箱状体の荷下ろし方法
【課題】パレットを用いずに、箱状体を効率良く荷下ろしすることができる箱状体の荷下ろし方法を得る。
【解決手段】第一工程では、充填ブロック10のうち最下段に配置された最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18A内に管部材26が挿入され、平面視にて最下段充填ブロック10Aが二本の管部材26によって串刺し状態にされる。第二工程では、管部材26の長手方向の両端部に吊り手段30のスリング32が接続され、充填ブロック10が管部材26を介して吊り手段30によって荷台24A上の位置から吊り上げられ、その後に充填ブロック10の荷下ろし先に下ろされる。
【解決手段】第一工程では、充填ブロック10のうち最下段に配置された最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18A内に管部材26が挿入され、平面視にて最下段充填ブロック10Aが二本の管部材26によって串刺し状態にされる。第二工程では、管部材26の長手方向の両端部に吊り手段30のスリング32が接続され、充填ブロック10が管部材26を介して吊り手段30によって荷台24A上の位置から吊り上げられ、その後に充填ブロック10の荷下ろし先に下ろされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷積部上に複数段積み重ねられた箱状体を下ろす際に用いる箱状体の荷下ろし方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水貯留浸透槽用の構成部材(例えば、特許文献1参照)等のような箱状体が荷下ろしの対象となる場合がある。このような場合、例えば、荷となる箱状体は、パレット(土台)上に複数段に積み重ねられた状態でトラック等の荷台に積載され、搬送された後にパレット毎フォークリフトを用いて荷下ろしされる。
【0003】
しかし、この従来方法では、荷下ろし後に、不要となったパレットを荷台に戻して搬送したり、またはパレットを廃棄する必要が生じていた。
【特許文献1】特開2006−342520公報(図4(a))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、パレットを用いずに、箱状体を効率良く荷下ろしすることができる箱状体の荷下ろし方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法は、一端側が開口した箱状に形成されると共に側部に貫通孔が貫通形成された複数個の箱状体が、荷積部上において前記一端側又は他端側を下方側に向けて複数段積み重ねられ、前記箱状体のうち最下段に配置された最下段箱状体における前記貫通孔内に挿入部材が挿入され、平面視にて前記最下段箱状体が複数本の前記挿入部材によって串刺し状態にされる第一工程と、前記挿入部材の両端部に吊り手段が接続され、前記箱状体が前記挿入部材を介して前記吊り手段によって前記荷積部上の位置から吊り上げられた後に該箱状体の荷下ろし先に下ろされる第二工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の荷下ろし方法によれば、複数個の箱状体が荷積部上において開口した一端側又は該一端側の反対側となる他端側を下方側に向けて複数段積み重ねられ、第一工程では、箱状体のうち最下段に配置された最下段箱状体における貫通孔内に挿入部材が挿入され、平面視にて最下段箱状体が複数本の挿入部材によって串刺し状態にされ、第二工程では、挿入部材の両端部に吊り手段が接続され、箱状体が挿入部材を介して吊り手段によって荷積部上の位置から吊り上げられた後に該箱状体の荷下ろし先に下ろされる。このように、パレットに比べて嵩張らない挿入部材が箱状体の支持用として用いられて箱状体が荷積部から下ろされる。
【0007】
請求項2に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法は、請求項1記載の構成において、前記第一工程では、前記箱状体が積み重ねられた状態で前記最下段箱状体における前記貫通孔の下端部位と該最下段箱状体の上に積み重ねられた前記箱状体の下端部位との間隔を、該最下段箱状体に設けられた間隔保持手段によって、該貫通孔内に前記挿入部材を挿入可能な間隔に保持した状態で、該貫通孔内に該挿入部材が挿入されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法によれば、第一工程では、箱状体が積み重ねられた状態で最下段箱状体における貫通孔の下端部位と該最下段箱状体の上に積み重ねられた箱状体の下端部位との間隔を、該最下段箱状体に設けられた間隔保持手段によって、該貫通孔内に挿入部材を挿入可能な間隔に保持した状態で、該貫通孔内に該挿入部材が挿入される。このため、挿入部材の挿入空間が確保され、挿入部材の貫通孔内への挿入が容易になる。
【0009】
請求項3に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第一工程では、前記最下段箱状体において平面視で一方端側及び他方端側に形成された前記貫通孔が前記挿入部材にそれぞれ挿入されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法によれば、第一工程では、最下段箱状体において平面視で一方端側及び他方端側に形成された貫通孔が挿入部材にそれぞれ挿入されるので、第二工程では、積み重ねられた箱状体が吊り手段によって吊られた際に、該箱状体が両側の挿入部材によって安定的に支持される。
【0011】
請求項4に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の構成において、前記箱状体は、前記荷積部上において複数段積み重ねられると共に平面視で直列状に並べられ、前記第一工程では、平面視で直列状に並べられた複数個の前記最下段箱状体が前記挿入部材によって一連に貫かれて串刺し状態にされることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法によれば、箱状体は、荷積部上において複数段積み重ねられると共に平面視で直列状に並べられ、第一工程では、平面視で直列状に並べられた複数個の最下段箱状体が挿入部材によって一連に貫かれて串刺し状態にされるので、第二工程では、直列状に並べられた箱状体が吊り手段によって同時に吊られて荷下ろし先に下ろされる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の箱状体の荷下ろし方法によれば、パレットを用いずに、箱状体を効率良く荷下ろしすることができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項2に記載の箱状体の荷下ろし方法によれば、挿入部材の挿入空間を容易に確保することが可能となり、挿入部材を容易に挿入することができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項3に記載の箱状体の荷下ろし方法によれば、荷下ろしの際に箱状体を安定的に吊ることできるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項4に記載の箱状体の荷下ろし方法によれば、直列状に並べられた箱状体を同時に吊って荷下ろし先に下ろすことができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法について図1〜図11を用いて説明する。なお、本実施形態では、雨水貯留浸透槽用の構成部材である箱状体としての充填ブロック10を荷下ろしの対象としている。また、図中において適宜示される矢印FRは充填ブロック10を積載するトラックの車両前方側を示しており、矢印UPは前記トラックの車両上方側を示しており、矢印Wは前記トラックの車両幅方向を示している。
