説明

管継手

【課題】軽量化しつつ、フランジ部に形成された取付孔の縁の破損を抑制することができる管継手を提供することを目的とする。
【解決手段】管継手は、継手管本体部と、継手管本体部から径方向外側へ張り出した樹脂製のフランジ部と、フランジ部に形成され、フランジ部を取付部材へネジ留めさせるネジ部材貫通用の取付孔と、フランジ部に形成され、取付孔からフランジ部の外縁部へ延びる主スリット状部と、フランジ部に形成され、取付孔から延びると共にフランジ部の外縁部に至らない副スリット状部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配管等が接続されるネジ孔が形成された筒体と、筒体に設けられたフランジ部とを備えた金属製の管継手が知られている(例えば、特許文献1)。また、フランジ部にビス用の取付孔が形成された管継手が知られている。この種の管継手では、例えば、取付孔を通して皿ビスを床材等に捻じ込み、皿ビスの座面を取付孔の縁に係合させることにより、フランジ部が床材等に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−65732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軽量化等の観点から管継手を樹脂で形成することが考えられる。しかしながら、一般に樹脂は金属と比較して割れ易い。従って、床材等に対する皿ビスの過度な捻じ込みによって、皿ビスの座面から取付孔の縁に作用する押圧力が大きくなると、テーパが付けられた皿ビスの座面によって取付孔の縁が押し広げられ、取付孔の縁に亀裂等が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、軽量化しつつ、フランジ部に形成された取付孔の縁の破損を抑制することができる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の管継手は、継手管本体部と、前記継手管本体部から径方向外側へ張り出した樹脂製のフランジ部と、前記フランジ部に形成され、前記フランジ部を取付部材へネジ留めさせるネジ部材貫通用の取付孔と、前記フランジ部に形成され、前記取付孔から前記フランジ部の外縁部へ延びる主スリット状部と、前記フランジ部に形成され、前記取付孔から延びると共に前記フランジ部の外縁部に至らない副スリット状部と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る管継手によれば、例えば、フランジ部に形成された取付孔を通してネジ部材を床材等の取付部材に捻じ込み、ネジ部材の頭部を取付孔の縁に係合させることにより、フランジ部が取付部材にネジ留め(固定)される。
【0008】
ここで、フランジ部には、取付孔からフランジ部の外縁部へ延びる主スリット状部と、取付孔から延びると共にフランジ部の外縁部に至らない副スリット状部が形成されている。これにより、例えば、ネジ部材の頭部によって取付孔が押し広げられたときに、主スリット状部及び副スリット状部が開く。従って、取付孔の縁に発生する応力が低減されるため、取付孔の縁の破損が抑制される。
【0009】
このようにフランジ部に主スリット状部及び副スリット状部を形成したことにより、管継手を軽量化しつつ、取付孔の縁の破損を抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の管継手は、請求項1に記載の管継手において、前記副スリット状部が、前記取付孔から前記継手管本体部の外側へ延びている。
【0011】
請求項2に係る管継手によれば、副スリット状部が取付孔から継手管本体部の外側へ延びるため、副スリット状部に沿ってフランジ部に亀裂が発生しても、当該亀裂が継手管本体部に達し難くなる。従って、継手管本体部の破損が抑制されるため、継手管本体部からの液体や気体の漏れが抑制される。
【0012】
請求項3に記載の管継手は、請求項1又は請求項2に記載の管継手において、前記主スリット状部及び前記副スリット状部が、フランジ部を板厚方向に貫通するスリットとされている。
【0013】
請求項3に係る管継手によれば、主スリット状部及び副スリット状部をスリットとしたことにより、主スリット状部及び副スリット状部が更に開き易くなる。従って、取付孔の縁に発生する応力が更に低減されるため、取付孔の縁の破損が抑制される。
【0014】
請求項4に記載の管継手は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の管継手において、前記主スリット状部が、前記取付孔を挟んで前記継手管本体部と反対側に形成され、前記副スリット状部が、前記主スリット状部に対して対称に延びている。
