説明

節電制御システム及び節電制御方法

【課題】通信回線を新設することなく、低コストに電気機器の節電制御を行う。
【解決手段】広域節電制御システム1において、広域節電制御装置9は、変電所2、配電線送り出し部4及び区分開閉器5から使用電力量を受信し、その使用電力量に応じて節電が必要と判断すれば、節電の制御信号を生成し、出力する。その制御信号が既存の電波に重畳され、その電波がアンテナ12から発信される。スピーカ13は、防災無線の電波を受信し、対象地域に対して音声を送出する。ラジオ14は、ラジオ放送波を受信し、音声を発する。テレビ15は、テレビ放送波を受信し、映像を表示し、音声を発する。マイクロフォンは、スピーカ13、ラジオ14及びテレビ15から発せられた音声を受け付け、その音声から制御信号を抽出し、制御回路に出力する。制御回路は、マイクロフォンから制御信号を取得し、その制御信号により家電機器10及び家電制御盤11の節電制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気製品の節電制御システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災の発生以降、各家庭においても、従来にも増して省エネ・節電対策の重要性が高まってきている。しかしながら、家庭用電気製品の節電対策は、省エネルギー家電の使用や控えめの温度設定、又は、使用を中止する等、個人の節電意識による部分が大きい。これに対して、電力会社では、ある程度余裕を持った発電能力を確保しているものの、気温上昇による急激な需要の増加、発電所の緊急停止等により、急に需給が逼迫する可能性がある。そのような事態への対応策が、いくつか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の「一斉同報通信を用いた広域電力量デマンドコントロールシステム」では、電力事業者と、一般の電力消費者とを送電線及び通信回線を介して接続し、電力事業者が管理する特定の地域の消費電力量が所定の閾値を超えた場合に、通信回線を介して電力事業者から電力消費者に対して一斉同報で節電要請を発信する。一方、当該地域の消費電力量が閾値以下に低下した場合には、一斉同報で節電解除を発信する。
【0004】
また、特許文献2の「広域電力需要と電力供給の管理」の方法では、ユーザが、遠隔から、電気式及び/又は機械式機器を監視し、その状況に応じて機器の動作を変更することを可能とする。これにより、機器に関連する資源消費量の遠隔制御及び遠隔調整を行うこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−345177号公報
【特許文献2】特表2007−510968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のシステムは、広域に亘って電力量を調整できるものの、電力事業者及び電力消費者を通信回線で結ぶ必要がある。また、特許文献2でも、機器を監視し、広域に亘って双方向で電力需給の遠隔制御・調整が可能であるが、通信回線が必要である。このように、両者ともに、正確な電力需給の調整が可能であるが、専用回線を設けなければならず、広域的にこのような設備を整備するには、コスト面で多大な負担になるものと思われる。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、通信回線を新設することなく、低コストに電気機器の節電制御を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、電気機器の節電を制御する節電制御システムであって、前記電気機器の節電を行うための制御信号を音声信号として生成する節電制御手段と、前記生成した制御信号を電波に重畳する信号重畳手段と、前記制御信号が重畳された電波を所定の地域に発信する電波発信手段と、前記発信した電波を受信し、当該電波を音声に変換し、当該音声を出力する音声出力手段と、前記電気機器に付設又は近設され、前記出力した音声を取得し、当該音声を電気信号に変換し、当該電気信号から前記制御信号を抽出する信号抽出手段と、前記電気機器に付設又は近設され、前記抽出した制御信号に基づいて、前記電気機器の節電を行う機器制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、既設の電波発信手段を用いて所定の地域に電波を発信し、既設の音声出力手段を用いてその近傍に音声を出力することにより、通信回線を新設することなく、所定の地域内に設置された電気機器を節電するための制御信号を送信することができる。これによれば、低コストに電気機器の節電制御を行うことができる。
