説明

米粉パンの製造方法

【課題】天然酵母を使用して「米臭さ」がなく、かつ外観も良好な米粉パンの製造方法を提供する。
【解決手段】米粉80〜90重量部とグルテン20〜10重量部とからなる穀粉100重量部に対して天然酵母生種を添加して混合して生地とする混合工程、前記生地を発酵させて1次発酵生地とする1次発酵工程、前記1次発酵生地を分割して分割生地とする分割工程、前記分割生地をさらに発酵させて2次発酵生地とする2次発酵工程及び前記2次発酵生地を焼成して米粉パンとする焼成工程を有し、前記混合工程と前記1次発酵工程の間に前記生地を冷却して生地内部の温度を前記天然酵母の有効発酵温度未満とする冷却工程を設ける米粉パンの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉を主成分とする米粉パンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本における食糧自給率を高め、将来予測される食料不足の問題を解決することを目的として米粉を使用したパン及びその製造方法は公知である(特許文献1〜3など)。特許文献1記載のパンは米粉、グルテン及びトレハロースを使用することを特徴とするものであり、特許文献2に記載の米粉パンの製造方法は、米粉、グルテン及びトレハロースやマルトース等の難発酵性糖類を使用するか又はアルファ化澱粉と澱粉糖化酵素を使用して製造中に難発酵性糖類を生成させることを特徴とするものである。また特許文献3に記載の米粉パン並びにその製造方法は、特許文献1,2記載の発明を改良したものであって、トレハロースを使用せず、特定の粒度分布を有する米粉、グルテン及びマルトースを使用することを特徴とするものである。これらの先行文献に開示された米粉パンの製造方法においては、いずれも通常のパン用の酵母(イースト)が使用されている。
【0003】
一方、小麦粉を使用したパンの製造において、風味に優れたパンを製造する方法として天然酵母を使用する製造方法は一般に知られている(非特許文献1,2など)。天然酵母を使用したパンの製造においては、1次発酵工程(フロアタイム)は、酵母の種類により発酵速度が異なるため、使用する天然酵母の活性に応じて調整されるが、通常20℃程度の低温で長時間、例えば12〜15時間かけて行なわれる(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-274845号公報
【特許文献2】WO2003/063596号公報
【特許文献3】特開2004-267194号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】パトリスジュリアン著「パンの学校」文化出版局2003年6月
【非特許文献2】ホシノ天然酵母パン種社ホームページ<URL:http://www.hoshino-koubo.co.jp/recipe/yamasyoku/yamasyoku.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜3に記載の発明によれば、確かに小麦粉パンに近い米粉パンを製造することができる。しかし、実際にその販売量は伸びていないのが現状である。顧客に聞取り調査をしたところ、その理由は上記特許文献1〜3記載の発明により製造した米粉パンが、いわゆる「米臭さ」を有しており、小麦粉パンと比較すると違和感を与えることが原因であることが判明した。
【0007】
また米粉パンの風味を改良する目的で、天然酵母を使用してパンを製造しようとすると、発酵工程、とりわけ1次発酵工程(フロアタイム)中にパン生地の表面に亀裂が発生し、良好な米粉パンを製造することができなかった。
【0008】
本発明は上記の米粉パンの問題を解決するものであり、天然酵母を使用して「米臭さ」がなく、かつ外観も良好な米粉パンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の米粉パンの製造方法は、米粉80〜90重量部とグルテン20〜10重量部とからなる穀粉100重量部に対して天然酵母生種を添加して混合して生地とする混合工程、前記生地を発酵させて1次発酵生地とする1次発酵工程、前記1次発酵生地を分割して分割生地とする分割工程、前記分割生地をさらに発酵させて2次発酵生地とする2次発酵工程及び前記2次発酵生地を焼成して米粉パンとする焼成工程を有し、
