説明

管装置及び管装置を用いた地中油汚染土壌の浄化方法

【課題】有孔管の外側における各孔の近辺に微生物や薬液を均等に供給できるとともに、有孔管の外側における各孔の近辺を均等に吸引でき、また、有孔管の特定の孔のみを介した吸引や供給を行うことも可能な管装置を提供する。
【解決手段】本発明の管装置50は、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔51を複数備えた有孔管52と、有孔管52の一方の端部開口55を経由して有孔管52の内側から複数の孔51に個々に連結された複数の連結管53とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有孔管の外側における有孔管の各孔近辺への微生物や薬液の均等供給、有孔管の外側における有孔管の各孔近辺の均等吸引を可能とした管装置及びこれを用いた地中油汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を複数備えた有孔管を地盤中に設置し、有孔管の複数の孔を介して地盤中に薬液を注入することが知られている(例えば、特許文献1等参照)。また、地中油汚染土壌に油を分解する微生物を供給することによって地中油汚染土壌を浄化する方法が提案されている(例えば、特許文献2,3等参照)。
【特許文献1】特開平7−292654号公報
【特許文献2】特開平9−276837号公報
【特許文献3】特開平9−276840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記有孔管を用いて、地中油汚染土壌の油を吸引したり、地中油汚染土壌に微生物を供給することが考えられる。しかしながら、上記有孔管では、吸引装置のような吸引側や、薬液注入装置や微生物培養装置のような供給側から近い孔と遠い孔とが存在し、供給側や吸引側から近い孔を介した吸引力や供給力が、供給側や吸引側から遠い孔を介した吸引力や供給力よりも大きくなる。よって、有孔管の外側における各孔の近辺に微生物や薬液を均等に供給することや、有孔管の外側における各孔の近辺を均等に吸引することができない。また、有孔管の特定の孔のみを介した吸引や供給を行うこともできない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、有孔管の外側における各孔の近辺に微生物や薬液を均等に供給できるとともに、有孔管の外側における各孔の近辺を均等に吸引でき、また、有孔管の特定の孔のみを介した吸引や供給を行うことも可能な管装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の管装置は、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を複数備えた有孔管と、有孔管の一方の端部開口を経由して有孔管の内側から複数の孔に個々に連結された複数の連結管とを備えたことを特徴とする。
有孔管の両端部の外周面にパッカーを備えたことも特徴とする。
本発明の地中油汚染土壌の浄化方法は、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を備えた外側有孔管と外側有孔管の孔を覆うように外側有孔管の外周面に設けられた油吸着材とを備えた油吸着処理管を地中の油汚染部又は油汚染部の近傍に設置し、油汚染部の油を有孔管内経由で吸引することによって油吸着材に油を吸着させた後に、外側有孔管の内側に外側有孔管の軸に沿った方向に移動可能な内側有孔管を設置して、油吸着材に吸着された油を分解する微生物を内側有孔管内から内側有孔管の孔及び外側有孔管の孔を通して油吸着材に供給する地中油汚染土壌の浄化方法において、上記内側有孔管として上記管装置の有孔管を用いたことを特徴とする。
本発明の地中油汚染土壌の浄化方法は、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を備えた外側有孔管を地中の油汚染部又は油汚染部の近傍に設置し、外側有孔管の内側に油吸着材を設置した状態で油汚染部の油を有孔管内経由で吸引することによって油吸着材に油を吸着させた後に、油を吸着した油吸着材を地上に取り出し、その後、外側有孔管の内側に外側有孔管の軸に沿った方向に移動可能な内側有孔管を設置して、油吸着材に吸着された油を分解する微生物を内側有孔管経由で外側有孔管内に供給する地中油汚染土壌の浄化方法において、上記内側有孔管として上記管装置の有孔管を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の管装置によれば、有孔管の外側における各孔の近辺に微生物や薬液を均等に供給できるとともに、有孔管の外側における各孔の近辺を均等に吸引でき、また、有孔管の特定の孔のみを介した吸引や供給を行うことも可能となる。
