説明

管継手

【課題】用意する部品の種類や量を削減し得るようにする。
【解決手段】一端側に樹脂管を接合可能な樹脂製の樹脂管接合部6を有すると共に、他端側に管材を連結可能な金属製の管材連結部7を有する管継手5であって、管材連結部7を、樹脂管接合部6にインサート成形される一端側のインサートブッシュ15と、管材に対する連結機構部16を有する他端側のスリーブ部材17とに分割し、インサートブッシュ15とスリーブ部材17との間に、両者を取付可能な取付部21を設け、取付部21が、インサートブッシュ15の樹脂管接合部6へのインサート部分の内面に少なくとも一部が形成された内ネジ部22と、スリーブ部材17一端部の対応する部分に形成されて内ネジ部22に螺着可能な外ネジ部23とから成るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、給排水管やガス管などの建物用配管として、耐久性、耐食性、耐震性、施工性などの良好な樹脂管を使用することが普及しつつある。一方で、従来より金属管が多く使用されているため、上記した樹脂管と金属管とを接続するのに管継手(異種管継手)が使用されている。
【0003】
このような管継手は、一端側に樹脂管を接合可能な樹脂製の樹脂管接合部を有すると共に、他端側に金属管を連結可能な金属製の管材連結部を有している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−220785
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した管継手には、管材連結部が金属製の一体物となっていたため、金属管側の連結構造に対応できるようにするためには、各種の連結機構部を有する管材連結部を備えた管継手を予め多数用意しておく必要が生じるなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、一端側に樹脂管を接合可能な樹脂製の樹脂管接合部を有すると共に、他端側に管材を連結可能な金属製の管材連結部を有する管継手において、前記管材連結部を、前記樹脂管接合部にインサート成形される一端側のインサートブッシュと、管材に対する連結機構部を有する他端側のスリーブ部材とに分割し、前記インサートブッシュと前記スリーブ部材との間に、両者を取付可能な取付部を設け、該取付部が、インサートブッシュの樹脂管接合部へのインサート部分の内面に少なくとも一部が形成された内ネジ部と、スリーブ部材一端部の対応する部分に形成されて前記内ネジ部に螺着可能な外ネジ部とから成る管継手を特徴としている。
【0006】
請求項2に記載された発明では、前記インサートブッシュが、内ネジ部よりも一端側寄りの部分に非ネジ部を有し、前記樹脂管接合部が、インサートブッシュの非ネジ部の内側へ入り込むリング状成形部を有し、前記スリーブ部材が、外ネジ部よりも一端側へ延びてリング状成形部に嵌合する延長部を有し、リング状成形部と延長部との間にシール部が介装された管継手を特徴としている。
【0007】
請求項3に記載された発明では、前記スリーブ部材が、前記連結機構部に、オネジソケット、メネジソケット、ユニオンソケット、エラスジョイントのいずれかを備えた管継手を特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、一端側に樹脂管を接合可能な樹脂製の樹脂管接合部を有すると共に、他端側に管材を連結可能な金属製の管材連結部を有する管継手において、前記管材連結部を、前記樹脂管接合部にインサート成形される一端側のインサートブッシュと、管材に対する連結機構部を有する他端側のスリーブ部材とに分割し、前記インサートブッシュと前記スリーブ部材との間に、両者を取付可能な取付部を設け、該取付部が、インサートブッシュの樹脂管接合部へのインサート部分の内面に少なくとも一部が形成された内ネジ部と、スリーブ部材一端部の対応する部分に形成されて前記内ネジ部に螺着可能な外ネジ部とから成ることにより、以下のような作用、効果を得ることができる。即ち、管材連結部をインサートブッシュとスリーブ部材とに分割することにより、樹脂管接合部と一体のインサートブッシュに対して、管材の連結構造に対応する連結機構部を有するスリーブ部材を作業現場で取付けるような使い方が可能となり、スリーブ部材は管継手と比べると格段に小さいので、用意する部品の種類や量を大幅に削減することが可能となる。また、インサートブッシュとスリーブ部材との間の取付部を内ネジ部と外ネジ部としたことにより、両者を簡単且つ確実に取付けつつ止水も行わせることが可能となる。
【0009】
