説明

節類を含む膨化成形食品及びその製造方法

【課題】サクサクとした軽い食感を有する新しい形態の節類を含む膨化成形食品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】チップ状に粉砕した節類を含んだ食品素材Sを膨化成形することにより、前記節類1がスポンジ状に膨張して混入されている節類を含む膨化成形食品と、チップ状に粉砕した節類1を含んだ食品素材Sを、所定の圧力及び温度に設定した成形型内へ投入して焼成した後、上型を徐々に上昇させて焼成品を膨化するとともに型内で生成した水蒸気を型外へ排気し、次いで、上型の上昇を止めて型内を所定容積に維持した状態で膨化及び排気を継続して所定形状の膨化成形食品を成形する節類を含む膨化成形食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鰹節やサバ節などの従来から消化性に難はあるが良質のたんぱく質を含む節類を主原料とする節類を含む膨化成形食品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、膨化成形食品としてポン菓子が広く知られている。このポン菓子は、穀類膨張器と呼ばれる製造機械を用いて、その回転式筒状の圧力窯に米などの原料を入れ蓋をして密閉し、窯ごと回転させながら加熱し十分に加圧した後、蓋を開いて一気に減圧して、原料内部の水分を急激に膨張させることにより得られるサクサクとした軽い食感の菓子である。蓋を開いた際に発生する音からポン菓子と呼ばれるようになったものである。
一方、特許文献1に示されるように、ポン煎餅と称される膨化成形食品もある。これは、上下一対の型で形成されるキャビティ内に原料を入れ一定時間加熱・加圧後に上型を開いて減圧することで急激に膨張させ、型に添った一定形状として得られるサクサクとした軽い食感の菓子である。
【0003】
これらの膨化成形食品に加工可能な原料としては、従来から、米、大麦、トウモロコシ、大豆、蚕豆、銀杏、栗等の穀類や豆類が使用されている。また、膨化成形食品はサクサク感があっていずれも原料とは異なる食感・形状の食品を提供することができ、また、原料の風味や栄養素をそのまま保持することができるという利点を有しており、更には水分を含まないため長期間の保存にも適しているという利点も有するものである。
【0004】
ところが、鰹節、サバ節、イワシ節、マグロ節、サンマ節などの節類は、血あいや油を多く含んでいてベタついてしまうため、膨化成形食品に加工することは不向きな原料と言われており、現時点では節類を含む膨化成形食品は実現されていない。一方、特許文献2に示されるように、節類を約10mm以下のブロック形状に加工し煮出し用加工節類とするものが提案されているが、煮出しとしての使用であり菓子のようにしてそのまま食べることはできないものであった。
このような状況の中で、節類は風味が豊かであり良質のたんぱく質を含んで栄養も豊富であることから、節類の新たな用途として、もっと手軽に食べることができ、また食感が従来の節とは全く異なったもので、しかも風味や栄養はそのまま保持することができる節類を利用した新しい形態の膨化成形食品の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−79705号公報
【特許文献2】特開平5−252862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決することを目的として、サクサクとした軽い食感で子供から大人まで誰でも手軽に食べることができ、また豊かな風味と栄養を備えており、更に節類の新たな用途を提供することができる節類を含む膨化成形食品及びその製造方法を提供せんとして完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、チップ状に粉砕した節類を含んだ食品素材を膨化成形することにより、前記節類がスポンジ状に膨張して混入されていることを特徴とする膨化成形食品である。
【0008】
