説明

箱形ルーフ管の継手構造

【課題】横方向ルーフ列と縦方向ルーフ列との接合角部分に配置された角部単位箱形ルーフ管をスムーズに解体撤去することのできる箱形ルーフ管の継手構造を提供する。
【解決手段】角部箱形ルーフ管11aの継手部16における一対の外側係合片18a,18bと一対の内側係合片19a,19bとの係合が、フラット断面形状の係合片20による係合と、角部箱形ルーフ管11aの対角方向に沿った斜辺21aを有する3角形断面形状の係合片21による係合との組み合わせとなっている。また角部箱形ルーフ管11aと側方箱形ルーフ管11bとの継手部16と、角部箱形ルーフ管11aと下方箱形ルーフ管11cとの継手部16とで、3角形断面形状の係合片21による係合とフラット断面形状の係合片20による係合とが交互に配置されており、角部箱形ルーフ管11aの接合角部分から対角方向外側Yに向けた斜め上方への移動を干渉しないようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱形ルーフ管の継手構造に関し、特に、箱形ルーフ工法において、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管の解体撤去を容易にする、横方向ルーフ列と縦方向ルーフ列との接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管と、これの側方及び下方に隣接する側方箱形ルーフ管及び下方箱形ルーフ管との間の継手部の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道の軌条や道路の下方を横断するようにして、これらの鉄道や道路の使用状態を保持したまま函体構造物を地中に構築する工法として、箱形ルーフ工法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。箱形ルーフ工法は、設置される函体構造物の外周形状に沿って、好ましくは天井部及び両側の側壁部と対応する位置に、矩形断面を有する複数の箱形ルーフ管を、横方向及び縦方向に連設させて地中に先行設置しておき、横方向ルーフ列の上面や縦方向ルーフ列の側面に配置した縁切り板の端部を不動箇所に固定した状態で、既製の函体構造物の端面を縦方向ルーフ列及び横方向ルーフ列に当接させ、これらのルーフ列の内側の地盤を函体構造物の中空内部を介して撤去しつつ函体構造物を前進させることにより、函体構造物を箱形ルーフ管によるルーフ列と置換させて地中に設置するものである。
【0003】
このような箱形ルーフ工法では、地中に先行設置される箱形ルーフ管は、複数の単位箱形ルーフ管を軸方向に後方から順次継ぎ足しながら発進立坑から到達立坑に向けて掘進させるようになっている。また、地中に先行設置された箱形ルーフ管は、函体構造物の前進に伴って到達立坑に押し出され、押し出された箱形ルーフ管は、単位箱形ルーフ管毎に到達立坑を介して撤去されることになる。さらに、到達立坑には、H形鋼、溝形鋼等を組み付けて、ルーフ受架台が設けられており、特に天井部に設置された箱形ルーフ管は、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管をルーフ受架台で受けてから、解体撤去されるようになっている。
【0004】
そして、箱形ルーフ工法では、横方向又は縦方向に隣接する箱形ルーフ管の間の継手部は、隣接する一方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片と、他方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片とを係合することによって構成されており、このようなジャンクションと呼ばれる係合片による継手部に案内させて、隣接する一対の箱形ルーフ管が、これらの掘進作業中に横方向や縦方向への相対的な位置ずれを生じないようにする工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−32199号公報
【特許文献2】特公平7−35719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、隣接する箱形ルーフ管の間に、各側面部から突出する係合片による継手部が設けられていると、箱形ルーフ管が到達立坑に押し出されて単位箱形ルーフ管毎に撤去される際に、継手部の係合片が邪魔になって、単位箱形ルーフ管を撤去し難くなる場合がある。
【0007】
すなわち、到達立坑が、例えば掘進方向に沿った長さが単位箱形ルーフ管の2倍を超える相当の大きさで形成されていて、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を、到達立坑の内部において隣接する箱形ルーフ管をかわせるように一本毎にさらに前方に引き出すことができれば、係合片による継手部の係合を長手方向に解除させてから単位箱形ルーフ管を吊り上げることが可能である。しかしながら、例えば用地買収や周囲の交通量等との関係で、到達立坑を自由な大きさで形成することができず、掘進方向に沿った長さが例えば単位箱形ルーフ管の長さよりも長く単位箱形ルーフ管の2倍の長さよりも短い程度の大きさでしか到達立坑を形成できない場合には、単位箱形ルーフ管を一本毎にさらに前方に引き出して、係合片による継手部の係合を長手方向に解除することは困難である。
