説明

米麺の製造方法と該方法による米麺と該米麺による乾麺

【課題】本発明は、米成分原材料を複数度のα化を経て米麺を製造する方法及び該方法で得られる米麺、さらには、該米麺から得られる乾麺を提供することにある。
【解決手段】本発明の米麺の製造方法は、米成分原材料を張り込み工程、選別工程、洗米工程、浸漬(発芽)工程、脱水工程、蒸煮(α化)工程、乾燥(安定α化)工程、粉砕工程、次いで熱湯水加水(α化)工程、混合工程、押出し(最終α化)工程を経て米麺とするものであり、前記米成分原材料は、白米、玄米、発芽玄米から選択される1種及び/又はこれらの混合体であり、製麺工程中の熱湯水加水・混合工程で機能性向上素材が添加される。このようにして得られた米麺が乾燥工程(α化)、切断工程、金属検出(X線検出)工程、包装工程、箱詰め(出荷)工程を経て乾麺となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米成分原材料を使用した米麺の製造方法と該方法による米麺と該米麺による乾麺に関する。
【背景技術】
【0002】
発芽玄米をα化(糊化)する技術は、特許第3585761号(特許文献1)や特開2002−256287号公報(特許文献2)に提案され、発芽玄米粉の提供については特許第3137615号(特許文献3)に開示され、エクストルーダーで玄米粉を加圧加熱処理することで糊化する技術が特開平6−22724号公報(特許文献4)に開示されている。さらに、発芽玄米の粉砕物をエクストルーダーで処理して糊化した澱粉質物を得る技術も特開2002−233317号公報(特許文献5)に提案されている。
ところで、発芽玄米粉はビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で健康食品向き原材料であるとともに長期保存に適するものであり、さらに、発芽玄米をα化すれば粘稠性が増す上、澱粉質が分解されて消化性に優れたものとなる。
一方、米粒を主原料として一部をα化して粘着性を付与させて製麺する方法が特開昭54−55745号公報(特許文献6)に開示され、米粉にアルギン酸類を含ませてα化処理した麺類の製造方法が特開2000−245375号公報(特許文献7)に開示され、さらに、α化された発芽玄米粉を利用した加工食品としては特許第3611802号(特許文献8)に提案されているものである。
上記した特許文献6乃至8に開示された技術は、麺類の製造工程で米粉等をα化処理することであったり、原料粉の製造工程でα化処理するものであるから、製麺側から見れば一度のα化で麺類が提供されていたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3585761号
【特許文献2】特開2002−256287号公報
【特許文献3】特許第3137615号
【特許文献4】特開平6−22724号公報
【特許文献5】特開2002−233317号公報
【特許文献6】特開昭54−55745号公報
【特許文献7】特開2000−245375号公報
【特許文献8】特許第3611802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みて、米成分原材料を複数度のα化を伴う工程で米麺を製造する方法と該方法により得られる米麺と該米麺により得られる乾麺の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載した米麺の製造方法は、米成分原材料を張り込み工程から順に、選別工程、洗米工程、浸漬(発芽)工程、脱水工程、蒸煮(α化)工程、乾燥(安定α化)工程、粉砕工程、次いで、熱湯による加水(α化)工程、混合工程、押出し(最終α化)工程を経て米麺が製造されて成る。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した米麺の製造方法において、
米成分原材料が、白米、玄米、発芽玄米から選択される1種及び/又はこれらの混合体から成る。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した米麺の製造方法において、
前記熱湯の加水・混合工程で機能性向上素材として、増粘材、野菜粉、果物粉、大豆粉、雑穀粉から選択される何れか1種及び/又は数種が所要分量添加されて成る。
請求項4に記載した米麺は、前記請求項1乃至3に記載の米麺の製造方法により製造されて成る。
請求項5に記載した乾麺は、請求項4記載の米麺を乾燥工程(α化)から順に、切断工程、金属検出(X線検出)工程、包装工程、箱詰め(出荷)工程で製造されて成る。
【発明の効果】
【0006】
本発明の米麺の製造方法によれば、米粉の製造工程と米麺の製造工程で複数度のα化がなされるため、製造工程中でのα化度の低下が防止され、製造された米麺ではα化度が高められてより一層消化吸収のよいものとなるほか、高栄養、高機能性素材の混合利用に資することができ、また、この米麺を加工して得られる乾麺は、乾燥工程でさらにα化がなされて長期保存に耐えられる品質が確保されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の米麺の製造方法における製造工程図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で対象とする米成分原材料は、白米、玄米、発芽玄米であり、張り込みホッパーへの投入時には米成分原材料の水分は重量比率で14.0%乃至10.0%であり、浸漬工程(発芽玄米の場合は浸漬による発芽処理となる)では水分が25.0%乃至60.0%であり、脱水機による脱水工程では水分が20.0%乃至40.0%とされ、蒸煮工程では水分が25.0%乃至45.0%となり、α化度は20%乃至60%であり、低温除湿乾燥機による乾燥工程では水分が14.0%乃至16.0%となり、α化度は10%乃至50%であり、粉砕機による粉砕工程では水分が14.0%乃至16.0%であり、米粉が50乃至450メッシュ(粒度は30乃至300ミクロン)のものが得られる。
