説明

管継手用リング部材および管継手

【課題】 その複数を連結させることによって、所望の長さの管継手を簡単かつ容易に得ることが可能な、管継手用のピースとしてのリング部材と、このリング部材を使用した管継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
複数を互いに連結させることによって、所望の長さを有し、かつ曲げ方向を限定可能な管継手を形成することのできる短い円筒体1aからなるもので、前記円筒体1aは、口径の小さな挿入部2と口径の大きな受入部3とを有し、挿入部2の先端側の外周面2aと受入部3の内周面3aとが、円筒体の軸心に中心を有する同一径の、球体の球面の同一面部により形成され、受入部3の開口部の内面端部には係合部4を、円筒体1aの外周部のほぼ中央部には、係合部4を係合保持する保持部8をそれぞれ形成して管継手用のリング部材1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下水道や通信ケーブルなどの敷設に際して使用される合成樹脂製パイプ同士を、所要の部位で簡単かつ容易に接続することのできる管継手と、この管継手を構成するリング部材に関するもので、地中埋設管の施工技術に属するものである。
【背景技術】
【0002】
上下水道や通信ケーブルなどの敷設に用いられる合成樹脂製パイプからなる配管は、その殆どが地中に埋設されて利用されている。
したがって、振動などによってその一部が損傷すると、速やかに損傷箇所を修理する必要がある。
しかしながら、その損傷箇所の配管は、上流側および下流側のいずれもが固定状態にあることが多いので、それらの配管を水平管で接続するのには、合成樹脂製のヤリトリ型接合部材(以下、スライド継手という。)が用いられている。
かかるスライド継手として、本出願人は、特許文献1に示される特許第4377621号の発明を提案した。
【0003】
このスライド継手は、ゴム輪受口カラーが接続用短管にスライド可能に外嵌され、前記ゴム輪受口カラーの両端部内面にそれぞれシール溝が設けられ、これらのシール溝の一方にゴム輪が、他方に固定用で且つシールを完全に行う固定用ゴム輪がそれぞれ装着されたものである。
かかるスライド継手は、不使用時には、前記ゴム輪受口カラーが前記接続用短管上に引込まれている。使用時には、前記一方のゴム輪が既設の排水管上を、前記他方の固定用ゴム輪が、前記接続用短管上をそれぞれスライドするようにしたものである。
また、前記接続用短管の外面に、前記使用時に、前記他方の固定用ゴム輪がシールする部位のみを隆起したシール面が形成されるとともに、前記他方の固定用ゴム輪が前記シール面に乗り上げるまでは、前記接続用短管の外面に接触しないようにして、そのスライド量を大きくしながら、そのスライドをスムーズにしたことを特徴とするものである。
【0004】
しかしながら、このスライド継手は、先に述べたように、上流側および下流側の配管が水平位置にあるときに用いられるもので、スライド継手自体が屈曲しないので、両者間に段差が存在する場合には適用できない。
そこで、そのような場合には、特許文献2に示されるような可撓性を有する管を用いた管継手が用いられている。
その一例が、実用新案登録第3005417号公報(特許文献2)に、排水管の可撓性自在継手として提案されている。
【0005】
この特許文献2で提案されている可撓性自在継手は、以下のような構造を有しているものである。
すなわち、両側に係合用屈曲辺縁を連続的に備えた、硬質合成樹脂から成る1条のスパイラル状の条体を素材に用いて、その隣り合う各条体部分の一側の係合用屈曲辺縁を他側の係合用屈曲辺縁に連続的に係合して、可撓性管から成る外管を構成し、この外管内に軟質合成樹脂から成る内面を滑らかに形成した内管を、一体的に配設した管継手を用いるというものである。
【0006】
しかしながら、上記のような可撓性自在継手は、可撓管自体が、本来屈曲すべきでない配管途中において、その可撓性のために垂直方向において下方に撓んでしまうことがあった。
そのため、その撓みを発生させないためには、可撓性自在継手を下方から支える撓み防止用の支持装置を狭い間隔で多数設けなければならず、可撓性のない塩ビパイプ等の直管に比べて配管作業が煩雑でコストも余分に要するという問題があった。
そのような問題を解決する手段の一例も、特開平08−303652号公報(特許文献3)で提案されている。
【0007】
この特許文献3に記載の可撓管は、前記構成からなる可撓管の外層の外表面に軸方向に沿って形成された凹凸部に、嵌合する突起部を有する屈曲規制片を可撓管の周方向における相対向する位置において軸方向に沿って直線状に嵌装することによって、可撓管の本来の可撓性を保有しつつ、可撓性が逆に不都合に作用する部分においては、その可撓性を制限できるようにし、配管作業を能率的に行うことができるというものである。
