米粉含有パン及びその製造方法
【課題】小麦粉パンに比べて製パン性が劣るとされてきた米粉パンの製パン性を向上させるための技術を提供する。
【解決手段】紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を含むことを特徴とする米粉パン、および、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を添加することを特徴とする米粉パンの製造方法。
【効果】米粉を多く含有するにもかかわらず、膨張が良く、食味や外観が良好な米粉パンを製造することができる。
【解決手段】紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を含むことを特徴とする米粉パン、および、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を添加することを特徴とする米粉パンの製造方法。
【効果】米粉を多く含有するにもかかわらず、膨張が良く、食味や外観が良好な米粉パンを製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新形質米を含むパンに関し、紫黒米、高度硬質米、糖質米からなる新形質米の群の内の、少なくとも2種類の新形質米を含むパンに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本の食料自給率は39%であり、世界の食料需給が長期的には逼迫することが予想されているので、食料自給率を向上させることが必要とされている。
そのためには、国内産農産物によって輸入農産物を代替することが有効であり、たとえば、主として輸入小麦粉が原料として使用されているパン、麺、菓子等の原料として、米粉を使用することが可能となる技術開発が必要とされている。
【0003】
従来のパンへの米の代替利用に関しては、通常の米粉で小麦粉の20%を置換代替した場合はパンの品質が良いが、30%以上を添加した場合はパン体積、パン品質とも著しく低下すると報告されている(非特許文献1参照)。
その後、新潟県食品研究所による微細米粉製造技術の開発(非特許文献2及び3参照)や、湯捏ね法による米粉パンの製造技術(特許文献1参照)、超強力小麦を添加した米粉パン(特許文献2参照)、プラスチック成型加工技術の米粉パンへの適用(特許文献3及び4参照)等の技術開発が行われてきた。
また、新形質米の製パンへの利用については、平成18年度から開始された農水省の委託研究「加工業務用プロジェクト」の中でも研究されているが、本発明に見られるような、2種類以上の異なる特性の新形質米を復合利用した研究例はこれまで報告されていない。
【0004】
【非特許文献1】高野博之、農林水産技術会議事務局研究成果、161、p.117-130、1984年12月発行
【非特許文献2】有坂将美、北陸農業の新技術、4号、p.87-92、平成3年
【非特許文献3】江川和徳、北陸農業の新技術、5号、p.95-101、平成4年
【特許文献1】特開2003-235439号公報
【特許文献2】特開2004-208560号公報
【特許文献3】特開2005-13110号公報
【特許文献4】特開2006-271398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、小麦粉パンに比べて製パン性が劣るとされてきた米粉パンの製パン性を向上させるための技術開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上を復合して使用することによって驚くべき効果が現れることを見いだし、本発明を完成させたのである。
【0007】
すなわち、請求項1に係る本発明は、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を含む米粉パンである。
請求項2に係る本発明は、パン乾物重量に占める米粉の割合が10重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載する米粉パンである。
請求項3に係る本発明は、紫黒米、高度硬質米及び糖質米の米粉を、パン乾物重量に対してそれぞれ4重量%以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載する米粉パンである。
請求項4に係る本発明は、高度硬質米がae米であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載する米粉パンである。
請求項5に係る本発明は、紫黒米がイネ品種「朝紫」、高度硬質米がイネ品種「夢十色」、糖質米がイネ品種「あゆのひかり」であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載する米粉パンである。
請求項6に係る本発明は、さらに、イネ品種「コシヒカリ」の米粉をパン乾物重量に対し4重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載する米粉パンである。
請求項7に係る本発明は、米粉の一部あるいは全部が炊飯米から製造したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載する米粉パンである。
請求項8に係る本発明は、炊飯米が発酵乳および/あるいは乳を加えて炊飯したものであることを特徴とする請求項7に記載する米粉パンである。
請求項9に係る本発明は、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を添加することを特徴とする米粉パンの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、米粉を多く含有するにもかかわらず、膨張が良く、食味や外観が良好な米粉パン及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の米粉パンは、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明における米粉(含有)パンとは、米粉を含有するパンを指し、例としては、小麦粉に米粉を添加して製造したパン、米粉に小麦グルテンを添加して製造したパン、米粉にグアーガム等の増粘多糖類を添加して製造したパンを挙げることができる。
【0011】
本発明における新形質米とは、平成元年以来、農水省の研究プロジェクトの中で育成されてきた、形態および/あるいは特質の点で通常の日本型飯用米とは顕著に異なる米を指し、例としては、高アミロース米、低アミロース米、蛋白質変異米、大粒米、細長粒米、香り米、紫黒米などの色素米、糖質米、巨大胚米、ae米などの化学的突然変異米等が挙げられる(農林水産技術会議事務局研究成果340、平成11年参照)。
【0012】
本発明における紫黒米とは、果皮及び/または種皮にアントシアンやアントシアニジンを含有しているために玄米が黒色あるいは紫色を呈する米を指し、黒米、古代米とも呼ばれ、色素米の1種である。品種例としては、「朝紫」、「おくのむらさき」、「奥羽紫糯389号」等を挙げることができるが、これらに限定されない。
なお、上記紫黒米は、1品種のみでも複数品種を組み合わせたものでも良い。
【0013】
本発明における高度硬質米とは、ヨード呈色法によって測定したみかけのアミロース含量が25%以上の米のことである。高度硬質米には、アミロース含量が多い高アミロース米と、アミロース含量は多くないがアミロペクチンの短鎖が少ないために見かけのアミロース含量が高くなるae米とがある。
高アミロース米の品種例としては、「夢十色」、「ホシユタカ」、「ホシニシキ」、「こしのめんじまん」等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明におけるae米とは、デンプン枝作り酵素(ブランチングエンザイム)が欠損することによって見かけのアミロース含量が高くなった米を指し、品種例としては、九州大学の佐藤 光研究室で育成された「EM10」、「EM72」等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、「EM10」及び「EM72」は九州大学の佐藤 光研究室から請求により分譲を受けることができる。
なお、上記高度硬質米は、1品種のみでも複数品種を組み合わせたものでも良い。
【0014】
本発明における糖質米とは、デンプン枝切り酵素の欠損によってデンプンの蓄積が悪くなり、植物グリコーゲンを多く蓄積する米のことであり、品種例としては、「あゆのひかり」、「EM10」などを挙げることができるが、これらに限定されない。
なお、上記糖質米は、1品種のみでも複数品種を組み合わせたものでも良い。
【0015】
紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米を含む本発明の米粉パンには、(1)紫黒米と高度硬質米を含む米粉パン、(2)紫黒米と糖質米を含む米粉パン、(3)高度硬質米と糖質米を含む米粉パン、そして(4)紫黒米、高度硬質米および糖質米の3種類を全て含む米粉パン、という4種類があり、いずれも膨張が良く、食味や外観が良好な米粉パンである。
なお、本発明においては、紫黒米、高度硬質米及び糖質米以外の米粉の使用を妨げない。
【0016】
特に、高度硬質米がae米である場合は、パンの生地強度が強いために、発酵時の膨張が優れ、比容積が大きくてパン断面が均一な米粉パンとなる上、レジスタントスターチ含量が高いという特徴的なパンとなる。
【0017】
また、イネ品種「朝紫」に代表される紫黒米、イネ品種「夢十色」に代表される高アミロース米及びイネ品種「あゆのひかり」に代表される糖質米の米粉を、パン乾物重量に対してそれぞれ4重量%以上含む米粉パンは、外観が上品な薄紫色を呈し、食味の点では、良好な食感と噛み応えおよび甘みがあり、小麦粉パンよりも耐老化性が高いなどの点で、きわめて優れた特性を有している。
【0018】
また、本発明においては、前述の3種類の新形質米に加えて、一般飯用米であるイネ品種「コシヒカリ」の米粉を配合することにより、呈味性のさらに優れた米粉パンとなる。このとき、「コシヒカリ」から製造した米粉の配合量は、パン乾物重量に対して4重量%以上とすることが好ましい。
【0019】
本発明の米粉パンにおいては、パン乾物重量に占める米粉の割合が10〜80%(w/w)、より好ましくは20〜40%(w/w)であることが必要である。米粉含有率が10%(w/w)未満の場合は、通常の小麦粉パンに比べて、米粉の添加による効果が十分に現れないので、不適当である。逆に、米粉含有率が80%(w/w)より多い場合は、米粉が多すぎて膨張率が下がるため好ましくない。
【0020】
本発明においては、米粉パン製造時に米粉を添加する際に、未加熱の生粉ではなく、一部あるいは全部の米粉を炊飯の後に添加することによって、発明の効果をさらに高めることができる。
本発明において炊飯とは、米に加水して加熱することによりデンプンをα化(糊化)することを指し、炊飯米とは、米を加水して加熱することによりデンプンをα化(糊化)して得られた飯を指す。
【0021】
本発明において炊飯は通常の加水によって行っても良いが、発酵乳および/あるいは乳を加えて炊飯することによって、パンの品質を一層改良することができる。
本発明において乳とは、牛乳、水牛乳、やぎ乳、羊乳などの動物乳を指し、特に牛乳が好ましい。なお、本発明における乳には、生乳、殺菌乳、(部分)脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、加工乳、濃縮乳、れん乳などが含まれる。
本発明において発酵乳とは、上記乳を乳酸菌等で発酵させたものを指し、例としてはヨーグルト、ケフィア、クミスなどが挙げられる。
このとき添加する発酵乳および/あるいは乳の量は、水分全体に対して1〜80%(w/w)とすることができ、好ましくは5〜20%(w/w)とする。発酵乳および/あるいは乳の量が少なすぎると添加効果が充分に現れないので不適当であり、多すぎると炊飯加熱時に乳蛋白質が不均一に凝固することによって均一な製パン性を損なうので、不適当である。
【0022】
本発明の米粉パンは、上記したような新形質米を製粉して得られた米粉を含有するものである。米の形態は精白米、発芽玄米、胚芽米、玄米など特に限定されず、製粉は通常の米粉と同様の方法で行うことができる。
