側には、基端側に向かうにしたがって外径が大きくなるように第1傾斜面49と略同一の角度で傾斜する第2傾斜面48が形成されている。第1傾斜面49と第2傾斜面48との間には第1段差面50が形成されており、この第1段差面50は、中心軸線Oに略平行に形成されている。
【0040】
外筒体15に形成された保持凹部25の底面は、保持環42の第1傾斜面49と略同一の角度で傾斜し、当該第1傾斜面49に当接する第3傾斜面54と、保持環42の第2傾斜面48と略同一の角度で傾斜し、当該第2傾斜面48に当接する第4傾斜面53とを有している。また、第3傾斜面54と第4傾斜面53との間には中心軸線Oに略平行な第2段差面55が形成されている。
【0041】
外筒体15と内筒体14との間の挿入スペースS内に管Pが挿入され、管Pの内部を流れる流体の圧力等によって管Pに挿入スペースSから離脱する方向(矢印X1)への力が作用すると、保持環42は、管Pとともに先端側へ移動するとともに、第1〜第4傾斜面49,48,54,53の作用で外筒体15によって径方向内方へ押され、径方向寸法が縮小する。そして、保持環42の径方向寸法が縮小することによって、第1爪部46及び第2爪部45が強く管Pの外周面に押し付けられ、挿入スペースSからの管Pの離脱が確実に防止される。特に、保持環42は、軸方向両側の第1,第2傾斜面49,48の2箇所において径方向内方に押されるため、保持環42を軸方向の略全体の範囲で管Pの周面に強く押し付けることができる。
【0042】
図2に示されるように、本実施形態の管継手10には、挿入スペースSに対して管Pを挿入する際に、管Pの内周端縁が弾性シール部材36に引っかかることによって当該弾性シール部材36を損傷させることがないように、管Pと弾性シール部材36との直接的な接触を防止しつつ、管Pの挿入を案内するガイドリング60が設けられている。このガイドリング60は、合成樹脂製であり、管継手10に対して管Pを挿入する前の状態で図8に示す位置にセットされている。
【0043】
図5は、ガイドリングの正面図、図6は、図5のA−A矢視断面図である。また、図7は、ガイドリングと管との寸法関係を示す拡大断面図である。
図3及び図5〜図7に示されるように、ガイドリング60は、当接部61と、ガイド部62とを有している。当接部61は、円環状に形成されるとともに、管Pの挿入方向(装着方向)X2における後方側(図3における左側;以下、「X2方向後方側」ともいう)に位置する側面が、管Pの先端面に当接する当接面61aとされている。また、当接部61の管Pの挿入方向X2における先方側(図3における右側;以下、「X2方向先方側」ともいう)に位置する側面が、内筒体14の第2突条部22に当接するストッパ面61bとされている。
【0044】
当接部61のX2方向先方側における外周面は、同先方側ほど外径が小さくなる傾斜面61cに形成されている。ガイドリング60は、管継手10の挿入口11(図2参照)から挿入スペースS内に挿入されることによって管継手10に装着されるが、この際に、当接部61に傾斜面61cが形成されていることによって、当該当接部61が外筒体15に引っ掛かりにくくなる。そのため、ガイドリング60を容易に管継手10に装着することが可能となる。
【0045】
ガイド部62は、当接部61の径方向内側部におけるX2方向先方側から同方向X2後方側へ向けて延びている。また、ガイド部62は、図5及び図6に示されるように、周方向に間隔をあけて複数設けられている。各ガイド部62は、X2方向後方側ほど周方向の幅が小さくなるように先細り形状(略三角形状)に形成されている。また、各ガイド部62は、X2方向後方側ほど径方向内側に位置するように傾斜している。
【0046】
より具体的には、図7に示されるように、ガイド部62は、その径方向外側の付け根部P3が、当接面61aよりもX2方向先方側に位置し、その先端部62aが、当接面61aよりもX2方向後方側へ突出している。また、ガイド部62は、付け根部P3を基点として径方向に弾性変形可能に構成されている。したがって、ガイド部62の付け根部P3は、弾性変形の基点部とされている。また、ガイド部62と当接部61との径方向の間には、ガイド部62の径方向の弾性変形を許容する空間部Rが形成されている。この空間部Rの存在によって、当接部61は、管Pの先端面の径方向外側の範囲のみに当接し、径方向内側には当接しないように構成されている。したがって、管Pの先端内縁P4は、当接部61には直接当接していない。
【0047】
ガイド部62は、ほぼ当接面61aの軸方向位置Yを境にして軸方向両側の傾斜角度が互いに相違している。すなわち、当接面61aよりもX2方向先方側(図7の右側)ではガイド部62の傾斜角度が急となり、当接面61aよりもX2方向後方側(図7の左側)ではガイド部62(先端部62a)の傾斜角度が緩やかとなっている。したがって、ガイド部62は、当接面61aの軸方向位置Yに屈曲部P2を有している。