【0010】
また、本発明の上記節電制御システムにおいて、前記節電制御手段は、前記所定の地域における使用電力量を取得し、当該使用電力量に基づいて前記電気機器の節電が必要か否かを判断し、当該節電が必要である場合に、前記制御信号を生成することとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、所定の地域内の使用電力量から判断して、さらに節電が必要であれば、次に発信すべき制御信号を生成する。これによれば、電波及び音声による制御信号の送信は一方向であるが、既存の電力量監視制御を利用して、所定の地域における使用電力量を節電制御に反映することにより、結果的にフィードバック制御を実現することができる。また、節電のための制御信号を一度発信したとしても、実際に音声が到達した結果、電気機器の節電が行われた範囲は正確に分からないが、使用電力量を用いたフィードバック制御により、必ずしも信頼性が十分でない音声伝達の部分を補完することができる。
【0012】
また、本発明の上記節電制御システムにおいて、前記節電制御手段は、前記所定の地域における使用電力量の目標値である目標電力量を記憶し、前記使用電力量を取得した際に、当該使用電力量が前記記憶した目標電力量より大きい場合に、前記使用電力量と、前記目標電力量との差分に基づいて、節電の度合を示す節電レベルを特定し、当該節電レベルを前記制御信号に設定し、前記機器制御手段は、前記制御信号に設定された節電レベルに基づいて、前記電気機器の節電を行うこととしてもよい。
【0013】
この構成によれば、実際の使用電力量が目標値より大きい場合に、それらの差分をなくすために、任意の節電方法を選択することができる。例えば、使用電力量と、目標値との差分を一度に解消するために、十分な節電レベルを設定してもよい。あるいは、使用電力量のフィードバックを利用して、節電レベルを1段階ずつ上げることにより、段階的に節電を進めてもよい。
【0014】
また、本発明の上記節電制御システムにおいて、前記節電制御手段は、前記所定の地域における使用電力量の目標値である目標電力量と、前記所定の地域を複数に分割した各エリアに固有のIDであるエリアIDとを記憶し、前記使用電力量を取得した際に、当該使用電力量が前記記憶した目標電力量より大きい場合に、前記使用電力量と、前記目標電力量との差分に基づいて、前記記憶したエリアIDのうち、1又は複数のエリアIDを選択し、当該エリアIDを前記制御信号に設定し、前記機器制御手段は、当該電気機器が設置されたエリアのエリアIDを記憶し、前記制御信号に設定されたエリアIDと、前記記憶したエリアIDとが一致する場合に、前記電気機器の節電を行うことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、実際の使用電力量が目標値より大きい場合に、それらの差分をなくすために、任意の節電方法を選択することができる。例えば、使用電力量と、目標値との差分を一度に解消するために、十分なエリアを指定してもよい。あるいは、使用電力量のフィードバックを利用して、節電対象のエリアを1つずつ指定することにより、段階的に節電を進めてもよい。
【0016】
なお、本発明は、節電制御方法を含む。その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信回線を新設することなく、低コストに電気機器の節電制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】広域節電制御システム1の構成を示す図である。
【図2】広域節電制御装置9のハードウェア構成を示す図である。
【図3】家電機器10のハードウェア構成を示す図である。
【図4】広域節電制御システム1の節電制御に用いられるデータの構成を示す図であり、(a)は目標電力量データ95Aの構成を示し、(b)は節電レベル管理データ95Bの構成を示し、(c)は制御データ106Aの構成を示し、(d)は制御信号のデータ構成を示す。
【図5】広域節電制御装置9の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る広域節電制御システムでは、防災無線や地域一斉放送に用いられるスピーカ、家庭内のラジオ、テレビ等の中継装置から、節電制御のための制御信号を重畳した音声信号を送出し、家電機器が、音声信号を集音するマイクロフォンと、音声信号から制御信号を抽出するフィルタとを備える。これにより、家電機器は、緊急時に発せられる節電要請の制御信号を取得し、節電モードや待機状態へ移行し、一方、節電解除の制御信号を取得することにより、通常モードや動作状態へ復帰する。