【0008】
さらに、可撓管を用いずに、接続すべき管の間に捩れなどが存在するときに、捩れなどを吸収できる継手として、球面形状を利用した継手が特開2001−263561号公報(特許文献4)に開示されている。
【0009】
この中空球面継手は、内面側に球面凹部が形成された球面受座と、前記球面受座の球面凹部に合致するように嵌込まれる球面凸部が形成された球面座から構成されるもので、圧力環境下で使用される複数本の単位管体の接続部に作用する捩れや、回転方向に対する荷重に対して吸収することができるというものである。
【0010】
なお、可撓管は、その使用が継手に限定されるものではなく、種々の配管において用いられている。
その一例としては、たとえば、特開2003−96856号公報(特許文献5)に示される、建物内に設置された各種排水設備と、建物の外周基礎の外側地中に埋設された排水桝の流入側接続部との間に、内面が平滑で可撓性を有する排水枝管が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4377621号公報(段落0002)
【特許文献2】実用新案登録第3005417号公報(実用新案登録請求の範囲)
【特許文献3】特開平08−303652号公報(特許請求の範囲、段落0003、段落0004)
【特許文献4】特開2001−263561号公報(特許請求の範囲、段落0007)
【特許文献5】特開2003−96856号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願人が、先に提案した特許文献1に記載の、上流側および下流側の配管を水平管で接続するためのスライド継手は、
1)ヤリトリ型接合部材のヤリトリスライド操作等作業が機械的で、かつ、軽快にでき、その上、施工の品質が確保でき、ひいては施工上の信頼性を得ることができ、しかも、生産費を上げない。
2)ヤリトリ型接合部材としてゴム輪受口カラーを軽快なスライド運動させることが必要としながら、ゴム輪チェックずみで、使用時にはシ−ルを完全にするという、ゴム輪がつぶし代大の固定用に構成しながら、前記スライドが軽快にでき、ヤリトリ型接合部材として好適なものである。
などの優れた作用効果を奏するものである。
【0013】
しかしながら、この特許文献1のスライド継手は、施工面においては、非常に優れたものではあるが、本質的な問題として、上流側および下流側の配管が水平状態にあるときに使用されるものである。
したがって、上流側および下流側の配管に段差が有る場合に使用するには、別途接続部材を必要とするもので、そのような場合において使用するには、適したものとは云えないという課題を有している。
【0014】
また、先に述べた公知のスライド継手は、製造管理の面からは、用いられる構成部品が多く、上流側および下流側の配管間の間隔に応じた構成部品を、さらにはそれらに適した製品も用意しなければならないことなどから、製造管理や在庫管理が複雑化し、その簡易化が強く求められているものである。
【0015】
前記解決すべき課題の内、配管間の段差による問題は、接続管として特許文献2や特許文献3に記載の可撓性自在継手や可撓管を用いて、あるいは、特許文献4に記載の球面継手を用いることにより、解消することは可能である。
しかしながら、それらの構造は、屈曲規制片の構造・利用方法含め未だ簡易なものとは言い得なかった。
特に、配管間の間隔に応じた継手製品を、多種多様に用意しなければならないことに関しては、なんら解決されていなかった。
【0016】
この発明はかかる現状に鑑み、先に提案したスライド継手を、段差の有る配管間にも適用可能なものとするとともに、構造を簡素化し、製造管理や在庫管理を容易なものとする手段を提供すべく検討を行った。
【0017】
その結果、両端部の口径が異なる比較的短い円筒体の、口径の大きな受入部の内周面と口径の小さな挿入部の先端側外周面を、前記円筒体の軸心に中心を有する同一径の球体の球面における同一面部によって形成されたリング部材を用い、前記受入部の開口端の内周面に凸状の係合部を、前記リング部材の外周部におけるほぼ中央部に、他のリング部材の前記係合部を係合保持する保持部を形成し、相互に連結されるリング部材同士を一定の範囲内で屈曲可能とすることによって、リング部材同士の連結を滑動自在な状態で行われ、複数のリング部材を連結して得られる管継手の曲げ方向を限定させることを見出し、それにより前記課題を解決したのである。
【0018】
