説明

簡易尿採集器、およびそれを用いた24時間尿中塩類簡易測定方法

【課題】 濾紙法を応用し、誰にでも簡単に携帯利用可能とする尿の採集器、および、それを用いて24時間何時でも場所を問わず尿を採集し、排尿毎の尿を吸収した濾紙から塩類などの化学成分を抽出、分析可能とする新たな測定技術を提供する。
【解決手段】 携帯容易な所定長、所定直径の非透水素材製パイプ本体2一端を着脱口20とし、同着脱口20周壁縁に、該パイプ本体2軸芯方向に沿って僅かな一定のスリット状採集溝3を刻設し、同着脱口20に臨む筒型収容部22中に、パイプ本体の軸芯方向断面がV字型に折曲された矩形状濾紙片7を、同一端の折曲された頂角70が当該採集溝3から外部に露出する配置とするよう着脱自在に組み合せ収納してなるものとした簡易尿採集器1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、尿中に含まれる塩類値の測定に関するものであり、日常生活に支障を来さずに尿を採集できる尿採集器を製造、輸送、保管、販売する分野は勿論のこと、その部品類に必要となる素材、例えば、各種紙類、プラスチック、各種金属材料、各種繊維類、木材、石材、等を提供する分野、それらを加工、組立、包装、および各製造過程での保管、輸送、試験、検査、ならびにそれらに用いる製造機械、組立機械、包装機械、保管装置、輸送機械、試験器、検査器などの分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、当該尿採集器を用いて医学的検査や研究、実験、健康管理、治療および地域や学校、企業などにおける健康診断、健康指導、保健、安全、衛生またはそれらの危機管理の分野などの外、尿採集器の携帯、組み立て、採尿、乾燥、分解、保管、抽出などの使用技術の分野など、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
高血圧予防の観点から、厚生労働省では食塩摂取量の目標値として、女性8g/日未満、男性10g/日未満を示しており、カリウム摂取量としては米国高血圧合同委員会が高血圧予防のために3500mg/日を摂ることが望ましいとし、また、一般にはナトリウム−カリウム比を2以下とするのが適正とされており、これら摂取量の指標として尿中排泄量が最も信頼性が高いとされている。
そして、こうした尿中に含まれる塩類の測定精度を高めるには、24時間尿中の食塩、カリウム、およびナトリウム−カリウム比を正確に測定する必要があるとされており、しかも24時間中に複数回(一般的成人で通常4〜7回/日程度といわれる)測定しなければならず、健常な成人や高齢者、または介護あるいは介助を要する人々など誰でもが、外出先であっても簡便に採尿することができ、しかも尿中成分を保持したまま携行することができる上、医療機関に持ち込むことで尿中の塩類を高精度に測定できる方法が必要とされている。
【0003】
(従来の技術)
尿中成分を化学的に分析する技術として、例えば、後記する特許文献1(1)に掲載されている発明のように、酸含有状態下あるいは酸性条件下で、経時的に強度を維持し、形状変化や重量減少を生じにくい、安定性に優れた濾紙を提供し、特に、本発明の濾紙は、カルボン酸、スルフィン酸、スルホン酸などの有機酸を含有させる場合に有効で、被検液を酸性にすることができる成分および試薬成分を含有させて酸性条件が必要とされ、例えば尿中のビリルビンあるいは亜硝酸塩の測定等の測定用で保管中も安定的に強度を維持できる試験片を得ることができる「酸含有状態下あるいは酸性条件下で使用する濾紙およびそれを用いて形成される試験片」発明や、同特許文献1(2)に示されている「採尿用シートおよび尿中の成分の検出法」発明に見られるとおりの、安息香酸、その塩、その誘導体、ほう酸の一種以上を含む吸水性シートおよび撥水性シートを重ね合わせた採尿用シートで、尿中の成分の検出を採尿部位と異なる検出部位で行うようにして、尿採取用の採尿コップや尿検体輸送用の嵩張るポリ容器を特に必要とせず、検体の採取が極めて簡便に行えるようにし、ブドウ糖以外の尿中の成分、例えば蛋白質、潜血、ビリルビン、ウロビリノーゲン、ケトン体および亜硝酸塩などの臨床的に重要な尿の定性などの分析のために利用できるようにしたものがある。
【0004】
または、例えば、特許文献1(3)のように、抗菌性物質又は防腐性物質の存在下に体液を保存した後、該体液中の成分を分析することを特徴とする体液中の成分の分析法および抗菌剤または防腐剤を含む体液採取用シートにより、試験測定時に酵素・発色試薬を用いて体液中の成分の安定した判定あるいは定量が可能となり、体液中の成分の移送中あるいは保存期間中の腐敗、細菌の繁殖などによる分解を抑え、試験測定時まで安定に体液中の成分を保持でき、しかも食後1〜2時間尿での尿糖検査を行って、糖尿病患者およびその境界型の見逃しの問題を解消し、グルコース以外の体液中の成分、例えば蛋白質、潜血、ビリルビン、ウロビリノーゲン、ケトン体、亜硝酸塩などの臨床的重要な項目の分析に利用できるようにした「体液中成分の分析法および体液採取用シート」発明がある。
【0005】
