説明

米粉パン用添加剤、米粉パン用米粉組成物、米粉パンの製造方法及びパン生地

【課題】米粉とグルテンを主成分として使用した米粉パンにおいて、特にフランスパン、クロワッサン、食パンを製造した場合にサクサクした食感を有し、米粉パン特有の臭気を有さず、特有の焼き色を有するパンを製造することが可能な米粉パン用添加剤、パン用の米粉組成物、米粉パンの製造方法並びにパン生地を提供する。
【解決手段】グルテンとアルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの少なくとも1種のアルファ化澱粉とをグルテン/アルファ化澱粉=75/25〜95/5(重量比)にて含有する米粉パン用添加剤とする。米粉パン用米粉組成物は穀粉100重量部中、米粉75〜85重量部、グルテン14〜22重量部及びアルファ化小麦粉又はアルファ化コーンスターチ1〜5重量部を含有するものとする。米粉パンの製造方法は上記の米粉組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉を主成分とする米粉パン用の添加剤、米粉パン用の米粉組成物、該米粉組成物を使用した米粉を主成分とする米粉パンの製造方法並びに米粉パン用のパン生地に関する。
【背景技術】
【0002】
日本における食糧自給率を高め、将来予測される食料不足の問題を解決することを目的として米粉を使用したパンは公知である(特許文献1〜3など)。特許文献1記載のパンは米粉、グルテン及びトレハロースを使用することを特徴とするものであり、特許文献2に記載の米粉パンの製造方法は、米粉、グルテン及びトレハロースやマルトース等の難発酵性糖類を使用するか又はアルファ化澱粉と澱粉糖化酵素を使用して製造中に難発酵性糖類を生成させることを特徴とするものである。また特許文献3に記載の米粉パン並びにその製造方法は、特許文献1,2記載の発明を改良したものであって、特定の粒度分布を有する米粉、グルテン及びマルトースを使用することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-274845号公報
【特許文献2】WO2003/063596号公報
【特許文献3】特開2004-267194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1〜3記載の発明、とりわけ特許文献3記載の発明によれば、十分な商品価値を有する米粉パンを製造することはできるが、得られたパンは米粉パン特有の臭気(いわゆる米臭さ)を有し、特に食パン、フランスパンやクロワッサンでは、米粉パン特有のもっちりした食感のパンとなって、このもっちり感自体は米粉パンの特徴ではあるものの、表層がサクサク感を有するパンが得られず、また焼き上がりの色が浅く、食パン、フランスパン、クロワッサンに特有の焼き色のパンを得ることができないために、小麦粉パンのような米粉パンを求める要請に対応することはできなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題に鑑みて、米粉とグルテンを主成分として使用した米粉パンにおいて、特にフランスパン、クロワッサン、食パンを製造した場合に表層がサクサクした食感を有し、米粉パン特有の臭気を有さず、特有の焼き色を有するパンを製造することが可能な米粉パン用添加剤、パン用の米粉組成物、米粉パン用のパン生地並びに米粉パンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の米粉パン用添加剤は、グルテンとアルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの少なくとも1種のアルファ化澱粉とをグルテン/アルファ化澱粉=75/25〜95/5(重量比)にて含有することを特徴とする。
【0007】
上記の米粉パン用添加剤を米粉と混合して穀粉とし、該穀粉を使用してパンを製造すると、特にフランスパン、クロワッサン、食パンを製造した場合に、小麦粉を使用したこれらの従来のパン特有の表層がサクサクした食感と焼き色を有し、米粉パン特有の臭気を有しない米粉を主穀粉成分とするパンを得ることができる。また得られたパンは内相についても改善されたものである。グルテン/アルファ化澱粉重量比の下限は80/20以上であることが好ましく、85/15以上であることがより好ましい。グルテン/アルファ化澱粉重量比の上限は93/7以下であることが好ましく、92/8以下であることがより好ましい。
