説明

米粉プレミックス

【課題】 家庭で短時間に、且つ清潔に麺・ピザ・パン等の生地ができる米粉プレミックスを提供することにある。
【解決手段】 うるち米を製粉した米粉と、予めアルファ化したもち米粉を混合することにより、アルファ化度を調整した米粉に、水分を加えて混練し、常温で麺状又はシート状の少なくともいずれかに成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類として米粉のみを主原料とし、手や容器にドウが付着することなく、簡単に、短時間で、家庭用米粉料理が調製できる米粉プレミックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の安心・安全への希求の高まり、不況感からの内食ブームの影響から、パン、ケーキ、麺、ピザ等の小麦粉利用料理を、家庭で自分で調理したいという消費者ニーズが年々大きくなってきている。また食育の一環から、児童に小麦粉料理を体験させたい欲求も強くなってきている。
【0003】
実際に、家庭で小麦粉利用料理を調理する際、小麦粉に添加物を加え、加水し、手で混合、混練し、水分の均一化・グルテンの安定化を図るため、長時間寝かした後、圧延等を施し、焼成、茹で等で加熱するのが一般的である。
【0004】
まず、小麦粉に水を廻し、そぼろ状になったものを、混練することによって、小麦粉のグルテンが網目構造を作り、その結果網目構造グルテンが、澱粉粒を包み込み、グルテンの安定化・水分の均一化のため寝かせる工程を1乃至2時間取ると、手に付着しない延展性のあるドウになる。
【0005】
この一連の動作において、大きな力が必要であることと、寝かすまでの工程で、粘性のあるグルテンが手に付着することを余儀なくされていた。大人もさることながら、児童においては、(1)寝かし時間が長い、(2)混練時にて大きな力が必要である、(3)小麦粉をまとめるまでに手が汚れるという極めて困難な作業である。
【0006】
これらを解決すべく、小麦粉グルテンを含まない米粉の利用を検討し、米粉のアルファ化度に着目し、鋭意検討を加えた。特許文献1には、米粉に一定量のアルファ化うるち米粉を混入したプレミックスの製法が開示されているが、アルファ化うるち米粉の量を多くすると手に付着が大きくなり、アルファ化うるち米粉を少なくすると、延展性が悪くなる欠点があった。従って特許文献1に開示されている技術によっては、米粉を混練する際、手・容器への付着は解決されなかった。このような背景から、家庭で短時間に、且つ清潔に麺・ピザ・パン等の生地ができるプレミックスの提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−215401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、家庭で短時間に、且つ清潔に麺・ピザ・パン等の生地ができるプレミックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題の解決のため、アルファ化もち米粉の、粉体をつなぐ効果を応用することを、鋭意検討した結果なされたものである。
【0010】
即ち、本発明は、うるち米を製粉した米粉と、予めアルファ化したもち米粉を混合することにより、アルファ化度を調整した米粉に、水分を加えて混練してなる混合物を、常温で麺状またはシート状の少なくともいずれかに成形してなることを特徴とする米粉プレミックス粉である。
【0011】
また、本発明は、前記アルファ化したもち米粉が、例えば寒梅粉等と称される米粉を得る方法である、焼いたもちを粉末化して得られる焼成アルファ化方式、または、例えばみじん粉等と称される米粉を得る方法である、蒸して乾燥したもち米を粉末化して得られる蒸煮アルファ化方式の少なくともいずれかにより、アルファ化してなることを特徴とする、前記の米粉プレミックス粉である。
【0012】
また、本発明は、前記アルファ化したもち米粉が、蒸煮アルファ化方式によりアルファ化してなることを特徴とする、前記の米粉プレミックス粉である。
【0013】
また、本発明は、前記アルファ化したもち米粉の混合比率が、5〜25重量%であることを特徴とする、前記の米粉プレミックス粉である。
【0014】
また、本発明は、調味料として食塩を含むことを特徴とする、前記の米粉プレミックス粉である。
【発明の効果】
【0015】