【0020】
制御信号には、節電を実施するエリア及び各家電機器の節電レベル(強、中、弱)の情報が含まれており、制御信号を送出した後に、変電所、区分開閉器、柱上変圧器等の単位で節電量(制御信号の効果)を監視する。
【0021】
そして、上記の節電量から判断して、さらなる節電が必要な場合は、対象のエリアを広くし、又は、節電量レベルを上げた制御信号を送出する等、段階的にフィードバック制御を実施する。
【0022】
これによれば、家電機器に対する音声の送出は一方向であるが、節電量を節電制御に反映することにより、結果としてフィードバック制御が可能となる。そして、専用の通信回線を設置することなく、広域的、かつ、双方向的に電力量を制御、調整することが可能である。
【0023】
≪システムの構成と概要≫
図1は、広域節電制御システム1の構成を示す図である。通常の配電系統の構成として、変電所2、配電線3、配電線送り出し部4、区分開閉器5、柱上変圧器6、電線7及び需要家宅8を備える。変電所2の配電線送り出し部4から高圧配電線である配電線3が延設され、その配電線3が区分開閉器5により所定数の区間に分けられる。その区間にある電柱には柱上変圧器6が設けられ、その柱上変圧器6から、低圧配電線や引込線である電線7がさらに延設され、各需要家宅8に達する。
【0024】
需要家宅8には、エアコン、テレビ、冷蔵庫、電気温水器等の家電機器10及び家電制御盤11が設置される。家電機器10は、電線7及び家電制御盤11を通じて供給される電力を消費しながら、それぞれの機能を果たす。家電制御盤11は、家電機器10への給電の入切を集中的に制御する装置であり、ブレーカの集合体からなる。
【0025】
上記の配電系統に対して、家電機器10の節電制御を行うために用いられる既存の設備として、広域節電制御装置9、アンテナ12、スピーカ13、ラジオ14及びテレビ15を備える。節電制御用の新たな設備としては、マイクロフォン及び制御回路(図示せず)が、節電制御の対象となる家電機器10及び家電制御盤11に設けられる。
【0026】
広域節電制御装置9は、変電所2、配電線送り出し部4及び区分開閉器5から使用電力量を受信し、その使用電力量に基づいて節電の必要性を判断し、その必要性に応じて節電制御用の制御信号を生成し、その制御信号を出力する。出力した制御信号は、既存の電波発信施設(信号重畳手段)において、音声信号に重畳されて、その制御信号を含む音声信号が電波に変換され、その電波がアンテナ12から発信される。電波発信施設は、ラジオ局やテレビ局であってもよい。電波には、防災無線の電波、ラジオ放送波、テレビ放送波等があり、異なる種類の電波に同じ制御信号を載せることができる。
【0027】
スピーカ13は、屋外に設置された防災用スピーカ装置であり、防災無線の電波を受信し、対象地域に対して音声を送出することにより、一斉放送を行う。ラジオ14は、需要家宅8に設置されたラジオ受信機であり、ラジオ放送波を受信し、音声を発する。テレビ15は、需要家宅8に設置されたテレビ受信機であり、テレビ放送波を受信し、映像を表示し、音声を発する。
【0028】
マイクロフォンは、スピーカ13、ラジオ14及びテレビ15から発せられた音声を受け付けて、その音声から制御信号を抽出し、制御回路(図示せず)に出力する。制御回路は、マイクロフォンから制御信号を取得し、その制御信号に基づいて家電機器10及び家電制御盤11の節電制御を行う。
【0029】
例えば、需要家宅8の家電制御盤11に、節電対象とすべき家電機器10(テレビ、電気温水器、エアコン、・・・等)の優先順位を予め設定しておくことにより、家電制御盤11が、制御信号の節電レベルに応じて、優先順位に従って各家電機器10を切っていく(又は、消費電力を下げていく)という方法も考えられる。
【0030】