すなわち、この発明は、その複数を連結させることによって、所望の長さの管継手を簡単かつ容易に得ることが可能な、管継手用のピースとしてのリング部材と、このリング部材を使用した管継手を提供せんとすることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため、この発明のリング部材は、
複数を互いに連結させることによって、所望の長さを有し、かつ屈曲性を有する管継手を形成することのできる短い円筒体からなるものであって、
前記円筒体は、口径の小さな挿入部と口径の大きな受入部とを有し、
前記挿入部の先端側の外周面と受入部の内周面とが、前記円筒体の軸心に中心を有する同一径の、球体の球面の同一面部により形成され、
前記受入部の開口部の内面端部には係合部が、前記円筒体の外周部のほぼ中央部には、前記係合部を係合保持する保持部がそれぞれ形成されていること
を特徴とする管継手用のリング部材である。
【0020】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1記載の管継手用のリング部材において、
前記受入部の内周面と挿入部の先端側における外周面の形状は、
個々のリング部材を、円筒体の軸心との垂直方向の全方位に滑動自在な状態での嵌合連結を可能とするもので、複数のリング部材を嵌合して得られる管継手に屈曲性を付与するものであること
を特徴とするものである。
【0021】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1記載の管継手用のリング部材において、
前記円筒体は、
前記球面状の挿入部の後端部と、前記受入部の後部に段差をもって形成される後部端面との間に環状帯を有するもので、当該円筒体に連結される他のリング部材を構成する円筒体の滑動を、当該円筒体に形成された環状帯の中央部の前記保持部を中心として、前記環状帯の範囲に規制し、連結されたリング部材の屈曲方向を規制するよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0022】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1記載の管継手用のリング部材において、
前記受入部の内周面を形成する球面の中心は、
前記受入部の開口端面に形成される係合部の内端縁と円筒体の軸心との交差位置にあるとともに、前記挿入部の先端側における外周面を形成する球面の中心は、前記外周部の後端と前記受入部の後部端面間に形成される環状帯を垂直に2分する平面と円筒体の軸心との交差位置にあること
を特徴とするものである。
【0023】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1記載の管継手用のリング部材において、
前記挿入部は、
先端側に形成される球面状の外周部の後方に、シールリング用の凹溝が設けられていること
を特徴とするものである。
【0024】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1記載の可撓管形成用リング部材において、
前記受入部の開口内端面に設けられる係合部は、
リング状の幅狭の凸状体で形成されていること
を特徴とするものである。
【0025】
さらに、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載の複数のリング部材同士を、一方のリング部材の受入部に他方のリング部材の挿入部を挿入させて、他方のリング部材の外周部に形成された保持部に、前記一方のリング部材の係合部を係合保持させて所望の長さとするとともに、相互に連結させたリング部材同士の屈曲方向を規制するよう構成されていること
を特徴とする管継手である。
【発明の効果】
【0026】
この発明のリング部材は、口径の小さな挿入部と口径の大きな受入部とを有する短い円筒体からなるもので、前記挿入部の先端側の外周面と受入部の内周面とが、前記円筒体の軸心に中心を有する同一径の、球体の球面の同一面部により形成され、前記受入部の開口部の内面端部には係合部が、前記円筒体の外周部のほぼ中央部には、前記係合部を係合保持する保持部がそれぞれ形成されたものである。
したがって、それぞれのリング部材を円筒体の軸心との垂直方向の全方位に滑動自在な状態での嵌合連結を可能するものであって、複数のリング部材を相互に連結して得られる管継手は、一定範囲内において屈曲性を発揮し、直管としても曲管としても使用することができるものである。
特に、管継手とする場合には、構成の簡易なリング部材の結合数によって自由自在に変化させることができるという優れた効果を奏するものである。
【0027】
