説明

【課題】単一の部材から構成され、しかも特別な係合部材を用いることなく組立てたり分解することが可能な通い箱を提供する。
【解決手段】押出し成形された中空の合成樹脂製ボードを打抜いて組立てられる箱であって、長辺側側板22の長さ方向の両端の係止片29の根元側の係止用切込み30を短辺側側板24の両端の突出部36の根元側に形成されているスリット状切込み34に係合させて箱形状に組立てるようにする。底板20のコーナ開口40が底板20の切欠き41と長辺側側板22の切欠き42と短辺側側板24の切欠き43とを有し、複数段に積重ねたときに下段の箱の長辺側側板22の上端の突片28をコーナ開口40の長辺側側板22にかかる切欠き42で受入れ、短辺側側板24の上端の突片33を短辺側側板24にかかる切欠き43で受入れることによって、積重ねたときに安定に維持されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は箱に係り、とくに上面が開放された箱体形状をなす箱に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等において各種の物品を収納したり、市場で青果物、野菜、魚等を入れるための箱として、従来より合成樹脂製の通い箱が広く用いられている。従来の通い箱は、箱体形状の成形体から構成される。このような一体な成形体はかさばり、保管や運搬の際にスペースを要する。そこで折畳み式の通い箱が提案されている。折畳み式の通い箱は、各部分を別々に射出成形したものを、折畳み可能に組立てた通い箱である。このような通い箱は、繰返して使用できるものの、各パーツが射出成形体から成り、しかも複数の成形体を複雑に組合わせて構成されるために、構造が複雑で部品点数が多くて高価になる。
【0003】
そこで、底板の4辺に一対の長辺側側板と短辺側側板とをそれぞれ連設した合成樹脂製のパネルを用い、上記長辺側側板と短辺側側板の上縁部に断面がコの字状をなすフレームを取付け、さらに長辺側側板と短辺側側板との交差するコーナの部分に、上から見てL字状の連結部材を装着し、これによって箱形状に組立てるようにした通い箱が用いられている。このような通い箱は、各パーツを射出成形して組立てた通い箱よりも低コストになるものの、パネル状板状体、フレーム、コーナの連結部材等を必要とし、部品点数が多いという問題はほとんど解決されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−297630号公報
【特許文献2】実開昭55−84212のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明の課題は、単一の部品から構成される箱を提供することである。
【0006】
本願発明の別の課題は、接着剤やホチキス等の結合具を用いることなく組立てることができる箱を提供することである。
【0007】
本願発明の別の課題は、使用時に箱形状に組立てられるとともに、不使用時に展開してパネル状にしておくことが可能な箱を提供することである。
【0008】
本願発明の別の課題は、複数段にも積上げたときに、互いに荷崩れを起すことなく安定に積重ねることができるようにした箱を提供することである。
【0009】
本願発明のさらに別の課題は、必要に応じて洗浄して繰返し使用することができる箱を提供することである。
【0010】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の主要な発明は、中空の合成樹脂製ボードを打抜いて折曲げて組立てられた箱であって、
底板と、該底板の長辺側に折曲げ可能に連設された長辺側側板と、前記底板の短辺側に折曲げ可能に連設された短辺側側板とを有し、上面が開放された箱体形状をなし、
前記長辺側側板の長さ方向の両側端にそれぞれ係止片が突設され、前記短辺側側板の長さ方向の両側端にそれぞれ突出部が設けられ、該突出部の根元側の上縁に下方に向けてスリット状切込みが形成され、該スリット状切込みに前記短辺側側板の突出部の根元側の係止用切込みが係止されて前記長辺側側板と前記短辺側側板とがコーナにおいて互いに直交するように組合され、
前記長辺側側板の長さ方向の両端部と前記短辺側側板の長さ方向の両端部にそれぞれ上方に突出する突出片が設けられ、