その他、特許文献1(4)に代表される発明のように、尿をしみ込ませて乾燥させた濾紙を検体として回収し、この検体から抽出した尿成分を試料として用い、試料をウレアーゼ処理して内部標準物質を加え、トリメチルシリル誘導体化してGC/MS分析してクレアチニンを含む代謝物質の内部標準物質に対する分析値を求め、得られたクレアチニンの分析値にクレアチニンの補正係数を乗じてクレアチニン補正分析値を求めると共に、他の代謝物質の量をクレアチニン補正分析値に対する量として表示し、この値を演算装置に入力して健常値と比較して異常値を表示し、予め記憶させた所見リストから代謝物質の異常値に対応する所見を選択して表示してクレアチニンを含む代謝物質の分析値を得た上で、クレアチニンの分析値を補正して補正したクレアチニンに対する含量として表示し、この値を健常値と比較して異常値を表示し、記憶された所見リストから異常値に対応する所見を選択して表示するようにし、GC/MSにより代謝物質の全項目の一斉分析を行うことができ、その結果に基づいて化学診断することができると共に、化学診断を自動化して迅速かつ正確な化学診断を可能にした「尿による化学診断方法」発明や、特許文献1(5)のような、カルシウム検知用試薬が吸収材に担持されてなるカルシウム検知体により、カルシウムを検出する検査を行う場合に、検査対象物を比色法や滴定法用の溶液にする必要がなく、簡単な作業で検出することができ、カルシウム検知体が呈色変化するため短時間でカルシウムを検出することができる上、尿や唾液などの体液で簡易にカルシウムを検出して採血が不要となる「カルシウム検知体」発明などが散見される。
【0006】
しかし、前者の「酸含有状態下あるいは酸性条件下で使用する濾紙およびそれを用いて形成される試験片」発明などは、尿中ビリルビンの測定や、尿中亜硝酸塩の測定を目的としたものであり、二番目に示した「採尿用シートおよび尿中の成分の検出法」発明は、採尿用シートの吸水シート部分や濾紙部分を外部に大きく露出させたものであり、尿を採集した後に携帯するには不向きである上、吸着面積が大きく次回の排尿までに乾燥し難いという欠点を有し、また、三番目の「体液中成分の分析法および体液採取用シート」発明によるものは、グルコースやそれ以外の体液中の成分、例えば蛋白質、潜血、ビリルビン、ウロビリノーゲン、ケトン体、亜硝酸塩などの臨床的重要な項目の分析に利用できるものの、塩類やクレアチニンなどの分析に利用する記述は一切なされていない。
【0007】
さらに、四番目に示した「尿による化学診断方法」発明などは、被検者が尿をしみ込ませて乾燥した濾紙をプラスチック袋に入れて回収した後、クレアチニンを含む代謝物質の内部標準物質に対する分析値を求め、代謝物質の全項目の一斉分析を行うことができ、その結果に基づいて化学診断することができると共に、化学診断を自動化して迅速かつ正確に化学診断可能としてはいるが、濾紙を携帯し、尿を吸収した後に乾燥する技術についての開示は乏しく、外出先などでの採尿には多大な困難が伴うものと予想されるものであり、最後に示した「カルシウム検知体」発明などもまた、試験紙の唾液または尿含浸部の全体が露出されるようにしたものであって外出先に携行して尿などを採集するには不向きであり、しかも採集後に40℃まで加温したり、冷蔵庫内で一晩冷却したりするなどして強制的に乾燥しなければならないという不便があり、また、尿中の塩類やクレアチニンなどの分析への利用について考慮されたものとはなっていないという恨みがある。
【特許文献1】(1)特開平10−160725号公報 (2)特開平9−80043号公報 (3)特開平8−201382号公報 (4)特開平11−83860号公報 (5)特開平8−338834号公報
【非特許文献1】(1)竹森 幸一・仁平 將・三上 聖治・佐々木 直亮 24時間尿中食塩およびカリウム排泄量の簡易測定法 日本衛生学雑誌(Jpn.J.Hyg)第43巻 第5号 別冊(昭和63年12月) (2)竹森 幸一・山本 春江・角濱 春美・堀口由美子・工藤 奈織美・仁平 將・三上 聖治 濾紙法における尿中塩類、尿素窒素およびクレアチニンの回収試験と保存試験 日本循環器病予防学会誌 Vol.36 No.1 Feb.2001 (3)竹森 幸一・三上 聖治・仁平 將 24時間尿中ナトリウムおよびカリウム排泄量推定式の比較 青森県立保健大学紀要第3巻第1号・97〜99(2002年3月発行)別刷 (4)竹森 幸一・山本 春江・角濱 春美・工藤 奈織美・三上 聖治・仁平 將 わが国における全国および地域ブロック別ナトリウム、カリウム排泄量の15年間の変化 日本循環器病予防学会誌 Vol.37 No.3 Oct.2002 (5)竹森 幸一・山本 春江・浅田 豊・三上 聖治 7日間の尿中食塩およびカリウム排泄量測定の簡便法 日本循環器病予防学会誌 Vol.38 No.3 Oct.2003 (6)竹森 幸一・山本 春江・浅田 豊・工藤 奈織美・千葉 敦子・仁平 將 尿濾紙法による栄養分析と指導法 日本循環器病予防学会誌 Vol.40 No.3 Oct.2005 (7)Kawasaki T,Itoh K,Uezono K,et al.A simple method for estimating 24 h urinary sodium and potassium excretion from second morning voiding urine specimen in adults Cli Exp Pharmacol Physiol 1993;20:7−14
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(問題意識)
上述のとおり、従前までに提案のある尿中の成分を測定し、抽出された成分毎の分析値に基づく医療行為や保健指導などを可能とする各種の化学的診断方法などは、何れも尿の採集に用いる濾紙を強制的に乾燥しなければならず、外出先で簡単に採尿できるものとはなっておらず、また、このように尿を吸収、採集した濾紙の殆どは、乾燥後に蛋白質、潜血、ビリルビン、ウロビリノーゲン、ケトン体、亜硝酸塩などの測定に用いられるものであり、そうした中にも、尿中の代謝物質の量をクレアチニン補正分析値に対する量として表すよう演算できるものなどが存在しているものの、尿中の塩類値を測定するものではなく、尿中の塩類値に基づき、人の塩分摂取量を高精度に測定可能とするものではなかった。
【0009】