請求項2の発明によれば、前記インサートブッシュが、内ネジ部よりも一端側寄りの部分に非ネジ部を有し、前記樹脂管接合部が、インサートブッシュの非ネジ部の内側へ入り込むリング状成形部を有し、前記スリーブ部材が、外ネジ部よりも一端側へ延びてリング状成形部に嵌合する延長部を有し、リング状成形部と延長部との間にシール部が介装されたことにより、インサートブッシュとスリーブ部材とに分割した場合であっても、両者の界面の止水を確実に行わせることができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、前記スリーブ部材が、前記連結機構部に、オネジソケット、メネジソケット、ユニオンソケット、エラスジョイントのいずれかを備えたことにより、管材側の連結構造に応じてオネジソケット、メネジソケット、ユニオンソケット、エラスジョイントのいずれかとして使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0012】
図1〜図6は、この発明の実施例を示すものである。
【0013】
まず、構成について説明する。給排水管やガス管などの建物用配管として近年普及しつつある樹脂管と、従来より使用されている金属管などの管材とを接続して管路を形成するために、図1に示すような管継手5(異種管継手)を設ける。ここで、樹脂管は、耐久性、耐食性、耐震性、施工性などに優れた、いわゆる第三世代高密度ポリエチレン樹脂などで構成されている。
【0014】
この管継手5は、一端側に樹脂管を接合可能な樹脂製の樹脂管接合部6を有すると共に、他端側に金属管などの管材を連結可能な金属製の管材連結部7を有するものである。この管継手5は、樹脂管と管材とを施工現場で接続するのに用いられる。この管継手5は、一般にスクリュージョイントなどと呼ばれている。樹脂管接合部6は、樹脂管と同じか、または、同種の樹脂にて構成される。この樹脂管接合部6は、樹脂管を挿入可能な受口部などとされている。即ち、樹脂管接合部6は、一端側に樹脂管の外径とほぼ同径の開口部9を有し、内部に樹脂管の対応する端部を収容固定可能な収容空間10を有するほぼ円筒形状を呈している。そして、この樹脂管接合部6の内部には、樹脂管接合部6と樹脂管とを溶融・融着させるための図示しない電熱線が配索されている。この樹脂管接合部6の外側面(外周面)には、電熱線に通電するための一対のターミナル部12が、軸線方向へ所要の間隔を有し、且つ、ほぼ径方向へ向けて突設されている。なお、樹脂管接合部6の詳細については省略する。一方、管材連結部7は、全体がほぼ筒状を呈している。
【0015】
そして、以上のような構成に対し、この実施例のものでは、図2に示すように、管材連結部7を、樹脂管接合部6にインサート成形される一端側のインサートブッシュ15と、管材に対する連結機構部16を有する他端側のスリーブ部材17とに分割する。
【0016】
ここで、インサートブッシュ15は、樹脂管接合部6の他端側にインサートされる。インサートブッシュ15は、樹脂管接合部6の収容空間10と、ほぼ同心状に、且つ、連通するように設置される。インサートブッシュ15は、他端側の一部を僅かに突出させた状態で樹脂管接合部6の内部にほぼ半分以上の部分が埋設される。よって、インサートブッシュ15は、他端側の一部の突出部分を除き、樹脂管接合部6で覆われた状態となる。図3に示すように、インサートブッシュ15の一端面や一端側の外側面(外周面)には、成形時に樹脂管接合部6を構成する樹脂が入り込むことによって結合性が高められるようにするために、周方向へ延びる凹溝部18,19が複数条形成されている(アンカー形状部)。なお、この場合、凹溝部19は3条分設けられている。
【0017】
また、インサートブッシュ15とスリーブ部材17との間に、両者を取付可能な取付部21を設ける。この取付部21は、インサートブッシュ15の樹脂管接合部6へのインサート部分の内面(内周面)に少なくとも一部が形成された内ネジ部22と、スリーブ部材17一端部の対応する部分に形成されて内ネジ部22に螺着可能な外ネジ部23とから成るものとする。ここで、内ネジ部22は、インサートブッシュ15内面のほぼ中間部に形成されている。内ネジ部22は、インサートブッシュ15内面のインサート部分と突出部分との間に跨がるように形成されている。また、スリーブ部材17は、全体として、インサートブッシュ15の外径とほぼ同一の外径を有すると共に、インサートブッシュ15の内径よりも小さな内径を有している。そして、スリーブ部材17の一端側に、インサートブッシュ15の内径とほぼ同一の外径となる段差小径部25を形成し、この段差小径部25の内ネジ部22と対応する位置(の外周面)に外ネジ部23を螺刻形成している。内ネジ部22と外ネジ部23との間には、螺着時に接着剤が塗布される。接着剤としては二液式のものなどが使用される。