米の粉砕には、コーヒーミル、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機、超遠心粉砕機、気流粉砕機などを用いることができる。
【0023】
米をそのまま粉砕機によって粉砕してもよいが、炊飯米から米粉を製造する場合は、加熱炊飯後に乾燥してから粉砕しても良い。炊飯米の乾燥方法は特に限定されず、例としては凍結乾燥、真空凍結乾燥、焙煎乾燥などが挙げられる。
加熱炊飯後に粉砕することで、米粉中の酵素が失活し、デンプンがα化(糊化)するので、パンの品質が一層向上する。
【0024】
次に、本発明の米粉パンの製造方法について説明する。
原料粉としては、上記新形質米の米粉と、必要により小麦粉、小麦グルテン、ライ麦粉、大麦粉など通常パンに用いられる粉や、他の米粉を用いることができる。
上記原料粉の他に、イースト、食塩、水、砂糖、ショートニング、脱脂粉乳、イーストフードといった通常のパンに用いられる原料を用いることができる。
なお、上記原料の配合は通常と同様とすることができるが、原料粉全体の重量に対する加水量を60〜80%とすると、膨張率が大きくなるため好ましい。
これらの原料を用いて通常のパンと同様の方法で製造すれば良く、例えば原料をこね、発酵させ、生地を分割、整形し、焙炉、焙焼などの工程を経て最終製品とすることができる。
【0025】
以上のようにして製造された本発明の米粉パンは、米粉を多く含有するにもかかわらず、膨張が良く、食味や外観が良好な米粉パンとなる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例等を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
試験例1(米粉をパン乾物重量の25%添加した米粉パンの食味)
強力粉175gに、高アミロース米(品種名「夢十色」)75g(パン乾物重量の25重量%)を加え、さらに砂糖23g、スキムミルク7g、バター15g、食塩2.3g、イースト2.7g及び水を加えた。米は90%の歩留まりに精白してUdy社製サイクロン製粉機で粉末化して使用した。加水量は、粉重量250gに対して、64%、72%、80%(いずれもw/w)の3段階とした。
これらの原料を家庭用自動製パン器(ナショナル製SD-BT103)に入れ、練り、発酵、焼き上げ5時間のコースで自動製パンした(夢十色25%混合パン)。
比較のため、「夢十色」に替えて、一般飯用米(品種名「コシヒカリ」)75gを添加して上記と同様の条件でパンを試作した(コシヒカリ25%混合パン)。
また、米粉を用いずに強力粉のみ250gを用い、加水量64%として上記と同様にパンを製造した(100%小麦粉パン)。
【0028】
これらの試作パンのうち、加水量を64%としたものの食味を、外観、香り、粘り、硬さ及び味(総合評価)について100%小麦粉パンと比較した、パネリスト10名による官能検査結果を図1に示す。
図1(A)は製造当日のパンの検査結果を、図1(B)は製造後3日間室温で保存したパンの検査結果を示す。
図1において、aはコシヒカリ25%混合パンを、bは夢十色25%混合パンを示し、評価は100%小麦粉パンの食味を0点として表示した。
【0029】
図1に示すように、パン乾物重量の25%添加して調製した米粉パンは、「コシヒカリ」、「夢十色」とも、100%小麦粉パンに比べて大きく食味が劣るということはなかった。
焼き上げ当日は、「コシヒカリ」が「夢十色」より総合評価でやや優っていたが、製造3日後の検査結果では、「夢十色」の方が僅かに「コシヒカリ」に優っていた。
なお、「コシヒカリ」、「夢十色」のいずれの場合も、3種類の加水量のうち、加水量を64%として製造したものが最もパンの比容積が大きく、食感も良好であった。
【0030】
実施例1(各種の米粉パンの比容積)
各種の米を用いて米粉パンを製造し、比容積を比較した。
強力粉175gに、紫黒米(品種名「朝紫」)30g(パン乾物重量の10重量%)、高アミロース米(品種名「夢十色」)30g(パン乾物重量の10重量%)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)15g(パン乾物重量の5重量%)を加え、さらに砂糖23g、スキムミルク7g、バター15g、食塩2.3g、イースト2.7g及び水を加えた。米は試験例1と同様の方法で粉末化して使用した。加水量は、粉重量250gに対して、64%、72%、80%(いずれもw/w)の3段階とした。
これらの原料を家庭用自動製パン器(ナショナル製、商品名「SD-BT103」)に入れ、練り、発酵、焼き上げ5時間のコースで自動製パンした。なお、上記において加水量64%として製造した米粉パンは、表1にNo.24として示した。
【0031】
表1に示すように米の種類や配合割合を変えて、上記と同様の条件でパンを試作した。また、米粉を用いずに強力粉のみ250gを用い、加水量64%として上記と同様にパンを製造した(強力粉100%)。
これらの試作パンの比容積(焼き上がり直後のパンの体積を焼成前の体積で割った値)を測定した結果を表1に示す。
なお、表1中の配合割合及び加水量は、粉重量250g(強力粉+米粉)に対する米粉及び水の重量の割合を表示した。
【0032】
【表1】
◎:比容積が3.9以上、○:3.7以上で3.9未満、△:3.0以上で3.7未満、×:3.0未満
夢:「夢十色」(高アミロース米)、春:「春陽」(蛋白質変異米)、
モチ:モチミノリ(モチ米)、ミル:「ミルキークイーン」(低アミロース米)、
コシ:「コシヒカリ」(飯用米)、朝:「朝紫」(紫黒米)、
アユ:「あゆのひかり」(糖質米)
【0033】
表1から、本発明における紫黒米、高アミロース米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米を含む米粉パンは、いずれも比容積が3.7以上とよく膨張していることがわかる。
比容積の点で、本発明で対象とする新形質米以外の米を用いた場合にも、No.7(春陽)、No.9(モチミノリ)、No.12及び13(ミルキークイーン)等において比容積の大きい例も見られたが、米飯として良好な特性の「コシヒカリ」の場合は、比容積が小さく、米粉パン用としては不適当と判断された。
また、表には記載していないが、米粉混合比率が原料粉(強力粉+米粉)の5%(w/w)未満の場合には、米粉添加による効果が顕著に表れず、不適当であった。
【0034】
試験例2(「モチミノリ」、「春陽」、「夢十色」の3種類の米粉パンの物理特性の測定)
一般もち米(品種名「モチミノリ」)、タンパク質変異米(品種名「春陽」)、高アミロース米(品種名「夢十色」)の3種類の米粉を用いて製造した米粉パンについて、物理特性を測定した。
「モチミノリ」、「春陽」または「夢十色」の米粉を原料粉(強力粉+米粉)全体の30%(w/w)混合し、実施例1のようにして米粉パンを試作した。
【0035】
試作したパンの外周部を除き、厚さ2cm、縦および横それぞれ3cmの試料に切りとり、タケトモ電機製のテンシプレッサー(商品名「My Boy」)を用いて、物理特性を測定した。
測定は、岡留らの多重積算バイト法(岡留博司ら、日本食品科学工学会誌、45巻、7号、p.398-407、1998参照)を用いて行った。このとき、試料厚は20mm、バイトスピードは3mm/秒、加重反復数は5回、距離は35mm、クリアランスは0.8mmとした。
多重積算バイト法による測定の説明図を図2に示す。図2におけるTendernessは「最高圧縮強度」、Toughnessは「噛みごたえ」に相当する。
【0036】
「モチミノリ」、「春陽」、「夢十色」の米粉を30%混合し、加水量をそれぞれ64%、72%、80%に変えて試作したパンの物性の測定結果を図3に示す。図3(A)はTendernessの測定値を、図3(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図3中、白色の棒は加水量64%、灰色の棒は加水量72%、黒色の棒は加水量80%の結果である。また、aは「モチミノリ」、bは「春陽」、cは「夢十色」の結果である。
【0037】
80%加水の場合は、実施例1の表1に示すように、3種類の米粉パンとも膨張が悪くなり、比容積が小さく、硬い物性となる。この傾向は図3に明示されている。
一般もち米である「モチミノリ」やタンパク質変異米である「春陽」を用いた場合は、加水量の変化によるパンの物性変化が大きいのに対し、高アミロース米である「夢十色」の場合は、加水量の変化に対して安定した膨張と物性を示すことが明らかになった。
【0038】
試験例3(「夢十色」、「あゆのひかり」、「朝紫」の3種類の米粉パンの物理特性の測定)
高アミロース米(品種名「夢十色」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)、紫黒米(品種名「朝紫」)の3種類の米粉を用いて製造した米粉パンについて、試験例2に示す方法により物理特性を測定した。
「夢十色」、「あゆのひかり」、「朝紫」の米粉を原料粉(強力粉+米粉)全体の30%(w/w)混合し、実施例1及び試験例2と同様にして米粉パンを試作した。
試作した米粉パンについて、試験例2と同様に物性を測定した結果を図4に示す。図4(A)はTendernessの測定値を、図4(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図4中、白色の棒は加水量64%、灰色の棒は加水量72%、黒色の棒は加水量80%の結果である。また、aは「夢十色」、bは「あゆのひかり」、cは「朝紫」の結果である。
【0039】
「あゆのひかり」や「朝紫」の米粉を添加した米粉パンは、試験例2で用いた一般もち米「モチミノリ」やタンパク質変異米「春陽」に比べて、加水量の変化によるパンの物性変化が少なかった。
また、「夢十色」の場合は加水量の変化に対して安定した膨張と物性を示し、「あゆのひかり」の場合は加水量が増すにつれてパンの比容積が増して軟らかくなるのに対し、「朝紫」の場合は加水量が増加すると比容積が減少して硬さを増すという、3種類の米がそれぞれ異なる膨張性とパン物性を示す驚くべき事実が明らかになった。
【0040】
実施例2(「夢十色」、「朝紫」、「あゆのひかり」の混合添加によるパンの物理特性の測定)
高アミロース米(品種名「夢十色」)、紫黒米(品種名「朝紫」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)の3種類の米粉を用いて製造した米粉パンについて、試験例2に示す方法により物理特性を測定した。
「夢十色」、「朝紫」、「あゆのひかり」から試験例1と同様にして製造した米粉を単独あるいは混合し、米粉の合計添加量が原料粉(強力粉+米粉)に対して30%(w/w)の割合となるように添加し、原料粉に対する加水量を64%として、実施例1と同様に米粉パンを試作した。
【0041】
これらのパンについて、比容積を測定した結果を表1に、試験例2に示す多重積算バイト法により物性を測定した結果を図5に示す。図5(A)はTendernessの測定値を、図5(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図5の各試験区と実施例1の各試験区との対応関係は、次のとおりである。
試験区a:実施例1の表1におけるNo.24、試験区b:同No.26、試験区c:同No.27、試験区d:同No.25、試験区e:同No.21、試験区f:同No.18、試験区g:同No.2
【0042】
単独添加の場合、「夢十色」(表1のNo.2)、「朝紫」(No.18)、「あゆのひかり」(No.21)のパンは、比容積がそれぞれ3.90、3.79、3.81であり、良食味米である「コシヒカリ」(No.15)の3.58より優れていた。
【0043】
最高圧縮応力を示すTendernessでは、比較対照の100%小麦粉パンが約180000であるのに対し、試験区c(表1のNo.27:「朝紫」と「あゆのひかり」)および試験区f(No.18:「朝紫」)がほぼ同程度の値を示し、試験区a(No.24:3種類の新形質米混合)は小麦粉パンよりも軟らかい値を示した。