【0048】
ガイドリング60の径方向内側面は、弾性シール部材36を押さえつけるための押さえ面60aとされている。この押さえ面60aは、ガイドリング60の軸方向の全長L1にわたって形成され、X2方向先方側ほど直径(内径)が大きくなる傾斜面に形成されている。この押さえ面60aが管Pに先行して弾性シール部材36の外周面を押さえることによって、管Pの先端内縁P4が弾性シール部材36に接触するのを防止する。
【0049】
図8及び図9は、管継手に対する管の接続作業を説明する概略的な断面図である。
ガイドリング60は、図8に示されるように、弾性シール部材36のほぼ径方向外側に位置するように装着される。ガイドリング60の押さえ面60aは、弾性シール部材36のX2方向後方側の端部を予め押さえた状態となっている。また、ガイドリング60のガイド部62は、その先端部62aが装着溝18内に入り込むことによって、内筒体14の外周面よりもやや沈んだ(凹んだ)位置に配置されている。ただし、ガイドリング60は、ガイド部62の先端部62aが切欠溝17の内部に入り込むように、弾性シール部材36よりもX2方向後方側に装着されていてもよい。
【0050】
管Pを挿入口11から挿入スペースSに挿入すると、管Pの内周面にガイド部62の先端部62aが挿入され、管Pの先端面がガイドリング60の当接面61aに当接する。そして、管PをX2方向先方側(図8における右側)へさらに押し込むと、図9に示されるように、管Pに先行してガイドリング60の面60aが弾性シール部材36を押さえつける。そして、図2に示されるように、ガイドリング60が内筒体14の第2突条部22に当接する位置まで管Pを押し込むことによって管継手10に対する管Pの接続が完了する。以上により、管Pの先端内縁が弾性シール部材36に接触することはなく、弾性シール部材36を損傷させてしまうこともない。
【0051】
なお、管継手10に管Pを接続した状態で、管Pは内筒体14の第2突条部22に直接接触しておらず、管Pと第2突条部22との間には合成樹脂製のガイドリング60が介在している。このため、管Pが三層管であり、内筒体14が金属製である場合には、三層管の金属層が直接的に内筒体14に触れなくなるため、両者の間を電気的に絶縁することができる。
また、ガイドリング60の当接部61が、三層管の金属層に直接的に触れない形状に形成されている場合、例えば、当接面61aに三層管の金属層との接触を避ける凹み等が形成れているか、当接面61a自体が、三層管の内径側又は外径側の一方の樹脂部分のみに当接する範囲に形成されている場合は、ガイドリング60を金属によって形成することも可能である。
【0052】
ここで、再び図7に戻って、ガイドリング60と管Pとの寸法関係について詳細に説明する。
ガイドリング60における当接面61aからガイド部62の付け根部P3までの距離L3、換言すると空間部Rの軸方向の深さL3は、当接部61の軸方向の長さL2に対して次の式(1)の関係を有している。
(1/2)×L2≦L3<L2 ・・・(1)
【0053】
また、ガイドリング60の軸方向の全長L1は、ガイド部62の軸方向長さL4及び当接部61の軸方向長さL2に対して次の式(2)の関係を有している。
L1<L2+L4 ・・・(2)
【0054】
一方、ガイドリング60におけるガイド部62の付け根部(基点部)P3の外径寸法H3は、当接面61aの軸方向位置Yにおけるガイド部62の外径寸法H2、すなわち、屈曲部P2の外径寸法H2に対して、次の式(3)の関係を有している。
H2<H3 ・・・(3)
また、ガイド部62の先端部62aの最小外径寸法H1は、屈曲部P2における外径寸法H2に対して、次の式(4)の関係を有している。
H1<H2 ・・・(4)
【0055】
他方、当接面61aの軸方向位置Yにおけるガイド部62(屈曲部P2)の外径寸法H2は、管Pの内径寸法H4に対して次の式(5)の関係を有している。
H2≦H4 ・・・(5)
すなわち、ガイド部62の屈曲部P2の外径寸法H2は、管Pの内径寸法H4と同じか、これよりも小さくなるように設定されている。
【0056】
また、ガイド部62の付け根部P3における外径寸法H3は、管Pの内径寸法H4に対して次に式(6)の関係を有している。
H3>H4 ・・・(6)
【0057】
なお、管Pの内径寸法H4が、公差を含む寸法である場合、例えば、内径寸法の設計値H4’に対して±αの公差が設定される場合、管Pの内径寸法H4は、式(7)で表すことができる。
H4=H4’±α ・・・(7)
【0058】