本発明者らの検討結果によると、紛体をつなぐためのアルファ化米粉として、アルファ化うるち米を混合した場合では、その添加量を変化させても、手等への付着、ドウ完成時の均一組織性に課題があった。うるち米粉にアルファ化もち米粉を10%混合することによって、子供でも簡単に均一なドウが調製できる、即ち、(1)混練中に手や容器に付着することなく、(2)大きな力が不要で、(3)混練後均一な組織が可能で、(4)その後加水、加熱し喫食時に、粉っぽさのないもちもち感のある食感が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のプレミックス粉により得る対象は、通常小麦粉で調製される、ピザ、パスタ・うどん等麺類、餃子・シュウマイ、大福もち等があげられる。ピザ等においては、本発明品を圧延し、上部にチーズ、野菜、ピザソース等をトッピングし、電子レンジで(500W×30秒)で加熱調理して完成できる。
【0017】
またパスタ・うどん等の麺類は、圧延後包丁等で好みの太さに裁断し、茹で、好みのソースもしくは麺つゆで調味し完成できる。また餃子・シュウマイ等は、圧延後、肉味噌・肉餡を包餡し、茹でたり、蒸したり、焼いたりして完成できる。さらに圧延した生地で小豆餡等を包餡して、蒸すことで大福もち等の饅頭類が完成できる。
【実施例1】
【0018】
まなむすめ粉90部に、アルファ化したもち米みやこがねもち粉を10部混合し、総粉体量に対して、1%の食塩と60%の水を加え、混練後圧延し、次の手順で評価用サンプルを調製した。
【0019】
(1)ポリエチレン袋に所定の粉体を充填し、袋を振りながら均一に混合した後、所定量の水を加える。(2)袋を上下に振りながら水分を分散する。(3)袋の上から手で混練する。(4)均一になった生地(ドウ)を圧延棒で、厚さ5mmに圧延する。(5)型を用いて直径10cmの円盤形状に打ち抜く。
【0020】
このようにして調製した評価用サンプルについて官能評価を行った。評価項目は(1)生地のまとまり度としては、円周部が滑らかで、切れ・クラックのないものを合格とし、(2)生地のべたつきとしては、ポリエチレン袋、及び手に付着しないものを合格とし、(3)圧延作業性としては、圧延時容易に圧延でき、圧延後収縮しないものを合格とし、(4)焼成後の食感としては、圧延した生地を電子レンジ(500W)で30秒加熱後、サクサクし、粉っぽさのないものを合格とした。評価結果を表1に示した。
【0021】
表1において、○は、前記の合格レベル、×は、同じく不合格レベル、△は、合格と不合格の中間レベルである。この場合は、表1に示したように、生地のまとまり度、生地のべとつき、圧延作業性、及び焼成後の食感いずれについても、良好な結果を得た。
【実施例2】
【0022】
うるち米として東北189号粉、アルファ化もち米粉としては、みやこがね粉を用いて、みやこがね粉を0部から100部まで、10部間隔でうるち米粉と混合し、総粉体量に対して1%の食塩を添加し、加水は表に示したように50%〜70%の範囲で調整しながら添加し、混練した後圧延し、上記手順にて評価用サンプルを調製し、上記方法で官能評価し、結果を表1に示した。
【0023】
官能評価結果は、アルファ化もち米粉5部より25部の場合、生地のまとまり度、生地のべとつき、圧延作業性、及び焼成後の食感いずれかについても、全ての項目で良好であったが、アルファ化もち米粉30部以上の場合、及び5部未満の場合では満足得る結果とはならなかった。
【実施例3】
【0024】
焼成方法の寒梅粉、蒸煮方式のみじん粉、及び今回調製したアルファ化みやこがね粉について、それぞれアルファ化米粉が10部になるように、東北189号米粉90部と混合し、総紛体量に対して1%の食塩を添加し、加水量は、それぞれ58%、55%、58%に調整し、混練した後圧延し、上記手順にて評価用サンプルを調製し、上記方法で官能評価し、結果を表1に示した。
【0025】
官能評価結果は、みじん粉、アルファ化みやこがね粉については、生地のまとまり度、生地のべとつき、圧延作業性、及び焼成後の食感いずれにおいても、全ての項目で良好であったが、寒梅粉の場合、焼成後の食感でやや満足を得られない結果となった。
【実施例4】
【0026】
うるち米の品種違いについて検討するために、アミロース量が17%程度のひとめぼれ、まなむすめ、東北189号、低アミロースタイプ(アミロース量10%以下)のたきたて、高アミロースタイプ(アミロース量23%程度)の東北198号について、それぞれの粉砕物90部に、予めアルファ化したひとめぼれの粉砕物10部を混合し、総粉体量に対して1%の食塩を添加し、70%の水を混合し、混練後圧延し、上記手順にて評価用サンプルを調製し、上記方法で官能評価し、結果を表1に示した。
【0027】
官能評価結果は、まなむすめ、東北189号、および東北198号については、生地のまとまり度、生地のべとつき、圧延作業性、及び焼成後の食感いずれについても、全ての項目で良好であったが、ひとめぼれ、たきたてについては、焼成後の食感でやや満足を得られない結果となった。
【実施例5】