しかし、「朝紫」に替えて、一般のもち米品種である「モチミノリ」を用いた3種類混合配合の場合(表1のNo.28:「モチミノリ」「夢十色」及び「あゆのひかり」)の試作パンの場合は、約280000ときわめて硬い物性を示した。また、試験区b(No.26:「夢十色」と「朝紫」)および試験区e(No.21:「あゆのひかり」)も小麦粉パンよりやや硬く、試験区d(No.25:「夢十色」と「あゆのひかり」)および試験区g(No.2:「夢十色」)はきわめて硬い物性を示した(図5(A))。
【0044】
「噛みごたえ」に相当するToughnessでは、比較対照の100%小麦粉パンが約10000000を示すのに対し、試験区b(No.26:「夢十色」と「朝紫」)はほぼ同程度の値を示し、試験区c(表1のNo.27:「朝紫」と「あゆのひかり」)および試験区f(No.18:「朝紫」)がやや低い値を示し、試験区a(No.24:3種類の新形質米混合)は小麦粉パンよりもかなり軟らかい値を示した。
しかし、「朝紫」に替えて、一般のもち米品種である「モチミノリ」を用いた3種類混合配合の場合(表1のNo.28:「モチミノリ」「夢十色」及び「あゆのひかり」)の試作パンの場合は、約15000000ときわめて硬い物性を示した。
一方、試験区e(No.21:「あゆのひかり」)は小麦粉パンよりやや硬く、試験区d(No.25:「夢十色」と「あゆのひかり」)および試験区g(No.2:「夢十色」)はきわめて硬い物性を示した(図5(B))。
【0045】
実施例3(各種の米粉含有パンにおける老化性の相違)
各種米粉を用いて製造した米粉パンについて、時間の経過による物理特性の変化(老化)を調べた。
実施例1で試作したパンを室温で放置し、製造1日後に試験例2で述べたようにテンシプレッサーによる多重積算バイト法で物性を測定した後、同じパンについて製造4日後に改めてテンシプレッサーによる同じ測定を行い、1回目の測定値に対する2回目の測定値の比率を老化性の指標(老化率)とした。
【0046】
測定結果を図6に示す。図6(A)はTendernessの測定値を、図6(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図6の各試験区と実施例1の各試験区との対応関係は、次のとおりである。
試験区a:実施例1の表1におけるNo.1、試験区b:同No.2、試験区c:同No.6、試験区d:同No.9、試験区e:同No.12、試験区f:同No.15、試験区g:同No.18、試験区h:同No.21、試験区i:同No.24
なお、図6中、a〜iが細字で表示されているのは製造1日後の測定値を、太字で表示されているのは製造4日後の測定値を、それぞれ示す。
【0047】
比較対照の100%小麦粉パン(試験区a:表1のNo.1)に比べ、「春陽」(試験区c:No.6)、「モチミノリ」(試験区d:No.9)、「ミルキークイーン」(試験区e:No.12)を配合した場合は、老化が著しいことがわかる。
一方、「夢十色」(試験区b:No.2)、「コシヒカリ」(試験区f:No.15)、「あゆのひかり」(試験区h:No.21)の単独添加の場合は、老化程度が対照の小麦粉パンとほぼ同等であった。
さらに、「朝紫」(試験区g:No.18)および本発明例である3種類の新形質米混合配合(試験区i:No.24)の場合は、対照の小麦粉パンに比べても老化性が低く、従来、小麦粉パンに比べて米粉パンの方が老化しやすいとされていた定説を覆す、驚くべき結果を示した(図6)。
【0048】
実施例4(老化率による各種米粉および3種混合米粉パンの比較)
実施例1で試作したパンのうち代表的なものについて、老化率の比較を行った。老化率は、実施例3で測定した試作後4日の物性値を、試作1日後の物性値で割って得られた値と定義した。
結果を図7に示す。図7中、白色の棒はTenderness、灰色の棒はToughnessの結果である。
図7の各試験区と実施例1の各試験区との対応関係は、次のとおりである。
試験区a:実施例1の表1におけるNo.1、試験区b:同No.2、試験区c:同No.6、試験区d:同No.9、試験区e:同No.12、試験区f:同No.15、試験区g:同No.18、試験区h:同No.21、試験区i:同No.24
【0049】
図7に示すように、老化率の点では、本発明例の3種類の新形質米混合米粉配合の米粉パン(試験区i:表1のNo.24)が最も優れており、次いで「朝紫」(試験区g:No.18)、「コシヒカリ」(試験区f:No.15)、「夢十色」(試験区b:No.2)が小麦粉パン(試験区a:No.1)より優れており、「あゆのひかり」(試験区h:No.21)が小麦粉パンとほぼ同等であり、「春陽」(試験区c:No.6)、「モチミノリ」(試験区d:No.9)、「ミルキークイーン」(試験区e:No.12)は小麦粉パンより劣っていた(図7)。
【0050】
実施例5(「朝紫」混合の意義)
本発明の3種類の新形質米米粉を混合添加した米粉パンの物理特性や耐老化性における「朝紫」添加の意義について検討した。
実施例1の表1に示すNo.24の3種類混合米粉パンにおいて、「朝紫」と同様なもち性米であるが紫黒米ではない「モチミノリ」を、「朝紫」の替わりに12%配合し、他の種類の米の種類と配合比は同じとして、3種類混合米粉パン(比較例)を作製した。
この比較例と、実施例1で作製したNo.24の米粉パン(本発明例)とについて、試作当日及び試作後3日における物理特性(老化性の指標)を、試験例2に示した方法で測定した。
【0051】
結果を図8に示す。図8(A)はTendernessの測定値を、図8(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図8中、aは本発明例(表1のNo.24)、bは比較例の結果を示し、白色の棒は試作当日、黒色の棒は試作3日後の結果を示す。
【0052】
図8から明らかなように、「朝紫」の替わりに「モチミノリ」を使用したパン(比較例)は、試作当日および3日後に「朝紫」を配合したパン(本発明例)よりも明らかに硬くて老化しやすいことが示された。
このことから、本発明における紫黒米の配合の意義は、通常の「もち米」を配合する意義とは異なっており、紫黒米を用いる本発明は、従来の技術や知見からは推定できない、きわめて新規で有用な発明と考えられた。
【0053】
実施例6(本発明例のパンの官能検査)
実施例1で試作した各種米粉パンについて、食味の官能検査を行った。検査は研究員8名によって行い、検査項目は外観、味および総合評価とした。
官能検査の結果を表2に示す。なお、No.24,25,26,27が本発明例であり、それ以外は比較例である。
【0054】
官能検査の結果より、本発明による2種類以上の新形質米を混合配合した試作パンは対照より食味が優れており、3種類の新形質米を混合配合したパンは特に優れていることが示された。「あゆのひかり」はパンを甘くして風味を増し、紫黒米「朝紫」はパンの生地を上品なうす紫色にする効果が顕著に示された。
【0055】
【表2】
◎:対照より優れている、○:対照よりやや優れている、△:対照と同等である、
×:対照より劣る
夢十色:高アミロース米、春陽:蛋白質変異米、モチモノリ:モチ性米、
ミルキークイーン:低アミロース米、コシヒカリ:飯用米、朝紫:紫黒米、
あゆのひかり:糖質米
【0056】
実施例7(手作りパンにおける効果)
高アミロース米(品種名「夢十色」)、紫黒米(品種名「朝紫」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)から試験例1と同様にして製造した米粉を用い、各種米粉パンを手作りで作製したものについて、比容積及び物理特性を測定した。
35℃の温湯100mlに1gの砂糖を加え、ドライイースト8gを加え、予備発酵させた。次いで、表3に示す配合比で、高アミロース米(品種名「夢十色」)、紫黒米(品種名「朝紫」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)の90%精白米粉に市販の強力小麦粉(日清製粉製、商品名「カメリア」)を加えて粉重量を合計300gとし、さらに、砂糖15g、食塩6g、牛乳90ml、卵15g、無塩バター15gを加えて混合した。これに予備発酵させたイーストを加えて混合した。
この生地を板に載せ、手で捏ね、コシが出てきた時点でひとまとめにし、丸めてボールに入れ、ラップで覆い、30℃で3倍容に発酵させた。そして、フィンガーテストにより充分に発酵したことを確かめた後、丸めてボールに入れ、プラスチック袋で覆って30分間寝かせた。この生地を球状に丸め、乾燥した布巾をかけて15分間室温で寝かせた。
この生地を延ばし、ショートニングを塗った食パン型枠に入れ、35℃で1時間発酵させた。次いで、約200℃のオーブンで30分間焼成した。
一方、比較対照のため、上記強力粉300gのみを用いて上記と同様のパンを試作した(No.1)。
なお、上記で試作したパンの乾物重量は全て360gであった。
【0057】
「朝紫」12%、「夢十色」12%、「あゆのひかり」6%を混合添加した米粉パン(表3のNo.6、パン乾物重量に対してはそれぞれ10%、10%、5%に相当する)と対照(No.1)を比較すると、3種類の新形質米を混合配合して試作したパンの方が対照よりも色調、風味ともに優れており、作製3日後にもおいしく食べることができた。
試作品について、実施例1と同様に測定した比容積及び試験例2の方法により測定した物理特性の結果を表3に示す。
なお、表3中の配合割合は、粉重量300g(強力粉+米粉)に対する米粉の割合を表示した。
3種類の新形質米(「朝紫」、「夢十色」、「あゆのひかり」)をそれぞれ1.5%混合して添加した米粉パン(No.3)は、米粉添加量が少なすぎるために対照の小麦粉パン(No.1)と同等の結果となり不適当であった。それぞれをパン乾物重量の4%ずつ添加した場合(No.4)は良好な結果が得られ、それぞれパン乾物重量の6.7%添加した場合(No.5)はさらに良好な結果となった。
試料No.6が最良の結果を示し、それぞれを25%ずつ添加した場合(No.7)は米粉が多すぎるためにパンが膨張せず、不適当であった。
【0058】
【表3】
比容積について、◎:3.9以上、○:3.7以上で3.9未満、△:3.0以上で3.7未満、×:3.0未満、をそれぞれ示す。
Tendernessについて、◎:150000未満、○:150000以上で250000未満、△:250000以上で400000未満、×:400000以上、をそれぞれ示す。
Toughnessについて、◎:600000未満、○:600000以上で1500000未満、△:1500000以上で2000000未満、×:2000000以上、をそれぞれ示す。
総合について、◎:優れている、○:やや優れている、△:普通、×:劣る、をそれぞれ示す。
夢:「夢十色」(高アミロース米)、朝:「朝紫」(紫黒米)、
アユ:「あゆのひかり」(糖質米)
【0059】
実施例8(乳・発酵乳添加炊飯米粉を使用した米粉パン)
高アミロース米(品種名「夢十色」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)、紫黒米(品種名「朝紫」)に乳および発酵乳を加えて炊飯したミルク炊飯米から製造した米粉を用いて製造した米粉パンについて、比容積を測定した。
「夢十色」、「あゆのひかり」、「朝紫」の90%精白米それぞれ100gに対し、脱脂粉乳1%(1.6g)と市販のナチュラルプレーンヨーグルト10%(16g)を含む水160gを加え、一晩浸漬した後に炊飯し、3種類のミルク炊飯米を得た。次いで、このミルク炊飯米を凍結乾燥後、試験例1と同様に粉砕して3種類のミルク炊飯米粉を得た。
このようにして調製した米粉を、表4に記載された配合比で原料小麦粉(日清製粉製強力粉、商品名「カメリア」)に配合し、製パン時の原料粉に対する加水量64%として実施例1と同様に米粉パンを試作した。
【0060】
試作した米粉パンの比容積を表4に示す。表4中の配合割合は、粉重量(強力粉+米粉)に対する米粉の割合を表示した。
なお、表4のNo.6は、試験例1と同様にして調製した「朝紫」、「夢十色」、「あゆのひかり」の生米粉をそれぞれ12%、6%、12%と、ヨーグルトや脱脂粉乳を用いずに水のみを用いて「朝紫」90%精白米及び「夢十色」発芽玄米を炊飯し、上記と同様に凍結乾燥後に製粉した炊飯米粉をそれぞれ4%(各10g)と、強力粉とを混合し、上記と同様に製パンした米粉パンである。
