説明

粉体のホッパ装置

【課題】ホッパ内の粉体の状態を検知して安定した状態に保持し排出口への流れを円滑にできる粉体のホッパ装置を提供する。
【解決手段】粉体安定保持手段8を備え、粉体安定保持手段8が、内壁面14に敷設された可撓性を有するシート16と、気体の注入により拡張され排出により収縮する内壁面14とシート16の間に設置された複数のチューブ18と、シート16に加わる粉体の圧力を検出するシート16と内壁面14の間にチューブ18に隣接し設置された複数の圧力センサ20と、圧力センサ20の出力に応じて複数のチューブ18それぞれに気体を選択可能に注排し拡縮させる気体注排手段22を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体のホッパ装置、さらに詳しくは、収容した粉体の不均一な状態を改善し安定した状態を保持して排出口への流れを円滑にする手段を備えた粉体のホッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホッパに収容した粉体を下方の排出口を通して供給先に送る際に、粉体の排出口からの円滑で定量的な流出を阻止する粉体の不均一な現象、例えばブリッジ、空洞、圧密が発生する。この現象を防止し除くために、(1)ホッパ内壁に脈動するダイヤフラムを敷設する(例えば、特許文献1参照)、(2)バイブレータやノッカによってホッパを外側から打撃する、(3)圧力空気をホッパ内に吹き込む、などの種々の手段が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−65894号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したとおりの形態のホッパ装置には、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0005】
ホッパ内の粉体の状態を確認できないので、例えば、ブリッジを防止しあるいは発生したブリッジを崩すには、ダイヤフラム、バイブレータやノッカ、圧力空気などの手段を、ホッパ内の粉体の状態に関係なく、定期的に作動させる必要がある。手段によっては、粉体の流れが不安定になる、粉体が片寄る、打撃によって騒音・損傷が生ずる、粉塵が発生する、などの問題がある。
【0006】
ブリッジや空洞ができていないのに、バイブレータやノッカを作動させると粉体は、固く圧密してブリッジはより強固になり解消不可能になることがある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、ホッパ内の粉体の状態を検知して安定した状態に粉体を保持することができ、粉体を過剰に圧密することがなく、定期的に作動させる必要がなく、またホッパを損傷させることがなく、さらに粉塵を発生することのない手段を備えた、粉体のホッパ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記技術的課題を解決する粉体のホッパ装置として、ホッパに収容された粉体の不均一な状態を改善し下方の排出口への流れを円滑にする粉体安定保持手段を備え、粉体安定保持手段が、内壁面に敷設された可撓性を有するシートと、気体の注入により拡張され排出により収縮する内壁面とシートの間に設置された複数のチューブと、シートに加わる粉体の圧力を検出するシートと内壁面の間にチューブに隣接し設置された複数の圧力センサと、複数のチューブそれぞれに気体を選択可能に注排する気体注排手段と、を備え、(1)粉体をホッパに収容した状態での複数の圧力センサの「検出値」を圧力センサそれぞれの「基準値」とし、(2)粉体の排出口からの排出に際して「基準値」よりも高圧を示す圧力センサがあるとき、あるいは上方に下方よりも高圧を示す圧力センサがあるときは、(3)高圧の圧力センサに隣接するチューブに気体注排手段によって気体を注入し拡張させ不均一な粉体を崩し安定状態にする、ことを特徴とする粉体のホッパ装置が提供される。
【0009】
好適には、複数のチューブの各々は、内壁面に沿って環状に水平に延び、ホッパの上下方向に所定の間隔で設置されている。また、複数のチューブの各々は、拡縮いずれの状態においても内壁面とシートそれぞれに当接している。さらに、複数の圧力センサは、本体を内壁面に固定し、圧力検出部をシートに接離自在に、少なくともチューブの収縮時にシートに当接して設置されている。
【0010】
そして、粉体安定保持手段はコントローラを備え、コントローラは、(1)複数の圧力センサそれぞれの「検出値」を基にして、(2)粉体をホッパに収容した状態の「検出値」を圧力センサそれぞれの「基準値」とし、(3)粉体の排出口からの排出に際して、「基準値」よりも高圧を示す圧力センサがあるとき、あるいは上方に下方よりも高圧を示す圧力センサがあるときは、(4)気体注排手段を制御して高圧の圧力センサに隣接するチューブに気体を注入し拡張させ粉体を崩し、(5)所定の時間の経過後に、気体注排手段を制御してチューブから気体を排出する。