図2は、広域節電制御装置9のハードウェア構成を示す図である。広域節電制御装置9は、通信部91、表示部92、入力部93、処理部94及び記憶部95を備え、各部がバス96を介してデータを送受信可能なように構成される。通信部91は、ネットワークを介して配電線送り出し部4等の配電設備及びアンテナ12等の電波発信施設とIP(Internet Protocol)通信を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部92は、処理部94からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部93は、オペレータがデータ(例えば、各配電線送り出し部4の目標電力量等)や指示を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等によって実現される。処理部94は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、広域節電制御装置9全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部95は、処理部94からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。広域節電制御装置9は、例えば、既存の電力量監視制御等に用いられるサーバ用コンピュータにより実現される。
【0031】
図3は、家電機器10のハードウェア構成を示す図である。家電機器10には、各種機器が含まれるが、共通の構成として、マイクロフォンとしての音電変換器101、フィルタ102及び増幅器103と、制御回路としてのA/D変換器104、制御部105及び記憶部106とを備える。なお、各家電機器10に固有の構成は省略する。
【0032】
音電変換器101は、スピーカ13、ラジオ14及びテレビ15から発せられた音声を集音し、電気信号に変換し、その変換後の電気信号をフィルタ102に出力する。実際の集音時には、相当の暗騒音(必要な信号以外の騒音)が発生しており、その暗騒音が電気信号にも含まれていると考えられる。それに対して、フィルタ102は、音電変換器101から電気信号を取得し、所定の周波数領域(制御信号の周波数帯域)の信号だけを通過させ、その信号を増幅器103に出力するものであり、バンドパスフィルタ等により実現される。また、例えば、制御信号が特定周波数及びその周波数の発生周期の組み合わせで作成されている場合には、フィルタ102として、暗騒音及び制御信号を含む電気信号において、特定の周波数領域の信号が所定時間(周期)ごとに現れるのを把握し、その信号の周波数及び周期を取り出し、復号化するもの(ウェーブレット変換)を用いてもよい。増幅器103は、フィルタ102から信号を取得し、増幅し、その増幅後の信号をA/D変換器104に出力する。
【0033】
A/D変換器104は、アナログ信号をデジタル信号に変換し、その変換後のデジタル信号を制御部105に出力する。制御部105は、A/D変換器104からデジタル信号を取得し、そのデジタル信号に含まれる制御信号の内容に応じた節電制御を、家電機器10に対して行う。記憶部106は、家電機器10の節電制御に必要なデータを記憶する。
【0034】
なお、家電制御盤11は、家電機器10と同様の、共通のハードウェア構成を備えるものとする。また、家電機器10のうち、例えば、エアコンやテレビ等のリモコンが、共通のハードウェア構成を備えることにより、エアコンやテレビの節電制御を行ってもよい。
【0035】
≪データの構成≫
図4は、広域節電制御システム1の節電制御に用いられるデータの構成を示す図である。図4(a)及び(b)は、広域節電制御装置9の記憶部95に記憶されるデータの構成を示す。図4(a)は、目標電力量データ95Aの構成を示す。目標電力量データ95Aは、配電線3ごとに節電を行うために、配電線送り出し部4の目標となる電力量を示すものであり、配電線送り出し部ID95A1及び目標電力量95A2を含む、配電線3ごとのレコードからなる。
【0036】
配電線送り出し部ID95A1は、配電線送り出し部4に固有のIDである。目標電力量95A2は、当該配電線において目標となる使用電力量であり、電力需給の逼迫状況に応じて随時更新される。例えば、時々刻々変化する、供給可能な最大電力量から所定のマージンを差し引いた電力量が設定される。また、季節によって変化する電力需要を考慮して、実現可能な電力量が設定される。さらに、変電所2では複数の配電線3全体に対して余裕のある給電ができればよいので、各配電線3間で目標電力量95A2を融通し、調整することも考えられる。広域節電制御装置9では、実際の使用電力量が目標電力量95A2以下になるように、家電機器10の節電制御が行われる。
【0037】
図4(b)は、節電レベル管理データ95Bの構成を示す。節電レベル管理データ95Bは、配電線送り出し部4ごとに、区分開閉器5から次の区分開閉器5までの区間により給電するエリアの節電レベルを管理するものであり、区間ID95B1、エリアID95B2及び節電レベル95B3を含む、区分開閉器5ごとのレコードからなる。これは、各区分開閉器5に電力量計を設置し、隣接する区分開閉器5間の使用電力量の差分により当該区間の使用電力量を算出する必要はあるものの、配電設備のうち、既存のシステムで使用電力量が把握できる最小単位が区分開閉器5であり、その区分開閉器5の配下それぞれにおいて、家電機器10の節電レベルを決定し、きめ細かく管理しようとするものである。
