説明

籾殻貯留庫の排籾殻ダクト

【課題】 籾殻貯留庫の空間を上方の隅まで籾殻を堆積させることが出来る籾殻収容率を高くすると共に、堆積する籾殻を攪拌し、籾殻排出時に籾殻貯留庫内に残留した籾殻又はブリッジを形成した籾殻を攪拌して籾殻貯留庫の底面の籾殻落下口から良好に籾殻を排出できる籾殻貯留庫の排籾殻ダクトを提供する。
【解決手段】 籾殻貯留庫の略全長に渡って、その周面の一列の複数の排風口が上下方向にその向きを転換できるようにダクトを構成し、排風口から籾殻及び排風を噴出させ、左右方向に首振り転換しながら籾殻貯留庫内に均等に籾殻を堆積させるように構成し、左右方向に首振り転換しながら籾殻貯留庫内に残留した籾殻を、ダクトの排風口から排出する排風よって攪拌移動させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物乾燥調整施設における、籾殻貯留庫内の籾摺り装置に繋がる排籾殻ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の穀物乾燥調製施設においては、前記施設内に籾殻貯留庫を二階部分に設け、一階にはその籾殻を排出するための運搬用トラックが出入り出来る搬出室を備え、籾殻貯留庫の個々のシャッタ開閉によって運搬用トラックに籾殻を落下排出させて籾殻の搬送を行っている。前期籾殻貯留庫は籾殻の収容量を極力増すために、籾摺り装置から籾殻貯留庫に至る排籾殻ダクトを、その室内の最上部の略全長に渡って配置し、排籾殻ダクトに複数の籾殻排風口を下向きに開口し、そして籾殻貯留庫の底面を平にして複数の排出シャッタを運搬用トラックの寸法に合わせて備えられているものである。
【0003】
しかしながら、籾殻は比重が軽く、籾殻貯留庫から籾殻をトラック上に排出する排出シャッタを開としても、籾殻貯留庫の隅の部分の籾殻を排出することが困難で、しかも籾殻のブリッジ状態が発生し良好に籾殻が排出されない現象が発生している。特に籾殻を長期間にわたって貯留した場合は、さらに籾殻のブリッジ現象が発生して垂直の籾殻の壁を形成し、特許文献1記載のような貯留室底部のスクリューコンベアからなる籾殻排出部を備えても籾殻の排出は困難となっていて、人力による籾殻貯留庫の掃除が不可欠となっている。
【0004】
さらに特許文献1のように、籾殻投入部の搬送管の先端部を下向きに配置しているので、排籾殻ダクト(搬送管)は籾殻貯留庫の最上部に設ける必要があるにも係わらず、籾殻貯留庫の側面壁までの空間に籾殻を堆積させることは困難で、収納空間を良好に利用しているとは言えない状態である。
【0005】
特許文献2において、籾殻貯留室の側壁内面の上下方向に樹脂材等からなる籾殻案内シートを設けて、籾殻案内シートと側壁の間に空気用パイプを備え、空気用パイプを空気の送り込みによって膨張させて籾殻を籾殻貯留室の中央に移動し、籾殻のブリッジを解消して籾殻を籾殻落下口から良好に排出できる装置が公知となっている。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−000818号公報
【特許文献2】特開平11−281253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2における構造であっては、籾殻案内シートや空気用パイプそして空気用パイプに空気を送り込むための送風ファンとそれを接続するための連結パイプを必要とし、コスト面が問題であると共に、鼠等の害による籾殻案内シートや空気用パイプの破損が懸念されるものである。
【0008】
そこで本発明では、籾殻貯留庫の空間の上方の隅まで籾殻を堆積させることによって、籾殻収容率を高くすると共に、籾殻排出時に籾殻貯留庫内に残留した籾殻又はブリッジを形成した籾殻を攪拌移動させて籾殻貯留庫の底面の籾殻落下口から良好に籾殻を排出できる籾殻貯留庫の排籾殻ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明では上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項4に係わる籾殻貯留庫の排籾殻ダクトを提案する。
【0010】
