説明

簡易走行路測定システム

【課題】簡易な手法で手軽に軌道の検測を行うことができる簡易走行路測定システムを提供する。
【解決手段】走行路測定システム1は、測定時に車両に搭載される衛星からの電波を受信して前記車両の速度情報を出力するGPS受信機10と、車両の動揺情報を出力する動揺センサ20、各種演算を行うPC30を備える。PC30は、速度情報及び動揺情報を受信して、時間軸上の前記動揺情報を時間軸・距離軸変換し、距離軸上にサンプリングされた動揺情報を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路や高速道路等の軌道(走行路)を検査・測定(検側)するための軌道検測システムに関し、特に、簡易な手法により軌道検測できる簡易走行路測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路では、乗客の乗り心地を向上させるなどのために、軌道検測のための専用の設備を備えた検測車を定期的に運行させ、これによって取得したデータに基づき、線路補修の計画や施工が行われている。
また、乗務員や乗客から列車の動揺申告があった場合は、担当者が随時営業列車に添乗し、車両振動加速度、速度情報、位置情報等のデータ測定を行い、列車の動揺箇所を特定する作業も行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、GPS装置を利用して、列車動揺が基準値を超える箇所を短時間に特定する手法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−98878号公報
【0004】
なお、鉄道車両の位置情報を算出するために、GPS装置を利用する手法については、下記特許文献2に開示されている。
【特許文献2】特開2005−186651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した検測車によれば、正確に軌道検測を行うことが可能であるが、検測車の運行は、スケジュールに沿って定期的に行われるものであり、乗務員や乗客から動揺申告があったとしても、急に検測車を運行させることは困難である。このように、検測車では、軌道検測の要請に素早く対応することができない。
【0006】
また、上記特許文献1に開示の手法であれば、営業列車にGPS装置やデータ処理装置を積み込むことで、列車の動揺を測定可能である。そして、特許文献2には、等時間間隔で取得した動揺データ(ガル値(最大加速度))から、ガル値が基準値を超えた時間を算出すると共に、軌道上の確定している基準位置情報と、GPS装置からの時間情報・位置情報・列車速度情報とに基づいて、ガル値が基準値を超えた場所を特定することが開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1では、ガル値が基準値を超えた場所を特定するために、GPSから得られる座標値(経度・緯度)やデータベースに格納された基準位置情報等の情報も必須であり、手軽に列車の動揺箇所を特定できているとはいえない。また、特許文献2では、時間軸上のガル値及びガル値が基準値を超えた場所を把握することができるだけであり、線路の各位置における動揺データを把握することができない。また、特許文献2には、時間サンプリングの動揺データから、具体的にどのようにして、ガル値が基準値を超えた場所を特定するのかについて、詳細な説明がない。
【0008】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、簡易な手法で手軽に軌道の検測を行うことができる簡易走行路測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る走行路測定システムは、測定時に車両に搭載されるGPS受信機及び動揺センサを備え、GPSを利用して走行路測定を行う走行路測定システムにおいて、前記GPS受信機は、衛星からの電波を受信して前記車両の速度情報を出力するGPS受信機であって、前記動揺センサは、前記車両の動揺情報を出力する動揺センサであって、前記速度情報及び前記動揺情報を受信して、時間軸上の前記動揺情報を時間軸・距離軸変換し、距離軸上にサンプリングされた動揺情報を算出するコンピュータをさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る走行路測定方法は、測定時に車両に搭載されるGPS受信機及び動揺センサからの出力に基づき、GPSを利用して走行路の測定を行う走行路測定方法であって、前記動揺センサから得られる車両の動揺情報を時間軸上でサンプリングする工程と、前記GPS受信機から得られる車両の速度情報に基づき、前記動揺情報を所定の距離間隔で距離軸上にサンプリングする位置を算出する工程と、前記時間軸上でサンプリングされた動揺情報のうち、前記距離軸上のサンプリング位置に相当する動揺情報を抽出する工程と、前記抽出された動揺情報を距離軸上の各サンプリング位置に割り当てて、時間軸・距離軸変換された動揺情報を生成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る走行路測定プログラムは、演算手段と記憶手段を備えたコンピュータに、測定時に車両に搭載されるGPS受信機及び動揺センサからの出力に基づいて、走行路測定処理を行わせる走行路測定プログラムであって、前記動揺センサから得られる車両の動揺情報に基づき、時間軸上でサンプリングされた動揺情報を生成するステップと、前記GPS受信機から得られる車両の速度情報に基づき、所定の距離間隔で前記動揺情報を距離軸上にサンプリングする位置を算出するステップと、前記時間軸上でサンプリングされた動揺情報のうち、前記距離軸上のサンプリング位置に相当する動揺情報を抽出する工程と、前記抽出された動揺情報を距離軸上の各サンプリング位置に割り当てて、時間軸・距離軸変換された動揺情報を生成するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る簡易走行路測定システムによれば、簡易な手法で距離軸上にサンプリングされた車両の動揺情報を得ることができる。距離軸上の動揺情報であれば、走行路情報と地点位置が明確であり、走行路の管理業務を円滑に遂行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。本実施形態では、鉄道線路の軌道検測を行う簡易走行路測定システムについて説明する。図1は、簡易走行路測定システム1の概略構成を示す図である。
【0014】
同図に示すように、簡易走行路測定システム1は、GPS(Global
Positioning System:全地球的測位システム)受信機10、加速度センサ20、及びこれらの機器に接続されたノート型のパーソナルコンピュータ(PC)30を備えている。これらの機器は、持ち運び可能な小型のものであり、本実施形態では、これらの機器が鉄道車両100に持ち込まれて設置されている。
【0015】
GPS受信機10は、各種演算を行うための演算手段を有し、航法衛星から発信されている電波信号を一秒毎に受信し、各時刻における車両の速度データを出力する機能を備えている。具体的には、航法衛星からは、一秒毎に、正確な時刻情報及びその衛星の軌道情報が発信されている。GPS受信機10は、複数の衛星からこれらの情報を受信し、各衛星との距離を算出することで、GPS受信機10自身の位置、すなわち、鉄道車両100の位置を把握する。そして、一秒ごとに位置を把握すれば、鉄道車両の移動速度を求めることができる。
【0016】
また、加速度センサ20は、順次所定の時刻における鉄道車両の加速度データを測定し、振動情報(動揺情報)として出力する。加速度センサ20のサンプリング周波数は、409.6[Hz]である。なお、本実施形態の走行路測定システムは、軌道のずれ等に起因する車両の動揺を検出することを目的とするものであるから、測定結果の振動情報が列車の加減速による加速度の影響を受けないように設計されている。本実施形態では、加速度センサ20は全方向の加速度データを出力しているが、後述するPC30側で、列車の進行方向に垂直な方向の成分(列車の上下方向及び枕木に平行な方向の成分)のみを考慮するように設計されている。なお、GPS受信機10及び加速度センサ20の測定・データ出力の頻度やタイミングは適宜変更可能である。
【0017】
PC30は、種々の演算を行う演算手段としてのCPUと、各種情報を記憶するための記憶手段としてのメモリ及びハードディスク、種々の情報を表示するための表示手段としての液晶ディスプレイを備えている。
【0018】
このような構成を備えた本実施形態に係る簡易走行路測定システムは、加速度センサ20から取得する振動情報を、順次時間軸上でデジタルサンプリングした後、GPS受信機10によって算出された鉄道車両100の速度情報に基づき、時間軸・距離軸変換を行い、距離軸上でサンプリングされた振動情報を得ることを特徴としている。このように距離軸上でサンプリングされた振動情報であれば、動揺があった地点の位置を容易に照合することが可能である。
【0019】
