説明

簡易型濾過器

【課題】未使用時には偏平に折り畳まれる濾過器であり、これの使用に当ってはその本体部を上記偏平な状態から漏斗形に展開する開放作業を通すことによってそのままカップ容器の上に載置可能にし、濾過のためのセット作業が行えるようにした簡易型濾過器を提供する。
【解決手段】略漏斗形に形成する本体部2の内面に皿形の袋状に形成するフィルタ部3の開口周縁部3aを止着し二重構造体にすると共に、前記本体部2の左右の側面部分6,6には縦の折り曲げ部7a,7bを設け、これを介して本体部2と共に前記フィルタ部3を折り畳み且つ前記フィルタ部内に被抽出物Pを収納し保管する。その一方、使用時には前記折り畳んだ本体部2の上部開口部4を開放して前記漏斗形に展開することによりそのままカップ容器15上に載置可能にし、湯の注ぎ込みによる抽出作業が行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーなどの抽出に使用される簡易型の濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
簡易型の濾過器、ことに使い捨てに係る簡易型の濾過機は、レギュラーコーヒーを抽出する濾過器として広く一般に普及している。これら濾過器については様々な形態が提案され、多く実用化され、市販されている。
この使い捨てに係る簡易型の濾過器(以下、単に「濾過器」という。)は、基本的な構成部分としてフィルタ製の袋、一般にはプラスチック製乃至は紙製のフィルタ、或は不織布からなるフィルタを素材にして袋状に形成してなるフィルタ部と、このフィルタ部をコーヒーカップ等の容器上に載置し、装着支持する厚紙等を素材にして形成される支持体とから構成されているのが普通である。
【0003】
この濾過器は、例えばレギュラーコーヒー用の濾過器の場合には、前記袋状のフィルタ部に予め所要量のコーヒー粉末(被抽出物)を封入し、通常は濾過器全体を偏平に押し潰すように折り畳み、この状態で機密性の包装用袋に格納して置き、使用に際しては包装用袋から取り出した後、最初にフィルタ部の上部を切り開いて開口させ、この状態で上記支持体を使ってコーヒーカップ等の容器の縁に掛け止め、抽出のためのセットを行うようにしており、その後、前記開放したフィルタ部の開口部から湯を注ぎ込んでフィルタ部内でコーヒー成分の抽出を行うと共に、抽出したコーヒー液(抽出液)を濾過しながらカップ容器に受けてそのまま飲料することができるものとしている。
【0004】
この濾過器において、フィルタ部は、濾過器として最も重要な構成部分となるが、素材についての条件を除けば構造的には袋状の形態をなすだけのものであり、従って基本的には個々の濾過器の間で大きな差は無い。しかし、これに対してフィルタ部を支える支持体については、取扱いの容易さや、装着時の安定性、製造性等の観点から様々な形態が提案されている。
【0005】
簡易型濾過器における支持体は、濾過器そのものを簡素化する上で中心となる部分であり、如何に構造を簡潔にするかが求められる部分でもある。
しかし同時に、この簡素化するに当っては、容器に対してセットしたとき安定的に支持できるかや、使用時の取扱いが便利か、使い捨てに合せてコスト的に廉価に製造できか、等が具体的な課題として挙げられ、従来からこれらに対する様々な改良がされ、提案がされてきている。
ことに、支持体の構造についての簡素化に関しては、安全に使用する上で、特に湯を注ぐ時の圧力に対して充分な支持強度が出せるか、安定したセット状態が得られるか、が求められ、また使用者において簡単に取り扱えるかが重要な課題となる。
【0006】
濾過器において取扱いが容易であること、セット時において安定した支持が得られること、は相互一体のものであり、たとえ支持体が強度的に充分なものであっても取扱いが面倒で簡単に正しくセットすることができない場合は使用が困難になり、危険を作ることにもなる。例えば、使用者が取り扱いに不慣れで不完全なセット状態を作るようなことになれば、濾過器に対する注湯の際に湯の注ぎ込みによる圧力によってカップ容器から外れ、熱湯を撒き散らすことも起きる。
従って、支持体は簡潔な構造であると同時に、取扱いが容易であり、安定的にフィルタ部を支持できる構造が求められることになる。従来これを目標として各種の提案がなされているのである。
【0007】
勿論、支持体はフィルタ部と一体をなすものであることからフィルタ部の構造、形状に合せてそれ自体の構造が決められることになるが、従来最も簡潔な構造にした濾過器の1つに、袋状をなすフィルタ部を前後2面からなる偏平な袋に形成して、この前後の面のそれぞれの表面部分に厚紙を切り抜いて形成した支持体を直接止着し、形成した簡易型の濾過器がある。
【0008】
このフィルタ部に厚紙からなる支持体を直付けして形成した濾過器は、使用に際して先ずコーヒー粉末を封入した袋状のフィルタ部の上端部、つまり前後の面の上部を千切って袋を開口させ、次に前後の面に止着した上記支持体を前後に引き延ばしてそれぞれの先端に設ける係止片をカップ容器の縁に掛け止めてセットし、湯の注ぎ込みに備えるようにしたものである。これについては、例えば特許文献1,2に記載の濾過器がある。
【0009】
また、これらとは別に、支持体による支持を強固にしてセット時の安定性を高めたものとして、例えば支持体を筒状に形成し、この筒の内側に袋状のフィルタ部を止着したものがある。
この濾過器は、非使用の状態に置いては支持体を偏平に畳み、使用に際して上記畳んだ支持体を断面楕円形の筒型に開放し、この状態でカップ容器の上に載置してセットすることによりその内側に止着した前記フィルタ部をカップ容器の直上に吊り下げ、フィルタ部の開口部から湯を注ぐことでコーヒーを抽出する構造にしたものである。これについては例えば特許文献3乃至5の濾過器が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−230143号公報。
【特許文献2】特開2010−110335号公報。
【特許文献3】特許第4391441号公報。
【特許文献4】特開2009−96507号公報。
【特許文献5】特開2010−99462号公報。
【0011】
前記特許文献1に記載の濾過器は、使用に際して、先ず袋本体2の上部を千切り取って開封し開口部8を形成し、次に袋本体2の前後の矩形面2a,2b(前後の面)に取付けた掛止部材3,3(支持体)の各係止片12,12を引き出し、この引き出しによって袋本体2の面部2a,2bに止着する貼着部11,11からアーム部5,5を引き起し、この引き起こしによって上記係止片12,12を前後に引き延ばしてカップ30の縁に掛け止めることによりセットする、ものになっている。
【0012】
また、特許文献2に記載の濾過器は、前記特許文献1に記載の濾過器とその構造を略同様にするものであり、使用に際しては抽出用バッグ2(袋本体)の前後の面に止着する支持シート3(支持体)の先端部12(係止片)を引き出し、これに伴わせて上部境界線13,14を折り曲げて中間部8,9を逆V字型に引き伸ばし、この引き伸ばしによって上記先端部12をカップの縁に掛け止め、支持するものになっている。
【0013】
この2つの濾過器は、いずれも袋本体の前後の面に備える支持体(掛止部材、支持シート)をその先端に設ける係止片(先端部)を引き出し、これをカップの縁に掛け止めるようにしたものであり、またこの引き伸ばしによって袋本体の開口部を開放した状態に維持するようにしたものであり、簡単な構造にする中でカップ容器に対するセットを可能にし、そのままコーヒーの抽出に使用できるものにしてある。
【0014】
一方、特許文献3に記載の濾過器(ドリッパー)は、支持体である筒状紙体2の内側にフィルタ部である袋体3を固定したものである。これの使用時には、偏平に畳まれる前記筒状紙体2を楕円形に開き、その後、左右両端部の折込部21,21’を内側に折り込んで紙体2を開放状態に拘束し、この状態でカップ容器に載置することができるものとしている。
【0015】
また、特許文献4に記載の濾過器(抽出バック)は、前記特許文献3に係る濾過器と同様に、筒形に形成される支持部材3(支持体)の内側に袋状のバック部材2を止着し、組立てたものである。
これの使用時には、前記支持部材3に設ける切り欠き部8a,8bを使って頂部5a,5bを内側に折り込み、これによって偏平に畳まれる前記支持部材3を楕円形に開いた状態に拘束し、この状態でカップ容器上に載置して前記バック部材2をカップ容器の上に吊設状に支持するようにしてある。
