説明

米粉を配合した加工食品用粉原料、及びそれを使用した加工食品

【課題】従来の米粉を配合した加工食品より優れた食感、例えばパンであれば比容積や、内相に優れたものが得られる加工食品用粉原料、及び該加工食品用粉原料から得られる加工食品を提供すること。
【解決手段】小麦粉を60.0〜97.0重量部、米粉を1.8〜30.0重量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.2〜5.0重量部、グルテンを1〜5重量部含有することを特徴とする加工食品用粉原料、及び該加工食品用粉原料を使用した加工食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉を配合した加工食品用粉原料、及びそれを使用した加工食品に関し、詳しくは従来の米粉を配合した加工食品より優れた食感が得られる、米粉を配合した加工食品用粉原料、及びそれを使用した加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
米から得られる米粉は、現在、様々な利用が検討されており、米粉を小麦粉代替品として使用することが検討されている。例えば、パンの小麦粉に米粉を配合した場合、小麦粉のみのパンに比べて比容積が低下し、内相が硬くなる。これはパンの膨張性が低下することに起因するものであり、膨張性は原料中に含まれているグルテンの量および質に左右される。米粉は小麦粉に比べてグルテンが少ないため、米粉を配合したパンは小麦粉のみのパンに比べて膨張性が低下することにより比容積が低下し、内相が硬くなる。この問題を解決するために様々な検討が行われてきた。
特許文献1においてはグリアジンまたはグルテニンと、油脂および/または乳化剤を含有した品質改良剤を添加することにより、ケーキの冷解凍による老化を防止し、味質を改善できることが提案されているが、ケーキ比容積を増大させるまでには至っていない。特許文献2においては米粉の加工性を改善し、小麦粉と同様の加工性を有する米粉とするために易加工性米粉が開発されているが、米粉を加工する作業は煩雑であるし、発酵を含む工程により得られるパン類等の加工食品の原料としては十分に満足いくものではない。特許文献3においてはグルテニンと乳化剤を添加することにより、パンの比容積を増大できることが提案されているが、内相の硬化を抑制するまでには至っていない。また、小麦グルテンからグルテニンを分離する作業は煩雑である。特許文献4においては、米粉を使用した小麦加工食品において、風味、食感を改良することを目的として、乳化剤を用いて加熱処理を行った米粉を使用した小麦加工食品が開示されているが、パンの比容積の増大や内相の硬化を抑制には不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−179048号公報
【特許文献2】特開2000−175636号公報
【特許文献3】特開平8−51918号公報
【特許文献4】特開昭53−142554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の米粉を配合した加工食品より優れた食感、例えばパンであれば比容積や、内相に優れた加工食品が得られる加工食品用粉原料及びこれから得られる加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、特定の配合比率からなる小麦粉、米粉、ショ糖脂肪酸エステル、及びグルテンを含有する加工食品用粉原料を用いた場合、従来の米粉を配合した加工食品より優れた食感の加工食品、例えば、優れた比容積や、内相のパンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、小麦粉を60.0〜97.0重量部、米粉を1.8〜30.0重量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.2〜5.0重量部、グルテンを1〜5重量部含有することを特徴とする加工食品用粉原料である事を第一の要旨とする。
前記ショ糖脂肪酸エステルが、ショ糖脂肪酸エステルを水に溶解し乾燥させることにより得られるショ糖脂肪酸エステル製剤であることが好ましい。
更に、前記ショ糖脂肪酸エステル製剤が、ショ糖脂肪酸エステルと糖類を水に溶解し、乾燥させることにより製造されることが好ましい。
また、ショ糖脂肪酸エステルのHLBが8以上であることが好ましい。
本発明の第2の要旨は前記の加工食品用粉原料を使用した加工食品である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の加工食品用粉原料は特定の配合比率からなる小麦粉、米粉、ショ糖脂肪酸エステル、及びグルテンを含有することを特徴とする。
【0007】
本発明に用いられる小麦粉は一般に市販されているものを使用することができる。具体的には、日清製粉製「カメリア」、「ミリオン」、日本製粉製「イーグル」等が挙げられるが、限定はされない。
