説明

管路を流体で満たすための補助具および管路に流体を注入するための流体注入方法

【課題】屈曲部、たわみ部を有する管路を、空気溜りがなく、流体で満たすための補助具ならびにこの補助具を用いた流体注入方法を提供する。
【解決手段】
表面に弾力性のある布を被覆させた芯材からなる補助具1が、管路10の注入側13の先頭に配置され、管路に流体20が注入される。補助具1はその被覆布に弾性があり、また柔軟であるので、管路10の山部14、16の峠を、管壁と良好にフィットしながら通過し、滑落することがなく、空気を押し出しながら徐々に進み、排出側17から排出される。管路10には、空気がたまることなく、管路は流体20で満杯状態に満たされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲部、たわみ部を有する管路であっても、エアー溜りがなく、水あるいは温水などの流体で管路を満たすための補助具および管路に該流体を注入するための流体注水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水道管などは老朽化した場合、その内面にライニングを施す管路補修工法が実施されている(特許文献1)。ライニングの際に熱硬化性樹脂を含浸した材料を管路内に挿入し蒸気、温水などの熱媒体を注入して硬化させる。
【特許文献1】特開平2−194930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、下水管と異なり地中に埋設された電力管、ガス管、工業用管路などの管路は一方的な勾配ではなく、屈曲部ないしたわみ部を有するので、ライニングする際に冷却された熱媒体がスムーズに戻らない問題と、屈曲した管路の山部あるいは谷部にエアー溜りが形成され、ライニング材が均一に加熱されない問題がある。
【0004】
本発明の課題は、屈曲部、たわみ部を有する管路を、空気溜りがなく、流体で満杯に満たすための補助具およびこの補助具を用いて管路に流体を注入するための流体注入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの課題を解決するために、管路を流体で満たすために管路に挿入される本発明の補助具は、芯材とその表面を被覆する弾力のある被覆布とから構成されることを特徴とする。
【0006】
尚、この補助具は、芯材の寸法および被覆布の厚みを選択することで管路にフィットするような形状にされる。
【0007】
また、本発明の補助具は、
管路を流体で満たすために管路に挿入される補助具であって、
補助具が、芯材とその表面に取り付けられた管路内径より大きな外径を有する円板状の弾力のある弾力部材とから構成され、補助具が管路に挿入されたとき弾力部材が挿入方向とは逆方向に折り曲げられ、その折り曲げられた部分が管路内壁に密着することを特徴とする。
【0008】
本発明では、この補助具を管路に挿入し、その後管路に流体が注入される。補助具は、常に、注入される流体の先頭に位置し、注入される流体の圧力により管路内の空気を押し出しながら、前進して、管路に空気溜りを発生させることなく、管路を流体で満杯にする働きをする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、芯材に弾力のある布を被覆した補助具を用いることにより、複雑な勾配のある屈曲した管路に空気溜りを発生することなく、管路を水あるいは温水などの流体で満杯にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面に基づいて説明する。しかし、本発明は多様な他の形に変形でき、ここに示す実施例は本発明を説明するために提供されるものであり、本発明の範囲が後述する実施例によって限定されるものと解釈されてはならない。また、図面における要素の形状などはより明確な説明を強調するために誇張されたものであり、本発明の要素の仕様、寸法を限定されるものと解釈されてはならない。
【実施例1】
【0011】
図1は、管路を流体で満たすための補助具1を概略的に示す斜視図である。ここで、管路は、地中に埋設された下水管、電力管、ガス管、工業用管路で、屈曲部、たわみ部を有し、老朽化したため管ライニング材を用いて更生される管路であり、また流体は、たとえば水、温水のような流体で、管ライニング材に含浸された熱硬化性樹脂を加温、硬化できる流体である。
