説明

米加工素材およびその製造法

【課題】本発明は、高アミロース米に付加価値をつけるとともに、低コストで簡単に得られ、特徴的な物性を持つ米加工素材を提供することを目的とする。
【解決手段】高アミロース米に1.5倍量を超える水を添加して加熱処理し、得られる糊化物を機械的撹拌処理して得られる米加工素材およびその製造法;前記の米加工素材を原料とする、菓子、主食の代替食品、副食、高齢者用食品、介護用、低GI食品またはダイエット食品などの加工食品;前記の米加工素材を加工食品の原料として使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米加工素材およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国で一般に栽培されてきた米(もち米以外)のアミロース含量は15〜20%であり、中間米と呼ばれる。その中で「コシヒカリ」は最もアミロース含量が低い部類に属する。これに対し、アミロース含量が一般的に25%以上の米は高アミロース米と呼ばれる。
【0003】
高アミロース米は、さらさらとした食感からピラフ、リゾット、おかゆ、ドライカレーなどに利用されている。高アミロース米には多収性の品種が多く、生産コスト削減ができるため、飼料として使われることが多い。しかし高アミロース米は冷えると硬くなるため、一般の飯米には適さない(例えば、特許文献1)。そのため食品への利用は、中間米、低アミロース米と比較するとごく限られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−135849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高アミロース米に付加価値をつけるとともに、低コストで簡単に得られ、特徴的な物性を持つ米加工素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の発明を提供する。
〔1〕高アミロース米に1.5倍量を超える水を添加して加熱処理し、得られる糊化物を機械的撹拌処理して得られる米加工素材。
〔2〕加熱処理後に冷却処理を行う、上記〔1〕に記載の米加工素材。
〔3〕複素弾性率(G*)が700Pa以上である上記〔1〕または〔2〕に記載の米加工素材。
〔4〕粘性/弾性の比率(tanδ)が0.3以下である上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の米加工素材。
〔5〕機械的撹拌処理後に再加熱処理して得られる、上記〔1〕〜〔4〕に記載の米加工素材。
〔6〕高アミロース米に1.5倍量を超える水を添加して加熱処理し、得られる糊化物を機械的撹拌処理する、米加工素材の製造法。
〔7〕加熱処理後に冷却処理を行う、上記〔6〕に記載の米加工素材の製造法。
〔8〕機械的撹拌処理後に再加熱処理を行う、上記〔6〕または〔7〕に記載の米加工素材の製造法。
〔9〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の米加工素材を原料とする加工食品。
〔10〕菓子、主食の代替食品または副食である上記〔9〕に記載の加工食品。
〔11〕高齢者用食品、介護用食品、低GI食品またはダイエット食品である上記〔9〕または〔10〕に記載の加工食品。
〔12〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の米加工素材を加工食品の原料として使用する方法。
〔13〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の米加工素材を再加熱処理する、米加工素材の食感および/または硬さ並びに質感を改良する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な硬さおよび質感を示し、保存後にも良好な硬さおよび質感が維持される米加工素材が提供される。本発明の米加工素材は、菓子類、主食の代替食品をはじめとする各種の加工食品の原料として有用であり、加工食品の食感、テクスチャーの改良を図ることができる。更に、様々な味付けをした副食などの形態で、高齢者用食品、介護食、低GI食品、ダイエット食品等の用途にアピールした加工食品としても応用できる。