また、有孔管の両端部の外周面にパッカーを備えたので、吸引箇所や供給箇所を任意に決めることができるようになる。
本発明の地中油汚染土壌の浄化方法によれば、油汚染部の油を効率的に除去でき、地中油汚染土壌を効率的に浄化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1は本発明の最良の形態1を示し、図1(a)は管装置の外観を示し、図1(b)は図1(a)のA−A断面を示す。
【0007】
図1に示すように、管装置50は、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔51を複数備えた有孔管52と、有孔管52の一方の端部開口55を経由して有孔管52の内側から複数の孔51に個々に連結された複数の連結管53とを備える。即ち、管装置50は、有孔管52の一方の端部開口55を経由して有孔管52の内側に延長した連結管53の一端開口54と有孔管52の孔51とが互いに連結され、連結管53の他端開口56が有孔管52の一方の端部開口55より有孔管52の外側に延長されたことによって、連結管53の他端開口56と有孔管52の外周面57との間に、連結管53の管路と有孔管52の孔51とで形成された通路60が複数形成された構成である。通路60を備えたことにより、連結管53の他端開口56と有孔管52の外周面57との間において、通路60を介して、油、水、微生物、薬液などの物質を流通させることが可能となる。連結管53の一端開口54と有孔管52の孔51との連結構成は、例えば、連結管53の一端開口54が有孔管52の内側から有孔管52の孔51内に挿入されて連結管53の一端開口54の外周面と孔51の孔内壁面とが接着剤などで接着されたことによって互いに連結された構成とすればよい。有孔管52の他方の端部58は塞がれる。有孔管52の一方の端部開口55と導管59の一方の端部開口とが接着剤などで互いに連結され、有孔管52の複数の孔51に個々に連結された複数の連結管53の個々の他端開口56が導管59の内側を経由して供給側や吸引側に導かれ、複数の連結管53の個々の他端開口56が導管59の他方の端部開口58a(図3参照)より外側に突出して供給側や吸引側に接続される。即ち、有孔管52の複数の孔51に個々に連結された複数の連結管53の他端開口56が、吸引装置4(図3参照)のような吸引源、あるいは、微生物培養装置5(図3参照)や薬液注入装置のような供給源に接続される。
【0008】
最良の形態1の管装置50によれば、例えば、管装置50の有孔管52を地中汚染土壌に設置した場合、連結管53を介した吸引により、有孔管52の外側における各孔51の近辺の地下水や油を均等に吸引できるようになる。また、連結管53を介した供給により、有孔管52の外側における各孔51の近辺に微生物を均等に供給できるようになる。また、管装置50の有孔管52を軟弱地盤に設置した場合、連結管53を介した供給により、有孔管52の外側における各孔51の近辺に薬液を均等に供給できるようになる。さらに、特定の連結管53及び孔51を介した吸引や供給を行うことも可能となる。尚、吸引装置4の吸引口23や微生物培養装置5の注入口24の数を連結管53の数に対応した数だけ設けて複数の連結管53による吸引や供給を同時に行ってもよいし、吸引装置4の1つの吸引口23や微生物培養装置5の1つの注入口24に連結管53を1つずつ順番に付け替えていって1本の連結管53毎に吸引や供給を行ってもよい。1本の連結管53毎に吸引や供給を行う場合、吸引時間や供給時間を一定にすることで均等吸引や均等供給を行うことができる。
また、有孔管52の複数の孔51に個々に連結された複数の連結管53を内側に収納して供給側や吸引側に導く導管59を備えたので、管装置50を地中に設置したり地中から取り出したりする際の連結管53の損傷を防止できる。
【0009】
最良の形態2
図2に示すように、最良の形態1で説明した管装置50における有孔管52の両端部61;62の外周面にパッカー63を備えた管装置50Aとした。パッカー63は、ゴムのような弾性体により浮輪のようなリング袋状に形成されたものであり、水のような流体を袋内に取り込んで膨らむ。尚、パッカー63には、図外の流体取込口が設けられ、図外の流体供給管の一端開口と流体取込口とが繋がれ、流体供給管の他端開口とこの流体供給管に流体を供給する図外の流体供給装置の流体排出口とが繋がれる。
【0010】