【0038】
区間ID95B1は、区分開閉器5に固有のIDである。エリアID95B2は、当該区分開閉器5が給電するエリア(地域)に固有のIDであり、その地域内の需要家宅8に設置された家電機器10にも、同じエリアIDが設定される。これにより、エリアごとの家電機器10の節電制御が精度よくできるようになる。節電レベル95B3は、当該エリア内にある家電機器10に設定すべき節電の度合を示し、例えば、強、中、弱、0のいずれかが設定される。
【0039】
図4(c)は、家電機器10の記憶部106に記憶される制御データ106Aの構成を示す。制御データ106Aは、節電制御のために用いられるデータであり、エリアID106A1及び事前設定モード106A2を含む。エリアID106A1は、家電機器10が設置されているエリアのIDであり、制御信号に含まれるエリアIDと比較され、一致すれば、節電に関する制御が行われる。事前設定モード106A2は、節電制御を行う前の、各家電機器10の設定モードであり、例えば、テレビであれば、選択していたチャンネルやボリュームの大きさであり、エアコンであれば、冷房又は暖房、設定温度、設定風量、設定方向等が設定される。そして、節電解除の制御信号を受信したときには、各家電機器10のモードが事前設定モード106A2に再設定される。
【0040】
図4(d)は、制御信号のデータ構成を示す。制御信号は、制御コード、エリアID及び節電レベルを含む。制御コードは、節電制御用のコードであり、節電指示又は節電解除を示すコードが設定される。エリアIDは、節電制御の対象となるエリアに固有のIDであり、節電レベル管理データ95Bのうち、1又は複数のエリアID95B2が設定される。節電レベルは、家電機器10に設定すべき節電の度合を示し、制御コードが節電指示の場合に、例えば、弱、中、強のいずれかが設定される。
【0041】
≪システムの処理≫
図5は、広域節電制御装置9の処理を示すフローチャートである。本処理は、広域節電制御装置9において、主として処理部94が、通信部91により他の装置との間でデータを送受信し、記憶部95のデータを参照、更新しながら、配電線3の各区間の節電制御を、並行して実施するものである。
【0042】
まず、広域節電制御装置9は、ある配電線送り出し部4から当該配電線3における使用電力量を取得する(S501)。次に、取得した使用電力量が目標電力量以下であるか否かを判定する(S502)。目標電力量には、記憶部95の目標電力量データ95Aのうち、配電線送り出し部ID95A1に対応する目標電力量95A2を用いる。使用電力量が目標電力量以下でなければ(S502のN)、家電機器10の節電を実施する必要がある。
【0043】
そこで、広域節電制御装置9は、節電レベル管理データ95Bのうち、1番目のレコードを参照し、節電レベル95B3が最大に設定されているか否かを判定する(S503)。例えば、図4(b)では、エリアID95B2がA1のレコードの、節電レベル95B3は「弱」であるので、最大の「強」ではない。節電レベル95B3が最大でなければ(S503のN)、そのエリアにおいて、さらに節電する余地があるので、節電レベル95B3を1つ上げる(S504)。例えば、節電レベル95B3が「弱」であれば、「中」に上げて、再設定する。
【0044】
一方、節電レベル95B3が最大であれば(S503のY)、そのエリアにおいては節電する余地がないので、次のエリアの節電レベル95B3を1つ上げる(S505)。例えば、図4(b)の節電レベル管理データ95Bにおいて、1番目のレコードの節電レベル95B3が「強」になっていると仮定すると、最大であるので、2番目のレコードの節電レベル95B3の「0」を「弱」に上げて、再設定する。
【0045】
そして、広域節電制御装置9は、節電指示の制御コードを設定した制御信号を音声信号として生成し、既存の電波発信施設(ラジオ局、テレビ局、防災用電波発信局等)に出力する(S506)。上記の例に従うと、S504の後処理であれば、制御信号のエリアIDにはA1が設定され、節電レベルには「中」が設定される。また、S505の後処理であれば、制御信号のエリアIDにはA2が設定され、節電レベルには「弱」が設定される。既存の電波発信施設は、広域節電制御装置9から出力された制御信号を取得し、その制御信号を電波に重畳してアンテナ12から発信する。詳細には、その時に、電波発信施設から電波が発信されていれば、その電波の元になっている音声信号に制御信号を重畳することにより、制御信号を含む電波を送信する。一方、電波が発信されていなければ、制御信号により変調した電波を送信する。これによれば、その時に電波が発信されていなくても、制御信号を乗せた電波をすぐに発信できるので、遅延することなく、タイムリーに節電制御を行うことができる。