【0008】
このため、従来の箱形ルーフ工法では、例えば到達立坑が狭い場合には、ガス切断等によって継手部の係合片が邪魔にならないように除去してから、単位箱形ルーフ管をさらに前方に引き出すことなく吊り上げる方法が採用されていたが、例えば単位箱形ルーフ管を転用して用いる際に、除去した係合片を溶接等によって再び取り付け直す必要を生じて多くの手間を要することになる。
【0009】
これに対して、上記特許文献1や特許文献2に記載の発明では、係合片を単位箱形ルーフ管の外周面に着脱可能にボルト接合したり(特許文献1参照)、単位箱形ルーフ管の係合片をフラットに突出させて(特許文献2参照)、隣接する単位箱形ルーフ管の間の係合片による継手部の係合を、到達立坑が狭い場合でも解除できるようにする工夫がなされている。
【0010】
一方、箱形ルーフ工法では、特に、横方向ルーフ列と両側の縦方向ルーフ列との一対の接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管の角部単位箱形ルーフ管には、側方及び下方の、二つの側面部に継手部が設けられることから、これらの二つの側面部の係合状態を同時に解除する作業を行い難くなっている。また、横方向ルーフ列と両側の縦方向ルーフ列との一対の接合角部分のうちの一方の接合角部分に配置された角部単位箱形ルーフ管については、これと横方向及び縦方向に隣接する単位箱形ルーフ管との間の係合状態を同時に解除することによって当該角部単位箱形ルーフ管をスムーズに解体撤去できれば、残りの単位箱形ルーフ管については、一つの側面部のみに継手部が残された状態となることから、これらの一つの側面部の継手部の係合状態を単位箱形ルーフ管の僅かな移動で解除しつつ、当該残りの単位箱形ルーフ管を順次容易に解体撤去してゆくことが可能になるものと考えられる。
【0011】
本発明は、横方向ルーフ列と縦方向ルーフ列との接合角部分に配置された角部単位箱形ルーフ管をスムーズに解体撤去できるようにして、到達立坑が狭い場合でも、多くの手間を要することなく、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を順次容易に解体撤去してゆくことのできる箱形ルーフ管の継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、設置される函体構造物の外周形状に沿って、複数の矩形断面を有する箱形ルーフ管を、発進立坑から到達立坑に向けて掘進させることにより地中に並べて設置し、しかる後に、設置した複数の箱形ルーフ管と置き換えるようにして、発進立坑から到達立坑に向けて前記函体構造物を掘進させることにより地中に設置する箱形ルーフ工法において用いられ、前記到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管の解体撤去を容易にする、横方向ルーフ列と縦方向ルーフ列との接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管と、これの側方及び下方に隣接する側方箱形ルーフ管及び下方箱形ルーフ管との間の継手部の継手構造であって、前記継手部は、隣接する一方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた一対の外側係合片と、他方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた一対の内側係合片とを係合することによって構成されており、前記一対の外側係合片と前記一対の内側係合片との係合が、前記角部箱形ルーフ管と前記側方箱形ルーフ管との上下方向への相対的な位置ずれを拘束すると共に、前記角部箱形ルーフ管と前記下方箱形ルーフ管との左右方向への相対的な位置ずれを拘束するようになっており、且つ前記角部箱形ルーフ管の前記接合角部分から対角方向(略対角方向を含む)外側に向けた斜め上方への移動を干渉しないようになっている箱形ルーフ管の継手構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
