説明

米糠発酵組成物およびそれを使用した漬物用浸漬液

【課題】特に工業的な糠漬け製造における糠漬け用浸漬液の製造期間の短縮およびそれらの維持の簡便化、その成分安定性および均一性の保持、並びに製造された糠漬けに対する良好な風味の付与および粗大糠粒子の洗浄作業とそれに伴う排水問題を解消すること。
【解決手段】米糠の乳化液を乳酸菌、酵母および/またはプロピオン酸生産菌で発酵させたことを特徴とする、米糠発酵組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米糠発酵組成物および当該組成物を使用した漬物用浸漬液に関する。
【背景技術】
【0002】
糠漬け(糠みそ漬け)は、江戸時代から関東、中部、関西、四国、九州地方にいたる気候温暖な地域に親しまれてきた、主に家庭で製造、消費される漬物で、その独特な香りと爽やかな酸味が大きな特徴である。この糠漬けは、「糠床」と呼ばれる床に日々新たに野菜を入れては取り出すことによってつくられ、一方で、そのことによって次第に糠床の風味も熟成されていき、糠漬けとしてのいっそう独特な美味しさが付与されるという、他の漬物には見られない特徴がある。
【0003】
しかしながら、糠漬けに当該独特の風味を備えるようになるには、毎日糠床を混合し、野菜を漬けては取り出すことを繰り返し、最低40日から50日を必要とすること、夏季などに上記のような「手入れ」を怠ると、糠表面に生育した腐敗性細菌等により「不精香」といわれる回復不能な悪臭が着臭することから、一定の品質の糠漬けを得るための長期間にわたる適切な維持、管理が難しく、糠漬けを行う家庭は減少している。
【0004】
一方、独特な香りと爽やかな酸味を有する糠漬けに対する需要は依然として大きいものがあるが、前記のとおり本格的な糠床の調製には長期間を要すること、それを管理維持するのは極めて煩雑で困難なこと、また糠漬けを流通させる際には野菜等に付着した糠の洗浄が要求されること、更には流通時の品質安定性維持の難しさなどから、本格的な糠漬けの工業的な生産は一部を除いてほとんどなされていない。従って、現在、主に工業的に生産されている「糠漬け」様食品は、単に「糠風味の調味液」漬けに糠をまぶした「糠まぶし」などの簡易な商品が圧倒的であるが、そのためにそれらの商品は、味、香りの点において本来の糠漬けとは程遠いものとなっている。
【0005】
なお、糠風味の調味液について見ると、近年、乳酸菌や酵母による糠床発酵に関する知見が広く得られてきたことにも呼応して、乳酸菌を漬物に添加したり、米糠抽出液を乳酸菌等により発酵させて、これを野菜の漬け込みに利用したりするなどの方法が実施されてきている。例えば、国際公開公報WO99/62347号公報には、乳酸を生産する能力を有する微生物およびプロピオン酸を生産する能力を有する微生物と、γ−ドデカラクトンおよび/またはγ−ドデセラクトンを生産する能力を有するコリネバクテリウム属の特定の微生物で発酵させる糠風味の調味液の製造方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記のような糠風味の調味液等は、漬物に対して香料のように添加することで、発酵風味を糠漬けに付与することを目指したものであったが、それは、長期間、例えば数年以上も入念に手入れされた糠床の、より芳醇で独特な風味を醸し出すというまでには至らなかった。またγ−ドデカラクトンおよびγ−ドデセラクトンは上記「不精香」の主要な成分であり、さらに糠特有の香気を強調した発酵物となっているため、高濃度で添加した場合不快な香気を発するものであった。
【0007】
また、米糠には15%程度の油脂が含まれており、この油脂の香気成分への寄与が極めて大きいことは特筆すべき点である。すなわち、油脂を含む糠の発酵過程におけるトリグリセリドの分解と、それに伴う不飽和脂肪酸の顕著な変化、そして野菜の持つ酵素類の影響から、糠床の特有香気成分が生成する機序が、本発明者によって解明されている(日本食品保蔵学会誌,21巻,37〜54頁(1995))。とりわけ、米糠の発酵によって得られた香気成分は疎水性のものが多く、それら疎水性香気成分の保持の点などからも、米糠の発酵工程のみならず、製造された糠風味の調味液等においてさえ、油脂は必須な成分であるといえる。
【0008】
しかしながら、上記のようなこれまでの糠風味の調味料等は、通常、水溶液で販売されており、また澄明化という要望に応えるためにも、濾過などによって澄明にすればするほど、疎水性香気成分が油脂とともに濾過残渣中に取り残されてしまうことで、本格的な糠漬け風味の付与という目的と相反する矛盾が解決できなかった。
【0009】
加えて、乳酸発酵した糠床や液状糠等に野菜を漬けることで糠漬けを製造する場合、糠床成分の均一性保持、粗大糠粒子の洗浄作業とそれに伴う排水問題があるが、これらの問題は依然として解決されていない。粗大糠粒子の洗浄作業を省略できる方法として、特開平11−127777号公報、特開平6−54647号公報には米糠調味料を布製の袋に入れ、これと野菜などを接触させ、漬物を得る方法が開示されているが、いずれも家庭での小規模生産を念頭に置いたものであり、また発酵している糠床を使用するものではないため、乳酸発酵した糠床や液状の糠発酵液を使用して糠漬けを工業的に製造する際に発生する糠床成分の均一性保持、粗大糠粒子の洗浄作業とそれに伴う排水などの問題点はいまだ解決されていない。
【特許文献1】国際公開公報WO99/62347号公報
【特許文献2】特開平11−127777号公報
【特許文献3】特開平6−54647号公報
【非特許文献1】今井,日本食品保蔵学会誌,21巻,37〜54頁(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のとおり、糠漬けの工業的な製造に関しては、糠床または浸漬液の調製を含めた製造期間の短縮およびそれらの調製・維持の簡便化、糠床または浸漬液の成分の安定性および均一性の保持、粗大糠粒子の洗浄作業とそれに伴う排水問題の解消、浸漬液による十分な糠風味の付与などを解決することが、依然として要求されている。従って、本発明は、それらの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、米糠はそれ自体でも極めて高い乳化力を有していることを見出し、また当該米糠の乳化液を用いて乳酸菌、酵母および/またはプロピオン酸生産菌で発酵させることで、本格的な糠床を用いた場合と同様の糠風味を糠漬けに付与することが可能な米糠発酵液を調製し得た。従って、本発明の第1は、
(1)米糠の乳化液を乳酸菌、酵母および/またはプロピオン酸生産菌で発酵させたことを特徴とする、米糠発酵組成物であり、とりわけ米糠の乳化液を、乳酸菌と酵母、またはプロピオン酸生産菌、または乳酸菌と酵母とプロピオン酸生産菌で発酵させた米糠発酵組成物である。
【0012】
また、糠床の特徴的な香気の一部は低級脂肪酸、とりわけプロピオン酸に由来するものであるが、乳酸菌とプロピオン酸生産菌が共存する環境ではプロピオン酸の生成が阻害され、糠特有の香気を有するまでに比較的長い時間を要することが判明した。従って、プロピオン酸のみを別途発酵させ、乳酸菌発酵液とあわせることにより、本発明の米糠発酵組成物乃至それを利用した漬物用浸漬液の調製時間を短縮できることも見出された。よって、本発明の第2および第3は、
(2)少なくとも1種以上の乳酸菌および少なくとも1種以上の酵母を前記米糠の乳化液に接種して発酵させたことを特徴とする、上記(1)の米糠発酵組成物、および
(3)少なくとも1種以上のプロピオン酸生産菌を前記米糠の乳化液に接種して発酵させたことを特徴とする、上記(1)の米糠発酵組成物である。
【0013】
更に、前記のとおり、糠床の特徴的な香気の一部は低級脂肪酸、とりわけプロピオン酸に由来するものであるので、本発明の米糠発酵組成物或いはそれを含む糠漬け用の漬物用浸漬液においては、所定濃度のプロピオン酸を含んでいることが好ましい、従って、本発明の第4は、
(4)該組成物中のプロピオン酸の濃度が400〜20000ppmである上記(1)または(3)に記載の米糠発酵組成物である。
【0014】
加えて、本発明の別の目的である、糠漬け製品からの粗大糠粒子の洗浄除去作業とそれに伴う排水問題の解消に関しても、上記(1)乃至(4)に従い米糠の乳化液を発酵させて得られた本発明の米糠発酵組成物においては、そこに米糠の粗大粒子が含まれていなくとも、十分な糠風味を糠漬け製品に付与できることが確認され、しかして前記のような粗大糠粒子の洗浄除去作業とそれに伴う排水問題を解消し得た。従って、本発明の第5は、
(5)粒子径500μmを超える懸濁粒子を含まないことを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかの米糠発酵組成物である。
【0015】
なお、米糠の乳化液を発酵させて得られる本発明の米糠発酵組成物では、発酵前の米糠自体が既に極めて高い乳化力を有していたことから、やはり当該発酵後でさえも乳化状態が維持されており、理論に拘束されることは好まないが、当該持続的な乳化状態が本発明の米糠発酵組成物の好適な風味の熟成・維持に関与していると考えられる。翻って、本発明の好適な米糠発酵組成物では、従来の糠風味の調味液のような極端な澄明化処理を行なうことが必ずしも有利ではない。当該澄明化処理により、糠床の特徴的な香気成分、特に疎水性香気成分が同時に除去されてしまうと考えられるからである。しかるに、本発明の好適な米糠発酵組成物では、たとえ米糠の粗大粒子を除去した後においても、依然として所定の乳化の程度を維持していることが好ましく、また当該乳化の程度は該組成物の吸光度により簡便に確認することができる。従って、本発明の第6は、
