説明

管継手

【課題】接続作業を短時間で効率よく行うことができ、従来の管継手よりも小型化できる管継手を提供する。
【解決手段】内周面に波付き管外周面の波形と噛み合う波形を形成した一対の半筒部13A、13Bを有する。一対の半筒部は、一方の側縁をヒンジ部15で結合され、他方の側縁が開閉可能となっている。一対の半筒部13A、13Bの開閉可能な側縁にはそれぞれ外方へ張り出すフランジ部19A、19Bが形成され、このフランジ部に前記開閉可能な側縁を閉じた状態に保持する差込式の係止部材21が形成されている。一対の半筒部13A、13Bの内周面には、厚さ方向に圧縮容易な多孔質の水膨張性シートが張り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水型の管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防水型の管継手としては止水用のゴムパッキングを使用するものが一般的であるが、特許文献1には、水膨張材を使用した管継手が開示されている。この管継手は、一対の半筒部の内周面に水膨張材の層を設けると共に、前記一対の半筒部の両側にフランジ部を形成したもので、一対の半筒部で波付き管を挟み、フランジ部をボルトナットで締め付けることにより、波付き管を接続するものである。この管継手で接続した波付き管の接続部は、接続時点では波付き管と管継手の間に隙間があっても差し支えないが、接続部が水に浸かるなどして水膨張材が水と接触すると、水膨張材が水を吸収して膨張し、波付き管と管継手の間の隙間を塞いで、波付き管内に水が浸入するのを防止する。
【0003】
【特許文献1】実用新案公開平6−43480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された管継手は、水膨張材を波付き管の外周面に押し付けるために、半筒部の両側に形成したフランジ部をボルトナットで締め付ける構成を採用している。しかし、フランジ部をボルトナットで締め付ける作業は時間がかかり、接続作業時間を短縮することが難しい。また、半筒部の両側にフランジ部を設ける必要があるため、管継手の幅寸法が大きくなり、大きな設置スペースを必要とする。特に、複数本並べて布設された波付き管を同じ箇所で接続しようとすると、接続部だけが横方向へ大きく広がってしまい、設置スペースの確保が困難になることから、工事施工の観点でこの点の改善が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、接続作業を短時間で効率よく、ワンタッチで行うことができ、しかも従来の管継手よりも小型化できる管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明に係る管継手は、
内周面に波付き管外周面の波形と噛み合う波形を形成した一対の半筒部を有し、この一対の半筒部は一方の側縁でヒンジ結合され、他方の側縁が開閉可能となっており、
前記一対の半筒部の開閉可能な側縁にはそれぞれ外方へ張り出すフランジ部が形成され、このフランジ部に前記開閉可能な側縁を閉じた状態に保持する差込式の係止部材が形成されており、
前記一対の半筒部の内周面には、厚さ方向に圧縮容易な多孔質の水膨張性シートが張り付けられていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の管継手において、差込式の係止部材は、一方のフランジ部に突設された先端に係止爪を有する弾性係止片と、他方のフランジ部に形成された前記弾性係止片が挿入される穴とから構成され、一対の半筒部の開閉可能な側縁を最後まで閉じると、前記弾性係止片が穴に挿入され、係止爪が穴の縁に引っ掛かるようになっているものであることが好ましい。
【0008】
本発明の管継手において、水膨張性シートは、水を吸収して膨張する水膨張性繊維と水を吸収しない非水膨張性繊維とを含む不織布であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一対の半筒部の一方の側縁をヒンジ結合し、他方の側縁を開閉可能とし、この開閉可能な側縁を閉じた状態に保持するのに、ボルトナットではなく、差込式の係止部材を採用したので、波付き管の接続作業を短時間で効率よく行うことができる。差込式の係止部材では、ボルトナットのように強く締め付けることはできないが、本発明においては水膨張性シートとして厚さ方向に圧縮容易な多孔質のものを使用しているため、一対の半筒部で波付き管を挟んで係止部材を結合する際に、水膨張性シートが容易に圧縮され、強い締め付け力を必要としない。このため波付き管の接続作業を容易に行うことができる。また、フランジ部が形成されているのは一対の半筒部の片方の側縁だけであるため、両側にフランジ部を形成した従来の管継手よりも管継手の幅寸法を小さくでき、設置スペースが小さくて済む利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1及び図2は本発明に係る管継手の一実施形態を示す。この管継手11は、内周面に波付き管外周面の波形と噛み合う波形を形成した一対の半筒部13A、13Bを有している。一対の半筒部13A、13Bは一方の側縁がヒンジ部15によって結合され、他方の側縁が開閉可能となっている。図1は一対の半筒部13A、13Bの開閉可能な側縁を閉じた状態、図2は開閉可能な側縁を開いた状態を示している。図3はこの管継手11によって波付き管17A、17Bを接続した状態を示す。
【0011】
一対の半筒部13A、13Bの開閉可能な側縁にはそれぞれ外方へ張り出すフランジ部19A、19Bが形成され、このフランジ部19A、19Bに前記開閉可能な側縁を閉じた状態に保持する差込式の係止部材21が形成されている。係止部材21は、一方のフランジ部19Aに突設された先端に係止爪25を有する弾性係止片23と、他方のフランジ部19Bに形成された前記弾性係止片23が挿入される穴27とから構成されている。この実施形態では、係止部材21を管継手軸線方向に間隔をあけて2組形成したが、係止部材21の組数は特に限定されない。
【0012】
また、一対の半筒部13A、13Bの内周面には、水膨張性シート29が張り付けられている。この水膨張性シート29は多孔質でシート厚さ方向に容易に圧縮可能である。このような易圧縮性の水膨張性シート29を使用すると、図3のように一対の半筒部13A、13Bで波付き管17A、17Bの端部を挟み付けるときに、水膨張性シート29が容易に圧縮されるため、大きな力をかけなくても(つまりボルトナットで締め付けなくても)、一対の半筒部13A、13Bの開閉可能な側縁を閉じることが可能となる。このため開閉可能な側縁を係止部材21で閉じることが可能となるのである。