このような状況の下、本願発明者は、塩分摂取量を正しく測定するには、1日の中に食事や運動、睡眠などの活動毎に大きく変化する尿中に含まれる排出塩類の量を、全ての排尿毎、少なくとも3ないし7日間に亘って高精度で測定する必要があるものと考え、これを実現化するには、携帯性が良くて外出先でも尿を簡便に採集でき、尿の吸収後は速やかに乾燥してしまうようにした尿採集器の開発と、それによって採集された試料に基づき24時間の尿中塩類を高精度に測定できる簡易的測定法とを開発する必要があるものと考えるに至った。
【0010】
(発明の目的)
そこで、この発明は、本願発明者が、これまで永年に亘り、非特許文献1(1)ないし(6)の各文献に開示したとおり、研究開発を積み重ねてきた濾紙法を応用し、誰にでも簡単に携帯、利用可能とする尿の採集器、および、それを用いて24時間何時でも場所を問わず尿を採集し、排尿毎の尿を吸収した濾紙から塩類などの化学成分を抽出、分析可能とする新たな測定技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長年に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、ここに来て、遂に新規な構造の簡易尿採集器、およびそれを用いた新規な24時間尿中塩類簡易測定方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の簡易尿採集器は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、携帯用に所定長で所定直径とした非透水素材製パイプ本体からなり、その一端を着脱口とし、該着脱口周壁縁に、当該パイプ本体軸芯方向に沿って僅かな一定のスリット状採集溝を設け、同着脱口からパイプ本体他端開口に向け、当該採集溝より充分に長く設定してあるパイプ本体筒型収容部中に、パイプ本体軸芯に直交する断面形をV字型とした矩形状濾紙片が、その一端を当該着脱口端面に一致させ、断面V字の谷底がわが当該採集溝から露見し、同断面V字の開放がわ縁部夫々が同採集溝とは反対がわのパイプ本体円筒内面壁に当接状となる配置で着脱自在に収納されてなるものとした構成を要旨とすることを特徴とする簡易尿採集器である。
【0012】
より具体的には、長さ150mm、直径10mm、内径7mmの非透水素材製円筒状パイプ本体からなり、その一端を着脱口とし、該着脱口周壁縁に、当該パイプ本体軸芯方向に沿って長さ5mm、周回り方向幅1mmのスリット状採集溝を設け、同着脱口からパイプ本体他端開口に向けて60mmの長さに設定した筒型収容部中に、長さ60mm幅14mmの矩形濾紙の幅中央よりV字断面形に折曲してなる濾紙片が、その一端を当該着脱口端面に一致させ、断面V字の谷底がわが当該採集溝から露見し、同断面V字の開放がわ縁部夫々が同採集溝とは反対がわのパイプ本体円筒内面壁に当接状となる配置で着脱自在に収納されてなるものとした構成からなる簡易尿採集器となる。
【0013】
(関連する発明)
上記した簡易尿採集器に関連し、この発明には、それを用いた24時間尿中塩類簡易測定方法も包含している。
即ち、排尿の度毎に、この発明の基本をなす前記簡易尿採集器を用い、採集溝の細隙を通じて筒型収容部内の濾紙片に吸着する採尿を、24時間に亘る全ての排尿時に繰り返し、何れの採尿も、直前の採尿時後からの間に自然乾燥状またはそれに近い状態とした濾紙片への採尿となるようにした後、当該濾紙片を簡易尿採集器のパイプ本体着脱口から取り出し、同濾紙片に蓄積した24時間分全ての塩類を一挙に抽出し、分注してクレアチニン測定と塩類測定とを行い、得られた値に基づき塩類−クレアチニン比を求めた上、同塩類−クレアチニン比に基づき、24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を算出するようにした構成を要旨とする24時間尿中塩類簡易測定方法である。
【0014】
この測定方法を、より具体的に示すと、排尿の度毎にこの発明の基本をなす前記簡易尿採集器を用い、採集溝の細隙を通じて筒型収容部内の濾紙片に吸着する採尿を、24時間に亘る全ての排尿時に繰り返し、何れの採尿も、直前の採尿時後からの間に自然乾燥状またはそれに近い状態とした濾紙片への採尿となるようにした後、当該濾紙片を簡易尿採集器のパイプ本体着脱口から取り出し、同濾紙片に蓄積した24時間分全ての塩類を一挙に抽出し、分注してクレアチニン測定と、ナトリウム測定およびカリウム測定とを行い、得られた値に基づき塩化ナトリウム−クレアチニン比およびカリウム−クレアチニン比を夫々割り出した上、それら塩化ナトリウム−クレアチニン比およびカリウム−クレアチニン比に基づき、24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を算出するようにした24時間尿中塩類簡易測定方法ということができる。
【0015】
さらに、表現を変えて示すと、被検者は、排尿の度毎に請求項1ないし6何れか一項記載の簡易尿採集器を用い、同採集溝の細隙を通して筒型収容部内濾紙片に吸着する採尿を、24時間に亘る全ての排尿時に繰り返し、何れの採尿も、直前の採尿時後からの間に自然乾燥状またはそれに近い状態とした濾紙片への採尿となるようにした後、当該簡易尿採集器を然るべき分析機関に発送し、これを受領した分析機関では、同簡易尿採集器から既に乾燥状態にある濾紙片を取り出し、同濾紙片に蓄積した24時間分全ての塩類を一挙に抽出し、分注してクレアチニン測定と塩類測定とを行い、得られた値に基づき塩類−クレアチニン比を求めた上、同塩類−クレアチニン比に基づき、24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を算出するようにした構成による24時間尿中塩類簡易測定方法となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