そして、本発明の箱形ルーフ管の継手構造では、前記継手部における前記一対の外側係合片と前記一対の内側係合片との係合が、フラット断面形状の係合片による係合と、前記角部箱形ルーフ管の対角方向(略対角方向を含む)に沿った斜辺を有する3角形断面形状の係合片による係合とを組み合わせたものとなっており、且つ前記角部箱形ルーフ管と前記側方箱形ルーフ管との前記継手部と、前記角部箱形ルーフ管と前記下方箱形ルーフ管との前記継手部とで、前記3角形断面形状の係合片による係合と前記フラット断面形状の係合片による係合とが交互に配置されていることにより、前記角部箱形ルーフ管の前記接合角部分から対角方向外側に向けた斜め上方への移動を干渉しないようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の箱形ルーフ管の継手構造によれば、、横方向ルーフ列と縦方向ルーフ列との接合角部分に配置された角部単位箱形ルーフ管をスムーズに解体撤去できるようにして、到達立坑が狭い場合でも、多くの手間を要することなく、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を順次容易に解体撤去してゆくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造を用いた箱形ルーフ工法を説明する断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造を用いた箱形ルーフ工法において、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を解体撤去する状況を説明する略示断面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造の構成を説明する要部正面図である。
【図4】本発明の好ましい他の実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造の構成を説明する要部正面図である。
【図5】本発明の好ましい他の実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造の構成を説明する要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい一実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造10は、図1及び図2に示すように、例えば鉄道の軌条30の下方を横断して、例えば道路トンネル用の地下構造物を形成するための矩形断面を有する中空の函体構造物17を、鉄道の軌条30の下方の地中に先行設置された、箱形ルーフ管11によるルーフ列14,15と置き換えることにより設置して構築する箱形ルーフ工法において採用されたものである。
【0017】
ここで、本実施形態では、函体構造物17は、その先端部分に刃口部材31が取り付けられており、この刃口部材31を切羽面に押し付けつつ、ルーフ列14,15の内側の地盤32を掘削すると共に、箱形ルーフ管11を到達立坑13に押し出しながら、到達立坑13に向けて掘進されるようになっている。また、本実施形態では、到達立坑13に押し出された箱形ルーフ管11は、押出し方向Xの先端側の単位箱形ルーフ管12から順次解体撤去されるようになっていると共に、函体構造物17の天井部17aに沿って配置された単位箱形ルーフ管12は、到達立坑13に設けられたルーフ受架台33によって受けてから解体撤去されるようになっている。
【0018】
さらに、本実施形態では、到達立坑13は、用地買収や周囲の交通量等との関係で、押出し方向Xに沿った長さが、例えば3.0〜6.0m程度の長さの単位箱形ルーフ管12よりも長く、単位箱形ルーフ管12の2倍の長さよりも短い程度の大きさで形成されており、このような小さくて狭い到達立坑13においても、押し出された単位箱形ルーフ管12を、図3にも示すように、例えば横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との一方の接合角部分に配置された単位箱形ルーフ管12aから、順次スムーズに解体撤去して行くことができるようにするために、本発明の箱形ルーフ管の継手構造10が採用されたものである。
【0019】
そして、本実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10は、設置される函体構造物17の外周形状に沿って、複数の矩形断面を有する箱形ルーフ管11を、発進立坑(図示せず)から到達立坑13に向けて掘進させることにより地中に並べて設置し、しかる後に、設置した複数の箱形ルーフ管11と置き換えるようにして、発進立坑から到達立坑13に向けて函体構造物17を掘進させることにより地中に設置する箱形ルーフ工法において用いられ、到達立坑13に押し出された単位箱形ルーフ管12の解体撤去を容易にする、横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管11aと、これの側方及び下方に隣接する側方箱形ルーフ管11b及び下方箱形ルーフ管11cとの間の継手部16の構造である。継手部16は、隣接する一方の単位箱形ルーフ管12a,12cの側面部に突出して設けられた一対の外側係合片18a,18bと、他方の単位箱形ルーフ管12b,12aの側面部に突出して設けられた一対の内側係合片19a,19bとを係合することによって構成されており、一対の外側係合片18a,18bと一対の内側係合片19a,19bとの係合が、角部箱形ルーフ管11aと側方箱形ルーフ管11bとの上下方向への相対的な位置ずれを拘束すると共に、角部箱形ルーフ管11aと下方箱形ルーフ管11cとの左右方向への相対的な位置ずれを拘束するようになっており、且つ角部箱形ルーフ管11aの接合角部分から対角方向(略対角方向を含む)外側Yに向けた斜め上方への移動を干渉しないようになっている。