【0016】
また、特許文献5に記載の濾過器(濾過具)は、前記特許文献4に記載の濾過器と略同様の構造に係るものであり、筒形に形成される支持具20の内側に袋状の濾過袋10を止着して形成され、使用時には偏平に畳まれる前記支持具20を筒形に開くと共に、両側部の拡開面34,34を内側に折り込むことによってこの支持具20を筒形に開放した状態に拘束し、この状態でカップ容器の上に載置固定できるようにしたものとなっている。
【0017】
これらの従来から知られる濾過器は、特許文献1,2のものにおいては、支持体を引き延ばし、先端部の係止片をカップの縁に掛け止めることによって、また特許文献3乃至5に記載の濾過器にあっては偏平に畳まれる支持体を筒形に開き、次に筒形の支持体の胴部に設けられる折り込み部を内側に折り込んでロックすることにより偏平に戻るのを抑え、これによりカップ容器に対して載置することができるようにしたものであり、従って、いずれのものにおいても使用時における操作、つまりセット作業自体は然程厄介なものではない。
【0018】
しかし、上記したそれぞれの操作は、支持体の構造を理解し、その仕組からどの様に組立てられるかを理解できる者において簡単なものであり、それぞれの作業を間違えることなく処置することができるものである、と言うことができるが、支持体の個々の構造が何のためにその構造になっているかを理解できない場合には、時として正しい操作ができないことが起こる。
ことに、これらの濾過器を始めて使用する場合は、使用書きを読むにしても必ずしも正確に取扱い方を理解するものとは限らず、ときには誤った使用法を選択し、結果的に使用することが出来ないと言うことも起こる。
【0019】
特許文献1,2における濾過器の場合には、支持体の引き出し操作と、これに併せて行う係止片の容器の縁に対する掛け止め操作が問題の一つである。特に、この係止片の掛け止めの程度、具合が常に一定であり、しかも正確に掛け止められるものとは限らないからである。
また、特許文献3乃至5においては、支持体(筒状紙体2、支持部材3、支持具20)を筒形に開放した状態に拘束するために側端係合突片24、頂部5a,5b、拡開面34を支持体の内側に折り込む操作である。この折込の操作においてその折込の程度と折込の具合が常に所定の状態になるとは限らないからである。
【0020】
いずれにしても、前記従来の提案に係る濾過器は、使い捨ての目的に合わせて全体の構造の簡素化、簡略化をそれぞれ達成するものになっているが、それでも使用勝手において取扱いに慣れることが求められると共に、使用時のセットにおける不安定性を有していることからこれらに付いて更なる改善が求められているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明は、上述した従来の簡易型濾過器における事情、問題点に鑑み、これを簡単に取扱えるように改善し、また安全に取扱えるように改善したものであって、特に本発明は、より簡単に取扱うことができるものにして、例えば初めて使用する者においても正しくカップ容器にセットすることができ、しかも湯を注ぐ際には簡単に注ぎ込むことができ、また湯の注ぎ込みによってカップ容器上から落下して熱湯を撒き散らすと言った危険を回避し安全に使用することができるようにした簡易型濾過器を提供しようとするものである。
【0022】
更に言えば、本発明は非使用時、つまり未使用時には偏平に折り畳んだ状態に保って包装用袋に対する収納を容易にし、保管、運搬に便ならしめると共に、使用に際しては上記折り畳み状態を簡単に開くことができるようにすると同時に、開いた姿においてそのままカップ容器上に載置することでセット作業を完了することができるようにした極めて取扱いが容易な濾過器を提供しようとするものである。
【0023】
そして更に、本発明は使用時にカップ容器上に載置したとき、容器の口径や縁部の肉厚に影響されることなく安定して載置することができるようにして使用するカップ容器についての制約を最小限にすることができる濾過器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上述の目的を達成するため、上部開口部の口径を下部開口部の口径より大にして漏斗形に形成する本体部(支持体)と、この本体部の内面に開口周縁部を一体に止着して前記下部開口部を塞ぐように連設する袋状をなすフィルタ部とから構成される簡易型濾過器を提供しようとするものある。
【0025】
更に詳述すれば、本発明は、漏斗形に形成する本体部の内面に皿形に形成するフィルタ部の開口周縁部を止着し、本体部の内側にフィルタ部を組付けて二重構造体にして該フィルタ部によって本体部の下部開口部を塞ぎ、その一方、前記本体部の相対向する左右の2側面部分には縦の折り曲げ部を形成して該左右の折り曲げ部を介して前後の2面部分を接面状に折り畳めるようにすると共に、該折り畳みに併せて前記フィルタ部に投入する所要量の被抽出物を封入してこれにより偏平に折り畳んだ格納形態を作り包装用袋に格納するものであり、使用に際しては前記包装用袋からの取り出しと共に、前記本体部の前後の2面部分を前後に開いて漏斗形形状に展開し、これにより前記フィルタ部内を開放して前記被抽出物を露出させ、この展開状態において前記本体部をカップ容器上に載置し、抽出液の濾過のためのセットが行えるようにした簡易型濾過器を提供することにある(請求項1に記載の発明)。
【0026】
この発明において、前記本体部は、厚紙等の所要の剛性を有するシート状の素材によって漏斗形に形成することになる。
この漏斗形の形状については、実質的な形状として上部開口部が下部開口部の口径より大になる倒円錐台形状乃至は倒角錐台形状の外観を呈する形状であればよい。また、この本体部に止着し連設される前記フィルタ部は、不織布などのフィルタ素材によって実質的に皿形乃至は浅い椀形をなす袋状に形成される。そして、このフィルタ部はその開口周縁部を前記本体部の内面に止着することで本体部との間で二重構造体に形成され、同時に前記下部開口部を塞ぐ形で取付けられる。
【0027】
前記漏斗形に形成される本体部は、本体部の中心部を挟んで対称となる左右の2側面部分に縦方向の折り曲げ部(実際には、面部分を折り曲げ、これを更に線状に押し潰して折り曲げ線としたもの)を形成し、この折り曲げ部を以て前後の2面部分相互を接面状に折り畳めるようにされる。また、この折り畳みに伴わせてこれに連設される前記皿形に形成されるフィルタ部も前後を接面させて偏平に折り畳まれることになる。
上記折り曲げ部は、本体部を折り畳む際の基準点になるものであって素材の剛性によって折り畳み難い本体部を容易に、しかも正確に折り畳むことができるものとなり、また開く場合にはこの折り曲げ部を基点にして容易に開放できるものとなる。
【0028】
一方、上記フィルタ部には予め所要量の被抽出物(濾過器がコーヒーの濾過器である場合、被抽出物はコーヒー粉末である)が充填される。被抽出物は、前記本体部の折り畳みに伴わせてフィルタ部と共に偏平な状態に潰され、この状態で鞘状の、つまり偏平な袋に形成される包装用袋に収められることになる。
【0029】
この様に本発明の濾過器は、非使用時には偏平に畳まれた状態で包装用袋に収められ、保管されることになる一方、使用に当っては包装用袋から取り出した後、偏平に畳まれた本体部をその前後の2面部分を引き離すように開いて成形時の姿、即ち漏斗形に展開してこの展開した状態においてそのままカップ容器上に載置し、抽出のためのセット状態を作ることことができるものとなっている。
そして、このとき前記フィルタ部は、本体部の展開と共に内部を皿状に開き、充填した被抽出物を露出させると同時に、この展開によって本体部の前記下部開口部を塞ぐ形を採り恰も漏斗形をなす本体部の底部を形成する如く広がることになる。
【0030】
この様に、本発明の濾過器は、使用時のセットにおいて、漏斗形に展開する本体部を直接カップ容器の開口縁部に載せることによって行われことになり、それ以上の作業、操作は不要になる。
尚、前記本体部は、抽出時に使用するカップ容器の開口縁部上に載置することから全体の形状がこの開口縁部の口径より大径に形成されることは言うまでもない。
【0031】