そしてこの場合、上記式(5)は、
H2≦H4’−α ・・・(5’)
とされることが好ましい。
【0059】
また、上記式(6)は、
H3>H4’+α ・・・(6’)
とされることが好ましい。
【0060】
上記式(5’)における、(H4’−α)は、公差を考慮した管Pの最小内径寸法となる。製品として製造された管Pは、その内径寸法H4が、設計値(基準値)H4’を中心とする公差±αの範囲内で概ね正規分布のばらつきを生じると考えることができる。したがって、上記式(5’)の条件を満たすことによって、ガイド部62における屈曲部P2の外径寸法H2と、管Pの内径寸法H4とが同一になることは少なく、大抵の場合、H2<H4となる。したがって、図7に示されるように、ガイド部62と管Pの先端内縁P4との間には、大抵の場合に隙間tが生じ、この隙間t内でガイド部62が径方向外方へ弾性変形可能となる。
【0061】
また、上記式(6’)における、(H4’+α)は、公差を考慮した管Pの最大内径寸法となる。したがって、上記式(6’)の条件を満たすことによって、ガイド部62の付け根部P3における外径寸法H3は、公差αを考慮しても管Pの内径寸法H4よりも大きくなる。
【0062】
以下に、ガイドリング60及び管Pの各寸法の一例を示す。
ガイドリング60における各寸法は、H1=11.4mm、H2=11.8mm、H3=13.4mm、L1=4.0mm、L2=2.5mm、L3=1.4mm、L4=2.9mm、L5=1.5mmとすることができる。L5は、ガイド部62の先端部62aの軸方向の長さである。
このようなガイドリング60に対して、管Pの内径寸法(設計値)H4’は、H4’=12.0mm、公差αは、α=0.2とすることができる。よって管Pの内径寸法H4は、H4=12.0±0.2mmの範囲に設定される。
【0063】
ガイド部62は、その付け根部P3が当接面61aよりもX2方向先方側に配置されているので、ガイドリング60の軸方向の全長L1はそれほど長くなくても、ガイド部62の軸方向長さL4を可及的に長くし、ガイド部62を径方向に弾性変形させ易くすることができる。ガイド部62が径方向に弾性変形し易いと、管Pの内周面に対するガイド部62の追従性がよくなり、ガイド部62の先端部62aが管Pの内周面にぴったりと沿い、ガイド部62が弾性シール部材36を押さえつける力が弱められる。そのため、管Pを挿入スペースSへ挿入する力(挿入力)を低減し、管継手10に対する管Pの接続作業性を高めることができる。
【0064】
また、ガイド部62の付け根部P3(基点部)の外径寸法H3が、屈曲部P2の外径寸法H2よりも大きく設定されているため(上記式(3)参照)、ガイド部62が径方向外側へ弾性変形することによってガイド部62の内径寸法をより大きくすることができる。さらに、ガイド部62の付け根部P3の外径寸法H3が、管Pの内径寸法H4よりも大きく設定されていることによっても(上記式(6)又は式(6’)参照)、ガイド部62が径方向外側へ弾性変形することによってガイド部62の内径寸法をより拡大することができる。また、ガイド部62の弾性変形量は、ガイド部62の屈曲部P2の外径寸法H2が、管Pの内径寸法H4と同じかこれよりも小さく設定されていることによって(上記式(5)又は(式5’)参照)、可及的に大きくすることができる。以上より、弾性シール部材36を押さえつける力をより弱めることができ、管Pを挿入するための力(挿入力)をより低減することができる。
【0065】
また、ガイドリング60の当接面61aからガイド部62の付け根部P3までの距離L3と、当接部61の軸方向の長さL2とが、上記式(1)の関係にあるので、ガイド部62の軸方向長さL4をより長くすることができ、ガイド部62をより径方向に弾性変形することができる。
【0066】
ここで、挿入スペースSに管Pを挿入するために必要な力(挿入力)について、本実施形態と従来技術(例えば、特許文献1)とを比較しながら説明する。図10は、実施形態と従来技術との管の挿入力を比較して示すグラフである。
図10のグラフは、管の挿入力の変化を管の挿入量との関係で示している。グラフの下側に示された模式図は、上側が本実施形態のガイドリング60を使用した場合、下側が従来技術のガイドリング160を使用した場合を示している。
【0067】
本実施形態のガイドリング60と従来技術のガイドリング160とでは全長が略同じ寸法とされている。そして、本実施形態のガイドリング60は、ガイド部62の付け根部P3が当接面よりもX2方向先方側に位置しているため、ガイド部62の軸方向の長さ(径方向に弾性変形可能な部分の長さ)が、従来技術のガイドリング160のガイド部162よりも長くなっている。
【0068】