前記混合工程と前記1次発酵工程の間に前記生地を冷却して生地内部の温度を前記天然酵母の有効発酵温度未満とする冷却工程を設けることを特徴とする。
【0010】
上記の製造方法によれば、得られた米粉パンは米臭さを有しないものである。また、製造段階において生地に亀裂が発生せず、かつ外観の良好な米粉パンが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用する米粉は、生米を粉砕、粉末化したものである。米としては、ジャポニカ種、インディカ種等種類を問わず、粳米、もち米などを使用することができる。粉砕する前の生米は、精白米、玄米、屑米、古米など特に制限されるものではないが、精白米であることが好ましい。米粉の粒度は、80メッシュ、好ましくは100メッシュをパスするものであれば特にその粒度、粒度分布は限定されないが、200メッシュをパスする割合が50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。ただし、少量の粗い粒子が混在しても問題はなく、100メッシュオンの量が5重量%以下であることが好ましい。生米を粉砕して米粉とする方法は、公知の方法が使用でき、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等が例示される。本発明において使用する米粉としては、米粉パン用に開発された米粉のほか、従来主として和菓子用に製造販売されてきた上新粉、上用粉なども使用可能である。
【0012】
天然酵母は、自然に植物などに付着している酵母を純粋分離せずに培養したもので、パン用の酵母として汎用されているイーストと比べると発酵力そのものは劣るが酵母の種類ごとにさまざまな風味や特性を有するものである。本発明において使用する天然酵母は、ルヴァンリキッド等の生種を調製して使用してもよく、また市販品を使用してもよい。市販品としては上記非特許文献2の「ホシノ天然酵母パン種」社の天然酵母が最もよく知られている。
【0013】
市販の天然酵母は「生種」として本発明の米粉パンの製造方法に使用する。「ホシノ天然酵母パン種」社の天然酵母は「パン種」として市販されており、「パン種」500gを30℃の水1000ccと混合して28〜30℃で約24時間保存して生種とし、これを使用する(非特許文献2)。天然酵母の配合量は、酵母の活性に応じて適宜設定されるが、穀粉100重量部に対して生種として2〜10重量部であることが好ましい。
【0014】
上記ルヴァンリキッドとしては例えばライ麦粉由来の天然酵母のルヴァンリキッドを使用することができる。該ライ麦粉由来の天然酵母のルヴァンリキッドは、例えば以下のようにして製造し、生種として使用することができる。
(1)ライ麦粉100重量部を35℃の水100重量部と十分に混合し、30℃にて24時間保温し、ライ麦粉の酵母を増殖させて元種とする。
(2)得られた元種合計200重量部に小麦粉100重量部とライ麦粉100重量部を添加し、25〜35℃の水を加えて十分に混合し、30℃にて24時間保温して第1酵母(計500重量部)とする。
(3)第1酵母500重量部に小麦粉750重量部、25〜28℃の水375重量部を添加、撹拌し、28℃にて12時間保温して第2酵母とする。
(4)上記第2酵母1500重量部に小麦粉3000重量部と25〜28℃の水1800重量部を添加、撹拌して28℃にて6時間保温してルヴァンリキッドとする。ルヴァンリキッドは10〜14℃の冷蔵庫に保存する。
【0015】
ルヴァンリキッドを使用して量が減少した場合、原料を追加して種継ぎを行なうことにより、継続して使用することができる。種継ぎは、上記のルヴァンリキッド100重量部に対して小麦粉300重量部、温水350〜400重量部添加し、30℃にて2.5〜3時間混合する。ルヴァンリキッド以外の天然酵母、例えばみかん・リンゴ・苺・梨・巨峰・柿・ゆずなどからも天然酵母が調製可能である(クックパッド社ホームページ<URL:http://cookpad.com>)。
【0016】