【0018】
図11には、雨水貯留浸透槽に用いられる充填ブロック10が示されている。前記雨水貯留浸透槽は、地中に埋設され、雨水を貯留する機能及び雨水を地中へ浸透させる機能の少なくとも一方の機能を備えた槽であり、具体的には、雨水を貯留する貯留槽、雨水を一次的に貯留した後に徐々に地中に浸透させる浸透槽、及び、貯留槽の機能と浸透槽の機能とを併せ持つ貯留浸透槽がある。
【0019】
図11に示される充填ブロック10は、加水分解が生じない樹脂材料(例えば、ポリプロピレン(PP)等)を素材として射出成形法によって成形されており、一端側が開口した箱状(籠状)に形成されている。充填ブロック10は、平面視で略長方形とされており、長手方向であるブロック長さ方向(矢印10L方向)の寸法(本実施形態では約100cm)が、ブロック長さ方向に直角な方向のブロック幅方向(矢印10W方向)の寸法(本実施形態では約50cm)の二倍になっている。この充填ブロック10には、側部としての側板部14が形成されると共に、この側板部14の一端側(頂面側)を繋ぐ頂板部12が一体的に形成されており、頂板部12とは反対の底面側(下端側)が開口端16とされている。充填ブロック10は、トラック24(図1参照)等への積載時及び地中への設置時には、開口端16側が下側に向けられて配置される。
【0020】
図11に示されるように、充填ブロック10の側板部14は、平面視で長手方向に沿う仮想中央線CLに対して左右対称とされてブロック長さ方向(矢印10L方向)にて所定間隔で仮想中央線CL側へ向けて凹状に入り込んだ凹凸形状となっている。すなわち、側板部14は、仮想中央線CL側から外向きに張り出して略角筒状(略角柱状)とされた複数個(本実施形態では8個)の張出部14Aが形成されると共に、ブロック長さ方向(矢印10L方向)に互いに隣接する張出部14A間を連結する連結板部14B、及び、ブロック長さ方向(矢印10L方向)の両側でブロック幅方向(矢印10W方向)に互いに隣接する張出部14A間を連結する湾曲板部14Cが一体的に形成されている。
【0021】
各張出部14Aは、開口端16側(下端側)から頂板部12側(上端側)へ向ってブロック長さ方向(矢印10L方向)及びブロック幅方向(矢印10W方向)に沿った寸法が序々に小さくなる略テーパ状に形成されている。このため、図1に示されるように、充填ブロック10は、開口端16側を下にして他の同一形状の充填ブロック10を被せるように重ねることが可能、すなわち、該充填ブロック10の高さ方向(開口端16側を設置した状態で設置面(荷台24A)に対して垂直な方向)に沿って複数段積み重ね可能となっている(充填ブロック10の積層化)。これにより、充填ブロック10の荷台24Aへの積載効率を向上させることができる。なお、図1では、一例として充填ブロック10が五段積み重ねられているが、これ以上(例えば、十二段程度)積み重ねることも可能である。
【0022】
図11に示されるように、側板部14には、各張出部14Aに貫通孔(開孔した点検窓)18が貫通形成されている。貫通孔18は、充填ブロック10の強度面を考慮した大きさに設定され、略上下方向を長手方向とした縦長の矩形状に形成されており、充填ブロック10の軽量化(樹脂量軽減)に資すると共に設置後の内部点検時における点検用開口とされる。また、詳細後述するが、図1および図2に示されるように、トラック24の荷積部としての荷台24A上において開口端16側(一端側)を下方側に向けて充填ブロック10の高さ方向に沿って複数段積み重ねられた状態の充填ブロック10のうち最下段に配置された最下段充填ブロック(最下段箱状体)10Aにおける貫通孔18A(図中では、最下段充填ブロック10Aの貫通孔を符号18Aで示す。)には、挿入部材としての管部材(短管)26が挿入される(差し込まれる)ようになっている。本実施形態では、最下段充填ブロック10Aにおいて平面視で長手方向の一方端側及び長手方向の他方端側に形成された貫通孔18Aが管部材26にそれぞれ挿入されることになる(図3、図6及び図7参照)。なお、図6では、最下段充填ブロック10Aが管部材26によって串刺し状態にされた形態を、二段目以上の充填ブロック10を透視した状態の平面視で示している。
【0023】
図11に示されるように、各張出部14Aの下部には、略上下方向を長手方向とするリブ20が形成されており、外部荷重に対する強度が補強されている。図1及び図5に示されるように、リブ20は、充填ブロック10が積み重ねられた状態で、より上段側に配置される充填ブロック10の下端部位である開口端16の一部と当接するようになっており、上下に積み重ねられた充填ブロック10の開口端16(下端部)同士の間隔を保持している。これにより、上下に積み重ねられた充填ブロック10同士の接触面積が小さくなり、上段側の充填ブロック10が下段側の充填ブロック10に密着して抜け難くなってしまうのを防いでいる。
【0024】
また、充填ブロック10が積み重ねられた状態で最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aの下端部位118(図1参照)と最下段充填ブロック10Aに積み重ねられた上段側(二段目)の充填ブロック10の下端部位である開口端16B(図中では、二段目の充填ブロック10の開口端を符号16Bで示す。)との間隔は、最下段充填ブロック10Aに設けられた間隔保持手段としてのリブ20Aによって、該貫通孔18A内に管部材26を挿入可能な間隔に保持されている。
【0025】
管部材26は、高強度の金属製とされている。この管部材26としては、例えば、土木の施工現場のどこにでもあるような足場用の短管(鉄パイプ等)等を適用してもよい。管部材26の外径寸法は、最下段充填ブロック10Aの貫通孔18Aの開口幅寸法(貫通孔18Aの開口長手方向に直交する方向(略水平方向)の寸法、)よりも若干小さく設定されており、本実施形態では、貫通孔18Aの開口幅寸法が約50mmであるのに対して管部材26の外径寸法は約45mmとなっている。また、図4に示されるように、管部材26の軸方向寸法は、荷台24A上に積載された(本実施形態では四列分の)最下段充填ブロック10Aを一連に貫いて串刺し状態にすることができ、かつ、管部材26の長手方向の両端部に吊り手段30のスリング32を玉掛け(接続)可能な寸法(例えば、約250cm)となっている。
【0026】
吊り手段30は、有機繊維(例えば、ナイロン)で成形された長尺帯状のスリング32、及びスリング32を牽引するクレーン(図示省略)を含んで構成されている。図5に示されるように、スリング32の先端部は、管部材26を挿通可能な吊り輪状とされて該管部材26に玉掛けされて(引っ掛けられて)おり、スリング32の基端側は、前記クレーンに接続されている。前記クレーンは、スリング32を上下方向及び水平方向へ移動させることが可能な機能を備えている。
