説明

箱型荷台の防水構造

【課題】優れた防水機能を確保しつつ、防水シートの耐久性の向上を図ることができる箱型荷台の防水構造を提供することを目的とする。
【解決手段】
荷台本体部12に対して開閉自在に可動する可動部13を備えた箱型荷台11の外側に備え、箱型荷台の上面部11Aにおける、上記荷台本体部12と上記可動部13との境界部分14を跨いで覆う防水シート22と、上記防水シート22の端部に備えた被係着部23を係着する上記境界部分14の長手方向に配置した係着部24とで構成し、上記係着部24を、内部の係着空間24Aと外側とを連通する開口溝36を有する中空形状に形成し、上記被係着部23を、上記係着部24に係着される芯材26と、該芯材26を包み込んで上記防水シート22の端部に連結する連結片27とで構成した箱型荷台の防水構造10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷台本体部と可動部とを備えた例えば、ウイング車における箱型荷台の防水構造に関し、詳しくは、箱型荷台における上部において、荷台本体部と可動部との境界部分から箱型荷台の内側への水の浸入を防止する箱型荷台の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウイング車の箱型荷台の上部における、荷台本体部の可動部と荷台本体部との境界部分に雨水などが浸入しないようにするための防水対策としては、上記境界部分を防水シートで外側から覆い、該防水シートを箱型荷台の上部においてテープで貼り付けたり、シール材でシーリングするといった施工を施していた。
【0003】
しかし、ウイング車の荷台上部における可動部と荷台本体部との境界部分は、荷台上部において長手方向全体に沿って形成されているため、長手方向に亘って上述した施工を行なうには、多大な時間や労力を要するとともに、施工斑が発生し易く、該施工斑により残留した隙間を通じて水漏れが発生してしまうこともあった。
【0004】
しかも、防水シートは、定期的にメンテナンスが必要であるため、施工したシーリング材やテープを除去した後で再度、施工し直す必要があり、その度に時間や労力を要していた。
その他にも、シーリングを施したシール材が乾くまでトラックは走行できず、休業を余儀なくされ、経済的にも損失が大きかった。
【0005】
このような背景に対して例えば、下記特許文献1において「ウイングボディ形荷箱におけるルーフ部シール用キャンパスの取付構造」(以下、「キャンパスの取付構造」という。)が開示されている。
特許文献1におけるキャンパスの取付構造は、荷台上部の幅方向中央部に長手方向に配されたセンターフレームに沿って前記キャンパス固定レールを備えている。キャンパス固定レールには、その長手方向に形成された嵌合溝を有し、該嵌合溝の溝開口方向は、箱型荷台の上部におけるセンターフレームに対して外方向を向くよう形成されている。
【0006】
そして、センターフレームとウイングとの隙間をキャンパスで覆い、さらに、キャンパスを、その幅方向の端部を嵌合軸に巻回した状態で、キャンパス固定レールの嵌合溝内に嵌合軸とともに圧入固定することにより防水対策を施すことができる。
【0007】
しかし、上記キャンパスの取付構造は、嵌合溝の溝開口方向がセンターフレームに対して外方向を向くよう形成されているため、キャンパスを上述したように嵌合溝に嵌合させたとき、キャンパスの幅方向の端部がキャンパス固定レールにおける嵌合溝の開口縁部に過度に接触することになる。
【0008】
これにより、キャンパスの幅方向の端部は、特に可動部が可動する度に磨耗することになるため、破損し易くなる。キャンパスの幅方向の端部が破損した場合には、防水性の観点からキャンパス全体を交換する必要があるため、その度に交換の手間を要するとともに、コストが嵩むという難点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平02−40625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、優れた防水機能を確保しつつ、防水シートの耐久性の向上を図ることができる箱型荷台の防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、荷台本体部と、該荷台本体部に対して開閉自在に可動する可動部とで構成した箱型荷台の上部において、上記荷台本体部と上記可動部との境界部分からの上記箱型荷台内側への水の浸入を防止する箱型荷台の防水構造であって、上記箱型荷台の外側に備え、上記境界部分を跨いで覆う防水シートと、上記防水シートの端部に備えた被係着部を係着する上記境界部分の長手方向に配置した係着部とで構成し、上記係着部を、内部の係着空間と外側とを連通する開口溝を有する中空形状に形成し、上記被係着部を、上記係着部に係着される芯材と、該芯材を包み込んで上記防水シートの端部に連結する連結片とで構成であることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、上記荷台本体部と上記可動部との境界部分を外側から跨いた状態で防水シートで覆うことにより、上記境界部分から上記箱型荷台の内側への水の流入を防止することを確実に防止することができる。
【0013】
また、防水シートの端部は、可動部を可動する度に、係着部に接触するなどして特に負荷がかかり易く破損し易い部分であるが、該防水シートの端部に連結片を備えて構成することで、防水シートの強度を効率的に向上させることができる。
【0014】
さらに、防水シートの端部を、該防水シートとは別部材である連結片を備えて形成しているため、連結片を、例えば、防水シートよりも高い強度の材質で形成するなどすれば、防水シートの端部の強度を集中的に向上させることができる。
【0015】
さらにまた、連結片は、該芯材を包み込んだ状態で上記防水シートの端部に連結するため、芯材と連結片との間に水が入り込むことを防止することができる。よって、カビなどの発生を防止し、素材が劣化して防水機能が低下することを防止することができる。
【0016】
また、上記可動部には、荷台本体部に対して開閉自在に回動する、直線方向へスライドする、或いは、スライドと回動を組み合わして可動するなど、様々な方向へ可動する構成を含む。
【0017】
この発明の態様として、上記連結片を、上記防水シートの両面を挟み込んで該防水シートの端部に取り付けた形態で構成することができる。
【0018】
上記構成により、上記防水シートの端部における両面側から上記連結片により強固に連結することができる。さらに、連結片により芯材の周方向全体を包み込むことが可能となるため、連結片と芯材との間に水が浸入することを、より確実に防止することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、上記係着部における上記係着空間に対する上記開口溝の開口方向を、上記境界部分の幅方向の外側に対して斜め上方向きに形成することができる。
【0020】
上記構成により、上記係着部における防水シートの上記開口溝の開口方向を、上記境界部分に対して外側に向けることで被係着部を係着部に係着したとき、上記防水シートの端部により係着部を覆った状態で取り付けることができ、係着部と被係着部との係着部分に水が浸入することを防止することができる。