次いで、製麺工場では熱湯の加水工程で水分が25.0%乃至45.0%とされ、α化度が10%乃至50%であり、撹拌ミキサーによる混合工程では前後の熱湯の加水工程を含んで高栄養、高機能性素材として増粘材(例えばアルギン酸類)や野菜類、果物粉、大豆粉、雑穀粉等が適宜に選択されて所要分量添加される。最終の製麺機による押出し工程では、水分が25.0%乃至45.0%、最終α化度が30%乃至80%となる米麺が製造される。
そして、乾麺工場では前記の製麺工場で製造された米麺を低温除湿乾燥機による乾燥工程で水分を12.0%乃至16.0%とし、α化度が10%乃至50%とされ、次いで、切断工程から異物検出機による金属検出(X線検出)工程に移行され、良品質の乾麺がピロー包装又はシーラーによる包装工程で包装され、最終工程の箱詰め工程で出荷準備が完了する。
なお、押出し工程においては、高温高圧加工による殺菌効果で一般生菌数は許容値が確保されるとともに、米麺の細さ、太さ、長さ、形(平めん、ハートタイプ、リガトーニタイプ等)などが各種各様に提供され、また、混合工程における前記した高栄養、高機能性素材の添加混合により色も多様に提供できる。
したがって、米成分原材料毎すなわち、白米、玄米、発芽玄米毎に和風めんタイプやデザートタイプの米麺を提供できるから、米粉の利用形態変更による消費拡大に寄与できる。
【実施例】
【0009】
本発明の米麺の製造方法を具体的に説明すると、図1に示すように、米成分原材料である白米、玄米、発芽玄米の何れか1種及び/又はこれらの混合体が対象原材料とされ、張り込み工程で張り込みホッパーに投入され、選別工程で各種選別機によって未熟粒や着色粒、異物等が除去選別され、洗米工程で洗米機により洗米され、浸漬工程では浸漬タンクに浸漬されて重量比率で25.0%乃至60.0%の水分が付与され、脱水工程で脱水機により脱水され、蒸煮工程でα化機によって蒸煮され、水分25.0%乃至45.0%、α化度20%乃至60%に確保され、乾燥工程では低温除湿乾燥機により水分14.0%乃至16.0%、α化度10%乃至50%が保持され、粉砕工程で粉砕機により50乃至450メッシュ(粒度は30乃至300ミクロン)の米粉が製造される。この米粉の水分は14.0%乃至16.0%である。
次いで、製麺工場では熱湯による加水工程で前記の米粉がα化され、そのときの水分は25.0%乃至45.0%であり、α化度は10%乃至50%である。次の撹拌ミキサーによる混合工程で高栄養、高機能性素材として、増粘材(例えばアルギン酸類)や野菜粉、果物粉、大豆粉、雑穀粉等が適宜に選択されて所要分量添加されることもあり、最終の製麺機による押出し工程では、米麺の水分が25.0%乃至45.0%、α化度30%乃至80%が確保されて成る。
このようにして成る米麺は、生食用やレトルトパウチなどに供されるほか、乾麺工場で乾麺に加工されるものであるが、その際、乾燥工程で低温除湿乾燥機で水分が12.0%乃至16.0%、α化度10%乃至50%が確保され、切断工程で各種切断機により所要の形態に切断され、金属検出(X線検出)工程で異物検出器により異物が検出除去され、良品質、長期保存の乾麺がピロー包装又はシーラーによる包装工程で包装され、最終工程の箱詰め工程で箱詰めされて出荷となる。
以上のように、本発明の米麺の製造方法は、米麺の製造工程中で澱粉のα化が複数度に渡ってなされるから、α化度の低下が防止されて、製造された米麺ではα化度が高められて一層消化吸収のよいものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、米粉の機能性を向上した米麺の製造方法及びこの方法により製造された米麺、さらには、この米麺を加工した乾麺を提供するものであるから、米粉の消費拡大に資するものであり、農業経営の活性化は勿論のこと、農業関連業界における粉末製造技術分野や製麺技術分野にも貢献できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米成分原材料を張り込み工程から順に、選別工程、洗米工程、浸漬(発芽)工程、脱水工程、蒸煮(α化)工程、乾燥(安定α化)工程、粉砕工程、次いで、熱湯による加水(α化)工程、混合工程、押出し(最終α化)工程を経て米麺が製造されて成り、複数度のα化処理によりα化度を高め、より一層消化吸収され易い米麺となることを特徴とする米麺の製造方法。
【請求項2】
米成分原材料が、白米、玄米、発芽玄米から選択される1種及び/又はこれらの混合体
である請求項1記載の米麺の製造方法。
【請求項3】
前記熱湯の加水・混合工程で機能性向上素材として、増粘材、野菜粉、果物粉、大豆粉、雑穀粉から選択される何れか1種及び/又は数種が所要分量添加されて成る請求項1又は2記載の米麺の製造方法。
【請求項4】
前記請求項1乃至3に記載の米麺の製造方法により製造されて成る米麺。
【請求項5】
請求項4記載の米麺を乾燥工程(α化)から順に、切断工程、金属検出(X線検出)工程、包装工程。箱詰め(出荷)工程で製造されて成る乾麺。

【図1】
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