【0012】
図1に示す補助具1は、円柱状の芯材2を、その外周面全体を被覆布3で被覆することにより得られる。芯材2は、補助具1の形を保持するものであり、その断面形状は内壁に管ライニング材を施した管路の断面形状とほぼ同じ形状をとり、その寸法(断面が円形の場合には直径D)は管ライニング材を施した管路の呼び寸法の60〜98%が好ましい。また芯材2の長さLは、特に制限しないが、断面寸法の80%以上が好ましい。
【0013】
芯材2の材質、構成などはとくに制限しない。材質の例として、木材、プラスチック、金属、合金が挙げられる。構成の例として、実芯ブロック、空芯円筒、網円筒が挙げられる。例えば、木材ブロック、塩化ビニル缶、ポリエチレン缶、アルミ缶、ステンレス缶などが好適である。芯材2が中実でない場合には、少なくとも、流体圧のかかる端面2aは密閉あるいは流体が流れにくい面にするのが好ましい。
【0014】
芯材2の変形として、円錐、円台先端を有する物でもよい。更に、芯材の両端面にロープを取付ける金具を付けてもよい。
【0015】
芯材2を被覆する被覆布3は、補助具1を、管ライニング材が施された管路(更生管)とフィットさせる役割をするもので、弾力性のある材質で構成される。被覆布3の厚みは、下記の式を満たすようにする。
【0016】
被覆布の厚み<=(更生管呼び寸法−芯材の寸法)/2+被覆布の圧縮量
被覆布3の材質、構成などはとくに制限しない。材質の例として、天然繊維、綿、合成繊維、発泡ゴム又は発泡プラスチックなどが例として挙げられる。構成の例として、織物、不織布(フェルト)、発泡材、綿など、またこれらの複合物が好適である。
【0017】
被覆布3を芯材2に被覆する方法は特に制限しない。例えば、被覆布3の弾力を利用し、直接付ける方法、熱による融着方法、粘着剤を用いた接着方法、バンドなどを用いた梱包方法などが好適である。
【0018】
流体の管路への注水方法として、本発明の補助具1を、流体注入側の管路に挿入して、ポンプなどで流体圧を加えて、この補助具1を推進しながら流体を注入する。
【0019】
図2(a)には、M字型に屈曲した管路で、熱硬化性樹脂を含浸した管ライニング材(不図示)が挿入された管路10が示されている。管ライニング材は反転方式、あるいは引き込み方式で管路に挿入されており、管路10の内壁に密着しているものとする。管路10は流体注入側13から2つの山部14、16があり、これらの山部の間に1つ谷部15ができるように屈曲している。なお、管路10は、説明のために、屈曲が誇張されて図示されている。
【0020】
管ライニング材の熱硬化性樹脂を硬化させるために、図2(b)に示すように、管路10の流体排出側17を開放して、注入側13から流体20を注入すると、管路の注入側13と山部14間の上り坂では流体20のレベルが徐々に上がっていく。注入した流体は山部14の峠を越えると、谷部15に溜って、谷部15がまもなく流体20で満たされ、山
部14と谷部15の間にある空気が逃げ場がなくなり、エアー溜り21が形成される。
【0021】
流体20を更に注入すると、流体20のレベルが他の山部16まで上がって行く。注入した流体20が山部16の峠を越えると、流体は底部となった排出側17に溜り、山部16と排出側17の間にある空気が逃げ場がなくなり、同様に山部16近辺にエアー溜り22が形成される。流体20を排出側17から排出しても、エアー溜り21、22の範囲は変わらない。
【0022】
このようなエアー溜りは、図3(a)〜(c)に示すように、図1の補助具1を用いることにより解消することができる。
【0023】
補助具1は、たとえば、管ライニング材が内壁に密着している管路10の内径の90%を有する直径Dのプラスチックの空芯円柱体(端面2aは密閉する)からなる芯材2に、管路10の内径の20%を有する弾力のある織物からなる被覆布3を貼り付けることにより作られる。
【0024】
補助具1を管路10の注入側13から挿入して、流体20を注入側13から注入する。補助具1は、図3(a)に示したように、流体20の先頭に常に位置して流体圧により管路10内を排出側17に向けて移動していく。補助具1はその被覆布3が弾力性を有し、また柔軟であるので、管路10の山部14の峠を、管壁と良好にフィットしながら通過し、滑落することがなく、空気を押し出しながら徐々に進んでゆく。従って、図2(b)に示すように、山部14と谷部15間にエアー溜り21が形成されることがない。