(6)該組成物の10倍希釈時の660nmにおける吸光度が0.05〜3.0であることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかの米糠発酵組成物である。
【0016】
以上から、本発明に基づいて米糠の乳化液を発酵させて得られる米糠発酵組成物を糠漬け用の浸漬液として利用すること、またその際には、乳酸菌および酵母を発酵させた本発明の米糠発酵組成物とプロピオン酸生産菌を発酵させた本発明の米糠発酵組成物とを組み合わせて当該漬物用浸漬液を得ること等の利点は、既に明らかであろう。従って、本発明の第7乃至12は、
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかの米糠発酵組成物を含むことを特徴とする、漬物用浸漬液、
(8)少なくとも1種以上の乳酸菌および少なくとも1種以上の酵母を前記米糠の乳化液に接種して発酵させた米糠発酵組成物と、少なくとも1種以上のプロピオン酸生産菌を前記米糠の乳化液に接種して発酵させた米糠発酵組成物とを混合して成る、上記(7)の漬物用浸漬液、
(9)粒子径500μmを超える懸濁粒子を含まないことを特徴とする、上記(7)または(8)の漬物用浸漬液、
(10)前記浸漬液の10倍希釈時の660nmにおける吸光度が0.05〜3.0であることを特徴とする、上記(7)乃至(9)のいずれかの漬物用浸漬液、
(11)前記浸漬液中のプロピオン酸の濃度が400〜20000ppmである、上記(7)乃至(10)のいずれかの漬物用浸漬液、
(12)乳酸酸度(%)をA、塩化ナトリウムとして換算した塩化物イオン濃度(%)をSとしたとき、A/Sが0.05〜0.4である、上記(7)乃至(11)のいずれかの漬物用浸漬液である。
【0017】
なお、本発明の第12において、乳酸酸度(%)をA、塩化ナトリウムとして換算した塩化物イオン濃度(%)をSとしたとき、A/Sを0.05〜0.4としたのは、そのような調整により、当該漬物用浸漬液中の有機酸含量と食塩含量の比率を好適にできるからである。
【0018】
加えて、本発明は、上記の米糠発酵組成物を含む漬物用浸漬液を用いて糠漬けを製造することも意図する。従って、本発明の第13および14は、
(13)上記(1)乃至(6)のいずれかの米糠発酵組成物を含む漬物用浸漬液に野菜を漬け込むことを特徴とする、糠漬けの製造方法、および
(14)前記漬物用浸漬液が、上記(7)乃至(12)の漬物用浸漬液である、上記(13)の糠漬けの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、糠漬けの製造に用いることのできる、本格的な風味を有する米糠発酵組成物およびその製造法が提供される。特に、きわめて短期間に製造され、品質の安定した米糠発酵組成物が提供できる。また、当該米糠発酵組成物を使用して品質の安定した本格的な風味の糠漬けが提供される。さらに当該米糠発酵組成物を使用して糠漬けを製造する場合に、粗大糠粒子の洗浄作業がほぼ要求されない糠漬けの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書においては、特に言及しない限り%は重量%を、比は重量比を示す。
【0021】
1.米糠の乳化液
前述のように、本発明の米糠発酵組成物は米糠の乳化液(以下、「乳化糠」ということがある。)を発酵することで得られる。発明者らは、米糠中に含まれる油脂が香気成分の生成、保持にとっても重要な成分であると考え、これらを溶液中に均一に分散・保持させる方法として米糠懸濁液の乳化を試みた。その結果、15%米糠懸濁液に米油5%および乳脂5%を添加(これらの油脂は乳化状態の安定性の確認をする目的のために添加した。)して乳化処理したところ、この乳濁液は15日間冷蔵しても依然として乳化状態を保持し、乳脂などの油脂の固化も認められなかった。このことから米糠には高い乳化能力があることが確認できた。
【0022】
従って、本発明で用いる乳化糠は、米糠を水等の水性溶媒に懸濁した後、攪拌することにより簡便に製造することができる。使用する米糠としては、市販されている生糠やいり糠を用いることができるが、生糠を用いるのが風味などの点でも好ましい。また、当該米糠液の攪拌は、乳化における十分な攪拌強度が得られるのであれば攪拌棒などを用いて手動で行ってもよいし、或いは市販のいずれの装置を用いて行なってもよく、例えばオーバーヘッドミキサーやホモゲナイザーなどを利用するのが簡便である。
【0023】
なお、上記において水性溶媒に懸濁すべき米糠の濃度は、攪拌効率、米糠成分の抽出効率、或いは後述の酵素反応を適宜行なう際の効率の観点からも、通常、約8〜30%、好ましくは約15〜20%とすることができる。
【0024】
また、本発明で用いる乳化糠を調製するに際しては、米糠懸濁液の攪拌中、或いは攪拌に先立って、当該懸濁液を加熱することも好ましい。当該加熱処理は、糠に含まれる成分の抽出を容易にしおよび/またはたんぱく質の変性等をおこなうために実施され得、その際の加熱温度は、好ましくは約80〜100℃、より好ましくは約95〜100℃の範囲に設定し、加熱時間は好ましくは約1〜15分、より好ましくは約5〜10分とするのがよい。
【0025】
更にその後の酵素処理も必要に応じて行なわれ得るが、当該処理は、米糠に含まれる澱粉やたんぱく質を低分子化することで、調製した乳化糠が濾過できる程度にまで粘度を低下させる目的で実施されるものであり、従って、乳化糠の濾過が必要とされる場合に当該粘度を低下させ得る限りにおいて、一般的に当業者に使用されているアミラーゼ、プロテアーゼ等を用いても差し支えない。
【0026】
本発明における好適な米糠発酵組成物には米糠由来の粗大粒子が含まれていないことに対応して、前記のとおり本発明の乳化糠からもそのような粗大粒子を予め除去しておくことが好都合である。当該除去操作には、典型的には、所謂、濾過法が採用される。そのような濾過処理には通常行われる方法であればいずれのものも適用可能であるが、一般的には、濾布を用いた加圧濾過法を利用することが好ましい。濾布の目開きは、漬物製造後に粗大糠粒子の除去作業を発生させないために、約45μm〜840μm、好ましくは約50μm〜500μm、さらに好ましくは約100μm〜200μmとすることができる。目開きが840μmより大きい場合、粗大粒子が十分に除去できず、漬物製造後の洗浄操作が必要となる。また目開きが45μmより小さい場合、濾過効率が悪くなり製造に適さない。珪藻土を用いたプレコートを行うことにより、目開きの小さな濾布の使用も可能ではあるが、目開きがあまりにも小さい場合は乳化状態までもが解消して極端な澄明溶液となってしまい、本発明の乳化糠が得られない。なお、同様のことは本発明の米糠発酵液についても当て嵌まる。
【0027】
本発明の乳化糠、或いは必要に応じて米糠粗大粒子を除去した後の当該乳化糠は、更に、酵素失活、滅菌等の目的のために加熱するが、その際の成分の劣化を抑えるため、加熱温度としては、約70〜100℃、好ましくは約75〜90℃とし、加熱時間は、約5〜20分、好ましくは約10〜15分で処理を行うのが好適である。そのような処理の後に、続く乳酸発酵、酵母発酵および/またはプロピオン酸発酵の原料として使用できる乳化糠、つまり本発明の米糠の乳化液となる。
【0028】
上記乳化糠に対して、野菜搾汁液、野菜粉砕物の一方または双方を添加することも好適な態様である。これまでの知見から、当該野菜由来の成分も糠発酵原料に含まれていたほうが、本来の糠床特有の香気が十分に得られることが明らかとなっている。本発明で好適に使用できる野菜搾汁液、野菜粉砕物の原料野菜としては、例えば、きゅうり、キャベツ、にんにく、にんじん、なす、たまねぎなどが挙げられる。
【0029】
上記の乳化糠に対しは、続く微生物の生育・発酵を妨げない範囲で、更に加水分解酵素を添加することも好ましい態様である。加水分解酵素は糠の香気成分をより効率よく発生させるために添加されるものであり、たとえばプロテアーゼを添加することにより糠成分中のたんぱく質からアミノ酸を発生させ、これを微生物によって資化させて、低級脂肪酸およびアルコール類の生成を促すことができる。また、リパーゼを添加することにより糠成分中のグリセリドから脂肪酸を遊離させ、エステル類およびラクトン類の生成を促すことができる。添加する酵素としては市販の各種酵素製剤を好適に使用することができる。
【0030】
要すれば、本発明で好適に用いられ得る米糠由来の500μm以上の粗大固形粒子を含まない乳化糠(米糠の乳化液)について説明すると、そのような乳化糠は、好ましくは約8〜30%、より好ましくは約15〜20%の米糠を含む懸濁液を、糠に含まれる成分の抽出および/またはたんぱく質の変性等をおこなうために約80〜100℃、好ましくは約95〜100℃で約1〜15分、好ましくは約5〜10分間加熱した後、或いは加熱の最中に攪拌して乳化状とし、必要に応じて該乳化液の粘度を低下させる等の目的でリパーゼ、アミラーゼおよび/またはプロテアーゼで処理して、例えば目開き200μmの濾布で濾過を行うなどの方法を採用しつつ粗大粒子を除去することによって得ることができる。なお、予め乳化糠から粗大粒子の除去しない場合には、当該除去操作は乳化糠の発酵後においても同様に実施され得る。