【0011】
また、排出口につながるホッパの下部にテーパ状部を有し、このテーパ状部に、粉体安定保持手段のシート、チューブおよび圧力センサが設置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従って構成された粉体のホッパ装置の粉体安定保持手段は、ホッパ内壁面に敷設したシートと、内壁面とシートの間の複数の環状の拡縮可能なチューブと、シートに加わる粉体圧力を検出する複数の圧力センサと、複数のチューブそれぞれに気体を注排する気体注排手段を備えているので、不均一な粉体により検出圧力の高くなった部位のチューブに気体を注入して拡張させ、粉体を崩して安定状態を保持することができる。
【0013】
したがって、ホッパ内の粉体の状態を検知して安定した状態に粉体を保持することができ、粉体を過剰に圧密することがなく、定期的に作動させる必要がなく、またホッパを損傷させることがなく、さらに粉塵を発生することのない手段を備えた、粉体のホッパ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従って構成された粉体のホッパ装置の構成説明図。
【図2】図1の粉体のホッパ装置において粉体の不均一な状態の一例であるブリッジを検知する状態の説明図。
【図3】図2のブリッジを粉体安定保持手段によって崩す状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成された粉体のホッパ装置について、好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0016】
図1を参照して説明する。全体を番号2で示す粉体のホッパ装置は、ホッパ4に収容された粉体Hの不均一な状態を改善し下部の排出口6への流れを円滑にする粉体安定保持手段8を備えている。ここで、粉体Hの不均一な状態とは、ホッパ4内の粉体Hに、ブリッジ、空洞、偏在などが発生し、粉体が均質でない状態を意味している。
【0017】
ホッパ4は、粉体Hを一時的に貯留し必要により下部の排出口6から供給先に供給する周知のものであり、下部にテーパ状部10を有し、下端に形成された排出口6には、例えば粉体Hを定量的に供給先に送る定量供給装置12が接続されている。ホッパ4の上部側および定量供給装置12についての詳細な図示は、本発明とは直接関連しないので省略する。
【0018】
粉体安定保持手段8は、ホッパ4の内壁面14に敷設された可撓性を有するシート16と、気体の注入により拡張され排出により収縮する内壁面14とシート16の間に内壁面14に固定され設置された複数のチューブ18と、シート16に加わる粉体Hの圧力を検出するシート16と内壁面14の間にチューブ18に隣接し設置された複数の圧力センサ20と、複数のチューブ18それぞれに気体としての空気を選択可能に注排する気体注排手段22を備えている。粉体安定保持手段8のシート16、チューブ18および圧力センサ20は、ホッパ4のテーパ状部10に設置されている。
【0019】
シート16は、合成ゴムシートあるいは合成繊維シートなどによって形成され、収容する粉体Hの性状に応じて選択され、粉体Hが内壁面14の側に漏れないように取付けられている。
【0020】
複数のチューブ18の各々は、内壁面14に沿って環状に水平に延び、ホッパ4の上下方向に所定の間隔で設置されている。また、複数のチューブ18は、拡縮いずれの状態においても内壁面14とシート16それぞれに当接されている(図1は収縮状態を示している)。
【0021】
圧力センサ20は周知の荷重測定器であるロードセルによって構成することができる。圧力センサ20は、隣接する一対のチューブ18,18の間に、チューブ18が延びる環状方向に複数個、内壁面14に直角の方向の荷重を計測するように設置されている。圧力センサ20は、本体20aが内壁面14に固定され、圧力検出部20bがシート16に接離自在に、少なくともチューブ18の収縮時(図1の状態)にシート16に当接して設置されている。
【0022】
複数の圧力センサ20それぞれの検出圧力は、それぞれ圧力表示器24を通して、後に述べるコントローラ26に入力されている。圧力表示器24は、検出圧力を数値、針、あるいは色などによって表示し、検出圧力の変化を容易に判別できるようにするとよい。
【0023】
気体注排手段22は、空気圧源28と、空気圧源28の加圧空気を複数のチューブ18それぞれに注排するそれぞれに対応した複数の電磁切換弁30を備えている。電磁切換弁30それぞれは、後に述べるコントローラ26からの信号によって制御される。
【0024】
粉体安定保持手段8はコントローラ26を備え、コントローラ26は、
(1)複数の圧力センサ20それぞれの「検出値」を基にして、
