説明

箱形ルーフ管の解体撤去方法

【課題】横方向ルーフ列の単位箱形ルーフ管をスムーズに撤去できるようにして、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を容易に解体撤去できるようにする解体撤去方法を提供する。
【解決手段】複数の箱形ルーフ管11は、函体構造物の天井部と対応して配置される横方向ルーフ列14と、函体構造物の側壁部に対応して配置される一対の縦方向ルーフ列15とを形成するようになっており、横方向ルーフ列14と両側の縦方向ルーフ列15との接合角部分に配置される一対の角部箱形ルーフ管11aと、これの下方に隣接する下方箱形ルーフ管11bとの間の継手部16が、上下方向に離別可能な継手構造10となっており、到達立坑13に押し出された単位箱形ルーフ管12を撤去する際に、両側の角部単位箱形ルーフ管12aと共に横方向ルーフ列14の単位箱形ルーフ管12を一体として上方に吊り上げる工程を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱形ルーフ管の解体撤去方法に関し、特に、箱形ルーフ工法において、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を到達立坑から撤去するための箱形ルーフ管の解体撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道の軌条や道路の下方を横断するようにして、これらの鉄道や道路の使用状態を保持したまま函体構造物を地中に構築する工法として、箱形ルーフ工法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。箱形ルーフ工法は、設置される函体構造物の外周形状に沿って、好ましくは天井部及び両側の側壁部と対応する位置に、矩形断面を有する複数の箱形ルーフ管を、横方向及び縦方向に連設させて横方向ルーフ列及び縦方向ルーフ列として地中に先行設置しておき、横方向ルーフ列の上面や縦方向ルーフ列の側面に配置した縁切り板の端部を不動箇所に固定した状態で、既製の函体構造物の端面を縦方向ルーフ列及び横方向ルーフ列に当接させ、これらのルーフ列の内側の地盤を函体構造物の中空内部を介して撤去しつつ函体構造物を前進させることにより、函体構造物を箱形ルーフ管によるルーフ列と置換させて地中に設置するものである。
【0003】
このような箱形ルーフ工法では、地中に先行設置される箱形ルーフ管は、複数の単位箱形ルーフ管を軸方向に後方から順次継ぎ足しながら発進立坑から到達立坑に向けて掘進させるようになっている。また、地中に先行設置された箱形ルーフ管は、函体構造物の前進に伴って到達立坑に押し出され、押し出された箱形ルーフ管は、単位箱形ルーフ管毎に到達立坑を介して撤去されることになる。さらに、到達立坑には、H形鋼、溝形鋼等を組み付けて、ルーフ受架台が設けられており、特に天井部に設置された横方向ルーフ列の箱形ルーフ管は、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管をルーフ受架台で受けてから、解体撤去されるようになっている。
【0004】
そして、箱形ルーフ工法では、横方向又は縦方向に隣接する箱形ルーフ管の間の継手部は、隣接する一方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片と、他方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片とを係合することによって構成されており、このようなジャンクションと呼ばれる係合片による継手部に案内させて、隣接する一対の箱形ルーフ管が、これらの掘進作業中に横方向や縦方向への相対的な位置ずれを生じないようにする工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−32199号公報
【特許文献2】特公平7−35719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、隣接する箱形ルーフ管の間に、各側面部から突出する係合片による継手部が設けられていると、特に横方向ルーフ列を構成する箱形ルーフ管については、箱形ルーフ管が到達立坑に押し出されて単位箱形ルーフ管毎に撤去される際に、横方向に隣接する箱形ルーフ管の継手部の係合片が邪魔になって、単位箱形ルーフ管を撤去し難くなる場合がある。
【0007】