、この発明の簡易尿採集器によれば、従前までは、24時間に亘って採尿する場合、被検者が健常者であっても、尿の全量または所定量を採集する必要があるため、採尿期間中に亘り病院などの施設に留まらなければならないという不便さがあり、日常的に仕事や学校に通う人々や検査期間中に旅行などに出かけてしまうときなどには採尿できないという欠点があったが、携帯容易な寸法、形状のパイプ本体中に濾紙片を内蔵したものとして誰でも気軽に携行することができるようになり、排尿のときにパイプ本体の採集溝に尿を接触させるだけで、瞬時に尿が濾紙片中に吸収、浸透して簡単且つ迅速に採尿することができ、しかも濾紙片中に吸収された微量の尿は、次回の排尿までに充分に乾燥してしまって取り扱いも容易で衛生的に保管することができるものとなり、濾紙片中に浸透した尿成分は、そのまま16週間に亘って安定に保管することができ、この発明の24時間尿中塩類簡易測定方法を効果的に実現可能とすることができるという秀れた特徴が得られるものである。
【0017】
加えて、パイプ本体の採集溝とは反対がわとなる外周壁の一部または全部に転がり防止形状部を形成したものとし、簡易尿採集器をテーブル上などに載置したときでも、不用意に転がったり落下したりしてしまうのを確実に防止することができ、採尿後に濾紙片への尿の浸透や乾燥を待つ間などにも、採集溝を上向きとした姿勢に安定して置くことができるという効果が得られ、また、パイプ本体一端着脱口の採集溝とは反対がわとなる円筒内面壁に、濾紙片の断面V字の開放がわ縁部夫々を係止可能な係止鍔部を一体形成してなるものは、筒型収容部内に装着された濾紙片が不用意に離脱してしまうのを阻止し、同濾紙片の断面V字の谷底がわが常に当該採集溝から露見するよう位置規制可能とするものとなり、しかもパイプ本体着脱口から濾紙片全長寸法に一致する筒型収容部内適所に規制部を形成し、筒型収容部内に装着した濾紙片の奥部がわ端に該規制部が当接するようにして他端がわに移動してしまうのを確実に阻止可能とし、採尿不良の発生を確実に防止し、より精度の高い採尿を実現化することができ、さらに、パイプ本体の採集溝それ自体か、その直近の外周面壁に採集溝表示用の目標表示部を形成したものでは、採尿するときに目標表示部を目安にして尿中に接触するよう操作することが可能となり、誰でも失敗せずに、より確実に採尿できるものとなる。
【0018】
この発明の簡易尿採集器を用いた24時間尿中塩類簡易測定方法によれば、24時間尿の全量または所定量の採集が不要となり、通常の日常生活を送る被検者が、旅行先などの外出先であっても簡便且つ迅速に採尿することができ、24時間分の採尿を終えた全ての簡易尿採集器を、然るべき分析期間に発送するだけで、これを受領した分析機関が、24時間に亘って採尿した濾紙片から一挙に塩類を抽出し、クレアチニン測定と塩類測定とを行い、塩類−クレアチニン比を高精度に計算することができるものとなり、同塩類−クレアチニン比に基づいて被検者の24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を高精度に算出することができるようになり、被検者への負担を大幅に軽減すると共に、分析作業の効率を格段に高めることができるという秀れた効果を発揮するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
簡易尿採集器のパイプ本体は、濾紙片を着脱自在に収容可能であって収容した濾紙片を外力から保護可能であり、尿の採集操作を容易くすると共に、所定個所を尿に接触させて短時間の中に定量且つ微量の尿を濾紙片に自動的に吸収可能とし、尿を吸収した後、濾紙片に他物が接触するのを阻止して採集された尿成分を保護可能である上、濾紙片を迅速に自然乾燥可能とする機能を果たし、携帯容易な程度の所定長、所定直径の非透水素材製とし、その一端を着脱口とし、同着脱口周壁縁に、当該パイプ本体軸芯方向に沿って僅かな一定のスリット状採集溝を設け、同パイプ本体の着脱口から他端開口に向けて、該採集溝より充分に長い筒型収容部を確保したものとしなければならず、携帯性や採尿操作性などを考慮して鞄やバッグ、内ポケットなどに収納容易な形状、寸法に設定すべきであり、後述する実施例に示すもののように、長さ約150mm、直径約10mm、内径約7mmの非透水素材製円筒状パイプ本体の一端を着脱口とし、同着脱口周壁縁に、該パイプ本体軸芯方向に沿って長さ約5mm、周回り方向幅約1mmのスリット状採集溝を刻設し、同パイプ本体の着脱口から他端開口に向けて約60mmの長さに設定した筒型収容部を確保したものとするのが望ましいが、これらの各部寸法は、携帯性や、取り扱い性を失わない外径3mmないし20mm程度、長さ50mmないし200mm程度とし、スリット状採集溝は、必要充分な量の採尿を可能とするようパイプ本体軸芯方向長さ3ないし7mm程度、周回り方向幅0.5mmないし3mm程度の範囲に設定することができる。
【0020】
パイプ本体用の非透水素材は、筒型収容部中に装着した濾紙片を外力から保護可能である共に、着脱口および採集溝以外を防水可能とする機能を果たし、充分な耐久強度、衛生的な保管、濾紙片の尿採集状態の確認容易性、および使用後のリサイクル処理などを考慮すると、少なくとも筒型収容部が透明で、軽量なプラスチック製または強化プラスチック製とするのが望ましいが、蝋や樹脂フィルムなどによって防水性を確保した厚紙製、木製、竹製、強化ガラス製、天然ゴム製や合成ゴム製などとすることが可能である外、各種ステンレスやアルミニウム、その外の合金や、鍍金などの表面処理によって防錆された金属製とすることができ、さらに、それらの素材同士を適宜、組み合わせたものとすることができる。