以上のことから、本発明の濾過器は、単純にカップ容器の上に載せればそのままセット状態になり、細かな作業,操作をすることなくセットできることになり、又このセット作業は、本体部の外面をカップ容器の開口縁部に載せ、その下部開口部をカップ容器の中に向け臨ませることで行われることになる。
尚、言うまでもないが、前記下部開口部は使用するカップ容器の開口縁部の口径より小さな口径に形成することになる。これによってセット時にはこの下部開口部と共にこれを塞ぐフィルタ部の一部がカップ容器の開口縁部の内側に入り込んで横滑りを防止し、安定したセット状態を作ることになる。
【0032】
本発明濾過器は、使用に際してセットする場合、上述したようにされるが、抽出に際しては漏斗形に展開した本体部の上からフィルタ部に向けて湯を注ぎ込み、被抽出物を湿潤させ、その成分を抽出することになる。これと同時に、濾過した抽出液をカップ容器に直接受けることになる。そして、この湯の注ぎ込みにおいては、直接的には湯をフィルタ部に受けて被抽出物に注ぐことになるが、このフィルタ部より大径な広がりを以て本体部が展開することからフィルタ部を外れて湯が注がれることになっても本体部がこれを受けて周囲に湯が飛散するのを防止することになる。
尚、フィルタ部の開口縁部は、本体部の内面に直接接合して固定されることから、注湯時に縁部が捲れたり、口が閉じたりすることがなく安定的に開放して注ぎ込みに対応することができるものとなっている。
【0033】
一方、本発明は、上記記載の簡易型濾過器において、前記本体部の左右の2側面部分に形成する折り曲げ部は、それぞれの側面部分の中央部に沿って縦に設ける基準折り曲げ線であることを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項2に記載の発明)。
【0034】
この発明は、漏斗形に形成する本体部を偏平に折り畳むに当り、その折り曲げの基点となる左右の側面部分に折り曲げ部として縦の基準折り曲げ線を形成したものである。この折り曲げ線を介して本体部の前後の面部分を接面状に簡単に、しかも一定の形状に折り畳めるようにしたのであり、包装用袋に収納する場合に、また包装用袋から取り出して展開する場合にその操作を容易にすることができる。
【0035】
また本発明は、上記簡易型濾過器において、前記本体部の左右の2側面部分に形成する折り曲げ部は、それぞれの側面部分の中央部に沿って縦に設ける基準折り曲げ線と、該基準折り曲げ線を中心に所要間隔を置いて併設する補助折り曲げ線からなることを特徴とした簡易型濾過器を提供するものである(請求項3に記載の発明)。
【0036】
この発明は、前記折り曲げ部を側面部分の中央部に形成する基準折り曲げ線を中心にしてこれとの間に所要の間隔を置いて複数の補助折り曲げ線を併設し、これらの折り曲げ線を基点に山,谷に折り曲げ、本体部の左右の2側面部分の横断面形状をジグザグに形成し、蛇腹状にすることによって伸縮できるようにしたものである。これによって本体部の折り畳みと開放操作がこの蛇腹状の側面部分の伸縮によって容易且つ正確に行われることになる。
【0037】
また、この発明では、側面部分が蛇腹状に形成されることによってこの側面部分が折り畳まれるとき素材の復元力が働くことによって濾過器の使用に当って本体部を展開したとき、この復元力によって自動的に開放状態が維持されることになる。そして、本体部は蛇腹の伸張に伴って側面部分を前後方向に伸ばすことになることから前後の2面部分を前後方向に広く開き、略矩形に開放して上部開口部を大きく展開することになる。
【0038】
そして、更にこの発明では、本体部の左右の側面部分が複数の折り曲げ線によって蛇腹状に折り曲げられ、左右方向の長さが縮小することから、折り畳んだとき小型化することができる。この結果、包装用袋に対する収納が容易になると共に、包装用袋の小型化に有効に作用することになる。
【0039】
また本発明は、上記簡易型濾過器において、前記本体部の内面に止着し連設されるフィルタ部はその開口周縁部を本体部の上部開口部に近い内面に接面させ一体に接合して本体部内面とフィルタ部外面との間に濾液の誘導域を設けることを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項4に記載の発明)。
【0040】
この発明は、本体部にフィルタ部を連設するに当って本体部の上部開口部に近い内面にフィルタ部の開口縁部を添わせて止着することからフィルタ部の止着部分を本体部が下から支えることになり、したがって安定的に止着することができる。
その一方、この止着によって被抽出物を充填するフィルタ部は、その全体が本体部の内側にあってこの両者の間に濾液の誘導域を形成することから略フィルタ部の全体で濾過することが可能になり、効率的に濾液を抽出することができることになる。
【0041】
また本発明は、上記簡易型濾過器において、前記フィルタ部は底部を前後に折り畳んで複数の襞を設けると共に、該襞の折り曲げ部の両端部を重ね合せにして該重ね合せ両端部を前記本体部の左右の2側面部分に設ける折り曲げ部にそれぞれ合せて止着することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項5に記載の発明)。
【0042】
この発明は、フィルタ部の底部に折り畳まれる襞を形成することによって未使用時の折り畳みにおいてコンパクト化し、また使用時においては広く展開して濾過面積を拡張し、濾過効率を高めることができる。ことに、コンパクト化によって包装用袋の小型化に有効に働くことになる。
【0043】
また本発明は、前記簡易型濾過器において、前記本体部の前後の2面部分は折り畳んだ状態において上縁部同士を易剥離可能に接合し、フィルタ部内に収納する被抽出物の零れ出しを防止することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項6に記載の発明)。
【0044】
この発明は、未使用時において折り畳んだとき、フィルタ部に投入し充填した被抽出物が零れ出すのを防止するための処置であり、折り畳みによって接面する本体部の前後の面部分を易剥離可能に接合することによって零れ出しを防止するものである。
上記接合は、前後の面部分の上縁部同士を一線上に沿って連続して、或は断続的に接合しても、また本体部に止着するフィルタ部の開口周縁部に沿ってこれを閉ざすように接合してもよく、また、ここにおける接合方法は自由であり、熱接着、高周波接着などを選択することができる。
【0045】
また本発明は、前記簡易型濾過器において、前記本体部の前後の2面部分には各上縁部から上部開口部を開放するための摘み片を延設することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項7に記載の発明)。
【0046】
この発明は、偏平に折り畳まれた本体部を使用に際してこれを開放する場合、接面する前後の面部分を指を掛けて開くのに有利にしたものである。前後の面部分の上縁部から延設する摘み片を指で摘み前後に引くことによって簡単に開放し、展開することができる。
【0047】
また本発明は、前記簡易型濾過器において、前記摘み片は前後の面部分の上縁部に折り曲げ線を介して延設し、使用時に本体部を前後に開き展開したとき前記折り曲げ線を基点にそれぞれ外方に折り曲げ、前記前後の面部分を平面姿勢に補強することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項8に記載の発明)。
【0048】
この発明は、摘み片を前後の面部分から外に向けて略直角上に折り曲げることによって本体部が開放されたとき、この前後の面部分の支えとして機能させるものであり、面部分の腰折れを防止して上部開口部の開口幅が狭まるのを防ぐことになる。
【0049】
また本発明は、前記簡易型濾過器において、前記摘み片は前後の面部分の上縁部の略全幅に亘って形成されることを特徴とした簡易型濾過器を提供するものである(請求項9に記載の発明)。
【0050】
この発明は、摘み片による前後の面部分の腰折れ状態を更に補強する構造にしたものである。本体部において左右方向に幅を持つことになる前後の各面部分をその幅に合わせた摘み片を形成することによってこれらの面部分を全幅に亘り支え、腰折れ状態を防止し、本体部の開放状態をしっかり補強することになる。
【0051】
また本発明は、前記簡易型濾過器において、前記本体部の外面部にはカップ容器の開口縁部を係合する係合受部を設けてなることを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項10に記載の発明)。