【0020】
また、本実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10では、継手部16における一対の外側係合片18a,18bと一対の内側係合片19a,19bとの係合が、フラット断面形状の係合片20による係合と、角部箱形ルーフ管11aの対角方向(略対角方向を含む)に沿った斜辺21aを有する3角形断面形状の係合片21による係合とを組み合わせたものとなっており、且つ角部箱形ルーフ管11aと側方箱形ルーフ管11bとの継手部16と、角部箱形ルーフ管11aと下方箱形ルーフ管11cとの継手部16とで、3角形断面形状の係合片21による係合とフラット断面形状の係合片20による係合とが交互に配置されていることにより、角部箱形ルーフ管11aの接合角部分から対角方向外側Yに向けた斜め上方への移動を干渉しないようになっている。
【0021】
なお、本実施形態では、一方の接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管11aを構成する角部単位箱形ルーフ管12aと、これの側方に隣接する側方箱形ルーフ管11bを構成する側方単位箱形ルーフ管12b及び下方に隣接する下方箱形ルーフ管11cを構成する下方単位箱形ルーフ管12cとの間の継手部16についてのみ、本発明の継手構造が採用されるようになっており、他の隣接する箱形ルーフ管11を構成する単位箱形ルーフ管12の間の継手部16’については、従来の継手部と同様の、例えば両側の側面部に一体接合されたフラット断面形状を備える係合片20による継手構造が採用されるようになっている(図3参照)。
【0022】
すなわち、本第1実施形態では、函体構造物17の天井部17aに沿って配置された複数の箱形ルーフ管11からなる横方向ルーフ列14と、函体構造物17の両側の側壁部に沿って配置された複数の箱形ルーフ管11からなる両側の一対の縦方向ルーフ列15とが、下方を向いたコの字断面形状を有するように、接合角部分の箱形ルーフ管11aを介して互いに連結されて横断面方向に連続一体化された状態となっており、これらの連続一体化されたルーフ列14,15の各箱形ルーフ管11が一体として掘進されるようになっている。このため、横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管11aの角部単位箱形ルーフ管12aは、側方及び下方の二つの側面部に継手部16が設けられることから、特に当該接合角部分の角部箱形ルーフ管11aの二つの側面部の係合状態を同時に解除する作業を行い難くなっている。
【0023】
また、横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との一方の接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管11aの角部単位箱形ルーフ管12aと、これと横方向及び縦方向に隣接する単位箱形ルーフ管12b,12cとの係合状態を解除して当該単位箱形ルーフ管12aを解体撤去できれば、残りの単位箱形ルーフ管12については、一つの側面部のみに残された継手部16’の係合状態を、単位箱形ルーフ管12の僅かな移動で解除しつつ順次容易に解体撤去してゆくことが可能になる。このため、本実施形態では、一方の接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管11aの単位箱形ルーフ管12aと、これの側方及び下方に隣接する箱形ルーフ管11b,11cを構成する単位箱形ルーフ管12b,12cとの間の継手部16についてのみ、本発明の継手構造10が採用されて、一方の接合角部分に配置された角部単位箱形ルーフ管12aの解体撤去を速やかに行えるようにすると共に、他の継手部16’については、従来の継手部と同様のフラット断面形状を備える係合片20による継手構造が採用されるようになっている。
【0024】
ここで、本実施形態では、箱形ルーフ管11を構成する単位箱形ルーフ管12として、例えばアール・アンド・シー工法(株式会社奥村組製)に使用する公知の矩形パイプを好ましく用いることができる。単位箱形ルーフ管12は、例えば縦横800mm程度の矩形(正方形)の断面形状を備えると共に、内部に作業員が入って作業を行うことが可能な中空部分を備えている。
【0025】
また、単位箱形ルーフ管12は、長手方向の両端部の四隅の部分に、ボルト締着孔25が形成された連結リブ26が取り付けられている(図3参照)。これらの連結リブ26を介して、連結ボルトにより複数の単位箱形ルーフ管12を軸方向に後方から順次継ぎ足しながら、発進立坑から到達立坑13に向けて箱形ルーフ管11を掘進させることができるようになっている。
【0026】