なお、表4のNo.7は、試験例1と同様にして調製した「朝紫」、「夢十色」、「あゆのひかり」の生米粉をそれぞれ12%、6%、12%と、上記の如くミルク炊飯後に製粉して得られた「朝紫」、「夢十色」及び蛋白質変異米(品種名「春陽」)のミルク炊飯米粉をそれぞれ16%(40g)、16%(40g)、8%(20g)と、強力粉とを混合し、上記と同様に製パンした米粉パンである。
【0061】
【表4】
夢:「夢十色」(高アミロース米)、朝:「朝紫」(紫黒米)、
アユ:「あゆのひかり」(糖質米)、春:「春陽」(蛋白質変異米)
【0062】
上記のミルク炊飯米粉を含む米粉を粉重量に対して70%(パン乾物重量の58%)となるように配合して試作した米粉パン(表4のNo.7)は、「コシヒカリ」あるいは「夢十色」の生粉を粉重量に対して70%となるように添加して試作したパン(表には示していない)に比べて、パンの比容積ならびに食味がきわめて優れていた。
しかし、このミルク炊飯米粉を含む米粉を粉重量に対して80%となるように添加して試作したパン(表には示していない)は比容積が小さく、食味も不良であった。
【0063】
なお、本発明例及び比較例(「朝紫」30%単独配合:表4のNo.2)の試作パンの断面写真を図9に示す。
図9(A)は「あゆのひかり」及び「夢十色」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(B)は「あゆのひかり」及び「朝紫」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(C)は「夢十色」及び「朝紫」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(D)は表4のNo.2、図9(E)は同No.4、図9(F)は同No.7、を示す。
【0064】
実施例9(ヨーグルト炊飯米粉による添加米粉の増加)
紫黒米(品種名「朝紫」)に発酵乳を加えて炊飯したヨーグルト炊飯米から製造した米粉を用いて製造した米粉パンについて、試験例2に示す方法でTendernessを測定した。
「朝紫」の90%精白米100gに対し、市販のナチュラルプレーンヨーグルト10%(16g)を含む水160gを加え、一晩浸漬した後に炊飯し、ヨーグルト炊飯米を得た。次いで、このヨーグルト炊飯米を凍結乾燥後、試験例1と同様に粉砕してヨーグルト炊飯米粉を得た。
このようにして調製した米粉を、表5に記載された配合比で原料小麦粉(日清製粉製強力粉、商品名「カメリア」)に配合し、製パン時の原料粉に対する加水量64%として実施例1と同様に米粉パンを試作した。
なお、表5中の配合割合は、粉重量(強力粉+米粉)に対する米粉の割合を表示した。
【0065】
【表5】
夢:「夢十色」(高アミロース米)、朝:「朝紫」(紫黒米)、
コシ:「コシヒカリ」(一般飯用米)、EM:「EM10」(ae米)
【0066】
試作した米粉パンのTendernessを図10に示す。
図10のfは、小麦粉と米粉全体の重量に対して37%の米粉を含んでいるにも関わらず、良好なパン物性を示した。同様に、図10のgは、56%の米粉を含んでいるにもかかわらず、良好なパン物性を示した。
【0067】
試験例4(ae米「EM10」米粉の添加によるレジスタントスターチの増加)
ae米(品種名「EM10」)、高アミロース米(品種名「夢十色」)、一般飯用米(品種名「コシヒカリ」)の米粉を用いて製造した米粉パンについて、レジスタントスターチ含量を測定した。
「EM10」(図11のb)、「夢十色」(同c)、「コシヒカリ」(同d)から試験例1と同様にして製造した米粉をそれぞれ原料粉(強力粉+米粉)に対して30%(w/w)の割合となるように添加し、原料粉に対する加水量を64%として、実施例1と同様に米粉パンを試作した。
一方、強力粉のみを用いて上記と同様のパンを試作した(図11のa)。
レジスタントスターチ含量の測定は、メガザイム社の「レジスタントスターチ測定用キット」を用いて行った。
【0068】
測定結果を図11に示す。
「EM10」を小麦粉と米粉全重量の30%となるように配合して試作したパン(図11のb)は、約28%のレジスタントスターチを含み、他の米粉パンに比べてきわめて高い値を示し、生理機能性が期待された。
【0069】
実施例10(コシヒカリ生米粉と3種ヨーグルト炊飯新形質米粉を添加したパン)
紫黒米(品種名「朝紫」)、高アミロース米(品種名「夢十色」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)に発酵乳を加えて炊飯したヨーグルト炊飯米から製造した米粉を用いて製造した米粉パンについて、食味評価試験を行った。
「朝紫」、「夢十色」、「あゆのひかり」の90%精白米それぞれ100gに対し、市販のナチュラルプレーンヨーグルト10%(16g)を含む水160gを加え、一晩浸漬した後に炊飯し、3種類のヨーグルト炊飯米を得た。次いで、このヨーグルト炊飯米を凍結乾燥後、試験例1と同様に粉砕して3種類のヨーグルト炊飯米粉を得た。
このようにして調製した米粉を、「朝紫」、「夢十色」各10%(w/w)、「あゆのひかり」5%(w/w)、および一般飯用米(品種名「コシヒカリ」)から試験例1と同様にして調製した生米粉30%(w/w)を、45%(w/w)の小麦粉(日清製粉製強力粉、商品名「カメリア」)に配合し、実施例8と同様にして米粉パンを試作した。
【0070】
このパンを、小麦粉100%のパンを対照として、パネリスト10名による食味試験を行った結果を表6に示す。
なお、表6における食味の評価結果は、小麦粉100%パンを基準(0点)とする3点満点の相対評価点として表示した。
表6から、当該米粉パンは、55%(パン乾物重量の45.8%)の米粉の添加が可能であり、比容積も大きく、小麦粉パンに比べて有意に優れた食味を示すことが明らかとなった。
【0071】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の産業上の用途としては、製パン、製菓、パン粉等の食品製造分野での利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】「コシヒカリ」と「夢十色」の米粉混合パンの官能検査結果を示す図である。図1(A)は焼き上げ当日のパンの検査結果を、図1(B)は製造3日後のパンの検査結果を示す。図1中、aは「コシヒカリ」25%混合パンの検査結果を、bは「夢十色」25%混合パンの検査結果を示す。各評価は、100%小麦粉パン(対照)の食味を基準(0点)として表示した。
【図2】テンシプレッサーを用いた多重積算バイト法による物理特性の測定についての説明図である。
【図3】3種類の米粉混合パンの加水量の相違による物性値の相違を示す図である。図3(A)はTendernessの測定値を、図3(B)はToughnessの測定値を示す。図3中、白色の棒は加水量64%、灰色の棒は加水量72%、黒色の棒は加水量80%の結果である。また、aは「モチミノリ」、bは「春陽」、cは「夢十色」の結果である。
【図4】各種の米粉混合パンの加水量の相違による物性値の相違を示す図である。図4(A)はTendernessの測定値を、図4(B)はToughnessの測定値を示す。図4中、白色の棒は加水量64%、灰色の棒は加水量72%、黒色の棒は加水量80%の結果である。また、aは「夢十色」、bは「あゆのひかり」、cは「朝紫」の結果である。
【図5】各種米粉(「朝紫」・「あゆのひかり」・「夢十色」)混合パンの物性値を示す図である。図5(A)はTendernessの測定値を、図5(B)はToughnessの測定値を示す。図5中、試験区a:実施例1の表1におけるNo.24、試験区b:同No.26、試験区c:同No.27、試験区d:同No.25、試験区e:同No.21、試験区f:同No.18、試験区g:同No.2、を示す。
【図6】各種米粉混合パンの多重積算バイト法による物性値を示す図である。図6(A)はTendernessの測定値を、図6(B)はToughnessの測定値を示す。図6中、試験区a:実施例1の表1におけるNo.1、試験区b:同No.2、試験区c:同No.6、試験区d:同No.9、試験区e:同No.12、試験区f:同No.15、試験区g:同No.18、試験区h:同No.21、試験区i:同No.24、を示す。図6中、a〜iが細字で表示されているのは製造1日後の測定値を、太字で表示されているのは製造4日後の測定値を、それぞれ示す。
【図7】各種米粉混合パンの物性値による老化率を示す図である。図7中、白色の棒はTenderness、灰色の棒はToughnessの結果である。図7中、試験区a:実施例1の表1におけるNo.1、試験区b:同No.2、試験区c:同No.6、試験区d:同No.9、試験区e:同No.12、試験区f:同No.15、試験区g:同No.18、試験区h:同No.21、試験区i:同No.24、を示す。
【図8】「朝紫」と「モチミノリ」のパン物性および老化性の比較を示す図である。図8(A)はTendernessの測定値を、図8(B)はToughnessの測定値を示す。図8中、aは本発明例(表1のNo.24)、bは比較例の結果を示し、白色の棒は試作当日、黒色の棒は試作3日後の結果を示す。
【図9】各種の試作パンの断面を示す図である。図9(A)は「あゆのひかり」及び「夢十色」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(B)は「あゆのひかり」及び「朝紫」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(C)は「夢十色」及び「朝紫」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(D)は表4のNo.2、図9(E)は同No.4、図9(F)は同No.7、を示す。
【図10】各種米粉混合パンの多重積算バイト法によるTendernessの測定値を示す図である。図10中、aは小麦粉100%パン、bは「夢十色」30%混合パン、cは「コシヒカリ」30%混合パン、dは「EM10」30%混合パン、eは「朝紫」15%+「EM10」15%混合パン、fは「朝紫」15%+「EM10」15%+「朝紫」ヨーグルト炊飯米粉7%混合パン、gは「EM10」30%+「朝紫」15%+「朝紫」ヨーグルト炊飯米粉11.5%混合パン、を示す。
【図11】各種米粉パンのレジスタントスターチ含量(%)を示す図である。図11中、aは強力粉100%パン、bは「EM10」30%混合パン、cは「夢十色」30%混合パン、dは「コシヒカリ」30%混合パン、を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新形質米を含むパンに関し、紫黒米、高度硬質米、糖質米からなる新形質米の群の内の、少なくとも2種類の新形質米を含むパンに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本の食料自給率は39%であり、世界の食料需給が長期的には逼迫することが予想されているので、食料自給率を向上させることが必要とされている。
そのためには、国内産農産物によって輸入農産物を代替することが有効であり、たとえば、主として輸入小麦粉が原料として使用されているパン、麺、菓子等の原料として、米粉を使用することが可能となる技術開発が必要とされている。
【0003】
従来のパンへの米の代替利用に関しては、通常の米粉で小麦粉の20%を置換代替した場合はパンの品質が良いが、30%以上を添加した場合はパン体積、パン品質とも著しく低下すると報告されている(非特許文献1参照)。
その後、新潟県食品研究所による微細米粉製造技術の開発(非特許文献2及び3参照)や、湯捏ね法による米粉パンの製造技術(特許文献1参照)、超強力小麦を添加した米粉パン(特許文献2参照)、プラスチック成型加工技術の米粉パンへの適用(特許文献3及び4参照)等の技術開発が行われてきた。
また、新形質米の製パンへの利用については、平成18年度から開始された農水省の委託研究「加工業務用プロジェクト」の中でも研究されているが、本発明に見られるような、2種類以上の異なる特性の新形質米を復合利用した研究例はこれまで報告されていない。
【0004】
【非特許文献1】高野博之、農林水産技術会議事務局研究成果、161、p.117-130、1984年12月発行