最良の形態2の管装置50Aによれば、パッカー63を備えたので、管装置50Aを図外の外側有孔管の内側に設けて使用したり、管装置50Aを地盤に形成した地盤孔内に挿入して使用する場合において、外側有孔管内や地盤孔内での管装置50Aの位置を任意に決めることができるようになり、外側有孔管内や地盤孔内での吸引箇所や供給箇所を任意に決めることができる。よって、吸引箇所や供給箇所を特定することによって、特定場所での集中吸引や特定場所への集中供給が可能となる。
【0011】
最良の形態3
図3を参照し、最良の形態2で説明した管装置を用いた地中油汚染土壌の浄化方法を説明する。地中油汚染土壌の浄化装置1は、機械工場のような建屋7下の地中8においてA重油や機械油などの油で汚染された油汚染部2の位置又は油汚染部2の近傍位置(以下、油汚染部2の位置又は油汚染部2の近傍位置を目標設置位置という)に設置される油吸着処理管3と、吸引装置4と、微生物培養装置5と、油吸着処理管3と吸引装置4や微生物培養装置5とを繋ぐ連結管6と、管装置50A(図2参照)とを備える。
【0012】
図4に示すように、油吸着処理管3は、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔11を複数個備えた外側有孔管12と、外側有孔管12の孔11を覆うように外側有孔管12の外周面に設けられた油吸着材13とを備える。油吸着材13としては、親油性でかつ疎水性の物質を用いればよく、例えば、椴松(とどまつ)ファイバーを用いる。椴松ファイバーは、椴松の木屑を200℃〜500℃で焼いて糸状に形成されたものである。この椴松ファイバーが不織布などの多孔質材料により形成された被覆材としての袋15内に入れられ、この椴松ファイバーを封入した袋15が外側有孔管12の孔11を塞ぐように外側有孔管12の外周面に巻き付けられたりして取り付けられることによって、油吸着材13が外側有孔管12の孔11を塞ぐように外側有孔管12の外周面に設けられる。袋15は、油吸着処理管3が地中に形成された横孔21内の目標設置位置に設置される場合に、油吸着材13の損傷を防止するとともに、油汚染部2の油を通過させて油吸着材13に吸着させる。油吸着材13と袋15とにより油吸着部70が形成される。即ち、油吸着処理管3は、外側有孔管12の外周面に外側有孔管12の孔11を覆うように油吸着部70を備えた構成である。
【0013】
連結管6は、外側有孔管12と一体の管、あるいは、一端が外側有孔管12の他端と繋がれる無孔管(管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔が形成されていない管)により形成される。外側有孔管12の一端25は塞がれる。外側有孔管12が地中に形成された横孔21内を経由して目標設置位置に設置されるが、この際、連結管6としては、目標設置位置から横孔21を経由して地上に届くまでの長さX(図示せず)以上のものを用いることによって、油吸着処理管3が目標設置位置に設置された場合に、連結管6の他端22が横孔21の始端口30より地上に引き出される。
【0014】
外側有孔管12を目標設置位置に設置する方法について説明する。まず、先端に採取管を備えた図外のボーリング装置を用いてボーリング調査を行い、建屋7下の地中の油汚染部2の位置を確かめる。そして、図外の自由曲線掘削機を用いて目標設置位置を通過する横孔21を形成する。自由曲線掘削機は、曲がり可能な鋼製中空ロッドと、ロッドの先端に設けられた掘削ビットと、ロッドの先端部に設けられた位置検出センサと、鋼製中空ロッドを前後動させたり回転させたりするための駆動装置とを備える。掘削ビットは、先端に、円柱体の一端が斜めに切り落とされたような楕円形面を備える。直線状に掘削する場合には、ロッドを回転させて掘削ビットで土砂を切削しながら進行する。曲線状に掘削する場合は、ロッドの回転を止めて、掘削ビットを土砂に押し当てることによって、掘削ビットが地山からの反力を受けて曲線状に推進する。掘削始点から自由曲線掘削機を用いて目標設置位置を通過して地上に突き抜ける横孔21を形成した後に、地上に出た掘削ビットをリーマビットに付け替える。油吸着処理管3を備えた長さX以上の連結管6の他端22をリーマビットの後部に取付け、リーマビットを横孔21の終端口から横孔21内に挿入して横孔21の内壁を外側有孔管12の径に合うようにリーマビットで切削しながらリーマビットを横孔21の始端口30まで戻す。以上により、横孔21内の目標設置位置に油吸着処理管3が設置され、連結管6の他端22が横孔21の始端口30より地上に引き出される。
【0015】