本発明の米加工素材を用いた加工食品は、その良好な硬さおよび質感を利用して、対象者を絞った加工食品(例えば、高齢者用食品、介護食、離乳食など)の原料として利用することもできる。本発明の米加工用素材は多収性の高アミロース米を原料としているので、低コストで製造することができ、それだけでなく、従来食品としての価値が中間米より低いとされていた高アミロース米に付加価値をつけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例1および比較例1の各米加工素材の硬さの総合的な評価を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1および比較例1の各米加工素材の質感の評価を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例2および3の各米加工素材の硬さの総合的な評価を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2および3の各米加工素材の質感の評価を示すグラフである。
【図5】図5は、動的粘弾性の測定機器の原理を示す模式図である。
【図6】図6は、モミロマンを用いて得られた本発明の米加工素材の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の米加工素材は、高アミロース米をその1.5倍量を超える水とともに加熱して得られる糊化物を機械的撹拌処理して得られる。本発明の米加工素材は、ペーストからゲル状に相転移をした半固形物の性状を示している(例えば、図6参照)。
【0010】
高アミロース米とは、アミロース含量が高い米を指す。アミロース含量とは、デンプンに占めるアミロースの含量を意味し、高アミロース米のアミロース含量は通常25%以上であるが、アミロース含量は天候等により多少変動する。高アミロース米の品種は、ジャポニカ種およびインディカ種のいずれでもよく、例えばモミロマン、夢十色、ホシユタカ、ホシニシキ、ミレニシキ、中国134号、越のかおり、ミズホチカラなどが上げられ、モミロマン、夢十色が好ましい。高アミロース米は、精米の程度、品種などの異なる2種以上の混合物であってもよい。
【0011】
本発明においてはまず、高アミロース米の加熱処理を行う。原料である高アミロース米の精米の程度には特に制限はなく、玄米、分搗き米、白米の何れであってもよい。なお、米粉であってもよいが、製粉処理のコストや手間を省くためには米粉以外の形態であることが好ましい。
【0012】
加熱処理の際に用いる水の量は、高アミロース米のアミロース含量に依存するが、一例としてモミロマン(アミロース含量28%)の場合では、高アミロース米の重量に対し1.5倍量を超える量であり、2倍量以上であることが好ましく、2.8倍量以上であることがより好ましい。1.5倍量以下であると得られる糊化物の粘度が上昇しすぎて、その後の機械的撹拌処理において撹拌が困難となる。
【0013】
高アミロース米を水と共に加熱する前に、高アミロース米を水に浸漬してもよい。浸漬時間は、通常10〜120分程度である。
【0014】
加熱処理には、炊飯器、鍋、圧力鍋、電磁調理器(例:電子レンジ)等の加熱手段を用いることができる。加熱温度、加熱時間は、いずれの加熱手段を用いるかにより異なり一義的に特定することは困難であり、米が焦げ付かず糊化が十分に進む時間を適宜調整する。また、加熱の条件は、加熱手段内に内蔵された条件モード(例えば、お粥モード)に従って調整してもよい。
【0015】
加熱処理の際には、高アミロース米と水のほかに、酵素(例えば、αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ)の製剤、該酵素を含有する物質(例えば、モルト、米麹)、糖類、酸等の成分は添加してもよい。
【0016】
本発明においては加熱処理に続き機械的撹拌処理を行うが、両処理の間に冷却処理を行うことが好ましい。これにより、ぷるぷる感のより良好な米加工素材を得ることができる。冷却処理の際の温度は、通常は常温(例えば15〜30℃程度)である。
【0017】
本発明においては、加熱処理後に続き、得られる糊化物を機械的撹拌処理に供する。機械的撹拌処理とは、物理運動により組織を破壊し得る撹拌を意味し、単なる混合処理とは異なる。機械的撹拌処理は、例えばフードプロセッサー、ホモジナイザー、ミキサー、ニーダー、混練機、押出機等の撹拌機器を用いて行えばよい。撹拌機器はトルクが大きいことが、機械的撹拌処理中に糊化物の粘度が上昇しても撹拌が妨げられることがないため、好ましい。トルクの大きい撹拌機器としては例えば、フードプロセッサ(Cuisinart DLC−8P2J)が挙げられる。