なお、プラスチックとしては、例えば、ビスマレイミド、トリアジン、ポリエチレン、PET、ポリブチレンテレフタレート、PP、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルサルホン、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリルニトリル・アクリルゴム・スチレン樹脂、アクリルニトリル・スチレン樹脂、ポリアミド、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、四フッ化エチレン樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン、ジアリルフタレート樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化−六フッ化エチレン、エチレン−四フッ化エチレン樹脂、四フッ化−パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、マレイミド樹脂、マレイミド・スチレン樹脂、ポリウレタン、その外の合成樹脂とすることができ、表現を変えると、液晶ポリマー、熱可塑性エラストマー、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、強化プラスチックとすることができる。
【0021】
また、パイプ本体は、後述する実施例に示すように、該採集溝とは反対がわとなる外周壁の一部または全部が、平面状設置面、または板状あるいは3点以上の支持脚などが形成された、転がり防止形状部に形成されてなるものとし、パイプ本体一端着脱口の採集溝とは反対がわとなる円筒内面壁に、濾紙片の断面V字の開放がわ縁部夫々を係止可能な係止鍔部を一体形成してなるものとすることが可能であり、該着脱口から濾紙片全長寸法に一致する筒型収容部内適所に、濾紙片の奥部がわ端に当接して埋没を阻止可能な規制部を形成し、あるいはまた、一端の採集溝それ自体か、その直近に採集溝表示用の目標表示部を形成してなるものとすることができる。
【0022】
着脱口は、その奥がわに設定された筒型収容部中に、所定寸法、形状の濾紙片を着脱自在に装着可能とする機能を果たし、パイプ本体断面形状そのままの開口寸法、形状とすることが可能であり、必要に応じて採集溝とは反対がわとなる円筒内面壁に、濾紙片の断面V字の開放がわ縁部夫々を係止可能な、係止鍔部を一体形成してなるものとすることができる。
【0023】
採集溝は、パイプ本体の一端周壁に、僅かな一定の採尿用細隙を形成し、濾紙片の尿吸収量を適正且つ極少量に自動規制可能とする機能を果たし、尿中成分の抽出に必要な吸着量を確保すると共に、迅速な乾燥を得るには、例えば、後述する実施例に示すように、長さ60mm幅14mmの矩形濾紙の幅中央よりV字断面形に折曲した濾紙片をパイプ本体筒型収容部中に装着して、該採集溝を尿中に接触するようにして該細隙中に入った尿が濾紙片に浸透するよう採尿した場合に、濾紙片全長の約半分の30mm程度に浸透するよう設定されたものとするのが望ましい。
【0024】
筒型収容部は、V字断面形に折曲した濾紙片をパイプ本体内の適正位置に収容し、該濾紙片の断面V字の谷底部分および両開放端縁部分を夫々内接、保持可能とする筒状内壁を形成する機能を果たすものであり、着脱口端面から他端開口がわに濾紙片の長さ寸法に一致する個所に、濾紙片の奥部がわ端に当接して奥がわへのズレを阻止可能な規制部を形成したものとするのが望ましく、該規制部は、着脱口から他端開口までの連通状態を保持可能とし、通気性を確保可能なものとするのがよく、当該筒型収容部に相当するパイプ本体周壁の一個所または複数の適所に通気用の小径孔や通気窓などを形成し、または、それらの通気用開口に防水且つ通気性を有する繊維シートを張着するなどして、濾紙片の乾燥を促進可能なものとすることができる。
当該規制部は、密閉状の隔壁とする外、筒型収容部内壁から内向きに突出する鍔や角状突起、網状、柵状、フィルター状のものなどとして通気性を確保したものとするのが望ましく、後述する実施例に示すように、筒型収容部を直径方向に貫通した棒体からなるものとすることができる。
【0025】
24時間尿中塩類簡易測定方法は、この発明の簡易尿採集器を用いて、一般的な生活を送る健常者を含む様々な被検者の個々人における1日の塩分摂取量を効率的且つ高精度に測定可能にするものであり、当該簡易尿採集器を用いて濾紙片に吸着、採尿し、同濾紙片乾燥後、簡易尿採集器から取り出し、24時間分全ての濾紙片から一挙に塩類を抽出し、分注してクレアチニン測定ならびに塩類測定を行い、得られた値に基づき塩類−クレアチニン比を計算した上、該塩類−クレアチニン比に基づき、24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を算出するように設定されたものとしなければならず、より具体的には、後述する実施例に示すように、排尿の都度この発明の簡易尿採集器を1本ずつ個別に用いて採尿し、取り出した濾紙片より24時間に亘る全ての排尿について抽出、分注してクレアチニン測定と、ナトリウム測定およびカリウム測定とを行い、得られた値に基づき塩化ナトリウム−クレアチニン比およびカリウム−クレアチニン比を夫々計算した上、該塩化ナトリウム−クレアチニン比およびカリウム−クレアチニン比に基づき、24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を算出するようにしてなるものとすることができる。