【0052】
この発明は、本体部に形成する係合受部をカップ容器の開口縁部に掛け止めることによりセットした時に濾過器がカップ容器上で横にずれ動くのを確実に防止するものである。上記係合受部は、漏斗形に形成される本体部の外側面に周方向に沿って適宜間隔を置いて設け、カップ容器の開口部に対して本体部を複数の位置で係合させて載置状態を安定させることになる。
【0053】
また一方、本発明は、漏斗形に形成する本体部の内面に皿形に形成するフィルタ部の開口周縁部を止着して本体部の内側にフィルタ部を組付け二重構造体にして該フィルタ部によって本体部の下部開口部を塞ぐ一方、前記本体部の相対向する左右の2側面部分にはそれぞれ中央部に縦の基準折り曲げ線を、また該基準折り曲げ線を挟む前後に補助折り曲げ線をそれぞれ形成して前記中央部の基準折り曲げ線を外に向けて山形に、またその両側の前記補助折り曲げ線を谷形に折り曲げて前記左右の2側面部分にカップ容器の縁部に架け止める架け止め部を形成してなり、不使用時には前記基準並びに補助折り曲げ線を介して前後の2面部分を接面状に折り畳み、該折り畳みに併せて前記フィルタ部に投入する被抽出物を封入して偏平状の格納形態を作ると共に、この状態において包装用袋に格納せしめ、その一方、使用に際しては前記包装用袋からの取り出しの後に前記本体部の前後の2面部分を開いて漏斗形形状に展開し、これにより前記フィルタ部内を開放して前記被抽出物を露出させると共に、この展開した状態において前記本体部の左右の架け止め部をカップ容器の縁上に載置して抽出液の濾過のためのセットが行えるようにしたことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項11に記載の発明)。
【0054】
この発明は、前記請求項1に記載の発明に係る簡易型濾過器において、本体部の相対向する2側面部分につき変更し、該2側面部分に基準折り曲げ線と補助折り曲げ線を設けて外に向けて山形に突出する部分と、この山形に突き出す両側に谷形を形成する部分を作ってこれにより本体部の2側面部分に架け止め部を形成するものであり、この架け止め部をカップ容器の縁に架け止めることによってセットし、安定した載置状態が得られるようにしたものである。
【0055】
また本発明は、前記記載の簡易型濾過器において、前記本体部の左右の2側面部分に形成する架け止め部はそれぞれの下縁部を内側其端部から外側先端部に向けて上向きに傾斜する傾斜縁に形成してなることを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項12に記載の発明)。
【0056】
この発明は、前記架け止め部によってカップ容器上に載置固定する際、カップ容器の開口縁部に左右の架け止め部の傾斜縁をそれぞれ当接させることにより常に本体部をカップ容器の中心位置に保つようにすると共に、これによってカップ容器の口径が大小変化した場合にも中心位置への指向性によってカップ容器上に安定的に載置することができるようにしたものである。
【0057】
また本発明は、前記記載の簡易型濾過器において、前記本体部の左右の2側面部分に形成する架け止め部はそれぞれの下縁部を内側其端部から外側先端部に向けて凹円弧状に形成してなることを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項13に記載の発明)。
【0058】
この発明は、前記架け止め部の下縁部を凹円弧状に形成することによってカップ容器の開口縁部との接触を強く安定化させ、また容器の口径の変化に対してもこれに追随させて常に安定した載置状態が得られるようにしたものである。
【0059】
本発明の簡易型濾過器は、上記の如く構成されるものであって、その特徴とすることは漏斗形に形成される本体部をフィルタ部と共に偏平に折り畳むことによって包装用袋に収納することを可能し、また包装用袋に封入し密閉することによってフィルタ部に予め投入して置く被抽出物の保存を図り、更には、使用に際して包装用袋からの取り出しに併せて畳まれた本体部を開く操作によってフィルタ部と共に漏斗形に展開することを可能にして直ちにカップ容器に対するセットを可能にしたことにある。ことに、使用時におけるセット作業が本体部を上記展開した状態のままにして単にカップ容器に載せるだけの操作で安定した状態でセットすることができることにあり、これに湯を注ぐことで抽出液をそのままカップ容器に受けることができることにある。
【発明の効果】
【0060】
従って、本発明の簡易型濾過器は、上述の如く構成されることから、極めて取扱いが簡単であり、初めて使用する者においてもその取扱いを間違えるようなことがなく、適切に且つ安全に使用することができるものになっている。
ことに、本発明の濾過器は、未使用時に偏平に畳まれる本体部を前後に開く操作によってこれを開放し、展開することができるものであり、この状態でそのままカップ容器の上に載せれば適正なセット状態が得られるものとなっている。従って、本発明の濾過器は誰にでも簡単に取扱うことができるものであり、使用することができる特徴がある。また、上記開放した状態の本体部に対して湯を注ぎ込めば、そのままカップ容器に抽出液を抽出することができるので簡単且つ迅速に抽出作業を行うことができる利点がある。
【0061】
また本発明は、本体部の上部開口部の口径を使用するカップ容器の口径より大きく形成することによって、カップ容器の開口部の形状や開口縁部の肉厚等に影響されることなく常に安定した状態でセットすることができ、従って、カップ容器の大小に制約されることが少なく各種のカップ容器に対応できる利点がある。
そして、漏斗形に展開する本体部はカップ容器の開口縁部に均等に接触して載置されることから常に安定してセットされることになり、注湯中にカップ容器から落下するような危険を未然に回避できる利点がある。
【0062】
勿論、本発明の濾過器は、厚紙などの素材によって漏斗形に形成される本体部と、この本体部の内面に袋状に形成するフィルタ部の開口周縁部を接合するなどして一体に止着し連設するだけで完成するものであることから、使い捨ての簡易型濾過器として価格的にも充分に見合ったものとして製造することができる利点がある。
【0063】
次に、本発明の理解を深めるため、図示する実施の形態に基づいてその特徴とするところを説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る簡易型濾過器を展開した姿の斜視図である。
【図2】本発明に係る簡易型濾過器の展開した姿の正面図である。
【図3】本発明に係る簡易型濾過器の展開した姿の平面図である。
【図4】本発明に係る簡易型濾過器の展開した姿の側面図である。
【図5】本発明に係る簡易型濾過器の展開した姿の底面図である。
【図6】簡易型濾過器の本体部を分解し、これを偏平に展開した平面図である。
【図7】本発明に係る簡易型濾過器の折り畳んだ状態における正面図である。
【図8】図7のA−A線に沿って断面としたフィルタ部の一部を省略した拡大断面図である。
【図9】本発明に係る簡易型濾過器の他の実施形態を示す正面図である。
【図10】図9に示す本発明に係る簡易型濾過器の本体部の展開した姿の底面図である。
【図11】本発明に係る簡易型濾過器の他の実施の形態を示す展開した姿の斜視図である。
【図12】カップ容器上に載置し使用する状態における中央縦断正面図である。
【図13】本体部を展開し、これに併せてフィルタ部を開放した姿の被抽出物を除いた状態における本発明の簡易型濾過器の平面図である。
【図14】図13に示す本発明に係る簡易型濾過器の底面図である。
【図15】本発明に係る簡易型濾過器の未使用時における拡大中央縦断側面図である。
【図16】簡易型濾過器の本体部についてこれを偏平に展開した状態の平面図である。
【図17】フィルタ部を展開し、これを展開した本体部に重ね合せて相互の形状並びに組合う位置関係を明らかにした平面図である。
【図18】図17に示すフィルタ部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0065】
図面の図1〜図8は、本発明に係る簡易型濾過器をコーヒーの濾過器として実施した一実施形態を示したものである。以下、これらの図面に基づき本発明を詳述し、その特徴とするところを明らかにする。
