説明

管継手移動防止具及び方法

【課題】作業手間を要することなく、且つ、構成部材を簡素化し、地震等の不測の外力に抗して両口部の管軸方向の相対移動を防止し、既設流体管内のシール性能を維持できる管継手移動防止具及び方法を提供すること。
【解決手段】両口部1,2の内周面に亘って対向する対向位置に配置され、対向位置において挿口部1の内周面に対向する箇所、及び受口部2の内周面に対向する箇所に、雌ネジ部11a,12aを有する貫通孔11,12をそれぞれ備えた筒状体10と、貫通孔11,12の雌ネジ部11a,12aにそれぞれ螺挿されるボルト17,17と、から少なくとも構成されており、ボルト17,17は、先端17b,17b側が両口部1,2の内周面にそれぞれ形成された凹部1b,2b内に進入している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の既設流体管を構成する挿口部と、この挿口部が挿入された他方の既設流体管を構成する受口部と、両口部の対向面間をシールしたシール部と、を備える管継手において、両口部の内周面に亘って架設され、両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止具及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管継手移動防止具及び方法は、挿口部及び受口部の内周面にネジ部材を取付けるとともに、このネジ部材を被覆するように両口部の内周面に対向する位置に継ぎ輪を配置することにより、既設流体管に対し地震等の不測の外力が作用する場合に備え、両口部の相対移動を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−113644号公報(第9頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、ネジ部材を取付けるために、閉塞空間である既設流体管の内部において、両口部の内周面に雌ネジ部を螺設して雌ネジ孔を形成する必要があり、作業手間を伴うものであった。また、ネジ部材が螺挿されるロック部材と、このロック部材とは別体の継ぎ輪を要し、ネジ部材と継ぎ輪とがロック部材を介して係合することになるため、構成部材が多岐に亘り複雑であった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、作業手間を要することなく、且つ、構成部材を簡素化し、地震等の不測の外力に抗して両口部の管軸方向の相対移動を防止し、既設流体管内のシール性能を維持できる管継手移動防止具及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の管継手移動防止具は、
一方の既設流体管を構成する挿口部と、
該挿口部が挿入された他方の既設流体管を構成する受口部と、
前記両口部の間をシールしたシール部と、を備えた管継手において、
前記両口部の内周面に亘って架設され、両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止具であって、
前記両口部の内周面に亘って対向する対向位置に配置され、該対向位置において前記挿口部の内周面に対向する箇所、及び前記受口部の内周面に対向する箇所に、雌ネジ部を有する貫通孔をそれぞれ備えた筒状体と、
前記貫通孔の雌ネジ部にそれぞれ螺挿されるボルトと、から少なくとも構成されており、
前記ボルトは、先端側が前記両口部の内周面にそれぞれ形成された凹部内に進入していることを特徴としている。
この特徴によれば、既設流体管の管継手を構成する挿口部と受口部が、両口部に亘って対向する対向位置に配置された筒状体と、貫通孔の雌ネジ部にそれぞれ螺挿されるボルトとを介し、すなわち筒状体とボルトとが一体化して両口部の内周面に亘って架設されることで、他の部材を要しない簡素化した構成部材のみで、両口部の管軸方向の相対移動が防止されるため、両口部の間をシールした既設のシール部により、地震等の不測の外力に抗して、既設流体管内のシール性能を維持できる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の管継手移動防止具は、請求項1に記載の管継手移動防止具であって、
前記筒状体は、周方向にのみ分割された分割構造を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、筒状体が分割構造を有していることで、分割された筒状体を既設流体管内部の対向位置まで運搬し、対向位置において分割された筒状体の各部材を互いに組み付けることができるため、閉塞空間である筒状体の対向位置への配置が容易となる。また、筒状体が周方向にのみ分割されているに過ぎず、分割された各部材が管軸方向には一体に形成されているため、両口部の管軸方向の相対移動を防止する機能を維持できる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の管継手移動防止具は、請求項1または2に記載の管継手移動防止具であって、