【0027】
次に、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法について説明し、その説明を通して本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
図1に示されるように、施工現場へトラック24(一例として10t車)で運搬(搬入)された複数個の充填ブロック10は、トラック24の荷台24A上において開口端16側(一端側)を下方側に向けて充填ブロック10の高さ方向に沿って複数段積み重ねられており、このように積み重ねられた山が平面視で直列状に並べられて荷台24A上に積載されている。すなわち、充填ブロック10は、荷台24A上において、複数段積み重ねられると共に、積み重ね高さ方向に直交する行方向及び列方向に沿って、複数行(図示省略)、複数列(本実施形態では四列)並べられた状態で配列されている。
【0029】
ここで、雨水貯留浸透槽を施工する場合、充填ブロック10が非常に多く(一例として二万個〜三万個)必要となるため、例えば、10t車のトラック24を用いても延べ数十台分(例えば、五十台分)の荷下ろしが発生することが多い。このため、荷下ろしの速度が施工速度やトータルコストに大きく影響することになる。よって、充填ブロック10を破損することなく、一度に大量(例えば、複数段複数列)の充填ブロック10の荷下ろしを実現することが求められている。
【0030】
本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法では、まず、第一工程(管部材26の挿入工程)において、図1及び図2に示されるように、充填ブロック10のうち最下段に配置された最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18A内に管部材26が挿入され、平面視にて最下段充填ブロック10Aが複数本(計二本)の管部材26によって串刺し状態にされる。より詳細には、最下段充填ブロック10Aにおいて平面視で長手方向の一方端側及び長手方向の他方端側に形成された貫通孔18Aが管部材26にそれぞれ挿入されており、かつ、図6に示されるように、平面視で直列状に並べられた複数個(計四個)の最下段充填ブロック10Aが管部材26によって一連に貫かれて串刺し状態にされる。
【0031】
ここで、図1及び図5に示されるように、充填ブロック10が積み重ねられた状態で最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aの下端部位118(図1参照)と最下段充填ブロック10Aの上に積み重ねられた上段側(二段目)の充填ブロック10の下端部位である開口端16Bとの間隔を、最下段充填ブロック10Aに設けられたリブ20Aによって、該貫通孔18A内に管部材26を挿入可能な間隔に保持した状態で、該貫通孔18A内に管部材26が挿入される。このため、例えば、二段目以上の充填ブロック10を作業者がわざわざ持ち上げなくても、また、最下段充填ブロック10Aの上に積み重ねられた二段目の充填ブロック10の開口端16の位置が別部材等によって別途保持されなくても、管部材26の挿入空間が確保され、管部材26の貫通孔18A内への挿入が容易になる。
【0032】
次に、第二工程(移送工程)では、図2〜図7に示されるように、管部材26の長手方向の両端部に吊り手段30のスリング32が接続され、図8〜図10に示されるように、充填ブロック10が管部材26を介して吊り手段30によって荷台24A(図3参照)上の位置から吊り上げられ、その後に充填ブロック10の荷下ろし先に下ろされる(図示省略)。なお、充填ブロック10が荷下ろし先に下ろされた後は、スリング32を外し(解除し)、管部材26を抜き去る。
【0033】
第二工程をより具体的に説明すると、スリング32が管部材26の両端部に接続された後に充填ブロック10が管部材26を介して吊り手段30によって吊り上げられる際には、図8及び図10に示されるように、まず、管部材26が最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aに沿って上昇しながら二段目の充填ブロック10の開口端16Bを支持して二段目以上の充填ブロック10を上昇させる。管部材26が最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aの上端部に当接すると、管部材26は、該貫通孔18Aの上端部及び二段目の充填ブロック10の開口端16Bを支持して全ての充填ブロック10を上昇させる。このように、管部材26を土台のように利用した状態で、支持された全ての充填ブロック10が吊り手段30によって荷下ろし先に移送される。
【0034】
ここで、第一工程で、図6に示されるように、各最下段充填ブロック10Aにおいて平面視で長手方向の一方端側及び長手方向の他方端側に形成された貫通孔18Aが管部材26にそれぞれ挿入されるので、第二工程では、図8に示されるように、積み重ねられた充填ブロック10が吊り手段30によって吊られた際に、充填ブロック10が両側の管部材26によって安定的に支持される。よって、パレットを用いなくても、充填ブロック10を荷台24A(図1参照)から安定的に下ろすことができる。
【0035】
また、図6に示されるように、第一工程で、平面視で直列状に並べられた複数個(計四個)の最下段充填ブロック10Aが管部材26によって一連に貫かれて串刺し状態にされるので、第二工程では、図8に示されるように、直列状に並べられた充填ブロック10が吊り手段30によって同時に吊られて荷下ろし先に下ろされる。このため、直列状に並べられた充填ブロック10を同時に吊って荷下ろし先に下ろすことができる。
【0036】
ここで、本実施形態の作用に関して対比例と比較しながら補足説明する。まず、パレットを用いて荷下ろしをする対比例の場合、荷下ろし後に不要となったパレットは、回収してトラック等で別途運送するか現場に廃棄しなければならない。このように前記対比例では、荷下ろし後の作業を増やすことになる他、回収して運搬する場合には別途運送費がかかることになり、また、廃棄する場合には現場での産業廃棄物を増やしてしまうことになる。これに対して、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法では、パレットに比べて嵩張らない管部材26を用いるので、土木の施工現場等では管理や処理が容易であり、パレットを用いた場合に比べて上記の点を改善することができる。
【0037】
また、パレットを用いた荷下ろしは、フォークリフトを使用して行うことを想定しているが、例えば、雨水貯留浸透槽を施工するような土木の現場では、地が土であるために工場等で作業をする場合と異なりフォークリフトが用いられない場合が多い。これに対して、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法では、吊り手段30(スリング32及びクレーン)を用いるので、フォークリフトは不要である。ちなみに、スリング32の玉掛けやクレーンの操作については、資格が必要となるが、土木の現場でこのような資格を有する者がいないことは事実上考えられないので、このような点が不都合になることはない。