【0015】
請求項4に係る管継手によれば、ネジ部材の頭部によって取付孔の縁が押し広げられたときに、主スリット状部、及び主スリット状部に対して対称に延びる副スリット状部が開く。従って、取付孔の縁に発生する応力が更に低減されるため、取付孔の縁の破損が抑制される。
【0016】
請求項5に記載の管継手は、請求項4に記載の管継手において、前記フランジ部が、前記継手管本体部の軸方向から見て該継手管本体部と同心の円形に形成され、前記主スリット状部が、前記フランジ部の径方向に沿って延びており、前記前記副スリット状部が、前記主スリット状部と直交する方向へ延びている。
【0017】
請求項5に係る管継手によれば、主スリット状部をフランジ部の径方向に延ばしたことにより、主スリット状部がフランジ部の径方向に対して傾斜する方向へ延びる構成と比較して、主スリット状部の長さが短くなる。従って、主スリット状部によるフランジ部の強度低下を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る管継手によれば、軽量化しつつ、フランジ部に形成された取付孔の縁の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る管継手が床材に固定された状態を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る管継手が床材に固定された状態を示す平面図である。
【図3】(A)は本発明の一実施形態における主スリット状部及び副スリット状部を示す図2に相当する拡大平面図であり、(B)は図3(A)の3B−3B線断面図である。
【図4】本発明の一実施形態における主スリット状部が開いた状態を示す図3(A)の拡大平面図である。
【図5】比較例におけるザグリ部の内周面に皿ビスの座面が接触した状態を示す図3(B)に相当する断面図である。
【図6】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態における主スリット状部の変形例を示す図3(A)に相当する平面図である。
【図7】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態における副スリット状部の変形例を示す図3(A)に相当する平面図である。
【図8】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態における主スリット状部及び副スリット状部の変形例を示す図3(A)に相当する平面図である。
【図9】本発明の一実施形態における副スリット状部の変形例を示す図3(A)に相当する平面図である。
【図10】本発明の一実施形態における主スリット状部の変形例を示す、主スリット状部の長手方向と直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る管継手について説明する。なお、各図において適宜示される矢印Rは取付孔の径方向外側を示し、矢印Gはネジ部材としての皿ビスの挿入方向奥側を示している。
【0021】
図1には、一例として、一実施形態に係る管継手10が示されている。この管継手10は、木製の床材50に形成された配管用の貫通孔52の縁に固定される床固定型の継手であり、床材50の上方に配管された管としての上側排水管60と、床材50の下方に配管された管としての下側排水管62とを連結するものである。
【0022】
図1に示されるように、管継手10は、継手管本体部12と、フランジ部14と、配管カバー部16とを備えている。継手管本体部12は樹脂製で筒状に形成されており、軸方向を上下方向にして床材50の貫通孔52に挿入されている。継手管本体部12の軸方向一端部(上端部)には、上側排水管60が接続される第1管接続部としての接続孔18が形成されている。この接続孔18の内周面は雌ネジが切られた雌ネジ部とされており、この接続孔18に上側排水管60の下端部60Aに設けられた図示しない雄ネジ部を捻じ込むことにより、上側排水管60が継手管本体部12に水密に接続されている。
【0023】
また、継手管本体部12の軸方向一端部には、フランジ部14が設けられている。フランジ部14は、樹脂製で継手管本体部12と一体に形成されており、継手管本体部12の外周面から径方向外側へ張り出している。このフランジ部14は、継手管本体部12の軸方向(フランジ部14の板厚方向)から見て、接続孔18と同心の円形(図2参照)に形成されており、その外径Dが床材50に形成された貫通孔52の直径Dよりも大きくなっている。これにより、継手管本体部12を床材50の貫通孔52に挿入したときに、フランジ部14の外周部が貫通孔52の縁に引っ掛かるようになっている。
【0024】