【0008】
本発明の米粉組成物は、穀粉100重量部中、米粉75〜85重量部、グルテン14〜22重量部及びアルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの少なくとも1種のアルファ化澱粉1〜5重量部からなることを特徴とする。
【0009】
上記米粉組成物を使用してパンを製造すると、特にフランスパン、クロワッサンや山食パンを製造した場合に、小麦粉を使用したこれらの従来のパン特有のサクサクした食感と焼き色を有し、米粉パン特有の臭気を有しない米粉を主穀粉成分とするパンを製造することができた。また得られたパンは内相についても改善されたものであった。該米粉組成物を使用すると、コッペパンや食パン、アンパンなどの菓子パン等を製造した場合も従来の米粉パンよりも優れた焼き色のパンが得られる。またパンを混合、分割、成形、発酵、焼成等の全工程を連続的に行なう自動製造装置で製造する場合に、従来の米粉パンでは、発酵工程(小麦粉パンの製造における1次発酵(フロアタイム)や2次発酵(ホイロタイム)に相当する発酵工程)において、生地を収容する容器であるプルファーに、発酵中に生地が粘着し、容器を反転させて生地を落下させて次工程に送ることができなくなるという問題が発生したが、本願発明によれば、係る問題も同時に解消できる。
【0010】
穀粉中の米粉とグルテンの配合比は、この範囲を逸脱すると、良好なパンが形成できない。アルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの少なくとも1種のアルファ化澱粉の配合量は、1重量部未満の場合には臭気、サクサク感、焼き色、内相において十分な改良効果が得られず、配合量が5重量部を超えると食感が低下する。アルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチは単独で使用してもよく、併用してもよいが、いずれかを単独で使用することが好ましい。アルファ化澱粉としてアルファ化タピオカ澱粉やアルファ化馬鈴薯澱粉を使用した場合には、得られたパンは、理由は明らかではないが効果の点において本願発明よりも劣ったものとなる。米粉組成物のグルテンの配合比は13〜21重量部であることがより好ましく、アルファ化澱粉の配合比は1〜4重量部であることがより好ましい。
【0011】
上記の米粉組成物は、上記本発明の米粉パン用添加剤と米粉とを、米粉/米粉パン用添加剤=85/15〜70/30(重量比)程度の範囲にて混合することにより容易に製造することができる。
【0012】
本願の米粉パンの製造方法は、少なくとも穀粉、酵母及び水成分を混合して生地を製造する混合工程、前記成形生地を発酵させるホイロ工程及び前記ホイロ工程後の成形生地を焼成してパンとするする焼成工程を有し、
前記穀粉は、100重量部中に米粉75〜85重量部、グルテン14〜22重量部及びアルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの1種のアルファ化澱粉1〜5重量部を含有するものであることを特徴とする。
【0013】
上記のパンの製造方法によれば、特にフランスパン、食パン、クロワッサンを製造した場合に、小麦粉を使用したこれらの従来のパン特有のサクサクした食感と焼き色を有し、米粉パン特有の臭気を有しない米粉を主成分とする米粉パンを製造することができる。また、コッペパンやアンパンなどを製造した場合も従来よりも優れた焼き色のパンが得られる。さらにパンを、コンベアなどを使用した自動製造装置で製造する場合に、上述のように発酵工程において、生地が発酵中にプルファーに粘着し、容器を反転させて生地を落下させて次工程に送ることができなくなるという問題も発生することがなかった。
【0014】
また本発明の製造方法により得られたパンは、特許文献1,2記載の発明により得られたパンと比較すると、理由は明らかではないが、日持ちが良好であることが判明した。
【0015】
本発明の米粉パン用のパン生地は、少なくとも穀粉、酵母及び水成分を混合して製造したパン生地であって、
前記穀粉は、100重量部中に米粉75〜85重量部、グルテン14〜22重量部及びアルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの少なくとも1種のアルファ化澱粉1〜5重量部を含有するものであることを特徴とする。