【0018】
機械的撹拌処理の条件は、糊化物の状態、撹拌機器の種類等によって適宜定めることができる。例えば、無負荷時の回転数で1000〜3000rpmであることが好ましく、1200〜2000ppmであることがより好ましく、1500〜1800rpmであることが更に好ましい。撹拌機器としてフードプロセッサ(Cuisinart DLC−8P2J)を用いる場合、消費電力は320〜350Wであることが好ましい。
【0019】
撹拌処理により、糊化物(ゾル状)からゲル状への相転移が生じる。この相転移は本発明において初めて見出された、本発明の特色である。そのため、本発明の米加工素材は、良好な硬さおよび質感を示す。良好な硬さとは、ゲルとして適度な硬さ、例えば、寒天よりやわらかい程度の硬さを示すことを意味する。適度な質感とは、例えば、いわゆるぷるぷる感を示すことを意味する。一方仮に、本発明において高アミロース米に代えて、高アミロース米以外の米(例えばコシヒカリ等の中間米、或いはアミロースを含まないもち米(糯米))から同様の処理(加熱処理、機械的撹拌処理)を行うと、得られる処理物は単にペースト状(ゾル)であり、その硬さおよび質感は、本発明の米加工素材とは全く異なる。
【0020】
本発明においては、機械的撹拌処理に続き、再加熱処理を行ってもよい。これにより食感をよりマイルドなものとすることができる。再加熱処理は機械的撹拌処理後に行えばよく、機械的撹拌処理後直ちに行ってもよいし、期間が経過してから行ってもよい。再加熱処理を機械的拡販処理後期間が経過してから(例えば、4〜25℃で3日〜2週間程度保存後)行うことにより、食感を向上させるだけでなく、硬さおよび質感を本来の良好な状態に戻すことができる。再加熱処理は、例えば、湯(例えば沸騰している湯)への浸漬(例えば2〜5分程度)、マイクロウェーブ加熱、蒸気による加熱によることができる。湯への浸漬の場合、予めラップなどに包んでから浸漬させてもよいし、直接投入してもよい。
【0021】
本発明の米加工素材は、ペーストからゲル状に相転移をした半固形物の性状を示し得る。例えば図6に示すように、ペースト状ではなく形状を維持しており、硬さおよび質感も保持されている。また、本発明の米加工素材は、保存後にも良好な硬さおよび質感が保持されている。例えば、4〜25℃で3日〜2週間程度経過しても良好な硬さおよび質感が保持される。
【0022】
米加工素材の硬さは、複素弾性率により総合的に評価することができる。複素弾性率G*は弾性成分と粘性成分の和であり、総合的な硬さを意味する。複素弾性率G*は具体的には、貯蔵弾性率G’をX軸、損失弾性率G”をY軸に取ったときのベクトルの長さにより示される。貯蔵弾性率G’は、ばね(図5の装置の左側)に相当する弾性情報である。損失弾性率G”は、ピストンの摩擦(図5の装置の右側)に相当する粘性情報である。
【0023】
本発明の米加工素材の複素弾性率G*は、通常は1,000Pa以上であり、好ましくは1,500Pa以上である。一方、本発明において高アミロース米に代えて高アミロース米以外の米(例えばコシヒカリ等の中間米、或いはアミロースを含まないもち米)から同様の処理(加熱処理、機械的撹拌処理)を行って得られる処理物を得た場合、この処理物の複素弾性率G*は通常1000Pa未満であり、ペースト状で硬さが不十分である。
【0024】
米加工素材の質感は、粘性/弾性の比率により総合的に評価することができる。粘性/弾性の比率tanδは、いわゆるぷるぷる感(tanδが小さいほどぷるぷる感がある)、ぐにゃ感(tanδが大きいほどぐにゃ感がある)の指標である。具体的には、式tanδ=G”/G’で算出される。δは複素弾性率G*のベクトルと貯蔵弾性率G’(X軸)との間の角度を意味する。
【0025】
本発明の米加工素材の粘性/弾性の比率tanδは、通常は0.3以下であり、好ましくは0.2以下であり、ゲル状態である。本発明の米加工素材の粘性/弾性の比率tanδは、保存後も大きな変化はせず、通常、3日間4℃で保存した際にもほとんど変化がない。一方、本発明において高アミロース米に代えて高アミロース米以外の米(例えばコシヒカリ等の中間米)から同様の処理(加熱処理、機械的撹拌処理)を行って得られる処理物を得た場合、この処理物の粘性/弾性の比率tanδは、通常0.5以上であり、ぷるぷる感に欠け、ぐにゃ感が支配的なゾル状態(ペースト状)である。そして保存後にはtanδが著しく低下し、老化が著しい。