換言するならば、被検者は排尿の度毎に、この発明の簡易尿採集器を新しいものに変えながら次々に採尿し、24時間に亘って採尿した全ての簡易尿採集器をまとめて然るべき分析機関に発送し、これを受納した分析機関では24時間分全ての簡易尿採集器より、既に乾燥状態にある濾紙片を取り出し、それら24時間分全ての濾紙片から一挙に塩類を抽出した後、分注してクレアチニン測定と、塩類測定とを行い、得られた値に基づき塩類−クレアチニン比を計算した上、該塩類−クレアチニン比に基づき、24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を算出するようにしてなるものであると言える。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0026】
図1の簡易尿採集器の平面図、図2の簡易尿採集器着脱口の正面図、図3の簡易尿採集器採集溝周辺の平面図、図4のパイプ本体の平面図、図5のパイプ本体の側面図、図6のパイプ本体着脱口の正面図、図7のパイプ本体採集溝周辺の平面図、図8のパイプ本体着脱口周辺の断面図、および図9の展開した濾紙片の平面図に示す事例は、パイプ本体2一端の着脱口20周壁縁に採集溝3を刻設し、同着脱口20に臨む筒型収容部22中に、V字型に折曲した濾紙片7を、同一端の折曲された頂角70が当該採集溝3から外部に露出する配置とするよう着脱自在に組み合せ収納してなるものとした、この発明の簡易尿採集器における代表的な一実施例を示すものである。
【0027】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の簡易尿採集器1は、図4ないし図8中に示す、長さLが150mm、直径DMが10mm、内径が7mmの透明プラスチック製円筒状パイプ本体2と、これに着脱自在に組み込まれた、図9中に示す、長さDPが60mm、幅Wが14mmの矩形濾紙の幅中央よりV字断面形に折曲してなる濾紙片7とからなり、図4ないし図8中に示すように、同パイプ本体2は、濾紙片7用の着脱口20に設定した一端の周壁縁に、同パイプ本体2軸芯方向に沿って長さSLが5mm、周回り方向幅SWが1mmのスリット状採集溝3を刻設し、図4および図5に示すように、同パイプ本体2の着脱口20から他端開口21に向けて60mm(DP)の位置に、直径3mmの円柱体を、直径(DM)方向に打ち込み結合して規制部5を形成し、該着脱口20から規制部5までの円筒空間を筒型収容部22と設定してあり、図4および図7中に斜線円で示すように、採集溝3直近のパイプ本体2外周面壁には、赤、青、緑、黒などの認識容易な色および形の印刷、シール、刻印その外など何れかからなる目標表示部6を表示したものとし、また、図6および図8中に示すように、該着脱口20の採集溝3とは反対がわとなる周縁端面には、着脱口20内径より僅かに小さな、直径6.5mmの半円形に切り欠かれた係止鍔部23を有するプラスチック製小平板からなり、同係止鍔部23とは反対がわ(パイプ本体2の外径DMより外がわ)の一辺縁が採集溝3の貫通方向に直交する直線(水平)状に形成した正面概略凹字型形状のプラスチック片部を一体に結合し、転がり防止形状部4を形成したものとしている。
【0028】
そして、図9に示すように、濾紙片7は、東洋濾紙No.6(商品名:東洋濾紙株式会社製)か、またはそれと同等の濾紙を、アドバンテック東洋株式会社に製作依頼した型などを用いて打ち抜き加工するなどして、長さDPが60mm、幅Wが14mmの矩形濾紙を製造し、その幅寸法Wの中央をV字断面形に折曲してなるものであり、この発明の簡易尿採集器1は、図1ないし図3中に示すように、該濾紙片7の長尺DP方向の一端が、該着脱口20の端面に一致し、且つ同他端が当該規制部5に当接するよう位置規制されると共に、該一端の折曲された頂角70が当該採集溝3から外部に露出する配置とした上、断面V字の開放がわ縁部夫々がわとなる縁部71,71夫々の一端が係止鍔部23に係止し、且つ各縁部71,71夫々の全長(長さDP)が、該採集溝3とは反対がわとなる円筒面壁に当接するよう、筒型収容部22中に着脱口20を通じて着脱自在に組み合せ収納してなるものである。
【0029】
(実施例1の作用)
以上のとおりの構成からなるこの発明の簡易尿採集器1は、様々な体液などの液体類の採集および分析などに利用することが可能であって、特に、この発明の24時間尿中塩類簡易測定方法に有効なものとなり、以下において、この発明の簡易尿採集器1の作用と共に、それを用いて行う24時間尿中塩類簡易測定方法について示すこととする。
【0030】
当該24時間尿中塩類簡易測定方法を実施する分析機関は、5ないし10本(一般的な成人1日分の排尿回数に相当する本数)に、濾紙片7に吸着された成分が保たれる16週間以内の測定日数(7日間、14日間または20日間など曜日毎に変化する食生活を把握可能な日数)を乗じた本数の簡易尿採集器1を被検者に渡し、これを受け取った被検者は、図10の24時間尿中塩類簡易測定方法のフローチャート中に示すように、採尿開始から24時間に亘る排尿毎に、1本ずつの簡易尿採集器1を使用し、図1中に示す採集溝3とは反対がわの他端がわを把持して排尿中の尿を、目標表示部6に接触させるようにして採尿Aする。
目標表示部6に接触した尿の一部は、図2および図3中に示す採集溝3中に入り、濾紙片7の採集溝3に臨む一端V字断面形頂角70部分に速やかに吸収されて、次第に同濾紙片7の全長DP(図9中に示す)の約半分の位置まで浸透しながら、次回の採尿までの間に速やかに乾燥してしまう。
【0031】
このようにして24時間に亘る採尿を終える毎に被検者は、この24時間分全て(通常5ないし10本程度)の簡易尿採集器1を纏めて分包し、複数日分を分析機関に郵送、またはその外の手段で発送し、これを受領した分析機関では、図10中に示すように、1つに分包された24時間分の簡易尿採集器1から夫々乾燥状態にある濾紙片7を取り出Bし、24時間分の濾紙片7を一まとめとしたもの(一括測定)を試験管に入れ、希塩酸(1ml HCl/l)15mlを加え、25℃、1時間振とうして濾紙片7から尿成分を抽出Cした後に分注Dし、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製:型名ICPS−7000)を用いた高周波発光分析法(ICP)により、クレアチニン(Creat)血清ベースのマルチキャリブレーターを基準物質としたJaffe法(バイエルメディカルエクスプレスプラス)で各抽出液中の尿中クレアチニンを測定Eすると共に、ナトリウムおよびカリウムを夫々測定Fする。
