説明

管継手用シール材

【課題】 硬化充填材が固化する際に収縮しても、管路やスリーブ部材への圧接力が低下することがなく、止水性能を保つことのできる管継手用シール材を提供する。
【解決手段】 シール材30は、ゴムや合成樹脂等の所定硬度の弾性素材によって、内部に、硬化充填材50が充填される充填空間31と、その内周側に圧縮気体が封入される圧縮空間32とを備えて環状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路同士又は管路と人孔等とを水密的に接続する際に用いられる管継手用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
水中や地中に埋設される管路の継手構造として、管路をそれより大径のスリーブ部材に嵌挿し、管路の外周とスリーブ部材の内周の間にシール材を介装するものがある。
【0003】
このような継手構造において、シール材を中空に形成し、その中空部内にエポキシ樹脂やモルタル等の流動状で経時固化する硬化充填材を充填することで、その圧力によってシール材を膨張させて管路とスリーブ部材に圧着させて止水するものが知られている。(特許文献1乃至4参照)
【特許文献1】実開昭61−32885号公報
【特許文献2】特開昭48−76347号公報
【特許文献3】実公昭57−43190号公報
【特許文献4】特公昭59−25915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来ごとく硬化充填材をシール材の中空部内に充填することでシール材を管路とスリーブ部材に圧着させて止水する管継ぎ手構造では、硬化充填材が固化する際に収縮し、管路やスリーブ部材への圧接力が低下して止水性能が低下する虞があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、硬化充填材が固化する際に収縮しても、管路やスリーブ部材への圧接力が低下することがなく、止水性能を保つことのできる管継手用シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する請求項1に係る発明の管継手用シール材は、可撓性素材によって内部に充填空間を備えて環状に形成され、管路の外周と当該管路が内挿されたスリーブ部材の内周との間に介装されて、前記充填空間への硬化充填材の充填によって径方向に膨出して止水するシール材であって、周方向に延設された前記充填空間の径方向に並んで圧縮空間が気密的に設けられると共に、前記充填空間と外部とを連通する充填口と排気口とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成の管継ぎ手用シール材は、管路の外周とスリーブ部材の内周の間に介装され、充填口を介して充填空間に硬化充填材が所定圧力で充填されることで径方向に膨出し、その外周面がスリーブ部材の内周面に、内周面が管路の外周面にそれぞれ圧着して止水する。圧縮空間は、硬化充填材の充填圧力によってその内圧に抗して圧縮され、硬化充填材の固化収縮時に弾性復帰してスリーブ部材や管路への圧接力を維持するように作用する。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、上記充填空間の側壁は径方向に折り畳まれた屈曲重合部を備えており、該屈曲重合部が前記充填空間への硬化充填材の充填によって径方向に伸展するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成では、充填空間への硬化充填材の充填によって重合部が周方向に展開し、厚さ方向により大きく変形する。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、シール材の底部にシール材の他の部分よりも軟質の弾性素材からなる軟質層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の管継手用シール材によれば、充填空間に充填された硬化充填材によって径方向に膨出して圧縮空間を圧縮変形させつつ外周側のスリーブ部材と内周側の管路に圧着して止水すると共に、硬化充填材の固化時の収縮は圧縮空間が弾性復帰することで吸収してスリーブ部材や管路への圧接力を維持するため、止水性能を保つことができるものである。
【0012】
また、請求項2の発明の管継手用シール材によれば、充填空間の側壁に硬化充填材の充填によって径方向に展開する屈曲重合部を備えているため、厚さ方向により大きな変形量を得ることができ、従って、管路の外周とスリーブ部材の内周の間の大きな隙間に対応でき、作業性も向上するものである。
【0013】
また、請求項3の発明の管継手用シール材によれば、管路の表面が租面の場合でもシール材が管路に柔軟に密着して止水性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1(A)は本発明に係る管継手用シール材の一構成例を適用したマンホールと管路の接合部位の概念斜視図,(B)はそのB−B断面図である。