続いて、この簡易走行路測定システム1を用いて、時間軸・距離軸変換を行う際の処理の流れを、図2及び図3に基づいて説明する。図2は、走行路測定を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。図3は、この処理における各値の相関関係をイメージ的に示す図である。本実施形態では、サンプリング周波数409.6[Hz]の時間軸(図3の上側の軸)上の振動情報を、距離軸(図3の下側の軸)上において略1m間隔でサンプリングされた振動情報に時間軸・距離軸変換している。但し、図3の距離軸上におけるサンプリング数は、表示を簡素化するために、間引いて表示している。
【0020】
なお、以下の処理のうち、PC30において行われる処理は、PC30内の演算手段が、記憶手段内に格納されているプログラムに基づいて実行している。
【0021】
まず、ステップ1(S1)において、GPS受信機10が航法衛星から受信した時刻情報及び軌道情報に基づき、速度情報v(t)[km/h]を算出する。上述したように、航法衛星からは一秒ごとに情報が発信されているので、GPS受信機10は、情報を受信する度に車両の速度を算出し、時刻情報と共に順次PC30へと送信する。PC30は、受信した速度情報及び時刻情報を、順次記憶手段に格納する。また、このとき、PC30は、受信した時刻に内部の時計の時刻を同期させている。GPSの航法衛星の時計は、時刻が正確な原子時計を搭載しており、衛星からの時刻にPC30の時刻を同期させれば、PC30は、常に正確な時刻に基づいた処理を行うことができ、後述する時間軸・距離軸変換処理等の精度を高めることが可能である。
【0022】
次に、S2において、加速度センサ20は、振動情報a(t)[m/s2]を順次PC30へと送信する。この際の時刻としては、航法衛星からの時刻情報に同期されているPC30内の時計の時刻が用いられる。PC30は、受信した振動情報を、順次記憶手段に格納する。なお、S1及びS2は、並行して行われる処理であり、PC30は、一秒ごとに、GPS受信機10から速度情報及び時刻を受信すると共に、1秒間に409.6回、加速度センサ20から振動情報を受信する。
【0023】
続いて、以下のステップでは、PC30の演算手段が、記憶手段に格納されている速度情報及び振動情報から、距離軸上でサンプリングされた振動情報を算出する処理を行う。なお、以下の処理を行うタイミングは、適宜変更可能であり、例えば、GPS受信機10及び加速度センサ20から速度情報及び振動情報を取得する都度行っても良いし、検測対象の軌道上での速度情報及び振動情報を全て取得した後に、まとめて処理するようにしても良い。
【0024】
まず、S3において、下記式(1)により、記憶手段に格納されている速度情報v(t)に基づいて、検測を開始してから時刻t+1までの累積走行距離S(t+1)[m]を算出する。なお、累積走行距離S(t)は、時刻tまでに得られた速度v(t)を時間積分して得られる。また、累積走行距離Sは、小数点第一位までを求めるものとし、小数点第二位以下は、四捨五入により切り捨てる。
S(t+1)=S(t)+v(t+1)*1000/3600 …(1)
【0025】
次に、S4において、下記式(2)により、時刻t〜t+1区間(一秒の区間)の区間走行距離D(t)[m]を求める。図3においては、距離軸上における、時刻tの地点から時刻t+1の地点までの距離である。なお、区間距離Dは、小数点第一位まで求めるものとし、小数点第二位以下は、四捨五入により切り捨てる。
D(t)=S(t+1)−S(t) …(2)
【0026】
続いて、S5においては、下記式(3)により、時刻t〜t+1区間内の距離軸上のサンプル数N(t)、を求める。関数「Int」は、小数点以下を切り捨て、整数を求める関数である。ここで、サンプル数Nとは、距離軸上にサンプリング変換された後に、時刻t〜t+1区間内に配置される振動情報のサンプル数を示している。
N(t)=Int(D(t))+1 …(3)
【0027】
次に、S6においては、下記式(4)により、時刻t〜t+1区間内の分割ピッチ数P(t)を求める。ここで、Nsは、振動情報のサンプリング周波数であり、上述したように、本実施形態では、Ns=409.6[Hz]である。この分割ピッチ数は、時刻t〜t+1区間内での振動情報サンプリング位置の間隔(上述したように距離に換算するとほぼ1m)を示しており、P(t)個毎に時間軸上の振動情報を抜き出して距離軸上にサンプリングすることになる。
P(t)=Int(Ns/D(t)) …(4)
【0028】