図面における符号1は、本発明に係る簡易型濾過器、ここではコーヒーの簡易型濾過器(以下、「濾過器」と言う。)を示す。2はこのコーヒーの濾過器1の本体部を、3は本体部2に組付けて一体に連設されるフィルタ部を示す。
【0066】
本体部2は、厚紙など所要の剛性を有するシート状の素材により外観が略漏斗形をなすように形成される。更に詳しくは、この本体部2は、展開した姿において内部を中空にして外観形状を略倒円錐台形状乃至は倒角錐台形状をなす漏斗形に形成されるもので、これにより上部の開口部4が下部の開口部5の口径より大径となる形状に形成されている。
この漏斗形、即ち倒円錐形乃至は角錐形の台形状に形成される本体部2は、その中心部を挟んで相対向する左右の2側面部分6,6に、それぞれの中央部に縦向きの折り曲げ部7a,7bを形成し、この折り曲げ部7a,7bを基点にしてこの側面部分を外に向けて山形に突き出すように折り曲げ、これにより前後の2面部分8a,8bを重ね合わせにして2つ折り状態に畳めるようにしてある。
【0067】
ここに示した実施の形態では、前記折り曲げ部7a,7bを基準折り曲げ線にして、この基準折り曲げ線7a,7bを中心にしてその前後に補助折り曲げ線9a,9bを併設し、更にその前後に第2の補助折り曲げ線10a,10bを併設し、これらの折り曲げ線をそれぞれ折り曲げの基点にすることにより内,外に、つまり山形,谷形に折り曲げて左右の2側面部分6,6を断面蛇腹形に形成している(図3、図5参照)。
尚、補助折り曲げ線を増設することは可能であり、増加させることによって蛇腹の状態を細かくすることは可能であるが、蛇腹を細かくすると成形及び取扱いが面倒になるので種々考慮の上選択することになる。
【0068】
上記左右の側面部分6,6の中央部において向き合う前記基準折り曲げ線7a,7bに対して、それぞれ前後に併設される前記補助折り曲げ線9a,9bは、間隔を置いて共に並行に配置し、更にその前後に併設される第2の折り曲げ線10a,10bは、共に内側に向けて斜めに配置される。
図3には、この基準折り曲げ線7a,7bと補助折り曲げ線9a,9b、そして補助折り曲げ線10a,10bの位置関係が示されているが、斜めに配置される外側の第2の補助折り曲げ線10a,10bは、外側から下部開口部5の中心部に向かって配置され、その内側の端部がそれぞれ補助折り曲げ線9a,9bの内側の端部と交差するようにしてある。
【0069】
ここで上記補助折り曲げ線10a,10bを斜めに配置しているのは、この補助折り曲げ線を左右の側面部分6,6と前後の面部分8a,8bとの境界線にするためと、これに併せて双方の面部分6,6と8a,8bとの間に90度の角度を以て配置することにより蛇腹状をなす側面部分6,6と前後の面部分8a,8bとがそれぞれ直交するようにして本体部2を展開したとき、その全体の形状が略倒四角錐形の漏斗形となるようにするためである。
【0070】
この点を更に述べると、左右の側面部分6,6に設けられる他の補助折り曲げ線9a,9bは、縦の基準折り曲げ線7a,7bに対して並行して形成されることによって側面部分6,6を折り畳んで縮小させたとき、全体的に前後方向に直線的に縮小することになる。そしてこのとき、この側面部分の両端において折り曲げ線10a,10bが90度の角度を以て配置されることにより、この折り畳みはこの斜めに配置された補助折り曲げ線10a,10bの位置で止まり、前後の面部分7a,7bには及ばないことになる。この結果、前後の面部分7a,7bは平面を維持したまま側面部分6,6の縮小に伴って接近し合い、最終的に接面できるものにしてあるのである。
つまり、ここでは前後の面部分8a,8bを平面の姿を維持したままにして左右の側面部分6,6のみを蛇腹形状を利用して折り畳み、これによって濾過器1の全体を前後に潰すようにして偏平に畳めるようにしてあるのである。
【0071】
ところで、図6は、前記本体部2を2つに分割し、更にそれぞれを平面的に展開した状態を示した平面図であり、この分割した状態は、本体部2の成形に当っての一工程を示したものとなる。
ここでは、厚紙を打ち抜いて全体が弧状を呈する同一形状の一対の部分片2A,2Aを形成しており、それぞれ弧状の一方の端部に接合片11,11を設けて、この接合片をそれぞれ他方の端部12,12に添わせて接合することで環状に組合せ、漏斗形に形成できるようにしたものであり、この環状に組合った状態で略倒円錐台形状の漏斗形の本体部2を形成することにしてある。そして、側面部分6,6となる部分に設ける折り曲げ線7a,7b、9a,9bを折り込むことによって前述の略四角錐形の漏斗形本体部2を形成するものとしているのである。更に、ここでは各部分片2A,2Aの外側の長い弧縁によって上部開口部4を形成し、内側の短い弧縁によって下部開口部5を形成するようにしているのである。
尚、部分片2A,2Aに各形成する部分、つまり図面上符号13,13で表示される部分は、後述する本体部を開放操作する時に使用する摘み片である。
【0072】
一方、前記本体部2に組付け連設されフィルタ部3は、紙製乃至合成樹脂製のフィルタ素材、或は不織布など透水性のフィルタ素材によって浅い皿形をなす袋状に形成してあり、このフィルタ部3は、袋の開口周縁部3aの口径を前記本体部2の下部開口部5の口径より大きく形成して、この開口周縁部3aに沿った外面を本体部2の内面に添わせ、接合することによって組み付けてあり、一体に連設させてある。そして、この連設によってフィルタ部3は、本体部2の下部開口部5を内側から塞ぎ、またこの下部開口部5を通してその中心部分を本体部2の下にやや張り出してこの部分を吊り下げた状態で取り付くようにしてある。
【0073】
このフィルタ部3には所要量の被抽出物、ここではコーヒー粉末Pが充填され、収納される。フィルタ部3の底部3bには複数の折り込みを設けて襞3cを設け、コーヒー粉末Pの収納時には収納量に合せてこの襞3cを開いて拡張させ、また抽出のため使用する際にはこの襞3cの拡張によってフィルタ部の内部に充分な湯の溜め込みを可能にしてコーヒー粉末Pとの効率的な接触が図られるようにしてある。
【0074】
本発明のコーヒーの濾過器1は、上述の様に構成されるもので、フィルタ部3には前述の通り所要量のコーヒー粉末Pが投入され、この状態で本体部2と共に折り畳まれて図示しない気密性に優れる例えばアルミ箔製の偏平な包装用袋に収納し、保管されることになる。
【0075】
図7及び図8は、濾過器1を折り畳んだ状態を示したものである。このときにおける本体部2は、前述した様に左右の側面部分6,6をそれぞれ折り曲げ線7a,9a,10a及び7b,9b,10bを介して山,谷の形に折り曲げ、これによって折り畳んで前後の面部分8a,8bを接面する状態に置き、またこの折り畳みの後に前後の面部分8a,8b同士を上部開口部4に沿った位置で接合することによって偏平に折り畳んだ状態を保つようにしてある。
【0076】
図7は、上記本体部2を偏平に折り畳んだ状態を示した正面図である。また、図8は、図7のA−A線に沿って断面としたフィルタ部3の一部を欠截し省略した拡大断面図である。
図8は、接面させる前後の面部分8a,8bをやや離し、開き加減にして上部開口部4に当る上縁部相互を接合する接合部分14,14を引き離した状態を表わしている。この引き離し状態での作図は、接面した状態で表現すると、各部の位置関係が作図上不明確になることから、これを避けるため採った処理方法であり、実際には濾過器1を折り畳んだ状態において上記接合部分14,14は一体となり、上部開口部4を閉じることになる。この段階において、本体部2と共に偏平に畳まれるフィルタ部3に対し予め所要量のコーヒー粉末Pが収納されることになる。
【0077】
尚、ここに示す実施の形態では、濾過器1を本体部2の上部開口部4に沿った位置で接合し、これに併せてフィルタ部3の開口周縁部を封止する構造としているが、これとは別に本体部2の閉じ合わせと、フィルタ部3の開口周縁部3aの封止とを別にしても良いことは言うまでもない。
【0078】
この様にして扁平状に折り畳まれる濾過器1は、左右の側面部分6,6を蛇腹の状態を使って折り畳むことにより左右方向の長さを縮めることになり、また偏平に畳まれることによって肉薄な形態を作り包装用袋の小型化に対応するものとなる。