管の挿入力は、ガイドリング60,160が弾性シール部材36,136を押さえ始めてからガイドリング60,160が弾性シール部材36,136を完全に通過するまでの間でピークに達し、弾性シール部材36,136を通過してからは略一定に推移している。本実施形態のガイドリング60は、従来技術のガイドリング160と軸方向の全長が略同じであるため、管の挿入力が一定に落ち着くまでの管の挿入量も略同じとなる。
【0069】
しかしながら、本実施形態のガイドリング60は、ガイド部62の軸方向の長さが従来技術のガイド部162よりも長く形成されているので、ガイド部62が径方向に弾性変形し易くなり、管Pの内周面に沿い易くなる。しかも、図7に示されるように、ガイド部62における弾性変形の基点部(付け根部P3)の外径寸法H3が、ガイドリング60の屈曲部P2の外径寸法H2、及び管Pの内径寸法H4よりも大きいので、ガイド部62を径方向外側へより大きく弾性変形させ、ガイド部62の内径寸法をより拡大させることができる。これにより、ガイド部62が弾性シール部材36を押さえつける力を弱めることが可能となっている。したがって、本実施形態のガイドリング60は、従来技術のガイドリング160よりも管を挿入する際に必要な挿入力を低減することができ、管継手に対する管の接続作業性を高め、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0070】
図8に示されるように、ガイドリング60は、管継手10に装着された状態で、保持環42の内周面に嵌合している。保持環42は、管Pを挿入したときに径方向へ若干拡径することができるように、保持凹部25の底面との間に若干の隙間があり、その隙間内で保持環42が移動すると、外筒体15に接触して衝突音が発生する。本実施形態のガイドリング60は、保持環42の内周面に嵌合することによって、隙間内で保持環42が移動しないように保持環42を支持している。これにより、保持環42と外筒体15との接触による衝突音の発生を防止することができる。
【0071】
ガイド部62は、周方向に複数設けられているので、各ガイド部62を径方向に弾性変形させ易くすることができる。また、ガイド部62は周方向に間隔をあけて複数設けられているので、弾性シール部材36は、外周面全周ではなく、部分的にガイド部62によって押さえつけられる。そのため、ガイド部62が弾性シール部材36を押さえつける力を弱めることができ、管Pを挿入するために要する力をより低減することができる。
【0072】
また、ガイド部62は、X2方向後方側ほど周方向の幅が狭くなる先細り形状に形成されているので、各ガイド部62の先端部62aを管Pの筒内に容易に挿入することができる。また、ガイド部62は、X2方向後方側ほど径方向内方に位置するように傾斜しているので、各ガイド部62の先端部62aを管の筒内に容易に挿入することができる。
【0073】
<第2の実施形態>
図11は、本発明の第2の実施形態に係るガイドリングと管との寸法関係を示す拡大断面図である。
本実施形態では、ガイドリング60におけるガイド部62の付け根部P3の外径寸法H3が、管Pの内径寸法H4又は公差を含む最小内径寸法(H4’−α)よりも小さくなっている点で、第1の実施形態とは異なっている。したがって、本実施形態では、ガイド部62が径方向外方へ弾性変形したときのガイド部62の最小内径寸法が、第1の実施形態に比べて若干小さくなり、弾性シール部材36を押さえる力が若干高まる可能性がある。しかしながら、本実施形態においても、概ね第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更できるものである。
例えば、上記実施形態においては、ガイドリング60のガイド部62は、径方向に弾性変形可能とされているが、その弾性限界を超えて一部又は全部が径方向に塑性変形するものであってもよい。
【0075】
図7及び図11において示したガイドリング60の各寸法関係については、適宜変更することが可能である。例えば、ガイドリング60におけるガイド部62の付け根部P3の外径寸法H3と、ガイド部62の屈曲部P2の外径寸法H2とは、H3<H2の関係とすることができる。
また、ガイド部62の先端部62aの最小外径寸法H1と、屈曲部P2の外径寸法H2とは、H1=H2とすることもできる。
【0076】
ガイドリング60の当接部61は、管Pの先端面の全体に対して当接面61aを当接させるものであってもよい。
上記実施形態のガイドリング60は、周方向に複数のガイド部62を備えていたが、円環状の1つのガイド部62を備えていてもよい。この場合、ガイド部62の弾性変形を容易にするために、ガイド部62の適所に切り込み(切り欠け)を形成することが好ましい。