また、食品素材中における節類の含有量は、3質量%以上であることが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。更に、食品素材に穀類、デンプン質類、海藻類、茶葉類、ゴマ・ナッツ類、肉類、調味料、着色料、香料の1種又は2種以上を混合することもでき、これを請求項3に係る発明とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、チップ状に粉砕した節類を含んだ食品素材を、所定の圧力及び温度に設定した成形型内へ投入して焼成した後、上型を徐々に上昇させて焼成品を膨化するとともに型内で生成した水蒸気を型外へ排気し、次いで、上型の上昇を止めて型内を所定容積に維持した状態で膨化及び排気を継続して所定形状の膨化成形食品を成形することを特徴とする節類を含む膨化成形食品の製造方法である。
【0010】
前記所定の圧力が5〜10気圧で、加熱温度が200〜350℃であることが望ましく、これを請求項5に係る発明とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、チップ状に粉砕した節類を含んだ食品素材を膨化成形することにより、前記節類がスポンジ状に膨張して混入されているので、節類をサクサクとした軽い食感で子供から大人まで誰でも手軽に食べることができ、また豊かな風味と栄養を備えた新しい形態の食品を提供することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、食品素材中における節類の含有量が、3質量%以上であるので、節類の風味と栄養をしっかりと確保することができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明では、食品素材に穀類、デンプン質類、海藻類、茶葉類、ゴマ・ナッツ類、肉類、調味料、着色料、香料の1種又は2種以上が混合されているので、マイルドな味付けや風味のある味付けに調整することができ、より食べやすくできる。
【0014】
また、請求項4に係る発明では、チップ状に粉砕した節類を含んだ食品素材を、所定の圧力及び温度に設定した成形型内へ投入して焼成した後、上型を徐々に上昇させて焼成品を膨化するとともに型内で生成した水蒸気を型外へ排気し、次いで、上型の上昇を止めて型内を所定容積に維持した状態で膨化及び排気を継続して所定形状の膨化成形食品を成形することで、節類を含む膨化成形食品を連続して効率敵、かつ安価に製造することが可能となる。
【0015】
請求項5に係る発明では、所定の圧力を5〜10気圧、加熱温度を200〜350℃に調整することにより、従来は膨化成形が難しいとされていた節類を確実に膨化処理できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1の要部の拡大断面図である。
【図3】本発明の製造工程の概略を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は本発明に係る膨化成形食品Pを示す斜視図であり、図2は図1の要部の拡大断面図である。
この膨化成形食品Pは、チップ状に粉砕した節類1を含んだ食品素材を煎餅状に膨化成形することにより、前記節類1がスポンジ状に膨張して混入されたものである。チップ状とは、長さが約4mm以下、好ましくは2mm以下の塊状のものに限らず、薄片状、線状、粉状等のものも含む概念であり、混入の形態としては、均一に分散されているものや、例えば中央部に一塊に入っているもの等、いずれでもよい。また、前記節類は、鰹節、サバ節、イワシ節、マグロ節、サンマ節などの強固で難消化性の節であり、木枯れ節、荒節、加工節、亀節、荒亀節、はだか節などのいずれでもよい。その他、鶏肉などの畜肉節でもよい。
なお、図において、2は玄米からなる素材、3はコンブからなる素材であるが、これらの添加可能な素材については後述する。
【0018】
以下に、本発明の膨化成形食品Pの製造方法について、図3に基づき説明する。
先ず、図3(a)に示す原料投入工程において、チップ状に粉砕した節類1を含んだ食品素材Sを型内へ所定量投入する。この成形型は、一対の上型11と下型12と胴型13で構成されるものであり、型温度は200〜350℃、好ましくは250〜300℃に加熱されている。
【0019】
次いで、図3(b)に示す焼成工程において、上型11が下降して所定の圧力で型を閉じ、キャビティ内で食品素材Sを圧縮しつつ焼成する。この時の圧力は約5〜10気圧、好ましくは7〜8気圧であり、焼成時間としては0.01〜10秒間、好ましくは0.01〜3秒の短い時間保持するものである。このような高温・高圧の条件下で、かつ短時間の焼成工程を行うことにより、従来は不適格とされていた節類を膨化処理可能にしたものと考えられる。
【0020】