本発明において「天然酵母の有効発酵温度」とは、該温度より低くなると生地の発酵速度が低下するか実質的に停止する温度をいう。天然酵母はパンの製造に汎用されるイーストと比較すると発酵速度が遅く、イーストを使用した場合の1次発酵工程(フロアタイム)が室温(25℃程度)で1時間以下であるのに対して天然酵母を使用した場合には、フロアタイムは30℃では6時間、または20℃で12〜15時間とされている(非特許文献2)。ただし、実際に使用すると17℃でも発酵は進行し、16℃では発酵速度が大きく低下して発酵時間が長くなりすぎて、実用的なパン製造は行なえないといえるから、17℃が「ホシノ天然酵母パン種」社の天然酵母の有効発酵温度であるといえる。「天然酵母の有効発酵温度未満」の温度は、使用する天然酵母の活性により変動するが一般的には16℃(17−1℃)以下である。
【0017】
本発明の冷却工程において混合直後の生地の最高温度(生地内部の温度)を天然酵母の有効発酵温度未満にすることにより、生地の亀裂発生が防止できる理由は明らかではないが、小麦粉では発生しない米粉特有の性質である発酵の進行に伴って水の分離が起こり、この水の分離による亀裂発生が、かかる構成により抑制されるのではないかと推測される。「ホシノ天然酵母パン種」社の天然酵母以外の天然酵母を使用する場合には、生地の最高温度、即ち生地の内部温度を該天然酵母の有効発酵温度より1℃以上低くすることが好ましく好ましい。
【0018】
本発明の米粉パンの製造方法においては、製造するパンの種類に応じて、他の穀粉類、豆類の粉、澱粉、α化澱粉、糖類、食塩、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類などの公知の配合成分から選択される少なくとも1種をさらに配合することが好ましい。
【0019】
添加する他の穀粉類としては、玄米粉、発芽玄米粉などが例示され、豆類の粉としては大豆粉、きな粉、メリンジョ粉などが例示される。
【0020】
糖類としては、特に限定されるものではなく、砂糖などの糖、マルトース(麦芽糖)、トレハロース、フルクトース等のオリゴ糖、マルチトール、ソルビト−ル、キシリトール、水添水飴などの糖アルコールがあげられ、これらの糖類は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。糖類は砂糖などの易発酵性の糖とオリゴ糖や糖アルコールなどの難発酵性糖類を併用することが好ましく、オリゴ糖や糖アルコールは、米粉パン製造に使用する穀粉組成物に予め添加してもよく、米粉パンの製造における混合工程で添加してもよい。麦芽糖はモルトとして添加してもよい。砂糖の添加量は製造するパンの種類により適宜調整される。またオリゴ糖ないし糖アルコールの添加量は穀粉100重量部に対して10重量部以下、より好ましくは6重量部以下である。
【0021】
本発明において使用する乳成分としては粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等があげられ、前記卵成分としては、卵黄、卵白、全卵その他の卵に由来する成分があげられる。また前記油脂としては、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、オリーブ油等があげられる。これらの添加量は、パンに添加される一般的な量である。
【0022】
また、本発明のもち米粉組成物には、各種の食品または食品添加物を粒状ないしフレーク状等にて配合してもよく、例えば、干しぶどう、オレンジなどの植物の果実、ナッツ類、小豆、黒豆などの植物種子などがあげられる。
【0023】
本発明のパンの製造方法において米粉、グルテン等の穀粉と混合する水成分は水であってもよく、牛乳のようなものであってもよく、製造目的のパンに応じて適宜選定することができる。混合は手で行なってもよいが、市販のミキサーを使用して行なうことが好ましい。混合条件は小麦粉パンの製造における当業者の技術常識により適宜設定することができる。
【0024】
本発明のパンの製造方法は、少なくとも穀粉、天然酵母及び水成分を混合して生地を製造する混合工程、前記生地を発酵させて1次発酵生地とする1次発酵工程、前記1次発酵生地を分割して分割生地とする分割工程、前記分割生地をさらに発酵させて2次発酵生地とする2次発酵工程及び前記2次発酵生地を焼成して米粉パンとする焼成工程を有し、混合工程と1次発酵工程の間に生地を冷却する冷却工程を設ける点に特徴を有する。穀粉は米粉とグルテンとを予め粉の状態で混合した米粉組成物を使用してもよく、米粉とグルテンとを混合した組成物、その他の成分を混合工程で混合してもよく、また個々の成分を別個に混合工程で混合してもよい。
【0025】