即ち、請求項1記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクトは、穀物乾燥調製施設の籾摺り装置から籾殻貯留庫内に通じる排籾殻ダクトであって、その籾殻貯留庫の略全長に渡って、その周面の一列の複数の排風口が上下方向にその向きを転換できるように構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクトは、請求項1記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクトにおいて、排籾殻ダクトは、上下方向に転換しながら排風口から籾殻及び排風を噴出させることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクトは、請求項1又は請求項2記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクトにおいて、排籾殻ダクトは、左右方向に首振り転換しながら籾殻貯留庫内に均等に籾殻を堆積させるようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクトは、請求項1、2及び請求項3記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクトにおいて、排籾殻ダクトは、左右方向に首振り転換しながら籾殻貯留庫内の籾殻を、排風口から排出される排風によって攪拌移動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
籾殻貯留庫の上方空間の隅まで籾殻を堆積させて籾殻収容率を高くすることが出来ると共に、籾殻貯留庫内の籾殻排出時に籾殻落下口から自然落下排出されず、庫内の底面に残留した籾殻を攪拌移動させ、さらにブリッジを形成して残留した籾殻のそのブリッジ面を崩壊しながら攪拌し籾殻落下口から良好に籾殻を排出できるので、人力によらなくても籾殻貯留庫内に残留する籾殻を速やかに機外に排出できることを可能とする、籾殻貯留庫の排籾殻ダクトを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1には、穀物乾燥調製施設のレイアウトを表す平面図を、そして図2は従来の実施の形態をしめす籾殻貯留庫の側面断面図、図3は本発明の第一の実施の形態を示す正面断面図、図4は図3の側面断面図、図5は第一の実施の形態の動作を示す部分側面断面図、図6は第一の実施の形態の動作状態を示す側面部分断面図、図7は本発明の第一の実施の形態の排風口から排風を下方に向けて堆積する籾殻を攪拌移動させる状態を示す側面断面図、図8は本発明の第二の実施の形態を示す正面断面図、図9は図8の動作状態を示す側面断面図、図10は本発明の第二の実施の形態で排風口から排風を下方に供給する状態を表す正面断面図、図11は図10の動作の状態を示す側面断面図である。
【0016】
図1は穀物乾燥調製施設1の平面概略図であって、作業スペース7に乾燥装置2、貯留タンク3、籾摺り装置4、選別装置5及び計量装置6が配置され、穀物投入装置8から投入された穀物が搬送装置9を経由して乾燥装置2に投入され乾燥後、貯留タンク3に移行し、搬送装置9から籾摺り装置4に移動し、籾摺り後、選別装置5で形状選別及び色彩選別を経て計量装置6で玄米として袋詰される構成となっている。11は排塵室であって、内部側壁A19によって作業スペース7と仕切って、乾燥装置2からの排風や排塵機からの排塵、そしてそれぞれの装置や搬送装置9、穀物投入装置8で集塵された排風が導かれるようになっている。また12は籾殻貯留庫であって、籾摺り装置4からの排籾殻ダクト14が直接又は、図1では図示していないが中継ファン10を経由してつながれている。
【0017】
籾殻貯留庫12は図1と図2の従来の排籾殻ダクトの配置を示した図のように、排塵室11と内部側壁B20によって仕切られ、二階部分が籾殻を貯留するスペースであって、その一階は籾殻を排出するための搬出室13となっている。籾殻貯留庫12の平面の底板15によって搬出室13と仕切られ、その中央に備えるシャッタ16の開閉によって籾殻落下口18から搬出室13内に配置した運搬用トラック17の荷台に籾殻を落下させ、排出するようになっている。
【0018】
