説明

簡易操作モード付き分析計

【課題】 多機能を備えた分析計でありながら、予め選択され若しくは任意に選択した各機能を簡単に実行することができ、不慣れな者でも操作の誤りなく、高精度な分析を行うことが可能な分析計を提供する。
【解決手段】 pH計1などの分析計が具備している多数の機能のうち、各種設定の機能を除く、予め選択され若しくは後から任意に選択された少なくとも2つの機能を、表示等の誘導に従って実行する簡易操作モードが設けてある。簡易操作モードの起動及び簡易操作モードの各機能の実行は、1個又は2個の操作キー及び/又はpH計1などの分析計に挿抜可能な記憶媒体5を用いて行われる。簡易操作モードで用いる操作キーとしては、メニューキー2aなどの操作キーの1個又は2個を割り当てるか、少なくとも1個の簡易操作モード専用キー4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH計、ORP計(酸化還元電位差計)あるいはその他の分析計に関し、更に詳しくは、多機能を有する分析計でありながら、表示等の誘導に従って幾つかの機能を実行する簡易な分析計としても使用できる簡易操作モード付き分析計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、pH計、ORP計(酸化還元電位差計)などの分析計は多機能化が進み、多くの測定条件や周辺機器条件などを設定し、コントロールできるようになっている。例えば、pH計の場合、校正、測定、データ保存又は印字などの基本的な機能の外に、温度補償の設定や外部機器の設定などの各種設定の機能など、非常に多くの機能が盛り込まれている。
【0003】
これらの機能のうち各種設定の機能は、高精度なあるいは多くの条件の分析を行うには必要不可欠であるが、この機能を実行するには分析計本体前面の表示部に現れた表示を見ながら、分析計本体に設けた入力操作部の操作キーを操作することによって、所望の機能の条件を選択したり、設定したりする必要がある。しかし、多機能化によって入力操作部の操作キーの数はますます多くなり、従って操作キーを用いた操作も極めて複雑化している。
【0004】
そのため、多機能の分析計では、例えばpH計において校正と測定の基本的な機能しか実行しない場合であっても、多くの操作キーの中から必要な幾つかの操作キーを選び出し、複雑な操作をしなければならない。その結果、特に非専任者や操作に不慣れな者は、上記各種設定の内容を適切に把握することが困難であるため、これらの操作キーの選択を間違ったり操作の際に誤ったキー操作を行ったりする場合があった。逆に基本的な機能しか有しない簡易型の分析計では、このような誤ったキー操作を行う危険は少ないが、精密を要する測定の場合などに必然的に要求される多くの設定された機能を実施することができない。
【0005】
このような誤ったキー操作をなくす手段として、例えば、特開2003−329691号公報には、多機能の生化学分析装置について、簡易操作の際には不要な操作キーを隠すカバーを設けるか、若しくは不要な操作ボタンを非表示とする表示部を備えることが記載されている。また、特開2002−022503号公報には、測定器に接続したコンピュータに簡易操作に必要な操作ボタンを設けたタッチパネルを設置し、コンピュータに不慣れな作業者はタッチパネルを用いて操作することが記載されている。しかしながら、これらの装置では、簡易操作の内容が予め設定されていて、ユーザーが任意に設定することができなかった。
【0006】
また、特開平06−148197号公報には、簡易操作が可能な自動分析装置が記載されている。即ち、オリジナルメニュー記憶部から任意の処理項目を選択して記憶させることが可能なユーザーメニュー記憶部を有し、ユーザーメニューの選択、設定後は、キー操作により表示部にユーザーメニュー画面が表示され、この画面に基づいて任意処理を実施することが記載されている。しかし、この装置では、処理の選択、設定が簡単ではなく、選択された任意処理そのものも簡単であるとは言い難かった。
【0007】
さらにまた、特開平10−221130号公報には、画面上に表示される各ボタンに対して、試料ごとの測定処理シーケンスの名称及び機能ファイルを設定することにより、各ボタンに、ユーザーにおいて定義した試料ごとに異なる測定処理シーケンスを割り付け、測定を行なう場合、画面上における機能割り付けされたボタンを押下操作することにより所望の測定処理シーケンスを実行させるようにした分析装置のことが記載されている。この時、前記各々の機能ファイルは記録媒体内にファイル名を記憶させている。しかし、この装置では、ユーザーが試料ごとに所望のファイルを割り付けた各ボタンから選択する必要があり、煩雑であった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−329691号公報