【0016】
上述のパン生地は混合した生地のまま、ないし成形した生地として冷凍が可能であり、該冷凍生地は、解凍するとそのまま使用でき、冷凍しない場合と同じパンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で使用する米粉は、生米を粉砕、粉末化したものである。米としては、粳米、もち米などを使用する。粉砕する前の生米は、精白米、玄米、屑米、古米など特に制限されるものではないが、精白米であることが好ましい。米粉の粒度は、80メッシュ、好ましくは100メッシュをパスするものであれば特にその粒度、粒度分布は限定されないが、200メッシュをパスする割合が50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。ただし、少量の粗い粒子が混在しても問題はなく、100メッシュオンの量が5重量%以下であることが好ましい。生米を粉砕して米粉とする方法は、公知の方法が使用でき、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等が例示される。
【0018】
アルファ化コーンスターチの原料であるコーンスターチとしては、一般的なとうもろこしのコーンスターチを使用することが好ましい。一般的なコーンスターチは、アミロースを21〜24重量%を含むものである。もちとうもろこしから得られるワキシーコーンスターチはアミロースを含有しないものであり、本発明において使用可能であるが、これを使用すると、得られたパンの側面に収縮が発生して商品価値が低下する傾向があり、焼き色も一般的なコーンスターチを使用した場合と比較すると薄くなり、目的とする効果が十分得られない。
【0019】
本発明の米粉組成物並びにパンの製造方法によれば、小麦粉を使用することなく米粉を主成分として小麦粉パンの外観、食感、風味を有するパンを得ることができるが、小麦粉を少量使用してもよい。この場合、使用する小麦粉の量は、米粉の10重量%以下、即ち穀粉100重量部中の8.5重量部以下であることが好ましく、5重量%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の米粉組成物並びにパンの製造方法においては、製造するパンの種類に応じて、砂糖、食塩、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類などの公知の配合成分から選択される少なくとも1種をさらに配合することが好ましい。乳化剤は添加不要である。
【0021】
糖類としては、特に限定されるものではなく、砂糖などの糖、マルトース(麦芽糖)、トレハロース、フルクトース等のオリゴ糖、マルチトール、ソルビト−ル、キシリトール、水添水飴などの糖アルコールがあげられ、これらの糖類は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。糖類は砂糖などの易発酵性の糖とオリゴ糖や糖アルコールなどの難発酵性糖類を併用することが好ましく、オリゴ糖や糖アルコールは、本発明の米粉パン用添加剤に添加してもよく、米粉パン用米粉組成物に添加してもよく、米粉パンの製造において混合工程で添加してもよい。麦芽糖はモルトとして添加してもよい。
【0022】
本発明において使用する乳成分としては粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等があげられ、前記卵成分としては、卵黄、卵白、全卵その他の卵に由来する成分があげられる。また前記油脂としては、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、オリーブ油等があげられる。
【0023】
前記無機塩類としては、食塩、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、焼成カルシウム、アンモニウムミョウバン等があげられる。
【0024】
また、本発明のもち米粉組成物には、各種の食品または食品添加物を配合してもよく、例えば、植物の果実、種子もしくは枝葉、またはイーストフード、乳化剤などがあげられる。
【0025】