前記両口部の内周面と筒状体の外周面との間に、密封部材が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、両口部の内周面と筒状体の外周面との間に、密封部材が設けられていることで、この密封部材と、両口部の間をシールした既設のシール部とにより、両口部の間を二重にシールできる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の管継手移動防止具は、請求項1ないし3のいずれかに記載の管継手移動防止具であって、
前記筒状体の外周面に、前記貫通孔の周囲をシールするシール部材が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、貫通孔の周囲をシールするシール部材により、貫通孔に連通する凹部内への流体の浸入を防ぎ、凹部内が腐食してしまうことを防止できる。
【0010】
本発明の請求項5に記載の管継手移動防止具は、請求項1ないし4のいずれかに記載の管継手移動防止具であって、
前記挿口部の凹部が、前記シール部よりも先端側において形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、挿口部の凹部が、シール部よりも先端側、すなわち受口部の凹部に比較的近い側において形成されているため、両凹部にそれぞれ連通する貫通孔を備えた筒状体の軸方向長さを短くし、筒状体をコンパクトにできる。
【0011】
本発明の請求項6に記載の管継手移動防止方法は、
一方の既設流体管を構成する挿口部と、
該挿口部が挿入された他方の既設流体管を構成する受口部と、
前記両口部の間をシールしたシール部と、を備えた管継手において、
前記両口部の内周面に亘って架設し、両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止方法であって、
軸方向に互いに離間した所定箇所に、雌ネジ部を有する貫通孔をそれぞれ備えた筒状体を、前記両口部の内周面に亘って対向する対向位置に配置する筒状体配置工程と、
前記筒状体配置工程の後に、前記貫通孔を介し、前記両口部の内周面に凹部をそれぞれ形成する凹部形成工程と、
前記凹部形成工程の後に、前記貫通孔の雌ネジ部それぞれに、先端側が前記凹部内に進入するまでボルトを螺挿するボルト螺挿工程と、から少なくとも構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、既設流体管の管継手を構成する挿口部と受口部が、両口部に亘って対向する対向位置に配置された筒状体と、貫通孔の雌ネジ部それぞれに先端側が凹部内に進入するまで螺挿されるボルトとを介し、両口部の内周面に亘って架設されることで、両口部の管軸方向の相対移動が防止されるため、作業手間を要することなく、筒状体配置工程後に、凹部形成工程において両口部の内周面に凹部を形成するだけで、両口部の間をシールした既設のシール部により、地震等の不測の外力に抗して、既設流体管内のシール性能を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例1を以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1を図面に基づいて説明すると、先ず図1(a)は、本発明の実施例1における挿口部及び受口部の接続状態を示す拡大断面図であり、(b)は、同じくモルタル層を剥がした状態を示す拡大断面図である。図2(a)は、分割された筒状体の正面図であり、(b)は、同じく左側面図であり、(c)は、(a)のA−A断面図である。図3(a)は、両口部内に筒状体を配置した状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のB−B断面図である。図4(a)は、両口部に凹部を形成した状態を示す拡大断面図であり、(b)は、凹部に向けてボルトを螺挿した状態を示す拡大断面図である。図5(a)は、管継手移動防止具を組付けた状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のC−C断面図である。図6は、本発明の変形例における挿口部及び受口部の接続状態を示す断面図である。
【0014】
図1(a)に示されるように、本実施例における既設流体管の管継手は、一方の既設流体管を構成する挿口部1と、この挿口部1が挿入された他方の既設流体管を構成する受口部2と、両口部1,2の対向面間をシールしたシール部3とを主に備え、両方の既設流体管は、同じ管軸D(図5(a)参照)の略直線状に接続されている。
【0015】
また、挿口部1の外周面に配置された押輪4が、この押輪4に軸方向に形成された挿通孔4aと受口部2の端部外面に形成された挿通孔2cとに挿通されたボルトナット5により、シール部3を両口部1,2の対向する周面間に押圧保持している。
【0016】