【0038】
また、例えば、箱状体を積載したトラックの荷台と地面とに板を渡すと共に箱状体を傾けて該板上を滑らせることで荷下ろしするような他の対比例では、一度に複数列の箱状体を下ろすことが難しいために作業効率が悪い他、箱状体の強度によっては落下時に箱状体を破損してしまうことも考えられるが、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法では、そのような問題点を解消することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法によれば、パレットを用いずに、パレットに比べて嵩張らない管部材26を充填ブロック10の支持用として用い、荷台24A(図1参照)に積載した充填ブロック10を効率良く荷下ろしすることができる。その結果として、雨水貯留浸透槽の施工速度自体も早くなる。
【0040】
なお、上記実施形態では、箱状体が雨水貯留浸透槽用の構成部材である充填ブロック10である場合を例に挙げて説明したが、箱状体は、例えば、一端側が開口した箱状に形成されると共に側部に貫通孔が貫通形成され、かつ上下間隔保持用の間隔保持手段を備えた飲料水ボトル収容用ケース等のような他の箱状体であってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、図1に示されるように、複数個の充填ブロック10が、トラック24の荷台24A上において開口端16側(一端側)を下方側に向けて充填ブロック10の高さ方向に沿って複数段積み重ねられているが、複数個の箱状体は、荷積部上において、開口した一端側の反対側となる他端側を下方側に向けて箱状体の高さ方向に沿って複数段積み重ねられてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、荷下ろしされる充填ブロック10がトラック24の荷台24A上に積み重ねられているが、荷下ろしされる箱状体は、例えば、作業台車における作業台(作業領域部)上や物置の床部上等のような他の荷積部上に積み重ねられてもよい。
【0043】
さらに、上記実施形態では、貫通孔18内に挿入部材として管部材26が挿入されているが、挿入部材は、例えば、最下段箱状体における貫通孔内に挿入可能とされてかつ積み重ねられた箱状体を支持するのに十分な強度を備えた鉄芯(鉄棒)等のような他の挿入部材であってもよい。
【0044】
さらにまた、上記実施形態では、最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aの下端部位118と最下段充填ブロック10Aの上に積み重ねられた二段目の充填ブロック10の開口端16Bとの間隔が、最下段充填ブロック10Aに設けられた間隔保持手段としてのリブ20Aによって保持されているが、間隔保持手段は、例えば、箱状体の側部に形成された柱状のストッパ等のような他の間隔保持手段であってもよい。また、箱状体の荷下ろし方法では、最下段箱状体に間隔保持手段を備えるのが好ましいが、前記間隔を保持するために他部材等を配設してもよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、第一工程で、最下段充填ブロック10Aにおいて平面視で長手方向の一方端側及び長手方向の他方端側に形成された貫通孔18Aが管部材26にそれぞれ挿入されており、このような構成が好ましいが、第一工程では、最下段箱状体において平面視で長手方向に直角な方向の一方端側及び長手方向に直角な方向の他方端側に形成された貫通孔が挿入部材にそれぞれ挿入されてもよく、また、第一工程では、最下段箱状体において平面視で一方端側及び他方端側に形成された貫通孔よりも中央寄り(一方端側及び他方端側の間となる側)に形成された貫通孔が挿入部材にそれぞれ挿入されてもよい。また、平面視にて最下段箱状体が三本以上の挿入部材によって串刺し状態にされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法において、管部材が挿入される前の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法において、管部材が挿入された後で、スリングが玉掛けされる前の状態を示す斜視図である(二点鎖線にてスリングが玉掛けされた状態を示す。)。
【図3】本発明の一実施形態におけるスリングが玉掛けされた状態を示す斜視図である。
【図4】図3の4L線矢視図である。
【図5】図3の5L線矢視図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるスリングが玉掛けされた状態を二段目以上の充填ブロックを透視して示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるスリングが玉掛けされた状態を示す背面図である。
【図8】本発明の一実施形態における充填ブロックが吊られた状態を示す斜視図である。
【図9】図8の9L線矢視図である。
【図10】図8の10L線矢視図である。
【図11】本発明の一実施形態における充填ブロックを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10 充填ブロック(箱状体)
10A 最下段充填ブロック(最下段箱状体)
14 側板部(側部)
16B 開口端(箱状体の下端部位)
18 貫通孔
18A 貫通孔(最下段箱状体における貫通孔)
20A リブ(間隔保持手段)
24A 荷台(荷積部)
26 管部材(挿入部材)
30 吊り手段
118 貫通孔の下端部位
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷積部上に複数段積み重ねられた箱状体を下ろす際に用いる箱状体の荷下ろし方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水貯留浸透槽用の構成部材(例えば、特許文献1参照)等のような箱状体が荷下ろしの対象となる場合がある。このような場合、例えば、荷となる箱状体は、パレット(土台)上に複数段に積み重ねられた状態でトラック等の荷台に積載され、搬送された後にパレット毎フォークリフトを用いて荷下ろしされる。
【0003】
しかし、この従来方法では、荷下ろし後に、不要となったパレットを荷台に戻して搬送したり、またはパレットを廃棄する必要が生じていた。