【0008】
本発明に用いられる米粉は一般に市販されているものを使用することができる。具体的には、群馬製粉製「J麺No.1」、「リ・ファリーヌ」、日本製粉製「高砂113」等が挙げられるが、限定はされない。
【0009】
本発明に使用されるショ糖脂肪酸エステルは、特に制限はされないが、構成脂肪酸の炭素数が14以上22以下の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸、あるいはそれらの混合であることが望ましい。炭素数14未満である場合は、味が苦くなるという不具合があり、22を超える場合はデンプンと複合体を形成しにくく、老化抑制が不十分であるという不具合が生じる。また、平均エステル化度は特に限定されないが、1.1以上1.6以下、好ましくは1.2以上1.3以下である。平均エステル化度が1.1未満である場合は、製造が困難でありコストが高いという不具合があり、1.6を越える場合は本発明により得られる効果(比容積の向上、内相の硬さの低減)が十分に発揮できないという不具合が生じる。本発明のショ糖脂肪酸エステルのHLBは8以上である事が好ましい。より好ましくはHLBが10以上である。HLBが8より低いと発酵過程で生地が十分に膨らまないという虞がある。
本発明のショ糖脂肪酸エステルは水に溶解し乾燥させて製造されるショ糖脂肪酸エステル製剤である事が好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの製剤化の方法は、ショ糖脂肪酸エステルとを水に完全に溶解し、得られた水溶液を乾燥させて製造される粉末である。乾燥して粉末を得る方法には、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、及び、煮詰めて適宜撹拌しつつ結晶化させて乾燥する方法などが挙げられる。
本発明に用いられるショ糖脂肪酸エステル製剤は、前記ショ糖脂肪酸エステルと糖類とを水に溶解し乾燥させて製造されるショ糖脂肪酸エステル製剤が好ましい。
前記糖類としては具体的にはグルコース、フルクトース、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、トレハロース、ラクト−ス、マルトトリオース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、デキストリン、サイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、イヌリン、ラバン、乳糖、ソルビトール、マルチトールが挙げられるが特に限定されるものではない。これらの内、好ましいものはデキストリンである。
【0010】
グルテンはグルテニンとグリアジンからなるもので、水を加えて混捏すると粘弾性を生じるものである。本発明において使用するグルテンは特に制限を設けないが、活性グルテン、加水分解グルテン、などが使用できる。
【0011】
前記各原料の配合比率は小麦粉を60.0〜97.0重量部、米粉を1.8〜30.0重量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.2〜5.0重量部、グルテンを1〜5重量部であって、好ましくは小麦粉を75.0〜88.5重量部、米粉を10.0〜20.0重量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.5〜3.0重量部、グルテンを1〜2重量部である。配合量が前記範囲を外れた場合は比容積の低下や、風味の低下をきたす。
【0012】
ショ糖脂肪酸エステル及びグルテンを加工食品用粉原料に使用する際は、小麦粉や米粉などの粉原料と粉混合して使用できる。又水、卵、クリーム、牛乳などに分散させて使用したり、加熱溶解して使用することもできる。
【0013】
本発明の加工食品用粉原料には上記の原料の他に必要に応じて各種澱粉、加工澱粉、大豆粉、増粘安定剤、食物繊維、卵白、カゼインや乳清蛋白質等の小麦以外由来の蛋白質、大豆蛋白、他各種粉末食品を使用することができ、それらを単独でもしくは2種以上を併用して使用できる。
【0014】
本発明の加工食品用粉原料を使用する加工食品としては特に制限されないが、パン、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ビスケット、ドーナッツ、団子及び麺等の小麦粉を使用する加工食品が挙げられる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中、部及び%は特に断らない限り重量基準である。
パンによる評価
<パンの製造方法>
〔実施例1〕