前記底板のコーナの部分に該底板から前記長辺側側板にかかる切欠きおよび前記短辺側側板にかかる切欠きを有するようにコーナ開口が形成され、この箱を積重ねたときに下側の箱の前記長辺側側板の両端部の突片と前記短辺側側板の両端部の突片とが上側の箱の前記コーナ開口の前記長辺側側板にかかる切欠きと前記短辺側側板にかかる切欠きとにそれぞれ整合されるようにした箱に関するものである。
【0012】
ここで、前記中空の合成樹脂製ボードが、押出し成形による成形体であって、押出し方向に延びる中空部を有してよい。また前記底板のコーナの部分に形成されたコーナ開口が水抜き孔を兼用してよい。
【発明の効果】
【0013】
本願の主要な発明は、中空の合成樹脂製ボードを打抜いて折曲げて組立てられた箱であって、
底板と、該底板の長辺側に折曲げ可能に連設された長辺側側板と、前記底板の短辺側に折曲げ可能に連設された短辺側側板とを有し、上面が開放された箱体形状をなし、
前記長辺側側板の長さ方向の両側端にそれぞれ係止片が突設され、前記短辺側側板の長さ方向の両側端にそれぞれ突出部が設けられ、該突出部の根元側の上縁に下方に向けてスリット状切込みが形成され、該スリット状切込みに前記短辺側側板の突出部の根元側の係止用切込みが係止されて前記長辺側側板と前記短辺側側板とがコーナにおいて互いに直交するように組合され、
前記長辺側側板の長さ方向の両端部と前記短辺側側板の長さ方向の両端部にそれぞれ上方に突出する突出片が設けられ、
前記底板のコーナの部分に該底板から前記長辺側側板にかかる切欠きおよび前記短辺側側板にかかる切欠きを有するようにコーナ開口が形成され、この箱を積重ねたときに下側の箱の前記長辺側側板の両端部の突片と前記短辺側側板の両端部の突片とが上側の箱の前記コーナ開口の前記長辺側側板にかかる切欠きと前記短辺側側板にかかる切欠きとにそれぞれ整合されるようにした箱に関するものである。
【0014】
このような構成によると、中空の合成樹脂製ボードを打抜いて得られるパネル状の部材のみによって箱を組立てることが可能になり、部品点数が1つの箱を提供できるようになる。また長辺側側板の長さ方向の両端の係止片と短辺側側板の突出部の根元側のスリット状切込みとを互いに係合させることにより箱形状に組立てられ、接着剤やホチキス等の結合部材を必要とせずに組立てることが可能になる。また不使用時においては、長辺側側板の長さ方向の両端の突出片と短辺側側板の突出部の根元側のスリット状切込みとの係合を解除することによって、長辺側側板と短辺側側板とを展開して偏平な状態にし、偏平な中空ボードとして何枚も積重ねた状態で保管や運搬を行なうことが可能になる。また長辺側側板の両端の突片と短辺側側板の両端の突片とをそれぞれ上側に積上げられる箱の底部のコーナ開口の長辺側側板にかかる切欠きと短辺側側板にかかる切欠きとに整合させることによって、上下に積上げられた箱体が互いに荷崩れを起すことがなくなる。またこのような箱体は、中空の合成樹脂製ボードを打抜いて組立てられた箱であるから、耐水性を有し、必要に応じて洗浄等を行ない、繰返して使用することができる。また底板のコーナの部分に形成されるコーナ開口は、水抜き孔としても利用できるために、水を含んだ野菜や魚等を入れた場合に、水が上記コーナ開口から排出されて好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】箱体を組立てる材料になる中空の合成樹脂製ボードの斜視図である。
【図2】同要部拡大断面図である。
【図3】箱を組立てるための中空の合成樹脂ボードの打抜いた状態の展開平面図である。
【図4】同中空の合成樹脂製ボードを折曲げて組立てるための動作を示す外観斜視図である。
【図5】組立てられた箱の外観斜視図である。
【図6】二段に積んだときの箱体の正面図である。
【図7】同二段に積んだときの箱体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1および図2は、本発明の一実施の形態に係る箱を組立てるための中空の合成樹脂製ボード10を示している。このような合成樹脂製ボード10は、オレフィン系樹脂、例えばポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂を用いて押出し成形されたものであって、その押出し用金型の押出し口の内側に臨んで特殊な中子を配して押出し成形される。ここでとくに図2に拡大して示すように、押出された中空の合成樹脂製ボード10は、平板状をなす上面板11と下面板12とを間欠的に連結用壁部13によって連結してなるものである。連結用壁部13には中空部14がこの合成樹脂製ボード10の押出し成形の方向に沿って形成されることになり、これによって中空の合成樹脂製ボードが提供される。