すなわち、到達立坑が、例えば掘進方向に沿った長さが単位箱形ルーフ管の2倍を超える相当の大きさで形成されていて、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を、到達立坑の内部において横方向に隣接する箱形ルーフ管をかわせるように一本毎にさらに前方に引き出すことができれば、係合片による継手部の係合を長手方向に解除させてから各単位箱形ルーフ管を吊り上げることが可能である。しかしながら、例えば用地買収や周囲の交通量等との関係で、到達立坑を自由な大きさで形成することができず、掘進方向に沿った長さが例えば単位箱形ルーフ管の長さよりも長く単位箱形ルーフ管の2倍の長さよりも短い程度の大きさでしか到達立坑を形成できない場合には、横方向ルーフ列の箱形ルーフ管を構成する単位箱形ルーフ管を一本毎にさらに前方に引き出して、係合片による継手部の係合を長手方向に解除することは困難である。
【0008】
このため、従来の箱形ルーフ工法では、例えば到達立坑が狭い場合には、ガス切断等によって継手部の係合片が邪魔にならないように除去してから、横方向ルーフ列の単位箱形ルーフ管をさらに前方に引き出すことなく吊り上げる方法が採用されていたが、係合片を除去する作業や、単位箱形ルーフ管を転用して用いる際に除去した係合片を溶接等によって再び取り付け直す作業に多くの手間を要することになる。
【0009】
本発明は、横方向ルーフ列の箱形ルーフ管を構成する単位箱形ルーフ管を、スムーズに到達立坑から撤去できるようにして、到達立坑が狭い場合でも、多くの手間を要することなく、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を容易に解体撤去してゆくことのできる箱形ルーフ管の解体撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、設置される函体構造物の外周形状に沿って、複数の矩形断面を有する箱形ルーフ管を、発進立坑から到達立坑に向けて掘進させることにより地中に並べて設置し、しかる後に、設置した複数の箱形ルーフ管と置き換えるようにして、発進立坑から到達立坑に向けて前記函体構造物を掘進させることにより地中に設置する箱形ルーフ工法において、前記到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を前記到達立坑から撤去するための箱形ルーフ管の解体撤去方法であって、前記複数の箱形ルーフ管は、前記函体構造物の天井部と対応する位置に配置される横方向ルーフ列と、前記函体構造物の両側の側壁部と対応する位置に配置される一対の縦方向ルーフ列とを形成するようになっており、前記横方向ルーフ列と両側の前記縦方向ルーフ列との接合角部分に配置される一対の角部箱形ルーフ管と、これの下方に隣接する下方箱形ルーフ管との間の継手部が、上下方向に離別可能な継手構造となっており、前記到達立坑に順次押し出された押出し方向先端の前記単位箱形ルーフ管を撤去する際に、両側の角部単位箱形ルーフ管と共に前記横方向ルーフ列を形成する複数の前記単位箱形ルーフ管を一体として上方に吊り上げる工程を含んでいる箱形ルーフ管の解体撤去方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明の箱形ルーフ管の解体撤去方法は、前記上下方向に離別可能な継手構造が、前記角部箱形ルーフ管の下部側面部及び前記下方箱形ルーフ管の上部側面部から垂直に突出して固着された、フラット断面形状の係合片を係合することによって構成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の箱形ルーフ管の解体撤去方法は、前記上下方向に離別可能な継手構造が、前記角部箱形ルーフ管又は前記下方箱形ルーフ管の内側から装着されるボルト部材を介してこれらの側面部に着脱可能に締着された係合片を用いて構成されており、両側の角部単位箱形ルーフ管と共に前記横方向ルーフ列を形成する複数の前記単位箱形ルーフ管を一体として上方に吊り上げるのに先立って、前記係合片の締着を前記角部箱形ルーフ管又は前記下方箱形ルーフ管の内側から解除するようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の箱形ルーフ管の解体撤去方法によれば、横方向ルーフ列の箱形ルーフ管を構成する単位箱形ルーフ管をスムーズに到達立坑から撤去できるようにして、到達立坑が狭い場合でも、多くの手間を要することなく、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を容易に解体撤去してゆくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る箱形ルーフ管の解体撤去方法が採用される箱形ルーフ工法を説明する断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る箱形ルーフ管の解体撤去方法を説明する略示斜視図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る箱形ルーフ管の解体撤去方法において用いられる、角部箱形ルーフ管と下方箱形ルーフ管との間の継手構造を説明する要部正面図である。