上記の冷却工程は、天然酵母による生地の発酵を、混合工程後に実質的に大幅に遅延させるかないしは停止させるための工程であり、かかる工程が生地の亀裂発生を防止する作用を有するものと解される。混合工程後に天然酵母による生地の発酵が進行すると亀裂が発生するため、冷却工程の所要時間は3時間以下であることが好ましく、2.5時間以下であることがより好ましく、2時間以下であることがさらに好ましく、1.5時間以下、さらには1時間以下であることが好ましい。冷却工程の所要時間が3時間を超えると冷却工程において天然酵母による生地の発酵が特に内部において進行して亀裂が発生する場合が生じる。
【0026】
冷却工程における冷却方法は特に限定されるものではなく、冷蔵庫ないし冷凍庫に保存する方法、冷風吹き付け方法、冷却した金属板と接触させる方法などが例示される。これらの中でも冷凍庫に収容する方法が簡便で好ましく、冷凍庫の設定温度は生地の厚さなどにより適宜設定されるが、氷点下とすることが好ましく、−5℃以下とすることがより好ましく、−10℃以下とすることがさらに好ましい。冷却工程では、温度、時間を調整することにより、生地の凍結、特に表面部の凍結を回避する。
【0027】
本発明においては、1次発酵工程(フロアタイム)は、通常の天然酵母を使用した1次発酵と同様な条件(温度、時間)にて行なうことができ、例えば「ホシノ天然酵母パン種」社の天然酵母を使用して山食パンやバゲットパンを製造する場合には、30℃で6時間前後、または20℃で12〜15時間の1次発酵を行なうことができる。天然酵母を使用した場合の1次発酵は30℃で行なうと6時間を要し、製造時間として中途半端であるので、通常は20℃前後の低温で長時間発酵させるオーバーナイト法が採用される。オーバーナイト法によれば、保温のエネルギー費用が抑制でき、しかも前日の終業時間近くに1次発酵を開始すると、翌日に焼成が行なえるので、時間的にも好都合である。
【0028】
オーバーナイト法で1次発酵を行なう場合、発酵温度は有効発酵温度に近い温度で行なうことがより好ましく、該発酵温度は有効発酵温度以上有効発酵温度+3℃以下で行なうことが生地の亀裂発生防止の点で好ましい。
【0029】
上記のパンの製造方法において、角食パン、山食パン、フランスパンのようなパンを製造する場合には、分割工程のあとに生地を休ませるベンチ工程を設けることが好ましい。ベンチ工程の温度は室温であり、10〜30℃である。ベンチ工程にて得られた分割生地は、成形工程において製造するパンの形状に応じた形状に成形され、その後2次発酵のためにホイロ工程に送られる。ベンチ工程における所要時間(ベンチタイム)は、常温で5〜60分であることが好ましく、10〜50分であることがより好ましい。
【0030】
上記2次発酵工程(ホイロ工程)の所要時間であるホイロタイム(2次発酵時間)は、生地の発酵の状態を見て適宜設定されるものであるが、30〜240分であることが好ましく、40〜210分であることがより好ましい。ホイロ工程の条件も製造するパンに応じて適宜設定するものであるが、発酵させる必要があるので、30〜45℃、湿度60〜85%の高湿度のホイロに収容する。
【0031】
また上記のパンの製造方法において、クロワッサンなどのデニッシュパンを製造する場合には、混合工程において20〜30℃の仕上がり温度にて得られた生地を、冷却工程にて冷却し、次いで1次発酵工程にて発酵させて1次発酵生地とする。1次発酵生地は生地温度が油脂シートの油脂の流動温度以下で油脂シートが可とう性を有する温度以上、通常は15℃以下7℃以上になるように冷却する2次冷却工程を設ける。冷却に際しては、生地をシート状にすることも好ましい。2次冷却工程は、以下の油脂シートを使用して折り返して層状構造の生地とする際に、油脂が溶解することを防止する作用を有する。2次冷却工程で冷却した後のシート状の生地は、繰り返し油脂シートの層を介して折り返して薄いシート状生地に成形するシート化工程、積層されたシート状生地を裁断する分割工程、並びに裁断された生地を製造するパンの形状に応じた形状に成形する成形工程を経た後にホイロ工程に送られる。シート化工程においては、生地が発熱するので、油脂が溶融流動しないように繰り返し2次冷却工程を設けても良い。冷却に際しては、生地が凍らないように注意する。
【0032】