(2)粉体Hをホッパ4に収容した状態(図1の状態)の「検出値」を圧力センサ20それぞれの「基準値」とし、
(3)粉体Hの排出口6からの排出に際して、「基準値」よりも高圧を示す圧力センサ20があるとき、あるいは上方に下方よりも高圧を示す圧力センサ20があるときは、
(4)気体注排手段22を制御して高圧の圧力センサ20に隣接するチューブ18に気体を注入し拡張させ粉体Hを崩し、
(5)所定の時間の経過後に、気体注排手段22を制御し電磁切換弁30を操作してチューブ18から気体を排出する(図1の状態)。所定の時間は、粉体Hが安定状態になるまでの時間を、ホッパ4の大きさ、粉体Hの性状、シート16、チューブ18、圧力センサ20の設置構造などに応じて、予め実験などによって確認し、設定する。
【0025】
図1とともに図2、図3を参照して、粉体安定保持手段8の作用について説明する。
【0026】
複数の圧力センサ20それぞれの「検出値」がコントローラ26に入力される。
【0027】
圧力基準値測定(図1):
コントローラ26は、複数のチューブ18の収縮状態において収容した粉体Hの、複数の圧力センサ20それぞれの検出圧力を「基準値」として設定する。
【0028】
ブリッジ検知(図2):
粉体Hの不安定状態の典型例であるブリッジBRが発生すると、下部に空間Sができ、空間Sの部分の圧力センサ20(B)の検出値は基準値よりも小さくなるとともに、ブリッジBRの粉体Hに接した部分の圧力センサ20(A)の検出値は「基準値」よりも粉体Hの片寄り集中のために大きい値に変化する。この状態が設定時間以上継続したときブリッジBRの発生と判定する。
【0029】
他の判定方法として、上方に下方よりも高圧を示す圧力センサ20が存在する、すなわち上部の圧力センサ20(A)よりも下部の圧力センサ20(B)の検出値の低い状態が設定時間以上継続したときブリッジBRの発生と判定する。
【0030】
設定時間は、ホッパ4の大きさ、粉体Hの性状、シート16、チューブ18、圧力センサ20の設置構造などに応じて、予め実験などによって確認し、設定する。
【0031】
チューブ拡張、ブリッジ崩落(図3):
コントローラ26は、ブリッジBRの発生を判定すると、高圧の「検出値」の圧力センサ20(A)に隣接するチューブ18に気体注排手段22を制御して気体を注入し拡張させ、粉体Hを白抜き矢印で示すように崩し、所定の時間経過後に、気体注排手段22を制御して気体を排出しチューブ18を収縮させる。
【0032】
手動操作(図1):
図1に戻って説明する。粉体安定保持手段8を、コントローラ26を備えないで作動させてもよい。すなわち、複数の圧力センサ20それぞれの「検出値」の変化を圧力表示器24によって監視し、「基準値」よりも高圧の「検出値」を示す圧力センサ20があるとき、あるいは上方に下方よりも高圧を示す圧力センサ20があるときは、高圧の圧力センサ20に隣接するチューブ18に、気体注排手段22の電磁切換弁30を手動で操作し、気体を注入し拡張させ不均一な粉体を崩し安定状態にすればよい。
【0033】
図1とともに図2、図3を参照して、上述したとおりの粉体のホッパ装置2の効果について説明する。
【0034】
本発明に従って構成された粉体のホッパ装置2は粉体安定保持手段8を備え、粉体安定保持手段8は、内壁面14に敷設したシート16と、内壁面14とシート16の間の複数の環状の拡縮可能なチューブ18と、シート16に加わる粉体Hの圧力を検出する複数の圧力センサ20と、複数のチューブ18それぞれに気体を注排する気体注排手段22を備え、不均一な粉体Hにより検出圧力の高くなった部位のチューブ18に気体を注入して拡張させ、粉体Hを崩して安定状態を保持することができる。
【0035】
したがって、ホッパ4内の粉体Hの状態を検知して安定した状態に粉体Hを保持することができ、粉体Hを過剰に圧密することがなく、定期的に作動させる必要がなく、またホッパ4を損傷させることがなく、さらに粉塵を発生することのない手段を備えた、粉体のホッパ装置2を提供することができる。
【0036】
複数のチューブ18の各々は、内壁面14に沿って環状に水平に延び、ホッパ4の上下方向に所定の間隔で設置されている。また、複数のチューブ18の各々は、拡縮いずれの状態においても内壁面4とシート16それぞれに当接している。したがって、粉体Hの状態を適切に保持することができる。
【0037】
複数の圧力センサ20は、本体20aを内壁面14に固定し、圧力検出部20bをシート16に接離自在に、少なくともチューブ16の収縮時にシート16に当接して設置されている。したがって、粉体Hの圧力の変化を適切に検知することができる。
【0038】