続いて、S7に進み、時刻t〜t+1区間における振動情報の距離軸上サンプリング位置を求める。なお、以下では、時刻t〜t+1区間における距離軸上のN(t)個のサンプリング位置を、それぞれQn(t)[m]と定義する。ここで、nは、各区間でn番目のサンプリング位置であることを示しており、1≦n≦N(t)の自然数である。
【0029】
S7では、まず、下記式(5)により、時刻tにおける累積走行距離S(t)の小数点以下の端数DL(t)[m]を求める。
DL(t)=S(t)−Int(S(t)) …(5)
【0030】
このDL(t)は、時刻t−1〜t区間における振動情報の最後の距離軸上サンプリング位置(図3の距離軸上Qn(t-1))から、累積走行距離S(t)の位置までの距離を示している。ここで、時刻t−1〜t区間における最後のサンプリング位置から1m後ろの位置が、時刻t〜t+1区間における距離軸上の最初のサンプリング位置となるから、累積走行距離S(t)の位置から距離軸上で1−DL(t)[m](位相差)進んだ位置が、時刻t〜t+1区間における最初のサンプリング位置となる。すなわち、Q1(t)=S(t)+(1−DL(t))となる。
【0031】
また、同区間内の二番目以降の距離軸上のサンプリング位置は、1mずつ進んだ位置となるので、Q2(t)=Q1(t)+1、Q3(t)=Q2(t)+1、…、Qn(t)=Qn-1(t)+1となる。
【0032】
続いて、S8に進み、サンプリング周波数409.6[Hz]により時間軸上で計測された振動情報のうち、S7において求めた距離軸上のサンプリング位置に割り付ける振動情報を抽出する。
【0033】
まず、Q1(t)に割り付ける振動情報は、上記位相差1−DL(t)に分割ピッチ数P(t)を掛けて、小数点以下を切り捨てることで、すなわち、Int(P(t)×(1−DL(t)))によって求めることができる。この計算は、1m分の距離に相当する分割ピッチ数P(t)に基づいて、上記位相差1−DL(t)の長さに相当する時間軸上のサンプリングピッチ数を求めるものである。そして、時刻t〜t+1区間内の時間軸上振動情報のうち、求めたピッチ数番目の振動情報が、距離軸上のサンプリング位置Q1(t)における振動情報となる。
【0034】
そして、Q2(t)〜Qn(t)については、Q1(t)のピッチ数に、順次、分割ピッチ数P(t)を加算し、それぞれのピッチ数番目の時間軸上の振動情報を、距離軸上のそれぞれのサンプリング位置における振動情報として割り当てることができる。
【0035】
以上説明した処理手順を、PC30の演算手段が実行することにより、時間軸で取得した振動情報を、時間軸・距離軸変換して、距離軸上の振動情報とすることができる。
【0036】
続いて、具体的な数値を例にとって、上記処理手順について説明する。図4は、具体的な数値に基づいた時間軸・距離軸変換の処理を説明するための図である。以下、順次、上述したステップに対応させて説明する。なお、本具体例では、S1、S2及び時刻t−1〜t区間までの変換処理によって、時刻t=12:40:31、速度v(t-1)=24[km/h]、v(t)=28、v(t+1)=32、累積走行距離S(t)=10,006.6[m]が算出されており、サンプリング周波数Ns=409.6[Hz]とする。
【0037】
まず、S3では、上記式(1)に、上述した数値を代入して、累積走行距離S(t+1)=10,014.3[m]が求まる。続いて、S4で、上記式(2)にS(t+1)の値を代入して、時刻t〜t+1区間の区間距離D(t)=7.7[m]が求まる。次に、S5では、上記(3)式にD(t)の値を代入して、時刻t〜t+1区間の時間軸上の振動情報のサンプル数N(t)=8[個]が求まる。これにより、時間軸上では、410(Int(409.6))個のサンプル数である振動情報のうち、所定の8個のサンプルが、距離軸上の振動情報として割り当てられることが分かる。
【0038】
続いて、S6では、上記式(4)に同じくD(t)の値を代入して、分割ピッチ数P(t)=53[個]が求まる。図4に示すように、距離軸上では、振動情報のサンプリング位置が、時間軸上の振動情報サンプルを53個毎に抜き出したものとなる。
【0039】
次に、S7では、上記式(5)にS(t)の値を代入して、累積走行距離S(t)の値の小数点以下の端数DL(t)=0.6[m]が求まる。これは、時刻t−1〜t区間の最後のサンプリング位置Qn(t-1)からS(t)の位置までの距離を表している。距離軸上の振動情報のサンプリング位置の間隔は、略1mであるから、S(t)の位置から時刻t〜t+1区間の最初のサンプリング位置Q1(t)までの距離が、1−0.6=0.4[m]により求まる。よって、Q1(t)の値が、Q1(t)=S(t)+0.4=10,007[m]として求まる。また、Q2,Q3,…については、順次1mを加算してくことで求まる。