【特許文献2】特開2002−022503号公報
【特許文献3】特開平06−148197号公報
【特許文献4】特開平10−221130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、多機能を有する分析計でありながら、予め選択され若しくは任意に選択した各機能を簡単に実行でき、従って不慣れな者でも操作の誤りがなく、高精度な分析を行うことができる分析計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明が提供する分析計は、分析計が具備している多数の機能のうち、少なくとも2つの機能を、表示等の誘導に従って実行する簡易操作モードを設けたことを特徴とするものである。
【0011】
上記本発明の分析計において、前記簡易操作モードの起動及び簡易操作モードの各機能の実行は、1個又は2個の操作キーのみを用いて行われる。また、前記簡易操作モードで用いる操作キーは、分析計が備える操作キーの1個又は2個を割り当てるか、あるいは簡易操作モード専用キーを少なくとも1個設けることができる。
【0012】
上記本発明の分析計においては、前記簡易操作モードで用いる操作キーが2個であり、そのうち1個がカーソルキーであり、表示部に表示された2つ以上の事項から1つを選択、実行できるようにすることも可能である。
【0013】
上記本発明の分析計においては、前記簡易操作モードの起動は、前記分析計に着脱自在に挿抜される記録媒体の挿入により行うこともできる。具体的には、前記記録媒体には簡易操作モードの各機能を実行するための少なくとも1つの簡易操作モード実行ファイルが記憶され、前記簡易操作モードの起動は、前記記録媒体中に記憶された少なくとも1つの簡易操作モード実行ファイルのファイル名と、分析計本体に記憶されたファイル名が一致していることを判断してなされる。
【0014】
上記本発明における記憶媒体を用いる分析計では、前記記録媒体に複数の簡易操作モード実行ファイルが記憶されており、その記憶媒体の挿入により簡易操作モードが起動した後、複数の簡易操作モード実行ファイルからの選択及び各機能の実行は、分析計が備える操作キーによって行なわれる。
【0015】
また、上記本発明における記憶媒体を用いる分析計では、前記記録媒体に1つの簡易操作モード実行ファイルが記憶され、その簡易操作モードの起動及び前記簡易操作モードの各機能の実行は、前記記憶媒体の挿入によって行われる。
【0016】
更にまた、前記記録媒体は、USBメモリ、メモリーカード、コンパクトディスク、DVD、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスクのいずれかであってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による分析計は、多機能を有する分析計であるが、予め選択され若しくは任意に選択した各機能を、表示等の誘導に従って実行する簡易操作モードを有するので、これにより主な機能に絞った簡易な分析計と同等の操作で且つ高精度な分析が行えるようになる。しかも、簡易操作モードにおける各機能も1個又は2個の操作キーのみを用いて簡単に実施することができる。従って、本発明の分析計の簡易操作モードを用いることによって、不慣れな者でも操作の誤りがなくなり、高精度な分析を簡単に行うことができる。
【0018】
また、簡易操作モードの起動及び簡易操作モードの各機能の実行について、記録媒体を用いても行うことができる。例えば、簡易操作モードの起動を分析計に着脱自在に挿抜される記録媒体の挿入によって行うようにすれば、煩雑な操作を行う必要がなく簡単である。記録媒体による起動後は、そのまますぐに簡易操作モードの各操作機能を分析計が備えている操作キーにより簡単に実行させることができる。