説明

管継手

【課題】流路を閉鎖して分離する作業が容易な管継手を提供する。
【解決手段】貫通流路14が設けられた略球形の弁体13を内部に回動可能に収容した本体4と、本体4の外側に摺動可能に取り付けられ、内面に環状溝19が形成されたスリーブ5と、弁体13の偏芯位置に作用して弁体13を回動させる駆動部材17と、駆動部材17が挿通される係合穴32が形成され、環状溝19に嵌合する帯状の駆動環20とを有し、駆動環20は、両端34が分離されて開環しており、係合穴32を環状溝19から突出させるように部分的に縮径されている管継手1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管継手、詳しくは、ボール弁を内蔵した管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から3に記載されているように、ボール弁を内蔵するクイックカップリング管継手などでは、流路方向に摺動するスリーブに、弁体の偏芯位置を駆動する駆動部材(ピン)を固定して、スリーブの摺動を弁体の回転に変換している。
【0003】
図6に、従来のボール弁内蔵タイプの管継手41の構造を示す。管継手41は、ソケット42と、一端をソケット42に挿入して接続できるプラグ43とからなる。ソケット42は、本体44と、本体44の外周に摺動可能に嵌合するスリーブ45とを有する。本体44は、プラグ43が挿入されるのと反対側の端部に開口する流入路46が形成され、流入路46と連通する内部空間に弁体47と、弁体47の両側にバルブシート48とが収容されている。弁体47は、略球形に形成され、中央を貫通する貫通流路49と、回転軸50とを有し、回転軸50と偏芯した位置に駆動部材51を受け入れる溝が設けられている。スリーブ45は、スリーブ付勢ばね52によって、プラグ43側に付勢されている。プラグ43には、流入路46に連通可能な流出路53が形成されている。
【0004】
図7に駆動部材51のスリーブ45に対する固定部を詳しく示す。スリーブ45は、内面に環状の溝54が形成され、溝54を境に、一方は駆動部材51が通過可能なように径が大きく、他方は駆動部材51が通過不能なように径が小さくなっている。スリーブ付勢ばね52の付勢力を受ける壁をスリーブ45のプラグ43側の端部に設けるために、スリーブ45は、流入路46側の内径が大きく形成される。このため、スリーブ45は、溝54の流入路46側の内径が大きく、溝54は、流出路53側に高い主壁55と、流入路46側に低い副壁56とを有する。駆動部材51は、スリーブ45の内部に流入路46側から挿入され、主壁55に当接させられる。この状態で、駆動部材51と副壁56との間に、C型の止め輪(スナップリング)57が挿入され、駆動部材51の溝54からの脱離が防止される。
【0005】
以上の構造により、駆動部材51は、スリーブ45とともに移動して、弁体47を回転軸50を中心に回動させることができる。これによって、管継手41は、流入路46を弁体47の球面で閉鎖、または、流入路46を弁体47の貫通流路49を介して流出路53に連通させる。
【0006】
従来の管継手41において、弁体47の回動途中において、流入路46から流入した流体は、ソケット42の内部空間に流出し、スリーブ45の内面に流体圧を作用させる。このとき溝54の主壁55と副壁56との面積の差によって、流体は主壁55をより強い力で押すことになる。ユーザは、ソケット42からプラグ43を抜き出すためには、スリーブ45を流入路46側に摺動させる必要があるが、スリーブ付勢ばね52の付勢力に加えて、前記流体圧が主壁55を押す力にも抗してスリーブをスライドさせなければならない。このため、従来の管継手は、スリーブの操作に大きな力が必要であり、切り離しが容易ではないという問題があった。
【特許文献1】特公昭51−47899号公報
【特許文献2】特開昭62−180193号公報
【特許文献3】特許第3383560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点に鑑みて、本発明は、流路を閉鎖して分離する作業が容易な管継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明による管継手は、貫通流路が設けられた略球形の弁体を内部に回動可能に収容した本体と、前記本体の外側に摺動可能に取り付けられ、内面に環状溝が形成されたスリーブと、前記弁体の偏芯位置に作用して前記弁体を回動させる駆動部材と、前記駆動部材が挿通される係合穴が形成され、前記環状溝に嵌合する帯状の駆動環とを有し、前記駆動環は、両端が分離されて開環しており、前記係合穴を前記環状溝から突出させるように部分的に縮径されているものとする。
【0009】