【非特許文献2】有坂将美、北陸農業の新技術、4号、p.87-92、平成3年
【非特許文献3】江川和徳、北陸農業の新技術、5号、p.95-101、平成4年
【特許文献1】特開2003-235439号公報
【特許文献2】特開2004-208560号公報
【特許文献3】特開2005-13110号公報
【特許文献4】特開2006-271398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、小麦粉パンに比べて製パン性が劣るとされてきた米粉パンの製パン性を向上させるための技術開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上を復合して使用することによって驚くべき効果が現れることを見いだし、本発明を完成させたのである。
【0007】
すなわち、請求項1に係る本発明は、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を含む米粉パンである。
請求項2に係る本発明は、パン乾物重量に占める米粉の割合が10重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載する米粉パンである。
請求項3に係る本発明は、紫黒米、高度硬質米及び糖質米の米粉を、パン乾物重量に対してそれぞれ4重量%以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載する米粉パンである。
請求項4に係る本発明は、高度硬質米がae米であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載する米粉パンである。
請求項5に係る本発明は、紫黒米がイネ品種「朝紫」、高度硬質米がイネ品種「夢十色」、糖質米がイネ品種「あゆのひかり」であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載する米粉パンである。
請求項6に係る本発明は、さらに、イネ品種「コシヒカリ」の米粉をパン乾物重量に対し4重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載する米粉パンである。
請求項7に係る本発明は、米粉の一部あるいは全部が炊飯米から製造したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載する米粉パンである。
請求項8に係る本発明は、炊飯米が発酵乳および/あるいは乳を加えて炊飯したものであることを特徴とする請求項7に記載する米粉パンである。
請求項9に係る本発明は、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を添加することを特徴とする米粉パンの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、米粉を多く含有するにもかかわらず、膨張が良く、食味や外観が良好な米粉パン及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の米粉パンは、紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明における米粉(含有)パンとは、米粉を含有するパンを指し、例としては、小麦粉に米粉を添加して製造したパン、米粉に小麦グルテンを添加して製造したパン、米粉にグアーガム等の増粘多糖類を添加して製造したパンを挙げることができる。
【0011】
本発明における新形質米とは、平成元年以来、農水省の研究プロジェクトの中で育成されてきた、形態および/あるいは特質の点で通常の日本型飯用米とは顕著に異なる米を指し、例としては、高アミロース米、低アミロース米、蛋白質変異米、大粒米、細長粒米、香り米、紫黒米などの色素米、糖質米、巨大胚米、ae米などの化学的突然変異米等が挙げられる(農林水産技術会議事務局研究成果340、平成11年参照)。
【0012】
本発明における紫黒米とは、果皮及び/または種皮にアントシアンやアントシアニジンを含有しているために玄米が黒色あるいは紫色を呈する米を指し、黒米、古代米とも呼ばれ、色素米の1種である。品種例としては、「朝紫」、「おくのむらさき」、「奥羽紫糯389号」等を挙げることができるが、これらに限定されない。
なお、上記紫黒米は、1品種のみでも複数品種を組み合わせたものでも良い。
【0013】
本発明における高度硬質米とは、ヨード呈色法によって測定したみかけのアミロース含量が25%以上の米のことである。高度硬質米には、アミロース含量が多い高アミロース米と、アミロース含量は多くないがアミロペクチンの短鎖が少ないために見かけのアミロース含量が高くなるae米とがある。
高アミロース米の品種例としては、「夢十色」、「ホシユタカ」、「ホシニシキ」、「こしのめんじまん」等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明におけるae米とは、デンプン枝作り酵素(ブランチングエンザイム)が欠損することによって見かけのアミロース含量が高くなった米を指し、品種例としては、九州大学の佐藤 光研究室で育成された「EM10」、「EM72」等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、「EM10」及び「EM72」は九州大学の佐藤 光研究室から請求により分譲を受けることができる。
なお、上記高度硬質米は、1品種のみでも複数品種を組み合わせたものでも良い。
【0014】
本発明における糖質米とは、デンプン枝切り酵素の欠損によってデンプンの蓄積が悪くなり、植物グリコーゲンを多く蓄積する米のことであり、品種例としては、「あゆのひかり」、「EM10」などを挙げることができるが、これらに限定されない。
なお、上記糖質米は、1品種のみでも複数品種を組み合わせたものでも良い。
【0015】
紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米を含む本発明の米粉パンには、(1)紫黒米と高度硬質米を含む米粉パン、(2)紫黒米と糖質米を含む米粉パン、(3)高度硬質米と糖質米を含む米粉パン、そして(4)紫黒米、高度硬質米および糖質米の3種類を全て含む米粉パン、という4種類があり、いずれも膨張が良く、食味や外観が良好な米粉パンである。
なお、本発明においては、紫黒米、高度硬質米及び糖質米以外の米粉の使用を妨げない。
【0016】
特に、高度硬質米がae米である場合は、パンの生地強度が強いために、発酵時の膨張が優れ、比容積が大きくてパン断面が均一な米粉パンとなる上、レジスタントスターチ含量が高いという特徴的なパンとなる。
【0017】
また、イネ品種「朝紫」に代表される紫黒米、イネ品種「夢十色」に代表される高アミロース米及びイネ品種「あゆのひかり」に代表される糖質米の米粉を、パン乾物重量に対してそれぞれ4重量%以上含む米粉パンは、外観が上品な薄紫色を呈し、食味の点では、良好な食感と噛み応えおよび甘みがあり、小麦粉パンよりも耐老化性が高いなどの点で、きわめて優れた特性を有している。
【0018】
また、本発明においては、前述の3種類の新形質米に加えて、一般飯用米であるイネ品種「コシヒカリ」の米粉を配合することにより、呈味性のさらに優れた米粉パンとなる。このとき、「コシヒカリ」から製造した米粉の配合量は、パン乾物重量に対して4重量%以上とすることが好ましい。
【0019】
本発明の米粉パンにおいては、パン乾物重量に占める米粉の割合が10〜80%(w/w)、より好ましくは20〜40%(w/w)であることが必要である。米粉含有率が10%(w/w)未満の場合は、通常の小麦粉パンに比べて、米粉の添加による効果が十分に現れないので、不適当である。逆に、米粉含有率が80%(w/w)より多い場合は、米粉が多すぎて膨張率が下がるため好ましくない。
【0020】
本発明においては、米粉パン製造時に米粉を添加する際に、未加熱の生粉ではなく、一部あるいは全部の米粉を炊飯の後に添加することによって、発明の効果をさらに高めることができる。
本発明において炊飯とは、米に加水して加熱することによりデンプンをα化(糊化)することを指し、炊飯米とは、米を加水して加熱することによりデンプンをα化(糊化)して得られた飯を指す。
【0021】
本発明において炊飯は通常の加水によって行っても良いが、発酵乳および/あるいは乳を加えて炊飯することによって、パンの品質を一層改良することができる。
本発明において乳とは、牛乳、水牛乳、やぎ乳、羊乳などの動物乳を指し、特に牛乳が好ましい。なお、本発明における乳には、生乳、殺菌乳、(部分)脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、加工乳、濃縮乳、れん乳などが含まれる。
本発明において発酵乳とは、上記乳を乳酸菌等で発酵させたものを指し、例としてはヨーグルト、ケフィア、クミスなどが挙げられる。
このとき添加する発酵乳および/あるいは乳の量は、水分全体に対して1〜80%(w/w)とすることができ、好ましくは5〜20%(w/w)とする。発酵乳および/あるいは乳の量が少なすぎると添加効果が充分に現れないので不適当であり、多すぎると炊飯加熱時に乳蛋白質が不均一に凝固することによって均一な製パン性を損なうので、不適当である。
【0022】
本発明の米粉パンは、上記したような新形質米を製粉して得られた米粉を含有するものである。米の形態は精白米、発芽玄米、胚芽米、玄米など特に限定されず、製粉は通常の米粉と同様の方法で行うことができる。
米の粉砕には、コーヒーミル、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機、超遠心粉砕機、気流粉砕機などを用いることができる。
【0023】
米をそのまま粉砕機によって粉砕してもよいが、炊飯米から米粉を製造する場合は、加熱炊飯後に乾燥してから粉砕しても良い。炊飯米の乾燥方法は特に限定されず、例としては凍結乾燥、真空凍結乾燥、焙煎乾燥などが挙げられる。
加熱炊飯後に粉砕することで、米粉中の酵素が失活し、デンプンがα化(糊化)するので、パンの品質が一層向上する。
【0024】
次に、本発明の米粉パンの製造方法について説明する。
原料粉としては、上記新形質米の米粉と、必要により小麦粉、小麦グルテン、ライ麦粉、大麦粉など通常パンに用いられる粉や、他の米粉を用いることができる。
上記原料粉の他に、イースト、食塩、水、砂糖、ショートニング、脱脂粉乳、イーストフードといった通常のパンに用いられる原料を用いることができる。
なお、上記原料の配合は通常と同様とすることができるが、原料粉全体の重量に対する加水量を60〜80%とすると、膨張率が大きくなるため好ましい。
これらの原料を用いて通常のパンと同様の方法で製造すれば良く、例えば原料をこね、発酵させ、生地を分割、整形し、焙炉、焙焼などの工程を経て最終製品とすることができる。
【0025】
以上のようにして製造された本発明の米粉パンは、米粉を多く含有するにもかかわらず、膨張が良く、食味や外観が良好な米粉パンとなる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例等を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
試験例1(米粉をパン乾物重量の25%添加した米粉パンの食味)
強力粉175gに、高アミロース米(品種名「夢十色」)75g(パン乾物重量の25重量%)を加え、さらに砂糖23g、スキムミルク7g、バター15g、食塩2.3g、イースト2.7g及び水を加えた。米は90%の歩留まりに精白してUdy社製サイクロン製粉機で粉末化して使用した。加水量は、粉重量250gに対して、64%、72%、80%(いずれもw/w)の3段階とした。
これらの原料を家庭用自動製パン器(ナショナル製SD-BT103)に入れ、練り、発酵、焼き上げ5時間のコースで自動製パンした(夢十色25%混合パン)。
比較のため、「夢十色」に替えて、一般飯用米(品種名「コシヒカリ」)75gを添加して上記と同様の条件でパンを試作した(コシヒカリ25%混合パン)。
また、米粉を用いずに強力粉のみ250gを用い、加水量64%として上記と同様にパンを製造した(100%小麦粉パン)。
【0028】
