説明

籠構造含有硬化性シリコーン共重合体及びその製造方法並びに籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を用いた硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】籠構造を主鎖に取組んだ共重合体及びこれを含んだ硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)Y−[Z−(O1/2−R22SiO1/2)a−(R1SiO3/2)n−(O1/2b]m−Z−Y[R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基、Zは下記一般式(2)


の2価の基であり、Yは下記(3)〜(5)のいずれかである。(3)[(R4O)R22SiO1/2]a−[R1SiO3/2]n−[O1/2]−(4)[R41/2]b−[R1SiO3/2]n−[O1/2−R22SiO1/2]−(5)(R41/2)−(6)(R23SiO1/2)−(R4は水素原子、メチル基又はエチル基)}で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籠構造含有硬化性シリコーン共重合体及びその製造方法並びに籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を用いた硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関し、詳しくはアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物を用いた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体及びその製造方法、並びにこの共重合体を含んだ硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに籠構造を有するシルセスキオキサン又はその誘導体を用いた重合体に関する研究が数多く行われている。この重合体は、耐熱性、耐候性、光学特性、寸法安定性などに優位性をもつことを期待されている。例えば、非特許文献1には、不完全縮合構造のシルセスキオキサン(完全な8面体構造ではなく、少なくとも一箇所以上が開裂しており、空間が閉じていない構造のもの)をシロキサン結合で連結させた共重合体の製造方法が開示されている。この製造方法は、不完全な籠型シルセスキオキサンに有機金属化合物を介してアミン等を導入した後、芳香族イミド化合物やフェニルエーテルなどで架橋する方法である。また、非特許文献2には、不完全な籠型シルセスキオキサンが有しているシラノール基とアミノシラン等とを反応させた共重合体の製造方法が開示されている。
【0003】
特に電子材料や光学材料などにおいては耐熱性、耐久性、成形性のほか、用いられる部位によっては透明性、耐候性等の更なる改善が求められている。しかしながら、従来のシルセスキオキサン共重合体では、構造が不明瞭で安定性に欠けたり、または籠型シルセスキオキサンを主鎖にグラフト重合させる場合にはそれが架橋点となりゲル化するため、上記のような特性を完全に備えた構造体を得ることが困難である。そのため、優れた耐熱性、耐候性、光学特性等を有する籠型シルセスキオキサンを主鎖とし、かつ結合の位置が明確に限定された、成形性に優れた共重合体が望まれているが、主鎖に籠型シルセスキオキサンを組み込んだ共重合体の例は少ない。
【0004】
下記特許文献1及び2には、3官能の加水分解基を有するシラン化合物を1価のアルカリ金属水酸化物の存在下、有機溶媒中で加水分解することでSi-ONaを反応活性基として有する不完全な籠型シルセスキオキサンを合成した後、この不完全な籠型シルセスキオキサンに対し目的に応じて官能基を有したクロロシランを反応させることで、種々の化合物との共重合による共重合体を得る方法が報告されている。しかしながら、本発明者が知る限りではこれ以外の方法について報告された例はなく、また、上記の方法は籠型シルセスキオキサン骨格が有する側鎖が限定され、硬化性を備えないために耐熱性に劣ることが懸念される。すなわち、任意にかつ再現性よく優れた特性を有する材料を製造することは困難である。
【特許文献1】特開2006-265243号公報
【特許文献2】WO2003/024870パンフレット
【非特許文献1】Chem. Mater. 2003, 15, 264-268
【非特許文献2】Macromolecules. 1993, 26, 2141-2142
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記で説明したように任意に分子量を制御できて、目的に応じた材料設計が可能になれば、電子材料や光学材料の成形の自由度がさらに増すはずであるが、籠構造を主鎖に取り込む共重合体の合成について例は少なく、そのような共重合体の具体的な特性は十分に明らかにされていない。そこで、本発明の目的は、アルコキシル基またはシラノール基を含有した籠型シルセスキオキサン化合物から製造される、籠構造を主鎖に取組んだ共重合体及びこれを含んだ硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アルコキシル基またはシラノール基を含有した籠型シルセスキオキサン化合物を特定の反応条件により縮合させることで、主鎖に籠構造を取り込んだ共重合体を得ることができることを見出した。そして、この共重合体を含む硬化性樹脂組成物が、透明性と耐熱性に優れる硬化物を与えることが可能であることから、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
Y−[Z−(O1/2−R22SiO1/2) a−(R1SiO3/2)n−(O1/2b] m−Z−Y (1)
[但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たし、nは8〜14の数を示し、mは1〜2000の数を示す。更に、Zは下記一般式(2)
【化1】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Yは下記一般式(3)〜(5)から選ばれるいずれかの1価の基である。
[(R4O)R22SiO1/2]a −[R1SiO3/2]n−[O1/2]− (3)
[R41/2]b −[R1SiO3/2]n−[O1/2−R22SiO1/2]− (4)
(R41/2) − (5)
(R23SiO1/2) − (6)
(但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよく、R4は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれたいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であり、nは8〜14の数を示す。)}で表される構成単位を有することを特徴とする籠構造含有硬化性シリコーン共重合体である。
【0008】
また、本発明は、下記一般式(7)
[(R4O)R22SiO1/2]a −[R1SiO3/2]n−[O1/24] (7)
(但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基から選ばれ、R4は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれ、R1、R2又はR4において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たす。更にnは8〜14の整数である。)で表されるアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シロキサン化合物と、下記一般式(8)
【化2】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、Xは水酸基、水素原子、塩素原子又はアルコキシル基であって、Xは互いに同じか異なるものであってもよく、更にpは0〜30の数を示す。)で表される化合物とを縮合反応させ、又は縮合反応させて得られた反応物に対して更に下記一般式(9)
23Si−X (9)
(但し、R2は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R2は互いに同じか異なるものであってもよい。また、Xは水酸基、水素原子、塩素原子又はアルコキシル基である)で表される化合物を縮合させることにより、下記一般式(1)
Y−[Z−(O1/2−R22SiO1/2) a−(R1SiO3/2)n−(O1/2b] m−Z−Y (1)
{但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たし、nは8〜14の数を示し、mは1〜2000の数を示す。更に、Zは下記一般式(2)
【化3】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Yは下記一般式(3)〜(6)から選ばれるいずれかの1価の基である。
[(R4O)R22SiO1/2]a −[R1SiO3/2]n−[O1/2]− (3)
[R41/2]b −[R1SiO3/2]n−[O1/2−R22SiO1/2]− (4)
(R41/2) − (5)
(R23SiO1/2) − (6)
(但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよく、R4は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれ、a及びbは0〜3の数であり、nは8〜14の数を示す。)]で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることを特徴とする籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法である。
【0009】
本発明において、一般式(7)で表せるアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シロキサン化合物のうちアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物は下記一般式(7−1)を用いて表すことができる。
[(R5O)R22SiO1/2]a − [R1SiO3/2]n − [O1/25]b (7−1)
(ここで、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基から選ばれ、R5はメチル基またはエチル基から選ばれ、R1、R2又はR5において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であり、1≦ a + b ≦4の関係を満たす。更にnは8〜14の整数である。)
【0010】
一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物の構造式の例を下記式(10)〜(18)にそれぞれ示す。構造式(10)はn=8, a=1, b=1の場合、(11)はn=8, a=2, b=0の場合、(12)はn=8, a=0, b=2の場合、(13)はn=9, a=1, b=2の場合、(14)はn=10, a=1, b=1の場合、(15)はn=11, a=1, b=2の場合、(16)はn=12, a=1, b=1の場合、(17)はn=13, a=1, b=2の場合、(18)はn=14, a=1, b=1の場合である。なお、アルコキシル基含有シロキサン化合物はn,a,b数の異なる組み合わせがあり、ここに示す限りではない。また構造式(10)〜(18)においてR1、R2及びR5は一般式(7-1)と同じである。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0011】
本発明に用いられるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物(7−1)の製造方法については、例えば公知の方法により製造された下記一般式(19)
[R1SiO3/2]n (19)
で表される籠型シロキサン化合物と、下記一般式(20)
22Si(OR5) 2 (20)
で表せるジアルコキシシランとを非極性溶媒下で塩基性触媒を用いて付加させることにより得ることができる(R1、R2及びR5は一般式(7-1)と同じである)。
【0012】
本発明に用いられる一般式(19)で表される籠型シロキサン化合物の例としては、n=8、10、12及び14に対応する構造式の例としてそれぞれ下記一般式(21)、(22)、(23)及び(24)が挙げられる。なお、下記構造式(21)〜(24)においてR1及びR2は一般式(7−1)と同じである。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0013】
一般式(19)で表せる籠型シロキサン化合物におけるnの値は8〜14の整数であり、好ましくはn=8、10又は12であり、より好ましくは8である。本発明では、一般式(19)で表せる籠型シロキサン化合物がn=8〜14の範囲の整数である混合物を用いてもよいが、好ましくはnが単一の化合物を用いるのがよい。
【0014】
また、本発明で用いる一般式(20)で表されるジアルコキシシランの好ましい化合物を示せば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、エチルアリルジメトキシシラン、スチリルメチルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、エチルアリルジエトキシシラン、スチリルメチルジエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0015】
また、一般式(19)で表される籠型シロキサン化合物と一般式(20)で表せるジアルコキシシランとを付加させる際に用いる非極性溶媒及び塩基性触媒に関し、先ず、非極性溶媒としては、水に対し溶解性の無い又は殆どないものであればよいが、好ましくは炭化水素系溶媒であるのがよい。炭化水素系溶媒のなかでもトルエン、ベンゼン、キシレンなどの比較的沸点の低い非極性溶媒であるのがよく、好ましくはトルエンを用いるのがよい。また、塩基性触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、あるいはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどの水酸化アンモニウム塩が例示される。これらの中でも、テトラアルキルアンモニウム等の非極性溶媒に可溶性の触媒が好ましい。中でも触媒活性が高い点からテトラメチルアンモニウムヒドロキシドがより好ましく用いられる。