フランジ部14の外周部には、取付孔30が形成されている。取付孔30は、フランジ部14を板厚方向に貫通する円形の孔とされており、ネジ部材としての皿ビス70が貫通可能になっている。図2に示されるように、取付孔30は、フランジ部14の周方向に所定の間隔を空けて複数(本実施形態では、3つ)形成されている。これらの取付孔30に、フランジ部14の上面14A側から皿ビス70を挿入し、当該皿ビス70を床材50に捻じ込むことにより、フランジ部14が床材50に固定されている。また、フランジ部14には、後述する主スリット状部36と2つの副スリット状部40,44が形成されている。
【0025】
一方、図1に示されるように、継手管本体部12の軸方向他端部(下端部)は、継手管本体部12の軸方向一端部よりも外径が小さくされると共に、フランジ部14を床材50に固定したときに、床材50から下方へ延出されるようになっている。この継手管本体部12の軸方向他端部には、下側排水管62が接続される第2管接続部としての管挿入部20が設けられている。この管挿入部20を下側排水管62の上端部62A内に差し込むことにより、継手管本体部12に下側排水管62が水密に接続されている。また、管挿入部20には、配管カバー部16が取り付けられている。配管カバー部16は樹脂製で筒状に形成されており、その内部に下側排水管62の上端部62Aが挿入されている。また、配管カバー部16の内部には図示しないロック機構が設けられており、このロック機構によって下側排水管62の上端部62Aが管挿入部20から抜け出さないようになっている。
【0026】
ここで、フランジ部14に形成された取付孔30、主スリット状部36、及び2つの副スリット状部40,44の構成について詳説する。
【0027】
図3(A)及び図3(B)に示されるように、取付孔30におけるフランジ部14の上面14A側の縁には、皿ビス70の頭部72を収納するザグリ部32が形成されている。ザグリ部32は、皿ビス70の頭部72の座面72Aのテーパ形状に応じて、皿ビス70の挿入方向手前側から挿入方向奥側に向って直径が徐々に小さくなる円錐台形状(テーパ形状)の孔とされている。
【0028】
ザグリ部32の内周面32Aは、取付孔30に皿ビス70が挿入されたときに、皿ビス70の頭部72の座面72Aが係合される。このザグリ部32の内周面32Aは、図3(B)に示されるように、皿ビス70の挿入方向に沿った断面視にて、皿ビス70の座面72Aの傾斜角度に応じて、皿ビス70の挿入方向手前側から挿入方向奥側(矢印G方向)に向って取付孔30の径方向内側(矢印R方向と反対方向)へ傾斜されている。
【0029】
また、図3(A)に示されるように、ザグリ部32は、フランジ部14に設けられた主スリット状部36及び2つの副スリット状部40,44によってザグリ本体部32Uと2つの第1移動部32M1、第2移動部32M2に分割(区画)されている。主スリット状部36はフランジ部14を板厚方向に貫通するスリットであり、取付孔30を挟んで接続孔18の反対側に形成されている。この主スリット状部36は、取付孔30からフランジ部14の外縁部14Eへ延びると共に、その長さ(長手方向の長さ)が最短になるようにフランジ部14の径方向に沿って直線状に形成されている。これにより、主スリット状部36によるフランジ部14の強度低下が最小限に抑えられている。
【0030】
フランジ部14における主スリット状部36よりも接続孔18側には、2つの副スリット状部40,44が形成されている。これらの副スリット状部40,44は、フランジ部14を板厚方向に貫通するスリットであり、取付孔30と接続孔18との対向方向(矢印K方向)、即ち、取付孔30の中心軸Cと接続孔18の中心軸Cとを結ぶ直線に対して反対側にそれぞれ形成されている。また、副スリット状部40,44は、取付孔30から主スリット状部36に対して対称に延びると共に、接続孔18(継手管本体部12)の外側へそれぞれ延びている。
【0031】
副スリット状部40は、主スリット状部36と略直交する方向の一方側(図3(A)において右側)へ直線状に延びており、主スリット状部36との間でザグリ部32における第1移動部32M1を分割(区画)している。また、副スリット状部40は、副スリット状部44との間でザグリ部32における接続孔18側のザグリ本体部32Uを分割(区画)している。この副スリット状部40により、副スリット状部40の先端部40Tを支点(回転軸)として、第1移動部32M1がザグリ本体部32Uに対して取付孔30の径方向外側へ移動(回転)可能になっている。
【0032】
一方、副スリット状部44は、主スリット状部36と略直交する方向の他方側(図3(A)において左側)へ直線状に延びており、主スリット状部36との間でザグリ部32における第2移動部32M2を分割(区画)している。この副スリット状部44により、第2移動部32M2が副スリット状部44の先端部44Tを支点(回転軸)として、ザグリ本体部32Uに対して取付孔30の径方向外側へ回転可能になっている。