更にまた、前記記録媒体に記憶されている簡易操作モード実行ファイルが1個の場合には、簡易操作モードの起動及び簡易操作モードの各機能の実行は、分析計に着脱自在に挿抜される記録媒体の挿入によって直ちになされるため、簡単にしかも自動的に簡易操作モードの作業を完了させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の分析計は、多くの測定条件や周辺機器条件などを設定し且つコントロールすることができるように、各種設定の機能など多数の機能を備えたものである。同時に、本発明の分析計には、各種設定の機能を除く少なくとも2つの機能を、表示等の誘導に従って実行する簡易操作モードが設けてあるため、この簡易操作モードを用いて選択された機能のみによる測定分析を行うことが可能である。例えば、多機能のpH計の場合、表示切換の設定、測定条件の設定、校正液等の校正条件の設定、温度補償の設定、外部機器の設定などの各種設定の機能が充実している。
【0020】
前記各種設定の機能の他に、測定、校正(自動校正)、印字、データ保存、データ転送、オートホールドなどのpH計の分析には欠かせず且つ頻繁に使う基本的な機能も備えられている。このうち、自動校正は、分析計本体が自動的に校正時に使う標準液の種類を判別し、校正を行う機能であり、オートホールドとは、設定された条件に従って自動的に測定値を安定した時点で保持する機能である。
【0021】
本発明の簡易操作モードに含める機能は、これらの機能の中から前記各種設定の機能を除いて適宜選択して、例えば校正と測定のように選択、設定する。この簡易操作モードの選択、設定は、メーカー側で予め行うこともできるが、後からユーザー側で分析計が本来備えている多数の機能の中から前記各種設定の機能を除いて任意に選択して設定することもできる。
【0022】
このように、本発明の分析計における簡易操作モードには、少なくとも2つの機能を選択、設定する。例えば、pH計の簡易操作モードでは、自動校正と測定の2つの機能とするか、あるいは更に印字及び/又はデータ保存の機能を追加した3〜4つの機能とすることが望ましい。尚、ユーザー側の所望により、更にオートホールドなどの機能を加えることも可能である。
【0023】
簡易操作モードにおける操作では、操作者が不慣れな場合でも操作ミスが起こらないようにすることが必要である。そのため、簡易操作モードの起動及び簡易操作モードの各機能の実行は、基本的な態様として、分析計が備える1個又は2個の操作キーのみを用いて行われることが好ましい。また、簡易操作モードにおいては、使用する1個又は2個の操作キー以外の操作キーは使用できないように、例えば操作キーを押しても動作しないようにすることが望ましい。
【0024】
簡易操作モードの起動を含めて簡易操作モードで用いる操作キーは、分析計が備えている多数の操作キーの中から割り当てるか、若しくは簡易操作モード専用キーを設けることもできる。例えば、図1に示すように、分析計が入力操作部2と表示部3を備えるpH計1の場合、その入力操作部2に1個又は2個の簡易操作モード専用キー4を設けることができる。また、この簡易操作モード専用キー4を設ける代わりに、pH計1が備えている多数の操作キーの中から、例えばメニュー(MENU)キー2a、校正(CAL)キー2b、エンター(ENTER)キー2cなどの1個又は2個を割り当てることもできる。
【0025】
また、上記各種設定の機能に関しては、操作者が、操作キーを操作することによって所望の条件等の設定を行うのが通常であるが、分析計に精通した人が各種設定の機能の設定条件等を決定して設定したり、あるいは簡易操作モードを実行する実行ファイルの中に予めそれらの設定条件等を書き込んでおくようにしてもよい。
【0026】
次に、簡易操作モードの起動及び簡易操作モードの各機能の実行について、図2に示す標準的な簡易操作モードのフローチャートを参照して説明する。例えば簡易操作モード専用キー4を設けた図1のpH計1の場合、予め所定の機能を選択した簡易操作モードを設定しておけば、最初に簡易操作モード専用キー4を押すことにより簡易操作モードが起動され、その旨が表示部3に表示される。
【0027】
そして、所定時間が経過すると、図2のフローチャートに従って表示部3に「電極を1点目の標準液に浸けて下さい」と表示されるので、この時に例えばpH6.86の標準液の入った容器を用意し、電極を容器中の標準液に浸すと、測定中の値がpH6.86の理論値近傍であれば1点目の標準液がpH6.86の標準液(中性リン酸塩)であることが認識され、「pH6.86校正中」という表示に切り換えて、校正が開始される。
【0028】