【0031】
2.米糠発酵組成物
本発明の米糠発酵組成物は、上記のようにして調製した米糠の乳化液(乳化糠)に対し、少なくとも1種以上の乳酸菌、少なくとも1種以上の酵母、および/または少なくとも1種のプロピオン酸生産菌を接種することで発酵して得ることができる。
【0032】
なお、本来の糠床では乳酸菌と酵母が主体となって発酵過程が進行するのであるから、当該乳酸菌および酵母による発酵で得られた本発明の米糠発酵組成物をそのままで後述の本発明の漬物用浸漬液に利用することもできるし、また乳酸菌、酵母およびプロピオン酸生産菌により発酵させて得られた米糠発酵組成物をそのまま漬物用浸漬液としてもよいが、本発明の好適な一実施態様においては、乳酸菌と酵母による安定的な乳酸発酵によって得られた米糠発酵物(以下、「米糠乳酸発酵液」という。)に、別途プロピオン酸発酵によって得られた米糠発酵物(以下、「米糠プロピオン酸発酵液」という。)を後から混合して本発明の米糠発酵組成物乃至漬物用浸漬液と成すこともできる。それにより本格的な糠風味の達成をいっそう容易にすることができるからである。
【0033】
すなわち、前述のとおり、糠床の特徴的な香気の一部は低級脂肪酸、特にプロピオン酸および酪酸に由来するものであるが、乳酸菌とプロピオン酸生産菌が共存する環境ではプロピオン酸の生成が阻害され、糠特有の香気を有するまでに極めて長い時間を要することが判明した。そのためプロピオン酸のみを別途発酵させて本発明の米糠プロピオン酸発酵液を得、それを米糠乳酸発酵液とあわせることにより、発酵期間を短縮できることが見出された。一方、酪酸については、酵母による発酵でも十分に生成するが、本発明を実施する方法のひとつとして、米糠懸濁液に乳脂を加えた後に乳化させたものをリパーゼ処理することにより、酪酸の生成時間を短縮することもできる。しかるに、以下では、米糠乳酸発酵液と米糠プロピオン酸発酵液を例にとり、本発明の米糠発酵組成物を説明する。
【0034】
3.米糠乳酸発酵液
本発明の米糠乳酸発酵液は、前記した米糠の乳化液(乳化糠)に対して乳酸菌および酵母の菌体、或いは前培養したそれらの乳酸菌および酵母を接種し、約7〜30日間、好ましくは約10〜20日間発酵を行うことで得ることができる。この乳酸発酵によって、香気成分のうち、主に、エステル、アルコール、有機酸、ラクトン、含硫黄化合物、含窒素化合物などが当該発酵液に付与される。なお、乳酸菌および酵母の接種に先立って乳化糠をアミラーゼ、プロテアーゼ等の酵素で処理して粘度低下させること、濾過などにより粗大米糠粒子を除去しておくこと、乳化糠に対して磨砕野菜汁或いは野菜粉砕物を添加すること、各種の加水分解酵素(プロテアーゼ、リパーゼ等)を加えることは好ましい態様である。また、必要により、乳化糠に対して乳酸菌および酵母の発酵を促しえる程度の食塩を添加することもいっそう好ましい。
【0035】
本発明の乳酸発酵で使用する乳酸菌は、通常のよく手入れされた糠床において見出されるものならばいずれの種を用いてもかまわないが、代表的には、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス ビリデッセンス(Lactobacillus vilidescens)、ラクトバチルス アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス ペントサセウス(Lactobacillus pentosaceus)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、テトラジェノコッカス ハロフィラス(Tetragenococcus halophilus)、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック デキストラニカム(Leuconostoc dextranicum)およびロイコノストック ラクティス(Leuconostoc lactis)等の種が用いられる。好適な乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス ペントサセウス(Lactobacillus pentosaceus)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)が挙げられる。これらの乳酸菌は、単独でまたは2種以上を組み合わせて本発明の乳化糠に接種することができる。
【0036】
本発明の乳酸発酵で併用する酵母は、通常のよく手入れされた糠床において見出されるものならばいずれの種を用いてもかまわないが、キャンディダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ピキア(Pichia)属、ハイフォピキア(Hyphopichia)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、サッカロミコプシス(Saccharomycopsis)属およびにハンセヌラ(Hansenula)属、デバリモミセス(Debaryomyces)属に属する種からなるものが挙げられ、そのうちのキャンディダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ピキア(Pichia)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属およびハンセヌラ(Hansenula)属が好ましいものとして例示できる。具体的な種としては、キャンディダ クルゼイ(Candida krusei)、キャンディダ リポリティカ(Candida lipolytica)、トルロプシス エッチェルシイ(Torulopsis etchellsii)、デバリオミセス ハンセニイ(Debaryomyces hansenii)、ハンセヌラ アノマラ(Hansennula anomala)、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびハイフォピキア バートニイ(Hyphopichia burtonii)が挙げられ、好ましくは、キャンディダ クルゼイ(Candida krusei)、キャンディダ リポリティカ(Candida lipolytica)、トルロプシス エッチェルシイ(Torulopsis etchellsii)、デバリオミセス ハンセニイ(Debaryomyces hansenii)、ハンセヌラ アノマラ(Hansennula anomala)、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられる。これらの酵母種も、単独でまたは2種以上を組み合わせて本発明の乳化糠に接種することができる。
【0037】
上記のような乳酸菌と酵母の接種は、それにより本発明の米糠の乳化液(乳化糠)が乳酸発酵し得る限りにおいて、単にそれらの菌体製剤、例えば菌体の凍結乾燥物を添加する形で行なってよい。或いは、乳酸菌および酵母は、それらの菌を別個にまたは一緒にして適切な培地内(MRS培地、YM培地等)で前培養することで前培養液を得た後、該前培養液内の栄養増殖体として接種してもよい。前培養液を接種する場合は、乳化糠に対して当該前培養液を、好ましくは約0.2〜3%、より好ましくは約0.5〜2%の割合で添加するとよい。
【0038】
乳酸菌と酵母を接種された乳化糠は、続いて約15〜37℃、好ましくは約25〜35℃の温度で発酵される。静置培養による発酵が好ましいが、その場合でも発酵期間中、1日に約数分間程度穏やかに攪拌するのがより好ましい。発酵期間は、通常、約7〜30日間、好ましくは約10〜20日間とすることができる。
【0039】
発酵完了後、当該発酵液、つまり本発明の米糠乳酸発酵液の以後の組成変化を防止・低減する目的で、該発酵液を約70〜90℃、好ましくは約75〜80℃の温度で、約5〜15分間、好ましくは約5〜10分間加熱し、滅菌、酵素失活を行うとよい。通常、前記した乳酸菌および酵母による発酵後の発酵液中の乳酸濃度は約10000〜30000ppm、典型的には約15000〜25000ppmに達しているが、前記の加熱処理を行わないと発酵がさらに進行し、経時的に発酵完了時より多くの乳酸が生成するため、後の漬物用浸漬液製造時の乳酸発酵液添加量を設計する際に支障をきたす場合がある。
【0040】
なお、上記の米糠乳酸発酵液の製造においては、更に発酵期間を短縮したり、或いはいっそう好適な香気を安定的に付与するなどの目的のために、原料となる乳化糠に対して予め別途調製しておいた米糠乳酸発酵液を添加して発酵を開始させることも好ましい態様である。その場合、別途調製しておいた米糠乳酸発酵液は、原料である米糠の重量に換算して、好ましくはそのうちの約25%を置き換えることに相当する比率で添加するのがよい。つまり、例えば、新たに発酵させられるべき米糠の乳化液を、通常より約25%少ない米糠を用いることで調製しておき、そこに添加する別途調製しておいた米糠乳酸発酵液が、当該25%に相当する米糠を補うような量で添加される。
【0041】