【0033】
なお、ここでいう副スリット状部40,44が取付孔30から接続孔18(継手管本体部12)の外側へ延びるとは、副スリット状部40,44が、取付孔30から接続孔18(継手管本体部12)がない方向へ延びることを意味する。つまり、副スリット状部40,44の延長線上に接続孔18(継手管本体部12)が存在しないように、各副スリット状部40,44がフランジ部14に形成されている。
【0034】
次に、比較例と対比しながら、本実施形態に係る管継手の作用について説明する。
【0035】
図3(A)及び図3(B)に示されるように、本実施形態に係る管継手10は、樹脂製のフランジ部14に形成された取付孔30を通して皿ビス70を床材50に捻じ込み、皿ビス70の頭部72の座面72Aをザグリ部32の内周面32Aに係合させることにより、フランジ部14が床材50にネジ留め(固定)される。
【0036】
このとき、図5に示される比較例のように、皿ビス70の頭部72がザグリ部32に係合されると、皿ビス70の座面72Aからザグリ部32の内周面32Aに皿ビス70の挿入方向奥側へ向けた押圧力Fが作用する。また、ザグリ部32の内周面32Aが傾斜している場合は、当該内周面32Aに取付孔30の径方向外側へ向う分力Fが作用する。即ち、ザグリ部32の内周面32Aに、ザグリ部32を押し広げる方向の分力Fが作用する。従って、床材50に対する皿ビス70の過度な捻じ込み等によって分力Fが大きくなると、ザグリ部32に亀裂等が発生し、フランジ部14が破損する可能性がある。また、亀裂が接続孔18に達すると、接続孔18から排水等が漏れ出す可能性がある。
【0037】
特に、電動ドライバー等を用いて床材50に皿ビス70を捻じ込む場合は、作業者が手でドライバー等を回す場合と比較して、床材50に対する皿ビス70の捻じ込み速度(ザグリ部32の内周面32Aに対する皿ビス70の頭部72の接近速度)が速くなり、皿ビス70の頭部72がザグリ部32の内周面32Aに衝突する可能性がある。このような衝突荷重に対して一般に樹脂は弱いものが多く、特に、ガラス繊維で補強された高強度の樹脂は脆く割れ易い。従って、前述したように皿ビス70の頭部72がザグリ部32の内周面32Aに衝突すると、ザグリ部32に亀裂等が発生し易くなる。
【0038】
これに対して本実施形態に係る管継手10では、図4に示されるように、フランジ部14に主スリット状部36及び副スリット状部40,44が形成されている。従って、床材50に対する皿ビス70の過度な捻じ込み等によってザグリ部32の内周面32Aに作用する分力F(図5参照)が所定値以上になると、二点鎖線で示されるように、主スリット状部36及び副スリット状部40が開くと共に、ザグリ部32における第1移動部32M1が副スリット状部40の先端部40Tを支点として取付孔30の径方向外側(矢印P方向)へ移動する。これと同様に、二点鎖線で示されるように、主スリット状部36及び副スリット状部44が開くと共に、ザグリ部32における第2移動部32M2が副スリット状部44の先端部44Tを支点として取付孔30の径方向外側(矢印Q方向)へ移動する。これにより、ザグリ部32の内周面32Aに作用する分力Fが低減されると共に、ザグリ部32に対する皿ビス70の頭部72の衝突エネルギーが吸収される。従って、ザグリ部32に発生する亀裂等が抑制される。
【0039】
このように本実施形態に係る管継手10では、フランジ部14に主スリット状部36、副スリット状部40,44を形成したことにより、ザグリ部32の内周面32Aに作用する分力Fが低減されると共に、ザグリ部32に対する皿ビス70の頭部72の衝突エネルギーが吸収される。従って、ザグリ部32に発生する亀裂等が抑制される。
【0040】
また、第1移動部32M1及び第2移動部32M2は、ザグリ本体部32Uに対して取付孔30の径方向外側へ移動するため、例えば、第1移動部32M1の矢印P方向の移動量(回転量)が過大となっても、副スリット状部40の先端部40Tからフランジ部14の外縁部14Eへ向けて亀裂が発生する。従って、接続孔18の破損が抑制される。
【0041】
更に、副スリット状部40,44は、取付孔30から接続孔18の外側へ延びている。換言すると、副スリット状部40,44の延長線上に接続孔18が存在していない。従って、仮に、副スリット状部40,44に沿ってフランジ部14に亀裂が発生しても、当該亀裂が接続孔18に達することがない。従って、接続孔18の破損が抑制される。
【0042】
更にまた、本実施形態では、取付孔30の縁にザグリ部32を形成し、ザグリ部32に皿ビス70の頭部72を収納可能にしたことにより、フランジ部14の見栄えが向上する。