【0040】
続いて、S8では、Int(P(t)×(1−DL(t)))に、上記P(t)及びDL(t)の値を代入することで、21[個]が求まり、時刻t〜t+1区間内の時間軸上振動情報のうち、21番目の振動情報が、距離軸上のQ1(t)における振動情報として割り当てられることになる。また、Q2,Q3,…については、順次分割ピッチ数53番目の振動情報が、同様に距離軸上の振動情報として、割り当てられることになる。
【0041】
以上、詳細に説明した本実施形態に係る簡易走行路測定システムによれば、GPS受信機、加速度センサ及びPCという簡素な構成のシステムにより、距離軸上にサンプリングされた振動情報、すなわち走行路測定データを得ることができる。このような簡単なシステムであれば、必要に応じて、適宜営業列車に搭載して、手軽に走行路測定を実施することが可能である。
【0042】
特に、鉄道車両の場合には、備え付けの速度計の速度信号を取り出すことは、大きな手間がかかると共に、車両の運行に影響を与えることもあるが、本システムによれば、速度計の速度信号を取り出すことなく、GPSを利用して、列車の運行機器とは独立したシステムとして、走行路測定を行うことができる。
また、本実施形に係る簡易軌道検索システムによって得られる距離軸上に変換された走行路測定データであれば、軌道情報と地点位置が明確であるため、線路の管理業務を円滑に行うことが可能である。
【0043】
なお、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、鉄道レールの軌道を検測するために、鉄道車両に本発明に係る簡易走行路測定システムを搭載したものを例に挙げて説明したが、道路の路盤を検測するために車に搭載したものであっても良いし、その他、モノレール、トロリーバス等、軌道の検測を行う必要がある設備であれば、本発明を適用することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、GPS受信機10、加速度センサ20及びPC30を有線接続した状態で車両に搭載した構成としたが、GPS受信機10及び加速度センサ20を車両に搭載しておけば、PC30は、車両外に設置しておき、無線等でGPS受信機10等からPC30へ情報を送信するように構成しても良い。また、GPS受信機10及び加速度センサ20から出力される情報を記憶しておくための記憶装置を車両に搭載しておき、車両を走らせて各種データを測定後、当該記憶装置のデータをPCへと転送して、検測のデータ処理を行うように構成しても良い。
【0045】
また、本実施形態では、GPS受信機か速度情報を一秒毎に出力するように構成しているが、これに限定されるものではなく、GPSの規格変更等により、GPS受信機からの速度情報を一秒よりも短い間隔で出力できるようになれば、より、高精度に、距離軸・時間軸変換を行うことができる。反対に、車両の速度が遅い場合等には、GPS受信機からは一秒間隔で速度情報が出力されていても、PC側で実際に処理に使用する速度情報を間引いて適宜選択するようにしても良いし、GPS受信機から速度情報を出力する周期を一秒よりも長くするようにしても良い。
【0046】
また、本実施形態においては、振動情報のサンプルを、時間軸サンプリングから距離軸サンプリングに変換する際に、距離軸でほぼ1m間隔にサンプリングするように構成したが、距離軸上のサンプリング間隔はこれに限られるものではなく、車両の速度等の環境に応じて、適宜所定の距離間隔で距離軸上にサンプリングすれば良い。
【0047】
また、本実施形態においては、全ての区間において、速度情報の取得周期や距離軸上の振動情報サンプリング間隔が一定になるように構成したが、もちろん、このような構成に限定されるものではなく、検測環境に応じて、所定の区間における周期や間隔を変更するように構成しても良い。但し、全ての区間において、データの精度を統一するためには、全ての区間でこれらを一定にすることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態では、動揺情報として加速度情報(加速度センサ)を用いているが、これに限られるものではなく、例えば、車両の進行方向に直交する方向における車両の変位情報(変位センサ)を動揺情報として採用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る簡易走行路測定システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る走行路測定を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る走行路測定を行う際の処理における各値の相関関係をイメージ的に示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る時間軸・距離軸変換の処理を具体的な数値に基づいて説明するための図である。