この構成によれば、駆動環は、係合穴を設けた部分を縮径したことで、係合穴に駆動部材の端部を十分に挿通して抜け落ちないように保持することができる。そして、駆動環は、環状溝に嵌合して、スリーブに対して固定され、駆動部材をスリーブと共に移動させることで弁体の開閉を可能にする。また、この構成によれば、駆動環を固定する環状溝の両側でスリーブの内径を異ならせる必要がないので、スリーブの摺動方向に流体圧が不均等に作用することがなく、スリーブの操作に余分な力を必要としない。
【0010】
また、本発明の管継手において、前記係合穴は、前記駆動環の周方向に延伸した長穴であってもよい。
【0011】
この構成によれば、駆動部材を弁体に固定した場合の、弁体の回動による駆動部材の本体に対する偏芯量の変化を吸収することができる。
【0012】
また、本発明の管継手において、前記駆動環は、前記両端が内側に折り曲げられていてもよい。
【0013】
この構成によれば、スナップリングプライヤのような工具を用いて、折り曲げた端部同士を近付け合うよう挟み込むことで、駆動環の径を一時的に細めて、環状溝に嵌合させることができ、駆動環を容易にスリーブに固定することができる。
【0014】
また、本発明の管継手において、前記駆動環は、前記両端の近傍に、切り欠きが設けられていてもよい。
【0015】
この構成によれば、スナップリングプライヤのような工具で切り欠きを狭持して、駆動環をスリーブに容易に固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、スリーブに嵌合する帯状の駆動環で駆動部材を駆動して弁体を回動させるので、スリーブと駆動部材との係合形状が流路の前後で対称になり、流体圧によってスリーブに不均等な力が作用せず、操作を阻害しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態の管継手1を示す。管継手1は、ソケット2とプラグ3とからなり、容易に接続、切り離しできるものである。ソケット2は、本体4と、本体4を取り囲み本体4上で摺動可能なスリーブ5とからなる。
【0018】
本体4は、継手部6と、ハウジング部7と、カップリング部8とからなる。継手部6は、端部に開口する流体の流入路9と、他の管路に接続するための外ねじ10とが設けられている。
【0019】
ハウジング部7は、流入路9に連通する内部空間11を有し、内部空間11の内側に、バルブシート12と弁体13とが収容されている。弁体13は、略球形に形成され、中央を貫通する貫通流路14が設けられ、回転軸15でハウジング部7に回動可能に枢支されている。図1において、弁体13は、その貫通流路14を流入路9に連通させている。また、弁体13の偏芯位置に設けられた駆動部材係合部16には、軸状の駆動部材17が取り付けられている。回転軸15および駆動部材17は、ハウジング部7に設けられた開口18を貫通している。スリーブ5の内面には、環状溝19が設けられ、環状溝19には、帯状の駆動環20が嵌合している。駆動部材17は、ハウジング部7の開口18を貫通して、駆動環20に係合している。
【0020】
スリーブ5は、スリーブ付勢ばね21によってカップリング部8側に摺動するように付勢されている。筒状に形成されたカップリング部8には、その壁を貫通するようにラッチボール22が配置され、内部に摺動可能にラッチ環23が設けられている。ラッチ環23は、ラッチボール22に当接する位置に摺動するようにラッチ環付勢ばね24により付勢されている。
【0021】
プラグ3は、本体4のカップリング部8に挿入される挿入部25と、六角ナット状の外形を有するナット部26とからなる。挿入部25は、内側に流体の流出路27が形成され、外側にラッチ環23に当接する当接面28とラッチボール22の一部を受け入れ可能なラッチ溝29とが形成されている。ナット部26には、流出路27と連通するように管路を接続できる内ねじ30が形成されている。
【0022】
図1において、スリーブ5がラッチボール22をカップリング部8の内側に突出させるように規制し、ラッチボール22の一部を挿入部25のラッチ溝29の中に係合させて、プラグ3がソケット2から脱離しないように係止している。
【0023】
さらに、図2に図1のA−A断面と、図3に駆動環20単体とを示し、その構造を詳しく説明する。駆動環20は、例えば帯型の鋼材を略環状に折り曲げて形成される。駆動環20は、スリーブ5の環状溝19に嵌合し、それ自身の弾性によって環状溝19の中で拡径して、スリーブ5に対して固定される環状部31と、周方向に延伸する長穴である係合穴32が設けられた2つの係合部33と、部分的に開環して前記弾性を発揮するために互いに分離され、先端が内側に折り曲げられた端部34とを有する。係合穴32には、駆動部材17の両端がそれぞれ挿通される。係合部33は、環状部31を部分的に縮径するように折り曲げて形成され、係合穴32を環状溝19から内側に突出させている。
【0024】