これらの試作パンのうち、加水量を64%としたものの食味を、外観、香り、粘り、硬さ及び味(総合評価)について100%小麦粉パンと比較した、パネリスト10名による官能検査結果を図1に示す。
図1(A)は製造当日のパンの検査結果を、図1(B)は製造後3日間室温で保存したパンの検査結果を示す。
図1において、aはコシヒカリ25%混合パンを、bは夢十色25%混合パンを示し、評価は100%小麦粉パンの食味を0点として表示した。
【0029】
図1に示すように、パン乾物重量の25%添加して調製した米粉パンは、「コシヒカリ」、「夢十色」とも、100%小麦粉パンに比べて大きく食味が劣るということはなかった。
焼き上げ当日は、「コシヒカリ」が「夢十色」より総合評価でやや優っていたが、製造3日後の検査結果では、「夢十色」の方が僅かに「コシヒカリ」に優っていた。
なお、「コシヒカリ」、「夢十色」のいずれの場合も、3種類の加水量のうち、加水量を64%として製造したものが最もパンの比容積が大きく、食感も良好であった。
【0030】
実施例1(各種の米粉パンの比容積)
各種の米を用いて米粉パンを製造し、比容積を比較した。
強力粉175gに、紫黒米(品種名「朝紫」)30g(パン乾物重量の10重量%)、高アミロース米(品種名「夢十色」)30g(パン乾物重量の10重量%)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)15g(パン乾物重量の5重量%)を加え、さらに砂糖23g、スキムミルク7g、バター15g、食塩2.3g、イースト2.7g及び水を加えた。米は試験例1と同様の方法で粉末化して使用した。加水量は、粉重量250gに対して、64%、72%、80%(いずれもw/w)の3段階とした。
これらの原料を家庭用自動製パン器(ナショナル製、商品名「SD-BT103」)に入れ、練り、発酵、焼き上げ5時間のコースで自動製パンした。なお、上記において加水量64%として製造した米粉パンは、表1にNo.24として示した。
【0031】
表1に示すように米の種類や配合割合を変えて、上記と同様の条件でパンを試作した。また、米粉を用いずに強力粉のみ250gを用い、加水量64%として上記と同様にパンを製造した(強力粉100%)。
これらの試作パンの比容積(焼き上がり直後のパンの体積を焼成前の体積で割った値)を測定した結果を表1に示す。
なお、表1中の配合割合及び加水量は、粉重量250g(強力粉+米粉)に対する米粉及び水の重量の割合を表示した。
【0032】
【表1】
◎:比容積が3.9以上、○:3.7以上で3.9未満、△:3.0以上で3.7未満、×:3.0未満
夢:「夢十色」(高アミロース米)、春:「春陽」(蛋白質変異米)、
モチ:モチミノリ(モチ米)、ミル:「ミルキークイーン」(低アミロース米)、
コシ:「コシヒカリ」(飯用米)、朝:「朝紫」(紫黒米)、
アユ:「あゆのひかり」(糖質米)
【0033】
表1から、本発明における紫黒米、高アミロース米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米を含む米粉パンは、いずれも比容積が3.7以上とよく膨張していることがわかる。
比容積の点で、本発明で対象とする新形質米以外の米を用いた場合にも、No.7(春陽)、No.9(モチミノリ)、No.12及び13(ミルキークイーン)等において比容積の大きい例も見られたが、米飯として良好な特性の「コシヒカリ」の場合は、比容積が小さく、米粉パン用としては不適当と判断された。
また、表には記載していないが、米粉混合比率が原料粉(強力粉+米粉)の5%(w/w)未満の場合には、米粉添加による効果が顕著に表れず、不適当であった。
【0034】
試験例2(「モチミノリ」、「春陽」、「夢十色」の3種類の米粉パンの物理特性の測定)
一般もち米(品種名「モチミノリ」)、タンパク質変異米(品種名「春陽」)、高アミロース米(品種名「夢十色」)の3種類の米粉を用いて製造した米粉パンについて、物理特性を測定した。
「モチミノリ」、「春陽」または「夢十色」の米粉を原料粉(強力粉+米粉)全体の30%(w/w)混合し、実施例1のようにして米粉パンを試作した。
【0035】
試作したパンの外周部を除き、厚さ2cm、縦および横それぞれ3cmの試料に切りとり、タケトモ電機製のテンシプレッサー(商品名「My Boy」)を用いて、物理特性を測定した。
測定は、岡留らの多重積算バイト法(岡留博司ら、日本食品科学工学会誌、45巻、7号、p.398-407、1998参照)を用いて行った。このとき、試料厚は20mm、バイトスピードは3mm/秒、加重反復数は5回、距離は35mm、クリアランスは0.8mmとした。
多重積算バイト法による測定の説明図を図2に示す。図2におけるTendernessは「最高圧縮強度」、Toughnessは「噛みごたえ」に相当する。
【0036】
「モチミノリ」、「春陽」、「夢十色」の米粉を30%混合し、加水量をそれぞれ64%、72%、80%に変えて試作したパンの物性の測定結果を図3に示す。図3(A)はTendernessの測定値を、図3(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図3中、白色の棒は加水量64%、灰色の棒は加水量72%、黒色の棒は加水量80%の結果である。また、aは「モチミノリ」、bは「春陽」、cは「夢十色」の結果である。
【0037】
80%加水の場合は、実施例1の表1に示すように、3種類の米粉パンとも膨張が悪くなり、比容積が小さく、硬い物性となる。この傾向は図3に明示されている。
一般もち米である「モチミノリ」やタンパク質変異米である「春陽」を用いた場合は、加水量の変化によるパンの物性変化が大きいのに対し、高アミロース米である「夢十色」の場合は、加水量の変化に対して安定した膨張と物性を示すことが明らかになった。
【0038】
試験例3(「夢十色」、「あゆのひかり」、「朝紫」の3種類の米粉パンの物理特性の測定)
高アミロース米(品種名「夢十色」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)、紫黒米(品種名「朝紫」)の3種類の米粉を用いて製造した米粉パンについて、試験例2に示す方法により物理特性を測定した。
「夢十色」、「あゆのひかり」、「朝紫」の米粉を原料粉(強力粉+米粉)全体の30%(w/w)混合し、実施例1及び試験例2と同様にして米粉パンを試作した。
試作した米粉パンについて、試験例2と同様に物性を測定した結果を図4に示す。図4(A)はTendernessの測定値を、図4(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図4中、白色の棒は加水量64%、灰色の棒は加水量72%、黒色の棒は加水量80%の結果である。また、aは「夢十色」、bは「あゆのひかり」、cは「朝紫」の結果である。
【0039】
「あゆのひかり」や「朝紫」の米粉を添加した米粉パンは、試験例2で用いた一般もち米「モチミノリ」やタンパク質変異米「春陽」に比べて、加水量の変化によるパンの物性変化が少なかった。
また、「夢十色」の場合は加水量の変化に対して安定した膨張と物性を示し、「あゆのひかり」の場合は加水量が増すにつれてパンの比容積が増して軟らかくなるのに対し、「朝紫」の場合は加水量が増加すると比容積が減少して硬さを増すという、3種類の米がそれぞれ異なる膨張性とパン物性を示す驚くべき事実が明らかになった。
【0040】
実施例2(「夢十色」、「朝紫」、「あゆのひかり」の混合添加によるパンの物理特性の測定)
高アミロース米(品種名「夢十色」)、紫黒米(品種名「朝紫」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)の3種類の米粉を用いて製造した米粉パンについて、試験例2に示す方法により物理特性を測定した。
「夢十色」、「朝紫」、「あゆのひかり」から試験例1と同様にして製造した米粉を単独あるいは混合し、米粉の合計添加量が原料粉(強力粉+米粉)に対して30%(w/w)の割合となるように添加し、原料粉に対する加水量を64%として、実施例1と同様に米粉パンを試作した。
【0041】
これらのパンについて、比容積を測定した結果を表1に、試験例2に示す多重積算バイト法により物性を測定した結果を図5に示す。図5(A)はTendernessの測定値を、図5(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図5の各試験区と実施例1の各試験区との対応関係は、次のとおりである。
試験区a:実施例1の表1におけるNo.24、試験区b:同No.26、試験区c:同No.27、試験区d:同No.25、試験区e:同No.21、試験区f:同No.18、試験区g:同No.2
【0042】
単独添加の場合、「夢十色」(表1のNo.2)、「朝紫」(No.18)、「あゆのひかり」(No.21)のパンは、比容積がそれぞれ3.90、3.79、3.81であり、良食味米である「コシヒカリ」(No.15)の3.58より優れていた。
【0043】
最高圧縮応力を示すTendernessでは、比較対照の100%小麦粉パンが約180000であるのに対し、試験区c(表1のNo.27:「朝紫」と「あゆのひかり」)および試験区f(No.18:「朝紫」)がほぼ同程度の値を示し、試験区a(No.24:3種類の新形質米混合)は小麦粉パンよりも軟らかい値を示した。
しかし、「朝紫」に替えて、一般のもち米品種である「モチミノリ」を用いた3種類混合配合の場合(表1のNo.28:「モチミノリ」「夢十色」及び「あゆのひかり」)の試作パンの場合は、約280000ときわめて硬い物性を示した。また、試験区b(No.26:「夢十色」と「朝紫」)および試験区e(No.21:「あゆのひかり」)も小麦粉パンよりやや硬く、試験区d(No.25:「夢十色」と「あゆのひかり」)および試験区g(No.2:「夢十色」)はきわめて硬い物性を示した(図5(A))。
【0044】
「噛みごたえ」に相当するToughnessでは、比較対照の100%小麦粉パンが約10000000を示すのに対し、試験区b(No.26:「夢十色」と「朝紫」)はほぼ同程度の値を示し、試験区c(表1のNo.27:「朝紫」と「あゆのひかり」)および試験区f(No.18:「朝紫」)がやや低い値を示し、試験区a(No.24:3種類の新形質米混合)は小麦粉パンよりもかなり軟らかい値を示した。
しかし、「朝紫」に替えて、一般のもち米品種である「モチミノリ」を用いた3種類混合配合の場合(表1のNo.28:「モチミノリ」「夢十色」及び「あゆのひかり」)の試作パンの場合は、約15000000ときわめて硬い物性を示した。
一方、試験区e(No.21:「あゆのひかり」)は小麦粉パンよりやや硬く、試験区d(No.25:「夢十色」と「あゆのひかり」)および試験区g(No.2:「夢十色」)はきわめて硬い物性を示した(図5(B))。
【0045】
実施例3(各種の米粉含有パンにおける老化性の相違)
各種米粉を用いて製造した米粉パンについて、時間の経過による物理特性の変化(老化)を調べた。
実施例1で試作したパンを室温で放置し、製造1日後に試験例2で述べたようにテンシプレッサーによる多重積算バイト法で物性を測定した後、同じパンについて製造4日後に改めてテンシプレッサーによる同じ測定を行い、1回目の測定値に対する2回目の測定値の比率を老化性の指標(老化率)とした。
【0046】
測定結果を図6に示す。図6(A)はTendernessの測定値を、図6(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図6の各試験区と実施例1の各試験区との対応関係は、次のとおりである。
試験区a:実施例1の表1におけるNo.1、試験区b:同No.2、試験区c:同No.6、試験区d:同No.9、試験区e:同No.12、試験区f:同No.15、試験区g:同No.18、試験区h:同No.21、試験区i:同No.24
なお、図6中、a〜iが細字で表示されているのは製造1日後の測定値を、太字で表示されているのは製造4日後の測定値を、それぞれ示す。
【0047】
比較対照の100%小麦粉パン(試験区a:表1のNo.1)に比べ、「春陽」(試験区c:No.6)、「モチミノリ」(試験区d:No.9)、「ミルキークイーン」(試験区e:No.12)を配合した場合は、老化が著しいことがわかる。