【0016】
一般式(19)で表される籠型シロキサン化合物と一般式(20)で表せるジアルコキシシランとを非極性溶媒下で塩基性触媒を用いて付加させる反応については、次のように推測することができる。まず、籠型シロキサンを構成するシロキサン結合が塩基性触媒によって切断される。次いで切断されたシロキサン結合末端が、ジアルコキシシランのアルコキシル基とアルコール交換反応により、シロキサン結合が生成しアルコキシル基が付加する反応(付加反応)と、籠型シロキサンの分子内および分子間で切断されたシロキサン結合末端同士が結合する反応(再結合反応)とが競争的に起こる。よって前者(付加反応)を優先的に行う必要がある。また、本発明における反応は基本的に平衡反応であることから、目的物のアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物の数平均分子量Mn、収率、及び生成速度は、反応温度、反応時間、両原料の添加量比、塩基触媒量等によって自ずと決定されるため、以下に記した条件下で行うのが好ましい。
【0017】
すなわち、一般式(19)で表される籠型シロキサン化合物と一般式(20)で表せるジアルコキシシランを非極性溶媒下で塩基性触媒を用いて付加させる反応の反応条件については、一般式(20)のアルコキシル基が反応系内の水分と反応してシラノール基への変換や加水分解縮合を抑える為、窒素ガスなどの不活性雰囲気で反応を行うことが好ましい。反応温度は一般式(20)で表されるジアルコキシシランの沸点以下であって、70〜200℃の範囲が好ましく、80〜130℃がより好ましい。反応温度が低すぎると付加反応をさせるために十分なドライビングフォースが得られず反応が進行しない。反応温度が高すぎると、ビニル基や(メタ)アクリロイル基のような不飽和結合をもつ反応性の官能基を含む場合に自己重合反応を起こす可能性があるので、反応温度を抑制するか、或いは重合禁止剤などを添加する必要がある。
【0018】
非極性溶媒の使用量については特に限定されないが、籠型シロキサン化合物の重量に対して、撹拌効率や釜効率を考慮すると1〜5倍の重量を用いることが好ましい。ジアルコキシシランの添加量については、籠型シロキサン化合物1モルに対して0.5〜2.0モルの範囲で加えることが好ましい。ジアルコキシシランの添加量を調節することで、アルコキシル基含有籠型シロキサン化合物のアルコキシル基の量を調節することが可能である。例えば、籠型シロキサン化合物1モルに対して、1モルのジアルコキシシランを添加し反応させた場合に得られるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物は、下記一般式(7−1)
[(R5O)R22SiO1/2]a − [R1SiO3/2]n − [O1/25]b (7−1)
(ここで、R1、R2、R5、及びnは前記と同じ。)
において、a+b=2であって、籠構造単位に2個のアルコキシル基を含有するアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物の混合物として得られる。また、用いる籠型シロキサン化合物が混合物である場合、nの平均値に対してジアルコキシシランの添加量を調整することで籠構造単位当りのアルコキシル基の含有量を調整することができる。一方、ジアルコキシシランの添加量が籠型シロキサン化合物1モルに対して0.5〜2.0モルの範囲より多いと、籠構造を形成するシロキサン結合がより多く切断し、アルコキシル基の付加が起こるため籠構造が分解されてしまう。
【0019】
また、塩基性触媒の使用量については、籠型シロキサン化合物1モルに対し、塩基性触媒を0.01〜0.15モル、好ましくは0.06〜0.1モルとなるように加えるのがよい。また用いる籠型シロキサン化合物が混合物である場合、nの平均値に対して塩基性触媒を0.01〜0.15モル、好ましくは0.06〜0.1モルとなるように加えるのがよい。
【0020】
本発明で用いるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物(7−1)は、用いる籠型シロキサン化合物の種類及び純度、ジアルコキシシラン化合物の添加量、種類、純度、並びに反応条件や重縮合物の状態により異なるが、一般には、一般式(7−1)のa及びbは0〜3の数であり、1≦ a + b ≦4を満たし、nは8〜14の整数で表される複数種のアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物の混合物として用いるのがよい。
【0021】
本発明において、一般式(7)で表せるアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シロキサン化合物のうち、シラノール基含有籠型シロキサン化合物は下記一般式(7−2)を用いて表すことができる。なお、このシラノール基含有籠型シロキサン化合物は、前記一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物を酸または塩基触媒存在下で加水分解して得ることができる。
[(HO)R22SiO1/2]a − [R1SiO3/2]n − [O1/2H]b (7−2)
(但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基から選ばれ、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。またa及びbは0〜3の数であり、1≦ a + b ≦4を満たし、更にnは8〜14の整数である。)
【0022】
シラノール基含有籠型シロキサン化合物の構造式の例は、基本的には前述したアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物の構造式の例(10)〜(18)におけるR5が水素原子に置き換わったものに対応する。すなわち構造式(10)はn=8, a=1, b=1、(11)はn=8, a=2, b=0、(12)はn=8, a=0, b=2、(13)はn=9, a=1, b=2、(14)はn=10, a=1, b=1、(15)はn=11, a=1, b=2、(16)はn=12, a=1, b=1、(17)はn=13, a=1, b=2、及び(18)はn=14, a=1, b=1の場合である。なお、シラノール基含有シロキサン化合物は、n,a,b数の異なる組み合わせがあるためこれらに示す限りではない。また構造式(10)〜(18)においてR1及びR2は一般式(7−1)と同じである。
【0023】
前記一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物を酸または塩基触媒存在下加水分解してシラノール基含有籠型シロキサン化合物を得る際に用いる酸触媒の例としては、塩酸、硫酸、酢酸、蟻酸、トリフロオロメタンスルホン酸等が挙げられる。また塩基としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、あるいはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどの水酸化アンモニウム塩が例示される。
【0024】
加水分解に必要な水は、酸又は塩基触媒に含まれる水分を使用してもよく、別途加えてもよい。水の量としては使用するアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物のアルコキシル基1モルに対して1〜3モルが好ましく、より好ましくは1〜1.5モルがよい。水の量が少なすぎるとアルコキシル基からシラノール基の変換が完全に行われず、多すぎるとシロキサン結合が切断するといった悪影響を及ぼす可能性がある。
【0025】
酸または塩基触媒の使用量については、使用するアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物のアルコキシル基1モルに対して0.1〜1.5モルが好ましい。触媒の使用量が多すぎるとシロキサン結合が切断され籠構造が分解されてしまう。
【0026】
加水分解反応条件については、反応温度は0〜40℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなりアルコキシル基が未反応の状態で残存してしまい反応時間を多く費やす結果となる。一方、40℃より高いと加水分解に加え、シラノール基の縮合反応が進行し結果として加水分解生成物の高分子量化が促進される。また、反応時間は2時間以上が好ましい。反応時間が2時間に満たないと、加水分解反応が十分に進行せずアルコキシル基が未反応の状態で残存してしまう状態となる。
【0027】
加水分解時には非極性溶媒と極性溶媒のうちの1つもしくは両方合わせて使用するのがよく、好ましくは両方用いるか、極性溶媒のみ用いるのがよい。極性溶媒としてはメタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、或いは他の極性溶媒を用いることができ、好ましくは水に対し溶解性のある炭素数1〜6の低級アルコール類であるのがよく、2-プロパノールを用いることがより好ましい。非極性溶媒のみを用いると反応系が均一にならず加水分解が十分に進行しない。なお、非極性溶媒についてはアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物の製造方法において例に挙げたものを用いることができる。
【0028】
加水分解反応終了後は、トルエンなどの極性溶媒を加えて、使用した触媒により異なるが、反応溶液を弱塩基または弱酸性溶液で中和し、水又は水含有反応溶媒を分離する。水又は水含有反応溶媒の分離は、この溶液を食塩水等で洗浄し水分やその他の不純物を十分に除去し、その後無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させる等の手段が採用できる。
【0029】
以上のような方法で、下記一般式(7)
[(R4O)R22SiO1/2]a −[R1SiO3/2]n−[OR4] (7)
(但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基から選ばれ、R4は水素原子またメチル基又はエチル基から選ばれ、R1、R2又はR4において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たす。更にnは8〜14の整数である。)で表されるアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シロキサン化合物を得ることができる。
【0030】
次いで、一般式(7)で表されるアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シロキサン化合物と下記一般式(8)
【化17】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、Xは水酸基、水素原子、塩素原子又はアルコキシル基であって、Xは互いに同じか異なるものであってもよく、更にpは0〜30の数を示す。)で表される化合物とを縮合反応させることにより、下記一般式(1-1)
1−[Z−(O1/2−R22SiO1/2) a−(R1SiO3/2)n−(O1/2b] m−Z−Y1 (1-1)
{但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、R1に関しては1分子中の少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たし、nは8〜14の数を示し、mは1〜2000の数を示す。更に、Zは下記一般式(2)
【化18】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Y1は、下記一般式(3)
[(R4O)R22SiO1/2]a −[R1SiO3/2]n−[O1/2]− (3)
又は下記一般式(4)
[R41/2]b −[R1SiO3/2]n−[O1/2−R22SiO1/2]− (4)
又は下記一般式(5)
(R41/2) − (5)
(但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよく、R4は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれいずれかであり、a及びbは0〜3の数であり、nは8〜14の数で表される1価の基である。)]で表される構成単位を特徴とする籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。
【0031】
一般式(7)で表されるアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8)で表される化合物との縮合反応により得られる一般式(1−1)で表せる籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法は、一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物を用いる場合と一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物を用いる場合とで製造方法が異なり、更に一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物を用いる場合については、一般式(8)で表される化合物の置換基Xの種類によっても製造方法が異なる。
【0032】
まず、一般式(7−1)で表せるアルコキシル基含有シロキサン化合物とXが水酸基である一般式(8)の化合物とを縮合反応させる場合、すなわち、一般式(7−1)で表せるアルコキシル基含有シロキサン化合物と下記一般式(8−1)の化合物