指示が安定すると、「1点目の校正が終了しました」という表示に切り換り、この値をpH6.86の校正データとして認識して、メモリ内のpH6.86の校正データを記憶している領域の既存の校正データを、今回の校正データへと書き換える。これにより1点目の校正が完了し、2点目の校正へと移る。2点目に移ると、「電極を2点目の標準液に浸けて下さい」と表示されるので、この時に例えばpH4.01標準液の入った容器を用意し、電極を容器中の標準液に浸すと、前記1点目の校正と同様に、標準液の判別を行い、「pH4.01校正中」という表示に切り換えて校正が開始される。
【0029】
pHの指示が安定すると、「2点目の校正が終了しました」という表示に切り換り、この値をpH4.01の校正データとして認識して、メモリ内のpH4.01の校正データを記憶している領域の既存の校正データを、今回の校正データで書き換える。
【0030】
以上の処理により、前記pH6.86及びpH4.01の2点校正は完了となり、次に測定へと移行することになる。具体的には電極をpH4.01標準液の入った容器から取り出し、実際に測定しようとする試料液の入った容器を用意し、電極を浸すことによって自動的に測定が開始される。そして、pHの指示が安定すれば測定は終了となる。このとき、「測定を続けますか?それとも簡易操作モードを終了しますか?」という表示による問いかけを行い、測定を継続するかどうかを確認するようにすることもできる。
【0031】
このように簡易操作モード専用キー4を押すことによって、後は表示部に表示された表示内容の誘導に従って、校正、測定の各機能を進めて、そのまま簡易操作モードを終了させることができ、操作に不慣れな者でも簡単に操作を行うことができる。尚、簡易操作モード専用キー4を設置する代わりに、メニューキー2a、校正キー2b、エンターキー2cなどから割り当てた1個又は2個の操作キーを用いることによっても、同様に図2のフローチャートに示す簡易操作モードを実施することができる。その場合、割り当てたキー以外は、簡易操作モードでは使用できないようにすることができる。
【0032】
また、図2のフローの鎖線矢印で示すように、2点校正が終了した後に、「校正を再度行いますか?それとも終了して測定へ移りますか?」と表示部3に表示させて問いかけを行うようにすることもできる。具体的には、操作キーとしては簡易操作モード専用キー4とカーソルキー2d(入力操作部2にある矢印が刻印されたキーであり、4個で1組となり、各キーが上下左右に対応している。)を用いるようにし、前記問いかけのいずれかをカーソルキー2dにより指定して選択し、さらに簡易操作モード専用キー4を押すことによって選択した内容の機能を実行する。前記選択において、「再校正」を選択して更に簡易操作モード専用キー4を押すと、2点校正の最初の状態へ戻り、「電極を1点目の標準液に浸して下さい」の表示がされ、再度、2点校正を行うようになる。
【0033】
このようなフローを取り入れることにより、最初に行った2点校正に不具合がある、或は校正の精度を高めたい場合等に対応することができる。なお、図2のフローは適宜、目的とする構成に合せて変更、修正できることは言うまでもない。このように、本発明の簡易操作モードで用いる操作キーの1個として、カーソルキー2dを設定すれば、表示部に示された2つ以上の事項から1つを選択できるため、簡易操作モードにおいても2者択一的な操作が可能となる。
【0034】
上記の簡易操作モードを解除する場合には、分析計の電源を切るなど、任意の方法で解除されるように設定すればよい。簡易操作モードを解除する好ましい方法としては、簡易操作モードで用いる操作キーの1個を長押しする、即ち、設置した簡易操作モード専用キーか、あるいは通常の操作キーの中から割り当てた1個のキーを長押しする方法がある。
【0035】
なお、簡易操作モードに含まれる各機能は、後からユーザー側で設定することもできる。例えば、図1のpH計1の場合で説明すると、メニューキー2aを押すことで表示部3にpH計1が備えている各機能を表示させ、その中からユーザーが必要とする機能を、カーソルキー2dを用いて選択した後、エンターキー2cで設定できるようにすればよい。尚、図1では4個1組のカーソルキー2dを図示したが、カーソルキーは少なくとも2方向にカーソル移動が可能なものであれば2個(上下及び左右方向)でもよい。
【0036】