一方、「夢十色」(試験区b:No.2)、「コシヒカリ」(試験区f:No.15)、「あゆのひかり」(試験区h:No.21)の単独添加の場合は、老化程度が対照の小麦粉パンとほぼ同等であった。
さらに、「朝紫」(試験区g:No.18)および本発明例である3種類の新形質米混合配合(試験区i:No.24)の場合は、対照の小麦粉パンに比べても老化性が低く、従来、小麦粉パンに比べて米粉パンの方が老化しやすいとされていた定説を覆す、驚くべき結果を示した(図6)。
【0048】
実施例4(老化率による各種米粉および3種混合米粉パンの比較)
実施例1で試作したパンのうち代表的なものについて、老化率の比較を行った。老化率は、実施例3で測定した試作後4日の物性値を、試作1日後の物性値で割って得られた値と定義した。
結果を図7に示す。図7中、白色の棒はTenderness、灰色の棒はToughnessの結果である。
図7の各試験区と実施例1の各試験区との対応関係は、次のとおりである。
試験区a:実施例1の表1におけるNo.1、試験区b:同No.2、試験区c:同No.6、試験区d:同No.9、試験区e:同No.12、試験区f:同No.15、試験区g:同No.18、試験区h:同No.21、試験区i:同No.24
【0049】
図7に示すように、老化率の点では、本発明例の3種類の新形質米混合米粉配合の米粉パン(試験区i:表1のNo.24)が最も優れており、次いで「朝紫」(試験区g:No.18)、「コシヒカリ」(試験区f:No.15)、「夢十色」(試験区b:No.2)が小麦粉パン(試験区a:No.1)より優れており、「あゆのひかり」(試験区h:No.21)が小麦粉パンとほぼ同等であり、「春陽」(試験区c:No.6)、「モチミノリ」(試験区d:No.9)、「ミルキークイーン」(試験区e:No.12)は小麦粉パンより劣っていた(図7)。
【0050】
実施例5(「朝紫」混合の意義)
本発明の3種類の新形質米米粉を混合添加した米粉パンの物理特性や耐老化性における「朝紫」添加の意義について検討した。
実施例1の表1に示すNo.24の3種類混合米粉パンにおいて、「朝紫」と同様なもち性米であるが紫黒米ではない「モチミノリ」を、「朝紫」の替わりに12%配合し、他の種類の米の種類と配合比は同じとして、3種類混合米粉パン(比較例)を作製した。
この比較例と、実施例1で作製したNo.24の米粉パン(本発明例)とについて、試作当日及び試作後3日における物理特性(老化性の指標)を、試験例2に示した方法で測定した。
【0051】
結果を図8に示す。図8(A)はTendernessの測定値を、図8(B)はToughnessの測定値を、それぞれ示す。
図8中、aは本発明例(表1のNo.24)、bは比較例の結果を示し、白色の棒は試作当日、黒色の棒は試作3日後の結果を示す。
【0052】
図8から明らかなように、「朝紫」の替わりに「モチミノリ」を使用したパン(比較例)は、試作当日および3日後に「朝紫」を配合したパン(本発明例)よりも明らかに硬くて老化しやすいことが示された。
このことから、本発明における紫黒米の配合の意義は、通常の「もち米」を配合する意義とは異なっており、紫黒米を用いる本発明は、従来の技術や知見からは推定できない、きわめて新規で有用な発明と考えられた。
【0053】
実施例6(本発明例のパンの官能検査)
実施例1で試作した各種米粉パンについて、食味の官能検査を行った。検査は研究員8名によって行い、検査項目は外観、味および総合評価とした。
官能検査の結果を表2に示す。なお、No.24,25,26,27が本発明例であり、それ以外は比較例である。
【0054】
官能検査の結果より、本発明による2種類以上の新形質米を混合配合した試作パンは対照より食味が優れており、3種類の新形質米を混合配合したパンは特に優れていることが示された。「あゆのひかり」はパンを甘くして風味を増し、紫黒米「朝紫」はパンの生地を上品なうす紫色にする効果が顕著に示された。
【0055】
【表2】
◎:対照より優れている、○:対照よりやや優れている、△:対照と同等である、
×:対照より劣る
夢十色:高アミロース米、春陽:蛋白質変異米、モチモノリ:モチ性米、
ミルキークイーン:低アミロース米、コシヒカリ:飯用米、朝紫:紫黒米、
あゆのひかり:糖質米
【0056】
実施例7(手作りパンにおける効果)
高アミロース米(品種名「夢十色」)、紫黒米(品種名「朝紫」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)から試験例1と同様にして製造した米粉を用い、各種米粉パンを手作りで作製したものについて、比容積及び物理特性を測定した。
35℃の温湯100mlに1gの砂糖を加え、ドライイースト8gを加え、予備発酵させた。次いで、表3に示す配合比で、高アミロース米(品種名「夢十色」)、紫黒米(品種名「朝紫」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)の90%精白米粉に市販の強力小麦粉(日清製粉製、商品名「カメリア」)を加えて粉重量を合計300gとし、さらに、砂糖15g、食塩6g、牛乳90ml、卵15g、無塩バター15gを加えて混合した。これに予備発酵させたイーストを加えて混合した。
この生地を板に載せ、手で捏ね、コシが出てきた時点でひとまとめにし、丸めてボールに入れ、ラップで覆い、30℃で3倍容に発酵させた。そして、フィンガーテストにより充分に発酵したことを確かめた後、丸めてボールに入れ、プラスチック袋で覆って30分間寝かせた。この生地を球状に丸め、乾燥した布巾をかけて15分間室温で寝かせた。
この生地を延ばし、ショートニングを塗った食パン型枠に入れ、35℃で1時間発酵させた。次いで、約200℃のオーブンで30分間焼成した。
一方、比較対照のため、上記強力粉300gのみを用いて上記と同様のパンを試作した(No.1)。
なお、上記で試作したパンの乾物重量は全て360gであった。
【0057】
「朝紫」12%、「夢十色」12%、「あゆのひかり」6%を混合添加した米粉パン(表3のNo.6、パン乾物重量に対してはそれぞれ10%、10%、5%に相当する)と対照(No.1)を比較すると、3種類の新形質米を混合配合して試作したパンの方が対照よりも色調、風味ともに優れており、作製3日後にもおいしく食べることができた。
試作品について、実施例1と同様に測定した比容積及び試験例2の方法により測定した物理特性の結果を表3に示す。
なお、表3中の配合割合は、粉重量300g(強力粉+米粉)に対する米粉の割合を表示した。
3種類の新形質米(「朝紫」、「夢十色」、「あゆのひかり」)をそれぞれ1.5%混合して添加した米粉パン(No.3)は、米粉添加量が少なすぎるために対照の小麦粉パン(No.1)と同等の結果となり不適当であった。それぞれをパン乾物重量の4%ずつ添加した場合(No.4)は良好な結果が得られ、それぞれパン乾物重量の6.7%添加した場合(No.5)はさらに良好な結果となった。
試料No.6が最良の結果を示し、それぞれを25%ずつ添加した場合(No.7)は米粉が多すぎるためにパンが膨張せず、不適当であった。
【0058】
【表3】
比容積について、◎:3.9以上、○:3.7以上で3.9未満、△:3.0以上で3.7未満、×:3.0未満、をそれぞれ示す。
Tendernessについて、◎:150000未満、○:150000以上で250000未満、△:250000以上で400000未満、×:400000以上、をそれぞれ示す。
Toughnessについて、◎:600000未満、○:600000以上で1500000未満、△:1500000以上で2000000未満、×:2000000以上、をそれぞれ示す。
総合について、◎:優れている、○:やや優れている、△:普通、×:劣る、をそれぞれ示す。
夢:「夢十色」(高アミロース米)、朝:「朝紫」(紫黒米)、
アユ:「あゆのひかり」(糖質米)
【0059】
実施例8(乳・発酵乳添加炊飯米粉を使用した米粉パン)
高アミロース米(品種名「夢十色」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)、紫黒米(品種名「朝紫」)に乳および発酵乳を加えて炊飯したミルク炊飯米から製造した米粉を用いて製造した米粉パンについて、比容積を測定した。
「夢十色」、「あゆのひかり」、「朝紫」の90%精白米それぞれ100gに対し、脱脂粉乳1%(1.6g)と市販のナチュラルプレーンヨーグルト10%(16g)を含む水160gを加え、一晩浸漬した後に炊飯し、3種類のミルク炊飯米を得た。次いで、このミルク炊飯米を凍結乾燥後、試験例1と同様に粉砕して3種類のミルク炊飯米粉を得た。
このようにして調製した米粉を、表4に記載された配合比で原料小麦粉(日清製粉製強力粉、商品名「カメリア」)に配合し、製パン時の原料粉に対する加水量64%として実施例1と同様に米粉パンを試作した。
【0060】
試作した米粉パンの比容積を表4に示す。表4中の配合割合は、粉重量(強力粉+米粉)に対する米粉の割合を表示した。
なお、表4のNo.6は、試験例1と同様にして調製した「朝紫」、「夢十色」、「あゆのひかり」の生米粉をそれぞれ12%、6%、12%と、ヨーグルトや脱脂粉乳を用いずに水のみを用いて「朝紫」90%精白米及び「夢十色」発芽玄米を炊飯し、上記と同様に凍結乾燥後に製粉した炊飯米粉をそれぞれ4%(各10g)と、強力粉とを混合し、上記と同様に製パンした米粉パンである。
なお、表4のNo.7は、試験例1と同様にして調製した「朝紫」、「夢十色」、「あゆのひかり」の生米粉をそれぞれ12%、6%、12%と、上記の如くミルク炊飯後に製粉して得られた「朝紫」、「夢十色」及び蛋白質変異米(品種名「春陽」)のミルク炊飯米粉をそれぞれ16%(40g)、16%(40g)、8%(20g)と、強力粉とを混合し、上記と同様に製パンした米粉パンである。
【0061】
【表4】
夢:「夢十色」(高アミロース米)、朝:「朝紫」(紫黒米)、
アユ:「あゆのひかり」(糖質米)、春:「春陽」(蛋白質変異米)
【0062】
上記のミルク炊飯米粉を含む米粉を粉重量に対して70%(パン乾物重量の58%)となるように配合して試作した米粉パン(表4のNo.7)は、「コシヒカリ」あるいは「夢十色」の生粉を粉重量に対して70%となるように添加して試作したパン(表には示していない)に比べて、パンの比容積ならびに食味がきわめて優れていた。
しかし、このミルク炊飯米粉を含む米粉を粉重量に対して80%となるように添加して試作したパン(表には示していない)は比容積が小さく、食味も不良であった。
【0063】
なお、本発明例及び比較例(「朝紫」30%単独配合:表4のNo.2)の試作パンの断面写真を図9に示す。
図9(A)は「あゆのひかり」及び「夢十色」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(B)は「あゆのひかり」及び「朝紫」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(C)は「夢十色」及び「朝紫」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(D)は表4のNo.2、図9(E)は同No.4、図9(F)は同No.7、を示す。
【0064】
実施例9(ヨーグルト炊飯米粉による添加米粉の増加)
紫黒米(品種名「朝紫」)に発酵乳を加えて炊飯したヨーグルト炊飯米から製造した米粉を用いて製造した米粉パンについて、試験例2に示す方法でTendernessを測定した。
「朝紫」の90%精白米100gに対し、市販のナチュラルプレーンヨーグルト10%(16g)を含む水160gを加え、一晩浸漬した後に炊飯し、ヨーグルト炊飯米を得た。次いで、このヨーグルト炊飯米を凍結乾燥後、試験例1と同様に粉砕してヨーグルト炊飯米粉を得た。
このようにして調製した米粉を、表5に記載された配合比で原料小麦粉(日清製粉製強力粉、商品名「カメリア」)に配合し、製パン時の原料粉に対する加水量64%として実施例1と同様に米粉パンを試作した。
なお、表5中の配合割合は、粉重量(強力粉+米粉)に対する米粉の割合を表示した。
【0065】
【表5】
夢:「夢十色」(高アミロース米)、朝:「朝紫」(紫黒米)、
コシ:「コシヒカリ」(一般飯用米)、EM:「EM10」(ae米)
【0066】
試作した米粉パンのTendernessを図10に示す。