焼成は公知の方法で行なうことができるが、焼き色が優れている点で通常のパンの焼成を行なうオーブンを使用することがより好ましい。本発明の米粉パンの製造方法は、個々の工程を手作業で行なってもよく、また混合工程、分割工程、成形工程、発酵(ホイロ)工程、焼成工程等の必要な全工程を連続して行なうことができる連続製造装置を使用して行なってもよい。焼成時間は製造する米粉パンの種類、オーブンの温度等に応じて適宜設定される。
【0033】
本発明の製造方法により製造する米粉パンとしては特に限定されるものではなく、食パン、山食パン、フランスパン、バゲットパン、クロワッサンなどのデニッシュパンが特に好ましいが、コッペパン、バターロール、アンパン等の菓子パン、ドイツパン、ベーグル、イーストドーナツ、プレッツェル、ピザ、ナン等の発酵パンやこれらのパンに小豆、果物などを配合したパンなども製造可能である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
(実施例1)
米粉80重量部(100メッシュパス品)、グルテン(グリコ栄養食品製)17.5重量部、オリゴ糖2.5重量部を混合し、該穀粉100重量部に対して食塩2重量部、天然酵母生種(ホシノ天然酵母パン種より調製)6重量部及び水81重量部を添加してミキサーを用いて混合し、生地を調製した。混合は、低速混合1分、中速混合2分、中高速混合7分行って温度24〜26℃の生地を製造した(混合工程)。
【0035】
得られた生地は−17℃に調節された冷凍庫に45分収容し、デジタル温度計により生地の中心部の温度を15℃になるまで冷却した(冷却工程)。冷却した生地を温度を17℃としたドゥコンディショナーに収容して12時間1次発酵工程を行ない、1次発酵生地を得た。1次発酵生地を分割して150〜200gの分割生地とし、30分休ませ(ベンチタイム)、成形し(成形工程)、温度40℃、湿度75%に設定したホイロにて95分発酵させ(2次発酵工程)、得られた2次発酵生地を220〜230℃のオーブン中で20〜25分焼成してバゲットパンを製造した。
【0036】
上記のバゲットパンの製造において、生地に亀裂が発生せず、良好な外観を有する米粉のバゲットパンが得られた。また得られたバゲットパンは米臭さのないものであった。
【0037】
(比較例1)
冷却工程を設けなかった点を除き、実施例1と同じ製造方法にてバゲットパンを製造したところ、1次発酵工程において生地に複数の亀裂が発生し、得られたバゲットパンの外観は到底商品価値のないものであった。
【0038】
(比較例2)
実施例1のバゲットパンの製造方法において、天然酵母に代えてパン用のイーストを1重量部使用し、冷却工程及び1次発酵工程を設けることなく分割を行い、分割した生地についてベンチタイム20分を設け、次いで分割した生地を成形し、温度35℃、湿度70〜75%のホイロにて45分間のホイロタイムを取って生地を発酵させた後、オーブンにて焼成を行なった。その他は実施例1と同じである。得られたバゲットパンは、外観は良好であったが米臭さを有するものであった。
【0039】
(実施例2)
米粉82.5重量部(100メッシュパス品)、グルテン(グリコ栄養食品製)17.5重量部を混合し、該穀粉100重量部に対して食塩2重量部、砂糖3.5重量部、天然酵母生種(ホシノ天然酵母パン種より調製)6重量部及び水75重量部を添加してミキサーを用いて混合し、生地を調製した。混合は、低速混合1分、中速混合2分、中高速混合7分行って温度21〜24℃の生地を製造した(混合工程)。
【0040】
得られた生地は−17℃に調節された冷凍庫に45分収容し、デジタル温度計により生地の中心部の温度を16℃になるまで冷却した(冷却工程)。冷却した生地を温度を17℃としたドゥコンディショナーに収容して12時間1次発酵工程を行ない、1次発酵生地を得た。1次発酵生地を分割して250gの分割生地とし、30分休ませ(ベンチタイム)、成形し(成形工程)、温度40℃、湿度75%に設定したホイロにて55分発酵させ(2次発酵工程)、得られた2次発酵生地を220〜230℃のオーブン中で30〜40分焼成して食パンを製造した。
【0041】
上記の食パンの製造においては、生地に亀裂が発生せず、良好な外観を有する米粉の食パンが得られた。また得られた食パンは米臭さのないものであった。
【0042】
(比較例3)
冷却工程を設けなかった点を除き、実施例2と同じ製造方法にて食パンを製造したところ、1次発酵工程において生地に複数の亀裂が発生し、得られた食パンの外観は到底商品価値のないものであった。
【0043】
(比較例4)