【0025】
また、補助具1は、管路10の谷部15を過ぎると、注入側13と谷部15の間と同じように、空気を押し出しながら徐々に進んでいき、図3(b)に示したように、排出側17に到達し、そこから排出される。したがって、管路10は、図3(c)に示すように、流体20で満杯状態に満たされる。
【0026】
流体が水の場合には、続いて加温循環され、また温水の場合には、循環されて、管路10の内壁に密着している管ライニング材に含浸された熱硬化性樹脂が加温される。所定時間加温を続けると、熱硬化性樹脂が硬化するので、その段階で流体20は管路10から排出される。
【0027】
管ライニング材を加温するとき、管路10には、エアー溜りが形成されないので、管ライニング材は均等に加温硬化され、管路10を良質にライニングすることが可能となる。
【実施例2】
【0028】
図4には、補助具の他の実施例が符号31で図示されている。補助具31は、内側にねじが形成された円柱状の中空の芯材32を有し、この芯材32の表面には芯材32より大きな外径の円板状の押え板35が固定される。また、芯材32には、弾力性のある円板状の第1の弾力部材33と、弾力部材33より弾力が弱い硬質の円板状の第2の弾力部材34が取り付けられる。弾力部材33、34の中心部には、芯材32の外径に対応する穴がそれぞれ形成され、弾力部材33、34は、その穴を介して芯材32に挿通されて弾力部材34が押え板35に押し当てられる。押え板36として機能する頭部が円板状のボルトが芯材32にねじ込まれ、押え板35と36で弾力部材33、34を締め付けることによって、弾力部材33、34が芯材32の一方の端部に固定される。
【0029】
押え板36の端面には、補助具を管路内において移動させるためのロープを取り付けるための金具37が固定される。
【0030】
弾力部材33は、その外径が補助具31が挿入される管ライニング材が施された管路10の内径よりも大きく、例えばしなやかで弾力のあるスポンジ状のプラスチックあるいはゴムなどの材質で形成される。弾力部材34は、その外径が管路の内径よりも小さく、弾力部材33よりも、弾力性の弱いゴム、あるいはプラスチックなどで形成される。
【0031】
弾力部材34は、後述するように、補助具31が管路に挿入されて弾力部材33が折り曲げられたとき、弾力部材33を支持する支持部材としての機能を有する。芯材32の材質は、例えばプラスチック、金属、合金が挙げられる。また、押え板35、36の材質も、例えばプラスチック、金属、合金などである。
【0032】
芯材32の他方の端部にも、弾力部材33、34と同様な形状、同様な材質の弾力部材43、44が固定される。弾力部材43、44の固定は、弾力部材33、34の固定と同様で、弾力部材43、44が、芯材32に挿通されて弾力部材43が芯材32に固定された押え板45(押え板35に相当)に押し当てられ、押え板36と同様な構成、材質の押え板46が芯材32にねじ込まれ、押え板45と46で弾力部材43、44を締め付けることによって行われる。
【0033】
このように構成された補助具31は補助具1と同様な機能を有する。補助具31が、図5に示すように、管路10の注入側13から挿入されると、弾力部材33、43は弾力性を有し、また柔軟であるので、管路10の内径に合わせて挿入方向と逆方向に折り曲げられ、その先端が押え板35、46を包囲する。弾力部材33、43の材質としては、その折り曲げられた部分が良好に管路10の管ライニング材に密着して流体20をどの方向にも密閉できるとととも、補助具31が円滑に管路10内を移動できるような弾力性を有するものが選択される。弾力部材33、43の折り曲げられた一部は、より硬質の弾力部材34、44により支持されるので、弾力部材33、43の密閉性を向上させることができる。
【0034】
このように、補助具31は、注入側13から注入される流体20により管路10内を、管壁と良好に密着し空気28を押し出しながら矢印で示した方向に排出側に円滑に進んでゆく。従って、管路10の山部と谷部間にエアー溜りが形成されることがなく、管路10は、流体20で満杯状態に満たされる。
【0035】