さらに、本実施形態では、例えば単位箱形ルーフ管12の側面部から突出して設けられた一対の外側係合片18a,18bと一対の内側係合片19a,19bとを、各継手部16,16’において、内側係合片19a,19bを外側係合片18a,18bの内側に各々配置して、横方向又は縦方向に隣接する箱形ルーフ管11の間で係合するようになっており、これによって、隣接する箱形ルーフ管11(単位箱形ルーフ管12)が、掘進作業中に横方向や縦方向への相対的な位置ずれを生じないようにすることができるようになっている。
【0027】
さらにまた、本実施形態では、横方向ルーフ列14を構成する箱形ルーフ管11の上面や、縦方向ルーフ列15を構成する箱形ルーフ管11の外側面に沿って、例えば上述のアール・アンド・シー工法に使用する公知のフリクションカットプレートからなる縁切り板27(図1参照)が設けられている。これらの縁切り板27は、地中に設置した箱形ルーフ管11によるルーフ列14,15の後方に函体構造物17を接続して押し出すことにより、ルーフ列14,15と置き換えて函体構造物17を地中に設置する際に、ルーフ列14,15を周囲の地盤から縁切りする機能と、函体構造物17のスライド移動を容易にするガイド面としての機能を発揮することになる。
【0028】
そして、本実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10は、上述のように、横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管11aと、これの側方及び下方に隣接する側方箱形ルーフ管11b及び下方箱形ルーフ管11cとの間の継手部16における、一対の外側係合片18a,18bと一対の内側係合片19a,19bとの係合が、図3に示すように、フラット断面形状の係合片20による係合と、角部箱形ルーフ管11aの対角方向に沿った斜辺21aを有する3角形断面形状の係合片21による係合とを組み合わせたものとなっており、且つ角部箱形ルーフ管11aと側方箱形ルーフ管11bとの継手部16と、角部箱形ルーフ管11aと下方箱形ルーフ管11cとの継手部16とで、3角形断面形状の係合片21による係合とフラット断面形状の係合片20による係合とが交互に配置されていることにより、角部箱形ルーフ管11aの接合角部分から対角方向外側Yに向けた斜め上方への移動を干渉しないようになっている。
【0029】
すなわち、本実施形態では、角部箱形ルーフ管11aを構成する角部単位箱形ルーフ管12aの側方箱形ルーフ管11bと対向する側方の側面部には、その上端部分に、外側係合片18aとして、フラット断面形状を備える係合片20が、例えば70mmの突出高さで突出して、角部単位箱形ルーフ管12aの略全長に亘って例えば溶着接合により取り付けられており、その下端部分に、外側係合片18bとして、好ましくは直角3角形の断面形状を有する係合片21が、例えば70mmの突出高さで突出して、斜辺21aを斜め上方に向けて角部単位箱形ルーフ管12aの略全長に亘って例えば溶着接合により取り付けられている。
【0030】
また、角部単位箱形ルーフ管12aの下方箱形ルーフ管11bと対向する下方の側面部には、その外側部分に、内側係合片19aとして、好ましくは直角3角形の断面形状を有する係合片21が、例えば70mmの突出高さで突出して、斜辺21aを斜め外方に向けて角部単位箱形ルーフ管12aの略全長に亘って例えば溶着接合により取り付けられており、その内側部分に、内側係合片19bとして、フラット断面形状を備える係合片20が、例えば70mmの突出高さで突出して、角部単位箱形ルーフ管12aの略全長に亘って例えば溶着接合により取り付けられている。
【0031】
一方、本実施形態では、側方箱形ルーフ管11bを構成する側方単位箱形ルーフ管12bの角部箱形ルーフ管11aと対向する側方の側面部には、その上端部分に、内側係合片19aとして、フラット断面形状を備える係合片20が、例えば70mmの突出高さで突出して、側方単位箱形ルーフ管12bの略全長に亘って例えば溶着接合により取り付けられており、その下端部分に、内側係合片19bとして、好ましくは直角3角形の断面形状を有する係合片21が、例えば70mmの突出高さで突出して、斜辺21aを斜め下方に向けて側方単位箱形ルーフ管12bの略全長に亘って例えば溶着接合により取り付けられている。
【0032】
また、本実施形態では、下方箱形ルーフ管11cを構成する下方単位箱形ルーフ管12cの角部箱形ルーフ管11aと対向する上方の側面部には、その外側部分に、外側係合片18aとして、好ましくは直角3角形の断面形状を有する係合片21が、例えば70mmの突出高さで突出して、斜辺21aを斜め内方に向けて下方単位箱形ルーフ管12cの略全長に亘って例えば溶着接合により取り付けられており、その内側部分に、外側係合片18bとして、フラット断面形状を備える係合片20が、例えば70mmの突出高さで突出して、下方単位箱形ルーフ管12cの略全長に亘って例えば溶着接合により取り付けられている。
【0033】