また、この発明のリング部材は、受入部の開口部の内面端部に係合部を、この係合部を係合保持する保持部を、リング部材を構成する円筒体の外周部のほぼ中央部に設けているので、複数のリング部材を連結して得られる管継手の屈曲性の方向に制限を加えることができ、配管後に望ましくない配管の撓みを、管継手を一定角度で回転させることによって修正ができ、各リング部材の滑動範囲を選択することによって、得た管継手の曲げ方向と角度を簡単かつ容易に調整することができる。
【0028】
また、この発明のリング部材は、円筒体の外周面に設けられる環状帯の一端側が、受入部の外周面の後部に段部を介して形成される後部端部が、連結させたリング部材の滑動範囲を限定するストッパーとして機能し、複数のリング部材を連結して得られる管継手の屈曲角度を所望の角度に限定し、管継手として使用する場合の管路勾配を正確に調整できるという効果も奏するものである。
【0029】
また、この発明のリング部材において、挿入部の外周面の後部に、シールリング用の凹溝を設け、他のリング部材と連結の際に、シールリングを装着すれば、得られる管継手に水密性を付与することができ、管継手の用途を拡大する効果も奏される。
【0030】
この発明によれば、任意の長さの管継手を簡単かつ容易に調製することが可能で、しかも構造簡明なリング部材、必要に応じてシールリングを併用するだけでよく、その管継手を利用して配管同士を相互に連結するに際し、配管間の間隔に応じて、部材を調整しなければならないということはもちろん、管継手の調製自体にも種々の部品を揃えなければならないという問題も発生させることがないので、従来の技術における問題点の多くを解消するという優れた効果を奏する。
【0031】
さらに、この発明のリング部材は、構造が簡素で、工場で、品質均一に、しかも大量の連続生産を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明にかかるリング部材の一例の正面図である。
【図2】図1に示すリング部材の断面図である。
【図3】図1に示されるリング部材を3個連結した状態を示す正面図である。
【図4】図3に示される3個連結したリング体を上方向に屈曲させた状態を示す正面図である。
【図5】この発明にかかるリング部材の他の実施例を示す正面図である。
【図6】この発明にかかるリング部材のさらに他の実施例を示す正面図である。
【図7】この発明にかかる管継手の使用方法を示す説明図であって、(a)は使用直前の状態を示し、(b)は分断された配管を連結した状態を、(c)は管継手が回動しないようにセットした状態を示すものである。
【図8】この発明にかかる管継手が配管の一部に用いられていることを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明にかかるリング部材及びこのリング部材を用いた管継手の実施例を、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
なお、この発明は、以下に説明する実施例にのみ限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲内において、種々変更を加えることが可能なものである。
【0034】
この発明にかかるリング部材1は、図1および図2で明らかなように、両端部の口径が異なる比較的短い円筒体1aから構成されるものであって、口径の小さな一方の端部(図の左側)を、他のリング部材に嵌合するための挿入部2とし、口径の大きな他方の端部(図の右側)を、他のリング部材の挿入部2を受け入れるための受入部3としたものである。
【0035】
前記リング部材1の挿入部2は、その外周面2aが、前記受入部3の内周面3に容易に嵌合でき、かつ密着可能なように、先端部に向かって縮径させて、その表面が球面の一部として形成されている。
【0036】
なお、この表面が球面状の挿入部2の後端外周部には、水密状態を保持するシールリング5を装着するためのリング状の凹溝6が形成されている。
【0037】
一方、前記受入部3は、その内周面3aが、前記挿入部2を円滑に受入れ、かつ密着可能なように、開口端から他端側に軸心方向に向かって縮径させて、その表面が球面の一部として形成されている。
【0038】
具体的には、前記リング部材1の挿入部2と受入部3は、他のリング部材との連結が、連結される個々のリング部材が、円筒体1aの軸心Xとの垂直方向の全方位に滑動自在とするために、挿入部2の外周面2aと、受入部3の内周面3aのそれぞれが、円筒体1aの軸心Xに中心を有する同一径の球体の、球面の同一面部により形成されている。
【0039】
より具体的には、前記挿入部2の外周面2aは、軸心X上に中心Pを有する直径dの球が形成する球面の一部として形成され、受入部3の内周面3aは、軸心X上に中心Oを有する同一直径dの球が形成する球面の一部として形成される。