なお、簡易操作モード自体は1個でなく、2個以上の複数個あってもよい。この場合、まず例えば、簡易操作モード専用キー4を押すことによって簡易操作モードの選択画面を起動させる。そして、複数の中から所望の簡易操作モードをカーソルキー2dで選択した後に、再度、簡易操作モード専用キー4を押すことによって、選択した簡易操作モードを起動させるようにする。前記個々の簡易操作モード自体は、それぞれ各種設定の機能を除く任意の機能から選択することによって設定することができる。なお、前記個々の簡易操作モード自体は、分析計1のメモリに簡易操作モード専用の実行ファイルとして記憶されている。
【0037】
ところで、簡易操作モードの起動及び簡易操作モードの各機能の実行を行うにあたり、本発明の別の態様として、分析計に着脱自在に挿抜可能な記録媒体を用いることにより、まず記録媒体挿入と同時に簡易操作モードを起動させ、その後に、簡易操作モードの各機能の実行を行うようにすることもできる。この場合、前記記録媒体が一種の鍵のような働きをし、この挿入とともに簡易操作モードが起動する。
【0038】
図1に示すようなpH計1の場合は、前記記録媒体5には、例えば既に図2のフローチャートに示されたような簡易操作モードの各機能を実行するための実行ファイルが少なくとも1個は記憶されており、pH計1に記録媒体5を挿入したとき、このファイルを読み込み、簡易操作モードを起動させる。実行ファイルには、最初にタイトルが書き込まれており、その後に各機能の実行内容等が書き込まれている。そして、前記記録媒体5が挿入されると同時に、pH計1では既に記憶していた該実行ファイル名と前記記録媒体5から得られファイル名が一致していることを判断した後に、簡易操作モードが起動するようにするのである。
【0039】
前記記録媒体5に2個以上の複数個の簡易操作モード実行ファイルが記憶されている場合には、前記のように何れか1つのファイル名をデフォルト用のファイルとして指定しておき、このファイル名をpH計1にも予め記憶させておく。そして、記憶媒体がpH計1に挿入されると、pH計1のメモリに記憶していたファイル名と前記デフォルトのファイル名が一致していることを確認し、簡易操作モードが起動するとともに、表示部に前記記録媒体に記憶されている各簡易操作モードの実行ファイル内のタイトルが表示される。そこで、pH計1にある操作キー、例えばカーソルキー2dを押すことによって目的とする簡易操作モード実行ファイルを選択し、その後さらに例えばエンターキー2cを押すことによって、簡易操作モード実行ファイルの各機能を実行させるようになる。なお、簡易操作モードの操作キーとしては、前記のようにpH計1にある操作キーを割り当てる以外に、簡易操作モード専用キーを少なくとも1個設けるようにしてもよい。
【0040】
前記記録媒体には1個のみの簡易操作モード実行ファイルを記憶させておくこともできる。この場合、この実行ファイルのファイル名は、自ずと簡易操作モードを起動させるためのデフォルトファイル名そのものとなる。そこで、この記憶媒体を分析計に挿入すると、分析計では既にメモリに記憶されているファイル名と前記実行ファイル名が一致していることを認識することによって簡易操作モードを起動させ、更にこのファイルを読み込んで、この簡易操作モードを実行するようにすることができる。即ち、前記記録媒体を分析計に挿入した後に、簡易操作モードの起動及び各機能の実行が続けて行なわれ、完了するようになるのである。このことから、幾つかの簡易操作モードがあった場合、より容易に簡易操作モードを実行するためには、その数分だけ記憶媒体を用意してそれぞれファイルを記憶させればよく、その中から選んだ1つの記録媒体を分析計に挿入するだけで所望の簡易操作モードを起動させ、各機能を実行することができるようになる。
【0041】
前記簡易操作モード実行ファイルは、各種設定の機能を除く、校正、測定といった各機能から任意に選択することによって設定するようになっている。この場合、それぞれの機能を含んだフローの処理シーケンスができるような実行ファイルを作成することになり、簡易操作モード実行ファイルが出来た後に、対象とする記憶媒体に記憶させる。なお、前記記憶媒体に記憶されている簡易操作モード実行ファイルは、新しい別の実行ファイルとして保存、あるいは既存の実行ファイルを一部修正して上書き保存することが可能である。
【0042】
ところで、前記簡易操作モード実行ファイルの供給方法としては、メーカーのホームページからユーザーがダウンロードすることによって入手したり、ユーザーがメーカーへ所望の実行ファイルの作成を依頼し、記録媒体の供給を受けるなど適宜、選択できることは言うまでもない。
【0043】
