説明

籾殻建築資材とその製造方法

【課題】籾殻と接着剤との撹拌混合時に籾殻が破砕されず、しかも、籾殻全体に接着剤をコーティングすることにより、強固で断熱性と遮音性の高い籾殻建築資材を提供すること。
【解決手段】籾殻100重量%に対して、水分5重量%が含浸された状態で撥水性樹脂接着剤10乃至15重量%がコーティングされ、140℃で5分乃至7分間の加熱負荷による脱水処理と、所要圧力による67%容量縮減処理とがなされて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾殻を主原料とする建築資材に関する。
【背景技術】
【0002】
籾殻を主原料とする建築資材は、特開2002−3263号公報(特許文献1)、特開2002−3279号公報(特許文献2)、特開2008−291235号公報(特許文献3)、特開平06−8968号公報(特許文献4)等で提案されている。本願出願人も籾殻無公害断熱材を特許第3716371号(特許文献5)として保有している。
特許文献1及び2では籾殻に難燃性を付与するため、粘着性を有する水溶性無機化合物または塗膜性または造膜性を有する水溶性無機化合物と籾殻を混合または撹拌するために籾殻を破砕するので、空隙が少なくなり吸音特性が劣ることとなる。
特許文献3は籾殻に特定仕様のPVA(ポリビニールアルコール)系樹脂を含有させることにより圧縮強度を高めている。
特許文献4では籾殻に水を噴射させて表面を濡らした後、植物性接着剤粉を散布し、さらに水を噴射して該植物性接着剤粉を液状化し、撹拌機で撹拌混合するなど籾殻の接着処理に手間取るものである。
特許文献5は断熱性を追求した発明であるが、遮音性を有する建築資材の開発のベースとなったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−3263号公報
【特許文献2】特開2002−3279号公報
【特許文献3】特開2008−291235号公報
【特許文献4】特開平06−8968号公報
【特許文献5】特許第3716371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、籾殻と接着剤との撹拌混合時に、籾殻が破砕されず、しかも、水分除去状態で籾殻全体に接着剤をコーティングすることにより、強固で断熱性と遮音性の高い籾殻建築資材の提供をその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載した籾殻建築資材は、籾殻100重量%に水分5重量%が含浸された状態で、撥水性樹脂接着剤10乃至15重量%がコーティングされ、籾殻が破砕されない条件で140℃で5分乃至7分間の加熱負荷による脱水処理と、0.9kg/cm2の圧力による60〜70%容量縮減処理とがなされて成る。
請求項2に記載した籾殻建築資材の製造方法は、籾殻100重量%に対して水分5重量%を噴霧して均一散布撹拌する水分湿潤工程と、該工程に続き撥水性樹脂接着剤10乃至15重量%を加えて十二分に撹拌する接着剤コーティング工程と、140℃で5分乃至7分間の加熱負荷による脱水処理工程と、0.9kg/cm2の圧力による60〜70%容量縮減処理とから成る。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、籾殻の湿潤状態で接着剤を籾殻全体にコーティングできるから、各籾殻の剛直性による破砕がなく、接着剤固化後の各籾殻に十分な空隙が確保され、建築資材として使用されるときに断熱性と遮音性に優れる効果を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の籾殻建築資材Aの部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の撥水性樹脂接着剤は、木材接着剤用架橋剤であり、水分を含有させた湿潤後の籾殻に該架橋剤を加えて十二分に撹拌すると、水と混じり合わない性質から籾殻全体に該架橋剤がコーティングされるもので、脱水処理による水分の蒸発と、各金型における60〜70%の容量縮減処理とによって強固に成型される。
【実施例】
【0009】
本発明の籾殻建築資材の製造方法により製造される籾殻建築資材Aを実施例により説明すると、籾殻100重量%に対して水分5重量%を噴霧して均一に散布撹拌し、籾殻1を十分に湿潤にて柔軟状態にした後、撥水性樹脂接着剤としての木材接着剤用架橋剤2を10乃至15重量%を加えて十二分に撹拌し、籾殻1の全体に該架橋剤2をコーティングし、次いで、加圧用の図外の金型(種々その形状は選択される。)で、140℃の加熱温度で5分乃至7分間の加熱負荷をかけ、脱水処理して水分を蒸発させ、さらに、0.9kg/cm2の所要圧力で67%の容量縮減処理して図1に示す平面寸法1000×2000mmの籾殻建築資材Aが成型される。なお、図1で示される籾殻1はまばらであるが簡略して表現したもので、実際は67%の容量に圧縮された密な状態である。
【0010】
このようにして成型された籾殻建築資材Aは、各籾殻1が湿潤状態で架橋剤2がコーティングされ、破砕されることなく脱水処理されたものであるから、水分蒸発後の各籾殻1には多くの空隙3が確保され、強固で断熱性と遮音性の高い特性をもつ。
したがって、この籾殻建築資材Aは断熱、遮音効果の期待される木製建具のコア材や、室内用の化粧用内装材としての平板状のパネル材や図1に示すような凹部4と凸部5を有するパネル材に使用される。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は、籾殻にコーティングされる接着剤が室内空気質汚染対策に適合した自主管理規定製品であるため、環境に優しく無公害であり、建材業界の活性化及び籾殻の有効利用による農業経営の効率化の点で農業稲作業界の活性化にも資するものである。
【符号の説明】
【0012】
1:籾殻
2:木材接着剤用架橋剤
3:空隙
4:凹部
5:凸部
A:籾殻建築資材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾殻100重量%に対して、水分5重量%が含浸された状態で撥水性樹脂接着剤10乃至15重量%がコーティングされ、籾殻が破砕されない条件で加熱負荷による脱水処理と、所要圧力による60〜70%容量縮減処理とがなされて成る籾殻建築資材。
【請求項2】
籾殻100重量%に対して水分5重量%を噴霧して均一に散布撹拌する水分湿潤工程と、該工程に続き撥水性樹脂接着剤10乃至15重量%を加えて十二分に撹拌する接着剤コーティング工程と、籾殻が破砕されない条件で加熱負荷による脱水処理工程と、所要圧力による60〜70%容量縮減処理工程とから成る籾殻建築資材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−69102(P2011−69102A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220740(P2009−220740)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【特許番号】特許第4585605号(P4585605)
【特許公報発行日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(502271070)
【Fターム(参考)】