【0018】
また、樹脂管接合部6他端側のインサートブッシュ15のインサート部分の外面には、図1または図2に示すように、両者を締付けて固定するためのカシメリング27が取付けられる。このカシメリング27は、凹溝部19と取付部21との両者を同時に締付けられる位置に設けられている。カシメリング27は、例えば、耐食性を有するSUS材などで構成される。
【0019】
そして、図3に示すように、インサートブッシュ15が、内ネジ部22よりも一端側寄りの部分に非ネジ部31を有し、樹脂管接合部6が、インサートブッシュ15の非ネジ部31の内側へ入り込むリング状成形部32を有し、スリーブ部材17が、外ネジ部23よりも一端側へ延びてリング状成形部32に嵌合(内嵌)する延長部33を有し、リング状成形部32と延長部33との間にシール部34が介装されるようにしている。ここで、リング状成形部32は、内ネジ部22の手前側まで延びて止まっている。延長部33の外径は、リング状成形部32の内径とほぼ等しく、且つ、外ネジ部23のネジ径よりも小さくなされている。シール部34は、延長部33の外側面に周方向に形成されたシール溝35と、このシール溝35に嵌着されたOリングなどのシール部材36とを備えている。
【0020】
更に、スリーブ部材17が、連結機構部16に、オネジソケット41(図1、図2参照)、メネジソケット42(図4参照)、ユニオンソケット43(図5参照)、エラスジョイント44(図6参照)のいずれかを備えるようにする。なお、外見は似ているが、図4のメネジソケット42は固定式の連結機構部16であるのに対し、図5のユニオンソケット43は回転式の連結機構部16である点が異なっている。
【0021】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0022】
工場にて、金属製のインサートブッシュ15とスリーブ部材17とをそれぞれ製造すると共に、インサートブッシュ15を樹脂管接合部6にインサート成形して、管継手5を構成する。なお、この段階で、スリーブ部材17をインサートブッシュ15に取付けることもできるが、ここでは、後から取付けるものとする。
【0023】
そして、施工現場にて、金属管などの管材に応じた連結機構部16を有するスリーブ部材17をインサートブッシュ15に取付けるようにする。
【0024】
インサートブッシュ15にスリーブ部材17を取付けた状態では、インサートブッシュ15の非ネジ部31とスリーブ部材17の延長部33との間で樹脂管接合部6のリング状成形部32を挟着した状態になると共に、リング状成形部32と延長部33との間がシール部34でシールされることとなる。
【0025】
この場合、インサートブッシュ15に対するスリーブ部材17の取付けは、取付部21を構成する内ネジ部22と外ネジ部23とを螺合させるようにする。なお、内ネジ部22と外ネジ部23との間には、螺着時に二液式の接着剤などを塗布してシールと固定とを行わせるようにする。
【0026】
且つ、樹脂管接合部6に樹脂管を接合すると共に、管材連結部7に金属管などの管材を連結する。
【0027】
この際、樹脂管接合部6に、樹脂管の対応する端部を挿入し、樹脂管接合部6の内部に設けられた図示しない電熱線を加熱させることにより、樹脂管接合部6と樹脂管とを溶融・融着させる。
【0028】
また、金属管などの管材の対応する端部と、スリーブ部材17とを連結機構部16を利用して連結する。なお、以上の手順はこの通りでなくても良い。
【0029】
この実施例によれば、一端側に樹脂管を接合可能な樹脂製の樹脂管接合部6を有すると共に、他端側に管材を連結可能な金属製の管材連結部7を有する管継手において、管材連結部7を、樹脂管接合部6にインサート成形される一端側のインサートブッシュ15と、管材に対する連結機構部16を有する他端側のスリーブ部材17とに分割し、インサートブッシュ15とスリーブ部材17との間に、両者を取付可能な取付部21を設け、取付部21が、インサートブッシュ15の樹脂管接合部6へのインサート部分の内面に少なくとも一部が形成された内ネジ部22と、スリーブ部材17一端部の対応する部分に形成されて内ネジ部22に螺着可能な外ネジ部23とから成ることにより、以下のような作用、効果を得ることができる。
【0030】