上述の構成を有する本実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10によれば、角部箱形ルーフ管11aを構成する角部単位箱形ルーフ管12aと側方箱形ルーフ管11bを構成する側方単位箱形ルーフ管12bとの継手部16が、角部単位箱形ルーフ管12aの側方箱形ルーフ管11bと対向する側面部に突出して設けられた一対の外側係合片18a,18bと、側方単位箱形ルーフ管12bの角部箱形ルーフ管11aと対向する側面部に突出して設けられた一対の内側係合片19a,19bとを係合することによって形成されているので、掘進時における角部箱形ルーフ管11aと側方箱形ルーフ管11bとの上下方向への相対的な位置ずれを効果的に拘束することが可能になる。
【0034】
また、角部箱形ルーフ管11aを構成する角部単位箱形ルーフ管12aと下方箱形ルーフ管11cを構成する下方単位箱形ルーフ管12cとの継手部16が、角部単位箱形ルーフ管12aの下方箱形ルーフ管11cと対向する側面部に突出して設けられた一対の内側係合片19a,19bと、下方単位箱形ルーフ管12cの角部箱形ルーフ管11aと対向する側面部に突出して設けられた一対の外側係合片18a,18bとを係合することによって形成されているので、掘進時における角部箱形ルーフ管11aと下方箱形ルーフ管11cとの左右方向への相対的な位置ずれを効果的に拘束することが可能になる。
【0035】
そして、本実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10によれば、到達立坑13に押し出された、箱形ルーフ管11の押出し方向Xの先端側の単位箱形ルーフ管12を解体撤去する際に、横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との接合角部分に配置された角部単位箱形ルーフ管12aをスムーズに解体撤去できるようにして、到達立坑13が狭い場合でも、多くの手間を要することなく、到達立坑13に押し出された単位箱形ルーフ管12を順次容易に解体撤去してゆくことが可能になる。
【0036】
すなわち、本実施形態によれば、角部単位箱形ルーフ管12aとこれに隣接する側方単位箱形ルーフ管12b及び下方単位箱形ルーフ管12cとの継手部16が、一対の外側係合片18a,18bと一対の内側係合片19a,19bとを係合することにより形成されており、これらの継手部16が、角部箱形ルーフ管11aの対角方向に沿った斜辺21aを有する3角形断面形状の係合片21による係合を含んだものとなっているので、角部単位箱形ルーフ管12aを接合角部分から対角方向外側Yに向けて斜め上方へ移動させることで、角部単位箱形ルーフ管12aの二つの側面部における継手部16の係合状態を同時に容易に解除することが可能になり、これによって横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との接合角部分に配置された角部単位箱形ルーフ管12aを、スムーズに解体撤去することが可能になる。また角部単位箱形ルーフ管12aをスムーズに解体撤去することで、残りの単位箱形ルーフ管12b,12c,12については、一つの側面部のみに残された継手部16’の係合状態を、単位箱形ルーフ管12の僅かな移動で解除しつつ順次容易に解体撤去してゆくことが可能になる。
【0037】
図4は、本発明の他の実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造10’を示すものである。図4に示す他の実施形態によれば、上記実施形態と略同様の構成を備える他、角部箱形ルーフ管11aを構成する角部単位箱形ルーフ管12aの側方箱形ルーフ管11bと対向する側方の側面部には、その上端部分に、内側係合片19aとして、好ましくは直角3角形の断面形状を有する係合片21が、斜辺21aを斜め上方に向けて取り付けられており、その下端部分に、内側係合片19bとして、フラット断面形状を備える係合片20が取り付けられている。また、角部単位箱形ルーフ管12aの下方箱形ルーフ管11bと対向する下方の側面部には、その外側部分に、外側係合片18aとして、フラット断面形状を備える係合片20が取り付けられており、その内側部分に、外側係合片18bとして、好ましくは直角3角形の断面形状を有する係合片21が斜辺21aを斜め外方に向けて取り付けられている。
【0038】
一方、側方箱形ルーフ管11bを構成する側方単位箱形ルーフ管12bの角部箱形ルーフ管11aと対向する側方の側面部には、その上端部分に、外側係合片18aとして、好ましくは直角3角形の断面形状を有する係合片21が斜辺21aを斜め下方に向けて取り付けられており、、その下端部分に、外側係合片18aとして、フラット断面形状を備える係合片20が取り付けられている。また、下方箱形ルーフ管11cを構成する下方単位箱形ルーフ管12cの角部箱形ルーフ管11aと対向する上方の側面部には、その外側部分に、内側係合片19aとして、フラット断面形状を備える係合片20が取り付けられており、その内側部分に、内側係合片19bとして、好ましくは直角3角形の断面形状を有する係合片21が斜辺21aを斜め外方に向けて取り付けられている。