【0021】
さらに、上記係着部における上記開口溝の開口方向を、上記境界部分の幅方向の外側に対して斜め上方向きに形成することにより、シート端部を内側へ折り返さなくても軽く折り曲げる程度で容易に係着部へ係着することができる。さらに、被係着部を係着部に係着したとき、被係着部の連結片が係着部に接触することにより生じる接触抵抗も緩和させることができるため、上記防水シートの端部の負荷を軽減して防水シートの耐久性を向上させることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、上記係着部を、上記連結片とともに上記芯材を上記係着空間に対して長手方向へ差し込んで上記被係着部に係着する差込み係着構造とし、上記開口溝を、上記連結片の挿通を許容するとともに、上記芯材の通過を許容しない溝幅で形成することができる。
【0023】
上記構成により、例えば、被係着部を係着部の外側から上記開口溝に押し込んで係着する嵌合係着構造と比較して、係着部の開口溝の溝幅を芯材の通過を許容しない小さな溝幅で形成することができる。
【0024】
よって、可動部を繰り返し可動させても、被係着部が不測に係着部の開口溝を通じて取り外れてしまうことを確実に防止することができ、強固に取り付けることができる。
【0025】
また、係着部に対して被係着部を着脱させる際には、被係着部を係着部の長手方向にスライドさせて抜き差しすることにより容易に着脱させることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、上記連結片と上記芯材との対向部分を、上記連結片と上記芯材との相互の長手方向への位置ズレを阻止する位置ズレ阻止構造で構成することができる。
【0027】
上記構成により、被係着部を係着部に係着したとき、上記連結片と上記芯材とが相互に長手方向へ位置ズレすることを阻止することができる。このため、係着空間内で上記連結片が弛緩したり芯材が捩れるなどして係着部と被係着部との間に空間が不測に発生して、該空間内に水が浸入してカビなどが発生することを未然に防ぐことができる。
【0028】
上記位置ズレ阻止構造は、例えば、被係着部を、連結片が芯材に密着した状態で該芯材の周方向全体を包み込んだ形態として構成することができる。この構造の場合、上記連結片と上記芯材との一体性が向上するため、被係着部が係着部の長手方向へ位置ズレすることを確実に阻止することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、上記防水シートの長手方向の少なくとも一方の端部に、端部防水構造を構成し、上記端部防水構造には、幅方向の中央側に形成した中央側フラップ部と、幅方向の外側に形成した外側フラップ部とを備え、上記中央側フラップ部を、垂下した状態で上記荷台本体部に取り付け、上記外側フラップ部を、上記可動部に取り付けることができる。
【0030】
上記構成により、中央側フラップ部と外側フラップ部とで、防水シートの長手方向の少なくとも一方の端部側から上記境界部分を跨いで覆う防水シートの下側へ水が浸入し、該境界部分を通じて箱型荷台の内部に水が浸入することを確実に防止することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、上記防水シートを補助する補助防水シートを、上記境界部分を跨いで覆う配置で上記防水シートの下側に備え、上記防水シートの端部に備えた被係着部を係着する上記係着部と、上記箱型荷台の上部に取り付ける取付け部とで係着用取付け部材を構成し、上記係着用取付け部材を、上記箱型荷台の上部における、上記境界部分の幅方向に対して両外側にそれぞれ備え、上記補助防水シートを、上記箱型荷台の上部と上記取付け部との間に介在させ、該箱型荷台の上部と該取付け部とで挟着することができる。
【0032】
上記構成により、万が一、被係着部と係着部との間を通じて防水シートの下側へ水が浸入した場合でも、補助防水シートを上記境界部分を跨いで覆う配置で上記防水シートの下側に備えた構成であるため、防水シートの下方へ浸入した水が、さらに上記境界部分へ浸入することを防ぐことができる。
【0033】
従って、箱型荷台の防水構造は、箱型荷台の上部に長期に亘って設置され、雨風に曝されることもあり得るが、このような設置状況であっても、境界部分に水が浸入しようとしても確実に防止することができる。
【0034】
また、箱型荷台の防水構造は、専門的な技術を有しない素人であっても、防水シート、及び、補助防水シートを容易に着脱することができ、例えば、シーリング材でシーリングしたりテープで補強したりする場合のように斑が生じることがないため、見栄えよく、確実な止水性能を得ることができる。
【0035】
またこの発明の態様として、上記箱型荷台の上部と上記取付け部との間に、止水層を形成することができる。
【0036】
上記該止水層により、上記箱型荷台の上部と上記取付け部との間を通じて防水シートの下方へ水が浸入し、さらに境界部分に水が入り込むことを確実に防止することができる。
【0037】
またこの発明の態様として、上記係着用取付け部材を、締結手段により上記補助防水シートとともに上記箱型荷台の上部に対して共締めすることができる。
【0038】
係着用取付け部材を上記箱型荷台の上部に対して、補助防水シート、及び、止水層とともに同時に取り付けることができるため、取り付けの工程、及び、部品点数を減らすことができるため、取り付けの労力、及び、コストを抑えることができる。
【0039】
さらに、補助防水シート、及び、止水層は、締結手段の締結力を利用して係着用取付け部材の取付け部と、上記箱型荷台の上部とでしっかりと挟着することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、優れた防水機能を確保しつつ、防水シートの耐久性の向上を図ることができる箱型荷台の防水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第一実施形態の箱型荷台の防水構造を備えたウイング車輌の外観図。
【図2】図1におけるA−A線断面で示した第一実施形態の箱型荷台の防水構造の構成説明図。
【図3】図2における領域Xの拡大図。
【図4】防水シート端部の構成説明図。
【図5】ウイングを開いた状態で示した第一実施形態の箱型荷台の防水構造の構成説明図。
【図6】防水シートを箱型荷台に取り付ける様子を示した作用説明図。
【図7】第二実施形態の箱型荷台の防水構造の構成説明図。
【図8】第二実施形態の箱型荷台の防水構造の長手方向の端部の構成説明図。
【図9】第二実施形態の箱型荷台の防水構造の取付方法の説明図。
【図10】第二実施形態の箱型荷台の防水構造の取付方法の説明図。
【図11】第二実施形態の箱型荷台の防水構造の取付方法の説明図。
【図12】第二実施形態の箱型荷台の防水構造の取付方法の説明図。
【図13】第三実施形態の箱型荷台の防水構造の構成説明図。
【図14】第三実施形態の箱型荷台の防水構造を示す断面図。
【図15】図14における領域Xの拡大図。
【図16】ウイングを開いた状態で示した第三実施形態の箱型荷台の防水構造の構成説明図。