即ち、管材連結部7をインサートブッシュ15とスリーブ部材17とに分割することにより、樹脂管接合部6と一体のインサートブッシュ15に対し、管材の連結構造に対応する連結機構部16を有するスリーブ部材17を作業現場で取付けるような使い方が可能となり、スリーブ部材17は管継手5と比べると格段に小さいので、これらが分割されていない場合と比べて、予め用意する部品の種類や量を大幅に削減することが可能となる。また、インサートブッシュ15とスリーブ部材17との間の取付部21を内ネジ部22と外ネジ部23としたことにより、両者を簡単且つ確実に取付けつつ止水も行わせることが可能となる。
【0031】
なお、取付部21を樹脂管接合部6に対するインサートブッシュ15のインサート部分に設けたことにより、また、この取付部21の近傍に、凹溝部19を設けたり、取付部21や凹溝部19をカシメリング27で締付けたりすることにより、樹脂管接合部6とインサートブッシュ15との間の剥離防止や止水などを多重且つ有効に行わせることができる。
【0032】
また、インサートブッシュ15が、内ネジ部22よりも一端側寄りの部分に非ネジ部31を有し、樹脂管接合部6が、インサートブッシュ15の非ネジ部31の内側へ入り込むリング状成形部32を有し、スリーブ部材17が、外ネジ部23よりも一端側へ延びてリング状成形部32に嵌合する延長部33を有し、リング状成形部32と延長部33との間にシール部34が介装されたことにより、インサートブッシュ15とスリーブ部材17とに分割した場合であっても、両者の界面の止水を確実に行わせることができる。
【0033】
更に、スリーブ部材17が、連結機構部16に、オネジソケット41、メネジソケット42、ユニオンソケット43、エラスジョイント44のいずれかを備えたことにより、管材側の連結構造に応じてオネジソケット41、メネジソケット42、ユニオンソケット43、エラスジョイント44のいずれかとして使用することが可能となる。
【0034】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、これらの可能な組合せが含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例にかかる管継手の斜視図である。
【図2】図1を軸線方向に沿って切断した縦断面図である。
【図3】図2の部分拡大断面図である。
【図4】連結機構部がメネジソケットである場合の図1と同様の斜視図である。
【図5】連結機構部がユニオンソケットである場合の図1と同様の斜視図である。
【図6】連結機構部がエラスジョイントである場合の図1と同様の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
6 樹脂管接合部
7 管材連結部
15 インサートブッシュ
16 連結機構部
17 スリーブ部材
21 取付部
22 内ネジ部
23 外ネジ部
31 非ネジ部
32 リング状成形部
33 延長部
34 シール部
41 オネジソケット
42 メネジソケット
43 ユニオンソケット
44 エラスジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に樹脂管を接合可能な樹脂製の樹脂管接合部を有すると共に、他端側に管材を連結可能な金属製の管材連結部を有する管継手において、
前記管材連結部を、前記樹脂管接合部にインサート成形される一端側のインサートブッシュと、管材に対する連結機構部を有する他端側のスリーブ部材とに分割し、
前記インサートブッシュと前記スリーブ部材との間に、両者を取付可能な取付部を設け、
該取付部が、インサートブッシュの樹脂管接合部へのインサート部分の内面に少なくとも一部が形成された内ネジ部と、スリーブ部材一端部の対応する部分に形成されて前記内ネジ部に螺着可能な外ネジ部とから成ることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記インサートブッシュが、内ネジ部よりも一端側寄りの部分に非ネジ部を有し、
前記樹脂管接合部が、インサートブッシュの非ネジ部の内側へ入り込むリング状成形部を有し、
前記スリーブ部材が、外ネジ部よりも一端側へ延びてリング状成形部に嵌合する延長部を有し、
リング状成形部と延長部との間にシール部が介装されたことを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記スリーブ部材が、前記連結機構部に、オネジソケット、メネジソケット、ユニオンソケット、エラスジョイントのいずれかを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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