本発明により得られたパンは、上記のように、先行文献1〜3記載の従来の米粉パンと比較して米粉パン特有の臭気がないものであるが、製造するパンに応じて小麦粉パンのような香味を付与するために香味成分を添加することは好ましい態様であって、該香味成分の添加により米粉パンでありながら小麦粉パンの風味を有するパンが得られる。係る香味成分としては、ルヴァンリキッド及びフレーバーがあり、フレーバーとしてはクレームドルヴァン、パン用酒種フレッシュ等が例示される。ルヴァンリキッドは天然酵母を使用して製造され、パンの製造において生地を発酵させるための酵母として使用されるものであるが、実際にパン生地の発酵に使用すると発酵に長時間を必要とし、短時間で発酵させる米粉パンには、発酵目的のために使用することができないものである。本発明においては、酵母は別に使用し、ルヴァンリキッドは発酵作用を奏さずに香味成分として作用する。
【0026】
香味成分は、ルヴァンリキッドを使用する場合、その添加量は穀粉100重量部に対して5〜20重量部であり、クレームドルヴァン、パン用酒種フレッシュ等のフレーバーの場合には1〜7重量部である。これらの香味成分の添加量が少なすぎる場合には香りが十分に得られず、多すぎると香りが強くなりすぎる。
【0027】
上記ルヴァンリキッドとしてはライ麦粉由来の天然酵母のルヴァンリキッドを使用することが好ましく、該ライ麦粉由来の天然酵母のルヴァンリキッドは以下のようにして製造する。
(1)ライ麦粉100重量部を35℃の水100重量部と十分に混合し、30℃にて24時間保温し、ライ麦粉の酵母を増殖させて元種とする。
(2)得られた元種合計200重量部に小麦粉100重量部とライ麦粉100重量部を添加し、25〜35℃の水を加えて十分に混合し、30℃にて24時間保温して第1酵母(計500重量部)とする。
(3)第1酵母500重量部に小麦粉750重量部、25〜28℃の水375重量部を添加、撹拌し、28℃にて12時間保温して第2酵母とする。
(4)上記第2酵母1500重量部に小麦粉3000重量部と25〜28℃の水1800重量部を添加、撹拌して28℃にて6時間保温してルヴァンリキッドとする。ルヴァンリキッドは10〜14℃の冷蔵庫に保存する。
ルヴァンリキッドを使用して量が減少した場合、原料を追加して種継ぎを行なうことにより、継続して使用することができる。種継ぎは、上記のルヴァンリキッド100重量部に対して小麦粉300重量部、温水350〜400重量部添加し、30℃にて2.5〜3時間混合する。
【0028】
本発明のパンの製造方法は、少なくとも穀粉、酵母及び水成分を混合して生地を製造する混合工程、前記生地を成形して成形生地とする成形工程、前記成形生地を発酵させるホイロ工程及び前記ホイロ工程後の成形生地を焼成してパンとする焼成工程を有する。酵母としては、天然酵母、生イースト、ドライイースト等の公知の酵母を使用することができる。本発明のパン生地を冷凍する場合には、低温に強い冷凍用の酵母(冷凍用イースト)を使用することが好ましい。穀粉は米粉、グルテン及びアルファ化澱粉を予め粉の状態で混合した米粉組成物を使用してもよく、米粉とグルテンとを混合した組成物、アルファ化澱粉、その他の成分を混合工程で混合してもよく、また個々の成分を別個に混合工程で混合してもよい。
【0029】
本発明のパンの製造方法において米粉、グルテン等の穀粉と混合する水成分は水であってもよく、牛乳のようなものであってもよく、製造目的のパンに応じて適宜選定することができる。混合は手で行なってもよいが、市販のミキサーを使用して行なうことが好ましい。混合条件は小麦粉パンの製造における当業者の技術常識により適宜設定することができる。
【0030】
上記のパンの製造方法において、角食パン、山食パン、フランスパンのようなパンを製造する場合には、混合工程で得られた生地を休ませるベンチ工程を設けることが好ましく、また混合工程とベンチ工程の間に混合工程にて製造した生地を分割して分割生地とする分割工程を設け、分割生地をベンチ工程に送ることが好ましい。ベンチ工程にて得られた分割生地は、成形工程において製造するパンの形状に応じた形状に成形され、その後発酵のためにホイロ工程に送られる。
【0031】
本発明においては、1次発酵時間(小麦粉パンの製造におけるフロアタイムに相当する)は、なしで行なうことができる。従って、特許文献1,2に記載の方法よりも短時間でパンを製造することができる。ただし、上記の角食パン、山食パン、フランスパンのようなパンを製造する場合には、1次発酵時間を設けてもよく、その場合、該1次発酵時間(フロアタイム)は30分以下、好ましくは20分以下である。
【0032】