【図4】(a)は、本発明の好ましい一実施形態に係る箱形ルーフ管の解体撤去方法において用いられる、角部箱形ルーフ管と下方箱形ルーフ管との間の他の継手構造を説明する要部略示断面図、(b)は、(a)のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態に係る箱形ルーフ管の解体撤去方法は、図1及び図2に示すように、例えば鉄道の軌条30の下方を横断して、例えば道路トンネル用の地下構造物を形成するための矩形断面を有する中空の函体構造物17を、鉄道の軌条30の下方の地中に先行設置された、複数の箱形ルーフ管11によるルーフ列14,15と置き換えることにより設置して構築する箱形ルーフ工法において採用されたものである。
【0016】
ここで、本実施形態では、函体構造物17は、その先端部分に刃口部材31が取り付けられており、この刃口部材31を切羽面に押し付けつつ、横方向ルーフ列14及び縦方向ルーフ列15によって囲まれる内側の地盤32を掘削すると共に、箱形ルーフ管11を到達立坑13に押し出しながら、到達立坑13に向けて掘進されるようになっている。また、本実施形態では、到達立坑13に押し出された箱形ルーフ管11は、押出し方向Xの先端の単位箱形ルーフ管12から順次解体撤去されるようになっていると共に、函体構造物17の天井部17aに沿って配置された横方向ルーフ列14の単位箱形ルーフ管12は、到達立坑13に設けられたルーフ受架台33によって受けてから解体撤去されるようになっている。
【0017】
さらに、本実施形態では、到達立坑13は、用地買収や周囲の交通量等との関係で、押出し方向Xに沿った長さが、例えば3.0〜6.0m程度の長さの単位箱形ルーフ管12よりも長く、単位箱形ルーフ管12の2倍の長さよりも短い程度の大きさで形成されており、このような小さくて狭い到達立坑13においても、押し出された単位箱形ルーフ管12を、多くの手間を要することなく、効率良く容易に解体撤去して行くことができるようにするために、本発明の箱形ルーフ管の解体撤去方法が採用されるようになっている。
【0018】
そして、本実施形態の箱形ルーフ管の解体撤去方法は、設置される函体構造物17の外周形状に沿って、複数の矩形断面を有する箱形ルーフ管11を、発進立坑(図示せず)から到達立坑13に向けて掘進させることにより地中に並べて設置し、しかる後に、設置した複数の箱形ルーフ管11と置き換えるようにして、発進立坑から到達立坑13に向けて函体構造物17を掘進させることにより地中に設置する箱形ルーフ工法において、到達立坑13に押し出された単位箱形ルーフ管12を到達立坑13から撤去するための解体撤去方法であって、複数の箱形ルーフ管11は、函体構造物17の天井部17aと対応する位置に配置される横方向ルーフ列14と、函体構造物17の両側の側壁部(図示せず)と対応する位置に配置される一対の縦方向ルーフ列15とを形成するようになっており、横方向ルーフ列14と両側の縦方向ルーフ列15との接合角部分に配置される一対の角部箱形ルーフ管11aと、これの下方に隣接する下方箱形ルーフ管11bとの間の継手部16が、上下方向に離別可能な継手構造10となっており、到達立坑13に順次押し出された押出し方向Xの先端の単位箱形ルーフ管12を撤去する際に、両側の角部単位箱形ルーフ管12aと共に横方向ルーフ列14を形成する複数の単位箱形ルーフ管12を一体として上方に吊り上げる工程を含んでいる。
【0019】
また、本実施形態の箱形ルーフ管の解体撤去方法では、上下方向に離別可能な継手構造10は、図3に拡大して示すように、角部箱形ルーフ管11aの下部側面部及び下方箱形ルーフ管11bの上部側面部から垂直に突出して固着された、フラット断面形状の一対の内側係合片18,18及びフラット断面形状の一対の外側係合片19,19を係合することによって構成されている。
【0020】
本実施形態では、箱形ルーフ管11を構成する単位箱形ルーフ管12として、例えばアール・アンド・シー工法(株式会社奥村組製)に使用する公知の矩形パイプが好ましく用いられている。単位箱形ルーフ管12は、例えば縦横800mm程度の矩形(正方形)の断面形状を備えると共に、内部に作業員が入って作業を行うことが可能な中空部分を備えている。
【0021】
また、単位箱形ルーフ管12は、長手方向の両端部の四隅の部分に、ボルト締着孔25が形成された連結リブ26が取り付けられている。これらの連結リブ26を介して、連結ボルトにより複数の単位箱形ルーフ管12を軸方向に後方から順次継ぎ足しながら、発進立坑から到達立坑13に向けて箱形ルーフ管11を掘進させることができるようになっている。