【0017】
図3はこのような中空の合成樹脂製ボード10を打抜き型によって打抜いてトリミングするとともに、折曲げ線21、23を形成したパネルを示している。ここで合成樹脂製ボード10の中央部には底板20が配置される。そして底板20の長辺には折曲げ線21を介して長辺側側板22が連設される。なおこの合成樹脂製ボード10の中空部14の延びる方向が、長辺側側板22の高さ方向と一致している。また底板10の短辺には折曲げ線23を介して短辺側側板24が連設される。
【0018】
上記長辺側側板22の長さ方向の両端の上縁には突片28が連設される。また長辺側側板22の長さ方向の両端には、下縁が傾斜した係止片29が連設される。係止片29の傾斜した下縁の根元側の部分には係止用切込み30が上方に向けてスリット状に形成される。これに対して短辺側側板24の長さ方向の両端にはそれぞれ上部に突出するように突片33が形成される。また突片33の外側の終端にほぼ対応する位置にスリット状切込み34が短辺側側板24の両端の上部から下方に向けて形成される。また短辺側側板24のほぼ中央部には取手穴35が形成される。また短辺側側板24は、その横方向の長さが底板20の短辺よりも長くなっており、両端が突出部36になっている。
【0019】
またこの中空の合成樹脂製ボード10は、とくに底板20のコーナの部分にコーナ開口40がほぼL字状に形成される。このコーナ開口40は、底板のコーナの部分を切欠いた切欠き41、長辺側側板22の下側の部分を切欠いた切欠き42と、短辺側側板24の上端の下縁を切欠いた切欠き43とを互いに連続するようにして形成されている。
【0020】
次に以上のような中空の合成樹脂製ボード10を折曲げて箱を組立てる動作を図4により説明する。まず底板20に対して折曲げ線21によって両側の長辺側側板22を底板20に対して直角に折曲げる。すると長辺側側板22の両側の突片28が上方に突出するようになる。また長辺側側板22の両側端の係止片29が長辺側側板22の長さ方向の両側に突出する。このような状態において、底板20に対して折曲げ線23によって短辺側側板24を直角に上方に折曲げる。そして短辺側側板24の両側に設けられているスリット状切込み34が長辺側側板22の係止片29を受入れるようにし、この係止片29の根元側のスリット状の係止用切込み30を短辺側側板24の両側のスリット状切込み34の底部に係合する。これによって図5に示すように、長辺側側板22と短辺側側板24とは、ともに底板20に対して直角に折曲げられた状態において、コーナの部分において長辺側側板22と短辺側側板24とが、係止片29の係止用切込み30とスリット状切込み34との係合構造によって組立てられることになり、上面が開放された直方体状の箱体形状をなすようになる。
【0021】
このようにして組立てられた箱は、底板20のコーナの部分にコーナ開口40を備えている。このコーナ開口40は、底板20の切欠き41と、長辺側側板22の切欠き42と、短辺側側板24の切欠き43とが互いに連続して構成されることになる。
【0022】
このような箱は、図3に示すような単一の合成樹脂製ボードを折曲げて組立てられるようになり、部品点数が1個である。またこのような合成樹脂製ボードは、長辺側側板22の係止片29と短辺側側板24のスリット状切込み34との係合構造によって箱体として組立てられ、接着剤やホチキス等の係合手段を全く必要としない。そして図3に示すように偏平に展開された状態で供給され、使用時に図4および図5に示すように組立てることになる。そして不使用時においては、再び図5に示す状態から図4に示す状態を経由して図3に示すような形状に偏平に展開することができる。そしてこのような箱を保管する場合には、図3に示すように展開されたボードを何段にも積重ねておくことができ、ほとんどスペースを必要としない。
【0023】
