説明

簡易形冷却式マイクロ波化学反応装置

【課題】 従来の冷却式マイクロ波化学反応装置には、冷媒の冷却と循環機能を備えた冷却装置が必要で、また、冷却剤及び冷媒のメンテナンスに手間がかかり、システム全体が複雑で高価となり、また、ランニングコストも高くなっていた。
【解決手段】 本発明の簡易形冷却式マイクロ波化学反応装置は冷媒を人体に無害な炭酸ガス又は冷却空気とすることにより、冷媒の冷却と循環を行う冷却装置を省き、冷媒をそのまま空気中に排出する方式とした。これにより、システムが簡単となって、取扱いが容易で、より安価になり、ランニングコストも安くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ波を利用した化学反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波はレーダや電子レンジを中心に用いられ、その中でも、マイクロ波を用いた加熱装置ではマイクロ波による加熱機構が外部からの熱伝導による加熱とは異なる特徴を持っており、水の加熱に例えるとマイクロ波のエネルギーが印加されると、水分子の電気双極子が回転運動を起こし、周囲の水分子どうしと摩擦することにより発熱が生じると言われている。マイクロ波による加熱方式は熱伝導による加熱方式に対して内部加熱と呼ばれ、反応速度が著しく早く、合成効率が高く、副産物が少なく、触媒を減らしたり触媒を用いない反応も可能で、通常の条件では起きない合成反応が生じることがある旨報告されている。この反応促進効果を化学反応装置に応用したのが、マイクロ波化学反応装置である。
【0003】
マイクロ波化学反応装置において、化学合成反応の促進効果を最大限に得るには、被反応物の温度を、反応の課程で生じる不要な副産物の発生がより少ない温度を予め調べておき、マイクロ波を照射しながら、被反応物をその温度に維持するのが望ましい。加熱時の被反応物の設定温度が室温より十分高い場合は、マイクロ波の照射量を調整することで、被反応物を一定の温度に維持できる。さらに、マイクロ波の照射量を増やしたり、被反応物を室温より低い温度で加熱したい場合には被反応物を冷却する機能が必要となる。
【0004】
この冷却機能を持ったマイクロ波化学反応装置として、特許文献1,特許文献2がある。冷却機能を実現する構造としては、被反応物の入った反応容器を囲み中空の構造の冷却部を設け、冷却部には冷媒循環用の注入口と排出口を設けている。冷却方法としては、低温に冷却した冷媒を、前記、冷却部内に循環させることにより、反応容器を介し被反応物を冷却する方法を用いている。また、冷媒の冷却と循環は別に設けた冷却装置が行い、冷却装置は低温の冷却剤の入った液槽内に、冷媒を循環させて冷却する装置とポンプにより冷媒を環流させる装置より成る。
【0005】
従来の冷却式マイクロ波化学反応装置として、図1は特許文献1の冷却式マイクロ波化学反応装置の構成図である。図1に示すとおり、特許文献1の冷却式マイクロ波化学反応装置はアプリケータ部84と、冷却装置94とそれらを接続するフッ素系樹脂チューブ95とから構成される。冷却装置94は、冷媒液が貯留される液槽92と冷媒液を送り出すためのポンプ93とから構成される。ポンプ93から送出された冷媒液の流量は、計測器88と連動する流速制御ボックス89が電磁弁87を制御することにより自動調整される。なお、冷媒液の流量は、流量調節用バルブ86により手動で調節することもできる。
【0006】
冷却部80は中空構造となっており、冷媒液を循環させるための冷媒液循環部82が設けられている。冷却部80は、マイクロ波透過性のガラス材で作られており、冷媒液はマイクロ波透過性の無極性油液を利用している。反応容器81内には、被反応物85が入れられており、被反応物85の温度は被反応物内に挿入された光ファイバ温度計91により測定され、計測器88に記憶される。
【0007】
アプリケータ部84は電子レンジの筐体のようにマイクロ波を反射するチャンバーであり、マイクロ波透過性の反応容器81を透過することにより高い加熱効果を奏するものである。すなわち、アプリケータ部84の外部から照射されたマイクロ波はアプリケータ部84内で反射され、上下左右から反応容器81を透過しながら反応物を加熱するのである。