【特許文献1】特開2006−342520公報(図4(a))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、パレットを用いずに、箱状体を効率良く荷下ろしすることができる箱状体の荷下ろし方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法は、一端側が開口した箱状に形成されると共に側部に貫通孔が貫通形成された複数個の箱状体が、荷積部上において前記一端側又は他端側を下方側に向けて複数段積み重ねられ、前記箱状体のうち最下段に配置された最下段箱状体における前記貫通孔内に挿入部材が挿入され、平面視にて前記最下段箱状体が複数本の前記挿入部材によって串刺し状態にされる第一工程と、前記挿入部材の両端部に吊り手段が接続され、前記箱状体が前記挿入部材を介して前記吊り手段によって前記荷積部上の位置から吊り上げられた後に該箱状体の荷下ろし先に下ろされる第二工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の荷下ろし方法によれば、複数個の箱状体が荷積部上において開口した一端側又は該一端側の反対側となる他端側を下方側に向けて複数段積み重ねられ、第一工程では、箱状体のうち最下段に配置された最下段箱状体における貫通孔内に挿入部材が挿入され、平面視にて最下段箱状体が複数本の挿入部材によって串刺し状態にされ、第二工程では、挿入部材の両端部に吊り手段が接続され、箱状体が挿入部材を介して吊り手段によって荷積部上の位置から吊り上げられた後に該箱状体の荷下ろし先に下ろされる。このように、パレットに比べて嵩張らない挿入部材が箱状体の支持用として用いられて箱状体が荷積部から下ろされる。
【0007】
請求項2に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法は、請求項1記載の構成において、前記第一工程では、前記箱状体が積み重ねられた状態で前記最下段箱状体における前記貫通孔の下端部位と該最下段箱状体の上に積み重ねられた前記箱状体の下端部位との間隔を、該最下段箱状体に設けられた間隔保持手段によって、該貫通孔内に前記挿入部材を挿入可能な間隔に保持した状態で、該貫通孔内に該挿入部材が挿入されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法によれば、第一工程では、箱状体が積み重ねられた状態で最下段箱状体における貫通孔の下端部位と該最下段箱状体の上に積み重ねられた箱状体の下端部位との間隔を、該最下段箱状体に設けられた間隔保持手段によって、該貫通孔内に挿入部材を挿入可能な間隔に保持した状態で、該貫通孔内に該挿入部材が挿入される。このため、挿入部材の挿入空間が確保され、挿入部材の貫通孔内への挿入が容易になる。
【0009】
請求項3に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第一工程では、前記最下段箱状体において平面視で一方端側及び他方端側に形成された前記貫通孔が前記挿入部材にそれぞれ挿入されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法によれば、第一工程では、最下段箱状体において平面視で一方端側及び他方端側に形成された貫通孔が挿入部材にそれぞれ挿入されるので、第二工程では、積み重ねられた箱状体が吊り手段によって吊られた際に、該箱状体が両側の挿入部材によって安定的に支持される。
【0011】
請求項4に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の構成において、前記箱状体は、前記荷積部上において複数段積み重ねられると共に平面視で直列状に並べられ、前記第一工程では、平面視で直列状に並べられた複数個の前記最下段箱状体が前記挿入部材によって一連に貫かれて串刺し状態にされることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載する本発明の箱状体の荷下ろし方法によれば、箱状体は、荷積部上において複数段積み重ねられると共に平面視で直列状に並べられ、第一工程では、平面視で直列状に並べられた複数個の最下段箱状体が挿入部材によって一連に貫かれて串刺し状態にされるので、第二工程では、直列状に並べられた箱状体が吊り手段によって同時に吊られて荷下ろし先に下ろされる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の箱状体の荷下ろし方法によれば、パレットを用いずに、箱状体を効率良く荷下ろしすることができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項2に記載の箱状体の荷下ろし方法によれば、挿入部材の挿入空間を容易に確保することが可能となり、挿入部材を容易に挿入することができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項3に記載の箱状体の荷下ろし方法によれば、荷下ろしの際に箱状体を安定的に吊ることできるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項4に記載の箱状体の荷下ろし方法によれば、直列状に並べられた箱状体を同時に吊って荷下ろし先に下ろすことができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法について図1〜図11を用いて説明する。なお、本実施形態では、雨水貯留浸透槽用の構成部材である箱状体としての充填ブロック10を荷下ろしの対象としている。また、図中において適宜示される矢印FRは充填ブロック10を積載するトラックの車両前方側を示しており、矢印UPは前記トラックの車両上方側を示しており、矢印Wは前記トラックの車両幅方向を示している。
【0018】
図11には、雨水貯留浸透槽に用いられる充填ブロック10が示されている。前記雨水貯留浸透槽は、地中に埋設され、雨水を貯留する機能及び雨水を地中へ浸透させる機能の少なくとも一方の機能を備えた槽であり、具体的には、雨水を貯留する貯留槽、雨水を一次的に貯留した後に徐々に地中に浸透させる浸透槽、及び、貯留槽の機能と浸透槽の機能とを併せ持つ貯留浸透槽がある。
【0019】
図11に示される充填ブロック10は、加水分解が生じない樹脂材料(例えば、ポリプロピレン(PP)等)を素材として射出成形法によって成形されており、一端側が開口した箱状(籠状)に形成されている。充填ブロック10は、平面視で略長方形とされており、長手方向であるブロック長さ方向(矢印10L方向)の寸法(本実施形態では約100cm)が、ブロック長さ方向に直角な方向のブロック幅方向(矢印10W方向)の寸法(本実施形態では約50cm)の二倍になっている。この充填ブロック10には、側部としての側板部14が形成されると共に、この側板部14の一端側(頂面側)を繋ぐ頂板部12が一体的に形成されており、頂板部12とは反対の底面側(下端側)が開口端16とされている。充填ブロック10は、トラック24(図1参照)等への積載時及び地中への設置時には、開口端16側が下側に向けられて配置される。
【0020】
図11に示されるように、充填ブロック10の側板部14は、平面視で長手方向に沿う仮想中央線CLに対して左右対称とされてブロック長さ方向(矢印10L方向)にて所定間隔で仮想中央線CL側へ向けて凹状に入り込んだ凹凸形状となっている。すなわち、側板部14は、仮想中央線CL側から外向きに張り出して略角筒状(略角柱状)とされた複数個(本実施形態では8個)の張出部14Aが形成されると共に、ブロック長さ方向(矢印10L方向)に互いに隣接する張出部14A間を連結する連結板部14B、及び、ブロック長さ方向(矢印10L方向)の両側でブロック幅方向(矢印10W方向)に互いに隣接する張出部14A間を連結する湾曲板部14Cが一体的に形成されている。