実施例2の食パンの製造方法において、天然酵母に代えてパン用のイーストを1重量部使用し、冷却工程及び1次発酵工程を設けることなく分割を行い、分割した生地についてベンチタイム20分を設け、次いで分割した生地を成形し、温度35℃、湿度70〜75%のホイロにて45分間のホイロタイムを取って生地を発酵させた後、オーブンにて焼成を行なった。その他は実施例1と同じである。得られた食パンは、外観は良好であったが米臭さを有するものであった。
【0044】
(実施例3)
米粉82.5重量部(100メッシュパス品)、グルテン(グリコ栄養食品製)17.5重量部を混合し、該穀粉100重量部に対して砂糖7重量部、食塩1.8重量部、脱脂粉乳3重量部、マーガリン5重量部、モルト0.5重量部、天然酵母生種(ホシノ天然酵母パン種より調製)及び水73重量部を、ミキサーを用いて混合し、生地を調製した。混合は、低速混合3分、中速混合3分、中高速混合3〜4分行って温度20〜24℃の生地を得た。
【0045】
得られた生地を使用して以下の手順でクロワッサンを製造した。
(1)生地を−6℃の冷凍庫にて60分冷却する(冷却工程)。
(2)生地を温度17℃に調整したドゥコンディショナーに収容し、12時間1次発酵させる(1次発酵工程)。
(3)生地を−6℃の冷凍庫にて70〜80分冷却する。
(4)生地を温度13〜14℃程度にしてリバースシーターを使用して厚さ5mm程度のシート状とする。
(5)シート化した生地の中央部にシートの1/3程度の広さの油脂シート(重量にして約35%)を置き、左右の生地を折りたたんでサンドイッチ状に3層とし、リバースシーターにかけて厚さ4mmとした後に−6℃の冷凍庫にて40〜50分休ませる。
(6)生地を13〜14℃程度にして3層に折りたたみ、再びリバースシーターを使用して厚さ3mm程度のシート状とする(シート化工程)。
(7)生地から2等辺三角形の生地を切り出し、底辺側から巻いて成形生地とする(成形工程)。
(8)成形生地を温度31℃、湿度75%のホイロに入れて、3時間発酵させる(ホイロ工程)。
(9)ホイロ工程を経た成形生地について、上火200℃、下火120℃に設定したオーブンを使用して、15〜30分焼成を行なう。
【0046】
上記の製造工程(1)〜(9)を有する実施例3で得られたクロワッサンは、米臭さを有さず、外観も良好であった。
【0047】
(比較例5)
冷却工程を設けなかった点を除き、実施例1と同じ製造方法にてクロワッサンを製造したところ、1次発酵工程において生地に複数の亀裂が発生し、得られたクロワッサンの外観は到底商品価値のないものであった。
【0048】
(比較例6)
配合において天然酵母に代えてパン用のイーストを1重量部使用し、その他は実施例3と同じとし、また製造工程においては冷却工程を設けることなく上記実施例3の(2)以降の製造工程によりクロワッサンを製造した。得られたクロワッサンは、外観は良好であったが米臭さを有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉80〜90重量部とグルテン20〜10重量部とからなる穀粉100重量部に対して天然酵母生種を添加して混合して生地とする混合工程、前記生地を発酵させて1次発酵生地とする1次発酵工程、前記1次発酵生地を分割して分割生地とする分割工程、前記分割生地をさらに発酵させて2次発酵生地とする2次発酵工程及び前記2次発酵生地を焼成して米粉パンとする焼成工程を有し、
前記混合工程と前記1次発酵工程の間に前記生地を冷却して生地内部の温度を前記天然酵母の有効発酵温度未満とする冷却工程を設けることを特徴とする米粉パンの製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程の所要時間が3時間以下であることを特徴とする請求項1に記載の米粉パンの製造方法。

【公開番号】特開2011−78344(P2011−78344A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232688(P2009−232688)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【特許番号】特許第4612732号(P4612732)
【特許公報発行日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(509278896)
【Fターム(参考)】