また、前記の予め別途調製しておいた米糠乳酸発酵液に替えて、既存の糠床を水でおよそ40%以下に希釈し、それを乳化スラリー状態とした後、例えば目開き約200μmの濾布で濾過を行うなどの方法を採用して粗大固形粒子を除去したものを本発明の乳化糠に添加して、該乳化糠の発酵を開始させることもできる。ここで用いる糠床は通常使用されている既存のものであればいずれも好適に使用できる。また、それは原料米糠に既存の米糠発酵物を加えて発酵させることで短期間発酵させた糠床であってもよい。そのような短期間発酵糠床としては、米糠に米糠の乳酸発酵物を加え、熟成期間を短縮させた所謂「速醸糠床」を使用するのが好ましい。当該「速醸糠床」としては、例えば特開2005−80556号公報に記載のもの、具体的な入手可能なものとしては「かおり糠床140」(三菱商事フードテック株式会社製)などが好適である。なお、ここで用いる米糠の乳酸発酵物として本発明の米糠乳酸発酵液も好適に使用することも簡便である。その後の乳化糠の発酵は、前記と同様の発酵条件の下で行なうことができる。
【0042】
4.米糠プロピオン酸発酵液
前記のとおり、本来の糠床では乳酸菌と酵母が主体となって発酵過程が進行するのであるが、本発明においては本格的な糠風味をいっそう容易に且つ短期間で付与するなどの目的から、上記の米糠乳酸発酵液に対して、別途プロピオン酸発酵によって得られた本発明の米糠プロピオン酸発酵液を後から混合し、両者を合わせて本発明の米糠発酵組成物と成すのが好適なことも既述のとおりである。
【0043】
本発明の米糠プロピオン酸発酵液は、本発明の乳化糠にプロピオン酸生産菌を接種し発酵させることで調製することができる。当該乳化糠としては、先に説明した本発明の米糠乳酸発酵液の原料とされた乳化糠と同様のものが利用でき、必要によりアミラーゼ処理、濾過処理、各種加水分解酵素を添加できることも同じである。また、当該乳化糠に予め乳酸塩を添加しておくことも大変好ましい。
【0044】
すなわち、米糠のプロピオン酸発酵時に米糠原料に対して乳酸塩を添加することにより、当該プロピオン酸の生成量が増加することが発明者の検討により明らかとなっており、従って、本発明の乳化糠に対して当該乳酸塩を添加することは、風味や発酵期間の改善の観点からも好ましいことなのである。その目的のために添加する乳酸塩は、可溶性乳酸塩であればいずれのものも用いることができるが、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウムを用いることが好ましい。また、発酵原料となる乳化糠への添加量は約0.5〜4%が好ましく、約2〜3%がより好ましい。
【0045】
本格的な糠床に特徴的な香気成分を付与するにあたっては、プロピオン酸のみならず酪酸由来の低級脂肪酸系香気も重要である。従って、当該酪酸の調整も、後述する本発明の漬物用浸漬液作成時の低級脂肪酸由来の香気成分の管理、設計の面から十分に考慮されるべき点である。
【0046】
当該酪酸についても、本来の糠床における発酵では主に酵母による発酵過程により生成されるのであるが、プロピオン酸の場合と同様に、乳酸菌共存下ではその生成に時間を要する。そのことから、本発明の好適な一態様では、同じ低級脂肪酸であるプロピオン酸生成、つまり本発明の米糠プロピオン酸発酵液の調製に使用する原料乳化糠中で、乳脂のリパーゼ処理により予め酪酸を生成させておく。
【0047】
具体的には、本発明の乳化糠のもととなる米糠懸濁液に対して約0.5〜5%、好ましくは約1〜3%の割合で乳脂を添加し、次いで、そこに約0.05〜2%、好ましくは約0.5〜1%のリパーゼを添加する。当該添加後の米糠懸濁液を乳化させた後に、約20〜50℃、好ましくは約30〜40℃の温度で、約12〜24時間、好ましくは約15〜20時間反応させることにより酪酸臭を有する乳化糠を得る。当該酪酸臭が付与された乳化糠はそのままでも続くプロピオン酸発酵の原料とできるが、当該酪酸臭が付与された乳化糠を、そのような処理がされていない本発明の乳化糠で適宜希釈して、続くプロピオン酸発酵の原料として用いるのが好適である。なお、当該プロピオン酸発酵に先立って乳酸塩を加えることにより、プロピオン酸発酵を促しえるのも前記のとおりである。かくして、酪酸を含有する、米糠プロピオン酸発酵液を得ることができる。なお、このリパーゼ処理原料は、米糠乳酸発酵液の原料乳化糠の調製においても適用できる。
【0048】
次いで、本発明の米糠プロピオン酸発酵液の発酵方法について説明すると、当該発酵液は上記のようにして得た乳化糠に対して少なくとも1種以上のプロピオン酸生産菌を接種し発酵することで得られるわけであるが、当該プロピオン酸発酵で使用するプロピオン酸生産菌はプロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)に属する種であれば問題がなく、好適なものとしてはプロピオニバクテリウム アシディプロピオニシイ(Propionibacterium acidipropionicii)およびプロピオニバクテリウム フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)を非限定的に例示できる。
【0049】
上記のようなプロピオン酸生産菌の接種は、単にそれらの菌体製剤、例えば菌体の凍結乾燥物を添加する形で行なってもよく、或いは、適切な培地内でそれらの菌を前培養し、栄養増殖体の形で当該前培養液として接種してもよいことは、乳酸菌および酵母の場合と同様である。なお、前培養液を接種する場合は、乳化糠に対し、該前培養液を好ましくは約0.2〜3%、より好ましくは約0.5〜2%の割合で接種する。
【0050】
その後、プロピオン酸生産菌を接種した乳化糠は約15〜37℃、好ましくは約25〜35℃の温度で発酵される。静置培養による発酵が好ましいが、発行期間中は1日に約数分間穏やかに攪拌するのが好ましい。発酵期間は約5〜20日間、好ましくは約7〜15日間である。
【0051】
発酵完了後、当該発酵液、つまり本発明の米糠プロピオン酸発酵液の以後の組成変化を防止・低減する目的で、該発酵液を約70〜90℃、好ましくは約75〜85℃の温度で、約5〜15分間、好ましくは約5〜10分間加熱し、滅菌、酵素失活を行い、安定的な本発明の米糠プロピオン酸発酵液を得る。このときの発酵完了後の発酵液中のプロピオン酸濃度は、通常約4000〜50000ppm、典型的には約10000〜20000ppmに達している。当該発酵の完了後に上記の加熱処理を行わないと発酵がさらに進行し、経時的に発酵完了時より多くのプロピオン酸が生成するため、後述の漬物用浸漬液製造時のプロピオン酸発酵液添加量を設計する際に支障をきたす場合がある。
【0052】
このようなプロピオン酸発酵によって、糠床香気成分のうちの主にプロピオン酸が含まれる米糠プロピオン酸発酵液を得ることができる。この米糠プロピオン酸発酵液は、本発明の漬物用浸漬液を製造する際の一成分としてそのままの濃度でも使用できるが、それを約10倍程度にまで希釈して使用することも可能である。例えば、発酵液のプロピオン酸濃度が約4000〜20000ppmとなるように適宜希釈して用いることが好ましい。なお、希釈前または希釈後の米糠プロピオン酸発酵液中のプロピオン酸濃度が約4000ppm未満の場合、漬物用浸漬液においては約400ppmのプロピオン酸濃度を維持することがより好ましいため、例えばそれを本発明の米糠乳酸発酵液と1:10の割合で混合して使用する際には不都合が生じることがある。またプロピオン酸濃度を20000ppmより高濃度にすることは、そのような濃度が漬物用浸漬液として使用する場合において特に要求されるものではないので、得るところが少ない。
【0053】
なお、上記のようなプロピオン酸の濃度は、高速液体クロマトグラフィーにおいてブロムチモールブルーを用いたポストカラム法により検出したピークから、面積強度法によって求めることができる。具体的には、例えば、有機酸分析用のスルホン化ジビニルベンゼンを充填剤としたカラムと過塩素酸を含む溶離液を用い、有機酸と充填剤のイオン斥力により分離を行う。検出部では有機酸によるpHの変化を指示薬によって検出し、pHの変化による光の吸収の変化の最も大きい波長で吸光度の測定を行う。標準プロピオン酸に由来する吸収の面積強度について検量線を作成し、プロピオン酸の濃度を算出する。そのような方法は当業者に周知である。
【0054】
5.漬物用浸漬液
前記のとおり、本発明の米糠発酵組成物のうちで乳酸菌および酵母、またはそれらに更にプロピオン酸生産菌を含めて発酵させることで得られた当該発酵組成物は、そのままで本発明の漬物用浸漬液の主原料と成すことができる。とりわけ、これも前記のとおりに、別々に調製された本発明の米糠乳酸発酵液と米糠プロピオン酸発酵液を合することで本発明の米糠発酵組成物と成し、それを主原料として用いて本発明の漬物用浸漬液とするのも好適な態様である。いずれにしても、それらの米糠発酵組成物は、浸透圧および、後に説明する有機酸含有量と食塩含有量の比(A/S)が好ましい範囲になるように適宜希釈するなどして、本発明の漬物用浸漬液として利用することができるのである。また、このときの当該漬物用浸漬液中のプロピオン酸濃度は、製造された漬物が好ましい香気を有するために、少なくとも約400ppmを維持することが望ましい。
【0055】