図2の従来の排籾殻ダクト14では、籾殻貯留庫12内に籾殻を出来るだけ多く収納できるように、その場所を最上部に配置し、図1のように内側側壁A19を貫通して90度に向きを変え、籾殻貯留庫12の略全長に渡って排籾殻ダクト14が配置され、複数の排風口25が一列に下方に向いて設けられている。しかしながら排籾殻ダクト14から距離をおいた上方の隅の部分においては、籾殻を堆積することが出来ないため、その空間を有効に使用出来ない状態である。そして、排籾殻ダクト14が籾殻貯留庫12の上端に配置されているので底板15までの距離があり、また排風口25の向きが下方に固定であるので、排風口25から排出される排風によって籾殻が移動攪拌されることはほとんど無い状態である。
【実施例1】
【0019】
図3は本発明の第一の実施の形態を示した籾殻貯留庫12の正面断面図である。籾摺り装置4の籾殻排出口には排籾殻ダクト14が接続されていて、籾摺り装置から籾殻貯留庫12までの距離が遠い場合又は、籾殻貯留庫12に風速を上げて籾殻を投入したい場合には中継ファン10を通して排籾殻ダクト14に接続されているとよい。排籾殻ダクト14は内部側壁A19の籾殻貯留庫12の中段から若干上方を貫通の後、直角にその向き変更し、籾殻貯留庫12の略全長に渡って設けられたダクトB31に、緩衝材27を隔てて接続されている。ダクトB31は長さ方向に一列の排風口30が複数設けられていて、その先端には蓋32が備えられている。蓋32の中央には外壁21を貫通してハンドル33が固定されている。排籾殻ダクト14とダクトB31との間の緩衝材27は、それぞれが隙間無く密閉されて接続されると共に、ダクトB31だけが容易に回転できるよう、そして蓋32に固定されたハンドル33も外壁21に備えた軸受34によって容易に回転できるようになっていて、ダクトB31とハンドル33は連動して回転するようになっている。
図示はしていないが、ハンドル33はその位置が固定され、ダクトB31が意に反して回転する事が無いようになっている。
【0020】
籾摺り装置4の稼動時には、ハンドル33を手動で作業者が回転させて、排風口30が上方を向くように配置する(図4)。排風口30から上方に向かって籾殻を排出しているので、籾殻貯留庫12に幅広く広がって堆積させることが出来るほか、図5に示すように、籾殻の溜まっていない方向にハンドル33を若干回転させることによってその方向に籾殻を優先的に排出することが出来る。図5の上図は左隅に優先的に籾殻を排出する状態をそして、下図は右隅に優先的に籾殻を排出する状態を示したものであって、排出方向の変更によって、効率よく籾殻貯留庫12内に籾殻を堆積させることができる。
【0021】
図6及び図7においては、シャッタ16を開として籾殻貯留庫12の籾殻落下口18から自然落下排出後の状態示す図であって、図6においては籾殻によるブリッジ現象を発生させて壁面と垂直に残留した状態を、図7はシャッタ16が開口しても機外に排出されない籾殻落下口18の安息角外の底板15平面に堆積する籾殻の状態を示したものである。
【0022】
図6及び図7の状態のように籾殻貯留庫12内に籾殻が残留した場合は、籾摺り装置4の送風装置だけ、又は中継ファン10を備えている場合は中継ファン10だけを稼動させて排風を排籾殻ダクト14に供給を行う。図6のように壁面に籾殻がブリッジしている場合には、作業者はハンドル33を回転させて籾殻がブリッジ状態になっている部分に排風口30をブリッジ面に向けて排風を当て、その面を徐々に崩すことが出来るものである。また図7のように底板15の平面に籾殻が堆積した場合には、前記同様その場所に向かって排風口30を向け、排風によって籾殻を攪拌移動させることで籾殻を籾殻落下口18から機外に排出することが出来る。なお、前記排風の供給は排風口30を噴きつける面に対して左右に振るようにハンドル33を作業者が振ることによってより効果を増し、より籾殻落下口18から籾殻を早く排出することが出来る。
【実施例2】
【0023】
図8から図11に示す図は、本発明の第二の実施の形態を示したものであって、実施例1の構成のハンドル33に変えて、モータ36とした構成である。さらに、籾殻貯留庫12内の中央に対して対称にダクトB31を二本を配置し、それぞれ対称に回転するよう構成されている。
【0024】
籾摺り装置4から中継ファン10に籾殻を供給し、排籾殻ダクト14から二本のダクトB31に籾殻を供給しており、図示していないが排籾殻ダクト14には切替シャッタを配置し、時間の経過に伴って二本のどちらか一方に、籾殻若しくは排風の供給を行うようになっている。
【0025】