なお、前記記録媒体としては、着脱自在に挿抜できるUSBメモリ、メモリーカードが適しているが、これに限定されるものではなく、コンパクトディスク、DVD、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスクなども適宜、用いることができる。
【0044】
上記の記憶媒体を用いた態様での簡易操作モードを解除する場合には、記憶媒体を分析計から引き抜く方法のほか、前記したように分析計の電源を切る方法、pH計1の操作キーの中から割り当てたキー、あるいは設置した簡易操作モード専用キーなど1個のキーを長押しする方法など、任意の方法で解除できる。
【実施例】
【0045】
分析計が図1の簡易操作モード専用キー4を設けたpH計1の場合において、予め設定された図3のフローチャートに示す簡易操作モードについて説明する。このpH計1の簡易操作モードは、機能として校正、pH測定及び印字の3つの機能が予め選択、設定され、表示部3に表示された問いかけに対して簡易操作モード専用キー4とカーソルキー2d、あるいはpH計1の操作キーの中から割り当てた1個のキーとカーソルキー2dを用いて確認又は選択、指示しながら、各々の機能を実行していくものである。尚、このpH計1は、各種設定の機能などの数多くの機能を備えている。
【0046】
まず、pH計1の簡易操作モード専用キー4を押すことにより、簡易操作モードに移行し、表示部3に自動的に校正画面が表示される。表示部3に表示された2者選択の問いかけ、例えば「測定前に校正を行いますか?それとも測定画面に移りますか?」に対しては、カーソルキー2dで何れか片方を選択し、続けて簡易操作モード専用キー4を押すことで、選択した片方の内容、例えば校正の機能(図3では2点校正)に移行する。そして、動作を指示する表示、例えば「電極を標準液に浸けて下さい」などに対しては、指示に従った動作を行えばよい。また、校正終了後には、「校正結果を印刷しますか?」という表示がされて問いかけを行うようにして、例えば「Yes」をカーソルキー2dで選択し、さらに簡易簡易操作モード専用キー4を押すと、そのまま印字の機能へと移行し、校正結果が紙に印刷される。
【0047】
校正が終了した次に、測定の機能へ移行して測定画面へ入る。表示部3に自動的に測定画面が表示され、動作を指示する表示、例えば「電極液を標準液に浸けて下さい」という表示がされるので、指示に従った動作を行えばよい。その後、測定が開始されて測定値が表示されるが、指示値が安定したところでこの値を今回の測定データとして認識し、メモリ内の測定データを記憶している領域の既存の測定データを、今回の測定データで書き換える。そして測定は終了となる。
【0048】
このような画面表示と操作キーによる処理の実行は、簡易操作モードにおける全ての場面において同様である。そして、測定の終了後には、「測定結果を印刷しますか?」と問いかけがなされるので、測定結果を印刷する場合には、「Yes」をカーソルキー2dで選択し、更に簡易操作モード専用キー4を押すことによって、印字の機能に入って測定結果を紙に印刷し、1回目の測定を終了となる。一方、「No」を選択した場合には、印刷機能をスキップして1回目の測定は終了となる。
【0049】
また、1回目の測定が終了した際には、「測定を継続しますか?それとも終了しますか?」の問いかけを行い、これに対し、例えば「継続」をカーソルキー2dで選択し、続けて簡易操作モード専用キー4を押す。その後、表示画面に従って電極を新たなサンプル液に浸けることにより、2回目のpHの測定が自動的に行われる。
【0050】
前記のような一連のステップが終了し、簡易操作モードを終了する場合には、画面の表示に従って簡易操作モード専用キー4を長押しする。さらにまた、図3の実施形態において、「校正結果を印刷しますか?」、或は「測定結果を印字しますか?」の問いかけの後に、データ保存の機能として、「校正結果を保存しますか?」、「測定結果を保存しますか?」の問いかけを行って、「Yes」をカーソルキー2dで選択し、さらに簡易操作モード専用キー4を押すことによって、データ保存の機能を実行させることもできる。このとき、校正、或は測定結果は、分析計本体に内蔵されたメモリ、或はこれに接続されたメモリーカード、USBメモリ等の記録媒体へ保存されることになる。なお、図3のフローは、適宜、目的に応じて変更、修正できることは言うまでもない。
【0051】