混合釜に、プレミクスした強力粉(製品名:ミリオン、日清製粉株式会社製)1840部、米粉(J麺用米粉No.1、群馬製粉株式会社製)、上白糖(三井製糖株式会社製)115部、グルテン(三洋電機株式会社製)45部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=15、製品名DKエステルF−160(登録商標)、第一工業製薬株式会社製)17.25部を仕込んだ。予め食塩(伯方塩業株式会社製)46部と1%ビタミンC水溶液23部を溶解させ5℃に冷却した水1357部に酵母(TL−3、オリエンタル酵母株式会社製)92部を分散し、混合釜に仕込み、低速2分→中低速3分で混捏した。生地の温度測定後、ショートニング(製品名ニューエコナVE(L)、花王株式会社製)115部を生地に塗りつけた。さらに低速1分→中低速2分→高速で4分間混捏した。生地を23℃で20分間静置した。所定回数パンチし、200部づつ分割した。分割した生地を手で叩いて伸ばし、左右両端を内側に少し折って巻いた。巻いた生地を23℃で15分静置した。ローラーを用いて、生地を上下2回づつ伸ばして空気を抜いた。横幅がパン型に合うように生地を広げて巻き、綿実油を薄く塗った容器に巻いた生地を入れた。ホイロにいれ、膨らむ生地の最上部が型の上辺から2cm上に達するまで発酵させた後、205℃で20分間焼成しパンを製造した。
〔実施例2〕
ショ糖脂肪酸エステルを、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=15、製品名DKエステルF−160(登録商標)、第一工業製薬株式会社製)150部、デキストリン450部を水3400部に溶解し、噴霧乾燥することによって得られたショ糖脂肪酸エステル製剤に変更し、各原料の配合量を下記表1に変更した以外は実施例1と同様の方法でパンを製造した。
〔実施例3〜4〕
各原料の配合量を下記表1に変更した以外は実施例2と同様の方法でパンを製造した。
〔比較例1〜4〕
各原料の配合量を下記表1に変更した以外は実施例1と同様の方法でパンを製造した。
〔比較例5〕
強力粉等の粉体原料をプレミックスする際にグリセリン脂肪酸製剤21.4部を混合することと、各原料の配合量を下記表1に変更した以外は実施例1と同様の方法でパンを製造した。
<パンの比容積の評価>
ビーズ法によりパンの比容積を測定した。
<パンの固さ評価>
山電レオナー(RE3305)により、以下の条件に従って製造から1日後と4日後のパンの50%歪み時の加重を測定した。測定結果を下記表1に記載した。
(測定条件)
プランジャー:30mmφ円柱型
ロードセル:2kgf
アンプの倍率:1倍
測定歪率:50%
測定速度:1cm/min、
パンの厚さ:40mm
【0016】
【表1】

表1に示すとおり、グルテン及びショ糖脂肪酸エステルを含まない配合(比較例1)、グルテンを含まない配合(比較例2)、ショ糖脂肪酸エステルを含まない配合(比較例3)、米粉が30.0%を占める配合(比較例4)及びショ糖脂肪酸エステルの代わりにグリセリン脂肪酸エステル製剤を配合した処方(比較例5)は、いずれも実施例1〜3と比較して、比容積及び1日後並びに4日後の硬さにおいて劣るものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の米粉を配合した加工食品用粉原料は様々な加工食品に使用することができ、具体的には、パン、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ビスケット、ドーナッツ、団子及び麺等の小麦粉を使用する加工食品に使用することが出来る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を60.0〜97.0重量部、米粉を1.8〜30.0重量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.2〜5.0重量部、グルテンを1〜5重量部含有することを特徴とする加工食品用粉原料。
【請求項2】
前記ショ糖脂肪酸エステルが、ショ糖脂肪酸エステルを水に溶解し乾燥させることにより得られるショ糖脂肪酸エステル製剤であることを特徴とする請求項1に記載の加工食品用粉原料
【請求項3】
前記ショ糖脂肪酸エステル製剤が、ショ糖脂肪酸エステルと糖類を水に溶解し、乾燥させることにより製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工食品用粉原料。
【請求項4】
前記ショ糖脂肪酸エステルのHLBが8以上であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の加工食品用粉原料。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の加工食品用粉原料を使用した加工食品。


【公開番号】特開2013−21941(P2013−21941A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157694(P2011−157694)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】