上記のベンチ工程における所要時間(ベンチタイム)は、常温で5〜30分であることが好ましく、10〜25分であることがより好ましい。またホイロ工程の所要時間であるホイロタイム(発酵時間)は、20〜100分であることが好ましく、30〜80分であることがより好ましく、30〜70分であることがさらに好ましい。ホイロ工程の条件も製造するパンに応じて適宜設定するものであるが、発酵させる必要があるので、30〜45℃、湿度60〜80%の高湿度のホイロに収容する。
【0033】
また上記のパンの製造方法において、クロワッサンなどのデニッシュパンを製造する場合には、混合工程において25〜30℃の仕上がり温度にて得られた生地を、まず生地温度が10℃以下、好ましくは8℃程度になるように冷却する冷却工程を設ける。冷却に際しては、シート状にすることが好ましい。冷却工程は、以下の油脂シートを使用して折り返して層状構造の生地とする際に、油脂が溶解することを防止する作用を有する。冷却工程で冷却し後のシート状の生地は、何度も油脂シートの層を介して折り返して薄いシート状生地に成形するシート化工程、積層されたシート状生地を裁断する分割工程、並びに裁断された生地を製造するパンの形状に応じた形状に成形する成形工程を経た後にホイロ工程に送られる。シート化工程においては、生地が発熱するので、油脂が溶融しないように繰り返し冷却工程を設けても良い。冷却に際しては、生地が凍らないように注意する。
【0034】
焼成は公知の方法で行なうことができるが、焼き色が優れている点で通常のパンの焼成を行なうオーブンを使用することがより好ましい。本発明のパンの製造は、個々の工程を手作業で行なってもよく、また混合工程、分割工程、成形工程、発酵(ホイロ)工程、焼成工程等の必要な全工程を連続して行なうことができる連続製造装置を使用して行なってもよい。
【0035】
本発明の製造方法により製造する米粉パンとしては特に限定されるものではなく、食パン、山食パン、フランスパン、クロワッサンが特に好ましいが、コッペパン、バターロール、アンパン等の菓子パン、ドイツパン、ベーグル、デニッシュパン、イーストドーナツ、プレッツェル、ピザ、ナン等の発酵パンなども製造可能である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
(実施例1)
米粉80重量部(100メッシュパス100重量%で200メッシュパスの割合が65重量%)、グルテン(グリコ栄養食品製)17.5重量部、アルファ化コーンスターチ(三和コーンアルファーY)2重量部を混合して米粉組成物とし、該米粉組成物100重量部に砂糖7重量部、マルトース2.5重量部、食塩2重量部、脱脂粉乳5重量部、生イースト2.5重量部、マーガリン8重量部及び水76重量部をミキサーを用いて混合し、生地を調製した。混合は、26〜28℃にて、低速混合1分、中速混合2分、中高速混合7分行った。
【0037】
得られた生地は1次発酵工程(フロアタイム)を設けることなく分割工程において80gに分割し、発酵を行なうベンチタイムを15分設けた(発酵工程)。発酵工程後の生地は丸めを行う成形を行った。成形した生地は、温度40℃、湿度80%のホイロにて50分発酵させた後、オーブンにて焼成を行なった。オーブンは上火200〜210℃、下火190〜220℃に設定して、焼成は成形した生地4個を型内に収容して15〜30分行ない山食パンを製造した。
【0038】
(実施例2)
アルファ化コーンスターチに代えてアルファ化小麦粉を使用した以外は実施例1と同様にして山食パンを製造した。
【0039】
(比較例1)
アルファ化コーンスターチに代えてアルファ化タピオカ澱粉を使用した以外は実施例1と同様にして山食パンを製造した。
【0040】
(比較例2)
アルファ化コーンスターチに代えてアルファ化馬鈴薯澱粉を使用した以外は実施例1と同様にして山食パンを製造した。
【0041】
(比較例3)
アルファ化澱粉を添加することなく、他は実施例1と同様にして山食パンを製造した。
【0042】
(実施例1,2、比較例1〜3評価)