【0028】
アルファ化もち米粉に関して、加水量について検討を加えた。うるち米(東北189号)粉を90部、80部にアルファ化みやこがね粉を10部、20部を配合し混合し、総紛体量に対して1%の食塩を添加し、加水量として、90部は55%〜62%、80部については55%〜62%で混合し、混練後圧延し、上記手順にて評価サンプルを調製し、上記方法で官能評価し、結果を表1に示した。
【0029】
官能評価結果については、アルファ化みやこがね粉10部では、加水58%〜60%が、アルファ化みやこがね粉20部では、加水55%〜58%が、生地のまとまり度、生地のべとつき、圧延作業性、及び焼成後の食感いずれについても、全ての項目で良好であった。
(比較例1)
【0030】
うるち米の品種違いについて検討するために、アミロース量が17%程度のひとめぼれ、まなむすめ、東北189号、低アミロースタイプ(アミロース量10%以下)のたきたて、高アミロースタイプ(アミロース量23%程度)の東北198号について、それぞれ粉砕物90部に、予めアルファ化したひとめぼれの粉砕物10部を混合し、総紛体量に対して1%の食塩を添加し、70%の水を混合し、混練後圧延し、上記手順にて評価用サンプルを調製し、上記方法で官能評価した。結果を表1に示した。
【0031】
官能評価結果は、まなむすめ、東北189号については、生地のまとまり度、生地のべとつきでやや満足な結果が得られなかった。たきたてについては、生地のべとつき、圧延作業性でやや満足な結果が得られなかった。ひとめぼれについては生地のまとまり度、生地のべとつき、及び圧延作業性で満足を得られない結果となった。また、東北189号については、生地のまとまり度で不満足な結果となった。
(比較例2)
【0032】
東北189号90部に、(1)アルファ化したひとめぼれ粉10部、(2)みやこがね粉10部、みやこがね粉90部にアルファ化したひとめぼれ粉10部の組み合わせについて、それぞれ混合し、総紛体量に対して1%の食塩を添加し、60〜70%の水を混合し、混練後圧延し、上記手順にて評価用サンプルを調製し、上記方法で官能評価した。結果を表1に示した。
【0033】
官能評価結果は、ベータうるち粉とアルファうるち粉の組み合わせでは、圧延作業性、焼成後の食感は良好であったが、生地のまとまり度、生地のべとつきは、やや満足な結果が得られなかった。また、ベータうるち粉とベータもち粉の組み合わせでは、全ての項目で満足な結果が得られなかった。さらに、ベータもち粉とアルファうるち粉の組み合わせでは、生地のまとまり度は満足な結果であったが、他の生地のべとつき、圧延作業性、焼成後の食感で満足な結果が得られなかった。
【0034】
【表1】

【0035】
以上の結果から、アルファ化したもち米粉の混合比率が、5〜25重量%の範囲であれば、本発明の目的に適う米粉プレミックスが得られ、家庭で調理可能なメニューの拡大や児童の食育に寄与することができる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
うるち米を製粉した米粉と、予めアルファ化したもち米粉を混合することにより、アルファ化度を調整した米粉に、水分を加えて混練してなる混合物を、常温で麺状またはシート状の少なくともいずれかに成形してなることを特徴とする米粉プレミックス粉。
【請求項2】
前記アルファ化したもち米粉は、焼いたもちを粉末化して得られる焼成アルファ化方式、または、蒸して乾燥したもち米を粉末化して得られる蒸煮アルファ化方式の少なくともいずれかにより、アルファ化してなることを特徴とする、請求項1に記載の米粉プレミックス粉。
【請求項3】
前記アルファ化したもち米粉は、蒸煮アルファ化方式によりアルファ化してなることを特徴とする、請求項1に記載の米粉プレミックス粉。
【請求項4】
前記アルファ化したもち米粉の混合比率は、5〜25重量%であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の米粉プレミックス粉。
【請求項5】
調味料として食塩を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の米粉プレミックス粉。


【公開番号】特開2011−83252(P2011−83252A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239975(P2009−239975)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(505012782)マルニ食品株式会社 (1)
【出願人】(509289722)有限会社登米ライスサービス (1)
【Fターム(参考)】