【0032】
尿中成分の測定E,Fによって得られた値に基づきナトリウム−カリウム比、塩化ナトリウム−クレアチニン比およびカリウム−クレアチニン比を夫々計算(G)する。
これにより得られた尿中塩類−クレアチニン比を、従来型の24時間尿の全量を採集して測定した(従来型)標準法による尿中塩類−クレアチニン比と比較すると、図11の本法と標準法とのナトリウム−カリウム比の相関図中に示すように、24時間蓄尿(標準法)と本簡易測定法(本法)のPearsonとSpearman相関係数(カッコ内)はナトリウム−カリウム比、0.974(0.931)、図12の本法と標準法との塩化ナトリウム−クレアチニン(図中にCrと表示)比の相関図中に示すように、塩化ナトリウム−クレアチニン比、0.831(0.876)、図13の本法と標準法とのカリウム−クレアチニン(図中にCrと表示)比の相関図中に示すように、カリウム−クレアチニン比、0.957(0.963)夫々と高い相関係数が得られ、当該24時間尿中塩類簡易測定方法によって尿中塩類を高精度に測定できることが証明された。
【0033】
そして、塩化ナトリウム−クレアチニン比およびカリウム−クレアチニン比に、非特許文献1(7)に示される川崎らのクレアチニン推定式(被検者の性、年齢、身長、体重、から計算可能)で計算したクレアチニン値を乗じると24時間の塩化ナトリウム(食塩)およびカリウム排泄量を高精度に算出することが可能である。
【0034】
(実施例1の効果)
以上のような構成からなる実施例1の簡易尿採集器1は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、図4および図5に示したパイプ本体2を透明プラスチック製としたことにより、図1ないし図3中に示すよう筒型収容部22内の濾紙片7が正しく装着されているか否かを容易に確認することができ、しかも採尿後に濾紙片7に適正に採尿されているかを視覚的に確認することができるものとなり、また、図1、図4および図5中に示すように、円柱状の規制部5を筒型収容部22の直径方向に貫通したものとすることによって着脱口20から他端開口21まで充分な通気性を確保可能となり、採尿後の濾紙片7が一段と速やかに自然乾燥されるものになるという利点が得られることとなる。
【0035】
さらに、実施例1の簡易尿採集器1を用いた24時間尿中塩類簡易測定方法は、図11ないし図13に示すように、該24時間尿中塩類簡易測定方法で得た尿中塩類−クレアチニン比と、従来型の24時間尿の全量を採集して測定する標準法による尿中塩類−クレアチニン比との間に、精度の高い相関係数が得られ、この発明の24時間尿中塩類簡易測定方法を、従来型の標準法に置き換えた場合にも、遜色のない高精度な24時間尿中塩類の測定を実現可能とし、外出先でも簡単に採尿できることで被検者への負担を大幅に軽減することができるという秀れた効果を発揮するものとなる。
【0036】
(結 び)
叙述の如く、この発明の簡易尿採集器、およびそれを用いた24時間尿中塩類簡易測定方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも簡易尿採集器の構造が簡素で低廉にて大量生産可能であり、これまで不可欠とされてきた採尿容器類を一切不要とし、堅牢且つ軽量で携帯性や輸送性にも秀れており、24時間分の採尿を終えた簡易尿採集器を取り纏めて取り扱うことが容易で、一括分析可能として、従前からの全量採尿による測定法に比較して被検者への負担、および分析コストを大幅に軽減して遥かに経済的なものとすることができることから、原則的に医療機関への入院が不可欠であったために24時間採尿による塩類排泄量の測定を断念せざるを得なかった健常者はもとより、排尿介護を要する人々にとっても朗報となり、地域住民の健康管理に取り組む医療機関や医療器具業界、地方自治体、企業および学校は勿論のこと、一般家庭においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図面は、この発明の簡易尿採集器、およびそれを用いた24時間尿中塩類簡易測定方法の技術的思想を具現化した代表的な一実施例を示すものである。
【図1】簡易尿採集器を示す平面図である。
【図2】簡易尿採集器の着脱口を示す正面図である。
【図3】簡易尿採集器の採集溝を示す平面図である。
【図4】パイプ本体を示す平面図である。
【図5】パイプ本体を示す側面図である。
【図6】パイプ本体の着脱口を示す正面図である。
【図7】パイプ本体の採集溝を示す平面図である。
【図8】パイプ本体の着脱口付近を断面化して示す側面図である。
【図9】展開状態にある濾紙片を示す平面図である。
【図10】24時間尿中塩類簡易測定方法を示すフローチャートである。
【図11】本法と標準法とのナトリウム−カリウム比の相関を示すグラフである。
【図12】本法と標準法との塩化ナトリウム−クレアチニン比の相関を示すグラフである。
【図13】本法と標準法とのカリウム−クレアチニン比の相関を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1 簡易尿採集器
2 パイプ本体
20 同 着脱口
21 同 他端開口
22 同 筒型収容部
23 同 係止鍔部
3 採集溝
4 転がり防止形状部
5 規制部
6 目標表示部