実施例1,2並びに比較例1〜3にて得られた山食パンについて、膨らみ、焼き色、食感、臭気及び内相について官能試験を行い、膨らみ、焼き色については小麦粉を使用した従来の山食パンの良好なものと同レベルの場合を◎、やや良好なものと同レベルの場合を○、従来の山食パンの良好なものと比較してレベルが低い場合を△とした。臭気についてはいわゆる米臭さの有無について官能評価を行ない、臭気ありを×、なしを○とした。また、食感、については10人のパネラーによる5段階評価の結果の平均を求め、結果を表1に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果より、本発明により得られた山食パンは、小麦粉を使用した従来の高級山食パンと膨らみ、焼き色において同等であり、従来の米粉パンのような米臭さもなく、食感も良好であった。これに対してアルファ化タピオカ澱粉、アルファ化馬鈴薯澱粉を使用した場合には、膨らみ、焼き色、食感の点で満足できるものではなく、アルファ化澱粉を全く使用しないものは、特許文献1,2記載の発明のパンと比較すると優れたものではあったが、焼き色、臭気の点では満足できるものではなかった。実施例1において、アルファ化コーンスターチの配合量を4重量部としたパンも製造したが、実施例1とほぼ同じパンが得られた。
【0045】
(実施例3)
生イーストに代えて冷凍用酵母(イースト)を使用した以外は実施例1と同様にして米粉パン用のパン生地を製造し、分割、成形した後に−10℃にて冷凍し、1週間保存した。1週間後にパン生地を取り出して解凍し、実施例1と同様にホイロ工程を経た後に焼成してパンを製造したところ、実施例1で得られたパンとほぼ同じ程度の評価のパンが得られた。
【0046】
(実施例4)フランスパンの製造例
米粉80重量部(100メッシュパス100重量%で200メッシュパスの割合が71重量%)、グルテン(グリコ栄養食品製)18重量部、アルファ化コーンスターチ(三和コーンアルファーY)2重量部を混合して米粉組成物とし、該米粉組成物100重量部に食塩1.9重量部、ドライイースト1重量部及び水80〜81重量部を、ミキサーを用いて混合し、生地を調製した。混合は、27℃にて、低速混合3分、中速混合3分、中高速混合3分行った。
【0047】
得られた生地は1次発酵工程(フロアタイム)を設けることなく分割を行い、分割した生地についてベンチタイム20分を設けた。次いで分割した生地を成形し、温度35℃、湿度70〜75%のホイロにて45分間のホイロタイムを取って生地を発酵させた後(ホイロ工程)、オーブンにて焼成を行なった(焼成工程)。オーブンは上火210℃、下火200℃に設定して、焼成を30〜35分行ないフランスパンを製造した。
【0048】
得られたフランスパンは焼き色,膨らみ(焼き上がりのパンの高さ)並びに生地に軽く切り込みを入れて形成するクープを含めて外観が強力粉を使用した高級フランスパンと比較して遜色がなく、表層の食感はカリッとしており、内相も良好であり、食感においても前記高級フランスパンと比較して遜色がないものであった。また焼き上がり1時間後も表層のカリッとした食感は変化がなかった。
【0049】
(実施例5)
香味成分としてクレームドルヴァンを穀粉100重量部に対して4重量部添加した以外は実施例4と同様にしてフランスパンを製造した。
【0050】
得られたフランスパンは、外観、食感、内相は実施例3のフランスパンと同じであったが、実施例3のフランスパンにはなかった強力粉を使用した高級フランスパンと同様な香りを有しており、米粉パンであるのに小麦粉パンのような印象を与えるものであった。クレームドルヴァンに代えてルヴァンリキッドを12重量部添加した場合も同様の結果が得られた。
【0051】
(比較例4)
アルファ化コーンスターチを添加しなかった点以外は実施例4と同様にしてフランスパンを製造した。
【0052】
得られたフランスパンは、実施例3のパンと比較すると膨らみが悪く、クープの形成も不十分であり、内相も劣るものであり、パンの底面で製造時に生地表面が合わさった継ぎ目部分において溝が発生していた。また表層は、焼き上がり直後は実施例3のパンと同様にサクッとした食感であったが、焼き上がり1時間後には柔らかくなっていた。
【0053】
(実施例6)
米粉80重量部(100メッシュパス100重量%で200メッシュパスの割合が80重量%)、グルテン(グリコ栄養食品製)18重量部、アルファ化コーンスターチ2重量部を混合して米粉組成物とし、該米粉組成物100重量部に砂糖7重量部、食塩1.8重量部、脱脂粉乳3重量部、ドライイースト1重量部、マーガリン5重量部、モルト0.5重量部及び水73重量部を、ミキサーを用いて混合し、生地を調製した。混合は、24℃にて、低速混合3分、中速混合3分、中高速混合3〜4分行った。
【0054】
得られた生地を使用して以下の手順でクロワッサンを製造した。