【化19】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、互いに同じか異なるものであってもよく、pは0〜30の数を示す。)とを反応させる場合、一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物1モルに対して0.5〜10モル、好ましくは0.5〜3.0モルの範囲となるように上記一般式(8−1)で表されるシランジオール、またはα、ω−ジシラノールシロキサンを触媒存在下、非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒中で脱アルコール縮合させることで、一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。
【0033】
一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物と上記一般式(8−1)で表されるシランジオール、またはα、ω−ジシラノールシロキサンとの具体的な脱アルコール縮合の反応条件については、例えば一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物、一般式(8−1)の化合物及び触媒を、非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒に溶解した場合、その濃度は、アルコキシル基含有籠型シロキサン化合物に対して0.1〜2.0M(mol/l)とするのがよい。反応温度は、0〜130℃が好ましく、50〜110℃がより好ましい。反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり反応時間を多く費やす結果となる。一方、130℃より高いと籠構造の開裂反応が起こり複雑な縮合反応の結果、ゲル状の固体物を形成してしまう。また、反応時間は2時間以上が好ましい。この際、反応時間が短いと、反応が完結しない場合がある。
【0034】
反応終了後は、反応溶液を中性もしくは酸性よりにした後、水または水含有反応溶媒を分離する。水又は水含有反応溶媒の分離は、この溶液を食塩水等で洗浄し水分やその他の不純物を十分に除去し、その後無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させる等の手段が採用できる。エーテル系溶媒を使用した場合は、減圧蒸発等の手段が採用でき、エーテル系溶媒を除去した後、非極性溶媒を添加して重縮合物を溶解させて上記同様に洗浄、乾燥を行う。
【0035】
一般式(8−1)について、pが0で表されるシランジオールの具体例を挙げると、ジメチルシランジオール、エチルメチルシランジオール、フェニルメチルシランジオール、ジエチルシランジオール、エチルアリルシランジオール、スチリルメチルシランジオール、ジビニルシランジオール、ビニルメチルシランジオール、3−グリシドキシプロピルメチルシランジオール、3−アクリロキシプロピルメチルシランジオール、3−メタクリロキシプロピルメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール等が挙げられる。
【0036】
一般式(8−1)について、pが1〜30で表されるα,ω−ジシラノールシロキサンの具体例を挙げると、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン−メチルシロキサン、共重合体等が挙げられる。
【0037】
一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−1)で表されるシランジオール、またはα、ω−ジシラノールシロキサンの脱アルコール縮合に用いる有機溶媒については、一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物とシランジオール、またはα、ω−ジシラノールシロキサンに対して不活性なものであれば任意に選択できる。このうち、非極性溶媒について具体例を示すと、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの炭化水素系溶媒が挙げられる。エーテル系溶媒について具体例を示すと、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランを挙げることができる。その中でもトルエンを溶媒とすることが好ましい。また、エーテル系溶媒と非極性溶媒の混合系でもよい。有機溶媒の好ましい使用割合は、一般式(2)で表される構造単位1モルに対して0.01〜10M(mol/l)の範囲であるのがよく、好ましくは、0.1〜1M(mol/l)であるのがよい。
【0038】
また、一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−1)で表されるシランジオール、またはα、ω−ジシラノールシロキサンの脱アルコール縮合に用いる触媒については、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム及び、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウムなどの水酸化アンモニウム塩、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、酸化スズ、ジブチル酸化スズ、酢酸亜鉛二水和物、酢酸鉛三水和物、酸化鉛、酢酸アルミニウム、酢酸マンガン四水和物、酢酸コバルト四水和物、酢酸カドミニウム、ジブチルスズラウレート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズマーカプチド及びスタナスオクトエートオクテン酸鉛等の有機金属系触媒、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアジニン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、p-トルエンスルホン酸及び三フッ化酢酸等が挙げられる。これらの中でも、触媒活性が高い点から水酸化テトラメチルアンモニウムを用いることが好ましい。
【0039】
次に、一般式(7−2)で表せるシラノール基含有シロキサン化合物とXがアルコキシル基である一般式(8)の化合物とを縮合反応させる場合、すなわち、一般式(7−2)で表せるシラノール基含有シロキサン化合物と下記一般式(8−2)の化合物
【化20】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、互いに同じか異なるものであってもよく、R5はメチル基、エチル基、プロピル基であって、互いに同じか異なるものであってもよい。pは0〜30の数を示す。)とを反応させる場合、一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物1モルに対して0.5〜10モル、好ましくは0.5〜3.0モルの範囲で上記一般式(8−2)で表されるジアルコキシシラン、またはα、ω−ジアルコキシシロキサンを触媒存在下、非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒中で脱アルコール縮合させることで、一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。
【0040】
一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と上記一般式(8−2)で表されるジアルコキシシラン、またはα、ω−ジアルコキシシロキサンとの具体的な脱アルコール縮合の反応条件については、例えば一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と上記一般式(8−2)で表されるジアルコキシシラン、またはα、ω−ジアルコキシシロキサン及び触媒を非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒に溶解した場合、シラノール基含有籠型シロキサン化合物の濃度が0.1〜2.0M(mol/l)となるよう溶媒量を調整することが好ましい。反応温度は、0〜130℃が好ましく、50〜110℃がより好ましい。反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり反応時間を多く費やす結果となる。一方、130℃より高いと籠構造の開裂反応が起こり複雑な縮合反応の結果、ゲル状の固体物を形成してしまう。また、反応時間は2時間以上が好ましい。この際、反応時間が短いと、反応が完結しない場合がある。
【0041】
反応終了後は、反応溶液を中性もしくは酸性よりにした後、水または水含有反応溶媒を分離する。水又は水含有反応溶媒の分離は、この溶液を食塩水等で洗浄し水分やその他の不純物を十分に除去し、その後無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させる等の手段が採用できる。エーテル系溶媒を使用した場合は、減圧蒸発等の手段が採用でき、エーテル系溶媒を除去した後、非極性溶媒を添加して重縮合物を溶解させて上記同様に洗浄、乾燥を行う。
【0042】
一般式(8−2)について、pが0で表されるジアルコキシシランの具体例を挙げるとジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、エチルアリルジメトキシシラン、スチリルメチルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、エチルアリルジエトキシシラン、スチリルメチルジエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
また、一般式(8−2)について、pが1〜30で表されるα,ω−ジアルコキシシロキサンの具体例を挙げると1,3−ジメトキシテトラメチルジシロキサン、1,3−ジエトキシテトラメチルジシロキサン、1,5−ジメトキシヘキサメチルトリシロキサン、1,7−ジメトキシオクタメチルテトラシロキサン、1,5−ジエトキシヘキサメチルトリシロキサン、1,7−ジエトキシオクタメチルテトラシロキサン等が挙げられる。
【0044】
一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と上記一般式(8−2)でジアルコキシシラン、またはα、ω−ジアルコキシシロキサンとの脱アルコール縮合に用いる有機溶媒および触媒については、先に記載した一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−1)で表されるシランジオール、またはα、ω−ジシラノールシロキサンの脱アルコール縮合に用いるものと同様の有機溶媒および触媒が用いられる。
【0045】
次に、一般式(7−2)で表せるシラノール基含有シロキサン化合物とXが水素原子である一般式(8)の化合物とを縮合反応させる場合、すなわち、一般式(7−2)で表せるシラノール基含有シロキサン化合物と下記一般式(8−3)の化合物
【化21】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、互いに同じか異なるものであってもよい。pは0〜30の数を示す。)とを反応させる場合、一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物1モルに対して0.5〜10モル、好ましくは0.5〜3.0モルの範囲で上記一般式(8−3)で表されるジハイドロジェンシラン、またはα,ω−ジハイドロジェンシロキサンを触媒存在下、非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒中で脱水素縮合させることで、一般式(1-1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。
【0046】
一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−3)で表されるジハイドロジェンシラン、またはα,ω−ジハイドロジェンシロキサンとの具体的な反応条件については、例えば一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物とジハイドロジェンシラン、またはα,ω−ジハイドロジェンシロキサン及び触媒を非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒に溶解した場合、シラノール基含有籠型シロキサン化合物の濃度が0.1〜2.0M(mol/l)となるよう溶媒量を調整することが好ましい。反応温度は0〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり反応時間を多く費やす結果となる。一方、100℃よりも高いと反応速度が速すぎるために複雑な縮合反応が進行してしまいゲル状の固体物を形成してしまう。反応時間は2時間以上が好ましい。この際、反応時間が短いと、反応が完結しない場合がある。
【0047】
反応終了後は、反応溶液を中性もしくは酸性よりにした後、水または水含有反応溶媒を分離する。この際、加水分解により、末端基がシラノール基でないものは、シラノール基へと変換される。水又は水含有反応溶媒の分離は、この溶液を食塩水等で洗浄し水分やその他の不純物を十分に除去し、その後無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させる等の手段が採用できる。エーテル系溶媒を使用した場合は、減圧蒸発等の手段が採用でき、エーテル系溶媒を除去した後非極性溶媒を添加して重縮合物を溶解させて上記同様に洗浄、乾燥を行う。
【0048】
一般式(8−3)について、pが0で表されるジハイドロジェンシランの具体例を挙げると、ジエチルシラン、ジフェニルシラン等が挙げられる。
【0049】
また、一般式(8−3)について、pが1〜30で表されるα,ω−ジハイドロジェンシロキサンの具体例を挙げると、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラシクロペンチルジシロキサン、1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、水素末端ポリジメチルシロキサン、水素末端ポリメチルフェニルシロキサン、水素末端メチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、水素末端メチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体、水素末端フェニル(ジメチルハイドロシロキシ)シロキサン等が挙げられる。