【0043】
次に、上記実施形態に係る管継手の変形例について説明する。
【0044】
上記実施形態では、フランジ部14の径方向に沿って主スリット状部36を形成したがこれに限らない。例えば、図6(A)に示される変形例のように、フランジ部14及び取付孔30の径方向に対して傾斜する方向に沿って主スリット状部86を形成しても良い。また、図6(B)に示される変形例のように、フランジ部14の径方向に対して傾斜する方向で、且つ取付孔30の径方向に沿う方向に主スリット状部88を形成しても良い。
【0045】
また、上記実施形態では、主スリット状部36と略直交する方向に沿って副スリット状部40,44を形成したが、例えば、図7(A)に示される変形例のように、主スリット状部36とのなす角度θ,θがそれぞれ鈍角(θ,θ>90°)になるように、主スリット状部36に対して副スリット状部40,44を傾斜させても良い。また、図7(B)に示される変形例のように、主スリット状部36とのなす角度θ,θがそれぞれ鋭角(θ,θ<90°)になるように、主スリット状部36に対して副スリット状部40,44を傾斜させても良い。更に、図示を省略するが、副スリット状部40が主スリット状部36となす角度θと、副スリット状部40が主スリット状部36となす角度θとが異なっていても良い。また、副スリット状部40,44は、主スリット状部36と同様に、取付孔30の径方向に対して傾斜する方向に沿って形成しても良い。
【0046】
更に、主スリット状部36及び副スリット状部40,44の形状は直線状に限らず、例えば、図8(A)に示されるように、接続孔18の軸方向(フランジ部14の板厚方向)から見て台形形状でも良いし、また、湾曲形状でも良い。
【0047】
また、図8(B)に示される変形例のように、副スリット状部40の先端部40Tに第1補助スリット状部90を設けても良い。具体的には、第1補助スリット状部90は、フランジ部14における副スリット状部40と略直交する方向に延びるスリットであり、長手方向中間部に副スリット状部40の先端部40Tが接続されている。また、第1補助スリット状部90の長手方向一端部(接続孔18側の端部)90Aには、第2補助スリット状部92が設けられている。第2補助スリット状部92は、フランジ部14における第1補助スリット状部90と略直交する方向に延びるスリットであり、長手方向一端部(取付孔30側の端部)92Aに第1補助スリット状部90の長手方向一端部90Aが接続されている。なお、説明を省略するが、副スリット状部44の先端部44Tには、副スリット状部40と同様に、第1補助スリット状部90が設けられている。
【0048】
この変形例では、ザグリ部32の内周面32Aに作用する分力F(図5参照)が所定値以上になると、先ず、副スリット状部40がその先端部40Tを支点として矢印a方向に開く。次に、第1補助スリット状部90が、その長手方向他端部90Bを支点として矢印b方向へ開く。次に、第1補助スリット状部90は、その長手方向一端部90Aを支点として矢印c方向へ開く。次に、第2補助スリット状部92が、その長手方向他端部92Bを支点として矢印d方向へ開く。これにより、第1移動部32M1が取付孔30の径方向外側(矢印P方向)へ移動する。このように第1補助スリット状部90及び第2補助スリット状部92を形成することにより、副スリット状部40の先端部40Tに集中する応力が緩和されるため、副スリット状部40の先端部40Tに発生する亀裂等が抑制される。
【0049】
なお、第1補助スリット状部90は、副スリット状部40の先端部40Tに接続されると共に、当該副スリット状部40と交差する方向へ延びていれば良く、その形状等は適宜変更可能である。また、第2補助スリット状部92は省略しても良いし、逆に第2補助スリット状部92の長手方向他端部92Bに新たな第3補助スリット状部を設けても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、2つの副スリット状部40,44をフランジ部14に形成したが、副スリット状部40,44の何れかを省略しても良い。この場合、例えば、図9に示される変形例のように、取付孔30と接続孔18との対向方向に対して上側排水管60の捻じ込み方向(矢印J方向)側に、副スリット状部40を形成することが望ましい。接続孔18に上側排水管60を捻じ込んだときに、フランジ部14が上側排水管60と一体に回転(矢印L方向)すると、取付孔30と接続孔18との対向方向に対して副スリット状部40と反対側の取付孔30の縁が皿ビス70に衝突し、当該縁が破損する可能性があるためである。従って、2つの副スリット状部40,44の何れかを省略する場合は、副スリット状部44(図3(A)参照)を省略することが望ましい。