【0040】
なお、前記受入部3の内周面3aを形成する球面の中心Oは、受入部3の開口端の内周面3aの内側にリング状に形成される凸状の係合部4の内端縁4aと、円筒体1aの軸心Xとの交差位置に設けられる。
また、挿入部2の外周面2aを形成する球面の中心Pを、挿入部2の外周面2aに環状に設けられたシールリング5を装着するための凹溝6の外端縁6aと、前記受入部3の後部端面3cとの間に形成される環状帯7を垂直に2分する平面と、円筒体1aの軸心Xとの交差位置におくことが、嵌合連結したリング部材同士の滑動をより滑らかにするために好ましい。
【0041】
また、リング部材1の挿入部2と受入部3は、他のリング部材1Aや1Bの挿入部2と受入部3と相互に嵌合されるものであるので、当然のことであるが、挿入部2の外周面2aを形成する球面の直径dが、受入部3の内周面3aを形成する球面の直径dより、誤差の範囲においても大きくなることは避ける必要がある。
逆に、挿入部2の外周面2aを形成する球面の直径dが、受入部3の内周面3aを形成する球面の直径dより誤差の範囲で小さくなること、あるいは、嵌合連結したリング部材1A,1B……の滑動をより滑らかにするためにある程度恣意的に小さくすることは、許容される。
【0042】
前記円筒体1aから形成されるリング部材1の中央部の外周部に形成される前記環状帯7は、断面がほぼ平面もしくは挿入部2の外周面2aを形成する球面の直径dより、1〜2%小さな直径dsを有する球面で形成されている。
【0043】
この環状帯7の外周部の相対する中央部には、前記受入部3の開口端面の内側に形成されたリング状の係合部4を係合保持するための保持部8が形成される。
【0044】
この保持部8は、前記口径の大きな受入部3と段差を介して一体的に形成される口径の小さな挿入部2からなるリング部材1の、前記受入部3の後部端面3cと、前記挿入部2の外側に形成されるリング状のシールリング5を保持するための凹溝6の外端縁6aとの間に形成される環状帯7のほぼ中央部に形成されるものである。
【0045】
具体的には、前記環状帯7の中央部は、リング部材1の軸線のほぼ中央部と一致するもので、この中央部の保持部8から外周方向に扇状に面積を拡大させて、中央部が狭く、外周部が幅広の逆三角形状として、可変幅(図1で斜線を施した部位)を有するものとしたものである。
【0046】
より具体的には、前記受入部3の後部端面3cおよび挿入部2の凹溝6の外端縁6aをそれぞれ中央部に向かって山型ないし扇状に膨出拡大させて、中央部において各山型の頂部同士を、前記係合部4の幅(約2mm)分だけ空けて相対させることによって保持部8を形成させることによって、環状帯7を、中央部が狭く、外周部が幅広の逆三角形状として、前記保持部8を中心としてリング部材1が、前方(挿入部2側)又は後方(受入部3側)に一定の範囲で滑動可能となるよう形成したものである。
【0047】
かかる環状帯7は、前記滑動可能な幅(可変幅)の大小に応じて、嵌合連結したリング部材1の滑動範囲の拡大又は縮小を可能にする。
すなわち、環状帯7の可変幅を大きくすれば、リング部材1の滑動範囲が大きくなり、可変幅を小さくすれば、リング部材1の滑動範囲が小さくなる。
したがって、このリング部材1を嵌合連結して管継手とした場合の、管継手の曲がり角度をあらかじめ規定することができる。
また、製品としての管継手を、たとえば曲がり角度を15度、30度用とした製品とすることもできる。
【0048】
なお、この環状帯7と受入部3の後部端面3cとの間には、挿入部2と受入部3の口径の差異により段差が生じるが、この段差により形成される後部壁面3cは、リング部材1の滑動範囲を限定するストッパーとして機能するものである。
【0049】
また、環状帯7には、先に述べたように、嵌合連結したリング部材の滑動範囲の拡大と滑動範囲を限定する機能が付与されているが、さらに、嵌合連結したリング部材の嵌合により得られる管継手の、屈曲方向を規制する機能も付与されるものである。
【0050】
管継手の屈曲方向を規制する機能は、図に示される受入部3の開口端部に設けられる係合部4と、環状帯7を形づくる後部端面3cと、前記係合部4を係合保持する保持部8により奏されるものである。
【0051】
この保持部8には、当該保持部8を有するリング部材1の挿入部2を装着する他のリング部材1Aの、受入部3の開口端の内側に形成された係合部4の一部が係合保持されるので、他のリング部材1Aに挿入連結したリンク部材1は、その位置で係止され、受入部3内での滑動(スライド移動)が阻止される。
その結果、前記保持部8と軸心Xを含む平面における屈曲性は規制されることになる。