【0050】
一般式(8)で表せる化合物のXが水素の場合に用いる有機溶媒については、ジハイドロジェンシラン、またはα,ω−ジハイドロジェンシロキサンに対して不活性なものであれば任意に選択でき、このうち、非極性溶媒について具体例を示すと、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの炭化水素系溶媒が挙げられる。エーテル系溶媒について具体例を示すと、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランを挙げることができる。その中でもトルエンを溶媒とすることが好ましい。また、極性溶媒とエーテル系溶媒の混合系でもよい。有機溶媒の好ましい使用割合は、一般式(2)で表される構造単位1モルに対して0.01〜10M(mol/l)の範囲であるのがよく、好ましくは、0.1〜1M(mol/l)であるのがよい。
【0051】
また、一般式(8)で表せる化合物のXが水素の場合に用いる触媒については、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、ヒドロキシルアミン、N−メチルヒドロキシルアミン、N、N−ジメチルヒドロキシルアミン、N−エチルヒドロキシルアミン、N、N−ジエチルヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン化合物が挙げられる。これらの中でも、N、N−ジエチルヒドロキシルアミンを用いることが好ましい。
【0052】
次に、一般式(7−2)で表せるシラノール基含有シロキサン化合物とXが塩素原子である一般式(8)の化合物とを縮合反応させる場合、すなわち、一般式(7−2)で表せるシラノール基含有シロキサン化合物と下記一般式(8−4)の化合物
【化22】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、互いに同じか異なるものであってもよい。pは0〜30の数を示す。)とを反応させる場合、一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物1モルに対して0.5〜10モル、好ましくは0.5〜3.0モルの範囲で上記一般式(8−4)で表されるジクロロシラン、またはα,ω−ジクロロシロキサンを触媒存在下、非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒中で脱塩酸縮合させることで、一般式(1-1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。
【0053】
一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−4)で表されるジクロロシラン、またはα、ω−ジクロロシロキサンとの具体的な脱塩酸縮合の反応条件については、例えばジクロロシラン、またはα、ω−ジクロロシロキサンを非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒に溶解し、ジクロロシラン、またはα、ω−ジクロロシロキサンに対して2当量以上のトリエチルアミンを加えた混合液か、あるいは溶媒兼塩基としてアミン系溶媒に溶解した混合液にシラノール基含有籠型シロキサン化合物を非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒に溶解した溶液を窒素等の不活性ガス雰囲気下、室温で滴下し、その後、室温で2時間以上撹拌を行うようにするのがよい。この際、反応時間が短いと、反応が完結しない場合がある。反応終了後、トルエンと水を加え、一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体をトルエンに溶解し、過剰のクロロシラン類、副成する塩酸及び塩酸塩を水層に溶解し除去するようにする。また、有機層を硫酸マグネシウム等の乾燥剤を用いて乾燥し、使用した塩基及び溶媒を減圧濃縮によって除去するようにする。
【0054】
一般式(8−4)について、pが0で表されるジクロロシランの具体例を挙げるとアリルジクロロシラン、アリルヘキシルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、エトキシメチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルプロピルジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、メチルペンチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、フェニルビニルジクロロシラン、6−メチルジクロロシリルー2−ノルボルネン、2−メチルジクロロシリルノルボルネン、3−メタクリロキシプロピルジクロロメチルシラン、ヘプチルメチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、メチル-β-フェネチルジクロロシラン、メチルオクチルジクロロシラン、t-ブチルフェニルジクロロシラン、デシルメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、メチルオクタデシルジクロロシラン等が挙げられる。
【0055】
また、一般式(8−4)について、pが1〜30で表されるα、ω−ジクロロシロキサンの具体例を挙げると、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジクロロシロキサン、1,1,3,3−テトラシクロペンチル−1,3−ジクロロシロキサン、1,1,3,3,−テトライソプロピル−1,3−ジクロロシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジクロロトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−1,7−ジクロロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0056】
一般式(8)で表される化合物のXが塩素の場合に用いる有機溶媒については、ジクロロシラン、またはα、ω−ジクロロシロキサンに対して不活性なものであれば任意に選択でき、このうち、非極性溶媒について具体例を示すと、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの炭化水素系溶媒が挙げられる。エーテル系溶媒について具体例を示すと、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランを挙げることができる。これらの中でも、溶媒和効果による構造制御寄与の観点からエーテル系溶媒が好ましく、その中でもテトラヒドロフランがより好ましい。また、溶媒兼塩基としてアミン系溶媒を単独、または混合溶液として用いてもよい。アミン系溶媒の具体例を示すと、ピリジン、トリエチルアミン、アニリン、 N、N−ジイソプロピルアミンが挙げられる。アミン系溶媒を用いない場合には、トリエチルアミン等の塩基を加える。溶媒の好ましい使用割合は、一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物構造単位1モルに対して0.01〜10M(mol/l)の範囲であるのがよく、好ましくは、0.01〜1M(mol/l)であるのがよい。
【0057】
上記のようにして得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体は次の一般式(1−1)で表すことができる。
1−[Z−(O1/2−R22SiO1/2) a−(R1SiO3/2)n−(O1/2b] m−Z−Y1 (1‐1)
[但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たす。更にnは8〜14の数を示し、mは1〜2000の数を示し、Zは下記一般式(2)
【化23】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Y1は、下記一般式(3) 〜(6)から選ばれるいずれかの1価の基である。
[(R4O)R22SiO1/2]a −[R1SiO3/2]n−[O1/2]− (3)
[R41/2]b −[R1SiO3/2]n−[O1/2−R22SiO1/2]− (4)
(R41/2) − (5)
(但し、R1、R2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであっても良く、R4は水素原子、メチル基、エチル基から選ばれたいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であり、nは8〜14の数を示す。)}で表される構成単位を特徴とする籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。
【0058】
さらに、一般式(1−1)で表される籠構造含有硬化性シリコーン共重合体うち末端のY1におけるR4が水素原子である籠構造含有硬化性シリコーン共重合体、すなわちシラノール末端籠構造含有硬化性シリコーン共重合体と下記一般式(9)
23Si−X (9)
(但し、R2は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R2は互いに同じか異なるものであってもよい。また、Xは水素原子、塩素原子又はアルコキシル基である)で表される化合物とを縮合させることにより、
2−[Z−(O1/2−R22SiO1/2) a−(R1SiO3/2)n−(O1/2b] m−Z−Y2 (1‐2)
[但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たす。更にnは8〜14の数を示し、mは1〜2000の数を示し、Zは下記一般式(2)
【化24】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Y2は、下記一般式(6)で表される1価の基である。
(R23SiO1/2) − (6)
(但し、R2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R2は互いに同じか異なるものであっても良い1価の基である。)}で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体とすることもできる。
【0059】
ここで、一般式(1−1)で表される籠構造含有硬化性シリコーン共重合体うち末端のY1におけるR4がメチル基やエチル基であるもの、すなわちアルコキシル末端籠構造含有硬化性シリコーンに酸または塩基触媒存在下加水分解させ、末端をシラノールに変換させることで、シラノール末端籠構造含有硬化性シリコーン共重合体とすることも可能である。なお、加水分解の方法についてはシラノール基含有籠型シロキサン化合物の製造方法において例に挙げたものを用いることができる。
【0060】
一般式(1−1)で表される籠構造含有硬化性シリコーン共重合体うち末端のY1におけるR4が水素原子である籠構造含有硬化性シリコーン共重合体、すなわちシラノール末端籠構造含有硬化性シリコーン共重合体と下記一般式(9)で表される化合物の縮合反応により得られる籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法においては、以下で説明するように、下記一般式(9)で表される化合物の置換基Xの種類により製造方法が異なる。
【0061】
先ず、一般式(9)で表される化合物のXがアルコキシル基の場合、すなわち下記一般式(9−1)
23Si−OR5 (9−1)
(但し、R2は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R2は互いに同じか異なるものであってもよい。また、R5はメチル基、エチル基又はプロピル基であって、互いに同じか異なるものであってもよい)の場合、一般式(1−1)で表される籠構造含有硬化性シリコーン共重合体うち末端のY1におけるR4が水素原子である籠構造含有硬化性シリコーン共重合体、すなわちシラノール末端籠構造含有硬化性シリコーン共重合体1モルに対して2〜100モルの範囲の上記一般式(9−1)で表されるアルコキシシランを触媒存在下、非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒中で脱アルコール縮合させることで、一般式(1‐2)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。ここで、アルコキシシランの好ましい使用量については、一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体1モルに対して、2〜30モルであるのがよい。なお、脱アルコール縮合の方法については一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法において、一般式(7−2)で表せるシラノール基含有シロキサン化合物と一般式(8−2)で表せるジアルコキシシラン、またはα、ω−ジアルコキシシロキサンを脱アルコール縮合において例に挙げたものを用いることができる。
【0062】
一般式(7−1)で表されるアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−1)で表せるシランジオール、またはα、ω−ジシラノールシロキサンとを脱アルコール縮合させて一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得る場合、及び一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−2)で表せるジアルコキシシラン、またはα、ω−ジアルコキシシロキサンとを脱アルコール縮合させて一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得る場合に限り、一般式(1−1)を取り出さずに反応系中に一般式(9−1)で表されるアルコキシシランを加え、反応させることで、一般式(1‐2)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。