尚、本実施例の既設流体管は、金属製の上水管であって、金属素地の内周面に亘ってモルタル層6,7が設けられている。また管路には、上述した管継手が管軸方向の所定間隔に設けられており、後述のように管内部において作業員が作業できる程度の比較的大径の流体管であるものとする。
【0017】
次に、管継手移動防止具及び方法について工程順に説明する。
【0018】
先ず筒状体配置工程について説明すると、図1(b)に示されるように、挿口部1におけるモルタル層6及び受口部2におけるモルタル層7を周方向に沿ってそれぞれ剥がし、金属素地の内周面1a,2aを露出させて、金属素地の露出位置に、防錆用の塗料を塗布した後、後述のように管継手移動防止具を配設する。
【0019】
図2(a)〜(c)に示されるように、管継手移動防止具は、周方向にのみ2分割された分割構造、すなわちそれぞれ略半円弧状の形状を有し両口部1,2の金属素地の内径よりも若干小径の外径を備えた筒状体10を備えており、更に筒状体10は、軸方向に互いに離間した所定箇所において、雌ネジ部11aを有する貫通孔11及び雌ネジ部12aを有する貫通孔12をそれぞれ周方向に所定間隔で点在して備えている。また、両貫通孔11,12の間における筒状体10の外周面に、凹溝10aが周方向に沿って形成されている。尚、筒状体の分割構造は、必ずしも周方向に2分割された分割構造に限られず、例えば、周方向に3分割以上の構造であってもよい。
【0020】
図3(a)に示されるように、両口部1,2における金属素地の内周面1a,2aの露出位置、すなわち両口部1,2の内周面に亘って対向する対向する対向位置に、筒状体10を配置する。対向位置に配置された筒状体10の貫通孔11,12は、挿口部1の内周面と受口部2の内周面とにそれぞれ対向している。また、環状に形成された弾性材から成る密封部材16が、筒状体10の凹溝10aに嵌合されており、両口部1,2の内周面と筒状体10の外周面との間で水密に介在している。
【0021】
筒状体10の組み付けについて詳述すると、筒状体10を構成する略半円弧状の各部材を閉塞空間である既設流体管内に運搬する。次に、前記した対向位置において、外周面に密封部材16をあてがった状態で、一方の略半円弧状の部材を下半周部分に配置し、この部材の上に他方の略半円弧状の部材を配置して、図3(b)に示されるように、略半円弧状の各部材の端部同士に亘ってボルト19で接続した張出部材14を設置する。更に、張出部材14に連結したボルトナット15を螺挿することで、筒状体10を外径方向に張出し両口部1,2の内周面に向けて押圧する。この押圧により、密封部材16が、両口部1,2の内周面と筒状体10の外周面との間に水密に介在することに成る。続いて、前記端部同士を、ボルト18で接続した連結部材13を介して環状に連結する。
【0022】
このように、両口部1,2の内周面と筒状体10の外周面との間に、密封部材16が設けられていることで、この密封部材16と、両口部1,2の間をシールした既設のシール部3とにより、両口部1,2の間を二重にシールできる。
【0023】
筒状体配置工程の後に、凹部形成工程について説明すると、図4(a)に示されるように、挿口部1の金属素地の内周面1aに貫通孔11を介した凹部1bを、そして受口部2の金属素地の内周面2aに貫通孔12を介した凹部2bを、図示しない凹部形成手段としてのドリルによりそれぞれ穿設する。貫通孔11は、雌ネジ部11aの先方側、すなわち挿口部1の内周面1a側に、雌ネジ部11aよりも小径の小径部11bが形成され、同様に、貫通孔12は、雌ネジ部12aの先方側、すなわち受口部2の内周面2a側に、雌ネジ部12aよりも小径の小径部12bが形成されており、これら小径部11b,12bにより前記ドリルを案内することで、各貫通孔11,12と略同軸の凹部1b,2bを形成することができる。凹部1b,2bは、両口部1,2の肉厚の略半分程度の深さまで形成される。また、凹部1b,2b内には、防錆用の塗料を塗布しておく。
【0024】
凹部形成工程の後に、ボルト螺挿工程について説明すると、図4(b)に示されるように、管継手移動防止具を構成する雄ネジ部17aを有するボルト17を、貫通孔11の雌ネジ部11aに外径方向に螺挿し、ボルト17の先端17b側が凹部1b内に進入する位置で螺挿を終了する。同様に、雄ネジ部17aを有するボルト17を、貫通孔12の雌ネジ部12aに外径方向に螺挿し、ボルト17の先端17b側が凹部2b内に進入する位置で螺挿を終了する。ボルト17は、筒状体10の周方向に沿って点在している貫通孔11,12の全てに螺挿する。
【0025】
図5(a)、(b)に示されるように、既設流体管の管継手を構成する挿口部1と受口部2が、両口部1,2に亘って対向する対向位置に配置された筒状体10と、雄ネジ部17aを有し、貫通孔11の雌ネジ部11aに先端17b側が凹部1b内に進入するまで螺挿されるボルト17、及び貫通孔12の雌ネジ部12aに先端17b側が凹部2b内に進入するまで螺挿されるボルト17とを介し、すなわち筒状体10とボルト17,17とが一体化して両口部1,2の内周面に亘って架設されることで、他の部材を要しない簡素化した構成部材のみで、両口部1,2の管軸方向の相対移動が防止されるため、両口部1,2の間をシールした既設のシール部3により、地震等の不測の外力に抗して、既設流体管内のシール性能を維持できる。