より具体的に説明すると、例えば本発明の好適な一実施態様に従って本発明の米糠乳酸発酵液および米糠プロピオン酸発酵液を別途調製した後にそれらを混合し、以って本発明の漬物用浸漬液を得る際には、両発酵液の混合比率について、それを所望の香気が達成し得るかぎり任意のものとしても何ら差し支えないのであるが、一般的にはそれぞれの発酵液中に含まれる乳酸およびプロピオン酸含有量の比率を勘案して、乳酸発酵液:プロピオン酸発酵液の比を、約1:10〜10:1、より好ましくは約1:3〜3:1とするのがよい。また最終的な漬物用浸漬液中のプロピオン酸濃度が約400〜18000ppm、好ましくは約450〜14000ppmとなるように混合比率を調節することが望ましい。
【0056】
また、上記のような基準により米糠乳酸発酵液および米糠プロピオン酸発酵液を混合した後に、漬物用浸漬液中の有機酸含有量と食塩含有量の比の調整を行うことも望ましい態様である。具体的に、当該漬物用浸漬液中の有機酸含有量と食塩含有量の比は、乳酸酸度(%)を「A」とし、塩化物イオンを塩化ナトリウムとして換算した際の塩化物イオン濃度(%)を「S」で表した場合、当該AをSで除した値「A/S」が約0.05〜0.4、好ましくは約0.1〜0.3となるようにするのが望ましい。これは、当該A/Sが0.05未満の場合は、製造された漬物は糠漬けらしい酸味が感じられなくなり、逆にA/Sが0.4を超える場合は製造された漬物の酸味が強くなりすぎてしまい、嗜好に適さないことがあわせて見出されたことによるものであるが、この値は通常の糠床で良好な呈味の漬物を得るためのA/Sである0.4〜0.5に比べ小さく、乳化状態である本発明の米糠発酵組成物乃至漬物用浸漬液と、通常の糠床の特性の違いを顕著に示しているともいえる。このような有機酸含有量と食塩含有量の比の調整は、通常は有機酸、或いは食塩を適宜添加することで行われる。使用する有機酸は食用のものであって、通常の酸の風味がするものであればいずれのものでもよいが、乳酸を用いるのがもっとも好ましい。
【0057】
なお、本発明における乳酸酸度は、試料の中和滴定を行い、その際に消費されたアルカリ水溶液の量で中和できる乳酸の量を計算することにより得られる。例えば、中和滴定を市販の電位差自動滴定装置を用いて行い、ここで得られた滴定終点に至るまでに消費された水酸化ナトリウムの水溶液およびサンプルの採取量より乳酸酸度が算出される。そのような方法は当業者に周知である。
【0058】
また、本発明における塩化物イオン濃度の測定は、電位差自動滴定装置を用いた、塩化銀の生成による沈殿滴定法で行う。装置から得られた滴定終点に至るまでに消費された硝酸銀水溶液およびサンプルの採取量より塩化物イオン濃度が得られる。同じく、そのような方法は当業者に周知である。
【0059】
更に、本発明の米糠乳酸発酵液および米糠プロピオン酸発酵液を混合したものは、プロピオン酸濃度、A/Sを好適にできる範囲であれば、約1/10倍程度まで希釈して使用することができる。その際、必要に応じて漬物用浸漬液の浸透圧の維持のために食塩を約3〜15%、乳酸を約0.6〜2.1%の範囲で添加してもよい。
【0060】
このようにして調製した漬物用浸漬液には、必要に応じ、更に各種の呈味成分、例えば、香辛料のペースト、搾汁液または微粉末、或いはうまみ調味料、昆布、唐辛子、生姜、陳皮、葫などを添加してもよい。
【0061】
6.米糠粗大粒子の除去
従来の糠床や液状糠には米糠の粗大粒子が含まれていることから、そこに野菜を漬けることで糠漬けを製造する場合、糠床成分の均一性保持の難しさや、その後の漬物からの当該粗大粒子の洗浄作業とそれに伴う排水問題が存在するのは上で述べたとおりであるが、本発明の乳化状態の米糠発酵組成物においては、そこに米糠の粗大粒子が含まれていなくとも十分な糠風味を糠漬け製品に対して安定的に付与できることが確認され、しかして前記のような米糠粗大粒子の洗浄除去作業とそれに伴う排水問題も解消し得た。
【0062】
従って、本発明の好適な米糠発酵組成物乃至漬物用浸漬液は上記の米糠粗大粒子を除去したものとして調製し得、通常は約500μmを超える粒子径の粒子、好ましくは約400μmより大きい粒子径の粒子を含まないものとなし得る。すなわち、後記の試験例で示すように、米糠発酵組成物から得られた漬物用浸漬液に約500μmを超える粒子径の米糠由来の粗大粒子が含まれる場合、漬物製造容器内で該粗大粒子の沈殿が生じ、単に野菜類を漬け込む操作をするだけではそのような沈殿が解消しないために浸漬液の攪拌が必要となるばかりか、製造された漬物に米糠粗大粒子が付着して漬物表面を洗浄することが必要となり、本発明の目的のひとつである漬物の洗浄工程の回避をすることができないし、前記のとおりに大きな容器内で浸漬液の攪拌までしなくてはならないため、全体の作業効率が著しく低下してしまう。これに対して、本発明の粒子径500μmを超える懸濁粒子(米糠粗大粒子)を含まない米糠発酵組成物乃至漬物用浸漬液では、それに漬けるだけで十分に本格的な糠風味を付与できることから、上記のような製造時の煩雑さや困難性が伴わないのである。
【0063】
なお、本発明における粒子径とはレーザー回折・散乱法で測定した粒径である。具体的な測定方法としては、レーザー回折式粒度分布測定機MT−3000(日機装株式会社製)を用い、分散溶媒として純水を用い、また当該測定機の操作要領に従って、当該測定器に適量と表示されるまで試料を添加した後、粒度分布を測定することで決定できる。
【0064】
そのような米糠の粗大粒子の除去は、前記乳化糠からの該粗大粒子の除去について述べたものと同じ方法が採用でき、具体的には、濾布を用いた加圧濾過法を利用することができる。またその際に用いる濾布の目開きは、約45μm〜840μm、好ましくは約50μm〜500μm、さらに好ましくは約100μm〜200μmとすることができる。目開きが840μmより大きい場合、粗大粒子が十分に除去できず、漬物製造後の洗浄操作が必要となる。また目開きが45μmより小さい場合、濾過効率が悪くなり製造に適さない。珪藻土を用いたプレコートを行うことにより、目開きの小さな濾布の使用も可能ではあるが、目開きがあまりにも小さい場合は乳化状態までもが解消して極端な澄明溶液となってしまい、好ましくない。乳化状態を解消してしまうような澄明化処理後では、せっかくの糠床の特徴的な香気成分が当該処理とともに失われてしまうからである。
【0065】
つまり、本発明においては、米糠発酵組成物乃至漬物用浸漬液から米糠粗大粒子を濾過等により除去するのが望ましいのであるが、いっぽうで当該除去処理後でもその乳化状態が維持されていることが重要なのであって、端的には、先に説明したとおり、理論に拘束されることは好まないが、米糠の発酵によって得られる香気成分は疎水性のものが多いから、その場合、過度の濾過処理などを施すことによって本発明の米糠発酵組成物の乳化状態を解消してしまい、ひいてはそこから油脂までも濾過残渣とともに取り除いてしまった場合には、当該油脂とともに前記疎水性香気成分も当該組成物等から取り除かれてしまう結果となるところ、本発明においては、原料となる本発明の乳化糠からその発酵完了、野菜等の漬け込みに至るまでの持続的な乳化状態を確保することも大切な要素となるのである。
【0066】
本発明では、そのような乳化状態の程度は、該発酵組成物乃至漬物用浸漬液の吸光度により簡便に確認することができる。具体的には、市販のごく一般的な可視紫外分光光度計(製品名「分光光度計V−660」、日本分光株式会社製等)により、光路10mmの石英セルを用い、純水を対照として、10倍に希釈した試料の660nmにおける吸光度を測定することにより、当該乳化状態の程度を確認することができる。
【0067】
本発明における米糠発酵組成物乃至漬物用浸漬液の乳化の程度は、前記のとおり当該組成物等を10倍希釈したときの660nmにおける吸光度であらわした場合に、その吸光度が約0.05〜3.0、好ましくは約0.1〜3.0とするのがよい。吸光度が約0.05未満の場合は、組成物が澄明となりすぎてしまい、糠漬け風味の漬物を製造するために必要な量の疎水性香気成分を組成物中に保持することができない。また吸光度が約3.0を超えた場合は、それ以上吸光度を高くしても浸漬液としての効果に差が出ないので意味がなく、経済的な観点からもあまり必要のないことである。
【0068】
7.糠漬けの製造
本発明によって得られた漬物用浸漬液を使用した糠漬けは、当該漬物用浸漬液に対して糠漬けの原料となる野菜類を浸漬させるだけで製造でき、殊に浸漬液から取り出した後に、製造された漬物を水で洗浄する必要がない。具体的な製造例としては、例えば、きゅうり、なす、大根、カブ、ミョウガ、キャベツ、瓜、人参等の野菜類を、当該青果類を被覆するのに十分量の本発明の漬物用浸漬液に浸漬させ、約1〜25℃、好ましくは約5〜15℃、より好ましくは約5〜10℃の温度で、少なくとも約12時間程度以上、好ましくは約24時間、より好ましくは約48時間前後処理することが挙げられる。
【0069】
また、糠漬けの風味調整等を目的として、必要に応じグルタミン酸や昆布エキス等の呈味成分、唐辛子、生姜、陳皮、葫等の香辛料のペースト、搾汁液若しくは微粉末を当該浸漬液に対して更に添加することができるのも前記のとおりである。
【0070】
本発明によって得られた漬物用浸漬液は家庭で使用する事もできるが、漬物の工業的な製造において好適に使用される。例えば、本発明の漬物用浸漬液および漬物の原料となる野菜類をプラスチックバッグに詰め、脱気後、密封シールして、約5℃前後の冷蔵室に約48時間前後放置することで、本発明の糠漬けの製造を行うと同時に、それをそのまま製品として出荷することも可能である。