【0063】
一般式(9−1)で表されるアルコキシシランの具体例を挙げると、トリメチルメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、メチルジビニルメトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、3-メタアクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、スチリルジメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、メチルジビニルエトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、3-メタアクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、スチリルジメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、ビニルジメチルプロポキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、フェニルジメチルプロポキシシラン、フェニルプロポキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリビニルプロポキシシラン、メチルジビニルプロポキシシラン、アリルジメチルプロポキシシラン、3-メタアクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、スチリルジメチルプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、ビニルジメチルイソプロポキシシラン、ジメチルイソプロポキシシラン、フェニルジメチルイソプロポキシシラン、フェニルイソプロポキシシラン、トリエチルイソプロポキシシラン、トリビニルイソプロポキシシラン、メチルジビニルイソプロポキシシラン、アリルジメチルイソプロポキシシラン、3-メタアクリロキシプロピルジメチルイソプロポキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルイソプロポキシシラン、スチリルジメチルイソプロポキシシラン等が挙げられる。
【0064】
次に、一般式(9)で表される化合物のXが水素の場合、すなわち下記一般式(9−2)
23Si−H (9−2)
(但し、R2は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R2は互いに同じか異なるものであってもよい。)の場合、一般式(1−1)で表される籠構造含有硬化性シリコーン共重合体うち末端のY1におけるR4が水素原子である籠構造含有硬化性シリコーン共重合体、すなわちシラノール末端籠構造含有硬化性シリコーン共重合体1モルに対して2〜100モルの範囲の上記一般式(9−2)で表されるハイドロジェンシランを触媒存在下、非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒中で脱水素縮合させることで、一般式(1−2)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。ここで、ハイドロジェンシランの好ましい使用量については、一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体1モルに対して、2〜30モルであるのがよい。なお、脱水素縮合の方法については一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法において、一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−3)で表されるジハイドロジェンシラン、またはα,ω−ジハイドロジェンシロキサンを脱水素縮合させる例に挙げたものを用いることができる。
【0065】
一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−3)で表されるジハイドロジェンシラン、またはα,ω−ジハイドロジェンシロキサンとを脱水素縮合させて一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得る場合に限り、一般式(1−1)を取り出さずに反応系中に一般式(9−1)で表されるアルコキシシランを加え、反応させることで、一般式(1‐2)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。
【0066】
一般式(9−2)で表されるハイドロジェンシランの具体例を挙げると、トリメチルシラン、ビニルジメチルシラン、フェニルジメチルシラン、トリエチルシラン、トリビニルシラン、メチルジビニルシラン、アリルジメチルシラン、3-メタアクリロキシプロピルジメチルシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルシラン、スチリルジメチルシラン、ジメチルプロピルシラン、ジメチルイソプロピルシラン、t-ブチルジメチルシラン、ベンジルジメチルシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、ジフェニルビニルシラン、トリフェニルシラン等が挙げられる。
【0067】
次に、一般式(9)で表される化合物のXが塩素の場合、すなわち下記一般式(9−3)
23Si−Cl (9−3)
(但し、R2は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R2は互いに同じか異なるものであってもよい。)の場合、一般式(1−1)で表される籠構造含有硬化性シリコーン共重合体うち末端のY1におけるR4が水素原子である籠構造含有硬化性シリコーン共重合体、すなわちシラノール末端籠構造含有硬化性シリコーン共重合体1モルに対して2〜100モルの範囲の上記一般式(9−2)で表されるクロロシランを触媒存在下、非極性溶媒とエーテル系溶媒のうち1つもしくは両方をあわせた溶媒中で脱水素縮合させることで、一般式(1‐2)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。ここで、クロロシランの好ましい使用量については、一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体1モルに対して、2〜30モルであるのがよい。なお、脱塩酸縮合の方法については一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法において一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−4)で表されるジクロロシラン、またはα,ω−ジクロロシロキサンを脱塩酸縮合させる例に挙げたものを用いることができる。
【0068】
一般式(7−2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物と一般式(8−4)で表されるジクロロシラン、またはα,ω−ジクロロシロキサンとを脱塩酸縮合させて一般式(1−1)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得る場合に限り、一般式(1−1)を取り出さずに反応系中に一般式(9−1)で表されるアルコキシシランを加え、反応させることで、一般式(1‐2)で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることができる。
【0069】
一般式(9−3)で表されるクロロシランの具体例を挙げると、トリメチルクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリビニルクロロシラン、メチルジビニルクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、3-メタアクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、スチリルジメチルクロロシラン、ジメチルプロピルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、トリプロピルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、ジフェニルビニルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等が挙げられる。
【0070】
また、本発明においては、一般式(1)で表せる籠構造含有硬化性シリコーン共重合体にヒドロシリル化触媒又はラジカル開始剤のいずれか一方を配合し、或いはヒドロシリル化触媒とラジカル開始剤の両者を配合して硬化性樹脂組成物を得るようにしてもよい。そして、この硬化性樹脂組成物を熱硬化又は光硬化させて、ヒドロシリル化やラジカル重合することで、硬化物(成形体)を得ることができる。また、ヒドロシリル化触媒やラジカル開始剤に加えて、ケイ素原子上に水素原子を有する化合物や分子中に不飽和基を有する化合物を更に配合して硬化性樹脂組成物を得るようにしてもよい。すなわち、硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る目的や、得られる成形体の物性等を改良する目的から、反応を促進する添加剤としてヒドロシリル化触媒、熱重合開始剤、熱重合促進剤、光重合開始剤、光開始助剤、増感剤等を配合して硬化性樹脂組成物を得るようにすることができる。
【0071】
硬化性樹脂組成物において、一般式(1)で表せる籠構造含有硬化性シリコーン共重合体と共に使用されるケイ素原子上に水素原子を有する化合物は、分子中に少なくとも1つ以上のヒドロシリル化可能なケイ素原子上に水素原子を有しているオリゴマー及びモノマーである。このうち、ケイ素原子上に水素原子を有しているオリゴマーとしては、ポリハイドロジェンシロキサン類、ポリジメチルヒドロシロキシシロキサン類及びその共重合体、末端がジメチルヒドロシロキシで修飾されたシロキサンが挙げられる。また、ケイ素原子上に水素原子を有しているモノマーとしては、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタなどの環状シロキサン類、ジヒドロジシロキサン類、トリヒドロモノシラン類、ジヒドロモノシラン類、モノヒドロモノシラン類、ジメチルシロキシシロキサン類等を例示することができ、これらを2種類以上混合してもよい。
【0072】
また、硬化性樹脂組成物において、一般式(1)で表せる籠構造含有硬化性シリコーン共重合体と共に使用される不飽和基を有する化合物については、構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体である反応性オリゴマーと、低分子量かつ低粘度の反応性モノマーとに大別される。また、不飽和基を1個有する単官能不飽和化合物と2個以上有する多官能不飽和化合物とに大別される。
【0073】
このうち、反応性オリゴマーとしては、ポリビニルシロキサン類、ポリジメチルビニルシロキシシロキサン類、及びその共重合体、末端がジメチルビニルシロキシで修飾されたシロキサン類、エポキシアクリレート、エポキシ化アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニルアクリレート、ポリエン/チオール、シリコーンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルエチルメタクリレート等を例示することができる。これらには、単官能不飽和化合物と多官能不飽和化合物がある。
【0074】
反応性の単官能モノマーとしては、トリエチルビニルシラン、トリフェニルビニルシランなどのビニル置換ケイ素化合物類、シクロヘキセンなどの環状オレフィン類、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソボニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート等を例示することができる。
【0075】
反応性の多官能モノマーとしては、テトラビニルシラン、ジビニルテトラメチルジシロキサンなどのビニル置換ケイ素化合、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルペンタビニルシクロペンタシロキサンなどのビニル置換環状ケイ素化合物、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、ジフェニルアセチレンなどのアセチレン誘導体、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエンなどの環状ポリエン類、ビニルシクロヘキセンなどのビニル置換環状オレフィン、ジビニルベンゼン類、ジエチニルベンゼン類、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、1,3-ジメタクリロキシメチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジ(3-メタクリロキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアクリロキシメチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジ(3-アクリロキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等のアクリレート類を例示することができる。
【0076】
分子中に不飽和基を有する化合物としては、以上に例示したもの以外に、各種反応性オリゴマー、モノマーを用いることができる。また、これらの反応性オリゴマーやモノマーは、それぞれ単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0077】
本発明で使用するケイ素原子上に水素原子を有する化合物と分子中に不飽和基を有する化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