7 濾紙片
70 同 頂角
71 同 縁部
A 簡易尿採集器による採尿
B 濾紙片の取り出し
C 塩類の抽出
D 分注
E クレアチニン測定
F 塩類測定
G 塩類−クレアチニン比の計算

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用に所定長で所定直径とした非透水素材製パイプ本体からなり、その一端を着脱口とし、該着脱口周壁縁に、当該パイプ本体軸芯方向に沿って僅かな一定のスリット状採集溝を設け、同着脱口からパイプ本体他端開口に向け、当該採集溝より充分に長く設定してあるパイプ本体筒型収容部中に、パイプ本体軸芯に直交する断面形をV字型とした矩形状濾紙片が、その一端を当該着脱口端面に一致させ、断面V字の谷底がわが当該採集溝から露見し、同断面V字の開放がわ縁部夫々が同採集溝とは反対がわのパイプ本体円筒内面壁に当接状となる配置で着脱自在に収納されてなるものとしたことを特徴とする簡易尿採集器。
【請求項2】
長さ150mm、直径10mm、内径7mmの非透水素材製円筒状パイプ本体からなり、その一端を着脱口とし、該着脱口周壁縁に、当該パイプ本体軸芯方向に沿って長さ5mm、周回り方向幅1mmのスリット状採集溝を設け、同着脱口からパイプ本体他端開口に向けて60mmの長さに設定した筒型収容部中に、長さ60mm幅14mmの矩形濾紙の幅中央よりV字断面形に折曲してなる濾紙片が、その一端を当該着脱口端面に一致させ、断面V字の谷底がわが当該採集溝から露見し、同断面V字の開放がわ縁部夫々が同採集溝とは反対がわのパイプ本体円筒内面壁に当接状となる配置で着脱自在に収納されてなるものとしたことを特徴とする簡易尿採集器。
【請求項3】
パイプ本体は、該採集溝とは反対がわとなる外周壁の一部または全部が、平面状設置面、または板状あるいは3点以上の支持脚などからなる転がり防止形状部に形成されてなるものとした、請求項1または2何れか一項記載の簡易尿採集器。
【請求項4】
パイプ本体は、その着脱口の採集溝とは反対がわとなる円筒内面壁に、濾紙片の断面V字の開放がわ縁部夫々を係止可能とする係止鍔部が一体形成されてなるものとした、請求項1ないし3何れか一項記載の簡易尿採集器。
【請求項5】
パイプ本体は、その着脱口から濾紙片全長寸法に一致する位置となる筒型収容部内適所に、収納状とした濾紙片の奥部がわ端に当接して同パイプ本体他端開口がわへの移動を阻止可能とする規制部を形成してなるものとした、請求項1ないし4何れか一項記載の簡易尿採集器。
【請求項6】
パイプ本体は、その採集溝それ自体かその直近に、採集溝表示用の目標表示部を形成してなるものとした、請求項1ないし5何れか一項記載の簡易尿採集器。
【請求項7】
排尿の度毎に請求項1ないし6何れか一項記載の簡易尿採集器を用い、採集溝の細隙を通じて筒型収容部内の濾紙片に吸着する採尿を、24時間に亘る全ての排尿時に繰り返し、何れの採尿も、直前の採尿時後からの間に自然乾燥状またはそれに近い状態とした濾紙片への採尿となるようにした後、当該濾紙片を簡易尿採集器のパイプ本体着脱口から取り出し、同濾紙片に蓄積した24時間分全ての塩類を一挙に抽出し、分注してクレアチニン測定と塩類測定とを行い、得られた値に基づき塩類−クレアチニン比を求めた上、同塩類−クレアチニン比に基づき、24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を算出するようにしたことを特徴とする24時間尿中塩類簡易測定方法。
【請求項8】
排尿の度毎に請求項1ないし6何れか一項記載の簡易尿採集器を用い、採集溝の細隙を通じて筒型収容部内の濾紙片に吸着する採尿を、24時間に亘る全ての排尿時に繰り返し、何れの採尿も、直前の採尿時後からの間に自然乾燥状またはそれに近い状態とした濾紙片への採尿となるようにした後、当該濾紙片を簡易尿採集器のパイプ本体着脱口から取り出し、同濾紙片に蓄積した24時間分全ての塩類を一挙に抽出し、分注してクレアチニン測定と、ナトリウム測定およびカリウム測定とを行い、得られた値に基づき塩化ナトリウム−クレアチニン比およびカリウム−クレアチニン比を夫々割り出した上、それら塩化ナトリウム−クレアチニン比およびカリウム−クレアチニン比に基づき、24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を算出するようにしたことを特徴とする24時間尿中塩類簡易測定方法。
【請求項9】
被検者は、排尿の度毎に請求項1ないし6何れか一項記載の簡易尿採集器を用い、同採集溝の細隙を通して筒型収容部内濾紙片に吸着する採尿を、24時間に亘る全ての排尿時に繰り返し、何れの採尿も、直前の採尿時後からの間に自然乾燥状またはそれに近い状態とした濾紙片への採尿となるようにした後、当該簡易尿採集器を然るべき分析機関に発送し、これを受領した分析機関では、同簡易尿採集器から既に乾燥状態にある濾紙片を取り出し、同濾紙片に蓄積した24時間分全ての塩類を一挙に抽出し、分注してクレアチニン測定と塩類測定とを行い、得られた値に基づき塩類−クレアチニン比を求めた上、同塩類−クレアチニン比に基づき、24時間の塩化ナトリウムおよびカリウム排泄量を算出するようにしたことを特徴とする24時間尿中塩類簡易測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−198352(P2009−198352A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41022(P2008−41022)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(508105186)公立大学法人青森県立保健大学 (8)
【出願人】(508057195)
【Fターム(参考)】