そして、この濾過器は、保管乃至は運搬移動の際は、つまり未使用の状態においては上記包装用袋に収納された状態で取り扱われることになり、また使用する際にはこの包装用袋を破って取り出し、前記折り畳んだ本体部2を開くことによってそのままの状態でカップ容器上に載置し、使用されることになる。
【0079】
即ち、使用に際しては、接合によって閉ざされた前記本体部2について、先ず前後の面部分8a,8bの上縁部から延設する前記摘み片13,13を指で摘み、これを前後に引き出して開封し、漏斗形の形状に展開することになる。
ここで引き出した上記摘み片13,13は、前後の面部分8a,8bに対してそれぞれ直角状に折り曲げて立ち上げた状態に保ち、この姿勢を保つことによって前後の面部分8a,8bを平面の状態に支えるのである。そして、これにより前記蛇腹状に形成した左右の側面部分6,6と共同して上部開口部4を略矩形状に開き、これに伴い本体部2はその全体の形状を略倒角錐台形状に展開され、この形状を維持するすることになるのである(図3を参照)。
【0080】
図1乃至図4は、この本体部2が展開した状態を示している。この展開状態において、コーヒーカップなどのカップ容器15の上にそのまま置けば、本発明の濾過器は、コーヒー抽出のためのセット作業が完了することになる。
即ち、本発明における濾過器1は、本体部2を開き、漏斗形に展開することによってそのセットの準備が完了することになるのであり、次にこの展開したままカップ容器15の上に載せれば、抽出のためのセットが完了するのである。
従って、このセット作業の完了後に本体部2の上方からフィルタ部3のコーヒー粉末Pに向けて湯を注ぎ込めば、フィルタ部において直ちにコーヒー液の抽出が開始され、同時にフィルタ部3で濾過されたコーヒー液がカップ容器15に溜められることになるのである。
【0081】
尚、上記カップ容器15に載置され、セットされる濾過器1は、カップ容器に対して、実際には本体部2の折り込みによって形成される折り曲げ線7a,7bと10a,10bの外に向けて突き出す山形の部分が、その開口部15aの縁に当接して載置されることから安定した載置状態が得られることになり、また同時に、内に向けて谷形に折れ曲がる折り曲げ線9a,9bが開口縁部15aから離れてここに隙間を作ることから、この隙間を通してカップ容器15の内側を覗くことができることになり、その結果、コーヒーの抽出時にコーヒー液の溜まり具合を外から視認することができるのである。
【0082】
要するに、本発明の濾過器は、折り畳まれた状態から本体部2の上部開口部4を開いて成形時の漏斗形に戻すことによってセット作業の準備が完了するものであり、次にこの漏斗形になった濾過器1をそのままカップ容器15に載せれば、セットが完了し、これに湯を注ぐだけとなるもので、極めて簡単にセットすることができることになるのである。
【0083】
ことに、本発明の濾過器は、上記セット作業に当ってカップ容器15に対して特別の作業を必要とせず、単に載せるだけの簡単な操作で完了することから、誰にでも操作ができるものとなっており、従って、従来の濾過器におけるように、例えば使用時のセット方法を間違えてカップ容器から外してしまったり、装着の仕方や作業の手順を間違えることで濾過器自体を破損してしまい使用不能にしたり、或は正確な装着ができないまま湯の注ぎ込みを行うことによって落下させ熱湯を撒き散らす、と言った様々な危険に対してこれらを未然に回避することができるものとなっているのである。
【0084】
そして更に言えば、本発明の濾過器は、展開した状態の本体部2の大きさが、使用されるカップ容器15の口径より大であれば、使用が可能であって常に安定した状態でのセットが可能になっている。実際には本体部2の上部開口部4の口径がカップ容器15の口径より大であって下部開口部5の口径がカップ容器15の口径より小であれば、本体部2をカップ容器15の開口部15aの縁に載せて安定させることができるものであり、優れた特徴を有するものとなっているのである。そして、使用時には、本体部の下部開口部5をフィルタ部3と共にカップ容器15の開口縁部の内側に臨ませる構造にしてあることから常に正常な状態でのセットが可能になっているのである。
【0085】
そして、セット時には本体部2が漏斗形に展開して下部開口部5をカップ容器15の内側に臨む状態になることから、横にずれ動くのを止めることができ、従って注ぎ込む湯の圧力を受けて横滑りしてカップ容器上から落下すると言ったこともなく、極めて安全に使用することができるものとなっているのである。
【0086】
また本発明の濾過器は、カップ容器の上で本体部2が大きく開き、本体部全体で注がれる湯を受けることからフィルタ部、つまり濾紙袋に直接受ける従来型の濾過器に比べて湯の注ぎ込みが容易であり、しかも周囲に熱湯を飛散させることもなく安全に使用できるものとなっているのである。
また、本体部2に連設されるフィルタ部3は、本体部の展開と共に同じ形状の漏斗形に開放することから注湯するに当って確実に注ぎ込むことができ、完全に且つ迅速に取り扱うことができると共に、本体部2の開放に伴ってフィルタ部3が広く開放されるので収納されるコーヒー粉末Pに対して万遍無く湯を注ぎ込むことができ、効率的に抽出し、濾過することができるものとなっているのである。
【実施例2】
【0087】
次に、図9及び図10は、本発明に係る濾過器をカップ容器15にセットする際に更に安定的にセットできるようにした他の実施の形態を示したものである。図9は、セット状態の正面図であり、図10は、本体部2の底面図である。尚、この実施例では前記実施例1と同一の部分については同一の符号を使用し、それらの説明を省略する。
さて、この実施の形態は、本体部2の側面部分6,6に設ける折り曲げ線の中で外に向かって山形に折り曲げられる基準折り曲げ線7a,7bと補助折り曲げ線10a,10bの縦の長さの途中に係合受部となる縦長の切り欠き部16をそれぞれ形成し、カップ容器15にセットする際にこのカップ容器の開港縁部をそれぞれの切り欠き部16に受け入れて係合させ、載置した濾過器1のずれ動くのを防止するようにした例である。
【0088】
上記それぞれの切り欠き部16は、カップ容器15にセットしたとき、その開口縁部15aに当接する位置、即ち図10に示した様に開口縁部15aの円の形状に対応した1つの円周上に沿って配置してある。そして、ここでは異なるカップ容器15の口径の違いに対応できる様に切り欠き部16は折り曲げ線に沿って縦長の楕円形状をなすように形成し、異なる口径の縁に対し合せられるようにしてある。
【実施例3】
【0089】
次に、図11〜図18は、本発明に係る濾過器の第3の実施の形態を示したものである。ここに示す濾過器1は、本体部2の両側面部分6,6に外に突き出す架け止め部17,17を一体に設けて、この架け止め部17,17を介してカップ容器15の開口縁部15aに架け止め載置することでセットすることができるようにした例である。
尚、この実施の形態において、前記実施例1,2と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0090】
ここにおける濾過器1は、前述の実施例1の濾過器1と同様に本体部2とフィルタ部3の組合せによって形成され、本体部2は、図16に示したように展開した姿において略円形のドーナツ形に形成される。
この本体部2は、前記実施例1の本体部1と同じく厚紙を素材にして図16に示したように略ドーナツ状に打ち抜くことによって形成され、左右の側面部分6,6に当るそれぞれの部分の中央部には円形をなす当該本体部2の中心位置から延びる放射線に沿って縦の基準折り曲げ線7a,7bを設け、更にこの基準折り曲げ線を挟んでその前後にそれぞれ間隔を置いて第1の補助折り曲げ線9a,9bを、更にその前後に間隔を置いて第2の補助折り曲げ線10a,10bをそれぞれ設け、これらの折り曲げ線の集合によって両側面部分6,6を平面形状において蛇腹状に折り畳めるようにしてある。また、この蛇腹形にすることによって側面部分6,6に前記架け止め部17,17が対称形をなすように形成しているのである。
【0091】
この各折り曲げ線と架け止め部17,17の関係について更に説明すると、上記基準折り曲げ線7a,7bは、外に向けて山形に折り曲げることで両側面部分6,6を左右方向に突き出すことになり、同時にこの折り曲げによって本体部2の前後の面部分8a,8bを互いに接面させて本体部を偏平に折り畳めることになっているのである。この折り曲げに併せて前記第1の補助折り曲げ線9a,9bを内側に向けて谷形に折り曲げ、更に前記第2の補助折り曲げ線10a,10bを外に向けて山形に折り曲げることによって両側面部分6,6を蛇腹形に折り込めるようにしてあり、これにより本体部3の全体を平面的な板形の状態から立体的な、更に言えば倒台形状をなす漏斗形に変化させられる様にしているのである。