【0050】
1 簡易走行路測定システム
10 GPS受信機
20 加速度センサ
30 PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定時に車両に搭載されるGPS受信機及び動揺センサを備え、GPSを利用して走行路測定を行う走行路測定システムにおいて、
前記GPS受信機は、衛星からの電波を受信して前記車両の速度情報を出力するGPS受信機であって、
前記動揺センサは、前記車両の動揺情報を出力する動揺センサであって、
前記速度情報及び前記動揺情報を受信して、時間軸上の前記動揺情報を時間軸・距離軸変換し、距離軸上にサンプリングされた動揺情報を算出するコンピュータをさらに備えることを特徴とする走行路測定システム。
【請求項2】
前記GPS受信機は、衛星から時刻情報を受信し、前記速度情報と共に前記時刻情報を出力するGPS受信機であって、
前記コンピュータは、前記時刻情報に当該コンピュータの時刻を同期するように処理することを特徴とする請求項1記載の走行路測定システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、距離軸上に所定の距離間隔で前記動揺情報をサンプリング変換するものであって、前記速度情報に基づいて、時間軸上の前記動揺情報の中から距離軸上の各サンプリング位置に相当する動揺情報を抽出することで、前記時間軸・距離軸変換を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の走行路測定システム。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記距離軸上のサンプリング位置を、前記動揺センサから出力される動揺情報のサンプリング周期を利用して特定することを特徴とする請求項3記載の走行路測定システム。
【請求項5】
測定時に車両に搭載されるGPS受信機及び動揺センサからの出力に基づき、GPSを利用して走行路の測定を行う走行路測定方法であって、
前記動揺センサから得られる車両の動揺情報を時間軸上でサンプリングする工程と、
前記GPS受信機から得られる車両の速度情報に基づき、前記動揺情報を所定の距離間隔で距離軸上にサンプリングする位置を算出する工程と、
前記時間軸上でサンプリングされた動揺情報のうち、前記距離軸上のサンプリング位置に相当する動揺情報を抽出する工程と、
前記抽出された動揺情報を距離軸上の各サンプリング位置に割り当てて、時間軸・距離軸変換された動揺情報を生成する工程と、
を備えることを特徴とする走行路測定方法。
【請求項6】
演算手段と記憶手段を備えたコンピュータに、測定時に車両に搭載されるGPS受信機及び動揺センサからの出力に基づいて、走行路測定処理を行わせる走行路測定プログラムであって、
前記動揺センサから得られる車両の動揺情報に基づき、時間軸上でサンプリングされた動揺情報を生成するステップと、
前記GPS受信機から得られる車両の速度情報に基づき、所定の距離間隔で前記動揺情報を距離軸上にサンプリングする位置を算出するステップと、
前記時間軸上でサンプリングされた動揺情報のうち、前記距離軸上のサンプリング位置に相当する動揺情報を抽出する工程と、
前記抽出された動揺情報を距離軸上の各サンプリング位置に割り当てて、時間軸・距離軸変換された動揺情報を生成するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする走行路測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−245916(P2007−245916A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71960(P2006−71960)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(504432079)有限会社ワットシステム (2)
【Fターム(参考)】