【図17】第三実施形態の箱型荷台の防水構造の作用説明図。
【図18】第三実施形態の箱型荷台の防水構造の取付方法の説明図。
【図19】第三実施形態の箱型荷台の防水構造を図11(b),図12(b)に対応させて示した構成説明図。
【図20】第四実施形態の箱型荷台の防水構造の構成説明図。
【図21】第五実施形態の箱型荷台の防水構造の構成説明図。
【図22】第六実施形態の箱型荷台の防水構造の構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
(第一実施形態)
図1は、ウイング車輌60を斜め前方から視た外観図である。図2は、図1におけるA−A線断面図であり、図3は、図2における領域Xの拡大図であり、図4は、防水シート22の幅方向の端部の構成を模式的に示した構成説明図であり、図5は、ウイング13を上方に可動させたときの図1のA−A線断面図である。
なお、図4は、図4(a)〜(d)からなり、それぞれ図4(a)は、後述する防水シート22の幅方向における端部の平面図、図4(b)は、図4(a)のB−B線断面図、図4(c)は、図4(b)における領域Yの拡大図、図4(d)は、図4(b)における領域Zの拡大図を示している。
【0043】
また、以下の説明において、特に示す場合を除き、長手方向とは、ウイング車輌60の車長方向を示し、上記幅方向とは、上記長手方向に対して直角方向、すなわち、ウイング車輌60の車幅方向を示すものとする。
【0044】
ウイング車輌60に備えた箱型荷台11は、荷台本体部12と、該荷台本体部12に対して開閉自在に可動するウイング13とで構成している。
【0045】
上記荷台本体部12は、前壁15と、後扉枠16とを備え(図1参照)、該前壁15と後扉枠16との各上部の幅方向の中央部間において長手方向に架設した中間支持部17を備えている。
【0046】
上記ウイング13は、中間支持部17に対して幅方向の各側に備え、ウイング屋根部13aとウイング側壁部13bとで断面視逆L型に構成している。
【0047】
箱型荷台11の上面部11Aは、図2に示すように、幅方向各側のウイング屋根部13aと上記中間支持部17とで略平坦状に構成され、中間支持部17とウイング屋根部13aとの境界部分14には、枢着部21を備えている。ウイング13は、枢着部21を支点として中間支持部17に対して回動自在に構成している。
第一実施形態における箱型荷台の防水構造10は、上記構成で構成された箱型荷台11の上面部11Aの幅方向の中間部において長手方向に沿って構成され、上記荷台本体部12に備えた上記中間支持部17と、上記ウイング13との境界部分14からの上記箱型荷台11内側への水の浸入を防止する構造である。
箱型荷台の防水構造10は、上記箱型荷台11の上面部11Aの上方に有して、上記境界部分14を跨いで覆う防水シート22と、該防水シート22の幅方向の両端部を係着する上記境界部分14の長手方向に配置した係着部24とで構成している。
【0048】
さらに、防水シート22の幅方向の両端部には、上記箱型荷台11の上面部11Aに構成した上記係着部24に係着可能な被係着部23を備えている。
【0049】
詳しくは、防水シート22は、中間支持部17を跨いだ状態で該中間支持部17の幅方向の両側に有するウイング屋根部13aに取り付け可能な幅を有するとともに(図2参照)、中間支持部17の長手方向の長さを有した縦長帯形状で形成している(図1参照)。
【0050】
上記防水シート22は、図4(b)に示すように、その両面全体に、ポリ塩化ビニル(PVC)を塗布したPVC層25を形成している。
なお、PVC層25は、上記防水シート22の両面全体に形成するに限らず、上記防水シート22の両面における幅方向の少なくとも端部に形成していればよい。
【0051】
さらに、防水シート22の端部に有する上記被係着部23は、図4(a),(b)に示すように、上記係着部24に係着される芯材26と、該芯材26を包み込んで上記防水シート22の端部に連結する連結片27とで構成している。
【0052】
上記芯材26は、ポリ塩化ビニルによって細長い柔軟な円柱形状で形成している。太さは、係着部24の係着空間24Aに挿通可能に該係着空間24Aの内径よりも約2mm程小さく形成し、その長さは、中間支持部17の長手方向の長さと略同じ長さで形成している。
【0053】
上記連結片27は、芯材26と同じ長さを有した縦長形状で形成した布片であり、耐摩耗性に優れたナイロン繊維からなる織布生地で形成し、図4(a),(d)に示すように、表面全体に滑らかで硬質な多数の凹凸31があらわれる生地目で形成している。さらに、連結片27の両面には、図4(b),(c)に示すように、ポリ塩化ビニルを塗布したPVC層32を形成している。
なお、図4(b)には、連結片27の両面に形成したPVC層25のうち、芯材26を包み込んだとき互いに対向する側の面に形成したPVC層25のみを図示し、連結片の外面に形成したPVC層25の図示は省略している。
【0054】
上述したように、上記連結片27は、その長手方向の全体に亘って幅方向の中間に芯材26を配した状態で包み込み、さらに包み込んだときに余長部分である幅方向の両端部で上記防水シート22の端部をその両面側から挟み込んだ状態で固着している(図4(b)参照)。
【0055】
上記連結片27と防水シート22とは、互いの対向部分をウエルダー溶着により溶着することで一体に固着している。
【0056】
上記連結片27と防水シート22の端部には、上述したように、いずれも熱可塑性樹脂からなるPVC層25,32を表面に形成しているため、図4(c)に示すように、上記連結片27のPVC層32と防水シート22のPVC層25とが互いに重合した状態で溶着することができる。
【0057】
したがって、優れた溶着性を発揮し、上記連結片27と防水シート22との対向部分に隙間が生じることなく強固に溶着することができる。
【0058】
また、ウイングの屋根部13aにおける中間支持部17と幅方向において対向する端部には、中間支持部17に対して平行にアルミ製の係着プレート33を取り付けている(図2,図3参照)。
【0059】
係着プレート33は、アルミ製であり、該係着プレート33をウイング屋根部13aに取り付け可能な板状に形成したプレート本体部34と、該プレート本体部34の幅方向の外側に、レール状に長手方向の全体に亘って突出した上記係着部24とを備えている(図2参照)。
【0060】
係着プレート33は、プレート本体部34の長手方向において複数の締結手段としてボルト35により所定間隔ごとにウイング屋根部13aに対して締結することにより取り付けている。
上記係着部24は、断面視円環形状をした中空形状における、周方向の一部分を切り欠いて、内部の係着空間24Aと外側とを連通する開口溝36を形成している。上記係着部24は、係着部24の長手方向全体に亘ってスリット状に形成した上記開口溝36を備えることによりレール状に構成している。
【0061】
係着部24における上記係着空間24Aに対する上記開口溝36の開口方向は、いずれも係着部24を断面視したとき、図3に示すように、境界部分14の幅方向の外側を向くよう形成している。
【0062】
さらに、上記係着部24は、被係着部23を(すなわち、上記連結片27とともに上記芯材26を)長手方向へ差込可能に構成し、上記開口溝36は、被係着部23を係着部24に差し込んだとき、連結片27の端部が係着空間24Aの内外に連通するよう構成している。