【0022】
さらに、本実施形態では、横方向ルーフ列14を構成する箱形ルーフ管11の上面や、縦方向ルーフ列15を構成する箱形ルーフ管11の外側面に沿って、例えば上述のアール・アンド・シー工法に使用する公知のフリクションカットプレートからなる縁切り板27(図1参照)が設けられている。これらの縁切り板27は、地中に設置した複数の箱形ルーフ管11によるルーフ列14,15の後方に函体構造物17を接続して押し出すことにより、ルーフ列14,15と置き換えて函体構造物17を地中に設置する際に、ルーフ列14,15を周囲の地盤から縁切りする機能と、函体構造物17のスライド移動を容易にするガイド面としての機能を発揮することになる。
【0023】
そして、本実施形態では、横方向ルーフ列14と両側の縦方向ルーフ列15との接合角部分に配置される一対の角部箱形ルーフ管11aと、これの下方に隣接する下方箱形ルーフ管11bとの間の継手部16の継手構造10が、上述のように、角部箱形ルーフ管11aの下部側面部及び下方箱形ルーフ管11bの上部側面部に固着して設けられた、フラット断面形状の一対の内側係合片18,18とフラット断面形状の一対の外側係合片19,19とを係合することによって構成されいて、角部単位箱形ルーフ管12aと下方単位箱形ルーフ管12bとを上下方向に離別可能な構造となっている。
【0024】
すなわち、本実施形態では、角部箱形ルーフ管11aを構成する角部単位箱形ルーフ管12aの下方箱形ルーフ管11bと対向する下部側面部には、その外側部分及び内側部分に、内側係合片18,18として、フラット断面形状を備える帯板形状の係合片が、例えば70mmの突出高さで下部側面部に対して垂直下方に突出して、角部単位箱形ルーフ管12aの略全長に亘って例えば溶着接合により各々取り付けられている。
【0025】
また、下方箱形ルーフ管11bを構成する下方単位箱形ルーフ管12bの角部箱形ルーフ管11aと対向する上部側面部には、その外側部分及び内側部分に、外側係合片19,19として、フラット断面形状を備える帯板形状の係合片が、例えば70mmの突出高さで上部側面部に対して垂直上方に突出して、下方単位箱形ルーフ管11bの略全長に亘って例えば溶着接合により各々取り付けられている。
【0026】
このような一対の内側係合片18,18と一対の外側係合片19,19とによる角部単位箱形ルーフ管12aと下方単位箱形ルーフ管12bとの間の継手部16の継手構造10によれば、一対の外側係合片19,19の内側に一対の内側係合片18,18が係合されていることにより、掘進作業中に、これら単位箱形ルーフ管12a,12bの横方向の相対的な位置ずれを効果的に回避することができるようになっていると共に、外側係合片19,19と内側係合片18,18とが、各側面部から垂直に突出するフラット断面形状を備えているので、角部単位箱形ルーフ管12aと下方単位箱形ルーフ管12bとを上下方向に容易に離別することができるようになっている。
【0027】
また、本実施形態では、角部箱形ルーフ管11aと下方箱形ルーフ管11bとの間の継手部16の他、横方向又は縦方向に隣接するその他の箱形ルーフ管11(単位箱形ルーフ管12)の間の各継手部16’においても、単位箱形ルーフ管12の側面部から各々垂直に突出して固着された、フラット断面形状の一対の内側係合片18,18及びフラット断面形状の一対の外側係合片19,19を、内側係合片18,18を外側係合片19,19の内側に各々配置して係合することで継手構造が形成されるようになっている。これによって、横方向ルーフ列14及び両側の縦方向ルーフ列15を構成する箱形ルーフ管11(単位箱形ルーフ管12)が一体となって、各隣接する箱形ルーフ管11(単位箱形ルーフ管12)が、掘進作業中に横方向や縦方向への相対的な位置ずれを生じないようにすることができるようになっている。
【0028】
そして、本実施形態では、到達立坑13に順次押し出された押出し方向Xの先端の単位箱形ルーフ管12を撤去する際に、両側の角部単位箱形ルーフ管12aと共に横方向ルーフ列14を形成する複数の単位箱形ルーフ管12を、一体として上方に吊り上げる工程を含んでいる。
【0029】
すなわち、横方向ルーフ列14を形成する複数の単位箱形ルーフ管12を一体として上方に吊り上げる工程では、図2に示すように、好ましくは、到達立坑13に押し出された、押出し方向Xの先端の複数の単位箱形ルーフ管12に対して、両側の角部箱形ルーフ管11aを含む横方向ルーフ列14を構成する複数の単位箱形ルーフ管12,12aを連結するようにして、帯板状プレート部材からなる吊上げ金具20を取り付け、この吊上げ金具20を介して、横方向ルーフ列14の複数の単位箱形ルーフ管12,12aを、縦方向ルーフ列15と離別させて一体として同時に吊り上げるようになっている。