またこのような箱は、その底板20のコーナの部分にコーナ開口40を備え、このコーナ開口40の長辺側側板22の切欠き42の部分に、図6に示すような下段の箱の長辺側側板22の上端の突片28を受入れる。またコーナ開口40の短辺側側板24の切欠き43の部分に、図7に示すように、下段の箱の短辺側側板24の上端の突片33を受入れるようにする。これによって何段にも積んだときに、互いに荷崩れを起すことなく安定に積上げておくことが可能になる。
【0024】
またこのような箱は、その材質が中空成形されたオレフィン系樹脂の中空ボードから構成されており、耐水性を有している。また水を含むものを入れた場合には、上記底板20のコーナ開口40を通して排出することができる。すなわちコーナ開口40が水抜き孔として機能する。
【0025】
このような箱は、野菜入れ、魚入れ、等の市場において利用する通い箱として用いることができる。あるいはまた工場で製品や半製品を入れるための通い箱として用いることができる。さらにはゴミを収集するときに分別されたそれぞれのゴミをこの箱の中に入れることができる。またその他各種の物品を入れて用いるのに利用することができ、広範な利用範囲を有するものである。
【0026】
以上本願発明を図示の一実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態は、通い箱について説明しているが、本願発明は、家庭内において各種の物品を整理して収納しておくための箱としても用いることができる。また箱の寸法形状についても、目的に応じて任意に設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願発明の箱は、各種の物品を収納して繰返し用いるための通い箱として利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 中空の合成樹脂製ボード
11 上面板
12 下面板
13 連結用壁部
14 中空部
20 底板
21 折曲げ線
22 長辺側側板
23 折曲げ線
24 短辺側側板
28 突片
29 係止片
30 係止用切込み
33 突片
34 スリット状切込み
35 取手穴
36 突出部
40 コーナ開口
41 底板の切欠き
42 長辺側側板の切欠き
43 短辺側側板の切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の合成樹脂製ボードを打抜いて折曲げて組立てられた箱であって、
底板と、該底板の長辺側に折曲げ可能に連設された長辺側側板と、前記底板の短辺側に折曲げ可能に連設された短辺側側板とを有し、上面が開放された箱体形状をなし、
前記長辺側側板の長さ方向の両側端にそれぞれ係止片が突設され、前記短辺側側板の長さ方向の両側端にそれぞれ突出部が設けられ、該突出部の根元側の上縁に下方に向けてスリット状切込みが形成され、該スリット状切込みに前記短辺側側板の突出部の根元側の係止用切込みが係止されて前記長辺側側板と前記短辺側側板とがコーナにおいて互いに直交するように組合され、
前記長辺側側板の長さ方向の両端部と前記短辺側側板の長さ方向の両端部にそれぞれ上方に突出する突出片が設けられ、
前記底板のコーナの部分に該底板から前記長辺側側板にかかる切欠きおよび前記短辺側側板にかかる切欠きを有するようにコーナ開口が形成され、この箱を積重ねたときに下側の箱の前記長辺側側板の両端部の突片と前記短辺側側板の両端部の突片とが上側の箱の前記コーナ開口の前記長辺側側板にかかる切欠きと前記短辺側側板にかかる切欠きとにそれぞれ整合されるようにした箱。
【請求項2】
前記中空の合成樹脂製ボードが、押出し成形による成形体であって、押出し方向に延びる中空部を有する請求項1に記載の箱。
【請求項3】
前記底板のコーナの部分に形成されたコーナ開口が水抜き孔を兼用する請求項1に記載の箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−1422(P2013−1422A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134733(P2011−134733)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(506100990)日本トーカンパッケージ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】