【0063】
詳しくは、上記開口溝36は、上記連結片27の挿通を許容するとともに、上記芯材26の通過を許容しない溝幅で形成している。
【0064】
換言すると、上記開口溝36は、上記芯材26を圧縮したときの圧縮径より狭い溝幅で形成するとともに、上記防水シートの両面側を挟み込んだ形態の上記連結片の厚みよりも、広い溝幅で形成している。
【0065】
上述した構成の箱型荷台の防水構造10は、以下のような作用、効果を奏することができる。
箱型荷台の防水構造10は、上記中間支持部17と上記ウイング屋根部13aとの境界部分14を防水シート22により上方から跨いた状態で覆うことができ、また、図5に示したように、ウイング13を上方に回動したときも同様に、境界部分14を防水シート22により覆った状態を維持することができるため、上記境界部分14から上記箱型荷台11の内側への水が流入することを確実に防止することができる。
【0066】
さらに、上述したように、箱型荷台の防水構造10は、上記係着部24における係着空間24Aに対する上記開口溝36の開口方向を、境界部分14の幅方向の外側に対して、すなわち、箱型荷台11の幅方向の外側を向くよう形成してるため、被係着部23を係着部24に係着したとき、被係着部23は、防水シート22の下側において該防水シート22の幅方向の内側へ折り返された形態で係着することができる(図3参照)。
【0067】
このため、係着部24と被係着部23とは、上記防水シート22の端部を、該防水シート22の幅方向の内側下方へ巻き込んで、該上記防水シート22の端部に覆われた状態で取り付けることができ、係着部24と被係着部23との間に水が浸入することを防止することができる。
【0068】
さらに、防水シート22の端部は、被係着部23を係着空間24Aに差し込む際や、ウイング13を可動する度に係着部24の特に開口溝36の縁部に擦れるため負荷が加わり易いが、ナイロン繊維で形成した連結片27を備えることで、防水シート22の中でも、特に負荷を受ける防水シート22の端部の強度を向上させることができる。
これにより、防水シート22自体に本来、備えている優れた防水性を確保しつつ、防水シート22全体の耐久性を効率的に向上させることができる。
なお、連結片27は、ナイロン繊維で形成するに限らず、耐摩耗性に優れた形態であれば、他の形態で形成することができる。
【0069】
また、連結片27は、該芯材26を包み込んだ状態とし、さらに、芯材26の周方向全体に密着した状態で上記防水シート22の端部に連結しているため(図4(b)参照)、連結片27と芯材26との間に水が入り込み、カビが発生するなどして、芯材26自体が劣化して防水機能が低下することを確実に防止することができる。
【0070】
さらにまた、被係着部23は、上記連結片27の端部により、上記防水シート22の端部における両面側から挟み込んで該防水シート22の端部に連結した構成であるため、上記防水シート22と連結片27とを強固に連結することができる。
【0071】
さらに、連結片27と防水シート22の端部との固着をウエルダー溶着による溶着(熱溶着)によって行なうことにより、固着した部分が水に濡れても優れた一体性を確保することができ、また、縫着した場合のように縫い目による貫通孔が生じることがないため、防水シート22や連結片27に水が通過することもなく、優れた防水性を確保することができる。
【0072】
しかも、ウエルダー溶着により連結片27と芯材26とを溶着することにより、上述したように連結片27が芯材26に密着した状態で該芯材26の周方向全体を包み込んだ形態の被係着部23を容易に製作することができる。このように防水性、耐久性に優れた形態の被係着部23を備えた防水シート22の量産化を図ることができる。
【0073】
また、箱型荷台の防水構造10は、上記開口溝36を、上記連結片27の挿通を許容するとともに、上記芯材26の通過を許容しない溝幅で形成するとともに、上記係着部24(上記連結片27とともに上記芯材26)を、被係着部23の係着空間24Aに対して、長手方向へ差込可能な差込み係着構造で構成している。
【0074】
これにより、例えば、被係着部23を、係着部24に対して上記開口溝36を通じた嵌合により係着する構成と比較して、係着部24の開口溝36の溝幅を芯材26の嵌合を許容しない程度の小さな溝幅で形成することができる。
【0075】
したがって、被係着部23は、係着部24に一旦、差し込めば、意図的に抜き出さない限り、たとえウイング13を繰り返し可動させるなどしても、不測に係着部24の開口溝36から取り外れてしまうことがなく、強固に係着することができる。
【0076】
続いて、防水シート22を箱型荷台11に取り付ける手順について図6を用いて説明する。
なお、図6は、防水シート22を箱型荷台11に取り付ける方法を説明する説明図である。
【0077】
被係着部23を係着部24に係着するが、これは、被係着部23を、係着部24の長手方向の両端部において開口する開口部のうち、例えば、前端側開口部24bから係着部24の係着空間Aへ差し込むことで係着する。
このとき、被係着部23は、連結片27の端部を係着部24の開口溝36に連通させた状態で係着部24に差し込む。
【0078】
そして、防水シート22を、その幅方向の両側を手で摘むなどして幅方向の両側を均等に係着部24の長手方向の後方側へ引張ることで、被係着部23を係着部24に差し込んだ状態で、一気にスライドさせることができる。
【0079】
箱型荷台の防水構造10は、上述した手順により荷台本体部12とウイング13との境界部分14を上方(すなわち、荷台本体部12の外側)から覆った状態で防水シート22を箱型荷台11に取り付けることができ、このような取付けにより以下のような作用効果を得ることができる。
上記中間支持部17と上記ウイング屋根部13aとの境界部分14の防水性を確保するために、防水シート22は、上記境界部分14の長手方向全体に亘って箱型荷台11に取り付ける必要があるが、上述した箱型荷台の防水構造10は、被係着部23を係着部24に差し込んでスライドするだけで係着することができる。
【0080】
このため、防水シート22をコーキングやリベットで取り付ける従来の箱型荷台の防水構造と比較して取付け作業時間や人件費を大幅に低減することができる。さらに、熟練の技術を備えていない初めて防水シート22の着脱を行う者であっても、現場で容易に、且つ、仕上がりに斑が生じることなく行うことができる。
【0081】
さらに、係着部24に差し込んだとき、箱型荷台11の上面部11Aにおいて水平に張架された防水シート22の幅間の張力により連結片27が開口溝36の縁部に過度に接触して損傷することを緩和させることができる。
【0082】
さらに、連結片27は、芯材26に密着した状態で該芯材26の周方向全体を包み込んだ状態で保持しているため、被係着部23を係着部24に差し込んでスライドさせている際に、連結片27と芯材26とが、長手方向において互いに位置ズレすることなく、係着空間24Aを一体にスライドさせることができる。
【0083】