【0078】
上述したように、本発明の硬化性樹脂組成物は、一般式(1)で表せる籠構造含有硬化性シリコーン共重合体にヒドロシリル化触媒やラジカル開始剤のほか、必要に応じてケイ素原子上に水素原子を含有する化合物や不飽和基を有する化合物を配合させて得られる。そして、本発明の成形体は、この硬化性樹脂組成物を成形硬化して得られる。すなわち、硬化性樹脂組成物をヒドロシリル化硬化及びラジカル重合することにより硬化物を得ることができる。
【0079】
ヒドロシリル化触媒を配合する場合、その添加量は硬化性樹脂の重量に対し金属原子として1〜1000ppm、より好ましくは20〜500ppmの範囲で添加するのがよい。また、ラジカル開始剤として光重合開始剤又は熱重合開始剤を配合する場合、その添加量は硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲とするのがよく、0.1〜5重量部の範囲とするのがより好ましい。この添加量が0.1重量部に満たないと硬化が不十分となり、得られる成形体の強度や剛性が低くなる。一方、10重量部を超えると成形体の着色等の問題が生じるおそれがある。またヒドロシリル化触媒とラジカル開始剤を単独で使用してもよく、2種類以上併用して用いることもできる。
【0080】
ヒドロシリル化触媒としては、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンとの錯体、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体、ジカルボニルジクロロ白金及びパラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。これらの中で、触媒活性の点から、塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体が好ましい。また、これらを単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0081】
硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物とする場合に用いられる光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系、アシルホスフィンオキサイド系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、チオキサンソン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、カンファーキノン、ベンジル、アンスラキノン、ミヒラーケトン等を例示することができる。また、光重合開始剤と組み合わせて効果を発揮する光開始助剤や増感剤を併用することもできる。
【0082】
上記目的で使用される熱重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシジカーボネート系、パーオキシエステル系など各種の有機過酸化物を好適に使用することができる。具体的にはシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1―ビス(t-ヘキサパーオキシ)シクロヘキシサノン、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、t-ブチルパオキシー2-エチルヘキサノエート等を例示する事ができるが、これに何ら制限されるものではない。また、これら熱重合開始剤は単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0083】
硬化性樹脂組成物には、本発明の目的から外れない範囲で各種添加剤を添加することができる。各種添加剤として有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤、樹脂成分等を例示することができる。
【0084】
本発明の一般式(1)で表せる籠構造含有硬化性シリコーン共重合体からなる成形体は、ヒドロシリル化触媒、ラジカル重合開始剤のいずれか、又は両方を含む硬化性樹脂組成物を加熱又は光照射によって硬化させることで製造することができる。加熱によって硬化物(成形体)を製造する場合、その成形温度は、熱重合開始剤と促進剤の選択により、室温から200℃前後までの広い範囲から選択することができる。この場合、金型内やスチールベルト上で重合硬化させることで所望の形状の硬化物(成形体)を得ることができる。より具体的には、射出成形、押出成形、圧縮成形、トランスファー成形、カレンダー成形、キャスト(注型)成形といった一般的な成形加工方法の全てが適用可能である。
【0085】
また、光照射によって硬化物(成形体)を製造する場合、波長100〜400nmの紫外線や波長400〜700nmの可視光線を照射することで、成形体を得ることができる。用いる光の波長は特に制限されるものではないが、特に波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。紫外線発生源として用いられるランプとしては、低圧水銀ランプ(出力:0.4〜4W/cm)、高圧水銀ランプ(40〜160W/cm)、超高圧水銀ランプ(173〜435W/cm)、メタルハライドランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜120W/cm)、無電極放電ランプ(80〜120W/cm)等を例示することができる。これらの紫外線ランプは、各々その分光分布に特徴があるため、使用する光開始剤の種類に応じて選定される。
【0086】
光照射によって硬化物(成形体)を得る方法としては、例えば任意のキャビティ形状を有し、石英ガラス等の透明素材で構成された金型内に注入し、上記の紫外線ランプで紫外線を照射して重合硬化を行い、金型から脱型させることで所望の形状の成形体を製造する方法や、金型を用いない場合には、例えば移動するスチールベルト上にドクターブレードやロール状のコーターを用いて本発明の硬化性樹脂組成物を塗布し、上記の紫外線ランプで重合硬化させることで、シート状の成形体を製造する方法等を例示することができる。更に本発明では加熱と光照射による成型体を得る方法を組み合わせて用いてもよい。
【発明の効果】
【0087】
本発明の籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法を用いれば、任意に分子量を制御できて目的に応じた材料設計が可能になる。すなわち、アルコキシル基またはシラノール基を含有した籠型シルセスキオキサン化合物を縮合させることで主鎖に籠構造取り込んだ共重合体を得ることができる。得られた共重合体を含む硬化性樹脂組成物からは、透明性と耐熱性に優れた硬化物を得ることができ、また、得られた成形体は、軽量、かつ高衝撃強度の透明部材であり、例えば、レンズ、光ディスク、光ファイバー及びフラットパネルディスプレイ基板等の光学用途や各種輸送機械や住宅等の窓材などのガラス代替材料としてもその利用範囲は広範となり、産業上の利用価値も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
以下、本発明の実施例を示す。
なお、以下で用いる略称の意味は次のとおりである。すなわち、Me:メチル基、Et:エチル基、Ph:フェニル基を意味する。
【0089】
参考例1:[アルコキシル基含有籠型シロキサン化合物A [(EtO)MeRSiO1/2]1 − [PhSiO3/2]8 − [O1/2Et]1 (7−1A)の合成(但しRは3-メタクリロキシプロピル基である)]
以下で示す合成例は特公昭40−15989号公報に記載された方法を使用したものであり、構造式 (C6 H5 SiO3/2 )8 を有する籠型オクタフェニルシルセスキオキサンの製造例である。反応容器にトルエン2500mlとフェニルトリクロロシラン525gを装入し、0℃に冷却した。水を適量滴下し、加水分解が完了するまで撹拌した。加水分解生成物を水洗後市販の30%ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド溶液83mlを加え、この混合物を4時間還流温度に加熱した。次いで全体を冷却し、約96時間放置した。この時間経過後得られたスラリーを再び24時間還流温度に加熱し次いで冷却し濾過を行い、白色の粉末としてオクタフェニルシルセスキオキサン375gを得た。
【0090】
次いで、ディンスターク、及び冷却管を備えた反応容器にトルエン1000ml、水酸化テトラメチルアンモニウム1.23g(13.5mmol、25%のメタノール溶液として4.9g)、オクタフェニルシルセスキオキサン203g(197mmol)、及び3-メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン51.2g(197mmol)を入れ、80℃で1時間加熱しメタノールを留去し、さらに100℃に加熱し2時間後、室温に戻し反応を終了とした。反応溶液はオクタフェニルシルセスキオキサンの白色粉末が消え、完全に反応が進行したと判断できた。反応溶液を10%クエン酸水溶液で中和した後、水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することでアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物Aを無色透明の粘性液体を197g、収率78%で得た。得られたアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物AはGPC、及びNMR測定から下記式(7−1A)で表されることが確認された。
[(EtO)MeRSiO1/2]1 − [PhSiO3/2]8 − [O1/2Et]1 (7−1A)
(但しRは3-メタクリロキシプロピル基である)
【0091】
参考例2:[シラノール基含有籠型シロキサン化合物A [(HO)MeRSiO1/2]1 − [PhSiO3/2]8 − [O1/2H]1 (7−2A)の合成(但しRは3-メタクリロキシプロピル基である)]
滴下ロートを備えた反応容器に2-プロパノール500ml、トルエン350ml、及び上記参考例1で得たアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物(7−1A) 61.5g(47.5mmol)を装入した。反応溶液に2%塩酸1.4g(HCl:1mmol,H2O:105mmol)を室温で滴下し、室温で24時間撹拌した。反応溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和、水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することでシラノール基含有籠型シロキサン化合物Aを無色透明の粘性液体として53.5g、収率91%で得た。得られたシラノール基含有籠型シロキサン化合物AはGPC、及びNMR測定から下記式(7−2A)で表されることが確認された。
[(HO)MeRSiO1/2]1 − [PhSiO3/2]8 − [O1/2H]1 (7−2A)
(但しRは3-メタクリロキシプロピル基である)
【0092】
参考例3:[アルコキシル基含有籠型シロキサン化合物B [(EtO)Me2SiO1/2]1 − [H2C=CH-SiO3/2]10 − [O1/2Et]1 (7−1B)の合成]
本合成例は先に出願した特開2004-143449号公報に記載された方法を参考に使用したものであり、構造式 (H2C=CH-SiO3/2 )n を有する籠型ポリビニルシルセスキオキサンの製造例である。
反応容器に、トルエン750ml、2-プロパノール425ml、及び5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH水溶液)186gを装入した。トルエン125mlとビニルトリメトキシシラン251gの溶液を室温で反応容器へ撹拌しながら、3時間かけ滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌後に攪拌を停止して1日静置した。反応溶液を10%クエン酸水溶液で中和した後、飽和食塩水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水、濃縮することでビニルトリメトキシシランの加水分解重縮合物を103g得た。
【0093】
次に、ディンスターク及び冷却管を備えた反応容器に先得られたビニルトリメトキシシランの加水分解重縮合物1100gとトルエン2000mlと5%TMAH水溶液17.2gとを入れ120℃で水を留去しながら還流加熱を3時間行った。室温に冷却し、10%クエン酸水溶液で中和にした後、飽和食塩水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水、濃縮することで籠型ポリビニルシルセスキオキサンを97g得た。得られた籠型ポリビニルシルセスキオキサンは、GPCおよび液体クロマトグラフィ大気圧イオン化分析計(LC/APCI-MS)による質量分析より構造式(H2C=CH-SiO3/2 )nのn=8,10,12,14を主に含み、平均してn=10の籠型ビニルシロキサン混合物であることが確認された。
【0094】
参考例1と同様な操作をトルエン250ml、水酸化テトラメチルアンモニウム390mg(4.3 mmol、25%のメタノール溶液として1.55g)、先に得られた籠型ビニルシロキサン混合物(H2C=CH-SiO3/2 )n(但しn=8,10,12,14を主に含み平均してn=10)50.0g(n=10として63mmol)、及びジメチルジメトキシシラン9.4g(63mmol)の仕込み量に変更して行い、アルコキシル基含有籠型シロキサン化合物Bを無色透明の粘性液体として50.1g、回収率84%で得た。アルコキシル基含有籠型シロキサン化合物BはGPC、及びNMR測定から下記式(7−1B)で表されることが確認された。
[(EtO)Me2SiO1/2]1 − [H2C=CH-SiO3/2]10 − [O1/2Et]1 (7−1B)
【0095】
参考例4:[シラノール基含有籠型シロキサン化合物B [(HO)Me2SiO1/2]1 − [H2C=CH-SiO3/2]10 − [O1/2H]1 (7−2B)の合成]