【実施例】
【0071】
以下に、本発明に係る米糠発酵糠組成物について、実施例を交えて詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0072】
(試薬)
本発明の実施例において、試薬類は下記のものを使用した。
イーストエキス:Yeast Extract(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)
麦芽エキス:Malt Extract(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)
ポリペプトン:Polypeptone(和光純薬工業株式会社製)
グルコース:Glucose,特級(和光純薬工業株式会社製)
塩化ナトリウム:塩化ナトリウム,特級(和光純薬工業株式会社製)
硫酸マグネシウム:硫酸マグネシウム七水和物,特級(和光純薬工業株式会社製)
珪藻土(粗粒):シリカ#645(中央シリカ株式会社製)
50%乳酸ナトリウム:50%発酵乳酸ナトリウム(ピューラック・ジャパン株式会社製)
炭酸ナトリウム:炭酸ナトリウム,特級(和光純薬工業株式会社製)
過塩素酸:過塩素酸,特級(和光純薬工業株式会社製)
リン酸水素二ナトリウム:リン酸水素二ナトリウム,特級(和光純薬工業株式会社製)
ブロムチモールブルー(BTB):ブロムチモールブルー,特級(和光純薬工業株式会社製)
プロピオン酸:プロピオン酸,特級(和光純薬工業株式会社製)
ヘキサン:ヘキサン,特級(和光純薬工業株式会社製)
寒天: 寒天・粉末(細菌培養用)(和光純薬工業株式会社製)
【0073】
(酵素)
以下の実施例においては下記の酵素を使用した。
アミラーゼ: ユニアーゼS(商品名:ヤクルト薬品工業株式会社製)
酸性プロテアーゼ:モルシンF(商品名:天野エンザイム株式会社製)
リパーゼ:リパーゼT(商品名:天野エンザイム株式会社製)
【0074】
(菌株)
以下の実施例においては下記の菌株を使用した。
乳酸菌(発酵液用):Lactobacillus pentosus(乳酸菌製剤、商品名:漬物発酵隊 LAP−2,三菱商事フードテック株式会社製)およびLeuconostock sp.(乳酸菌製剤、商品名:漬物発酵隊 LEC−7,三菱商事フードテック株式会社製)
乳酸菌(糠床用):Lactobacillus plantarumおよびPediococcus pentosaceus
酵母(発酵液用):Candida krusei
酵母(糠床用):Torulopsis ettchelsii
プロピオン酸生産菌:Propionibacterium acidipropionici
【0075】
(食品素材)
以下の実施においては下記の食品素材原料を使用した。
にんにくペースト:にんにくペースト(株式会社フィールド製)
米糠:米糠(のいゑ株式会社製)
米油:米サラダ油(商品名:築野食品工業株式会社製)
乳脂:雪印北海道バター(商品名:雪印乳業株式会社製)
浅漬けの素:浅漬けベース100(商品名:三菱商事フードテック株式会社製)
糠風味調味料:糠絞りS(商品名:協和発酵工業株式会社製)
うまみ調味料:調味料GTO(商品名:三菱商事フードテック株式会社製)
野菜(きゅうり、キャベツ、白菜、唐辛子)、昆布については量販店で販売されているものを使用した。
【0076】
(使用機器)
以下の実施においては下記の機器を使用した。
蒸気滅菌機:オートクレーブ ES−315(製品名:トミー工業株式会社製)
恒温槽:INCUBATOR MIR−153(製品名:三洋電機株式会社製)
pH計:電極式水素イオン濃度指示計(製品名:東亜DKK株式会社製)
電位差自動滴定装置:AT−610(製品名:京都電子工業株式会社製)
高速液体クロマトグラフィー:Waters HPLC System(Waters社製)
HPLCカラム:Organic acid column(7.8φx300mm)(Waters社製)
濾過機:KST−142(製品名:アドバンテック東洋株式会社製)
プレート型ホモゲナイザー:T.K.ホモミクサーMARKII(製品名:特殊機化工業株式会社製)
粒度分布測定機:Microtrac MT3000(製品名:日機装株式会社製)
分光光度計:V−660(製品名:日本分光株式会社製)
メンブランフィルター:DISMIC−25 Disposable Syringe Filter Unit(pore size 0.45μm)(製品名:東洋濾紙株式会社製)
【0077】
(培地)
以下の実施においては下記組成の培地を、必要によりpH調整後、121℃、15分蒸気滅菌後使用した。
乳酸菌用培地:MRS培地(pH6.0〜6.5)
MRS培地(Difco社製):5.5%
純水:94.5%
酵母用培地:YM培地(pH6.2)
イーストエキス:0.3%
麦芽エキス:0.3%
ポリペプトン:0.5%
グルコース:1.0%
純水:97.9%
プロピオン酸生産菌用培地:プロピオン酸生産菌用合成培地(pH5.7)
イーストエキス:0.5%
ポリペプトン:0.5%
グルコース:0.5%
硫酸マグネシウム七水和物:0.1%
純水:98.4%
前培養用培地:米糠溶液(pH6.5)
米糠:10.0%
純水:90.0%
保存用プレート:各液体培地の全量に対し3.0%の寒天を添加
【0078】
(前培養)
本発明の実施例においては、以下の条件で前培養を実施した。
【0079】
乳酸菌の前培養
乳酸菌製剤50mgを、シリコ栓つき試験管(15φx150mm)中のMRS培地10mLに接種し、30℃、24時間静置培養を行った。この培養液1mLを200mL容のシリコ栓つき三角フラスコ中の米糠溶液200mLに接種し、30℃、24時間振とう培養を行い前培養液とした。
【0080】
酵母の前培養
保存用プレートから1白金耳を採り、シリコ栓つき試験管(15φx150mm)中のYM培地10mLに接種し、30℃、24時間静置培養を行った。この培養液1mLを200mL容のシリコ栓つき三角フラスコ中の米糠溶液200mLに接種し、30℃、24時間振とう培養を行い前培養液とした。
【0081】
プロピオン酸生産菌の前培養
保存用プレートから1白金耳を採り、シリコ栓つき試験管(15φx150mm)中のプロプオン酸菌用培地10mLに接種し、30℃、24時間静置培養を行った。この培養液1mLを200mL容のシリコ栓つき三角フラスコ中の米糠溶液200mLに接種し、30℃、48時間振とう培養を行い前培養液とした。
【0082】
(プロピオン酸の定量)
プロピオン酸の定量は以下の条件で行った。
試料の前処理:試料と同量のヘキサンで脱脂後、10倍希釈し、メンブランフィルターでろ過した。
カラム:Organic acid column(7.8φx300mm)1本
溶離液:0.08%過塩素酸水溶液
反応液:0.2mMのBTB+5.2mMのNaOH+15mMのNaHPO
流量:0.8mL
カラム温度:60℃
検出:445nm
試料注入量:20μL
【0083】
(乳酸酸度の定量)
試験液を0.5乃至1.0gの範囲の量で採取し、これを蒸留水にて50mLに希釈したのち、電位差自動滴定装置を用い0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。装置から得られた滴定終点に至るまでに消費した水酸化ナトリウム水溶液およびサンプルの採取量より乳酸濃度をもとめた。
【0084】
(塩化物イオンの定量)
試験液を0.5乃至1.0gの範囲の量で採取し、これを蒸留水にて50mLに希釈したのち、電位差自動滴定装置を用い0.1mol/L硝酸銀水溶液で滴定を行った。装置から得られた滴定終点に至るまでに消費した硝酸銀水溶液およびサンプルの採取量より塩化物イオン濃度を算出した。
【0085】
(糠粒子の粒径の測定)
分散溶媒として純水を用い、レーザー回折式粒度分布測定機に適量と表示されるまで試料を添加した後、超音波処理を行うことなく、粒度分布を測定した。
【0086】
(吸光度の測定)
光路10mmの石英セルを用い、純水を対照とし、10倍に希釈した試料を、上記の分光光度計を用い、660nmの吸光度を測定した。
【0087】
参考例1:米糠の乳化性
米糠60gを500mLのビーカーに採り、純水340gを加え、攪拌棒により攪拌した。ここに米油20gと乳脂20gを添加し、ホモゲナイザーを用いて乳化した。5℃で15日間静置し、状態を観察したところ、乳化状態が維持されており、油脂の固化も認められなかった。
【0088】
参考例2:乳化糠の調製例
米糠150g、食塩20gを2L容三角フラスコに採り、水を加え1kgとした。攪拌棒を用いて手動で攪拌しながら95℃まで直火中で加熱して乳化し、そのまま5分間加熱を継続した。加熱後直火から外し、室温で冷却し、蒸発で失われた水分を補った後、液温が約50℃になった時点でアミラーゼを1g添加し攪拌した。この溶液を恒温槽中50℃で15時間攪拌を行い酵素処理した。この酵素処理液を目開き200μmの濾布(市販品のナイロン濾布)で濾過機を用い加圧濾過し、米糠由来の粗大粒子を除去した乳濁液を得た。濾過に際しては珪藻土10gの水懸濁液を用いて濾布にプレコートを行い、濾過圧0.2mPaで濾過を実施した。濾過した液は乳濁状の乳化液として得られ、この乳濁液を2L容三角フラスコに採り、温浴中75℃達温で、酵素失活、殺菌処理を行い、以後の発酵に用いる乳化糠を得た。
【0089】