浄化装置1を用いて地中油汚染土壌を浄化する方法を説明する。自由曲線掘削機により目標設置位置を通過する横孔21が形成される。横孔21内に挿入された油吸着処理管3が目標設置位置に設置された後に、地上に出された連結管6の他端22と吸引装置4の吸引口23とが互いに繋がれる。そして、吸引装置4が駆動して油吸着処理管3の外側有孔管12内を吸引すると、油吸着処理管3の周囲の油汚染部2の油が地下水とともに孔11の方向に吸引されて、地下水が油吸着材13を通過して吸引装置4に吸引され、油が油吸着材13に吸着される。
【0016】
その後、連結管6の他端22が吸引装置4の吸引口23から外され、連結管6の他端22の開口から管装置50Aが挿入されて管装置50Aの有孔管52が外側有孔管12の内側の任意の位置に止められる。この状態で図5に示すように流体供給装置及び流体供給管がパッカー63内に流体を供給してパッカー63が膨らむことによって、パッカー63が有孔管52の外周面と外側有孔管12の内周面との間を塞ぐ。そして、有孔管52の複数の孔51に個々に連結された複数の連結管53の他端開口56と微生物培養装置5の注入口24とが互いに繋がれ、微生物培養装置5において培養液で培養された微生物と培養液とが一緒に微生物培養装置5から連結管53経由で外側有孔管12内に供給される。これにより、微生物が外側有孔管12の孔11、袋15を経由して油吸着材13に付着し、油吸着材13に付着した微生物が油吸着材13に吸着された油を分解する。つまり、油汚染部2の油が吸引により油吸着材13に集中して吸着され、微生物が外側有孔管12の外周面に設置された油吸着材13に孔11を通して効率的に付着するので、油吸着材13に付着した微生物が油吸着材13に吸着された油を効率的に分解する。
【0017】
その後、油汚染部2の油の残り具合をボーリング調査で調べ、油の残りが多ければ、さらに、吸引装置4により連結管6内及び外側有孔管12内を吸引して外側有孔管12内の水分を吸引するとともに油汚染部2の油分と地下水とを吸引して油吸着材13に油を吸着させる。尚、微生物が外側有孔管12内に供給された後の吸引装置4による吸引作業は、外側有孔管12内に供給された微生物が油吸着材13に付着して油吸着材13の油を分解するのに必要な時間を待ってから行う。例えば、外側有孔管12内に微生物が供給されてから1週間程度経過してから吸引作業を行う。吸引作業の後、上述と同じように、微生物を外側有孔管12内に供給する。つまり、油汚染部2の油の残り具合を調べながら、吸引作業と微生物供給作業とを繰り返すことによって、油汚染部2の油を除去する。
【0018】
最良の形態3によれば、外側有孔管12の孔11を塞ぐように外側有孔管12の外周面に設けられた油吸着材13を備えた油吸着処理管3を目標設置位置に設置し、油汚染部2の油を外側有孔管12内から吸引することによって油吸着材3に吸着させた後に、管装置50Aを用いて外側有孔管12内に微生物を供給することによって油吸着材13に吸着された油を微生物に分解させたので、油汚染部2の油を外側有孔管12の外周面に設けた油吸着材13に集中させることができ、そして油吸着材13に集中させた油を微生物で分解させることによって油汚染部2の油を効率的に除去でき、地中油汚染土壌を効率的に浄化できる。また、油吸着材13が袋15で覆われたので、油吸着材13の損傷を防止できる。また、管装置50Aを用いたので、微生物供給箇所を特定できるとともに、連結管53を介した供給により、有孔管52の外側における各孔51の近辺に微生物を均等に供給できるようになり、パッカー63とパッカー63との間の空間内に微生物を均等に供給できる。
【0019】
最良の形態4
最良の形態3において、管装置50Aの有孔管52を外側有孔管12の内側の任意の位置に設置して、管装置50Aを用いた吸引作業を行った後に、続けて、管装置50Aを用いた微生物供給作業を行うようにしてもよい。
最良の形態3によれば、管装置50Aを用いたことにより、吸引箇所を特定できるとともに、連結管53を介した吸引により、有孔管52の外側における各孔51の近辺の地下水や油を均等に吸引できるようになる。
【0020】
最良の形態5
図6;図7に示すように、外側有孔管12の内側に油吸着部75を備えた構成の油吸着処理管76を目標設置位置に設置し、外側有孔管12の外側の油汚染部2の油を油吸着部75に吸着させた後に、油を吸着した油吸着部75を外側有孔管12の内側より取り出し、その後、図8に示すように、外側有孔管12の内側に管装置50Aの有孔管52を設置して外側有孔管12内に微生物を供給するようにしてもよい。これにより、外側有孔管12内に供給された微生物が孔11を介して外側有孔管12の外側の油汚染部2に供給されることになる。