管ライニング材を満杯の流体で加温するとき、管路10にはエアー溜りが形成されないので、管ライニング材は均等に加温硬化され、管路10を良質にライニングすることが可能となる。これは、実施例1の場合と同様である。
【0036】
なお、弾力部材33、34による管路の密閉性が十分である場合には、進行方向とは逆側の芯材32の端部に設けられた弾力部材43、44を省略することもできる。また、弾力部材33、43の外径は、挿入時に折り曲げられる部分による密閉性が保証される場合には、より小さくすることができ、例えば、折り曲げれた部分の先端が弾力部材34、44の上部で終わるようにして、管路内の移動円滑性を向上させることができる。また、弾力部材33、43による密閉性が十分である場合には、弾力部材34、44を省略することもできる。
【0037】
また、弾力部材33、34、43、44は、上述したように芯材32に固定するのではなく、例えば接着あるいは他の手段により芯材32に取り付け、固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の補助具の一実施例を概略的に示す斜視図である。
【図2】管路にエアー溜りが形成されることを説明する説明図である。
【図3】補助具を用いて管路に流体を注入し、管路を流体で満たす状態を示した説明図である。
【図4】補助具の他の実施例を示す側面図である。
【図5】図4に示す補助具を管路に挿入したときの側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 補助具
2 芯材
3 被覆布
10 管路
20 流体
21、22 エアー溜り
28 空気
31 補助具
32 芯材
33、34、43、44 弾力部材
35、36、45、46 押え板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を流体で満たすために管路に挿入される補助具であって、
補助具が、芯材とその表面を被覆する弾力のある被覆布とから構成されることを特徴とする補助具。
【請求項2】
前記被覆布は、天然繊維、毛、綿、あるいは合成繊維からなる織物又は不織布、あるいは、ゴム、プラスチックの発泡体であることを特徴とする請求項1に記載の補助具。
【請求項3】
前記芯材は、木材、プラスチック、金属からなるブロックまたは中空体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の補助具。
【請求項4】
管路を流体で満たすために管路に挿入される補助具であって、
補助具が、芯材とその表面に取り付けられた管路内径より大きな外径を有する円板状の弾力のある弾力部材とから構成され、補助具が管路に挿入されたとき弾力部材が挿入方向とは逆方向に折り曲げられ、その折り曲げられた部分が管路内壁に密着することを特徴とする補助具。
【請求項5】
前記折り曲げられた弾力部材の部分を支持する支持部材が芯材に取り付けられることを特徴とする請求項4に記載の補助具。
【請求項6】
前記支持部材が前記弾力部材よりも弱い弾力の部材により構成されることを特徴とする請求項5に記載の補助具。
【請求項7】
前記弾力部材が、芯材の一方の端部と他方の端部の両端部に取り付けられることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の補助具。
【請求項8】
前記弾力部材と支持部材が、芯材の一方の端部と他方の端部に取り付けられることを特徴とする請求項4又は6に記載の補助具。
【請求項9】
前記弾力部材及び/又は支持部材がスポンジ状のゴム又はプラスチックであることを特徴とする請求項4から8のいずれか1項に記載の補助具。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の補助具を管路に挿入し、その後管路に流体を注入することを特徴とする流体注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−14048(P2009−14048A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174690(P2007−174690)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)