【0026】
また、既設流体管の管継手を構成する挿口部1と受口部2が、両口部1,2に亘って対向する対向位置に配置された筒状体10と、雄ネジ部17aを有し、貫通孔11の雌ネジ部11aに先端17b側が凹部1b内に進入するまで螺挿されるボルト17、及び貫通孔12の雌ネジ部12aに先端17b側が凹部2b内に進入するまで螺挿されるボルト17とを介し、両口部1,2の内周面に亘って架設されることで、両口部1,2の管軸方向の相対移動が防止されるため、作業手間を要することなく、筒状体配置工程後に、凹部形成工程において両口部1,2の内周面に凹部1b,2bをそれぞれ形成するだけで、両口部1,2の間をシールした既設のシール部3により、地震等の不測の外力に抗して、既設流体管内のシール性能を維持できる。特に、閉塞空間である既設流体管の内部において、雌ネジ部を別段に形成することなく凹部1b,2bを穿設するだけの容易な作業で、筒状体10とボルト17,17とが一体化して両口部1,2の内周面に亘って架設することができる。
【0027】
また、筒状体10が分割構造を有していることで、分割された筒状体10を既設流体管内部の対向位置まで運搬し、対向位置において分割された筒状体10の各部材を互いに組み付けることができるため、閉塞空間である筒状体10の対向位置への配置が容易となる。また、筒状体10が周方向にのみ分割されているに過ぎず、分割された各部材が管軸方向には一体に形成されているため、両口部1,2の管軸方向の相対移動を防止する機能を維持できる。
【0028】
本実施例では、略直線状に接続されている挿口部1と受口部2とに、管継手移動防止具を取付ける工程について説明したが、本発明の変形例として、図6に示されるように、管軸Eに沿って配設された挿口部1Aと、管軸Fに沿って配設された受口部2Aとが、互いに所定角度傾斜して接続されており、このように傾斜して接続した両口部1A,2Aに、上述と同様に管継手移動防止具を取付けてもよい。このようにすることで、上述したように、地震等の不測の外力に抗して、既設流体管内のシール性能を維持できるばかりか、両口部1A,2Aが接続されている所定角度の傾斜を保持することもできる。
【0029】
次に、本発明の実施例2を以下に説明する。上述した実施例と重複する構成については、説明を省略する。
【実施例2】
【0030】
本発明の実施例2を図面に基づいて説明すると、図7は、実施例2における凹部に向けてボルトを螺挿した状態を示す拡大断面図である。
【0031】
図7に示されるように、筒状体20における挿口部1側の貫通孔21と、挿口部1における凹部1cとが、両口部1,2の対向面間をシールする既設のシール部3よりも先端側において形成されている。このように、貫通孔21及び凹部1cが、シール部3よりも先端側、すなわち受口部2における凹部2bに比較的近い側において形成されているため、両凹部1c,2bにそれぞれ連通する貫通孔21,22を備えた筒状体20の軸方向長さを短くし、筒状体20をコンパクトにできる。
【0032】
また、筒状体20の外周面に、薄膜の弾性材から成るシール部材28が、挿口部1の内周面との間で凹部1cの周囲を取り囲むように、各貫通孔21の周囲を環状にシールする状態で設けられており、貫通孔21に外径方向に螺挿したボルト17の先端17b側が、このシール部材28の間を通過して凹部1c内に進入する。同様に、筒状体20の外周面に、薄膜の弾性材から成るシール部材29が、受口部2の内周面との間で凹部2bの周囲を取り囲むように、各貫通孔22の周囲を環状にシールする状態で設けられており、貫通孔22に外径方向に螺挿したボルト17の先端17b側が、このシール部材29を通過して凹部2b内に進入する。このようにすることで、貫通孔21,22の周囲を環状にシールするシール部材28,29により、貫通孔21,22に連通する凹部1c,2b内への流体の浸入を防ぎ、凹部1c,2b内が腐食してしまうことを防止できる。
【0033】
次に、本発明の実施例3を以下に説明する。上述した実施例と重複する構成については、説明を省略する。
【実施例3】
【0034】
本発明の実施例3を図面に基づいて説明すると、図8は、実施例3における凹部に向けてボルトを螺挿した状態を示す拡大断面図である。
【0035】
図8に示されるように、筒状体30は、外周面における凹溝30aを挟んだ両端側に、凹溝30b,30cがそれぞれ周方向に形成されるとともに、凹溝30bに環状のシール部材38が、及び凹溝30cに環状のシール部材39がそれぞれが嵌合されており、両口部1,2の内周面と筒状体30の外周面との間で水密に介在している。このようにすることで、密封部材36及び既設のシール部3に加え、このシール部材38,39により両口部1,2の間を三重にシールできる。
【0036】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0037】
