説明

簡易テント

【課題】 簡単な操作で雨に濡れない屋外の作業空間を形成することができる簡易テントを提供する。
【解決手段】支柱2に対して着脱可能に形成され、支柱2を囲繞するように支柱2の周囲に配設される曲線部を有する部材であるレール21と、レール21に沿って移動させるように構成した複数個の移動片と、基端部が前記各移動片にそれぞれ取り付けられて支柱2と反対側に張り出すようにした複数本の骨部材22と、レール21の周方向に関して隣接する骨部材22の間に配設するとともに骨部材22間で展張し得るシート部材23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は簡易テントに関し、特に屋外に設置する断路器の操作機構等の雨天時の保守点検に用いて有用なものである。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置された電気設備の保守・点検を雨天時に行なう場合には、充電部に雨水が付着しないように留意しつつ作業を進める必要がある。例えば、屋外に設置する断路器の操作機構の雨天時の保守・点検作業においては、操作機構を収納する操作箱が配設されている支柱に、シートの一端に取り付けたロープを結び付けるとともに、前記シートの他端に取り付けたロープを他の適当な固定物に結び付けることにより前記操作箱の上方にシートを張り、このシートの下方に雨に濡れない作業空間を確保していた。
【0003】
なお、雨天時の作業を円滑に進めるための公知技術として特許文献1を挙げることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−037697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロープとシートを利用して雨天時の作業空間を形成する従来技術では、シートの展張作業に多大の時間を要し、極めて作業効率が悪いものとなっていた。そこで、必要なとき雨に濡れない作業空間を容易に形成し得る簡易テントの出現が待望されていた。
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑み、簡単な操作で雨に濡れない屋外の作業空間を形成することができる簡易テントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
支柱に対して着脱可能に形成され、前記支柱を囲繞するように前記支柱の周囲に配設される曲線部を有する部材であるレールと、
前記レールに沿って移動させるように構成した複数個の移動片と、
基端部が前記各移動片にそれぞれ取り付けられて前記支柱と反対側に張り出すように構成した複数本の骨部材と、
前記レールの周方向に関して隣接する骨部材の間に配設するとともに前記骨部材間で展張し得るシート部材とを有することを特徴とする簡易テントにある。
【0008】
本発明の第2の態様は、
上記第1の態様に記載する簡易テントにおいて、
前記骨部材は前記基端部から先端に向かって斜め上方に伸ばされていることを特徴とする簡易テントにある。
【0009】
本発明の第3の態様は、
上記第1の態様に記載する簡易テントにおいて、
前記レールは、一つのU字状部材の開口端に他のU字状部材の開口端を当接させてこの開口端を塞ぐように両者を連結することにより全体として環状に形成したものであることを特徴とする簡易テントにある。
【0010】
本発明の第4の態様は、
上記第1乃至第3の態様に記載する簡易テントにおいて、
前記移動片は、前記骨部材に対し回転可能に取り付けられ、前記レールを転動して移動するローラで構成したことを特徴とする簡易テントにある。
【0011】
本発明の第5の態様は、
上記第1の態様乃至第4の態様に記載する簡易テントにおいて、
前記レールは、断路器の支柱に装着された操作箱の上方で前記支柱に装着するものであることを特徴とする簡易テントにある。
【0012】
本発明の第6の態様は、
上記第1乃至第5の態様の何れか一つに記載する簡易テントにおいて、
前記レールは、下方に開口する開口部を介して前記支柱の構造材である水平なプレートに上方から嵌め込まれる断面コ字状の取付治具を介して前記支柱に装着するように構成したことを特徴とする簡易テントにある。
【0013】
本発明の第7の態様は、
上記第6の態様に記載する簡易テントにおいて、
前記取付治具は、前記レールの支柱側の内周面との間の水平方向の距離を調整し得る距離調整手段を介して前記レールに取り付けたものであることを特徴とする簡易テントにある。
【0014】