【0008】
従来の冷却式マイクロ波化学反応装置として、図2は特許文献2のマイクロ波支援有機化学合成を低温(25℃以下の意)で実行するための器具10の部分概略断面図である。反応容器20は、マイクロ波透過材料で作られた反応容器壁21を有する試験管状の装置であり、マイクロ波支援反応のための内部反応チャンバー17を画定している。
【0009】
冷却ジャケット22は、これも同様にマイクロ波透過材料で形成され容器壁21を概ね取り囲んでいる冷却ジャケット壁28内の空間で画定されている。冷却ジャケット22は、マイクロ波エネルギー25を内容物24へ印加している間、容器20と容器の内容物24(即ち、組成物)を冷却するために、反応容器20を直接取り囲んでいる。容器20は、流体冷却剤として用いられるマイクロ波透過媒体が冷却ジャケット22内にあるときに冷却される。この様にして、反応容器を取り囲んでいる冷却ジャケット22は、反応容器20とその内容物24に対し吸熱器として作用する。言い換えると、冷却ジャケット22は、内部反応チャンバー17内の低温を維持する役を果たす。
【0010】
冷却ジャケット22は、冷却ジャケット22及び冷却剤リザーバ59と物理的に連通している供給管18として示されている、流体冷却剤を冷却ジャケット22に供給するための機構を含んでいる。供給管18は、冷却剤入口管23経由で冷却ジャケット22に供給する。冷却剤入口管23は、冷却剤が最初に冷却ジャケット22従って反応容器20の底部近くに送られるように、冷却ジャケット22の底部へとその近くに突き出ている。これによって、冷却剤は、最初に望ましい位置、即ち内部反応チャンバー17内の内容物24の近くに送り込まれる。
【0011】
冷却剤は、冷却ジャケット22に流れ込んでその空間を占め、次いで排出機構経由で冷却ジャケット22を出る。排出機構は、概略的に19で示している排出管を含んでいる。排出管19は、冷却剤出口管27を介して冷却ジャケット22と、そして冷却剤リザーバー59と、物理的に連通している。リザーバー59は、更に、ポンプ61と物理的に連通している。ポンプ61は、流体冷却剤を、流体冷却剤リザーバー59から冷却ジャケット22を経由して、反応容器20の回りに循環させる。流体冷却剤の流れを促すためのこの他の代替策には、重力供給冷却剤リザーバー(図示せず)、又はポンプインゼクタ(図示せず)の様な容積移送式機構がある。
【0012】
マイクロ波透過媒体は、冷却剤リザーバー59から、供給管18と冷却剤入口管23を通って、反応容器20を取り囲んでいる冷却ジャケット22へと流れる。その後、冷却剤は、冷却ジャケット22を、冷却剤出口管27と排出管19を通って出る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】W02005/113133 冷却式マイクロ波化学反応装置/独立行政法人産業技術総合研究所、四国計測工業
【特許文献2】公開2006−75824 低温マイクロ波支援有機化学合成のための方法および器具/シーイーエム・コーポレーション
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の装置の特許文献1,特許文献2は、冷却機能を実現するため、主要な構成として、被反応物の入った反応容器を囲み中空の構造で冷媒を循環して用いる冷却部、液槽により冷媒を冷却する機能とポンプにより冷媒を強制循環させる機能を持つ冷却装置、より成る。特に、冷媒の温度を低く維持し、冷却効果を高める必要があることから、冷却剤を溜めておく液槽、冷媒を循環するポンプ、冷媒を循環するパイプは低温に耐え、ポンプの圧力にも耐えうる構造とする必要がある。また、冷却剤は極低温の材料とする必要があることから、ランニングコストも高くなる。また、メンテナンスの上では、液層の冷却剤及び冷媒は絶えず補充(場合によっては交換)が必要である。