【0077】
図7に示されるように、ガイドリング60のガイド部62は、ほぼ直線状に2段階で傾斜しているが、特に、当接面61aの軸方向位置YよりもX2方向の先方側の部分においては曲線状(円弧状)に傾斜していても良い。押さえ面60については、軸方向全体が曲線状に傾斜していても良い。
また、ガイド部62の付け根部P3は、直線と直線とが交わる屈曲点に限らず、直線と曲線とが交わる変曲点や、R状に湾曲した部分に設定されていてもよい。いずれの場合においても、ガイド部62の付け根部P3は、当接部61とガイド部62との境界部で肉厚が大きく変化する部分に設定される。
【0078】
本発明の管継手10は、液体だけでなく気体を扱う管Pと機器Uとを接続するために用いることができる。また、管継手10は、外筒体15を備えず、内筒体14とナット16とから構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 管継手
14 内筒体
15 外筒体
36 弾性シール部材
42 保持環
60 ガイドリング
61 当接部
61a 当接面
62 ガイド部
62a ガイド部の先端部
P 管
P3 付け根部(基点部)
P4 管の先端内縁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手(10)における内筒体(14)の外周面に設けられ、かつ当該外周面に対して管(P)を装着する際に前記内筒体(14)に設けられた弾性シール部材(36)を管(P)に先行して径方向内方へ押圧し、当該管(P)の先端内縁(P4)が前記弾性シール部材(36)に接触するのを防止する、管継手用ガイドリングであって、
環状に形成されるとともに、管(P)の先端面を当接させる当接面(61a)を管装着方向(X2)の後方側に有している当接部(61)と、
前記当接部(61)から管装着方向(X2)の後方側へ向けて延び、径方向に変形可能なガイド部(62)と、を備えており、
前記ガイド部(62)は、前記当接面(61a)よりも管装着方向(X2)の先方側に、径方向に変形する際の基点部(P3)を有し、
前記ガイド部(62)の先端部が、前記当接面(61a)よりも管装着方向(X2)の後方側に突出して管の筒内に挿入されることを特徴とする管継手用ガイドリング。
【請求項2】
前記ガイド部(62)の基点部(P3)における外径寸法(H3)が、前記当接面(61a)の軸方向位置(Y)における前記ガイド部(62)の外径寸法(H2)よりも大きく設定されている、請求項1に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項3】
前記ガイド部(62)の基点部(P3)における外径寸法(H3)が、管(P)の内径寸法(H4)よりも大きく設定されている、請求項1又は2に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項4】
前記当接面(61a)の軸方向位置(Y)における前記ガイド部(62)の外径寸法(H2)が、管(P)の内径寸法(H4)と同一かこれより小さく設定されている、請求項1〜3のいずれかに1項に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項5】
前記当接面(61a)から前記ガイド部(62)の基点部(P3)までの軸方向の距離L3と、前記当接部(61)の軸方向の長さL2とが、
(1/2)×L2≦L3<L2
の関係に設定されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項6】
前記ガイド部(62)は、管装着方向(X2)の後方側ほど径方向内側に位置するように傾斜している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項7】
前記ガイド部(62)が、周方向に間隔をあけて複数形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項8】
各ガイド部(62)は、管装着方向(X2)の後方側へ向かうに従い漸次周方向の幅寸法が減少している、請求項7に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項9】
外周面に管(P)が装着される内筒体(14)と、この内筒体(14)の外周面に設けられ、当該内筒体(14)に装着された前記管(P)の内周面に圧接する弾性シール部材(36)と、請求項1〜8のいずれか1項に記載の管継手用ガイドリング(60)と、を備えていることを特徴とする管継手。
【請求項10】
前記内筒体(14)の径方向外側に外筒体(15)が設けられ、