続いて、図4に、ソケット2からプラグ3を切り離した状態の管継手1を示し、その機能を説明する。この状態で、ソケット2のスリーブ5は、本体4上で、スリーブ付勢ばね21の付勢力に抗して導入路9側に摺動させられ、カップリング部8のラッチボール22の外側を開放している。ラッチ環23は、ラッチ環付勢ばね24によってラッチボール22の内側に当接し、ラッチボール22を外側に押し出している。ラッチボール22は、カップリング部8の外側に突出して、スリーブ5のスリーブ付勢ばね21によるプラグ3側への移動を規制している。
【0025】
また、駆動環20は、スリーブ5とともに移動して、駆動部材17を導入路9側に移動させている。このような駆動部材17の移動は、弁体13の偏芯位置にある駆動部材係合部16を導入路9側に押圧して弁体13を回転軸15周りに回転させるように作用する。弁体13を回転させる過程において、駆動部材17は、弁体13の回転にともなって弧を描いて移動するが、駆動環20の係合穴32が周方向に長く形成されているので、係合穴32の中で摺動できる。スリーブ5を導入路9側に摺動させた結果、図4に示すように、弁体13は、球形の外表面をバルブシート12に当接して流入路9を閉鎖する。
【0026】
スリーブ5の環状溝19および駆動環20は、いずれも左右(流路方向前後)対称に形成される。よって、スリーブ5の内壁は、環状溝19の両側の内径が等しい。このため、流入路9から内部空間11に流入して開口18からハウジング部7とスリーブ5との間に流出した流体の圧力は、スリーブ5に対して左右に不均等に作用することがなく、スリーブ5を流入路9側に摺動させようとするユーザに、スリーブ付勢ばね21の付勢力以上の力を要求しない。
【0027】
本実施形態の駆動環20は、両端部34が内側に折り曲げられているので、この両端部32をスナップリングプライヤのような工具で挟み込むことで、駆動環20全体の径を小さくして、ソケット5の中に挿入して環状溝19に嵌合させることができる。また、駆動環20は、係合部33が減径されているので、スリーブ5の内壁に干渉しない長さの駆動部材17であっても、その両端の十分な長さを挿通して保持できる。これにより、駆動部材17を係合穴32に挿通させて駆動環20とともにスリーブ5内に挿入して組み立てられる。
【0028】
図5に、図3の駆動環20の代案の駆動環20’を示す。駆動環20’は、両端部34’だけが、駆動環20の両端部34と形状が異なる。両端部34’は、先端が環状溝19から僅かに浮き上がる程度に内向きに折り曲げられており、その先端近傍を側方から切除してなる切り欠き35が設けられている。この切り欠き35も、スナップリングプライヤのような工具で駆動環20’をスリーブ5内の環状溝19に嵌合させるのに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の管継手の接続状態を示す断面図。
【図2】図1の管継手のA−A断面図。
【図3】図1の管継手の駆動環の斜視図。
【図4】図1の管継手の分離状態の断面図。
【図5】図3の駆動環の代案の斜視図。
【図6】従来の管継手の断面図。
【図7】従来の管継手のスリーブに対する駆動部材の固定構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0030】
1…管継手、 2…ソケット、 3…プラグ、 4…本体、 5…スリーブ、
13…弁体、 14…貫通流路、 15…回転軸、 17…駆動部材、 18…開口、
19…環状溝、 20,20’…駆動環、 31…環状部、 32…係合穴、
33…係合部、 34,34’…端部、 35…切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通流路が設けられた略球形の弁体を内部に回動可能に収容した本体と、
前記本体の外側に摺動可能に取り付けられ、内面に環状溝が形成されたスリーブと、
前記弁体の偏芯位置に作用して前記弁体を回動させる駆動部材と、
前記駆動部材が挿通される係合穴が形成され、前記環状溝に嵌合する帯状の駆動環とを有し、
前記駆動環は、両端が分離されて開環しており、
前記係合穴を前記環状溝から突出させるように部分的に縮径されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記係合穴は、前記駆動環の周方向に延伸した長穴であることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記駆動環は、前記両端が内側に折り曲げられていることを特徴とする請求項1または2に記載の管継手。
【請求項4】
前記駆動環は、前記両端の近傍に、切り欠きが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−182920(P2007−182920A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−734(P2006−734)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(593097203)長堀工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】