このようなことから、従来の冷却式マイクロ波化学反応装置は複雑でメンテナンスに手間がかかり、且つ、冷却剤等の維持費用が必要なため、装置全体では高価となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る簡易形冷却式マイクロ波化学反応装置は、被反応物の入った反応容器の周りを囲む様に中空の構造を持つ冷却部内に、冷媒として人体に無害な気体を用い、また、冷媒は被反応物の冷却に使用の後、循環せず、そのまま、排気とする方式とした。上記条件に適合する冷媒として、低温の炭酸ガス(液化炭酸ガスが大気中に放出時に気化し生成する低温の炭酸ガス)や低温の圧縮空気(ボルテックスチューブを用いて圧縮空気より生成する低温の空気)を使用する。また、冷媒に用いている炭酸ガスや空気(気体)及び炭酸ガス生成時に希に発生するドライアイス(固体)もマイクロ波を吸収しないため、マイクロ波加熱に影響を及ぼさない。また、冷媒の冷却と循環を行う冷却装置を設ける必要が無いことによりその費用が不要となるほか、冷却剤のメンテナンスは液化炭酸ガスボンベの交換のみとなり、より簡単になる。ゆえに、システム全体の構成要素が減って、メンテナンスや操作が簡単で安価で扱いやすいシステムが実現できる。更に、冷媒の流れを工夫することにより冷却効果を上げることが期待できる。
【0016】
下記に、本発明の簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置を実現するための一例としてその内容を示す。
(1) キャビティー内にアンテナを設け被反応物に照射する構造であって、少なくとも、冷媒として気体を用い、マイクロ波信号源、キャビティー、温度センサ、温度制御装置、反応容器で構成する簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置のキャビティー内に、反応容器を取り囲む空洞の冷却部を持ち、冷却部はマイクロ波透過性の材料より成る。本発明では冷媒として、液化炭酸ガスを大気中に放出した際に生成される低温で高圧の炭酸ガスを用い、冷却に用いた冷媒の気体は人体に無害なので、そのまま空気中に排出する構造とする。冷却部において、冷媒を注入して効果的に反応容器(被反応物)の温度を下げる方法として、冷媒を注入するノズルを設ける。その向きは、冷媒の噴射速度が落ちない様に反応容器と冷却部パイプの間に向け、且つ、ノズルの角度は冷媒が反応容器の表面全体をできるだけ広く、かつ最大限の速度で通る角度に設定する。この冷却部内の冷媒の流れを図4に示す。冷媒は反応容器と冷却部パイプの間の空間を渦を巻くように螺旋状に回りながら、冷却部の排出口に至る。
(2) 冷媒として、炭酸ガスを用いる場合、冷媒の温度が極低温(−70℃以下)のため、条件によっては、反応容器内の被反応物に対して冷却能力が過剰すぎ勿体ない場合がある。この問題を解決するため、適温に設定できる冷媒として、ボルテックスチューブにより生成される冷却した空気も使用可能である。ボルテックスチューブは圧縮空気によるボルテックス効果により、高温と低温の空気に分離する機能を持つ。生成される冷却した空気の温度はボルテックスチューブの調整(調整ネジ等)でも可変できるので、任意の温度に設定できる。また、ボルテックスチューブに入力する圧縮空気はコンプレッサー等を用いる。冷却に用いた冷却空気はそのまま空気中に排出する構造とする。
(3) 冷媒はキャビティー上部(冷却部上ブロック)又は下部(冷却部下ブロック)よりノズルを介して注入するいずれの構造でもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置においては下記特徴と効果がある。
・ 冷媒の気体は人体に無害なものを使用。
・ 冷媒の気体はマイクロ波を吸収せず、マイクロ波加熱に影響を及ぼさない。
・ 冷媒の冷却及び冷媒循環装置が不要で費用がかからない。
・ 冷媒を注入するノズルの向きと角度は冷却効果の高い向きと角度に設定し、冷却効率を上げている。
・ 冷媒はキャビティーの上部又はキャビティー下部よりノズルを介して冷却部に注入。
・ 冷媒は、高い冷却効果が必要な場合は炭酸ガス、冷却効果が低くて良い場合は冷却空気と選択可能。