次に、記憶媒体を用いた場合の簡易操作モードの起動及び簡易操作モードの各機能の実行について説明する。図1に示すように、記録媒体5として例えばUSBメモリを用いる。USBメモリには、例えばユーザーがメーカーに所望の簡易操作モードで実行したい各機能について要望を出し、それに対してメーカーが作成した簡易操作モード実行ファイルが記憶されている。この実行ファイルはユーザーの希望により2個以上の複数個にするか、あるいは1個のみにするかは任意である。
【0052】
まず、簡易操作モード実行ファイルが2個以上の複数個ある場合について説明する。このファイルは、少なくとも2個以上の機能が組み合わさったフローの処理シーケンスのスクリプトファイルである。このファイルは、例えば、各々図2と図3のフローチャートで示された実行ファイルとすることも可能である。前記2個の簡易操作モード実行ファイル名はそれぞれ適した名称、例えば「simple1.smp」、「simple2.smp」で記憶媒体5の前記USBメモリに記憶されている。そして、図1に示すように、記憶媒体5のUSBメモリをpH計1に差し込むと、pH計1のCPUはUSBメモリが挿入されたことを認識するとともに、pH計1のメモリに既にデフォルトファイルとして記憶されている前記ファイル名と前記USBメモリから得たファイル名が一致していることを判断した後に、簡易操作モードを起動させて表示部3に簡易操作モード画面を表示させる。
【0053】
この画面上には、前記USBメモリに記憶されている前記「simple1.smp」、「simple2.smp」のファイル内に書き込まれている各々の簡易操作モードのタイトルを表示させるようにすることができ、この2つの中から所望の簡易操作モード実行ファイルのタイトルをカーソルキー2dで選択し、その後にエンターキー2cを押すとそのファイルが実行されることになる。なお、前記簡易操作モードの各機能の実行が完了した後は、pH計1の表示部3に完了した旨の表示を行い、その後USBメモリをpH計1から抜くことによって解除するようにしてもよいし、そのまま簡易操作モード画面を解除して初期画面に戻るようにしてもよい。
【0054】
このように、この実施形態においては、USBメモリ等の記録媒体を用いることによって簡単でしかも即座に簡易操作モードの起動ができる。特に簡易操作モード実行ファイルが2個以上の複数個ある場合には、簡易操作モードが起動した後は、各簡易操作実行ファイルをpH計1の操作キーで選択し、その後さらに別の操作キーを押すことによって、1個又は2個の操作キーのみで簡単に所望の簡易操作モードの各機能を実行することができる。
【0055】
次に、簡易操作モード実行ファイルが1個のみの場合について説明する。この場合、USBメモリ等の記憶媒体には簡易操作モード実行ファイルが1個のみ記憶されており、例えば図2で示されたフローの処理シーケンスのスクリプトファイル(例えば、前記「simple1.smp」)であってよい。なお、別の簡易操作モードの処理を行いたい場合は、別の記憶媒体を用意して、そこへ所望の簡易操作モード実行ファイルを記憶させて使用することになる。
【0056】
前記1個の簡易操作モード実行ファイルが記憶されたUSBメモリなどの記憶媒体をpH計1に挿入すると、まずこのことがpH計1のCPUに認識され、次に、予めpH計1のメモリに記憶されていたファイル名と前記記憶媒体に記憶されている実行ファイルのファイル名が一致していることを判断し、その後pH計1で簡易操作モードが起動する。そして、そのまま簡易操作モード実行ファイルである「simple1.smp」に記憶されたフローの処理シーケンスに移り、簡易操作モードの各機能が実行される。なお、簡易操作モードの解除は、簡易操作モード実行ファイルが2個の場合と同様な処置により行うことができる。
【0057】
このように、USBメモリ等の記録媒体に簡易操作モード実行ファイルが1個のみ記憶されている場合には、記録媒体をpH計に挿入すると同時に簡易操作モードが起動し、引き続いて簡易操作モードの各機能の実行、あるいは簡易操作モードの解除までを、ほとんどキー操作なしで、一気に進めることができる。この場合は、USBメモリ等の記録媒体がいわば簡易操作モードを実行させる際の鍵のような役目を担うこととなる。そのため、操作に不慣れな者でも簡単にpH測定を行うことができる。
【0058】