【0051】
更に、上記実施形態では、主スリット状部36及び副スリット状部40,44を、フランジ部14を板厚方向に貫通するスリットで構成したが、これらの主スリット状部36及び副スリット状部40,44を、フランジ部14を板厚方向に貫通しない溝で構成しても良い。具体的には、図10に示されるように、底壁38Aを有する溝38で主スリット状部を構成しても良い。この場合、ザグリ部32の内周面32Aに作用する分力F(図5参照)が所定値以上になったときに、主スリット状部を構成する溝38の底壁38Aに亀裂が入り、溝38が開くように溝38の深さを適宜設定すれば良い。
【0052】
また、皿ビス70のように座面72Aにテーパが付けられたネジ部材では、取付孔30にザグリ部32がない場合であっても、皿ビス72の座面72Aが取付孔30の縁に係合されたときに、当該縁に取付孔30を押し広げる方向の押圧力が作用する。従って、このようなザグリ部32がない取付孔30に対しても主スリット状部36、副スリット状部40,44を形成することにより、取付孔30の縁に発生する亀裂等を抑制することができる。
【0053】
更に、上記実施形態では、フランジ部14を板厚方向から見て円形(図2参照)に形成したが、フランジ部14の形状は、フランジ部14を板厚方向から見て楕円形でも良いし、三角形、四角形等の多角形でも良い。
【0054】
また、上記実施形態では、継手管本体部12を樹脂で形成したが、継手管本体部12は金属で形成しても良い。また、継手管本体部12の形状は上記したものに限らず、例えば、L字形状に屈曲させても良い。また、継手管本体部12には、第1管接続部及び第2管接続部の一例として接続孔18及び管挿入部20を設けたが、第1管接続部及び第2管接続部には従来の周知の種々の接続構造を適用可能である。更に、継手管本体部に3つ以上の管接続部を設け、流路を分岐させる分岐継手としても良い。
【0055】
更に、上記実施形態では、フランジ部14を木製の床材50に固定する場合を例に説明したが、例えば、コンクリート製の床(スラブ)にフランジ部を固定しても良い。また、上記実施形態では、ネジ部材として皿ビス70を用いたが、トラスビスやタッピングネジ、ドリルネジ等を用いることができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
10 管継手
12 継手管本体部
14 フランジ部
30 取付孔
32 ザグリ部
36 主スリット状部
38 溝(主スリット状部)
40 副スリット状部
44 副スリット状部
70 皿ビス(ネジ部材)
72 頭部
86 主スリット状部
88 主スリット状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手管本体部と、
前記継手管本体部から径方向外側へ張り出した樹脂製のフランジ部と、
前記フランジ部に形成され、前記フランジ部を取付部材へネジ留めさせるネジ部材貫通用の取付孔と、
前記フランジ部に形成され、前記取付孔から前記フランジ部の外縁部へ延びる主スリット状部と、
前記フランジ部に形成され、前記取付孔から延びると共に前記フランジ部の外縁部に至らない副スリット状部と、
を備える管継手。
【請求項2】
前記副スリット状部が、前記取付孔から前記継手管本体部の外側へ延びている請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記主スリット状部及び前記副スリット状部が、フランジ部を板厚方向に貫通するスリットとされている請求項1又は請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記主スリット状部が、前記取付孔を挟んで前記継手管本体部と反対側に形成され、
前記副スリット状部が、前記主スリット状部に対して対称に延びている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の管継手。
【請求項5】
前記フランジ部が、前記継手管本体部の軸方向から見て該継手管本体部と同心の円形に形成され、
前記主スリット状部が、前記フランジ部の径方向に沿って延びており、
前記前記副スリット状部が、前記主スリット状部と直交する方向へ延びている請求項
4に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−50196(P2013−50196A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189594(P2011−189594)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)