・ 冷媒の気体のランニングコストが安い。
・ キャビティー内のアンテナより被反応物を加熱。
これらの事から、本発明の簡易形冷却式マイクロ波化学反応装置は冷媒を気体とすることで、冷却装置及び冷媒の循環を無くせるため、従来より簡単なシステム構成で従来と同等の機能を実現でき、初期費用やランニングコストを共に安価にでき、操作やメンテナンスが容易で冷却効率の良いシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】特許文献1の実施例1に係る冷却式マイクロ波化学反応装置の構成図
【図2】特許文献2の反応容器及び反応空洞の部分概略断面図
【図3】本発明の実施例1に係る簡易形冷却式マイクロ波化学反応装置の部分概略断面図
【図4】本発明の実施例1、実施例2に係る冷却部内の冷媒の流れの図
【図5】本発明の実施例1、実施例2に係るノズルの位置を冷却部下ブロックに設けた例の部分概略断面図(温度センサは省略)
【図6】本発明の実施例2に係る簡易形冷却式マイクロ波化学反応装置の部分概略断面図
【図7】本発明の実施例1に係る冷却のみ加えた時の温度特性
【図8】本発明の実施例1に係る水を温度設定20℃にした時の温度特性
【図9】本発明の実施例1に係るアルコールを温度設定0℃、10℃にした時の温度特性
【図10】本発明の実施例1、実施例2に係る冷却部のノズルの角度を変えて冷却効果を比較した図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図3は本発明の実施例1に係る簡易形冷却式マイクロ波化学反応装置の構成図である。冷却剤として液化炭酸ガスを用いた例である。マイクロ波化学反応装置はマイクロ波を反射する材料でできたキャビティー101、液化炭酸ガスボンベ(サイホン管付き容器)113と流量を制御する電磁弁114、被反応物104の温度を測定する温度計112、電磁弁114の開閉制御を行う温度制御装置115、他、この図には記載していないがマイクロ波信号源より成る。被反応物の加熱は、マイクロ波信号源から入力したマイクロ波をキャビティー101内のアンテナ121より、マイクロ波透過性の材料でできた冷却部パイプ108と反応容器103を透過して、被反応物104に照射することによる。
【0020】
一方、被反応物の冷却は、冷却剤の入った液化炭酸ガスボンベ(サイホン管付き容器)113より液化炭酸ガスを流量を調節する働きの電磁弁114を経由して冷却部上ブロック106のノズル110より冷却部内に液体の形で注入する。注入した際、液化炭酸ガスは液体から気化し、膨張して、5〜6気圧の極低温の炭酸ガスとなる。この気体を反応容器103に当てることにより、被反応物104からの熱を吸収し、その結果、被反応物104が冷却される。上記冷媒の炭酸ガスはノズル110より反応容器103と冷却部パイプ108との間に向けて、最適の角度で高圧で注入されるので、冷媒は図4に示すように、反応容器103と冷却部パイプ108の隙間を渦を巻くようにして、反応容器103の外面全体にわたって高速に流れるので効果的に冷却し、その後排気口109から流出する。被反応物104の冷却温度を一定に保つには電磁弁114を開閉し炭酸ガスの流量を制御する。また、ノズルの角度は冷却部の大きさ(主として高さと内径)により異なるが、冷却部の高さ50mm、内径φ22mm程度の場合、図10に示す様に、ノズル110の最適な角度としては30°〜45°の時が良い冷却効率が得られた。
【0021】
また、反応容器内の温度のむらを無くすため、図示しないが、キャビティーの下側にスターラを設け、反応容器内に撹拌子を挿入して、被反応物の撹拌を行ってもかまわない。
【0022】
図3ではノズル110は冷却部上ブロック側に設けているが、図5に示すように、冷却部下ブロック側にノズル110を設け、冷却部上ブロック側に排気しても構わない。
【0023】