【0026】
本発明の米加工素材は、良好な硬さおよび質感を有しており、保存後にも、或いは冷蔵状態(例えば、4℃)でも、硬さおよび質感を維持することができる。従って、本発明の米加工素材は、加工食品の原料の少なくとも一部として用いることができ、これにより、加工食品の食感、テクスチャーの改良を図ることができる。この効果から、本発明の米加工素材は、食感改良剤、テクスチャー改良剤と呼ぶこともできる。
【0027】
加工食品としては、菓子類(和菓子(団子、饅頭など)、洋菓子(ケーキ類)、グミ、ゼリー類似品);主食(例えば米飯、パンなど)の代替食品;様々な味付けをした副食が挙げられる。また、ある特定の対象者を狙った加工食品、例えば、高齢者用食品、介護食、低GI食品、ダイエット食品等の用途にアピールした加工食品も挙げられる。更に、既存の加工食品だけではなく、新しい加工食品の原料としても利用が期待される。
【0028】
本発明の米加工素材を用いた加工食品は、その良好な硬さおよび質感を利用して、対象者を絞った加工食品の原料の少なくとも一部として利用することもできる。例えば、高齢者用食品、介護食、離乳食などとして利用することができる。また、本発明の米加工素材は、原料のお粥に由来する多くの水分を内包しつつ、適当な硬さおよび質感を有しているため、量の割に満腹感を与えることができる。そのため、同量の精白米と比べるとGI(グリセミックインデックス)が著しく低下しているため(通常の精白米では81〜85程度)、低GI食品としてダイエット用、糖尿病治療用、メタボリックシンドローム治療用の加工食品としても利用できる。
【0029】
本発明の米加工素材を用いて加工食品を製造する場合、原料として本発明の米加工素材を単独で利用してもよいし、通常の加工食品の原料に米加工素材を混合して製造してもよい。例えば団子を製造する場合、通常の原料である穀物原料(例えば小麦粉、白玉粉)に、米加工素材を組み合わせれば様々な物性の食品が得られる。製造条件は、それぞれの加工食品に適した条件を適宜設定することができる。また、本発明の米加工素材は新たな加工食品用の原料として用いることも期待される。
【実施例】
【0030】
実施例1(米加工素材の硬さの総合的な評価および質感の評価)
高アミロース米(モミロマン)から得られる米加工素材の経時変化を測定した。
【0031】
高アミロース米300gを約2.8倍量(2.833倍量)の水850gと共に炊飯器(NP−NA10、象印マホービン株式会社)に入れてお粥モードで炊飯を行った。得られたお粥(2.8倍粥)を常温まで冷却し、次の工程に供した。2.8倍粥をフードプロセッサ(Cuisinart DLC−8P2J)を用いて機械的撹拌処理した(無負荷回転数1,500〜1,800rpm、3分間、消費電力320〜350W)。得られる米加工素材を3日間4℃の条件で保存し、複素弾性率および粘性/弾性の経時的変化を測定した。貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定には動的粘弾性測定装置(AR−G2、TA Instruments)を用い、温度25℃、回転数1Hz、応力1Paとした。それぞれの結果を図1および図2に示した。また、図6に米加工素材の外観を写真図にて示した。
【0032】
比較例1(経時変化(粘弾性値))
高アミロース米の代わりに中間米(コシヒカリ)を用いたほかは、実施例1と同様に行った。同様に結果を図1および図2に示した。
【0033】
比較例1の米加工素材はペースト状であったのと比べて、実施例1の米加工素材は、しっかりと形を保つことのできるゲル状であり、硬さが特徴的な加工素材として総合的に優れていた(図1、図6)。また、比較例1の米加工素材はぐにゃ感が支配的であったのに対し、実施例1の米加工素材は良好なぷるぷる感を有していた(図2)。さらに、実施例1の米加工素材は比較例1の米加工素材と比較して、保存日数を経ても質感の変化が小さく、見かけ上は製造直後の状態が保持されていた(図2)。これらの結果は、本発明の米加工素材が良好な硬さおよび質感を有していること、および保存後にも良好な硬さおよび質感が維持されることを示している。
【0034】
比較例2(水の量)