【0013】
厚さ方向に圧縮容易な多孔質の水膨張性シート29としては、水を吸収して膨張する水膨張性繊維(例えばポリアクリル酸ナトリウム繊維)と水を吸収しない非水膨張性繊維(例えばポリエステル繊維)とを含む不織布を使用するとよい。この不織布はフェルトのような形態であり、多孔質で、厚さ方向に圧縮容易である。
【0014】
前述の係止部材21は、さらに具体的に説明すると、管継手軸線方向に間隔をあけて形成された2本の弾性係止片23と、2本の弾性係止片23が一緒に挿入される1つの矩形穴27とで構成されている。2本の弾性係止片23の先端部の係止爪25は、管継手軸線方向の互いに反対側を向くように(つまり外向きに)形成されている。2本の弾性係止片23の係止爪25より下の部分の外面間隔は、穴27の管継手軸線方向に対向する内面の間隔と同じである。このため、図2の状態から半筒部13A、13Bの開閉可能な側縁を閉じていくと、まず係止爪25から穴27に入り、係止爪25が穴27の内面に押されて2本の弾性係止片23が内側へ(互いに接近する方向へ)撓みながら穴27内を通過する。一対の半筒部13A、13Bの開閉可能な側縁が最後まで閉じられると、図1に示すように、係止爪25が穴27を通り抜け、撓んでいた弾性係止片23が復元して、係止爪25が穴27の縁に引っ掛かる。これによって開閉可能な側縁が閉じた状態に保持される。
【0015】
図1の状態から、一対の半筒部13A、13Bの開閉可能な側縁を開く必要が生じたときは、穴27から突出している2つの係止爪25の先端部をつまんで、2本の弾性係止片23を内側へ撓ませれば、係止爪27が穴27の縁から外れるので、容易に開閉可能な側縁を開くことができる。
【0016】
この管継手11は、上述のように、半筒部13A、13Bで波付き管17A、17Bを挟んで、係止部材21を結合させるだけで、波付き管17A、17Bを接続できるので、波付き管の接続を容易に、かつ短時間で行うことができる。またフランジ部は半筒部の片側にしか設けていないので、管継手の幅寸法を小さくでき、設置スペースが小さくて済む。なお、フランジ部に設ける係止部材は、管継手の大きさに応じて必要な組数設けることができる。
【0017】
なお、管継手11で波付き管17A、17Bを接続した(係止部材21を結合した)ときの、管継手11による波付き管17A、17Bの締め付け力は、管継手11が波付き管17A、17Bのまわりに回転できる程度にすることが好ましい。
この程度の締め付け力であっても、水膨張性シート29が取り付け時に収縮し、水を吸収したときには膨張して、膨張時に水の吸収により十分な体積変化が得られるので、管継手と波付き管が密着し、外部から管継手内部への水の浸入を防止できると同時に、体積変化による押圧力により、管継手の弾性係止片の係止爪と穴との結合強度が増加し、しかも管継手の装着が容易である。
また、波付き管を接続した時に管継手11が波付き管17A、17Bのまわりに回転できれば、フランジ部19A、19Bの周方向の位置を変えられるので、フランジ部19A、19Bを上又は下に向けて設置スペースをさらに小さくすることができる。
【0018】
図4は本発明に係る管継手の係止部材部分の他の実施形態を示す。この係止部材21が前記実施形態における係止部材と異なる点は、一対の弾性係止片23、23の中間にフランジ部19Aから立ち上がる起立片31を形成すると共に、穴27の上端開口部の中間にフランジ部19A、19Bを閉じたときに前記起立片31の先端部が挿入されるキャップ部33を形成したことである。それ以外の構成は前記実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る管継手の一実施形態を、一対の半筒部を閉じた状態で示す、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は平面図。
【図2】図1の管継手を、一対の半筒部を開いた状態で示す、(A)は側面図、(B)は正面図。
【図3】図1の管継手で波付き管を接続した状態を示す断面図。
【図4】本発明に係る管継手における係止部材部分の他の実施形態を示す、(A)はフランジ部を閉じる前の正面図、(B)は閉じた後の正面図。
【符号の説明】
【0020】
11:管継手
13A、13B:半筒部
15:ヒンジ部
17A、17B:波付き管
19A、19B:フランジ部
21:係止部材
23:弾性係止片
25:係止爪
27:穴
29:水膨張性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に波付き管外周面の波形と噛み合う波形を形成した一対の半筒部を有し、この一対の半筒部は一方の側縁でヒンジ結合され、他方の側縁が開閉可能となっており、
前記一対の半筒部の開閉可能な側縁にはそれぞれ外方へ張り出すフランジ部が形成され、このフランジ部に前記開閉可能な側縁を閉じた状態に保持する差込型の係止部材が形成されており、
前記一対の半筒部の内周面には、厚さ方向に圧縮容易な多孔質の水膨張性シートが張り付けられていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
差込型の係止部材は、一方のフランジ部に突設された先端に係止爪を有する弾性係止片と、他方のフランジ部に形成された前記弾性係止片が挿入される穴とから構成され、一対の半筒部の開閉可能な側縁を最後まで閉じると、前記弾性係止片が穴に挿入され、係止爪が穴の縁に引っ掛かるようになっていることを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項3】
水膨張性シートは、水を吸収して膨張する水膨張性繊維と水を吸収しない非水膨張性繊維とを含む不織布であることを特徴とする請求項1記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−51320(P2008−51320A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231213(P2006−231213)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】