焼成工程を経ると、次に図3(c)に示す膨化・排気工程に移る。ここでは、上型11を所定の速度で徐々に引き上げることにより、緩やかな上型11の上昇に合わせてキャビティ内の食品素材Sの膨化が行われるとともに、食品素材S中に含まれていた水分が水蒸気となって徐々に排出され膨化・排気が行われる。
【0021】
次に、図3(d)に示すように、上型11の上昇を止めて型内を所定容積に維持した状態で膨化及び排気を継続し、所定形状(厚み)の膨化成形食品Pを得る。その後は、上型11を更に上昇させてキャビティ内から膨化成形食品Pを取り出し、以後は同様の工程を繰り返して膨化成形食品Pを効率よく連続成形する。
【0022】
なお、前記節類1は食品素材Sの全部とすることもできるが、その他の素材と混合したほうが新しい風味や食感を有する菓子として食べやすくなるので好ましい。その他の素材としては穀類、デンプン質類、海藻類、茶葉類、ゴマ・ナッツ類、肉類、調味料、着色料、香料などの1種又は2種以上を味付け、風味付け、着色等の目的で任意に選択して混合することができる。
また、食品素材中における節類1の含有量は3質量%以上とする。3質量%未満では節類の風味を十分にいかした膨化成形食品Pを得ることが難しくなるからである。好ましくは10質量%以上であり、100%節類とすることもできる。
【0023】
以上のようにして成形された膨化成形食品Pは、図1、図2に示されるように、節類1がスポンジ状に膨張して均一分散されており、サクサクとした軽い食感で子供から大人まで誰でも手軽に食べることができ、また豊かな風味と栄養を備えた従来にない新しい形態の食品となる。
また、本発明の膨化成形食品Pは素材が合成着色剤や合成味付け剤を使用せず、全て天然物で構成しているため健康的であり、雑穀等の素材を添加した場合には健康食品として食することもできる。更には、水分を含まないため長期間の保存も可能である。また節類から形成されているため取扱性に優れたダシとしての利用や、湯をかければ粥状になるので病院食や老人食としての利用に供する等、種々の用途に用いることが可能となる。
【実施例】
【0024】
食品素材として、チップ状に粉砕した鰹節70質量%、玄米28質量%、味付け材として乾燥コンブを粉砕して粉末状にしたもの2質量%からなるものを準備した。この食品素材を、成形型のキャビティ(内径が5cm、高さが1mmの円板状)内に投入して圧縮・焼成した。型温度は280℃、型の閉じ圧力は7.5気圧である。0.5秒焼成した後、上型を徐々に上昇させて膨化と水蒸気の排出を行った。上型の上昇を止めて、更に3秒間の膨化と水蒸気の排出を継続した。その後、型を開いて中から膨化成形食品を取り出した。
得られた膨化成形食品は、図1に示されるように円板状の煎餅であり、鰹節が全体に均一分散されたものであり、サクサクとしたポン菓子特有の軽い食感であった。また、鰹節の風味がそのまま残っており、芳ばしく今までに存在しない食品を得ることができた。
【符号の説明】
【0025】
1 節類
2 玄米からなる素材
3 コンブからなる素材
11 上型
12 下型
13 胴型
P 膨化成形食品
S 食品素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ状に粉砕した節類を含んだ食品素材を膨化成形することにより、前記節類がスポンジ状に膨張して混入されていることを特徴とする節類を含む膨化成形食品。
【請求項2】
食品素材中における節類の含有量が、3質量%以上である請求項1に記載の節類を含む膨化成形食品。
【請求項3】
食品素材に穀類、デンプン質類、海藻類、茶葉類、ゴマ・ナッツ類、肉類、調味料、着色料、香料の1種又は2種以上が混合されている請求項1または2に記載の節類を含む膨化成形食品。
【請求項4】
チップ状に粉砕した節類を含んだ食品素材を、所定の圧力及び温度に設定した成形型内へ投入して焼成した後、上型を徐々に上昇させて焼成品を膨化するとともに型内で生成した水蒸気を型外へ排気し、次いで、上型の上昇を止めて型内を所定容積に維持した状態で膨化及び排気を継続して所定形状の膨化成形食品を成形することを特徴とする節類を含む膨化成形食品の製造方法。
【請求項5】
所定の圧力が5〜10気圧で、加熱温度が200〜350℃である請求項4に記載の節類を含む膨化成形食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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