実施例1:米糠乳酸発酵液の製造例
上記の参考例2で調製した乳化糠を用いて、以下の表1に示す組成の米糠乳酸発酵液原料の各成分を2L容三角フラスコ内で混合し、1kgの当該発酵液原料を調製した。次いで、恒温槽中30℃、14日間静置培養を行い、その間1日に1回、フラスコを3分間手動で攪拌した。培養後、乳酸酸度を測定した。このときの乳酸酸度はおよそ2.0%であった。乳酸酸度測定後、温浴中にて中心温度75℃、5分間加熱殺菌を行い、本発明の米糠乳酸発酵液を得た。
【0090】
【表1】

【0091】
上記の実施例1の米糠乳酸発酵液(以下、「実施品1」という。)は、最大粒径500μm以上の粒子を含まず、また10倍希釈時の660nmにおける吸光度が2.03である、糠床様の香気を有する乳化状態の液であった。
【0092】
実施例2:米糠プロピオン酸発酵液の製造例
上記の参考例2で調製した乳化糠を用いて、以下の表2に示す組成の米糠プロピオン酸発酵液原料の各成分を2L容三角フラスコ内で混合し、1kgの当該発酵液原料を調製した。次いで、恒温槽中30℃、10日間静置培養を行い、その間1日に1回、フラスコを3分間手動で攪拌した。培養後、プロピオン酸濃度を測定した。このときのプロピオン酸濃度は約18000ppmであった。プロピオン酸濃度を測定後、温浴中にて中心温度75℃、5分間加熱殺菌を行い、本発明の米糠プロピオン酸発酵液を得た。
【0093】
【表2】

【0094】
上記の実施例2の米糠プロピオン酸発酵液(以下、「実施品2」という。)は、最大粒径500μm以上の粒子を含まず、10倍希釈時の660nmにおける吸光度が2.05である、糠床に特有なプロピオン酸様香気を有する乳化状態の液であった。
【0095】
実施例3:漬物用浸漬液の製造例1
上記の米糠乳酸発酵液(実施品1)の1kgと、上記の米糠プロピオン酸発酵液(実施品2)の500gを採り、2L容ステンレスバケツ中で攪拌混合した。このときの混合液のプロピオン酸濃度は約5000ppmであった。この混合液の乳酸酸度、塩化物イオン濃度を測定し、その値を基に、50%乳酸、炭酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを用い塩化物イオン濃度から換算した塩化ナトリウム濃度を3.75%、乳酸酸度を0.94%に調整し、A/S比を0.25とし、昆布粉末を7.5g添加し、漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例1」という。)を得た。浸漬液実施例1の10倍希釈懸濁液の660nmにおける吸光度は、2.04であった。
【0096】
浸漬液実施例1は乳化状態の液体で、最大粒径500μm以上の粒子を含まず、上記実施品1由来の糠床様の香気と、実施品2由来の特有な香気が混合された、良好な熟成糠床香気を有する浸漬液であった。
【0097】
実施例4:酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液の製造例
上記の参考例2で調製した乳化糠の100gを200mL容ビーカーに採り、乳脂の温浴溶解物5g、リパーゼ0.1gを加えプレート型ホモゲナイザーで5000rpm、5分間乳化した後、恒温槽中40℃、18時間静置し酵素反応を進行させ、酪酸臭を有するリパーゼ処理乳化糠を得た。このリパーゼ処理乳化糠を、別途用意してあった参考例1の乳化糠の一部としてそこに添加し、更に表3に示す組成の酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液原料の各成分を2L容三角フラスコ内で混合して、当該発酵液原料1kgを調製した。当該原料について恒温槽中30℃、10日間静置培養を行い、その間1日に1回、フラスコを3分間手動で攪拌した。培養後、プロピオン酸濃度を測定した。このときのプロピオン酸濃度は約15000ppmであった。プロピオン酸濃度を測定後、温浴中にて中心温度75℃、5分間加熱殺菌を行い、本発明の酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液を得た。
【0098】
【表3】

【0099】
上記の実施例4の酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液(以下、「実施品3」という。)は、最大粒径500μm以上の粒子を含まず、10倍希釈時の660nmにおける吸光度が2.05である、酪酸由来の特有な香気を有する乳化状態の液であり、浸漬液に独特な風味を加えることのできる発酵液であった。
【0100】
実施例5:漬物用浸漬液の製造例2
上記の米糠乳酸発酵液(実施品1)の500gと、上記の酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液(実施品3)を500g採り、2L容ステンレスバケツ中で攪拌混合した。このときの混合液のプロピオン酸濃度はおよそ7500ppmであった。この混合液の乳酸酸度、塩化物イオン濃度を測定し、その値を基に、50%乳酸、炭酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを用い塩化物イオン濃度から換算した塩化ナトリウム濃度を3.75%、乳酸酸度を0.94%に調整し、A/S比を0.25とし、昆布粉末を7.5g添加し、本発明の漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例2」という。)を得た。
【0101】
浸漬液実施例2は乳化状態の液で、最大粒径500μm以上の粒子を含まず、上記実施品1由来の糠床様の香気と、実施品3由来の酪酸由来の特有な香気が混合された、好ましい豊かな風味を有する組成物であった。
【0102】
実施例6:漬物用浸漬液の製造例3
上記の米糠乳酸発酵液(実施品1)を200g、酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液(実施品3)200g、純水を1200g採り、2L容ステンレスバケツ中で攪拌混合した。このときの混合液のプロピオン酸濃度はおよそ1900ppmであった。この混合液の乳酸酸度、塩化物イオン濃度を測定し、その値を基に、50%乳酸、炭酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを用い塩化物イオン濃度から換算した塩化ナトリウム濃度を7.0%、乳酸酸度を1.54%に調整し、A/S比を0.22とし、唐辛子粉末、昆布粉末をそれぞれ4.8g添加し、本発明の希釈タイプの漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例3」という。)を得た。
【0103】
浸漬液実施例3は乳化状態の液で、最大粒径500μm以上の粒子を含まず、上記実施品1由来の糠床様の香気と、実施品3由来の酪酸由来の特有な香気が混合された、好ましい風味を有する組成物であった。プロピオン酸濃度はおよそ1900ppmであるにもかかわらず、実施品3由来の酪酸の存在によって、糠床様の特有香気は依然として保持されていた。
【0104】
実施例7:速醸タイプの米糠乳酸発酵液の製造例
米糠300g、5%食塩水549gを2L容ビーカーに採り、80℃達温で土壌細菌を殺菌した。次いで室温まで放冷し、蒸発した水分を補った後に、下記の表4に示す組成で酵素、糠の乳酸発酵物としての実施品1、野菜磨砕物、前培養液を添加、接種した。当該混合物を恒温槽中25℃、30日間静置培養を行い、その間1日に1回通常の糠床を攪拌する時と同じ要領で3分間攪拌し、高度に熟成された速醸糠床を得た。この速醸糠床300gに水900gを加えて攪拌し、乳濁状の乳化液を得た。この乳化液を目開き200μmの濾布(市販品のナイロン濾布)で濾過機を用い加圧濾過し、米糠由来の粗大粒子を除去した乳化液を得た。濾過に際しては珪藻土10gの水懸濁液を用いてろ布にプレコートを行い、濾過圧0.2mPaで濾過を実施した。この乳濁状の乳化液を2L容三角フラスコに採り、温浴中75℃達温で、酵素失活、殺菌処理を行い、本発明の速醸タイプの米糠乳酸発酵液を得た。
【0105】
【表4】

【0106】
上記の実施例7の速醸タイプの米糠乳酸発酵液(以下、「実施品4」という。)は、最大粒径500μm以上の粒子を含まず、酸味がやや強く、複雑な香りではないものの、糠床の特有な香気を有する発酵液であり、その10倍希釈液の660nmにおける吸光度は、0.97であった。
【0107】
実施例8:漬物用浸漬液の製造例4
実施例3での浸漬液実施例1に配合した米糠乳酸発酵液(実施品1)を上記実施例7の速醸タイプ米糠乳酸発酵液(実施品4)に置きかえて、実施例3と同様の操作を行い、本発明の漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例4」という。)を得た。
【0108】
実施例9:漬物用浸漬液の製造例5
今度は、実施例8において配合した米糠プロピオン酸発酵液(実施品2)のほうを、実施例4の酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液(実施品3)に置きかえて、実施例8と同様の操作を行い、本発明の漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例5」という。)を得た。
【0109】