滴下ロートを備えた反応容器に2-プロパノール200ml、トルエン170ml、及び参考例3で得たアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物B 25.0g(27mmol)を装入し、反応溶液に水酸化テトラメチルアンモニウム6.5g(71.5mmol、25%のメタノール溶液として26g)、イオン交換水1.5g(83mmol)と2-プロパノール150mlの混合溶液を滴下し、室温で3時間撹拌した。反応溶液にトルエン20mlを加え、撹拌し、続けて10%クエン酸水溶液で中和した後、飽和食塩水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水、濃縮することでシラノール基含有籠型シロキサン化合物Bを21.2g、収率92%で得た。得られたシラノール基含有籠型シロキサン化合物BはGPC、及びNMR測定から下記式(7−2B)で表されることが確認された。
[(HO)Me2SiO1/2]1 − [H2C=CH-SiO3/2]10 − [O1/2H]1 (7−2B)
【実施例1】
【0096】
窒素雰囲気下、滴下ロート及び冷却管を備えた反応容器に、トルエン15ml、上記参考例1で得られたアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物A(式7−1A)9.0g(7mmol)、及び水酸化テトラメチルアンモニウム4mg(0.044mmol、2.5%のメタノール溶液として153mg)を装入した。反応溶液を70℃で撹拌しながら、滴下ロートよりシラノール末端ポリジメチルシロキサン(DMS-S12:Mn(数平均分子量)=400−700:アズマックス株式会社)4.6gを3時間かけて滴下した。更に3時間撹拌後、室温まで冷却した。反応溶液を10%クエン酸水溶液で中和した後、水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Aを無色透明の粘性液体として12.5g得た。得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体AのGPCを測定した結果、重量平均分子量(Mw)=96768であった。また1H-NMRよりフェニル基、メチル基、エトキシ基、及び3−メタクリロキシプロピル基に帰属されるシグナルが観測された。よって、上記で得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Aは、一般式(1-1)においてR1がフェニル基であり、R2がメチル基と3−メタクリロキシプロピル基であってその比率がメチル基/3−メタクリロキシプロピル基=1/1であり、a =1、b=1、n=8、m=52.5であると確認された。このうち、Zは上記一般式(2)においてR3がメチル基及びp=7.2であり、また、Y1は一般式(3)または一般式(4)または一般式(5)のR1がフェニル基であり、R2がメチル基と3−メタクリロキシプロピル基であってその比率がメチル基/3−メタクリロキシプロピル基=1/1であり、a =1、b=1、n=8であり、R4がエチル基と水素であった。
【実施例2】
【0097】
窒素雰囲気下、滴下ロート及び冷却管を備えた反応容器に、トルエン15ml、ジメチルジエトキシシラン1.2g(8mmol)、水酸化テトラメチルアンモニウム4mg(0.044mmol、2.5%のメタノール溶液として153mg)を装入した。反応溶液を70℃で撹拌しながら、滴下ロートより上記参考例2で得られたシラノール基含有籠型シロキサン化合物A(式7−2A)8.6g(7mmol)をトルエン5mlに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。更に3時間撹拌後、室温まで冷却した。反応溶液を10%クエン酸水溶液で中和した後、水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Bを無色透明の粘性液体として9.0g得た。得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体BのGPCを測定した結果、重量平均分子量(Mw)=16708であった。また1H-NMRよりフェニル基、メチル基、エトキシ基、及び3−メタクリロキシプロピル基に帰属されるシグナルが観測された。よって、得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Bは、一般式(1-1)においてR1がフェニル基であり、R2がメチル基と3−メタクリロキシプロピル基であってその比率がメチル基/3−メタクリロキシプロピル基=1/1であり、a =1、b=1、n=8、m=12.7であると確認された。このうち、Zは一般式(2)においてR3がメチル基及びp=1.1であり、Y1は一般式(3)または一般式(4)または一般式(5)のR1がフェニル基であり、R2がメチル基と3−メタクリロキシプロピル基であってその比率がメチル基/3−メタクリロキシプロピル基=1/1であり、a =1、b=1、n=8であり、R4がエチル基と水素であった。
【実施例3】
【0098】
窒素雰囲気下、滴下ロート及び冷却管を備えた反応容器に、トルエン15ml、水素末端ポリジメチルシロキサン(DMS-H03:Mn=400−500:アズマックス株式会社)2.3g、N,N−ジエチルヒドロキシアミン364mg(4.1mmol)を装入した。反応溶液を撹拌しながら、滴下ロートより上記参考例2で得られたシラノール基含有籠型シロキサン化合物A(式7−2A)6.3g(5mmol)をトルエン5mlに溶解した溶液を1時間かけて滴下し、更に50℃で3時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、反応溶液を10%クエン酸水溶液で中和した後、水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Bを無色透明の粘性液体として8.1g得た。得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体CのGPCを測定した結果、重量平均分子量(Mw)=45213であった。また1H-NMRよりフェニル基、メチル基、及び3−メタクリロキシプロピル基に帰属されるシグナルが観測された。よって、得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Cは、一般式(1-1)においてR1がフェニル基であり、R2がメチル基と3−メタクリロキシプロピル基であってその比率がメチル基/3−メタクリロキシプロピル基=1/1であり、a =1、b=1、n=8、m=26.8であることが確認された。このうち、Zは一般式(2)においてR3がメチル基及びp=6.1であり、Y1は一般式(3)または一般式(4)または一般式(5)のR1がフェニル基であり、R2がメチル基と3−メタクリロキシプロピル基であってその比率がメチル基/3−メタクリロキシプロピル基=1/1であり、a =1、b=1、n=8であり、R4が水素であった。
【実施例4】
【0099】
窒素雰囲気下、滴下ロート及び冷却管を備えた反応容器に、メチルジクロロシラン1.96g、(17mmol)ピリジン16mlを装入した。反応溶液を撹拌しながら、滴下ロートより上記参考例2で得られたシラノール基含有籠型シロキサン化合物A(式7−2A)10.5g(8.5mmol)をピリジン77mLに溶解した溶液を1時間かけて滴下し、更に50℃で3時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、トルエン100ml及び水50mlを加え、有機層と水層を分離した。有機層抽出後、これを蒸留水で3回、及び飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Dを無色透明の粘性液体として10.4g得た。得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体DのGPCを測定した結果、重量平均分子量(Mw)=19228であった。また1H-NMRよりフェニル基、メチル基、及び3−メタクリロキシプロピル基に帰属されるシグナルが観測された。よって、得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Dは、一般式(1-1)においてR1がフェニル基であり、R2がメチル基と3−メタクリロキシプロピル基であってその比率がメチル基/3−メタクリロキシプロピル基=1/1であり、a =1、b=1、n=8、m=13.9であることが確認された。このうち、Zは一般式(2)においてR3がメチル基と水素であってその比率がメチル基/水素=1/1であり、また、p=2であり、Y1は一般式(3)または一般式(4)または一般式(5)のR1がフェニル基であり、R2がメチル基と3−メタクリロキシプロピル基であってその比率がメチル基/3−メタクリロキシプロピル基=1/1であり、a =1、b=1、n=8であり、R4が水素であった。
【実施例5】
【0100】
窒素雰囲気下、滴下ロート及び冷却管を備えた反応容器に、実施例4で得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Dを5.0gおよびピリジン16mlを装入した。反応溶液を撹拌しながら、滴下ロートよりジメチルビニルクロロシラン5.0g(42mmol)のTHF(20ml)溶液を室温で30分かけて滴下し、2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン30mL及び蒸留水30mLを加え、有機層と水層を分離した。有機層抽出後、これを蒸留水で3回、及び飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Eを無色透明の粘性液体として4.8g得た。得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体EのGPCを測定した結果、重量平均分子量(Mw)=19538であった。また1H-NMRよりフェニル基、メチル基、及び3−メタクリロキシプロピル基に帰属されるシグナルが観測された。よって、得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Eは、一般式(1-2)においてR1がフェニル基であり、R2がメチル基と3−メタクリロキシプロピル基であってその比率がメチル基/3−メタクリロキシプロピル基=1/1であり、a =1、b=1、n=8、m=139であることが確認された。このうち、Zは一般式(2)においてR3がメチル基及びp=2であり、Y2は一般式(6)のR2がメチル基とビニル基であってその比率がメチル基/ビニル基=2/1であった。
【実施例6】
【0101】
窒素雰囲気下、滴下ロート及び冷却管を備えた反応容器に、トルエン15ml、上記参考例3で得られたアルコキシル基含有籠型シロキサン化合物B(式7−1B)9.4g(10mmol)、及び水酸化テトラメチルアンモニウム4mg(0.044mmol、2.5%のメタノール溶液として153mg)を装入した。反応溶液を70℃で撹拌しながら、滴下ロートよりシラノール末端ポリジメチルシロキサン(DMS-S12:Mn(数平均分子量)=400−700:アズマックス株式会社)4.6gを3時間かけて滴下した。更に3時間撹拌後、室温まで冷却した。反応溶液を10%クエン酸水溶液で中和した後、水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Fを無色透明の粘性液体として12.3g得た。得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体FのGPCを測定した結果、重量平均分子量(Mw)=45634であった。また1H-NMRよりメチル基、エトキシ基、及びビニル基に帰属されるシグナルが観測された。よって、得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Fは、一般式(1-1)においてR1がビニル基であり、R2がメチル基であり、a =1、b=1、n=10、m=34.5であることが確認された。このうち、Zは一般式(2)においてR3がメチル基、及びp=7.2であり、Y1は一般式(3)または一般式(4)または一般式(5)のR1がビニル基であり、R2がメチル基、a=1、b=1、n=8であり、R4がエチル基と水素であった。
【実施例7】
【0102】
窒素雰囲気下、滴下ロート及び冷却管を備えた反応容器に、ジメチルジクロロシラン2.2g、(17mmol)ピリジン16mlを装入した。反応溶液を撹拌しながら、滴下ロートより上記参考例4で得られたシラノール基含有籠型シロキサン化合物B(式7−2B)7.5g(8.5mmol)をピリジン77mLに溶解した溶液を1時間かけて滴下し、更に50℃で3時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、新たに滴下ロートよりトリメチルクロロシラン4.3g(40mmol)のピリジン(20ml)溶液を室温で30分かけて滴下し、2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン100mL及び蒸留水30mLを加え、有機層と水層を分離した。有機層抽出後、これを蒸留水で3回、及び飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Gを無色透明の粘性液体として7.1g得た。得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体GのGPCを測定した結果、重量平均分子量(Mw)=36098であった。また1H-NMRよりビニル基、メチル基に帰属されるシグナルが観測された。よって、得られた籠構造含有硬化性シリコーン共重合体Gは、一般式(1-2)においてR1がビニル基であり、R2がメチル基であり、a =1、b=1、n=10、m=35であることが確認された。このうち、Zは一般式(2)においてR3がメチル基、及びp=2であり、Y2は一般式(6)のR1がメチル基であった。
【実施例8】
【0103】
上記実施例1で得た籠構造含有硬化性シリコーン共重合体A:100重量部、及び光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガキュア184):1.0重量部を混合し、透明な硬化性樹脂組成物を得た。
【0104】