ところで、上記記録媒体を用いた場合において、簡易操作モード実行ファイルの各機能の選択に関しては、pH計にある各操作機能のフローを適宜アレンジすることによって設定するが、これはpH計に精通したユーザー側の管理者が行ったり、pH計のメーカーがユーザーの依頼に基づいて行ったりすることができる。前記各機能の設定が終わった後は、このファイルをUSBメモリ等の記録媒体に新規に記憶することによって完了となるが、このファイルを書換え又は上書き保存することもできる。
【0059】
このように、本発明により、多機能を備えたpH計において、多数の機能のうち、各種設定の機能を除く機能を実行する簡易操作モードを設定することにより、高い精度を要する測定を操作に不慣れな者が行う場合であっても、特定の操作キーのみを押す若しくは記録媒体を差し込むといったことを契機に、pH計の表示部での表示等の誘導に従って、校正、測定、印字及びデータ保存などの機能の幾つかを、極めて少ないキー操作で、簡単に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明における分析計の一つであるpH計の一具体例を示す平面図である。
【図2】本発明による標準的な簡易操作モードのフローチャートである。
【図3】本発明による3つの機能が選択設定された簡易操作モードのフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 pH計
2 入力操作部
2a メニューキー
2b 校正キー
2c エンターキー
2d カーソルキー
3 表示部
4 簡易操作モード専用キー
5 記憶媒体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析計が具備している多数の機能のうち、各種設定の機能を除く少なくとも2つの機能を、表示等の誘導に従って実行する簡易操作モードを設けたことを特徴とする分析計。
【請求項2】
前記簡易操作モードの起動及び簡易操作モードの各機能の実行は、1個又は2個の操作キーのみを用いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の分析計。
【請求項3】
前記簡易操作モードで用いる操作キーは、分析計が備える操作キーの1個又は2個を割り当てるか、あるいは簡易操作モード専用キーを少なくとも1個設けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の分析計。
【請求項4】
前記簡易操作モードで用いる操作キーが2個であり、そのうち1個がカーソルキーであり、表示部に表示された2つ以上の事項から1つを選択、実行できることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の分析計。
【請求項5】
前記簡易操作モードの起動は、前記分析計に着脱自在に挿抜される記録媒体の挿入によりなされることを特徴とする、請求項1に記載の分析計。
【請求項6】
前記記録媒体には簡易操作モードの各機能を実行するための少なくとも1つの簡易操作モード実行ファイルが記憶され、前記簡易操作モードの起動は、前記記録媒体中に記憶された少なくとも1つの簡易操作モード実行ファイルのファイル名と、分析計本体に記憶されたファイル名が一致していることを判断してなされることを特徴とする、請求項5に記載の分析計。
【請求項7】
前記記録媒体に複数の簡易操作モード実行ファイルが記憶されており、その記憶媒体の挿入により簡易操作モードが起動した後、複数の簡易操作モード実行ファイルからの選択及び各機能の実行は、分析計が備える操作キーによって行なわれることを特徴とする、請求項5又は6に記載の分析計。
【請求項8】
前記記録媒体に1つのの簡易操作モード実行ファイルが記憶され、その簡易操作モードの起動及びその簡易操作モードの各機能の実行は、その記憶媒体の挿入によって行われることを特徴とする、請求項5又は6に記載の分析計。
【請求項9】
前記記録媒体は、USBメモリ、メモリーカード、コンパクトディスク、DVD、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスクのいずれかであることを特徴とする、請求項5〜8のいずれかに記載の分析計。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−218751(P2007−218751A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40082(P2006−40082)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)