図3で、被反応物に挿入した温度センサ111により温度計112は被反応物104の温度を測定し、測定した値を温度制御装置115に送る。温度制御装置115は、測定した温度を記憶し、設定された被反応物の温度となる様に、マイクロ波加熱(図示していないマイクロ波信号源からのマイクロ波出力を制御)と上述の冷却(電磁弁114による冷媒流量の制御)のいずれか一方を一定量として他方を制御、または同時に加熱と冷却の双方の制御を行う。
【0024】
なお、本発明は、上述した実施の形態に示した構成に限定されない。例えばマイクロ波は高周波と置き換えることができる。また、用途を化学反応として説明したが、加熱と冷却を行う装置であれば化学反応以外にも適用できる。
【0025】
図7のグラフは水12ccを80℃に加熱した後、加熱を止めて、冷却のみで電磁弁114の開閉時間を変えて20℃まで下がる時間を比較した特性を示す。電磁弁114の開閉時間の比率と温度の降下時間とは相関関係にあり、電磁弁114の開閉時間により冷却制御が可能と分かる。
【0026】
図8のグラフは室温25〜27℃の時、水12ccを設定温度20℃とし、マイクロ波出力を20、30、40W一定にそれぞれ設定して加熱しつつ炭酸ガスによる冷却を制御したときの温度制御特性を示す。いずれの場合も設定温度に到達後は±1℃以内に制御できた。
【0027】
図9のグラフは室温27〜28℃の時、アルコール12ccを設定温度0℃と10℃としてマイクロ波出力を15W一定で加熱しつつ炭酸ガスによる冷却を制御したときの温度制御特性を示す。10℃設定時は設定温度に対し±1℃以内、0℃設定時は設定温度に対し+1/−2℃以内に制御できている。
【実施例2】
【0028】
図6は実施例2に係る簡易形冷却式マイクロ波化学反応装置の構成図である。冷媒として圧縮空気より冷却した空気が生成できるボルテックスチューブを用いた例である。マイクロ波化学反応装置はマイクロ波を反射する材料でできたキャビティー101、圧縮空気を生成するコンプレッサ−116、圧縮空気の流量を制御する圧力制御弁又は電磁弁119、圧縮空気から、冷却した空気を生成するボルテックスチューブ118、被反応物104の温度を測定する温度計112、圧力制御弁又は電磁弁119の制御を行う温度制御装置115、他、この図には記載していないがマイクロ波信号源より成る。被反応物の加熱に関しては、本発明の実施例1と同様にキャビティー101内のアンテナ121からのマイクロ波をマイクロ波透過性の材料でできた冷却部パイプ108と反応容器103を透過して、被反応物104に照射することによる。
【0029】
被反応物104の冷却に関しては、コンプレッサー116で生成した圧縮空気を圧力制御弁又は電磁弁119により、圧力又は流量を制御した後、ボルテックスチューブ118に送り、そこで、高圧の冷却した空気が生成される。この冷却した空気を冷却部上ブロック106の冷却部内にノズル117を介して冷却部へ注入し、反応容器103に当てることにより、被反応物からの熱を吸収し、その結果、被反応物が冷却される。上記冷媒の冷却空気はノズル117より反応容器103と冷却部パイプ108との間に向けて、最適の角度で高圧で注入されるので、本発明の実施例1と同様に冷媒は図4に示すように、反応容器103と冷却部パイプ108の隙間を渦を巻くように流れ、反応容器103が効果的に冷却できる。
【0030】
また、反応容器内の温度のむらを無くすため、キャビティーの下側にスターラを設け、反応容器内に撹拌子を挿入して、被反応物の撹拌を行っても構わない。
【0031】
図6ではノズル117は冷却部上ブロック106側に設けているが、本発明実施例1同様に冷却部下ブロック107側にノズルを設け、冷却部上ブロック106側に排気しても構わない。
【0032】
被反応物に挿入した温度センサ111により温度計112は被反応物104の温度を測定し、測定した値を温度制御装置115に送る。温度制御装置115は、測定した温度を記憶し、設定された被反応物の温度となる様に、加熱(マイクロ波出力制御)と冷却(圧力制御弁又は電磁弁制御)のいずれか一方を一定とし他方を制御、または双方の制御を行う。
【0033】