【0021】
図7に示すように、油吸着部75は、目標設置位置に設置された外側有孔管12の孔11を外側有孔管12の内側から覆うように外側有孔管12の内側に設置される。油吸着部75は、上述した椴松ファイバーのような油吸着材13と、被覆材としての例えば円筒状袋16内に油吸着材13が収納されて円柱形状に形成された油吸着体17と、油吸着体17の円柱の両端部に設けられた端部保持板18;19と、油吸着材回収具としての回収ワイヤー20とを備える。そして、油吸着体17を横孔21内経由で油汚染部2の目標設置位置まで押し込むための油吸着体押し込み用棒状パイプ9を用いる。円筒状袋16は不織布などの多孔質材料により形成された例えば一端閉塞他端開口の円筒状袋を用いる。この円筒状袋16の他端開口から椴松ファイバーが他円筒状袋16内に充填収納された後に他円筒状袋16の他端開口が閉塞されて油吸着体17が形成される。他方の端部保持板19は、中央に回収ワイヤー20の径よりも大きな径の貫通孔31を備える。
【0022】
油吸着部75の作り方の一例を以下に示す。回収ワイヤー20の一端24aが他方の端部保持板19の貫通孔31に通された後に、回収ワイヤー20の一端24aが油吸着体17の他端から一端に向けて油吸着体17の円柱中心に沿って油吸着体17中に通される。油吸着体17の一端より外に突出させた回収ワイヤー20の一端24aと一方の端部保持板18とが互いに連結される。油吸着体17の他端と他方の端部保持板19とが互いに連結される。以上の構成により、油吸着体17を横孔21内に設置された外側有孔管12内に押し込んだ後に油吸着体押し込み用棒状パイプ9を回収ワイヤー20の他端25aから回収ワイヤー20に通して油吸着体押し込み用棒状パイプ9の一端22aを他方の端部保持板19に突き当てて押して油吸着体17を油汚染部2の目標設置位置まで押し込むことにより、油吸着体17を油汚染部2の目標設置位置に設置できる。また、回収ワイヤー20の他端25a側を引っ張って油汚染部2の油を吸着した油吸着体17を外側有孔管12内から地上に引き上げることができる。この場合、油吸着体17と端部保持板18;19と回収ワイヤー20とが連結されているので、油吸着体17が外側有孔管12の内側に残らないように油吸着体17を回収できる。また、油吸着体17は、油吸着材13が不織布のような多孔質材料により形成された円筒状袋16内に収納されて形成されたので、油吸着体17が外側有孔管12内の目標設置位置に設置される場合や油吸着体17が外側有孔管12内から地上に引き出される場合に円筒状袋16が油吸着材13の損傷を防止するとともに、油汚染部2の油が円筒状袋16を通過して油吸着材13に吸着する。
【0023】
回収ワイヤー20、油吸着体押し込み用棒状パイプ9、連結管6としては、目標設置位置から横孔21を経由して地上に届くまでの長さX(図示せず)以上のものを用いる。これにより、外側有孔管12や油吸着体17が目標設置位置に設置された場合、油吸着体押し込み用棒状パイプ9の他端27、連結管6の他端28、回収ワイヤー20の他端25aがそれぞれ横孔21の始端口30より地上に出る。そして、油吸着体押し込み用棒状パイプ9が地上に引き出されて取り除かれた後に、連結管6の他端28と吸引装置4の吸引口23とが互いに繋がれ、吸引装置4が連結管6及び油吸着体17経由で外側有孔管12の外側に位置する油汚染部2の油を地下水とともに吸引することによって、地下水が吸引装置4により吸引され、油が油吸着材13に吸着されることになる。
【0024】
浄化装置1を用いて地中油汚染土壌を浄化する方法を説明する。自由曲線掘削機により目標設置位置を通過する横孔21が形成される。横孔21内に挿入された外側有孔管12が目標設置位置に設置される。油吸着部75が油吸着体17側から連結管6の他端28より外側有孔管12内に挿入されて目標設置位置に設置される。油吸着体押し込み用棒状パイプ9が取り除かれた後、横孔21の始端口30より地上に引き出された連結管6の他端28と吸引装置4の吸引口23とが互いに繋がれる。そして、吸引装置4が駆動して吸引すると、油吸着体17の外側に位置する油汚染部2の油が地下水とともに外側有孔管12の孔11の方向に吸引されて、地下水が孔11、油吸着体17、連結管6を通過して吸引装置4に吸引され、油が孔11、油吸着体17の円筒状袋16を通過して油吸着材13に吸着される。吸引作業が終了した後、回収ワイヤー20を引っ張って、油吸着体17を外側有孔管12の内側から地上に引き出して、外側有孔管12の内側から取り除く。
【0025】