さらにまた、連結片27は、表面にPVC層32を形成しているため、被係着部23は、通常であれば、係着部24に対する摩擦抵抗により係着空間24Aにおいてスライドさせ難くなるが、連結片27の表面には、凹凸31の生地目があらわれるよう形成しているため(図5(d)参照)、凹凸31の生地目のうち、滑らかで硬質である複数の凸部分が係着部24の内周面に接触することで、該被係着部23を係着部24に対してスムーズにスライドさせることができるとともに、係着空間24Aにおいて被係着部23のスライドを繰り返しても、連結片27が磨耗により劣化することを防ぐことができる。
【0084】
また、本発明の箱型荷台の防水構造は、上述した実施形態に限定せず、他の実施形態で構成することができる。
以下では、他の実施形態における箱型荷台の防水構造について説明する。
但し、以下で説明する箱型荷台の防水構造61,71,81,81,101の構成のうち、上述した第一実施形態における箱型荷台の防水構造10と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0085】
(第二実施形態)
第二実施形態における箱型荷台の防水構造61は、例えば、図7に示すように、長手方向の少なくとも一方の端部側において、上記境界部分14からの箱型荷台11内側への水の浸入を防止する端部側防水構造62を構成することができる。
なお、図7は、端部側防水構造62を備えた箱型荷台の防水構造61の外観図を示している。
【0086】
箱型荷台の防水構造61に用いる防水シート22は、図7に示したように、箱型荷台11に装着する前の状態において、図8に示すような端部形状で形成している。
なお、図8(a)は、図8(b)のC−C線断面図であり、図8(b)は、防水シート22の長手方向の端部側部分の平面図であり、図8(c)は、図8(b)のD−D線端面図である。
【0087】
図8に示すように、防水シート22の長手方向の端部は、幅方向の中間部に対して両外側が長手方向へ突出した形状で形成している。さらに、このような防水シート22の長手方向の端部に、別体で形成したシート状部材63を裏面側から重合することにより、防水シート22の端部には、幅方向の中央側に中央側フラップ部64を形成するとともに、幅方向の両外側の各側に外側フラップ部65を形成している。
なお、シート状部材63は、防水シート22の長手方向の端部形状と正面視(裏面視)同一形状であるとともに、同じ材質で形成している。
【0088】
上記中央側フラップ部64は、該中央側フラップ部64の周方向全体にウエルダー溶着を施し、防水シート22とシート状部材63とを重合状態で一体に形成している。
【0089】
上記外側フラップ部65は、該外側フラップ部65の幅方向の内側部分のみにウエルダー溶着を施し、幅方向の外側へフラップ状に開口可能に形成している(図8(a)参照)。
【0090】
上記外側フラップ部65における防水シート22のシート状部材63と対向する側の面には、シート状に形成した発泡ウレタン部材66を添着している。
【0091】
上記構成により構成される端部側防水構造62を備えた箱型荷台の防水構造61を、図7に示したように、箱型荷台11に装着する手順について図9から図12を用いて説明する。
なお、図9から図12は、箱型荷台の防水構造61を、箱型荷台11に装着する手順を説明する説明図であり、特に、図11(b)は、図11(a)のE−E線矢視拡大断面図を示し、図12(b)は、図12(a)のF−F線矢視拡大断面図を示している。
【0092】
まず、図6を用いて既に説明したとおり、箱型荷台の防水構造61は、被係着部23を係着部24に係着し、防水シート22を係着部24の長手方向にスライドさせることで箱型荷台11に取り付けることができる。
【0093】
このとき、図9中仮想線で示すように、防水シート22の長手方向の端部は、係着部24に係着されることなく余長した余長部分69を構成することができる。余長部分69は、中央側フラップ部64と外側フラップ部65とで構成することができる。
【0094】
図9に示した状態から図10に示すように、中央側フラップ部64を下方へ略90度折り、垂下した状態の中央側フラップ部64を、箱型荷台本体部12における中間支持部17の長手方向の端部に配された固定フレーム100の断面視L型形状に沿ってL型に折り曲げる。
【0095】
そして、図11(a),(b)に示すように、中央側フラップ部64をL型ブラケット67を介して螺子60で締結することにより固定フレーム100に固定する。
【0096】
さらに、図11(a)に示すように、外側フラップ部65を、長手方向の外側へ突出した状態から図12(a),(b)に示すように、可動フレーム101の端部形状に沿って、下側へ略90度屈曲させるとともに、シート状部材63を可動フレーム101の裏側に差し込むことにより、取り付けることができる。
【0097】
これにより、図12(b)に示すように、外側フラップ部65は、該外側フラップ部65を構成する防水シート22とシート状部材63とで挟み込んだ形態で可動フレーム101の対向端部に取り付けることができる。
なお、上記固定フレーム100は、上記中間支持部17とともに荷台本体部12の一部を構成するフレームである。上記可動フレーム101は、ウイング屋根部13aの一部を構成するフレームであり、該ウイング屋根部13aの長手方向の端部において幅方向に配されたフレームである。さらに、幅方向の各側に有する可動フレーム101は、その端部同士が幅方向において、互いに対向配置されている。
【0098】
上述した外側フラップ部65を、図7に示すように、アルミなどの押さえ板68で可動フレーム101に押し当てた状態で該押さえ板68と可動フレーム101とを螺子留めすることで、端部側防水構造62を備えた箱型荷台の防水構造61を、箱型荷台11にしっかりと装着することができる。
【0099】
箱型荷台の防水構造61は、端部側防水構造62を備えているため、下方へ折り曲げた中央側フラップ部64と外側フラップ部65とで箱型荷台11の長手方向の端部から上記境界部分14を通じて箱型荷台11の内側へ水が浸入することを確実に防止することができる。
【0100】
さらに、箱型荷台の防水構造61は、上述したように箱型荷台11に対する取付けが容易であるため、現場においても容易に着脱することができる。
【0101】
さらにまた、ウイング13を可動させたとき、可動フレーム101は、固定フレーム100に対して上方へ可動し、傾いた状態となる。このため、防水シート22の端部は、可動フレーム101に取り付けた外側フラップ部65が固定フレーム100に取り付けた中央側フラップ部64に対して傾いた形状となる。
【0102】
このように、外側フラップ部65と中央側フラップ部64とは、それぞれウイング13の可動に対応して独立に可動するため、防水シート22が過度に突張るなどして破損したり、ウイング13の可動を阻止することがない。
さらに、ウイング13を降下させたとき、或いは、上方へ可動させたときのいずれにおいても箱型荷台11の長手方向の端部の止水性能を優れた状態に保つことができる。
【0103】
(第三実施形態)
続いて、第三実施形態の箱型荷台の防水構造71について説明する。図13から図15に示すように、第三実施形態の箱型荷台の防水構造71は、上記防水シート22を補助する補助防水シート72を、上記境界部分14を跨いで覆う配置で上記防水シート22の下側に備えた構成である。