次に、ロールコーターを用いて、上記で得られた硬化性樹脂組成物を厚さ0.4mmになるようにキャスト(流延)し、30W/cmの高圧水銀ランプを用いて、2000mJ/cm2の積算露光量で硬化させ、所定の厚みとしたシート状の籠構造含有硬化性シリコーン樹脂成形体を得た。
【実施例9】
【0105】
上記実施例2で得た籠構造含有硬化性シリコーン共重合体B:100重量部、及び熱重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製パークミルD):5.0重量部を混合し、透明な硬化性樹脂組成物を得た。
【0106】
次に、ロールコーターを用いて、上記で得られた硬化性樹脂組成物を厚さ0.4mmになるようにキャスト(流延)し、30W/cmの高圧水銀ランプを用い、2000mJ/cm2の積算露光量で硬化、次いで140℃で1時間、及び180℃で1時間加熱して、所定の厚みとしたシート状の籠構造含有硬化性シリコーン樹脂成形体を得た。
【実施例10】
【0107】
上記実施例3で得た籠構造含有硬化性シリコーン共重合体C:100重量部、1,3-ジ(3-メタクリロキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン:50重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガキュア184):1.5重量部、及び熱重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製パークミルD):5.0重量部を混合し、透明な硬化性樹脂組成物を得た。
【0108】
次に、ロールコーターを用いて、上記で得られた硬化性樹脂組成物を厚さ0.4mmになるようにキャスト(流延)し、30W/cmの高圧水銀ランプを用い、2000mJ/cm2の積算露光量で硬化、次いで140℃で1時間、180℃で1時間加熱して、所定の厚みとしたシート状の籠構造含有硬化性シリコーン樹脂成形体を得た。
【実施例11】
【0109】
上記実施例4で得た籠構造含有硬化性シリコーン共重合体D:100重量部、1,3,5,7-テトラメチル‐1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン:10重量部、白金-ビニルシロキサン錯体(アヅマックス株式会社製SIP6830.3)0.5重量部、及び光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガキュア184):1.5重量部を混合し、透明な硬化性樹脂組成物を得た。
【0110】
次に、ロールコーターを用いて、上記で得られた硬化性樹脂組成物を厚さ0.4mmになるようにキャスト(流延)し、80℃で1時間加熱し、次いで30W/cmの高圧水銀ランプを用い、2000mJ/cm2の積算露光量で硬化して、所定の厚みとしたシート状の籠構造含有硬化性シリコーン樹脂成形体を得た。
【実施例12】
【0111】
上記実施例5で得た籠構造含有硬化性シリコーン共重合体E:100重量部、1,3,5,7-テトラメチル‐1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン:20重量部、白金-ビニルシロキサン錯体(アヅマックス株式会社製SIP6830.3)0.5重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガキュア184):1.5重量部、及び熱重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製パークミルD):5.0重量部を混合し、透明な硬化性樹脂組成物を得た。
【0112】
次に、ロールコーターを用いて、上記で得られた硬化性樹脂組成物を厚さ0.4mmになるようにキャスト(流延)し、30W/cmの高圧水銀ランプを用い、2000mJ/cm2の積算露光量で硬化し、次いで100℃で1時間、140℃で1時間、及び180℃で1時間加熱して、所定の厚みとしたシート状の籠構造含有硬化性シリコーン樹脂成形体を得た。
【実施例13】
【0113】
上記実施例6で得た籠構造含有硬化性シリコーン共重合体F:100重量部、及び熱重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製パークミルD):10重量部を混合し、透明な硬化性樹脂組成物を得た。
【0114】
次に、ロールコーターを用いて、上記で得られた硬化性樹脂組成物を厚さ0.4mmになるようにキャスト(流延)し、100℃で1時間、140℃で1時間、及び180℃で1時間加熱して、所定の厚みとしたシート状の籠構造含有硬化性シリコーン樹脂成形体を得た。
【実施例14】
【0115】
上記実施例7で得た籠構造含有硬化性シリコーン共重合体G:100重量部、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン:160重量部、及び白金-ビニルシロキサン錯体(アヅマックス株式会社製SIP6830.3)1.5重量部を混合し、透明な硬化性樹脂組成物を得た。
【0116】
次に、ロールコーターを用いて、上記で得られた硬化性樹脂組成物を厚さ0.4mmになるようにキャスト(流延)し、100℃で1時間、140℃で1時間、及び180℃で1時間加熱して、所定の厚みとしたシート状の籠構造含有硬化性シリコーン樹脂成形体を得た。
【実施例15】
【0117】
上記実施例7で得た籠構造含有硬化性シリコーン共重合体G:100重量部、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン:100重量部、白金-ビニルシロキサン錯体(アヅマックス株式会社製SIP6830.3)1.0重量部、及び熱重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製パークミルD):5.0重量部を混合し、透明な硬化性樹脂組成物を得た。
【0118】
次に、ロールコーターを用いて、上記で得られた硬化性樹脂組成物を厚さ0.4mmになるようにキャスト(流延)し、80℃で1時間加熱し、100℃で1時間、140℃で1時間、及び180℃で1時間加熱して、所定の厚みとしたシート状の籠構造含有硬化性シリコーン樹脂成形体を得た。
【0119】
[比較例1]
ジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP-A)100重量部、及び光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガキュア184):2.0重量部を混合し、透明な硬化性樹脂組成物を得た。
【0120】
次に、ロールコーターを用いて、上記で得られた硬化性樹脂組成物を厚さ0.4mmになるようにキャスト(流延)し、30W/cmの高圧水銀ランプを用い、2000mJ/cm2の積算露光量で硬化させ、所定の厚みとしたシート状の成形体を得た。
【0121】
[耐熱性試験]
上記実施例8〜15及び比較例1から得られた各硬化物の物性値と耐熱試験(230℃で3時間加熱)後の400nm透過率を分光光度計で測定した。結果を表1に示す。なお、弾性率、破断点伸度についてはJIS K 7127記載の引張試験条件(形状 100 x 25 x x0.4 mm、チャック間距離50mm、速度5mm/min)に準拠して測定し、平均値(n=5)で評価した。
【0122】
【表1】

【0123】
表1から明らかなように、実施例8〜15で得られた硬化物は比較例1の硬化物に比べて、いずれも引張弾性率が低く、破断点伸度が高いことから柔軟性に優れる硬化物が得られることが分かる。また、透過率についても実施例8〜15で得られた硬化物は比較例より優れており、特に耐熱試験後の透過率が比較例1の硬化物に比べて優れた結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
Y−[Z−(O1/2−R22SiO1/2) a−(R1SiO3/2)n−(O1/2b] m−Z−Y (1)
[但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たし、nは8〜14の数を示し、mは1〜2000の数を示す。更に、Zは下記一般式(2)
【化1】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Yは下記一般式(3)〜(5)から選ばれるいずれかの1価の基である。
[(R4O)R22SiO1/2]a −[R1SiO3/2]n−[O1/2]− (3)
[R41/2]b −[R1SiO3/2]n−[O1/2−R22SiO1/2]− (4)
(R41/2) − (5)
(R23SiO1/2) − (6)
(但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよく、R4は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれたいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であり、nは8〜14の数を示す。)}で表される構成単位を有することを特徴とする籠構造含有硬化性シリコーン共重合体。
【請求項2】
下記一般式(7)
[(R4O)R22SiO1/2]a −[R1SiO3/2]n−[O1/24] (7)
(但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基から選ばれ、R4は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれ、R1、R2又はR4において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たす。更にnは8〜14の整数である。)で表されるアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シロキサン化合物と、下記一般式(8)
【化2】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、Xは水酸基、水素原子、塩素原子又はアルコキシル基であって、Xは互いに同じか異なるものであってもよく、更にpは0〜30の数を示す。)で表される化合物とを縮合反応させ、又は縮合反応させて得られた反応物に対して更に下記一般式(9)
23Si−X (9)
(但し、R2は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R2は互いに同じか異なるものであってもよい。また、Xは水酸基、水素原子、塩素原子又はアルコキシル基である)で表される化合物を縮合させることにより、下記一般式(1)
Y−[Z−(O1/2−R22SiO1/2) a−(R1SiO3/2)n−(O1/2b] m−Z−Y (1)
{但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR1のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって1≦ a + b ≦4の関係を満たし、nは8〜14の数を示し、mは1〜2000の数を示す。更に、Zは下記一般式(2)
【化3】

(但し、R3は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R3は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Yは下記一般式(3)〜(6)から選ばれるいずれかの1価の基である。
[(R4O)R22SiO1/2]a −[R1SiO3/2]n−[O1/2]− (3)
[R41/2]b −[R1SiO3/2]n−[O1/2−R22SiO1/2]− (4)
(R41/2) − (5)
(R23SiO1/2) − (6)
(但し、R1及びR2はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R1又はR2において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよく、R4は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれ、a及びbは0〜3の数であり、nは8〜14の数を示す。)]で表される構成単位を有する籠構造含有硬化性シリコーン共重合体を得ることを特徴とする籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法。
【請求項3】
一般式(7)で表されるアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物1モルに対して0.5〜10モルの範囲の一般式(8)で表される化合物を縮合反応させることを特徴とする請求項2記載の籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法。
【請求項4】
一般式(7)で表されるアルコキシル基またはシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物1モルに対して、0.5〜10モルの範囲の一般式(8)で表される化合物及び2〜100モルの範囲の一般式(9)で表される化合物を縮合反応させることを特徴とする請求項2記載の籠構造含有硬化性シリコーン共重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の籠構造含有硬化性シリコーン共重合体に、ヒドロシリル化触媒又はラジカル開始剤のいずれか一方または両方を配合してなる硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのケイ素原子上に水素原子を有するヒドロシリル化可能な化合物、又は分子中に不飽和基を有する化合物のいずれか一方または両方を更に配合してなる請求項5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の硬化性樹脂組成物を成形硬化して得られる成形体。

【公開番号】特開2009−227863(P2009−227863A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76618(P2008−76618)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】