【0046】
このとき、家電機器10では、音電変換器101が、スピーカ13等から制御信号を含む音声を受けて、電気信号に変換し、フィルタ102、増幅器103及びA/D変換器104の処理を経て、制御部105が、節電指示の制御信号を取得する。そして、制御部105は、制御信号に含まれるエリアIDと、記憶部106のエリアID106A1とが一致した場合に、制御信号に含まれる節電レベルに応じた節電制御を行う。この節電制御は、例えば、節電レベルの強、中、弱に応じた、各家電機器10の設定モードが記憶部106に予め記憶されており、その設定モードを用いるものとする。例えば、エアコンであれば、季節に応じて3段階の温度を設定する。テレビであれば、通常モード、節電モード、電源断(待機モード)の3段階を設定する。これによれば、節電指示の制御信号を取得するごとに、最初は「弱」のモードに設定し、「弱」で節電が足りなければ「中」のモード、「中」で足りなければ「強」のモードのように、段階的に制御することもできる。なお、エリアIDが一致しなければ、節電対象のエリア外であるので、何も処理しない。
【0047】
なお、スピーカ13、ラジオ14及びテレビ15は、節電のための制御信号を常時発しているわけではないので、制御信号を可聴周波数帯域に含めても、人に対して問題はないと思われる。ただし、人にストレスを与えることなく制御する必要がある場合には、可聴周波数帯域をはずした周波数帯域に制御信号を重畳させるようにしてもよい。
【0048】
S502において、使用電力量が目標電力量以下であれば(S502のY)、供給可能な最大電力量までには十分なマージンがあるので、節電は実施しなくてもよいことになる。そこで、広域節電制御装置9は、節電レベル管理データ95Bを参照して、節電レベル95B3が0でないエリアがあるか否かを判定する(S507)。これは、区間内に節電実施中のエリアがあるか否かを確認するものである。該当するエリアがあれば(S507のY)、その節電レベル95B3を0に設定する(S508)。そして、節電解除の制御コードを設定した制御信号を音声信号として生成し、既存の電波発信施設に出力する(S509)。これにより、アンテナ12から制御信号を含む電波が発信される。
【0049】
家電機器10では、上記と同様に、音電変換器101が、制御信号を含む音声を受けて、電気信号に変換し、その後、制御部105が、節電解除の制御信号を取得する。そして、制御信号に含まれるエリアIDと、記憶部106のエリアID106A1とが一致した場合に、節電解除の制御を行う。詳細には、家電機器10のモードを、制御データ106Aの事前設定モード106A2に戻す。これにより、家電機器10は、節電制御を受ける前のモードに戻ることになる。
【0050】
S507で、節電実施中のエリアがなければ(S507のN)、当該配電線3内の全エリアで節電が解除されていることになり、S501の処理に戻る。
【0051】
なお、上記実施の形態では、図1に示す広域節電制御システム1内の広域節電制御装置9及び家電機器10を機能させるために、処理部94及び制御部105(CPU)で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る広域節電制御システム1が実現されるものとする。この場合、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0052】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、節電制御のために通信回線を新設することなく、低コストに、広域に亘って需要家宅8に設置された家電機器10の節電制御を行うことができる。
【0053】
詳細には、まず、図3に示すように、既存のフィルタ102を用いることにより、暗騒音から特定の周波数領域を抽出できるので、音声による伝達経路を設けても、その途中で入り込んだ雑音の中から制御信号を十分に抽出することができる。
【0054】