なお、本発明は、上述した実施の形態に示した構成に限定されない。例えばマイクロ波は高周波と置き換えることができる。また、化学反応装置以外にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明はマイクロ波加熱を利用した反応装置に冷媒としての気体を利用して安価で取り扱いやすい冷却も可能としたもので、被反応物の加熱と冷却の一方または両方を行うことの出来る簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置であり、例えば化学反応やバイオなどの簡便な実験装置や小規模なシステムに適用ができる。
【符号の説明】
【0035】
101 キャビティー
102 マイクロ波
103 反応容器
104 被反応物
105 冷却部内部空間
106 冷却部上ブロック
107 冷却部下ブロック
108 冷却部パイプ
109 排気口
110 ノズル
111 温度センサ
112 温度計
113 液化炭酸ガスボンベ(サイホン管付き容器)
114 電磁弁
115 温度制御装置
116 コンプレッサー
117 ノズル
118 ボルテックスチューブ
119 圧力制御弁又は電磁弁
120 冷媒の流れ
121 アンテナ
15 感知器
29 冷却ジャケットの上部
39 空洞
50 反応容器の上部
54 冷却ジャケットすりガラス接合部
55 環状キャップ
62 反応容器すりガラス接合部
なお、図中の同一の番号は、同一または相当する部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともマイクロ波信号源、キャビティー、温度センサ、温度制御装置、反応容器を備えたマイクロ波化学反応装置において、キャビティー内に反応容器とマイクロ波透過性の冷却部パイプに挟まれた空洞を備え、冷却した気体を冷媒として空洞の一方に設けたノズルからその空洞に注入するとともに螺旋状に流入させ、反応容器及び反応容器内の被反応物を冷却した後、空洞の他方に設けた排気口から空気中に排出することを特徴とする簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置。
【請求項2】
冷却した気体は液化炭酸ガスボンベから得て気化し生成した低温高圧の炭酸ガスであることを特徴とする特許請求項1の簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置。
【請求項3】
冷却した気体はボルテックスチューブを用いて圧縮空気より生成した低温高圧の空気であること特徴とする特許請求項1に記載の簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置。
【請求項4】
ノズルに制御弁を備え、一定電力のマイクロ波を照射して反応容器内の被反応物の温度を温度センサで測定すると共に、温度制御装置から所期の設定温度になるように制御弁にて冷媒量を制御することを特徴とする特許請求項1の簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置。
【請求項5】
一定量の冷媒を注入させつつ反応容器内の被反応物の温度を温度センサで測定すると共に、温度制御装置から所期の設定温度になるようにマイクロ波信号源の出力を制御することを特徴とする特許請求項1の簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置。
【請求項6】
ノズルの設定角度は冷却パイプの穴の面を基準とし、その基準から30〜45度冷却部パイプの内側へ傾いた角度であることを特徴とする特許請求項1から5の簡易型冷却式マイクロ波化学反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−156524(P2011−156524A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34070(P2010−34070)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(503231402)コーナン電子株式会社 (4)
【Fターム(参考)】