【0052】
すなわち、図3〜図4に示されるように、複数のリング部材1,1A,1Bを互いに嵌合連結して構成した管継手20は、各リング部材1,1A,1Bの保持部8を中心としてリング部材1,1A,1Bが、それぞれの環状帯7に形成された可変幅内において上方又は下方に弧状に屈曲するもので、前記保持部8と軸心Xを含む平面においては屈曲が制限されるのである。
【0053】
図1〜図4に示す実施例においては、複数のリング部材1,1A,1Bを相互に連結して構成する管継手20の屈曲方向を規制するために、各リング部材1,1A,1Bの受入部3の開口部内端部に凸状の係合部4をリング状に形成しているが、要は、連結するリング部材を受入部3内の一定位置に係合保持することができれば、実施例の形態に限定されるものではない。
【0054】
すなわち、図5に示すように、リング部材1の外周部のほぼ中央部に、円形の係合孔9を相対する部位に対称的に形成させるとともに、この係合孔9と係合する円柱状の係合突部10をリング部材1の受入部3の開口部内端部にそれぞれ形成したものでもよい。
【0055】
この形態の場合には、リング部材同士を嵌合連結させた場合、一方のリング部材の外周部に形成された環状帯7の係合孔9に、他方のリング部材の係合突部10を係合保持させることによって、連結させた側のリング部材は、当該リング部材の段差を有する後部端面3cとシールリング5間の範囲内で前方又は後方にスライドさせることができる。
【0056】
さらに、図6に示すように、図5の場合と同様に、リング部材1の外周部に形成される環状帯7のほぼ中央部に向けてシールリング5を保持するための凹溝6および受入部3の後部端面3c側からそれぞれ軸線に並行して凹状のガイド溝11を形成し、双方のガイド溝11,11の先端部間に係合孔9aを形成するとともに、この係合孔9aに係合する係合突部10をリング部材1の受入部3の開口部内端部にそれぞれ形成したものである。
【0057】
この形態のリング部材1も図5と同様に利用できるものである。
なお、前記した各実施例においては、リング部材1に2つの保持部又は係合孔を形成しているが、その数は1ヶ所であってもよいものである。
【0058】
かかるリング部材1は、その複数を相互に連結させることによって、可撓性を有する管継手20を得ることができる。
すなわち、図3に示すように、連結せんとするリング部材1の凹溝6内にシールリング5を装着させたのち、その挿入部2をリング部材1Aの受入部3内に挿入し、リング部材1Aの係合部4をリング部材1の外周部に形成した保持部8と係合させれば、同様の方法でリング部材1Bを相互に連結させて管継手20とするものである。
【0059】
この実施例に示すリング部材1は合成樹脂製で成型されたものであって、円筒体1aの長さは約50mm、受入部3の外径は約126mm、係合部4の厚みは2mm、挿入部2の内径は約107mm、その外径は約115mm、保持部8の間隔は約2mm、直径dは約φ120、直径dsはφ118、スライド幅は左右それぞれ約5°である。
【0060】
なお、管継手20の長さは、自在に変更可能なものである。
また、保持部8に係合保持されるリング部材の移動可能な可変幅を前後5°としているが、その角度は5°にのみ限定されるものではない。
さらに、リング部材同士を水密に保持するシールリング5は、挿入部2の後方に凹溝6を形成して設けているが、他の手段であってもよいものである。
【0061】
ついで、複数のリング部材1,1A,1Bを連結させて得た管継手20の使用方法について説明する。
たとえば、損傷などで取換えが必要な部位を切除して、配管Aの一方に受入部22を装着する。
ついで、前記切除された部位の長さにほぼ等しい管継手20を、図7に示すように全体を弧状に屈曲させ、管継手20の受入部3側に短い接続管21を装着するとともに、配管Aの管端に受口部22を装着する。
【0062】
この状態において、屈曲状態にある管継手20を、配管A,B間に配置する。
ついで、配管Aに装着した受口部22を一旦後方(矢印方向)に移動させておき、管継手20の受入部3を配管Bと接続させたのち、管継手20を直線状に変形させる。
その後、前記受口部22を、前方(矢印右側方向)に移動させて、前記管継手20の挿入部2に嵌合して接続させることによって、配管AとB間の接続を行うものである。
【0063】
しかるのち、配管A,Bを接続した管継手20は、地圧などの影響を受けて撓むことを避けるために、図7(c)に示すように、圧力のかかる方向に、屈曲性の規制された面が一致するように回転させることによって、地圧などの影響による撓みを防止する。
【0064】