次に、図5のS501〜S506に示すように、実際の使用電力量が目標電力量より大きい場合に節電制御を行う、すなわち、当該配電線3から給電を受ける家電機器10全体の使用電力量を節電制御に反映することにより、フィードバック制御を実現することができる。また、これによれば、音声は実際にどこまで届いているかは明確に分からないが、そのように確実性が十分でない音声伝達の部分を、既存の電力量監視制御によって補うことができる。
【0055】
以上によれば、電波及び音声を用いて制御信号を送信することにより、家電機器10の節電が可能なため、インターネットを含む通信回線が発達していない発展途上国等でも有効に適用できる。また、家電機器10ごとに専用回線や専用アドレスを設ける必要がなく、マイクロフォン及び制御回路を追加するだけでよいので、低コストで済む。
【0056】
また、変電所2等で電力需給が逼迫している場合に、行政機関の指示や電力会社の呼びかけにより、消費者が個々に節電対応せずとも自動で節電することができる。また、各消費者の手動操作による節電と比較すれば、速やかな対応が可能である。
【0057】
さらに、電力供給不足による突然の停電及び計画停電を回避できる可能性が高くなる。そして、広域節電制御システム1を電力の需給調整に活用することができる。
【0058】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0059】
(1)上記実施の形態では、広域節電制御装置9が使用電力量を随時把握し、目標電力量と比較することにより、節電の要否を判断するように説明したが、主として変電所2側で制御するようにしてもよい。例えば、変電所2、配電線送り出し部4、区分開閉器5、柱上変圧器6の各単位で電力の需給状況を監視することにより、その時点で必要な節電量の目標値を特定するとともに、制御信号の発信前後における消費電力量の変化分である節電量(制御信号の効果)を定量的に把握し、その節電量と、目標値とを比較することにより、さらなる節電の要否を判断する。
【0060】
(2)上記実施の形態では、家電機器10の節電制御を行うように説明したが、他の電気機器を対象にしてもよい。例えば、店舗やオフィスビルに設置された照明機器や空調機器等であってもよい。
【0061】
(3)上記実施の形態では、使用電力量が目標電力量より大きい場合に、節電レベルを1段階ずつ上げるように説明したが、使用電力量と、目標電力量との差分の大きさに応じて、節電レベルを選択してもよい。また、新たなエリアの節電レベルを上げる際に、1つのエリアだけを選択するように説明したが、上記差分の大きさに応じて、1又は複数のエリアを選択してもよい。
【0062】
さらに、1つのエリアの節電レベルが最大になったときに、次のエリアを節電対象にするように説明したが、別の手順であってもよい。例えば、まず、1つのエリアを「弱」にした後、さらに節電が必要であれば、次のエリアを「弱」に設定することが考えられる。そして、当該区間のすべてのエリアを「弱」に設定しても、さらに節電が必要であれば、1つのエリアを「弱」から「中」に設定する。
【符号の説明】
【0063】
1 広域節電制御システム(節電制御システム)
9 広域節電制御装置(節電制御手段、節電制御装置)
94 処理部
95 記憶部
95A2 目標電力量
10 家電機器(電気機器)
102 フィルタ(信号抽出手段、機器制御装置)
105 制御部(機器制御手段、機器制御装置)
106 記憶部(機器制御手段、機器制御装置)
106A1 エリアID
12 アンテナ(電波発信手段)
13 スピーカ(音声出力手段)
14 ラジオ(音声出力手段)
15 テレビ(音声出力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の節電を制御する節電制御システムであって、
前記電気機器の節電を行うための制御信号を音声信号として生成する節電制御手段と、
前記生成した制御信号を電波に重畳する信号重畳手段と、
前記制御信号が重畳された電波を所定の地域に発信する電波発信手段と、
前記発信した電波を受信し、当該電波を音声に変換し、当該音声を出力する音声出力手段と、
前記電気機器に付設又は近設され、前記出力した音声を取得し、当該音声を電気信号に変換し、当該電気信号から前記制御信号を抽出する信号抽出手段と、
前記電気機器に付設又は近設され、前記抽出した制御信号に基づいて、前記電気機器の節電を行う機器制御手段と、
を備えることを特徴とする節電制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の節電制御システムであって、
前記節電制御手段は、