【0021】
各張出部14Aは、開口端16側(下端側)から頂板部12側(上端側)へ向ってブロック長さ方向(矢印10L方向)及びブロック幅方向(矢印10W方向)に沿った寸法が序々に小さくなる略テーパ状に形成されている。このため、図1に示されるように、充填ブロック10は、開口端16側を下にして他の同一形状の充填ブロック10を被せるように重ねることが可能、すなわち、該充填ブロック10の高さ方向(開口端16側を設置した状態で設置面(荷台24A)に対して垂直な方向)に沿って複数段積み重ね可能となっている(充填ブロック10の積層化)。これにより、充填ブロック10の荷台24Aへの積載効率を向上させることができる。なお、図1では、一例として充填ブロック10が五段積み重ねられているが、これ以上(例えば、十二段程度)積み重ねることも可能である。
【0022】
図11に示されるように、側板部14には、各張出部14Aに貫通孔(開孔した点検窓)18が貫通形成されている。貫通孔18は、充填ブロック10の強度面を考慮した大きさに設定され、略上下方向を長手方向とした縦長の矩形状に形成されており、充填ブロック10の軽量化(樹脂量軽減)に資すると共に設置後の内部点検時における点検用開口とされる。また、詳細後述するが、図1および図2に示されるように、トラック24の荷積部としての荷台24A上において開口端16側(一端側)を下方側に向けて充填ブロック10の高さ方向に沿って複数段積み重ねられた状態の充填ブロック10のうち最下段に配置された最下段充填ブロック(最下段箱状体)10Aにおける貫通孔18A(図中では、最下段充填ブロック10Aの貫通孔を符号18Aで示す。)には、挿入部材としての管部材(短管)26が挿入される(差し込まれる)ようになっている。本実施形態では、最下段充填ブロック10Aにおいて平面視で長手方向の一方端側及び長手方向の他方端側に形成された貫通孔18Aが管部材26にそれぞれ挿入されることになる(図3、図6及び図7参照)。なお、図6では、最下段充填ブロック10Aが管部材26によって串刺し状態にされた形態を、二段目以上の充填ブロック10を透視した状態の平面視で示している。
【0023】
図11に示されるように、各張出部14Aの下部には、略上下方向を長手方向とするリブ20が形成されており、外部荷重に対する強度が補強されている。図1及び図5に示されるように、リブ20は、充填ブロック10が積み重ねられた状態で、より上段側に配置される充填ブロック10の下端部位である開口端16の一部と当接するようになっており、上下に積み重ねられた充填ブロック10の開口端16(下端部)同士の間隔を保持している。これにより、上下に積み重ねられた充填ブロック10同士の接触面積が小さくなり、上段側の充填ブロック10が下段側の充填ブロック10に密着して抜け難くなってしまうのを防いでいる。
【0024】
また、充填ブロック10が積み重ねられた状態で最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aの下端部位118(図1参照)と最下段充填ブロック10Aに積み重ねられた上段側(二段目)の充填ブロック10の下端部位である開口端16B(図中では、二段目の充填ブロック10の開口端を符号16Bで示す。)との間隔は、最下段充填ブロック10Aに設けられた間隔保持手段としてのリブ20Aによって、該貫通孔18A内に管部材26を挿入可能な間隔に保持されている。
【0025】
管部材26は、高強度の金属製とされている。この管部材26としては、例えば、土木の施工現場のどこにでもあるような足場用の短管(鉄パイプ等)等を適用してもよい。管部材26の外径寸法は、最下段充填ブロック10Aの貫通孔18Aの開口幅寸法(貫通孔18Aの開口長手方向に直交する方向(略水平方向)の寸法、)よりも若干小さく設定されており、本実施形態では、貫通孔18Aの開口幅寸法が約50mmであるのに対して管部材26の外径寸法は約45mmとなっている。また、図4に示されるように、管部材26の軸方向寸法は、荷台24A上に積載された(本実施形態では四列分の)最下段充填ブロック10Aを一連に貫いて串刺し状態にすることができ、かつ、管部材26の長手方向の両端部に吊り手段30のスリング32を玉掛け(接続)可能な寸法(例えば、約250cm)となっている。
【0026】
吊り手段30は、有機繊維(例えば、ナイロン)で成形された長尺帯状のスリング32、及びスリング32を牽引するクレーン(図示省略)を含んで構成されている。図5に示されるように、スリング32の先端部は、管部材26を挿通可能な吊り輪状とされて該管部材26に玉掛けされて(引っ掛けられて)おり、スリング32の基端側は、前記クレーンに接続されている。前記クレーンは、スリング32を上下方向及び水平方向へ移動させることが可能な機能を備えている。
【0027】
次に、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法について説明し、その説明を通して本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
図1に示されるように、施工現場へトラック24(一例として10t車)で運搬(搬入)された複数個の充填ブロック10は、トラック24の荷台24A上において開口端16側(一端側)を下方側に向けて充填ブロック10の高さ方向に沿って複数段積み重ねられており、このように積み重ねられた山が平面視で直列状に並べられて荷台24A上に積載されている。すなわち、充填ブロック10は、荷台24A上において、複数段積み重ねられると共に、積み重ね高さ方向に直交する行方向及び列方向に沿って、複数行(図示省略)、複数列(本実施形態では四列)並べられた状態で配列されている。
【0029】
ここで、雨水貯留浸透槽を施工する場合、充填ブロック10が非常に多く(一例として二万個〜三万個)必要となるため、例えば、10t車のトラック24を用いても延べ数十台分(例えば、五十台分)の荷下ろしが発生することが多い。このため、荷下ろしの速度が施工速度やトータルコストに大きく影響することになる。よって、充填ブロック10を破損することなく、一度に大量(例えば、複数段複数列)の充填ブロック10の荷下ろしを実現することが求められている。
【0030】
本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法では、まず、第一工程(管部材26の挿入工程)において、図1及び図2に示されるように、充填ブロック10のうち最下段に配置された最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18A内に管部材26が挿入され、平面視にて最下段充填ブロック10Aが複数本(計二本)の管部材26によって串刺し状態にされる。より詳細には、最下段充填ブロック10Aにおいて平面視で長手方向の一方端側及び長手方向の他方端側に形成された貫通孔18Aが管部材26にそれぞれ挿入されており、かつ、図6に示されるように、平面視で直列状に並べられた複数個(計四個)の最下段充填ブロック10Aが管部材26によって一連に貫かれて串刺し状態にされる。
【0031】
