説明

粉の噴かない高起泡性機械練り石鹸

【課題】低温下で保存した時の石鹸表面の発粉を抑制出来るとともに、起泡力、泡質(クリーミー性)に優れさらに経時による色や匂いの変化が少ない機械練り石鹸を提供する。
【解決手段】石鹸を構成する脂肪酸のヨウ素価が6〜20、脂肪酸組成中の炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸が70〜95重量%、炭素数16〜22の直鎖不飽和脂肪酸が5〜20重量%である脂肪酸塩を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低温保存時の石鹸表面の発粉を抑制すると共に、起泡力、泡質が優れ、さらに経時による色や匂いの変化の少ない機械練り石鹸の新規な組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
起泡力、泡質が良くしかも色や匂いの経時変化が少ない機械練り石鹸は、直鎖飽和脂肪酸で構成された、ナトリウム塩、カリウム塩またはそれらの混合塩で得ることが出来る。しかし、この機械練り石鹸は、室温下で石鹸表面が発粉してしまう。低温時では2〜3日で発粉してしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、起泡力があり、泡質が良く、色や匂いの経時変化が少ない状態を維持したまま、欠点である発粉を抑制した機械練り石鹸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題に対し鋭意検討した結果、特定のヨウ素価を有する特定組成の脂肪酸塩を用いれば、上記課題を達成できることを見出し、この発明を完成した。
【0005】
即ち本発明は以下の通りである。
(1)脂肪酸塩を構成する脂肪酸のヨウ素価が6〜20である脂肪酸塩を含有する機械練り石鹸。(2)脂肪酸塩を構成する全脂肪酸組成中の炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸が70〜95重量%炭素数16〜22のモノエン直鎖不飽和脂肪酸が5〜20重量%である脂肪酸塩を含有する上記(1)記載の機械練り石鹸。(3)直鎖飽和脂肪酸中のラウリン酸が15〜50重量%、ミリスチン酸が20〜60重量%である脂肪酸塩を含有する上記(1)又は(2)記載の機械練り石鹸である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明で用いる脂肪酸塩を構成する脂肪酸(混合脂肪酸)は、ヤシ油、パーム核油、パーム油、オリーブ油等の植物由来のものや、牛脂、ラード等の動物由来のもののいずれでも良い。これ等を1種以上、さらに他の単独脂肪酸を1種類以上混合して用いることができ、以下のような特性を有するように調整される。このような混合脂肪酸は、まずヨウ素価が6〜20であることが必要である。ヨウ素価が20を超えると経時で色及び匂いの変化が大きくなり好ましくない。又6以下になると石鹸表面に発粉が生じ始める。
【0008】
さらに全脂肪酸組成中のラウリン酸が15〜50重量%であることが必要である。この範囲であれば高起泡性である機械練り石鹸を得ることが出来る。
【0009】
全脂肪酸中のミリスチン酸が20〜60重量%であることが必要である。この範囲内であれば泡質の良好な機械練り石鹸を得ることが出来る。
【0010】
全脂肪酸組成中の炭素数16〜22のモノエン直鎖不飽和脂肪酸が5〜20重量%であることが必要である。5重量%以下では石鹸表面の発粉を抑制すること出来ない。一方20重量%を超えると経時による色、匂いの変化が大きくなり好ましくない。
【0011】
本発明においては、このような脂肪酸塩が用いられ、全成分中に60〜95重量%、特に70〜90重量%配合するのが好ましい。
【0012】
脂肪酸塩が脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、エタノールアミン塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。これ等は単独で使用しても、2種以上併用してもかまわないが石鹸の起泡性、泡質、硬さを維持するためには、ナトリウム塩、カリウム塩、及び両者の混合塩が好ましい。
【0013】
本発明の機械練り石鹸には、通常の機械練り石鹸に配合される成分、例えば高級アルコール、高級脂肪酸、脂肪酸エステル類等の油性成分、各種界面活性剤、水溶性高分子、糖類、殺菌剤、防腐剤、消炎剤、酸化防止剤、キレート剤、紫外線吸収剤、色素、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することが出来る。
【0014】
本発明の機械練り石鹸は通常の方法に従って製造することが出来る。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例をあげてより詳細に説明するが、本発明はこれ等の実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例1〜4及び比較例1〜3
【0017】
表1に示す組成の混合脂肪酸からなるカリ含有石鹸素地を用いて機械練り石鹸を製造し、それ等の発粉状態、起泡力、泡質、色の変化、匂いの変化を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0018】
(1)製法
表1に示す物性を有するカリ含有石鹸素地を3本ロールに通した後プロッター(石鹸押し出し機)にかけ出てきた石鹸バーを型打ちして機械練り石鹸を得た。
【0019】
(2)評価方法
以下表1における評価項目についての評価基準を示す。
【0020】
(3)発粉状態
表1の石鹸をチャック付ポリエチレン袋に入れ5℃1週間放置し、32℃保存品との比較において、以下の基準で判定した。
◎:発粉していない
○:ほとんど発粉していない
△:発粉している
×:著しく発粉している
【0021】
(4)起泡力
表1の石鹸を、ミキサー(プライミクス製TKホモミキサー)を用い、1Lビーカー中に精製水で調整した0.5%水溶液400mLを入れ、2000rpmで2分間攪拌後、発生した泡の量(高さ)を測定し以下の基準で判定した。
◎:50mm以上
○:50〜40mm
△:40〜30mm
×:30mm以下
【0022】
(5)泡質
表1の石鹸を使用し、10名をパネラーとし、手洗いした時の泡の質(クリーミー性)について下記の基準で判定し、10名の平均値で評価した。
3点:泡がクリーミーである
2点:泡がややクリーミーである
1点:泡がやや粗い
0点:泡が粗い
【0023】
(6)色及び匂い
表1の石鹸をチャック付ポリエチレン袋に入れ、50℃、2週間放置し、5℃保存品との比較において以下の基準で判定した。
◎:変化していない
○:ほとんど変化していない
△:変化している
×:著しく変化している
【0024】
【表1】

【0025】
表1の結果から明らかな如く、本発明品は比較品と比べて発粉が抑制され、しかも起泡力、泡質に優れ、経時の色、匂いの変化の少ない機械練り石鹸であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸塩を構成する脂肪酸のヨウ素価が6〜20である機械練り石鹸。
【請求項2】
脂肪酸塩を構成する全脂肪酸組成中の炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸が70〜95重量%、炭素数16〜22のモノエン直鎖不飽和脂肪酸が5〜20重量%、である請求項1記載の機械練り石鹸。
【請求項3】
直鎖飽和脂肪酸中のラウリン酸が15〜50重量%、ミリスチン酸が20〜60重量%である請求項1、または請求項2記載の機械練り石鹸。

【公開番号】特開2010−285489(P2010−285489A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138795(P2009−138795)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(505443160)株式会社 サティス製薬 (5)
【Fターム(参考)】