図10のfは、小麦粉と米粉全体の重量に対して37%の米粉を含んでいるにも関わらず、良好なパン物性を示した。同様に、図10のgは、56%の米粉を含んでいるにもかかわらず、良好なパン物性を示した。
【0067】
試験例4(ae米「EM10」米粉の添加によるレジスタントスターチの増加)
ae米(品種名「EM10」)、高アミロース米(品種名「夢十色」)、一般飯用米(品種名「コシヒカリ」)の米粉を用いて製造した米粉パンについて、レジスタントスターチ含量を測定した。
「EM10」(図11のb)、「夢十色」(同c)、「コシヒカリ」(同d)から試験例1と同様にして製造した米粉をそれぞれ原料粉(強力粉+米粉)に対して30%(w/w)の割合となるように添加し、原料粉に対する加水量を64%として、実施例1と同様に米粉パンを試作した。
一方、強力粉のみを用いて上記と同様のパンを試作した(図11のa)。
レジスタントスターチ含量の測定は、メガザイム社の「レジスタントスターチ測定用キット」を用いて行った。
【0068】
測定結果を図11に示す。
「EM10」を小麦粉と米粉全重量の30%となるように配合して試作したパン(図11のb)は、約28%のレジスタントスターチを含み、他の米粉パンに比べてきわめて高い値を示し、生理機能性が期待された。
【0069】
実施例10(コシヒカリ生米粉と3種ヨーグルト炊飯新形質米粉を添加したパン)
紫黒米(品種名「朝紫」)、高アミロース米(品種名「夢十色」)、糖質米(品種名「あゆのひかり」)に発酵乳を加えて炊飯したヨーグルト炊飯米から製造した米粉を用いて製造した米粉パンについて、食味評価試験を行った。
「朝紫」、「夢十色」、「あゆのひかり」の90%精白米それぞれ100gに対し、市販のナチュラルプレーンヨーグルト10%(16g)を含む水160gを加え、一晩浸漬した後に炊飯し、3種類のヨーグルト炊飯米を得た。次いで、このヨーグルト炊飯米を凍結乾燥後、試験例1と同様に粉砕して3種類のヨーグルト炊飯米粉を得た。
このようにして調製した米粉を、「朝紫」、「夢十色」各10%(w/w)、「あゆのひかり」5%(w/w)、および一般飯用米(品種名「コシヒカリ」)から試験例1と同様にして調製した生米粉30%(w/w)を、45%(w/w)の小麦粉(日清製粉製強力粉、商品名「カメリア」)に配合し、実施例8と同様にして米粉パンを試作した。
【0070】
このパンを、小麦粉100%のパンを対照として、パネリスト10名による食味試験を行った結果を表6に示す。
なお、表6における食味の評価結果は、小麦粉100%パンを基準(0点)とする3点満点の相対評価点として表示した。
表6から、当該米粉パンは、55%(パン乾物重量の45.8%)の米粉の添加が可能であり、比容積も大きく、小麦粉パンに比べて有意に優れた食味を示すことが明らかとなった。
【0071】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の産業上の用途としては、製パン、製菓、パン粉等の食品製造分野での利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】「コシヒカリ」と「夢十色」の米粉混合パンの官能検査結果を示す図である。図1(A)は焼き上げ当日のパンの検査結果を、図1(B)は製造3日後のパンの検査結果を示す。図1中、aは「コシヒカリ」25%混合パンの検査結果を、bは「夢十色」25%混合パンの検査結果を示す。各評価は、100%小麦粉パン(対照)の食味を基準(0点)として表示した。
【図2】テンシプレッサーを用いた多重積算バイト法による物理特性の測定についての説明図である。
【図3】3種類の米粉混合パンの加水量の相違による物性値の相違を示す図である。図3(A)はTendernessの測定値を、図3(B)はToughnessの測定値を示す。図3中、白色の棒は加水量64%、灰色の棒は加水量72%、黒色の棒は加水量80%の結果である。また、aは「モチミノリ」、bは「春陽」、cは「夢十色」の結果である。
【図4】各種の米粉混合パンの加水量の相違による物性値の相違を示す図である。図4(A)はTendernessの測定値を、図4(B)はToughnessの測定値を示す。図4中、白色の棒は加水量64%、灰色の棒は加水量72%、黒色の棒は加水量80%の結果である。また、aは「夢十色」、bは「あゆのひかり」、cは「朝紫」の結果である。
【図5】各種米粉(「朝紫」・「あゆのひかり」・「夢十色」)混合パンの物性値を示す図である。図5(A)はTendernessの測定値を、図5(B)はToughnessの測定値を示す。図5中、試験区a:実施例1の表1におけるNo.24、試験区b:同No.26、試験区c:同No.27、試験区d:同No.25、試験区e:同No.21、試験区f:同No.18、試験区g:同No.2、を示す。
【図6】各種米粉混合パンの多重積算バイト法による物性値を示す図である。図6(A)はTendernessの測定値を、図6(B)はToughnessの測定値を示す。図6中、試験区a:実施例1の表1におけるNo.1、試験区b:同No.2、試験区c:同No.6、試験区d:同No.9、試験区e:同No.12、試験区f:同No.15、試験区g:同No.18、試験区h:同No.21、試験区i:同No.24、を示す。図6中、a〜iが細字で表示されているのは製造1日後の測定値を、太字で表示されているのは製造4日後の測定値を、それぞれ示す。
【図7】各種米粉混合パンの物性値による老化率を示す図である。図7中、白色の棒はTenderness、灰色の棒はToughnessの結果である。図7中、試験区a:実施例1の表1におけるNo.1、試験区b:同No.2、試験区c:同No.6、試験区d:同No.9、試験区e:同No.12、試験区f:同No.15、試験区g:同No.18、試験区h:同No.21、試験区i:同No.24、を示す。
【図8】「朝紫」と「モチミノリ」のパン物性および老化性の比較を示す図である。図8(A)はTendernessの測定値を、図8(B)はToughnessの測定値を示す。図8中、aは本発明例(表1のNo.24)、bは比較例の結果を示し、白色の棒は試作当日、黒色の棒は試作3日後の結果を示す。
【図9】各種の試作パンの断面を示す図である。図9(A)は「あゆのひかり」及び「夢十色」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(B)は「あゆのひかり」及び「朝紫」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(C)は「夢十色」及び「朝紫」の生米粉を各15%ずつ配合した試作パンを、図9(D)は表4のNo.2、図9(E)は同No.4、図9(F)は同No.7、を示す。
【図10】各種米粉混合パンの多重積算バイト法によるTendernessの測定値を示す図である。図10中、aは小麦粉100%パン、bは「夢十色」30%混合パン、cは「コシヒカリ」30%混合パン、dは「EM10」30%混合パン、eは「朝紫」15%+「EM10」15%混合パン、fは「朝紫」15%+「EM10」15%+「朝紫」ヨーグルト炊飯米粉7%混合パン、gは「EM10」30%+「朝紫」15%+「朝紫」ヨーグルト炊飯米粉11.5%混合パン、を示す。
【図11】各種米粉パンのレジスタントスターチ含量(%)を示す図である。図11中、aは強力粉100%パン、bは「EM10」30%混合パン、cは「夢十色」30%混合パン、dは「コシヒカリ」30%混合パン、を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を含む米粉パン。
【請求項2】
パン乾物重量に占める米粉の割合が10重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載する米粉パン。
【請求項3】
紫黒米、高度硬質米及び糖質米の米粉を、パン乾物重量に対してそれぞれ4重量%以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載する米粉パン。
【請求項4】
高度硬質米がae米であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載する米粉パン。
【請求項5】
紫黒米がイネ品種「朝紫」、高度硬質米がイネ品種「夢十色」、糖質米がイネ品種「あゆのひかり」であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載する米粉パン。
【請求項6】
さらに、イネ品種「コシヒカリ」の米粉をパン乾物重量に対し4重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載する米粉パン。
【請求項7】
米粉の一部あるいは全部が炊飯米から製造したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載する米粉パン。
【請求項8】
炊飯米が発酵乳および/あるいは乳を加えて炊飯したものであることを特徴とする請求項7に記載する米粉パン。
【請求項9】
紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を添加することを特徴とする米粉パンの製造方法。
【請求項1】
紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を含む米粉パン。
【請求項2】
パン乾物重量に占める米粉の割合が10重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載する米粉パン。
【請求項3】
紫黒米、高度硬質米及び糖質米の米粉を、パン乾物重量に対してそれぞれ4重量%以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載する米粉パン。
【請求項4】
高度硬質米がae米であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載する米粉パン。
【請求項5】
紫黒米がイネ品種「朝紫」、高度硬質米がイネ品種「夢十色」、糖質米がイネ品種「あゆのひかり」であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載する米粉パン。
【請求項6】
さらに、イネ品種「コシヒカリ」の米粉をパン乾物重量に対し4重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載する米粉パン。
【請求項7】
米粉の一部あるいは全部が炊飯米から製造したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載する米粉パン。
【請求項8】
炊飯米が発酵乳および/あるいは乳を加えて炊飯したものであることを特徴とする請求項7に記載する米粉パン。
【請求項9】
紫黒米、高度硬質米及び糖質米からなる新形質米の群のうち、少なくとも2種類以上の新形質米の米粉を添加することを特徴とする米粉パンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−232800(P2009−232800A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85413(P2008−85413)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【特許番号】特許第4255034号(P4255034)
【特許公報発行日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、農林水産省、委託研究(高度化事業)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【特許番号】特許第4255034号(P4255034)
【特許公報発行日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、農林水産省、委託研究(高度化事業)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
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