(1)生地を−5℃の冷凍庫にて60分冷却する(冷却工程)。
(2)生地を8℃程度に戻してリバースシーターを使用して厚さ6mm程度のシート状とする。
(3)シート化した生地の中央部にシートの1/3程度の広さの油脂シート(重量にして約35%)を置き、左右の生地を折りたたんでサンドイッチ状に3層とし、リバースシーターにかけて厚さ5mmとした後に−5℃の冷凍庫にて60分休ませる。
(4)生地を8℃程度に戻して3層に折りたたみ、再びリバースシーターを使用して厚さ3mm程度のシート状とする(シート化工程)。
(5)生地から2等辺三角形の生地を切り出し、底辺側から巻いて成形生地とする(成形工程)。
(6)成形生地を温度35℃、湿度70%のホイロに入れて、発酵させる(ホイロ工程)。
(7)ホイロ工程を経た成形生地について、上火200℃、下火190℃に設定したオーブンを使用して、14〜15分焼成を行なう。
【0055】
得られたクロワッサンは、小麦粉を使用した一般のクロワッサンと同様な焼き色、外観であり、食感もパリッとしたものであって、内相も良好であった。2時間ほど放置したクロワッサンも表層を指で押したときのパリッとした感じは変化がなかった。
【0056】
(比較例5)
アルファ化コーンスターチを添加しなかった点以外は実施例6と同様にしてクロワッサンを製造した。
【0057】
得られたクロワッサンは、実施例6のクロワッサンと比較すると表層に焼き色があまりつかず白茶けた感じであり、内部に空洞があって内相も不良であった。焼き上がり表面の外観は実施例6のクロワッサンと同様にパリッとした感じであるが、食べてみると比較例5のクロワッサンは、表層のサックリ感がなくてフニャッとつぶれる感じであった。また比較例5のクロワッサンはバターの香りが強すぎて油っぽい感じであった。さらに2時間ほど放置したところ、表層を指で押すと柔らかくなっていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルテンとアルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの少なくとも1種のアルファ化澱粉とをグルテン/アルファ化澱粉=75/25〜95/5(重量比)にて含有する米粉パン用添加剤。
【請求項2】
穀粉100重量部中、米粉75〜85重量部、グルテン14〜22重量部及びアルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの少なくとも1種のアルファ化澱粉1〜5重量部を含有する米粉パン用米粉組成物。
【請求項3】
少なくとも穀粉、酵母及び水成分を混合して生地を製造する混合工程、前記生地を成形して成形生地とする成形工程、前記成形生地を発酵させるホイロ工程及び前記ホイロ工程後の成形生地を焼成してパンとする焼成工程を有し、
前記穀粉は、100重量部中に米粉75〜85重量部、グルテン14〜22重量部及びアルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの少なくとも1種のアルファ化澱粉1〜5重量部を含有するものであることを特徴とする米粉パンの製造方法。
【請求項4】
さらにルヴァンリキッドを前記穀粉100重量部に対して5〜20重量部添加することを特徴とする請求項3に記載の米粉パンの製造方法。
【請求項5】
さらにフレーバーを前記穀粉100重量部に対して1〜7重量部添加することを特徴とする請求項3に記載の米粉パンの製造方法。
【請求項6】
少なくとも穀粉、酵母及び水成分を混合して製造したパン生地であって、
前記穀粉は、100重量部中に米粉75〜85重量部、グルテン14〜22重量部及びアルファ化小麦粉澱粉、アルファ化コーンスターチの少なくとも1種のアルファ化澱粉1〜5重量部を含有するものであることを特徴とする米粉パン用のパン生地。

【公開番号】特開2011−113(P2011−113A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164875(P2009−164875)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【特許番号】特許第4418021号(P4418021)
【特許公報発行日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(503067502)株式会社福盛ドゥ (13)
【Fターム(参考)】