例えば、上記実施例では、既設流体管は、金属製の上水管であって、金属素地の内周面に亘ってモルタル層が設けられているが、既設流体管の材質や内部流体、若しくは内部層の材質や有無については、必ずしも本実施例に限られない。
【0038】
また、上記実施例では、両貫通孔11,12の間における筒状体10の外周面に、凹溝10aが周方向に沿って形成され、弾性材から成る密封部材16が、筒状体10の凹溝10aに嵌合されているが、筒状体は、少なくとも貫通孔を有していれば、必ずしも密封部材が嵌合されていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は、本発明の実施例1における挿口部及び受口部の接続状態を示す拡大断面図であり、(b)は、同じくモルタル層を剥がした状態を示す拡大断面図である。
【図2】(a)は、分割された筒状体の正面図であり、(b)は、同じく左側面図であり、(c)は、(a)のA−A断面図である。
【図3】(a)は、両口部内に筒状体を配置した状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のB−B断面図である。
【図4】(a)は、両口部に凹部を形成した状態を示す拡大断面図であり、(b)は、凹部に向けてボルトを螺挿した状態を示す拡大断面図である。
【図5】(a)は、管継手移動防止具を組付けた状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のC−C断面図である。
【図6】本発明の変形例における挿口部及び受口部の接続状態を示す断面図である。
【図7】実施例2における凹部に向けてボルトを螺挿した状態を示す拡大断面図である。
【図8】実施例3における凹部に向けてボルトを螺挿した状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 挿口部
1b 凹部
2 受口部
2b 凹部
3 シール部
10 筒状体
11,12 貫通孔
11a,12a 雌ネジ部
16 密封部材
17 ボルト
28,29 シール部材
38,39 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の既設流体管を構成する挿口部と、
該挿口部が挿入された他方の既設流体管を構成する受口部と、
前記両口部の間をシールしたシール部と、を備えた管継手において、
前記両口部の内周面に亘って架設され、両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止具であって、
前記両口部の内周面に亘って対向する対向位置に配置され、該対向位置において前記挿口部の内周面に対向する箇所、及び前記受口部の内周面に対向する箇所に、雌ネジ部を有する貫通孔をそれぞれ備えた筒状体と、
前記貫通孔の雌ネジ部にそれぞれ螺挿されるボルトと、から少なくとも構成されており、
前記ボルトは、先端側が前記両口部の内周面にそれぞれ形成された凹部内に進入していることを特徴とする管継手移動防止具。
【請求項2】
前記筒状体は、周方向にのみ分割された分割構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の管継手移動防止具。
【請求項3】
前記両口部の内周面と筒状体の外周面との間に、密封部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の管継手移動防止具。
【請求項4】
前記筒状体の外周面に、前記貫通孔の周囲をシールするシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の管継手移動防止具。
【請求項5】
前記挿口部の凹部が、前記シール部よりも先端側において形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の管継手移動防止具。
【請求項6】
一方の既設流体管を構成する挿口部と、
該挿口部が挿入された他方の既設流体管を構成する受口部と、
前記両口部の間をシールしたシール部と、を備えた管継手において、
前記両口部の内周面に亘って架設し、両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止方法であって、
軸方向に互いに離間した所定箇所に、雌ネジ部を有する貫通孔をそれぞれ備えた筒状体を、前記両口部の内周面に亘って対向する対向位置に配置する筒状体配置工程と、
前記筒状体配置工程の後に、前記貫通孔を介し、前記両口部の内周面に凹部をそれぞれ形成する凹部形成工程と、
前記凹部形成工程の後に、前記貫通孔の雌ネジ部それぞれに、先端側が前記凹部内に進入するまでボルトを螺挿するボルト螺挿工程と、から少なくとも構成されていることを特徴とする管継手移動防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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