浸漬液実施例4および5は、他の実施品の漬物用浸漬液に比べ糠床の風味が強い乳化状の漬物用浸漬液であった。
【0110】
実施例10:漬物用浸漬液の製造例6
上記の米糠乳酸発酵液(実施品1)を200g、酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液(実施品3)を200g、純水を600g採り、2L容ステンレスバケツ中で攪拌混合した。このときの混合液のプロピオン酸濃度はおよそ3000ppmであった。この混合液の乳酸酸度、塩化物イオン濃度を測定し、その値を基に、50%乳酸、炭酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを用い塩化物イオン濃度から換算した塩化ナトリウム濃度を3.75%、乳酸酸度を0.94%に調整し、A/S比を0.25とし、昆布粉末を7.5g添加し、本発明の希釈タイプの漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例6」という。)を得た。
【0111】
実施例11:漬物用浸漬液の製造例7
上記の実施例10における実施品1を速醸タイプ米糠乳酸発酵液(実施品4)に置きかえる他は実施例10同様の操作を行い、本発明の希釈タイプの漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例7」という。)を得た。
【0112】
浸漬液実施例6および7は、速醸タイプ米糠乳酸発酵液である実施品4と同様に乳濁状の乳化液で、実施品1または実施品4由来の糠床様の香気と、実施品3由来の酪酸由来の特有な香気が混合された、好ましい風味を有する組成物である。プロピオン酸濃度はおよそ3000ppmであるにもかかわらず、実施品3由来の酪酸の存在によって、糠床様の特有香気は依然として保持されていた。
【0113】
実施例12:漬物用浸漬液の製造例8
上記の米糠乳酸発酵液(実施品1)を200g、米糠プロピオン酸発酵液(実施品2)を100g、純水を1200g採り、2L容ステンレスバケツ中で攪拌混合した。この混合液の有機酸濃度、塩化物イオン濃度を測定し、その値を基に、50%乳酸、炭酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを用い塩化物イオン濃度から換算した塩化ナトリウム濃度を3.75%、乳酸酸度を0.94%に調整し、A/S比を0.25とし、うまみ調味料を0.3%添加し、本発明の漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例8」という。)を得た。当該浸漬液実施例8のプロピオン酸濃度はおよそ1200ppmであった。
【0114】
実施例13:漬物用浸漬液の製造例9
上記の米糠乳酸発酵液(実施品1)を400g、酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液(実施品3)を400g、純水を800g採り、2L容ステンレスバケツ中で攪拌混合した。この後実施例12と同様の操作を行い、本発明の漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例9」という。)を得た。当該浸漬液実施例9のプロピオン酸濃度はおよそ4000ppmであった。
【0115】
実施例14:漬物用浸漬液の製造例10
上記の米糠乳酸発酵液(実施品1)を100g、酪酸含有米糠プロピオン酸発酵液(実施品3)を100g、純水を800g採り、2L容ステンレスバケツ中で攪拌混合した。この後実施例12と同様の操作を行い、本発明の漬物用浸漬液(以下、「浸漬液実施例10」という。)を得た。当該浸漬液実施例10のプロピオン酸濃度はおよそ1500ppmであった。
【0116】
実施例15:漬物の製造例
浸漬液実施例1、9および10を用い、2L容プラスチックバッグに浸漬液500g、きゅうり(塩もみをし、両端を切り落とす)500gを入れ5℃、48時間浸漬し、漬物を製造した。
【0117】
上記で得られた漬物は、表面に糠の粗大粒子の付着がなく、容器から取り出してすぐに提供することが可能な状態であった。
【0118】
比較例1:従来の糠風味調味料液による漬物の製造
2L容プラスチックバッグに市販の糠風味調味料の3.75%水溶液500g、きゅうり(塩もみをし、両端を切り落とす)500gを入れ5℃、48時間浸漬し、漬物を製造した。
【0119】
なお、上記比較例1で使用した糠風味調味料の原液を10倍希釈したものの660nmにおける吸光度は0.009であった。
【0120】
比較例2:本格的な糠床による漬物の製造
2L容プラスチックバッグに家庭で2ヶ月間以上熟成させた糠床500g、きゅうり(塩もみをし、両端を切り落とす)500gを入れ5℃、48時間浸漬し、漬物を製造した。
【0121】
上記で得られた通常の本格的な糠漬けは、表面に糠の付着があり、水洗の必要があった。また糠粒子の最大粒径は1184μmであった。
【0122】
比較例3:浅漬けの製造
浅漬けの素20gを2Lのビーカーに採り、純水を加え1000gとした。塩化ナトリウムを用い塩化物イオン濃度から換算した塩化ナトリウム濃度を3.75%とし、2L容プラスチックバッグに当該水溶液500g、きゅうり(塩もみし、両端切り落とす)500gを入れ5℃、48時間浸漬し、浅漬けを製造した。
【0123】
上記比較例3で製造した浅漬けは、浅漬けとしては申し分ないが、糠の風味が全くないものであった。
【0124】
試験例1:官能評価(従来の糠風味調味料液との比較)
実施例15において、本発明の浸漬液実施例1から得られた漬物と、比較例1で得られた漬物について、被験者10人に対して「糠漬けとしてどちらがおいしいか」と言う質問を行ったところ、7名から浸漬液実施例1のもののほうがおいしいと言う回答が得られた。
【0125】
試験例2:官能評価(本格的な糠床との比較)
実施例15での浸漬液実施例1、9および10、並びに比較例2で得られた本格的な糠漬けについて官能評価を行った。糠漬けの風味を指標とし、比較例2で製造した糠漬けを5点、比較例3で製造した浅漬けを0点とし、本発明品の評価を実施した。なお、結果は、一試料に付き10名で評価を行い、その平均値を求めることで算出した。結果を以下の表5に示した。
【0126】
【表5】

【0127】
以上の結果から、本発明の漬物用浸漬液を用いて製造された糠漬けは、本格的な糠床で製造された糠漬けに匹敵する風味を有することがわかった。
【0128】
試験例3:米糠粗大粒子の影響に関する試験
参考例2に示した乳化糠の製造工程中、濾過操作のみを行なわないものについて実施例1、実施例2と同様の操作を行い各々について米糠発酵液を得、実施例3の操作を行って漬物用浸漬液を得た。この漬物用浸漬液を各種目開きのふるいを通過させることにより、最大粒子径の異なる漬物用浸漬液を得た。
【0129】
上記で得られた最大粒子径が異なる漬物用浸漬液についての評価は以下のようにして行なった。
(1)攪拌の必要性:
漬物用浸漬液を5分間放置し、作業上問題となる沈殿の量によって攪拌の必要性を評価した。
(2)洗浄の必要性:
上記の漬物用浸漬液に対し実施例15の操作を行い、得られた漬物の表面に目視で糠粒子を確認できる場合、若しくは食した時に糠の存在を確認できる場合に、洗浄の必要性が有りとした。
(3)総合的な操作性:
上記(1)および(2)の2点を考慮して評価した。
結果を以下の表6に示した。
【0130】
【表6】

【0131】
表6に示したとおり、最大粒子径が500μmを超える米糠粗大粒子が含まれている場合、製造された漬物を洗浄して当該粗大粒子を除去する工程が必要となる。例えば最大粒子径が600μm程度の米糠粗大粒子が含まれているときには、場合により当該粗大粒子が漬物表面に多数付着することがあるから、そのような粗大粒子を除去する工程を省略することができない。また、最大粒子径が600μm程度の米糠粗大粒子が含まれているときには、それらの粗大粒子が漬物製造用容器内に沈殿してしまい、安定した風味付け等のためには当該浸漬液の攪拌が不可欠であった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明により、味、風味の安定した本格的な糠漬けが工業的に生産でき、さらに製造工程を簡略化することも可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠の乳化液を、乳酸菌と酵母、またはプロピオン酸生産菌、または乳酸菌と酵母とプロピオン酸生産菌で発酵させた米糠発酵組成物。
【請求項2】
プロピオン酸の濃度が400〜20000ppmである請求項1に記載の米糠発酵組成物。
【請求項3】
粒子径500μmを超える懸濁粒子を含まないことを特徴とする請求項1または2に記載の米糠発酵組成物。
【請求項4】
10倍に希釈したときの660nmにおける吸光度が0.05〜3.0であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の米糠発酵組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の米糠発酵組成物を含むことを特徴とする、漬物用浸漬液。
【請求項6】
乳酸酸度(%)をA、塩化ナトリウムとして換算した塩化物イオン濃度(%)をSとしたとき、A/Sが0.05〜0.4である請求項5に記載の漬物用浸漬液。