油吸着体17を外側有孔管12内から地上に引き出した後、外側有孔管12の内側に管装置50Aの有孔管52を設置し、管装置50Aを用いて外側有孔管12内に微生物を供給する。微生物が内側有孔管52の孔51及び外側有孔管12の孔11を経由して外側有孔管12の周囲に残存する油に付着して油を分解する。
【0026】
最良の形態5によれば、油汚染部2の油が拡散しているような場合でも、吸引装置4による吸引作業によって、油汚染部2の油を外側有孔管12の内側に設けた油吸着材13に集中的に吸着させることができるので、油汚染部2の油を効率的に除去できて、地中油汚染土壌を効率的に浄化できる。また、油吸着材13が被覆材としての円筒状袋16で覆われたので、油吸着材13の損傷を防止できる。また、管装置50Aを用いたので、微生物供給箇所を特定できるとともに、連結管53を介した供給により、有孔管52の外側における各孔51の近辺に微生物を均等に供給できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
導管59を備えない構成の管装置としてもよい。
最良の形態3乃至5で説明した地中油汚染土壌の浄化方法において最良の形態1で説明した管装置50を用いてもよい。
なお、横孔21は、地中で掘り止められる孔でもよい。この場合、例えば、駆動軸の先端に設けた切削ビットで地中を掘削して横孔を形成し、途中で駆動軸と切削ビットとを分離して切削ビットを地中に残して駆動軸を引き戻してから、横孔21内に油吸着処理管3を挿入して設置すればよい。
外側有孔管12の孔11を塞ぐように外側有孔管12の外周面に油吸着材13を巻き付けたりして取り付けた後に、この油吸着材13の外面を覆うように、不織布などの多孔質材料により形成された被覆材を取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】管装置を示し、(a)は側面図、(b)は(a)のA−A断面図(最良の形態1)。
【図2】管装置を示す側面図(最良の形態2)。
【図3】浄化装置を示す図(最良の形態3)。
【図4】浄化装置の油吸引時を説明した断面図(最良の形態3)。
【図5】浄化装置の微生物供給時を説明した断面図(最良の形態3)。
【図6】浄化装置を示す図(最良の形態5)。
【図7】浄化装置の油吸引時を説明した断面図(最良の形態5)。
【図8】浄化装置の微生物供給時を説明した断面図(最良の形態5)。
【符号の説明】
【0029】
1 浄化装置、2 油汚染部、3 油吸着処理管、11 孔、
12 外側有孔管、13 油吸着材、50;50A 管装置、51 孔、
52 有孔管、63 パッカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を複数備えた有孔管と、有孔管の一方の端部開口を経由して有孔管の内側から複数の孔に個々に連結された複数の連結管とを備えたことを特徴とする管装置。
【請求項2】
有孔管の両端部の外周面にパッカーを備えたことを特徴とする請求項1に記載の管装置。
【請求項3】
管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を備えた外側有孔管と外側有孔管の孔を覆うように外側有孔管の外周面に設けられた油吸着材とを備えた油吸着処理管を地中の油汚染部又は油汚染部の近傍に設置し、油汚染部の油を有孔管内経由で吸引することによって油吸着材に油を吸着させた後に、外側有孔管の内側に外側有孔管の軸に沿った方向に移動可能な内側有孔管を設置して、油吸着材に吸着された油を分解する微生物を内側有孔管内から内側有孔管の孔及び外側有孔管の孔を通して油吸着材に供給する地中油汚染土壌の浄化方法において、上記内側有孔管として請求項1又は請求項2に記載の管装置の有孔管を用いたことを特徴とする地中油汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を備えた外側有孔管を地中の油汚染部又は油汚染部の近傍に設置し、外側有孔管の内側に油吸着材を設置した状態で油汚染部の油を有孔管内経由で吸引することによって油吸着材に油を吸着させた後に、油を吸着した油吸着材を地上に取り出し、その後、外側有孔管の内側に外側有孔管の軸に沿った方向に移動可能な内側有孔管を設置して、油吸着材に吸着された油を分解する微生物を内側有孔管経由で外側有孔管内に供給する地中油汚染土壌の浄化方法において、上記内側有孔管として請求項1又は請求項2に記載の管装置の有孔管を用いたことを特徴とする地中油汚染土壌の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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