前記外筒体(15)の内周面に、管(P)の外周面に係止して管(P)を保持する保持環(42)が設けられており、
前記ガイドリング(60)は、当該管継手(10)に対する管(P)の装着前の状態で、前記保持環(42)の内周面に嵌合されている、請求項9に記載の管継手。
【請求項1】
管継手(10)における内筒体(14)の外周面に設けられ、かつ当該外周面に対して管(P)を装着する際に前記内筒体(14)に設けられた弾性シール部材(36)を管(P)に先行して径方向内方へ押圧し、当該管(P)の先端内縁(P4)が前記弾性シール部材(36)に接触するのを防止する、管継手用ガイドリングであって、
環状に形成されるとともに、管(P)の先端面を当接させる当接面(61a)を管装着方向(X2)の後方側に有している当接部(61)と、
前記当接部(61)から管装着方向(X2)の後方側へ向けて延び、径方向に変形可能なガイド部(62)と、を備えており、
前記ガイド部(62)は、前記当接面(61a)よりも管装着方向(X2)の先方側に、径方向に変形する際の基点部(P3)を有し、
前記ガイド部(62)の先端部が、前記当接面(61a)よりも管装着方向(X2)の後方側に突出して管の筒内に挿入されることを特徴とする管継手用ガイドリング。
【請求項2】
前記ガイド部(62)の基点部(P3)における外径寸法(H3)が、前記当接面(61a)の軸方向位置(Y)における前記ガイド部(62)の外径寸法(H2)よりも大きく設定されている、請求項1に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項3】
前記ガイド部(62)の基点部(P3)における外径寸法(H3)が、管(P)の内径寸法(H4)よりも大きく設定されている、請求項1又は2に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項4】
前記当接面(61a)の軸方向位置(Y)における前記ガイド部(62)の外径寸法(H2)が、管(P)の内径寸法(H4)と同一かこれより小さく設定されている、請求項1〜3のいずれかに1項に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項5】
前記当接面(61a)から前記ガイド部(62)の基点部(P3)までの軸方向の距離L3と、前記当接部(61)の軸方向の長さL2とが、
(1/2)×L2≦L3<L2
の関係に設定されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項6】
前記ガイド部(62)は、管装着方向(X2)の後方側ほど径方向内側に位置するように傾斜している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項7】
前記ガイド部(62)が、周方向に間隔をあけて複数形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項8】
各ガイド部(62)は、管装着方向(X2)の後方側へ向かうに従い漸次周方向の幅寸法が減少している、請求項7に記載の管継手用ガイドリング。
【請求項9】
外周面に管(P)が装着される内筒体(14)と、この内筒体(14)の外周面に設けられ、当該内筒体(14)に装着された前記管(P)の内周面に圧接する弾性シール部材(36)と、請求項1〜8のいずれか1項に記載の管継手用ガイドリング(60)と、を備えていることを特徴とする管継手。
【請求項10】
前記内筒体(14)の径方向外側に外筒体(15)が設けられ、
前記外筒体(15)の内周面に、管(P)の外周面に係止して管(P)を保持する保持環(42)が設けられており、
前記ガイドリング(60)は、当該管継手(10)に対する管(P)の装着前の状態で、前記保持環(42)の内周面に嵌合されている、請求項9に記載の管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−36542(P2013−36542A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173253(P2011−173253)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(393024717)オーケー器材株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(393024717)オーケー器材株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
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