炊飯器に投入する水の量を、同じ高アミロース米(モミロマン)の1.5倍量としたほかは、実施例1と同様にして1.5倍粥を得た。1.5倍粥を実施例1と同様に機械的に撹拌して米加工素材の製造を試みたが、撹拌時の抵抗が大きくフードプロセッサが停止してしまい、米加工素材が得られなかった。この結果は、本発明において米加工素材を得るにあたり、高アミロース米の加熱時に、高アミロース米にある程度の水(1.5倍量を超える量)を添加する必要があることを示している。
【0035】
実施例2(夢十色を用いた米加工素材の評価)
実施例1において、モミロマンの代わりに、インディカ種の高アミロース米(夢十色)を用いたほかは、実施例1と同様に行った。複素弾性率および粘性/弾性の経時的変化を図3及び図4に示した。図3及び図4から明らかな通り、実施例2の米加工素材は、形を保つことのできる程度のゲル状を示すとともに良好なぷるぷる感を示しており、実施例1の米加工素材と同様であった。この結果は、本発明においては原料として様々な品種の高アミロース米を用いることができることを示している。
【0036】
実施例3(撹拌処理前の冷却処理の有無)
実施例2において、2.8倍粥を常温まで冷却せずにすぐフードプロセッサにかけたほかは同様に行った。結果を図3及び図4に示した。実施例3の米加工素材では、総合的な硬さを示すG*が若干上昇していたが硬さには問題のない程度であった。G*の上昇はG”の上昇に起因しており、G”が上昇する結果tanδも上昇するためぷるぷる感の若干の減少も見られた。この結果は、本発明においては、ぷるぷる感のより良好な(tanδの値が小さい)米加工素材を得るために、機械的撹拌処理の前に常温への冷却を行うことが好ましいことを示している。
【0037】
実施例4及び5(再加熱の影響)
実施例1の米加工素材を4℃で3日間保存後、沸騰したお湯の中で約3分間再加熱した。再加熱の方法として、実施例4では米加工素材をそのまま(ラップなどせずに)、実施例5では米加工素材をラップにくるんで、それぞれお湯に落とし込んだ。その結果、いずれの場合にも総合的な硬さ、質感(ぷるぷる感)等の物性を保持しながら、糊化が促進され、マイルドな食感を伴うなど実施例1の米加工素材よりも官能的に優れた素材が得られた。この結果は、本発明の米加工素材は保存後に再加熱を行うと食感が改善されることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高アミロース米に1.5倍量を超える水を添加して加熱処理し、得られる糊化物を機械的撹拌処理して得られる米加工素材。
【請求項2】
加熱処理後に冷却処理を行う、請求項1に記載の米加工素材。
【請求項3】
複素弾性率(G*)が700Pa以上である請求項1または2に記載の米加工素材。
【請求項4】
粘性/弾性の比率(tanδ)が0.3以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の米加工素材。
【請求項5】
機械的撹拌処理後に再加熱処理して得られる、請求項1〜4に記載の米加工素材。
【請求項6】
高アミロース米に1.5倍量を超える水を添加して加熱処理し、得られる糊化物を機械的撹拌処理する、米加工素材の製造法。
【請求項7】
加熱処理後に冷却処理を行う、請求項6に記載の米加工素材の製造法。
【請求項8】
機械的撹拌処理後に再加熱処理を行う、請求項6または7に記載の米加工素材の製造法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の米加工素材を原料とする加工食品。
【請求項10】
菓子、主食の代替食品または副食である請求項9に記載の加工食品。
【請求項11】
高齢者用食品、介護用食品、低GI食品またはダイエット食品である請求項9または10に記載の加工食品。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の米加工素材を加工食品の原料として使用する方法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の米加工素材を再加熱処理する、米加工素材の食感および/または硬さ並びに質感を改良する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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