【0015】
図示構成例では、鉛直に配設されたコンクリート製マンホール10の側周壁に、接続管路としてのヒューム管20が水平に接続されており、その接続部位に本発明に係る管継手用シール材の一構成例が適用されているものである。
【0016】
マンホール10の管路接続部位には、ヒューム管20の外径より所定量大径のスリーブ部材としてのスリーブ11が植設されており、このスリーブ11にヒューム管20が挿置され、スリーブ11の内周面とヒューム管20の外周面の間に管継手用シール材としてのシール材30が介設されて止水している。シール材30の前後には発泡ゴム40が充填され、スリーブ11の外周にはヒューム管20の接続作業完了後に打ち増しコンクリート12が打設されている。
【0017】
スリーブ11は、所定幅(軸方向長さ)の環状に鋼板によって形成されており、マンホール10の周壁を貫通してモルタル10Aによって固定されている。その内周にはシール材30の収容空間を形成する一対のシールフランジ11Aが所定間隔で固定され、外周には打ち増しコンクリート12と結合する環状の固定フランジ11Bが設けられている。
【0018】
シールフランジ11Aは、外径がスリーブ11の内径と対応すると共に内径がヒューム管20の外径より所定量大径の円環状であって、外周縁でスリーブ11の内周に溶接固定されて、シール材30を収容し得る所定間隔で設けられている。
【0019】
シール材30は、図2に全体正面図、図3(A)に図2のA−A断面である充填バルブ部位の横断面図,(B)に当該部位の縦断面図を示すように、ゴムや合成樹脂等の所定硬度の弾性素材によって、外径がスリーブ11の内径と略等しく内径がヒューム管20の外径より所定量大径の環状に形成されている。その断面は所定幅及び高さの矩形状で、内部に硬化充填材50が充填される充填空間31と圧縮気体が封入される圧縮空間32とを備え、外周面にシールリップ33が、内周面にシール突条34がそれぞれ二条突設されている。また、その充填空間31と外部とを連通して外周側に突出する充填口としての充填ノズル35と排気口としての排気ノズル36を備えている。
【0020】
充填空間31は、シール材30の中央内部に周囲を周壁(外周壁30A,側壁30L・30R,内周壁30B)に囲まれ、外部と隔絶してシール材30の延設方向(周方向)に連続して形成されている。
【0021】
充填空間31を形成する左右の両側壁30L・30Rは、それぞれ充填空間31側に厚く膨出形成されると共にその上下方向中央に外面側から所定深さのスリット30Sが入れられており、これによって略均等な厚さの側壁を充填空間31側に折り畳んだような屈曲重合部30Cとなっている。
【0022】
圧縮空間32は、充填空間31の内周側である内周壁30Bの内部に、充填空間31及び外部と気密的に隔絶してシール材30の周方向に形成されており、内部には所定圧力の空気が封入されている。幅方向中央で隔壁34Aによって左右の二室に分断されており、それぞれ矩形の断面形状を呈している。尚、この圧縮空間32は必ずしも左右二室でなければならないものではなく、一室でも逆に三室以上の複数であっても良いものである。
【0023】
シールリップ33は、シール材30の外周壁30Aに、先端を所定角度で斜め上外向きに突出させて所定の厚さで形成され、中心を挟んで左右対称に設けられている。このシールリップ33の下側には、当該シールリップ33を収容可能な凹部33Aが形成されている。
【0024】
充填ノズル35は、支持板35Aに所定長さの中空ネジ35Bが溶接固定されて構成され、その支持板35Aを充填空間31内の屈曲重合部30Cと外周壁30Aの内面の間に挟んで位置させると共に中空ネジ35Bを外周壁30Aから外周側に貫通突出させて設けられている。また、排気ノズル36も、詳細は図示しないが充填ノズル35と略同様に構成されており、充填ノズル35と隣接して配設されているものである。
【0025】
上記のごとく構成されたシール材30は、拡大断面図である図4(A)に示すように、スリーブ11のシールフランジ11Aの間に嵌め込まれ、充填ノズル35から充填空間31にエポキシ樹脂等の流動状で経時固化する硬化充填材50が圧入充填されて、屈曲重合部30Cが径方向に伸展して径方向に膨張し、図4(B)に示すように外周面がスリーブ11の内周面に、内周面がヒューム管20の外周面に、それぞれ圧着してスリーブ11の内周面とヒューム管20の外周面の間を塞いで止水する。この時、内周面のシール突条34はヒューム管20の外周面に圧接して圧縮変形し、外周面のシールリップ33はスリーブ11の内周面に圧接して屈曲変形して凹部33A内に収まってその弾性復帰力で一層シール性能を向上させる。
【0026】
ここで、圧縮空間32は、硬化充填材50の充填時その充填圧力によって内圧に抗して圧縮されて収縮する。そして、硬化充填材50が硬化する際に収縮するとその分復帰膨張し、スリーブ11の内周面及びヒューム管20の外周面への圧接力を保って止水性能を維持するように作用する。