【0030】
ここで、本実施形態では、吊上げ金具20は、例えば金属製の帯板状プレート部材の両端部分を垂直下方に折り曲げることにより、水平添設部20aと両側の垂直添設部20bとからなるコの字断面形状を有するように形成されており、両側の一対の垂直添設部20bの間の間隔が、横方向ルーフ列14の幅に相当する間隔となるように垂直添設部20bが設けられている。
【0031】
また、水平添設部20a及び垂直添設部20bには、適宜の箇所にボルト締着孔が開口形成されている。これらのボルト締着孔を、好ましくは、横方向ルーフ列14を構成する単位箱形ルーフ管12の外周側面部に形成された箱形ルーフ側ボルト締着孔に合致させて、ボルト部材21を締着することにより、横方向ルーフ列14を構成する各単位箱形ルーフ管12,12aを各々吊上げ金具20に接合し、これによって、複数の単位箱形ルーフ管12,12aを、当該吊上げ金具20を介して一体として同時に上方に吊り上げることができるようになっている。なお、本実施形態では、箱形ルーフ側ボルト締着孔として、好ましくは単位箱形ルーフ管12,12aの外周側面部に形成されているグラウト注入孔を、そのまま利用して用いることができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、吊上げ金具20の両端部分には、吊上げワイヤ22の下端部が連結されている。これらの吊上げワイヤ22及び吊上げ金具20を介して、クローラクレーンやレッカー等の吊上げ重機により、到達立坑13に押し出された横方向ルーフ列14の複数の単位箱形ルーフ管12,12aを、上下方向に離別可能な継手部16の継手構造10によって、角部単位箱形ルーフ管12aを縦方向ルーフ列15の下方単位箱形ルーフ管12bと離別させつつ、一体としてスムーズに吊り上げて、到達立坑13から容易に撤去することがきるようになっている。
【0033】
また、横方向ルーフ列14の複数の単位箱形ルーフ管12,12aが一体として撤去された後は、残りの縦方向ルーフ列15を構成する単位箱形ルーフ管12b,12については、一つの側面部のみに残された継手部16の係合状態をスムーズに解除しながら、一体ずつ上方に吊上げてゆくことにより、順次容易に解体撤去してゆくことが可能になる。
【0034】
すなわち、本実施形態の箱形ルーフ管の解体撤去方法によれば、横方向ルーフ列14の箱形ルーフ管11,11aを構成する単位箱形ルーフ管12,12aを、継手部16の係合片18,19を除去することなくスムーズに到達立坑13から撤去できるようにして、到達立坑13が狭い場合でも、多くの手間を要することなく、到達立坑13に押し出された単位箱形ルーフ管12を容易に解体撤去してゆくことが可能になる。
【0035】
図4(a),(b)は、本実施形態の箱形ルーフ管の解体撤去方法において用いられる、角部箱形ルーフ管11a(角部単位箱形ルーフ管12a)と下方箱形ルーフ管11b(下方単位箱形ルーフ管12b)との間の継手部16における、上下方向に離別可能な他の継手構造10’を例示するものである。
【0036】
すなわち、図4(a),(b)に示す継手構造10’は、角部箱形ルーフ管11aの内側から装着されるボルト部材23を介して角部箱形ルーフ管11aの下部側面部に着脱可能に締着された、L字断面形状の一対の係合片24を用いて構成されており、両側の角部単位箱形ルーフ管12aと共に横方向ルーフ列14を形成する複数の単位箱形ルーフ管12を一体として上方に吊り上げるのに先立って、係合片24の締着を角部箱形ルーフ管11aの内側から解除するようになっている。
【0037】
ここで、図4(a),(b)に示す継手構造10’では、角部箱形ルーフ管11aの下部側面部から下方に突出する一対の係合片24は、当該下部側面部に沿って配置される基盤プレート28に一体として接合されて取り付けられている。また基盤プレート28には、長手方向に間隔をおいて複数の雌ネジ孔29が形成されている。これらの雌ネジ孔29に、角部単位箱形ルーフ管12aの下部側面部に長手方向に間隔をおいて貫通形成された複数のボルト締着孔34を各々合致させ、角部単位箱形ルーフ管12aの内側からボルト部材23を各々装着して螺合することにより、一対の係合片24は、角部単位箱形ルーフ管12aの下部側面部からL字断面形状に突出して取り付けられることになる。
【0038】