本発明の第8の態様は、
上記第7の態様に記載する簡易テントにおいて、
前記距離調整手段は、両端部のヒンジ部を介して前記レール及び取付治具に固着したレバーで構成したことを特徴とする簡易テントにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支柱にレールを装着するとともに移動片をそれぞれ前記レールに沿って移動させることにより骨部材を介してシート部材を展張することができる。しかも、一連の作業は容易且つ迅速に行うことができる。
【0016】
この結果、シート部材の下方に雨に濡れることのない作業空間を形成することができ、この作業空間で所定の作業を雨に濡れることなく行うことができる。したがって、特に水分の付着を嫌う電気設備の保守点検、例えば屋外に設置された断路器の操作機構の雨天における保守、点検を容易且つ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態を適用する断路器を示す斜視図である。同図に示すように、断路器1は、架台である支柱2上に三相分のベース3(3a,3b,3c)が平行に設置され、それぞれのベース3の上面中央部に、スラストベアリング4を介して回転碍子5が垂直かつ回転自在に取り付けられている。また、ベース3の両端部には、その上面に固定碍子6が垂直に固定され、これら回転碍子5や固定碍子6によって碍子装置7が構成されている。
【0018】
回転碍子5の上端には、ブレード8が支持部9を介して水平に固定され、ブレード8は、回転碍子5の回転に伴い一体に回転するようになっている。また、固定碍子6の上端には、架線10が接続される端子台11aや、この端子台11aに電気的に接続されたフィンガコンタクト11b等を有する接触端子11が設けられている。前記ブレード8は、導電性部材によって形成され、両端部にフィンガコンタクト11bと接触可能な接点を構成するブレードコンタクトが設けてある。
【0019】
支柱2には、手動又は自動によって操作ロッド12を回転駆動させる操作機構を収納する操作箱13が取り付けられている。ここで、操作ロッド12の先端は、ベース3に取り付けられたスラストベアリング4に駆動機構14を介して接続されている。この駆動機構14を介して操作ロッド12と接続されたスラストベアリング4は、操作丸棒15を介して他の相のスラストベアリング4に接続されている。
【0020】
かかる断路器において操作機構で発生する回転力は、操作ロッド12、駆動機構14を介してスラストベアリング4に伝達されるとともに、操作丸棒15を介して他の相のスラストベアリング4にも伝達され、それぞれのスラストベアリング4を介して回転碍子5に伝達されるので、それぞれの相の回転碍子5が同期して回転する。この結果、各相の接触端子11,11に対して各ブレード8の両端が離反乃至接触することにより架線10,10間を開閉する。すなわち、各相のブレード8が同一の開閉動作を行う。
【0021】
図2は上記断路器1の操作箱13内に収納されている操作機構の雨天時における保守・点検の際に用いる簡易テントを示す図で、(a)はその正面図、(b)はその平面図である。また、図3は各部を抽出して示す図で、(a)は図2(a)のA部の拡大図、(b)は図3(a)のB部の拡大図である。
【0022】
これらの図に示すように、本形態に係る簡易テントは、レール21、骨部材22、シート部材23及び移動片24からなる。
【0023】
ここで、レール21は、支柱2に対して着脱可能に形成され、支柱2を囲繞するように支柱2の周囲に配設される曲線部を有するU字状の部材である。したがって、レール21はその支柱2に対する装着時、U字状の開口部を介して支柱2側に押し込むことで水平な面内で支柱2を囲繞するように配設される。このレール21にはこれに沿って移動する複数個(本形態では5個)の移動片24が配設してある。さらに詳言すると、図3(b)に明示するように、レール21は垂直な面の上下両端部が、断面がL字形状になるように外側に折り曲げられて折曲部を形成しており、各移動片24は、その外周部がレール21の前記折曲部に接触して外側への抜けを防止される結果、レール21の周面に沿って移動するようになっている。
【0024】
また、このときのレール21の装着は、アングル部材で形成した治具を介してワンタッチで行なうことができるようになっている(レール21の装着部分の具体的な構造は後に詳述する)。
【0025】
移動片24と同数の骨部材22は、その基端部が各移動片24にそれぞれ取り付けられて支柱2と反対側に張り出すように構成してある。ここで、各骨部材22は基端部から先端に向かって斜め上方に伸ばされている。すなわち、支柱2側が最も低くなっており、外側(支柱2と反対側)に行くほど高くなっている。