ここで、図1及び図5に示されるように、充填ブロック10が積み重ねられた状態で最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aの下端部位118(図1参照)と最下段充填ブロック10Aの上に積み重ねられた上段側(二段目)の充填ブロック10の下端部位である開口端16Bとの間隔を、最下段充填ブロック10Aに設けられたリブ20Aによって、該貫通孔18A内に管部材26を挿入可能な間隔に保持した状態で、該貫通孔18A内に管部材26が挿入される。このため、例えば、二段目以上の充填ブロック10を作業者がわざわざ持ち上げなくても、また、最下段充填ブロック10Aの上に積み重ねられた二段目の充填ブロック10の開口端16の位置が別部材等によって別途保持されなくても、管部材26の挿入空間が確保され、管部材26の貫通孔18A内への挿入が容易になる。
【0032】
次に、第二工程(移送工程)では、図2〜図7に示されるように、管部材26の長手方向の両端部に吊り手段30のスリング32が接続され、図8〜図10に示されるように、充填ブロック10が管部材26を介して吊り手段30によって荷台24A(図3参照)上の位置から吊り上げられ、その後に充填ブロック10の荷下ろし先に下ろされる(図示省略)。なお、充填ブロック10が荷下ろし先に下ろされた後は、スリング32を外し(解除し)、管部材26を抜き去る。
【0033】
第二工程をより具体的に説明すると、スリング32が管部材26の両端部に接続された後に充填ブロック10が管部材26を介して吊り手段30によって吊り上げられる際には、図8及び図10に示されるように、まず、管部材26が最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aに沿って上昇しながら二段目の充填ブロック10の開口端16Bを支持して二段目以上の充填ブロック10を上昇させる。管部材26が最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aの上端部に当接すると、管部材26は、該貫通孔18Aの上端部及び二段目の充填ブロック10の開口端16Bを支持して全ての充填ブロック10を上昇させる。このように、管部材26を土台のように利用した状態で、支持された全ての充填ブロック10が吊り手段30によって荷下ろし先に移送される。
【0034】
ここで、第一工程で、図6に示されるように、各最下段充填ブロック10Aにおいて平面視で長手方向の一方端側及び長手方向の他方端側に形成された貫通孔18Aが管部材26にそれぞれ挿入されるので、第二工程では、図8に示されるように、積み重ねられた充填ブロック10が吊り手段30によって吊られた際に、充填ブロック10が両側の管部材26によって安定的に支持される。よって、パレットを用いなくても、充填ブロック10を荷台24A(図1参照)から安定的に下ろすことができる。
【0035】
また、図6に示されるように、第一工程で、平面視で直列状に並べられた複数個(計四個)の最下段充填ブロック10Aが管部材26によって一連に貫かれて串刺し状態にされるので、第二工程では、図8に示されるように、直列状に並べられた充填ブロック10が吊り手段30によって同時に吊られて荷下ろし先に下ろされる。このため、直列状に並べられた充填ブロック10を同時に吊って荷下ろし先に下ろすことができる。
【0036】
ここで、本実施形態の作用に関して対比例と比較しながら補足説明する。まず、パレットを用いて荷下ろしをする対比例の場合、荷下ろし後に不要となったパレットは、回収してトラック等で別途運送するか現場に廃棄しなければならない。このように前記対比例では、荷下ろし後の作業を増やすことになる他、回収して運搬する場合には別途運送費がかかることになり、また、廃棄する場合には現場での産業廃棄物を増やしてしまうことになる。これに対して、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法では、パレットに比べて嵩張らない管部材26を用いるので、土木の施工現場等では管理や処理が容易であり、パレットを用いた場合に比べて上記の点を改善することができる。
【0037】
また、パレットを用いた荷下ろしは、フォークリフトを使用して行うことを想定しているが、例えば、雨水貯留浸透槽を施工するような土木の現場では、地が土であるために工場等で作業をする場合と異なりフォークリフトが用いられない場合が多い。これに対して、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法では、吊り手段30(スリング32及びクレーン)を用いるので、フォークリフトは不要である。ちなみに、スリング32の玉掛けやクレーンの操作については、資格が必要となるが、土木の現場でこのような資格を有する者がいないことは事実上考えられないので、このような点が不都合になることはない。
【0038】
また、例えば、箱状体を積載したトラックの荷台と地面とに板を渡すと共に箱状体を傾けて該板上を滑らせることで荷下ろしするような他の対比例では、一度に複数列の箱状体を下ろすことが難しいために作業効率が悪い他、箱状体の強度によっては落下時に箱状体を破損してしまうことも考えられるが、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法では、そのような問題点を解消することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法によれば、パレットを用いずに、パレットに比べて嵩張らない管部材26を充填ブロック10の支持用として用い、荷台24A(図1参照)に積載した充填ブロック10を効率良く荷下ろしすることができる。その結果として、雨水貯留浸透槽の施工速度自体も早くなる。
【0040】
なお、上記実施形態では、箱状体が雨水貯留浸透槽用の構成部材である充填ブロック10である場合を例に挙げて説明したが、箱状体は、例えば、一端側が開口した箱状に形成されると共に側部に貫通孔が貫通形成され、かつ上下間隔保持用の間隔保持手段を備えた飲料水ボトル収容用ケース等のような他の箱状体であってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、図1に示されるように、複数個の充填ブロック10が、トラック24の荷台24A上において開口端16側(一端側)を下方側に向けて充填ブロック10の高さ方向に沿って複数段積み重ねられているが、複数個の箱状体は、荷積部上において、開口した一端側の反対側となる他端側を下方側に向けて箱状体の高さ方向に沿って複数段積み重ねられてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、荷下ろしされる充填ブロック10がトラック24の荷台24A上に積み重ねられているが、荷下ろしされる箱状体は、例えば、作業台車における作業台(作業領域部)上や物置の床部上等のような他の荷積部上に積み重ねられてもよい。
【0043】
さらに、上記実施形態では、貫通孔18内に挿入部材として管部材26が挿入されているが、挿入部材は、例えば、最下段箱状体における貫通孔内に挿入可能とされてかつ積み重ねられた箱状体を支持するのに十分な強度を備えた鉄芯(鉄棒)等のような他の挿入部材であってもよい。
【0044】