さらに、粉体安定保持手段8は、コントローラ26を備え、コントローラ26は、複数のチューブ18の収縮状態において収容された粉体Hの、複数の圧力センサ20それぞれの検出圧力を圧力センサ20それぞれの基準値とし、粉体Hを排出口6から排出するに際して、複数の圧力センサ20の中に、この基準値よりも大きい圧力値に変化した圧力を検出した圧力センサ20があるとき、あるいは上方に下方よりも高圧を示す圧力センサ20があるときは、大きい圧力値を検出した圧力センサ20に隣接するチューブ18に気体注排手段22により気体を注入し拡張させ、所定の時間経過後に、気体注排手段22により気体を排出しチューブ18を収縮させる。
【0039】
したがって、粉体Hの安定状態を自動的に保持することができる。
【0040】
また、排出口6につながるホッパ4の下部にテーパ状部10を有し、このテーパ状部10に、粉体安定保持手段8のシート16、チューブ18および圧力センサ20が設置されている。
【0041】
したがって、テーパ状部10により、粉体Hの圧力の変化を、テーパ面の方向の分力によって垂直面よりもより容易に検出することができるので、ブリッジなどの現象を容易に検出でる。そして、排出口6に粉体Hを安定させた状態で流すことができる。
【符号の説明】
【0042】
2:粉体のホッパ装置
4:ホッパ
6:排出口
8:粉体安定保持手段
10:テーパ状部
14:内壁面
16:シート
18:チューブ
20:圧力センサ
22:気体注排手段
26:コントローラ
BR:ブリッジ
H:粉体
S:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパに収容された粉体の不均一な状態を改善し下の排出口への流れを円滑にする粉体安定保持手段を備え、
粉体安定保持手段が、
内壁面に敷設された可撓性を有するシートと、
気体の注入により拡張され排出により収縮する内壁面とシートの間に設置された複数のチューブと、
シートに加わる粉体の圧力を検出するシートと内壁面の間にチューブに隣接し設置された複数の圧力センサと、
複数のチューブそれぞれに気体を選択可能に注排する気体注排手段と、を備え、
(1)粉体をホッパに収容した状態での複数の圧力センサの「検出値」を圧力センサそれぞれの「基準値」とし、
(2)粉体の排出口からの排出に際して「基準値」よりも高圧を示す圧力センサがあるとき、あるいは上方に下方よりも高圧を示す圧力センサがあるときは、
(3)高圧の圧力センサに隣接するチューブに気体注排手段によって気体を注入し拡張させ不均一な粉体を崩し安定状態にする、
ことを特徴とする粉体のホッパ装置。
【請求項2】
複数のチューブの各々が、
内壁面に沿って環状に水平に延び、ホッパの上下方向に所定の間隔で設置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の粉体のホッパ装置。
【請求項3】
複数のチューブの各々が、
拡縮いずれの状態においても内壁面とシートそれぞれに当接している、
ことを特徴とする請求項1または2記載の粉体のホッパ装置。
【請求項4】
複数の圧力センサが、
本体を内壁面に固定し、圧力検出部をシートに接離自在に、少なくともチューブの収縮時にシートに当接して設置されている、
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の粉体のホッパ装置。
【請求項5】
粉体安定保持手段は、コントローラを備え、
コントローラは、
(1)複数の圧力センサそれぞれの「検出値」を基にして、
(2)粉体をホッパに収容した状態の「検出値」を圧力センサそれぞれの「基準値」とし、
(3)粉体の排出口からの排出に際して、「基準値」よりも高圧を示す圧力センサがあるとき、あるいは上方に下方よりも高圧を示す圧力センサがあるときは、
(4)気体注排手段を制御して高圧の圧力センサに隣接するチューブに気体を注入し拡張させ粉体を崩し、
(5)所定の時間の経過後に、気体注排手段を制御してチューブから気体を排出する、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の粉体のホッパ装置。
【請求項6】
排出口につながるホッパの下部にテーパ状部を有し、
このテーパ状部に、粉体安定保持手段のシート、チューブおよび圧力センサが設置されている、
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の粉体のホッパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−25982(P2011−25982A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175403(P2009−175403)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(591147786)赤武エンジニアリング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】