【0104】
詳しくは、補助防水シート72は、防水シート22と略同じ長さ、及び、幅を有する縦長帯形状で形成するとともに、防水シート22と同じ撥水性素材で形成し、その両面全体に、ポリ塩化ビニル(PVC)を塗布したPVC層25を形成している。
【0105】
補助防水シート72の幅方向の両側部分は、係着プレート33のプレート本体部34とウイング屋根部13a(ウイング上面)との間に、これらプレート本体部34とウイング屋根部13aとで上下両側から挟着されている。
【0106】
さらに、図15に示すように、プレート本体部34とウイング屋根部13aとの間において、上記補助防水シート72の両面には、止水層73を構成している。
【0107】
上記止水層73は、例えば、ブチルゴムやシリコンゴムといった止水機能を有する素材で形成した止水シート73Aを介在させることにより構成している。
【0108】
止水シート73Aは、補助防水シート72の長手方向全体に亘って固着可能に補助防水シート72と略同じ長さを有した縦長帯状に形成した4枚を備え、これら止水シート73Aは、補助防水シート72の幅方向の両側において、両面に固着している。
なお、補助防水シート72は、その幅方向の両端部に、防水シート22のように被係着部23(芯材26、及び、連結片27)を備えていない。
【0109】
補助防水シート72は、ウイング13を降下した状態において防水シート22に対して所定間隔だけ下側部分において中間支持部17の長手方向全長に亘って上記防水シート22と略平行になるよう対向配置している。
【0110】
補助防水シート72は、係着プレート33をウイング屋根部13aに対して取り付けるためのボルト35の締結力を利用して強固にプレート本体部34とウイング屋根部13aとで挟着されている。
具体的には、係着プレート33をウイング屋根部13aに取り付ける際に、係着プレート33を、補助防水シート72、及び、その両面に配した止水シート73Aとともにウイング屋根部13aに対して共締めすることにより、ウイング屋根部13aに対して係着プレート33、補助防水シート72、及び、止水シート73Aを一体に取り付けている。
なお、止水シート73Aは、補助防水シート72に対して予め、例えば、接着剤で接着する、或いは、熱溶着するなどして一体に固着してもよい。
【0111】
上述した構成の箱型荷台の防水構造71は、以下のような作用、効果を奏することができる。
図16に示すように、ウイング13を上方に回動したときは、中間支持部17の幅方向の両側に有するウイング屋根部13aが正面視Vの字型に傾斜した状態となる。この場合でも、補助防水シート72は、ウイング屋根部13a、及び、中間支持部17に沿うように断面視凹形状に柔軟に変形し、部分的に弛緩することなく境界部分14を覆った状態を保つことができる。
【0112】
一方、防水シート22については、ウイング13を上方に回動したときは、上述したように幅方向の中央部分が上方へ突出した断面視凸形状に部分的に弛緩することなく柔軟に変形し、防水シート22と補助防水シート72が干渉することなく、ウイング13をスムーズに回動させることができる。
【0113】
また、箱型荷台の防水構造71により上記境界部分14への水の浸入を防止する際に奏する具体的な作用効果について図17(a),(b)を用いて説明する。
なお、図17(a)は、図14の領域Xの拡大図であり、図17(b)は、係着プレート33を締結するボルト35付近の断面図であり、いずれも箱型荷台の防水構造71の外側から内側への水の浸入を防止する様子を説明するための作用説明図である。
図17(a),(b)中の太字の矢印D1〜D4は、水が上記境界部分14へ浸入しようと流れ込んでくる様子を模式的に示したものであり、太字の矢印D1〜D4のうち仮想線で示した矢印D2,D3,D4は、水が浸入したと過程した場合の水の浸入経路を示し、太字の矢印の先端部に付した「×」の表示は、それ以上、水が浸入しないよう止水していることを示すものとする。
【0114】
さらにまた、箱型荷台の防水構造71の内側とは、係着プレート33、防水シート22、及び、箱型荷台11の上面で囲まれた上記境界部分14の有する内側空間Aを示し(図17(a)参照)、箱型荷台の防水構造71の外側とは、上記内側空間Aに対して外側を示す。
【0115】
まず、図17(a)中の矢印D1に示すように、水が係着プレート33とウイング屋根部13aとの間を通じて箱型荷台の防水構造71の外側から内側へ水が浸入しようとした場合について説明する。
係着プレート33とウイング屋根部13aの間であって、補助防水シート72の両面には、止水層73を介在し、さらにボルト35により係着プレート33とウイング屋根部13aとの間に有する補助防水シート72と止水層73とを一体に締結しているため、該止水層73により、補助防水シート72と係着プレート33、並びに、補助防水シート72とウイング屋根部13aとの間の水密性を確保することができる。
【0116】
よって、係着プレート33とウイング屋根部13aの間の止水性能を格段に向上させることができ、係着プレート33とウイング屋根部13aの間を通じての水の浸入を確実に防ぐことができる。
【0117】
例えば、雨などによりウイング屋根部13aが濡れた状態において図16に示すように、ウイング13が傾斜した状態となるよう上方へ回動した場合、ウイング屋根部13aに付着した水滴は、該傾斜したウイング屋根部13aを伝って下方へ流れるため、多量の水がウイング屋根部13aの下方に有する係着プレート33とウイング屋根部13aとの間に流れ込もうとする(図17(a)中の矢印D1参照)。
【0118】
このような場合においても、係着プレート33とウイング屋根部13aとの間に介在する止水層73により、これら係着プレート33とウイング屋根部13aとの間への水の浸入を確実に防ぐことができる。
【0119】
また、図17(a)中の矢印D2に示すように、水が万が一にも、被係着部23と係着部24との間を通じて箱型荷台の防水構造71の外側から内側へ浸入した場合、該浸入した水は、さらにプレート本体部34を伝うなどして上記境界部分14の側へ流れ込むことも想定される。
【0120】
ところが、第三実施形態の箱型荷台の防水構造71では、補助防水シート72を上記境界部分14を跨いで覆う配置で上記防水シート22の下側に備えた構成であるため、該補助防水シート72により、防水シート22の下方へ浸入した水が、さらに上記境界部分14へ浸入することを防ぐことができる(図17(a)中の矢印D3参照)。
【0121】
さらにまた、図17(b)中の矢印D4に示すように、防水構造71の内側へ浸入した水が、ボルト35を挿入可能にプレート本体部34に形成したボルト孔37を通じて境界部分14へ浸入しようとしても、ボルト孔37は、止水層73により水密性が確保されているため、ボルト孔37を通じての水の浸入も防ぐことができる(図17(b)の一部拡大して示した図中の矢印D4参照)。
【0122】
従って、箱型荷台の防水構造71は、箱型荷台11の上面に長期に亘って設置され、雨風に曝されることもあり得るが、このような設置状況であっても、上述したように、いずれの経路(矢印D1〜D4)から水が浸入しようとしても確実に防止することができる。