【0092】
そして、上記折り畳みにおいて、前記基準折り曲げ線7a,7bと第1の補助折り曲げ線9a,9bと間の距離を、この第1の補助折り曲げ線9a,9bと第2の補助折り曲げ線10a,10bと間の距離より大にして置くことで前記山形に折り曲げた際に前記基準折り曲げ線7a,7bを外に向けて大きく迫り出すようにしてあり、これに伴わせて架け止め部17,17がそれぞれの側面部分6,6から左右に向けて大きく突き出すようにしているのである。
【0093】
更に、上記架け止め部17,17は、その下縁部17a,17aを凹円弧状に形成し、この円弧状によって架け止め部の幅を先端に向けて次第に狭めるようにしている。更に言えば、上記下縁部17a,17aを第1補助折り曲げ線9a,9aに接する内側基端18,18から基準折り曲げ線7aに接する外側先端19,19に向けて幅を徐々に狭めて傾斜を付けているのである。この傾斜によって当該架け止め部17,17は、それ自体が外に向かって先細りの形状になっている。
尚、図16に示す本体部2は、内側に形成される空部、つまり下部開口部5を横長楕円形状に形成して前記第1実施例の下部開口部5より大口径のものとしている。
【0094】
そして、上記本体部2は、前後の面部分8a,8bを上記下部開口部5の左右方向の広がりに合せて左右に広さを持たせてあり、同時に下部開口部5に臨む下縁部を内方に延設してここに舌状の突片20,20を設け、更にそれぞれの上縁部には内に向けて凹円弧状をなす折り曲げ線21,21を形成して、この折り曲げ線を境に略横長楕円形をなす摘み片13,13を形成している。
【0095】
上記のように形成される本体部2に対して、これに組合わされるフィルタ部3は、図17に実線で表わしたように展開した本体部2の外形より小型の略八角形状に形成してあり、開口周縁部3aとなる八角形の外周縁を前記本体部2の円形をなす外周縁(この外周縁は組立て完成時に上部開口部4を構成することになる。)の内側に沿わせるようにしてこれに一体に接合し、組付けるようにしてある。
【0096】
このフィルタ部3は、図18に示す様に、ここでは中央部分に前後並行する2つの折込み22,22を設けてこの中央部分に上に向けて浮き上る襞23を形成している。
この襞23は、後述する様にフィルタ部に被抽出物、即ちコーヒー粉末Pを投入したとき、これを包み込める容積を確保するためのものであり、同時に使用に際して展開したとき、襞の両端を本体部2の両側面部分6,6に固定して置くことで左右からの引っ張りによってフィルタ部3の中央部が垂れ下がるのを防止するものにしてある。
【0097】
さて、上記した本体部2とフィルタ部3とは、上述したように個別に形成され、それぞれは偏平に展開した状態にして互いに重ね合わせ、接合して一つに組立てられることになる。
図17は、フィルタ部3の展開した時の形状と、本体部3との組合せ関係を説明するものであるが、本体部2とフィルタ部3とは正にこの図面に示す状態で重ね合わせにして、本体部2の内面側にフィルタ部3を重ね、このフィルタ部3の外周部、つまり開口周縁部3aとなる周縁部を本体部2の外周部、つまり上部開口部4となる周縁部に沿って接合し、一体に組付けて濾過器1の原型を形成することになる。
尚、図面の符号24は、上記接合部分を「帯状の線」として表わしたものであるが、この接合は、上記開口周縁部3aが本体部2から簡単に剥がれ落ちないように接合することになる。
【0098】
上記組付けによって本体部2とフィルタ部3は内外二重構造体に組合い、両者の間には後述する濾液の誘導域25が形成されることになり、これによってフィルタ部3の広い領域において濾過することができるものとなっている。そして、これと同時に本体部2の下部開口部5はこのフィルタ部3によって塞がれ、実質的に漏斗形に形成される本体部3の底部を形成することになる。
【0099】
この様に、濾過器1は、本体部2とフィルタ部3の2つの構成体を上記の如く組合せることによって形成することになるが、この2つの構成体を組付けた後、前記基準折り曲げ線7a,7bと前記第1,第2の補助折り曲げ線9a,9b、10a,10bをそれぞれ基点にして前記したように折り曲げることによって前後偏平状に折り畳むことになる。
そして、この折り畳みに合せて本体部2の内側で2つ折りに畳まれ、袋状になるフィルタ部3に対して予め所定量の被抽出物、即ちコーヒー粉末Pを投入し、その後、接面する本体部2の前後の面部分8a,8b同士、或は又同様にして前後から接面するフィルタ部3の開口周縁部3a,3a同士を接合して袋状に畳まれるフィルタ部3の口を封止して本発明の濾過器1を完成させることになる。
図15は、上記完成状態の濾過器1の断面図を示したもので、ここで符号26は、フィルタ部3の口部を封止する接合部を示している。
【0100】
この様に偏平な状態に畳まれた濾過器1は、保存乃至保管のため機密性に優れる包装用袋(図示せず)に収容して保管することになる。そして、使用に当ってはこの包装用袋から取り出した後、本体部3の前後の摘み片13,13を前後に引いて前記接合部26を剥がし、本体部2と共にフィルタ部3を開放し、この開放に併せて本体部2の左右の側面部分6,6の蛇腹を開いて本体部2全体を漏斗形に展開させることになる。
図13及び図14は、この展開状態を示しており、この本体部2の漏斗形の展開に伴いその内側のフィルタ部3も略皿形に開放して収容するコーヒー粉末Pを露出させることになる。
【0101】
本発明の濾過器1は、上記の状態においてそのままカップ容器15上に載置し、カップ容器の開口縁部15aに本体部2の左右の側面部分6,6から突き出す架け止め部17,17を架け止めてセットされることになる。
図11及び図12は、このセット状態を示したものである。本体部2の左右の架け止め部17,17は、その円弧状に形成した下縁部17a,17aをカップ容器の開口縁部15aの内側に当接させて支持され、これにより本体部の下部開口部5とこれを塞ぐフィルタ部3の底の部分をカップ容器15に向けて臨ませることになる。
【0102】
そしてこの時、上記左右の下縁部17a,17aが対称状に円弧状をなし、且つそれぞれ内向きに傾斜することから、本体部2は常にカップ容器15の中心に位置するように誘導され、横ずれを防止した安定した状態でのセットが実現することになる。しかもこの時、左右の架け止め部17,17は、図13,14に示したようにそれぞれV字型に開いてカップ容器の縁部15aに対して左右において2点づつ、計4点での支持構造となることから極めて安定したセット状態を作ることになるのである。
ことに、上記構造においては、注湯の作業によってフィルタ部3のコーヒー粉末Pに湯が注がれ、湿潤して全体の重量が増したとき、この重量を受けて本体部2が沈み込むことに伴い前記下縁部17a,17aとカップ容器15の縁部15aとの噛み合せが強くなることから更に安定したセット状態が得られることになるのである。
【0103】
その一方、本実施例では、上記セットに当って架け止め部17,17の係合に加えて本体部の前後の面部分8a,8bの下縁部に形成する突片20,20が容器15の内部に入り込むことから横ずれを更に効果的に防止するものとなっている。
【0104】
ところで、前記摘み片13をこの実施例では前後の面部分8a,8bに設ける弧状の折り曲げ線21,21を介して形成するものとしているが、これは折り曲げ線21,21を弧状にすることによってこの線を基点に摘み片13を外側に折り曲げ、それぞれ前後の面部分8a,8bに対して直角に近い角度で立ち上げたとき、摘み片13の戻りを阻止して上記面部分8a,8bを平面状態に維持することができるからである。
尚、この摘み片13は、製造過程において折り曲げ線21,21を基点にして予め外に向けて折れ曲がった状態に癖を付けて置くと、濾過器を偏平に折り畳んだ状態から開放するとき、摘み取りが容易になり、操作を迅速にすることができる。そして同時に、この摘み片が開放した状態にあると、これが濾過器1の開放口になっていることを知らせる表示手段となり、使用者の取扱いを更に便利なものにすることができる。
【0105】