さらにまた、上記実施形態では、最下段充填ブロック10Aにおける貫通孔18Aの下端部位118と最下段充填ブロック10Aの上に積み重ねられた二段目の充填ブロック10の開口端16Bとの間隔が、最下段充填ブロック10Aに設けられた間隔保持手段としてのリブ20Aによって保持されているが、間隔保持手段は、例えば、箱状体の側部に形成された柱状のストッパ等のような他の間隔保持手段であってもよい。また、箱状体の荷下ろし方法では、最下段箱状体に間隔保持手段を備えるのが好ましいが、前記間隔を保持するために他部材等を配設してもよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、第一工程で、最下段充填ブロック10Aにおいて平面視で長手方向の一方端側及び長手方向の他方端側に形成された貫通孔18Aが管部材26にそれぞれ挿入されており、このような構成が好ましいが、第一工程では、最下段箱状体において平面視で長手方向に直角な方向の一方端側及び長手方向に直角な方向の他方端側に形成された貫通孔が挿入部材にそれぞれ挿入されてもよく、また、第一工程では、最下段箱状体において平面視で一方端側及び他方端側に形成された貫通孔よりも中央寄り(一方端側及び他方端側の間となる側)に形成された貫通孔が挿入部材にそれぞれ挿入されてもよい。また、平面視にて最下段箱状体が三本以上の挿入部材によって串刺し状態にされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法において、管部材が挿入される前の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る箱状体の荷下ろし方法において、管部材が挿入された後で、スリングが玉掛けされる前の状態を示す斜視図である(二点鎖線にてスリングが玉掛けされた状態を示す。)。
【図3】本発明の一実施形態におけるスリングが玉掛けされた状態を示す斜視図である。
【図4】図3の4L線矢視図である。
【図5】図3の5L線矢視図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるスリングが玉掛けされた状態を二段目以上の充填ブロックを透視して示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるスリングが玉掛けされた状態を示す背面図である。
【図8】本発明の一実施形態における充填ブロックが吊られた状態を示す斜視図である。
【図9】図8の9L線矢視図である。
【図10】図8の10L線矢視図である。
【図11】本発明の一実施形態における充填ブロックを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10 充填ブロック(箱状体)
10A 最下段充填ブロック(最下段箱状体)
14 側板部(側部)
16B 開口端(箱状体の下端部位)
18 貫通孔
18A 貫通孔(最下段箱状体における貫通孔)
20A リブ(間隔保持手段)
24A 荷台(荷積部)
26 管部材(挿入部材)
30 吊り手段
118 貫通孔の下端部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が開口した箱状に形成されると共に側部に貫通孔が貫通形成された複数個の箱状体が、荷積部上において前記一端側又は他端側を下方側に向けて複数段積み重ねられ、
前記箱状体のうち最下段に配置された最下段箱状体における前記貫通孔内に挿入部材が挿入され、平面視にて前記最下段箱状体が複数本の前記挿入部材によって串刺し状態にされる第一工程と、
前記挿入部材の両端部に吊り手段が接続され、前記箱状体が前記挿入部材を介して前記吊り手段によって前記荷積部上の位置から吊り上げられた後に該箱状体の荷下ろし先に下ろされる第二工程と、
を有することを特徴とする箱状体の荷下ろし方法。
【請求項2】
前記第一工程では、前記箱状体が積み重ねられた状態で前記最下段箱状体における前記貫通孔の下端部位と該最下段箱状体の上に積み重ねられた前記箱状体の下端部位との間隔を、該最下段箱状体に設けられた間隔保持手段によって、該貫通孔内に前記挿入部材を挿入可能な間隔に保持した状態で、該貫通孔内に該挿入部材が挿入されることを特徴とする請求項1記載の箱状体の荷下ろし方法。
【請求項3】
前記第一工程では、前記最下段箱状体において平面視で一方端側及び他方端側に形成された前記貫通孔が前記挿入部材にそれぞれ挿入されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の箱状体の荷下ろし方法。
【請求項4】
前記箱状体は、前記荷積部上において複数段積み重ねられると共に平面視で直列状に並べられ、
前記第一工程では、平面視で直列状に並べられた複数個の前記最下段箱状体が前記挿入部材によって一連に貫かれて串刺し状態にされることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の箱状体の荷下ろし方法。
【請求項1】
一端側が開口した箱状に形成されると共に側部に貫通孔が貫通形成された複数個の箱状体が、荷積部上において前記一端側又は他端側を下方側に向けて複数段積み重ねられ、
前記箱状体のうち最下段に配置された最下段箱状体における前記貫通孔内に挿入部材が挿入され、平面視にて前記最下段箱状体が複数本の前記挿入部材によって串刺し状態にされる第一工程と、
前記挿入部材の両端部に吊り手段が接続され、前記箱状体が前記挿入部材を介して前記吊り手段によって前記荷積部上の位置から吊り上げられた後に該箱状体の荷下ろし先に下ろされる第二工程と、
を有することを特徴とする箱状体の荷下ろし方法。
【請求項2】
前記第一工程では、前記箱状体が積み重ねられた状態で前記最下段箱状体における前記貫通孔の下端部位と該最下段箱状体の上に積み重ねられた前記箱状体の下端部位との間隔を、該最下段箱状体に設けられた間隔保持手段によって、該貫通孔内に前記挿入部材を挿入可能な間隔に保持した状態で、該貫通孔内に該挿入部材が挿入されることを特徴とする請求項1記載の箱状体の荷下ろし方法。
【請求項3】
前記第一工程では、前記最下段箱状体において平面視で一方端側及び他方端側に形成された前記貫通孔が前記挿入部材にそれぞれ挿入されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の箱状体の荷下ろし方法。
【請求項4】
前記箱状体は、前記荷積部上において複数段積み重ねられると共に平面視で直列状に並べられ、
前記第一工程では、平面視で直列状に並べられた複数個の前記最下段箱状体が前記挿入部材によって一連に貫かれて串刺し状態にされることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の箱状体の荷下ろし方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−62191(P2009−62191A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234087(P2007−234087)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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