【0039】
そして、図4に示す他の実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10’によっても、角部箱形ルーフ管11aを接合角部分から対角方向外側Yに向けて斜め上方へ移動させることで、二つの側面部における継手部16の係合状態を同時にスムーズに解除することが可能になり、上記実施形態の継手構造10と同様の作用効果を奏することになる。
【0040】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、角部単位箱形ルーフ管とこれに隣接する側方単位箱形ルーフ管及び下方単位箱形ルーフ管との継手部は、フラット断面形状の係合片による係合と、角部箱形ルーフ管の対角方向に沿った斜辺を有する3角形断面形状の係合片による係合とを組み合わせたものである必要は必ずしも無く、例えば図5に示すように、全ての係合を、角部箱形ルーフ管の対角方向に沿った斜辺を有する3角形断面形状の係合片によるもとすることができる他、角部箱形ルーフ管と側方箱形ルーフ管との上下方向への相対的な位置ずれを拘束すると共に、角部箱形ルーフ管と下方箱形ルーフ管との左右方向への相対的な位置ずれを拘束し、且つ角部箱形ルーフ管の接合角部分から対角方向外側に向けた斜め上方への移動を干渉しないような構造の、その他の種々の継手構造を採用することもできる。また、角部箱形ルーフ管の対角方向に沿った斜辺を有する係合片は、直角3角形の断面形状を有している必要は必ずしも無く、角部箱形ルーフ管の対角方向に沿った斜辺を有する、その他の種々の断面形状(3角形以外の断面形状を含む)のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10,10’ 箱形ルーフ管の継手構造
11 箱形ルーフ管
11a 角部箱形ルーフ管
11b 側方箱形ルーフ管
11c 下方箱形ルーフ管
12 単位箱形ルーフ管
12a 角部単位箱形ルーフ管
12b 側方単位箱形ルーフ管
12c 下方単位箱形ルーフ管
13 到達立坑
14 横方向ルーフ列
15 縦方向ルーフ列
16 継手部
17 函体構造物
18a,18b 外側係合片
19a,19b 内側係合片
20 フラット断面形状の係合片
21 3角形断面形状の係合片
21a 角部箱形ルーフ管の対角方向に沿った斜辺
22 ボルト締着孔
23 ボルト部材
X 押出し方向
Y 対角方向外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置される函体構造物の外周形状に沿って、複数の矩形断面を有する箱形ルーフ管を、発進立坑から到達立坑に向けて掘進させることにより地中に並べて設置し、しかる後に、設置した複数の箱形ルーフ管と置き換えるようにして、発進立坑から到達立坑に向けて前記函体構造物を掘進させることにより地中に設置する箱形ルーフ工法において用いられ、
前記到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管の解体撤去を容易にする、横方向ルーフ列と縦方向ルーフ列との接合角部分に配置された角部箱形ルーフ管と、これの側方及び下方に隣接する側方箱形ルーフ管及び下方箱形ルーフ管との間の継手部の継手構造であって、
前記継手部は、隣接する一方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた一対の外側係合片と、他方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた一対の内側係合片とを係合することによって構成されており、
前記一対の外側係合片と前記一対の内側係合片との係合が、前記角部箱形ルーフ管と前記側方箱形ルーフ管との上下方向への相対的な位置ずれを拘束すると共に、前記角部箱形ルーフ管と前記下方箱形ルーフ管との左右方向への相対的な位置ずれを拘束するようになっており、且つ前記角部箱形ルーフ管の前記接合角部分から対角方向外側に向けた斜め上方への移動を干渉しないようになっている箱形ルーフ管の継手構造。
【請求項2】
前記継手部における前記一対の外側係合片と前記一対の内側係合片との係合が、フラット断面形状の係合片による係合と、前記角部箱形ルーフ管の対角方向に沿った斜辺を有する3角形断面形状の係合片による係合とを組み合わせたものとなっており、且つ前記角部箱形ルーフ管と前記側方箱形ルーフ管との前記継手部と、前記角部箱形ルーフ管と前記下方箱形ルーフ管との前記継手部とで、前記3角形断面形状の係合片による係合と前記フラット断面形状の係合片による係合とが交互に配置されていることにより、前記角部箱形ルーフ管の前記接合角部分から対角方向外側に向けた斜め上方への移動を干渉しないようになっている請求項1に記載の箱形ルーフ管の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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