また、前記前後の面部分8a,8bについて、図示するように下縁部の中央部に縦の切り込み27を形成して置くと、濾過器を偏平に畳んだとき、本体部2の内側でコーヒー粉末の封入によって膨らむフィルタ部3がこの切り込み27を開いて逃げることができることから不要に本体部の前後の面部分を押し出すことがなく、従ってコンパクトに濾過器を折り畳むことができることになる。
【0106】
以上本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明に係る濾過器は、極めて簡単に取り扱うことができるものであり、使用時にカップ容器に対するセットを間違えることも、また濾過器を破損することもなく安全に使用できると共に、未使用時には偏平に折り畳んで包装用袋に格納し、保管し、運搬等に供することができることからその管理は極めて容易である。しかも、本発明の濾過器は、本体部2については厚紙等のシート素材によって、またフィルタ部3については不織布等の有り触れた素材によって成形できるものであることから使い捨て濾過器に見合った価格で製造することができ、経済的にも有利であるる。
【0107】
尚、上記実施の形態では本発明の簡易型濾過器について、コーヒーの濾過器に基づき説明したが、この濾過器は被抽出物としてコーヒーが選択される他に、紅茶や緑茶などの茶葉や、だしの素等を濾過する濾過器としても利用することができるものであり、実施は可能であり、本発明の濾過器となることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0108】
1 本発明に係る簡易型濾過器
2 本体部
3 フィルタ部
3a フィルタ部の開口縁部
3b フィルタ部の底部
3c フィルタ部の底部に形成する襞
4 本体部の上部開口部
5 本体部の下部開口部
6,6 本体部の左右の側面部分
7a,7b 折り曲げ部となる基準折り曲げ線
8a,8b 本体部の前後の面部分
9a,9b、10a,10b 補助折り曲げ線
13 本体部に形成される摘み片
14 本体部の上部開口部に沿って止着する接合部分
15 カップ容器
15a カップ容器の開口部
16 係合受部である切り欠き部
17 架け止め部
17a 架け止め部の下縁部
20 前後の面部分の下縁部に形成する突片
21 前後の面部分の上縁部に沿って形成する弧状の折り曲げ線
26 フィルタ部の開口部を封止する接合部
P 被抽出物たるコーヒー粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏斗形に形成する本体部の内面に皿形に形成するフィルタ部の開口周縁部を止着して本体部の内側にフィルタ部を組付け二重構造体にして該フィルタ部によって本体部の下部開口部を塞ぐ、前記本体部の相対向する左右の2側面部分には縦の折り曲げ部を形成して該左右の折り曲げ部を介して前後の2面部分を接面状に折り畳むと共に、該折り畳みに併せて前記フィルタ部に投入する被抽出物を封入し、これにより偏平に折り畳んだ格納形態を作り包装用袋に格納する一方、使用に際して前記包装用袋からの取り出しと共に、前記本体部の前後の2面部分を前後に開き漏斗形形状に展開して前記フィルタ部内を開放し、前記被抽出物を露出させてこの展開状態において前記本体部をカップ容器上に載置することにより濾過のセットができるようにした簡易型濾過器。
【請求項2】
請求項1に記載の簡易型濾過器において、前記本体部の左右の2側面部分に形成する折り曲げ部はそれぞれの側面部分の中央部に沿って縦に設ける基準折り曲げ線であることを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の簡易型濾過器において、前記本体部の左右の2側面部分に形成する折り曲げ部はそれぞれの側面部分の中央部に沿って縦に設ける基準折り曲げ線と、該基準折り曲げ線を中心に所要間隔を置いて併設する補助折り曲げ線からなることを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の簡易型濾過器において、前記本体部の内面に止着し連設されるフィルタ部はその開口周縁部を本体部の上部開口部に近い内面に接面させ一体に接合して本体部内面とフィルタ部外面との間に濾液の誘導域を設けることを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の簡易型濾過器において、前記フィルタ部は底部を前後に折り畳んで複数の襞を設けると共に、該襞の折り曲げ部の両端部を重ね合せにして該重ね合せ両端部を前記本体部の左右の2側面部分に設ける折り曲げ部にそれぞれ合せて止着することを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の簡易型濾過器において、前記本体部の前後の2面部分は折り畳んだ状態において上縁部同士を易剥離可能に接合し、フィルタ部内に収納する被抽出物の零れ出しを防止することを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の簡易型濾過器において、前記本体部の前後の2面部分には各上縁部から上部開口部を開放するための摘み片を延設することを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項8】
請求項7に記載の簡易型濾過器において、前記摘み片は前後の面部分の上縁部に折り曲げ線を介して延設し、使用時に本体部を前後に開き展開したとき前記折り曲げ線を基点にそれぞれ外方に折り曲げ、前記前後の面部分を平面姿勢に補強することを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の簡易型濾過器において、前記摘み片は前後の面部分の上縁部の略全幅に亘って形成されることを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載の簡易型濾過器において、前記本体部の外面部にはカップ容器の開口縁部を係合する係合受部を設けてなることを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項11】
漏斗形に形成する本体部の内面に皿形に形成するフィルタ部の開口周縁部を止着して本体部の内側にフィルタ部を組付け二重構造体にして該フィルタ部によって本体部の下部開口部を塞ぐ一方、前記本体部の相対向する左右の2側面部分にはそれぞれ中央部に縦の基準折り曲げ線を、また該基準折り曲げ線を挟む前後に補助折り曲げ線をそれぞれ形成して前記中央部の基準折り曲げ線を外に向けて山形に、またその両側の前記補助折り曲げ線を谷形に折り曲げて前記左右の2側面部分にカップ容器の縁部に架け止める架け止め部を形成してなり、不使用時には前記基準並びに補助折り曲げ線を介して前後の2面部分を接面状に折り畳み、該折り畳みに併せて前記フィルタ部に投入する被抽出物を封入して偏平状の格納形態を作ると共に、この状態において包装用袋に格納せしめ、その一方、使用に際しては前記包装用袋からの取り出しの後に前記本体部の前後の2面部分を開いて漏斗形形状に展開し、これにより前記フィルタ部内を開放して前記被抽出物を露出させると共に、この展開した状態において前記本体部の左右の架け止め部をカップ容器の縁上に載置して抽出液の濾過のためのセットが行えるようにしたことを特徴とする簡易型濾過器。
【請求項12】
請求項11に記載の簡易型濾過器において、前記本体部の左右の2側面部分に形成する架け止め部はそれぞれの下縁部を内側其端から外側先端に向けて上向きの傾斜縁に形成してなることを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項13】
請求項11に記載の簡易型濾過器において、前記本体部の左右の2側面部分に形成する架け止め部はそれぞれの下縁部を内側其端から外側先端に向けて凹円弧状の弧縁に形成してなることを特徴とした簡易型濾過器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−48897(P2013−48897A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167216(P2012−167216)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(591253401)片岡物産株式会社 (18)
【Fターム(参考)】