図8及び図9では、籾摺り装置4からの籾殻を籾殻貯留庫12に堆積させている状態を示しており、籾摺り装置4と中継ファン10が稼動するとその信号をモータ36に伝達し、モータ36はダクトB31の排風口30を上方に向けた状態で左右方向に正反転しながら排風口30から籾殻を噴出させる。排風口30が左右方向に正反転を繰り返しているので籾殻貯留庫12内に均等に籾殻を堆積させることが可能となる。
【0026】
図10及び図11では、籾殻貯留庫12内に堆積した籾殻を、シャッタ16を開として籾殻落下口18から自然落下させた後の状態を表すものであって、底板15の平面に堆積した籾殻及び外壁21面にブリッジ状態になった籾殻に向かって排風を吹きかける形態を表している。
【0027】
中継ファン10だけの稼動信号を受けたモータ36は、その排風口30を下方向に向けて転換し、下方向だけを左右方向に正反転して外壁21にブリッジ状態になった籾殻壁に向かって、そして底板15の平面に堆積した籾殻に向かってそれぞれが対称的に正反転しながら排風を吹きかけ、積層した籾殻を攪拌移動するように構成している。特に二本のダクトB31が対称で回転するので、籾殻落下口18に向かって対称的に籾殻を落下口方向に移動できるので、作業者が籾殻貯留庫12内で排出作業をすることなく、容易に籾殻を機外に排出することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】穀物乾燥調製施設のレイアウトを表す平面図である。
【図2】従来の実施の形態をしめす籾殻貯留庫の断面図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態を示す正面断面図である。
【図4】図3の実施の形態の側面断面図である。
【図5】本発明の第一の実施の形態の動作を示す部分側面断面図である。
【図6】本発明の第一の実施の形態の動作状態を示す側面部分断面図である。
【図7】本発明の第一の実施の形態の排風口から排風を下方に向けて、堆積する籾殻を攪拌移動させる状態を示す側面断面図である。
【図8】本発明の第二の実施の形態を示す正面断面図である。
【図9】図8の動作状態を示す側面断面図である。
【図10】本発明の第二の実施の形態で排風口から排風を下方に供給する状態を表す正面断面図である。
【図11】図10の動作の状態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 穀物乾燥調製施設
2 穀物乾燥装置
3 貯留タンク
4 籾摺り装置
5 選別装置
6 計量装置
7 作業スペース
8 穀物投入装置
9 搬送装置
10 中継ファン
11 排塵室
12 籾殻貯留庫
13 搬出室
14 排籾殻ダクト
15 底板
16 シャッタ
17 運搬用トラック
18 籾殻落下口
19 内部側壁A
20 内部側壁B
21 外壁
25 排風口
27 緩衝材
30 排風口
31 ダクトB
32 蓋
33 ハンドル
34 軸受
36 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物乾燥調製施設の籾摺り装置から籾殻貯留庫内に通じる排籾殻ダクトであって、その籾殻貯留庫の略全長に渡って、その周面の一列の複数の排風口が上下方向にその向きを転換できるように構成されたことを特徴とする、籾殻貯留庫の排籾殻ダクト。
【請求項2】
排籾殻ダクトは、上下方向に転換しながら排風口から籾殻及び排風を噴出させることを特徴とする、請求項1記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクト。
【請求項3】
排籾殻ダクトは、左右方向に首振り転換しながら籾殻貯留庫内に均等に籾殻を堆積させるようにしたことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクト。
【請求項4】
排籾殻ダクトは、左右方向に首振り転換しながら籾殻貯留庫内の籾殻を、排風口から排出される排風によって攪拌移動させることを特徴とする、請求項1、2及び請求項3記載の籾殻貯留庫の排籾殻ダクト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−167674(P2008−167674A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1890(P2007−1890)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】