【0027】
シール材30の装着施工は、スリーブ11を輪切りした断面図である図5に示すように、排気ノズル36を略真上側として当該充填ノズル35及び排気ノズル36をスリーブ11の外周側に貫通突出させて、シール材30をシールフランジ11Aの間に嵌め込み、それぞれ螺合したナット35A,36Aで充填ノズル35及び排気ノズル36を締着する。そして、充填ノズル35に硬化充填材50の圧入装置を接続すると共に排気ノズル36にバルブ37を装着し、充填ノズル35から充填空間31に硬化充填材50を所定圧力(例えば1MPa)で圧入すると共にバルブ37を開いて内部の空気を排出させて、充填空間31内に硬化充填材50を充満させる。硬化充填材50の充填終了後、充填ノズル35及び排気ノズル36のスリーブ11から突出部した部位を切断し、スリーブ11の周囲に打ち増しコンクリート12を打設するものである。
【0028】
図6および図7は本発明の他の実施形態を示す図4(A)と同様の断面図である。図6および図7に示す実施形態において、図1〜図5に示す実施形態と同一構成要素は同一符号で示し説明を省略する。
【0029】
これらの実施形態においては、シール材30の底部にシール材の他の部分よりも軟質の弾性素材からなる軟質層が設けられており、この構成により、ヒューム管20の表面が租面の場合でもシール材30がヒューム管20の表面に柔軟に密着して止水性能を一層高めることができる。図6の実施形態においては、シール材30の底部はその全体がシール材30の他の部分に一体的に接着された軟質ゴム層38からなり、突条34、34もこの軟質ゴム層38に形成されている。また図7の実施形態においては、突条34、34の間の空間に軟質ゴム層39がシール材30の底面に貼着されており、軟質ゴム層39の表面は突状34、34の先端の面と同一平面に形成されている。これらの軟質ゴム層38、39が軟質層を構成する。
【0030】
尚、本発明はマンホールと管路の接続部位に限定されるものではなく、管路と管路や他の壁面と管路の接続部位に用いても良いものである。また、各部の構成も上記構成例に適宜変更可能なものである。例えば、圧縮空間32を充填空間31の内周側でなく外周側に設けても良く、更に、硬化充填材50はエポキシ樹脂に限らずモルタル等他の材料を用いても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(A)は本発明に係る管継手用シール材の一構成例を適用したマンホールと管路の接合部位の概念斜視図,(B)はそのB−B断面図である。
【図2】シール材の全体正面図である。
【図3】(A)は図2のA−A断面図に相当する横断面図,(B)はその縦断面図である。
【図4】シール材の装着状態を示し、(A)は硬化充填材の充填前,(B)は硬化充填材の充填後である。
【図5】シール材の装着施工状態を示すスリーブの輪切り方向の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す横断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 マンホール
11 スリーブ(スリーブ部材)
20 ヒューム管(管路)
30 シール材(管継手用シール材)
30C 屈曲重合部
31 充填空間
32 圧縮空間
35 充填ノズル(充填口)
36 排気ノズル(排気口)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性素材によって内部に充填空間を備えて環状に形成され、管路の外周と当該管路が内挿されたスリーブ部材の内周との間に介装されて、前記充填空間への硬化充填材の充填によって径方向に膨出して止水するシール材であって、
周方向に延設された前記充填空間の径方向に並んで圧縮空間が気密的に設けられると共に、前記充填空間と外部とを連通する充填口と排気口とを備えて構成されていることを特徴とする管継手用シール材。
【請求項2】
上記充填空間の側壁は径方向に折り畳まれた屈曲重合部を備えており、該屈曲重合部が前記充填空間への硬化充填材の充填によって径方向に伸展するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の管継手用シール材。
【請求項3】
シール材の底部にシール材の他の部分よりも軟質の弾性素材からなる軟質層が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の管継手用シール材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−112580(P2006−112580A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302704(P2004−302704)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】