また、図4(a),(b)に示す継手構造10’では、角部箱形ルーフ管11aの下部側面部に取り付けられた係合片24と共に継手部16を構成する、下方箱形ルーフ管11bの上部側面部に突出して設けられた一対の係合片35は、当該上部側面部に一体として固着接合された、L字断面形状を有する係合片35となっている。また、これらの係合片35は、継手部16において、角部単位箱形ルーフ管12aの一対のL字断面形状の係合片24と鉤状に係合されるように、これらの係合片24の内側に隣接する位置に各々取り付けられることになる。
【0039】
そして、図4(a),(b)に示す継手構造10’によって上下方向に離別可能な継手部16を形成した場合でも、横方向ルーフ列14の箱形ルーフ管11,11aを構成する単位箱形ルーフ管12,12aを、角部箱形ルーフ管11aの内側からの簡易な作業で係合片24が接合された基盤プレート28の締着を解除することによって、一体として同時に吊り上げ可能な状態とすることができ、これによって上述と同様に、横方向ルーフ列14の単位箱形ルーフ管12,12a、及び縦方向ルーフ列15の単位箱形ルーフ管12b,12を、容易に且つスムーズに到達立坑13から撤去してゆくことが可能になる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、角部箱形ルーフ管や下方箱形ルーフ管の内側から装着されるボルト部材を用いてこれらの側面部に着脱可能に締着される係合片は、当該係合片が一体接合される基盤プレートを介して締着される必要は必ずしも無く、ボルト部材を用いて係合片を角部箱形ルーフ管や下方箱形ルーフ管の側面部に直接締着することもできる。
【符号の説明】
【0041】
10,10’ 継手構造
11 箱形ルーフ管
11a 角部箱形ルーフ管
11b 下方箱形ルーフ管
12 単位箱形ルーフ管
12a 角部単位箱形ルーフ管
12b 下方単位箱形ルーフ管
13 到達立坑
14 横方向ルーフ列
15 縦方向ルーフ列
16 継手部
17 函体構造物
18 内側係合片
19 外側係合片
20 吊上げ金具
20a 水平添設部
20b 垂直添設部
21 ボルト部材
22 吊上げワイヤ
23 ボルト部材
24 着脱可能な係合片
28 基盤プレート
29 雌ネジ孔
34 ボルト締着孔
35 係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置される函体構造物の外周形状に沿って、複数の矩形断面を有する箱形ルーフ管を、発進立坑から到達立坑に向けて掘進させることにより地中に並べて設置し、しかる後に、設置した複数の箱形ルーフ管と置き換えるようにして、発進立坑から到達立坑に向けて前記函体構造物を掘進させることにより地中に設置する箱形ルーフ工法において、前記到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を前記到達立坑から撤去するための箱形ルーフ管の解体撤去方法であって、
前記複数の箱形ルーフ管は、前記函体構造物の天井部と対応する位置に配置される横方向ルーフ列と、前記函体構造物の両側の側壁部と対応する位置に配置される一対の縦方向ルーフ列とを形成するようになっており、
前記横方向ルーフ列と両側の前記縦方向ルーフ列との接合角部分に配置される一対の角部箱形ルーフ管と、これの下方に隣接する下方箱形ルーフ管との間の継手部が、上下方向に離別可能な継手構造となっており、
前記到達立坑に順次押し出された押出し方向先端の前記単位箱形ルーフ管を撤去する際に、両側の角部単位箱形ルーフ管と共に前記横方向ルーフ列を形成する複数の前記単位箱形ルーフ管を一体として上方に吊り上げる工程を含んでいる箱形ルーフ管の解体撤去方法。
【請求項2】
前記上下方向に離別可能な継手構造は、前記角部箱形ルーフ管の下部側面部及び前記下方箱形ルーフ管の上部側面部から垂直に突出して固着された、フラット断面形状の係合片を係合することによって構成されている請求項1に記載の箱形ルーフ管の解体撤去方法。
【請求項3】
前記上下方向に離別可能な継手構造は、前記角部箱形ルーフ管又は前記下方箱形ルーフ管の内側から装着されるボルト部材を介してこれらの側面部に着脱可能に締着された係合片を用いて構成されており、両側の角部単位箱形ルーフ管と共に前記横方向ルーフ列を形成する複数の前記単位箱形ルーフ管を一体として上方に吊り上げるのに先立って、前記係合片の締着を前記角部箱形ルーフ管又は前記下方箱形ルーフ管の内側から解除するようになっている請求項1に記載の箱形ルーフ管の解体撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−229779(P2010−229779A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81323(P2009−81323)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】