【0026】
シート部材23は、骨部材22間で展張し得るようにレール21の周方向に関して隣接する骨部材22間に貼り付けてある。
【0027】
この結果、移動片24を移動して一方の側に寄せることにより骨部材22を束ねてシート部材23を畳むとともに、この状態から移動片24を他方の側に移動することによりシート部材23を展張して屋根を形成することができる。また、折り畳んだときには骨部材22の長さで規定される長尺ものではあるが、さほど嵩張ることのない軽量物として搬送にも便利なものとなる。
【0028】
雨天時に操作箱13を開いて内部の電気部品である操作機構の保守・点検を行なう際には本形態に係る簡易テントを用いて所定の作業空間を形成する。具体的には、先ず支柱2にレール21を装着する。その後、移動片24をそれぞれレール21に沿って移動させることにより骨部材22を介してシート部材23を展張する。
【0029】
この結果、図2(b)に明示するように、シート部材23の下方に雨に濡れることのない作業空間を形成することができ、この作業空間で操作箱13を開いて所定の作業を雨に濡れることなく行うことができる。ここで、骨部材22は支柱2から離れるほど高い位置にあるので、作業空間も外側に向かって徐々に高くなる。これは、作業員が立って歩き回る外側の天井が高いことを意味し、この点でも良好な作業性を確保し得る。
【0030】
なお、移動片24は固定も含め、骨部材22にその基端部を介して取り付けるようになっていれば良く、また形状も特に制限はないが、円板状に形成するとともに骨部材22に対して回転可能に取り付けることもできる。この場合には、移動片24はローラとして機能する結果、レール21に沿う移動を極めて円滑に行なわせることができる。
【0031】
また、上記実施の形態において、レール21はU字状の部材としたが、これに限るものではない。勿論、環状に構成することもできる。そして、環状にした場合には、支柱2の全周に亘ってシート部材23を展張することができ、形成される作業空間をその分広く確保することができる。
【0032】
図4は、環状に形成した本発明の他の実施の形態に係るレールを抽出して示す拡大図である。同図に示すように、当該レール31は一つのU字状部材31aの開口端に他のU字状部材31bの開口端を当接させてこの開口端を塞ぐように両者を連結することにより全体として環状に形成したものである。すなわち、U字状部材31a,31bの一端部はヒンジ部32を介して連結し、他端部はU字状部材31bの他端部に固着されたプレート部材33とボルト34により連結するようになっている。
【0033】
かかるレール31を有する場合は、先ずボルト34を緩め、ヒンジ部32を回動中心として図中時計方向にU字状部材31bを回動することによりU字状部材31aの端部を開口し、この開口部分を介して支柱2の周囲に押し込んだ後、U字状部材31aを支柱2に取り付ける。かかる状態でU字状部材31bをヒンジ部を回動中心として反時計方向に回動することによりU字状部材31aの開口端を閉じてU字状部材31a,31bを連結する。このことにより、レール31で閉じたリングを形成する。
【0034】
図5は図1のC−C線矢視断面図、図6は図5のD部分の拡大図で、(a)は平面的に見た図、(b)は図5のE線方向から見た図である。これらの図に示すように、レール21は下方に開口する開口部25aを有する断面コ字状の取付治具25を介して支柱2に装着するように構成されている。すなわち、取付治具25の開口部25aを介して支柱2の構造材である水平なプレート2aに上方から嵌め込むようになっている。
【0035】
ここで、レール21と取付治具25とは、図6に明示するように、両端部のヒンジ部26a,26bを介してレール21の内周面及び取付治具25の内周面にそれぞれ固着したレバー26で連結してある。この結果、レバー26をヒンジ部26a,26bを介して回動することによりレール21と取付治具25との間の距離を調整し得る。すなわち、レバー26が距離調整手段として機能する。この結果、当該簡易テントの取付対象である支柱2の幅が変っても、これに柔軟に対処することができる。すなわち、幅が狭くなればレバー26を回動してそのレール21及び取付治具25に対する取付角度を大きくしてレール21と取付治具25との間の距離が拡大し、この結果レール21の左右にそれぞれ配設された取付治具25,25間の距離が縮小するように調整するとともに、逆の場合には拡大するように調整すれば良い。