【0123】
また、箱型荷台の防水構造71は、防水シート22、及び、補助防水シート72の交換においても、専門的な技術を有しない素人であっても、容易に交換することができ、例えば、シーリング材でシーリングしたりテープで補強したりする場合のように斑が生じることがないため、見栄えよく、確実な止水性能を得ることができる。
【0124】
例えば、防水シート22は、上述したように、係着部24と被係着部23との係脱により容易に、且つ、見栄えよく交換できる。
一方、補助防水シート72は、係着プレート33に対してのボルト35の着脱により容易に、且つ、見栄えよく着脱することができる。
【0125】
詳しくは、係着プレート33は、ボルト35により上記補助防水シート72とともに上記箱型荷台11の上部に対して共締めしている。
【0126】
すなわち、係着プレート33をウイング屋根部13aに取り付ける際に、補助防水シート72、及び、止水シート73Aを同時にセットすることができるため、取り付けの労力を抑えることができる。
【0127】
さらに、係着プレート33のプレート本体部34は、係着部24を備えた係着プレート33をウイング屋根部13aに取り付けるブラケットとしてだけでなく、補助防水シート72、及び、止水シート73Aをしっかりとウイング屋根部13aとで挟着するための挟着用部材としても兼用できる。
【0128】
よって、部品取り付け工程、部品点数を減らすことができるため、取り付けの労力、及び、コストを抑えることができる。
【0129】
また、箱型荷台の防水構造71は、以下のような端部側防水構造74で構成することができる。
補助防水シート72の長手方向の端部は、箱型荷台11に対して長手方向へ突出した余長部分79を形成している。なお、余長部分79は、端部側から長手方向にスリットを形成することで、幅方向の中央側の中央側フラップ部76と、幅方向の中央側フラップ部76の両側に有する外側フラップ部75とを形成している。
【0130】
なお、防水シート22の長手方向の端部は、上述した端部側防水構造62と同じ構成であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0131】
ここで、補助防水シート72は、防水シート22の下方に備えているため、補助防水シート72の余長部分79、中央側フラップ部76、外側フラップ部75をそれぞれ下方余長部分79、下方中央側フラップ部76、下方外側フラップ部75に設定する。
なお、下方余長部分79は、防水シート22の余長部分69のように、別体のシート状部材63を重合せずに形成している。
【0132】
上述したように、防水シート22、及び、補助防水シート72を係着プレート33により取り付けた状態において(図18参照)、中央側フラップ部64については、図19(a)に示すように、下方中央側フラップ部76を中央側フラップ部64とL型の固定フレーム100との間に介在させた状態で、固定フレーム100の断面視L型形状に沿って折り曲げる。
【0133】
そして、中央側フラップ部64の外側からL型ブラケット67を押し当て、螺子60で締結することにより固定フレーム100に固定する。
【0134】
一方、外側フラップ部65については、図18に示すように、長手方向の外側へ突出した状態から図19(b)に示すように、外側フラップ部65と可動フレーム101との間に下方外側フラップ部75を介在させた状態で、可動フレーム101の断面形状に沿って、下側へ略90度屈曲させる。
【0135】
さらに、該外側フラップ部65を構成する防水シート22とシート状部材63とで可動フレーム101の端部、及び、下方外側フラップ部75(補助防水シート72)を挟み込むようにして取り付けることができる。
最後に適宜、図7に示したように、アルミなどの押さえ板68を、外側フラップ部の防水シート22、及び、下方外側フラップ部75を可動フレーム101に押し当てた状態で該押さえ板68と可動フレーム101とを螺子留めすることで一体に構成することができる。
なお、端部側防水構造74は、図7に示したように、上述した防水シート22のみで構成した端部側防水構造62と同じ外観構成となる。
【0136】
箱型荷台の防水構造71は、上述した端部側防水構造74を備えることにより、箱型荷台11の長手方向の端部から上記境界部分14を通じて箱型荷台11内側へ水が浸入することを確実に防止することができるとともに、余長部分79が捲り上がったり弛緩したりせず、見栄えよく取り付けることができる。
【0137】
また、端部側防水構造は、上述した構成に限定せず、様々な構成で構成することができる。
例えば、図示しないが、端部側防水構造は、補助防水シート72の下方余長部分79に、防水シート22と同様にシート状部材63を固着した構成であってもよい。この構成の場合、図19(b)で示した外側フラップ部65と同様に、下方外側フラップ部76についても補助防水シート72とシート状部材63とで、可動フレーム101を挟み込むように取り付けてもよい。
【0138】
その他にも、例えば、図示しないが、防水シート22を取り付けた後、防水シート22の長手方向の端部側に、係着部24に係着されない余長部分を有するように形成し、該余長部分により係着部24の前端側開口部24b(図6参照)が覆われるように構成してもよい。防水シート22の余長部分は、係着部24の前端側開口部24bを覆った状態で、適宜、係着プレート33の前端部分に取付け可能に構成してもよい。
【0139】
上記構成により、ウイング車輌60が走行時に、係着部24の前端側開口部24bを通じて係着空間24Aに水が浸入することを防止することができる。
【0140】
(第四実施形態)
続いて、第四実施形態の箱型荷台の防水構造81について説明する。箱型荷台の防水構造81は、係着部24における上記係着空間24Aに対する上記開口溝36の開口方向が、いずれも係着部24を断面視したとき、図20に示すように、境界部分14の幅方向の外側に対して、すなわち、箱型荷台11の幅方向の外側に対して斜め45度上方向きになるよう形成している(図20中のθ参照)。
なお、図20は、図3に対応させて示した第四実施形態における箱型荷台の防水構造81の構成説明図である。
【0141】
このように、上記係着部24における上記開口溝36の開口方向を、上記箱型荷台11の幅方向の外側に対して斜め45°上方向きに形成した場合、防水シート22の幅方向の両端部を内側へ約180°反転させなくても、約135°程度軽く折り曲げるだけで、連結片27の端部を開口溝36に連通させた状態で被係着部23を係着部24に容易に差し込むことができる。
【0142】
なお、上記係着部24における係着空間24Aに対する上記開口溝36の開口方向を、上記箱型荷台11の幅方向の外側に対して斜め上方向きに形成する場合には、上述したように斜め45°上向きに限らず、所望の角度で構することができる。
【0143】
例えば、上記開口溝36の開口方向は、上記箱型荷台11の幅方向の外側に対して30°〜60°の範囲内で斜め上方を向いていることが好ましい。
【0144】
(第五実施形態)
続いて、第五実施形態の箱型荷台の防水構造91について説明する。第五実施形態の箱型荷台の防水構造91は、被係着部23を係着した係着部24の長手方向の前端側開口部24bを通じて係着空間24Aに水が浸入しないよう、該係着部24の前端部分に防水対策を施して構成している。