前記所定の地域における使用電力量を取得し、当該使用電力量に基づいて前記電気機器の節電が必要か否かを判断し、当該節電が必要である場合に、前記制御信号を生成する
ことを特徴とする節電制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の節電制御システムであって、
前記節電制御手段は、
前記所定の地域における使用電力量の目標値である目標電力量を記憶し、
前記使用電力量を取得した際に、当該使用電力量が前記記憶した目標電力量より大きい場合に、前記使用電力量と、前記目標電力量との差分に基づいて、節電の度合を示す節電レベルを特定し、当該節電レベルを前記制御信号に設定し、
前記機器制御手段は、
前記制御信号に設定された節電レベルに基づいて、前記電気機器の節電を行う
ことを特徴とする節電制御システム。
【請求項4】
請求項2に記載の節電制御システムであって、
前記節電制御手段は、
前記所定の地域における使用電力量の目標値である目標電力量と、前記所定の地域を複数に分割した各エリアに固有のIDであるエリアIDとを記憶し、
前記使用電力量を取得した際に、当該使用電力量が前記記憶した目標電力量より大きい場合に、前記使用電力量と、前記目標電力量との差分に基づいて、前記記憶したエリアIDのうち、1又は複数のエリアIDを選択し、当該エリアIDを前記制御信号に設定し、
前記機器制御手段は、
当該電気機器が設置されたエリアのエリアIDを記憶し、
前記制御信号に設定されたエリアIDと、前記記憶したエリアIDとが一致する場合に、前記電気機器の節電を行う
ことを特徴とする節電制御システム。
【請求項5】
所定の地域ごとに設置された節電制御装置と、各電気機器に付設又は近設された機器制御装置とにより、前記電気機器の節電を制御する節電制御方法であって、
前記節電制御装置は、
前記電気機器の節電を行うための制御信号を音声信号として生成するステップと、
前記生成した制御信号を電波に重畳するステップと、
前記制御信号が重畳された電波を前記所定の地域に発信するステップと、
を実行し、
前記機器制御装置は、
前記発信した電波から変換された音声を取得し、当該音声を電気信号に変換し、当該電気信号から前記制御信号を抽出するステップと、
前記抽出した制御信号に基づいて、前記電気機器の節電を行うステップと、
を実行する
ことを特徴とする節電制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の節電制御方法であって、
前記節電制御装置は、
前記所定の地域における使用電力量を取得し、当該使用電力量に基づいて前記電気機器の節電が必要か否かを判断し、当該節電が必要である場合に、前記制御信号を生成する
ことを特徴とする節電制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の節電制御方法であって、
前記節電制御装置は、
前記所定の地域における使用電力量の目標値である目標電力量を記憶し、
前記使用電力量を取得した際に、当該使用電力量が前記記憶した目標電力量より大きい場合に、前記使用電力量と、前記目標電力量との差分に基づいて、節電の度合を示す節電レベルを特定し、当該節電レベルを前記制御信号に設定し、
前記機器制御装置は、
前記制御信号に設定された節電レベルに基づいて、前記電気機器の節電を行う
ことを特徴とする節電制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載の節電制御方法であって、
前記節電制御装置は、
前記所定の地域における使用電力量の目標値である目標電力量と、前記所定の地域を複数に分割した各エリアに固有のIDであるエリアIDとを記憶し、
前記使用電力量を取得した際に、当該使用電力量が前記記憶した目標電力量より大きい場合に、前記使用電力量と、前記目標電力量との差分に基づいて、前記記憶したエリアIDのうち、1又は複数のエリアIDを選択し、当該エリアIDを前記制御信号に設定し、
前記機器制御装置は、
当該電気機器が設置されたエリアのエリアIDを記憶し、
前記制御信号に設定されたエリアIDと、前記記憶したエリアIDとが一致する場合に、前記電気機器の節電を行う
ことを特徴とする節電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99173(P2013−99173A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241552(P2011−241552)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】