【0036】
なお、距離調整手段は、レール21の支柱2側の内周面と取付治具25との間の水平方向の距離を調整し得るものであれば、前記レバー26に限定する必要はない。
【0037】
また、図5に示す本形態ではレール21の先端部にベルト27a,27bの基端部が固着してあり、両ベルト27a、27bの先端部を、例えばマジックテープ(登録商標)を介して連結することで、レール21の支柱2に対する固定をより確実なものとしている。なお、図中28は補強部材である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は電力設備の保守・点検を行う産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る簡易テントを適用する断路器を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る簡易テントを示す図で、(a)はその正面図、(b)はその平面図である。
【図3】各部を抽出して示す図で、(a)は図2(a)のA部の拡大図、(b)は図3(a)のB部の拡大図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係るレールを抽出して示す拡大図である。
【図5】図1のC−C線矢視図である。
【図6】図5のD部分の拡大図で、(a)は平面的に見た図、(b)はE線方向から見た図である。
【符号の説明】
【0040】
2 支柱
2a 架台
13 操作箱
21 レール
22 骨部材
23 シート部材
24 移動片
25 取付治具
25a 開口部
26 レバー
26a、26b ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に対して着脱可能に形成され、前記支柱を囲繞するように前記支柱の周囲に配設される曲線部を有する部材であるレールと、
前記レールに沿って移動させるように構成した複数個の移動片と、
基端部が前記各移動片にそれぞれ取り付けられて前記支柱と反対側に張り出すように構成した複数本の骨部材と、
前記レールの周方向に関して隣接する骨部材の間に配設するとともに前記骨部材間で展張し得るシート部材とを有することを特徴とする簡易テント。
【請求項2】
請求項1に記載する簡易テントにおいて、
前記骨部材は前記基端部から先端に向かって斜め上方に伸ばされていることを特徴とする簡易テント。
【請求項3】
請求項1に記載する簡易テントにおいて、
前記レールは、一つのU字状部材の開口端に他のU字状部材の開口端を当接させてこの開口端を塞ぐように両者を連結することにより全体として環状に形成したものであることを特徴とする簡易テント。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載する簡易テントにおいて、
前記移動片は、前記骨部材に対し回転可能に取り付けられ、前記レールを転動して移動するローラで構成したことを特徴とする簡易テント。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載する簡易テントにおいて、
前記レールは、断路器の支柱に装着された操作箱の上方で前記支柱に装着するものであることを特徴とする簡易テント。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載する簡易テントにおいて、
前記レールは、下方に開口する開口部を介して前記支柱の構造材である水平なプレートに上方から嵌め込まれる断面コ字状の取付治具を介して前記支柱に装着するように構成したことを特徴とする簡易テント。
【請求項7】
請求項6に記載する簡易テントにおいて、
前記取付治具は、前記レールの支柱側の内周面との間の水平方向の距離を調整し得る距離調整手段を介して前記レールに取り付けたものであることを特徴とする簡易テント。
【請求項8】
請求項7に記載する簡易テントにおいて、
前記距離調整手段は、両端部のヒンジ部を介して前記レール及び取付治具に固着したレバーで構成したことを特徴とする簡易テント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−240406(P2008−240406A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83792(P2007−83792)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)
【Fターム(参考)】