【0145】
詳しくは、図21に示すように、箱型荷台の防水構造91は、係着部44を、その長手方向の前端部分44aを箱型荷台11の前壁15から前方の斜め下方へ突出させたレール状で形成することができる。
なお、図21は、防水対策を施した係着部の構成を一部拡大断面により示した構成説明図である。
【0146】
上記構成により、係着部44の前端側開口部44bの開口方向を、雨水が降下してくる方向を回避した方向へ向けることができるため、特に、ウイング車輌60が走行時に、係着部44の前端側開口部44bから雨水が浸入することを防止することができる。なお、被係着部23における芯材26は、柔軟であるため、被係着部23を係着部44に差し込む際に、前端部分44aが上述したように傾斜した形状の係着部44に対しても、スムーズに差し込んで取り付けることができる。
【0147】
(第六実施形態)
続いて、第六実施形態の箱型荷台の防水構造101について説明する。第六実施形態の箱型荷台の防水構造101は、図22に示すように、箱型荷台11の上面部11Aにおいて、取り付けた防水シート22の幅方向の外側部分に、風の抵抗を緩和するための導風部材51を備えている。
なお、図22は、導風部材51を備えた箱型荷台の防水構造101を断面により示した構成説明図である。
【0148】
導風部材51は、箱型荷台11の上面部11Aの幅方向の外側に、傾斜面を備え、該傾斜面は、下側から上方へ進むに従って箱型荷台11の上面部11Aの幅方向の外側から内側へ傾斜した形状で形成している。
【0149】
上記構成により、特に、防水シート22の端部や係着部24の側方から吹き付ける風が衝突することにより発生する抵抗を緩和することができる。なお、導風部材51は、防水シート22の着脱の際に邪魔にならないよう、弾性変形可能な板状の弾性体で形成してもよく、或いは、箱型荷台11の上面部11Aに対して着脱可能に形成してもよい。
【0150】
また、係着部24は、上述したように、開口溝36を有する断面視円環形状に限らず、断面視矩形状、倒位の釣鐘形状などで構成してもよい。さらに、係着空間24Aにおいて係着部24と被係着部23との間には、長手方向の位置ズレを阻止すべく、係着部24と被係着部23との間に充填剤を充填したり、被係着部23に押し付けるべく係着空間へ突出させたボルトやネジなどのストッパ部材を備えた構成であってもよい。
【0151】
また、上述した実施形態と、この発明の構成との対応において、この実施形態の箱型荷台11の上面部11Aは、この発明の箱型荷台の上部に対応し、以下同様に、
ウイング13は、可動部に対応し、
「連結片27が芯材26に密着した状態で該芯材26の周方向全体を包み込んだ形態」、或いは、ストッパ部材は、位置ズレ阻止構造に対応し、
「上記箱型荷台11の幅方向の外側に対して」は、「上記境界部分の幅方向の外側に対して」に対応し、
係着プレート33は、係着用取付け部材に対応し、
プレート本体部34は、取付け部に対応し、
ボルト35は、締結手段に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0152】
10,61,71,81,91,101…箱型荷台の防水構造
11…箱型荷台
11A…箱型荷台の上面部
12…荷台本体部
13…ウイング
14…荷台本体部とウイングとの境界部分
22…防水シート
23…被係着部
24,44…係着部
24A…係着空間
26…芯材
27…連結片
33…係着プレート
34…プレート本体部
35…ボルト
36…開口溝
62,74…端部側防水構造
64…中央側フラップ部
65…外側フラップ部
73…止水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台本体部と、該荷台本体部に対して開閉自在に可動する可動部とで構成した箱型荷台の上部において、上記荷台本体部と上記可動部との境界部分からの上記箱型荷台内側への水の浸入を防止する箱型荷台の防水構造であって、
上記箱型荷台の外側に備え、上記境界部分を跨いで覆う防水シートと、
上記防水シートの端部に備えた被係着部を係着する上記境界部分の長手方向に配置した係着部とで構成し、
上記係着部を、
内部の係着空間と外側とを連通する開口溝を有する中空形状に形成し、
上記被係着部を、
上記係着部に係着される芯材と、該芯材を包み込んで上記防水シートの端部に連結する連結片とで構成した
箱型荷台の防水構造。
【請求項2】
上記連結片を、
上記防水シートの両面を挟み込んで該防水シートの端部に取り付けた
請求項1に記載の箱型荷台の防水構造。
【請求項3】
上記係着部における上記係着空間に対する上記開口溝の開口方向を、
上記境界部分の幅方向の外側に対して斜め上方向きに形成した
請求項1、又は、2に記載の箱型荷台の防水構造。
【請求項4】
上記係着部を、
上記連結片とともに上記芯材を上記係着空間に対して長手方向へ差し込んで上記被係着部に係着する差込み係着構造とし、
上記開口溝を、
上記連結片の挿通を許容するとともに、上記芯材の通過を許容しない溝幅で形成した
請求項1から3のいずれかに記載の箱型荷台の防水構造。
【請求項5】
上記連結片と上記芯材との対向部分を、
上記連結片と上記芯材との相互の長手方向への位置ズレを阻止する位置ズレ阻止構造で構成した
請求項1から4のいずれかに記載の箱型荷台の防水構造。
【請求項6】
上記防水シートの長手方向の少なくとも一方の端部に、端部防水構造を構成し、
上記端部防水構造には、幅方向の内側に形成した中央側フラップ部と、幅方向の外側に形成した外側フラップ部とを備え、
上記中央側フラップ部を、垂下した状態で上記荷台本体部に取り付け、
上記外側フラップ部を、上記可動部に取り付けた
請求項1から5のいずれかに記載の箱型荷台の防水構造。
【請求項7】
上記防水シートを補助する補助防水シートを、上記境界部分を跨いで覆う配置で上記防水シートの下側に備え、
上記防水シートの端部に備えた被係着部を係着する上記係着部と、上記箱型荷台の上部に取り付ける取付け部とで係着用取付け部材を構成し、
上記係着用取付け部材を、上記箱型荷台の上部における、上記境界部分の幅方向に対して両外側にそれぞれ備え、
上記補助防水シートを、
上記箱型荷台の上部と上記取付け部との間に介在させ、該箱型荷台の上部と該取付け部とで挟着した
請求項1から6のいずれかに記載の箱型荷台の防水構造。
【請求項8】
上記箱型荷台の上部と上記取付け部との間に、止水層を形成した
請求項7に記載の箱型荷台の防水構造。
【請求項9】
上記係着用取付け部材を、締結手段により上記補助防水シートとともに上記箱型荷台の上部に対して共締めした
請求項7、又は、8に記載の箱型荷台の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−58780(P2010−58780A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71210(P2009−71210)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000200666)泉株式会社 (24)
【出願人】(508237029)スギヤマ株式会社 (1)