すなわち、配管Aと配管Bとの間に管継手20を介装させて両者を一体的に連結した状態では、管継手20を構成する各リング部材の保持部は、いずれもラインY上、具体的には側面側に位置するので、管継手20全体を矢印方向に90°回転させ、前記ラインYを上方に移動させることによって、リング部材相互の滑動が阻止され、結果的に管継手20が屈曲することを防止する。
【0065】
さらに、この管継手20は、前記使用法以外に、例えば、図8に示されるように、建物内に設置された各種排水設備と、建物の外周基礎22の外側地中に埋設された段差を有する排水桝とを連結する曲管として使用することもできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明のリング部材は、簡単な構成にもかかわらず、任意の長さの管継手を、しかも屈曲性を規制して調製することが可能なものである。
また、前記リング部材を使用した管継手は、直線状にも、一定の角度で屈曲する曲管としても使用することができるので、上下水道、各種ケーブルの施工に有効な技術として、それらの業界に有効に利用される可能性の高いものである。
【符号の説明】
【0067】
1,1A,1B リング部材
2 リング部材の挿入部
2a 挿入部の外周面
3 リング部材の受入部
3a 受入部の内周面
3b 開口端
3c 受入部の後部端面
4 凸状の係合部
5 シールリング
6 凹溝
7 環状帯
8 保持部
20 管継手
A,B 配管
O,P 球面の中心
d 球面の直径
X リング部材の軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数を互いに連結させることによって、所望の長さを有し、かつ屈曲性を有する管継手を形成することのできる短い円筒体からなるものであって、
前記円筒体は、口径の小さな挿入部と口径の大きな受入部とを有し、
前記挿入部の先端側の外周面と受入部の内周面とが、前記円筒体の軸心に中心を有する同一径の、球体の球面の同一面部により形成され、
前記受入部の開口部の内面端部には係合部が、前記円筒体の外周部のほぼ中央部には、前記係合部を係合保持する保持部がそれぞれ形成されていること
を特徴とする管継手用のリング部材。
【請求項2】
前記受入部の内周面と挿入部の先端側における外周面の形状は、
個々のリング部材を、円筒体の軸心との垂直方向の全方位に滑動自在な状態での嵌合連結を可能とするもので、複数のリング部材を嵌合して得られる管継手に屈曲性を付与するものであること
を特徴とする請求項1記載の管継手用のリング部材。
【請求項3】
前記円筒体は、
前記球面状の挿入部の後端部と、前記受入部の後部に段差をもって形成される後部端面との間に環状帯を有するもので、当該円筒体に連結される他のリング部材を構成する円筒体の滑動を、当該円筒体に形成された環状帯の中央部の前記保持部を中心として、前記環状帯の範囲に規制し、連結されたリング部材の屈曲方向を規制するよう構成されていること
を特徴とする請求項1記載の管継手用のリング部材。
【請求項4】
前記受入部の内周面を形成する球面の中心は、
前記受入部の開口端面に形成される係合部の内端縁と円筒体の軸心との交差位置にあるとともに、前記挿入部の先端側における外周面を形成する球面の中心は、前記外周部の後端と前記受入部の後部端面間に形成される環状帯を垂直に2分する平面と円筒体の軸心との交差位置にあること
を特徴とする請求項1記載の管継手用のリング部材。
【請求項5】
前記挿入部は、
先端側に形成される球面状の外周部の後方に、シールリング用の凹溝が設けられていること
を特徴とする請求項1記載の管継手用のリング部材。
【請求項6】
前記受入部の開口内端面に設けられる係合部は、
リング状の幅狭の凸状体で形成されていること
を特徴とする請求項1記載の管継手用のリング部材。
【請求項7】
さらに、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載の複数のリング部材同士を、一方のリング部材の受入部に他方のリング部材の挿入部を挿入させて、他方のリング部材の外周部に形成された保持部に、前記一方のリング部材の係合部を係合保持させて所望の長さとするとともに、相互に連結させたリング部材同士の屈曲方向を規制するよう構成されていること
を特徴とする管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−202787(P2011−202787A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73134(P2010−73134)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)