説明

粉体の光触媒活性評価法

【課題】
油系での粉体の光活性触媒を評価でき、また疎水性粉体にも適用可能な光触媒活性の評価方法を提供すること。
【解決手段】
粉体をカロテノイド系色素溶液に分散させて粉体分散液を調製する工程と、該粉体分散液を光照射処理する工程とを含み、光照射処理によるカロテノイド系色素の褪色度合を指標とすることを特徴とする粉体の光触媒活性評価法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の光触媒活性評価法に関し、さらに詳細には、簡便に油中での光触媒活性の評価が可能であり、化粧料に用いる粉体の光触媒活性評価に適した評価法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には様々な粉体が用いられているが、粉体に光があたるとその光触媒活性により過酸化物を生成するなど皮膚への有害な作用が考えられる。従来粉体の光触媒活性の評価方法としては、例えば、粉体をメチレンブルー水溶液に入れ、撹拌しながら紫外線を照射したのち、メチレンブルー水溶液と粉体を分離し、溶液中のメチレンブルー濃度を紫外可視吸光光度計により測定し、メチレンブルーの分解の程度を調べる方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、この方法は水溶性色素を用いるものであるため、油系での光触媒活性の評価は困難であり、また疎水性の粉体の評価には適用できないという問題があった。さらに、粉体を分離するため、色素が粉体に吸着する場合には、測定結果が不正確になる場合もあった。
【0004】
また、色素としてメチルレッドを用いる方法も提案されているが、この色素も水溶性であるため、油系での光触媒活性の評価は困難であり、また疎水性の粉体の評価には適用できないという問題があった(特許文献2)。さらに、有機物の分解速度をガスクロマトグラフィーで測定する方法も知られているが、操作が煩雑であり簡便に評価することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−161592号公報
【特許文献2】特開2007−003353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、油系での粉体の光触媒活性を評価でき、また疎水性粉体にも適用可能な光触媒活性の評価方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、カロテノイド系色素は、それ自体は光照射による褪色は小さいが、油中に粉体と共存させると容易に褪色が進行するため、その褪色度合を指標とすることにより粉体の光触媒活性を簡便に評価できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、粉体をカロテノイド系色素溶液に分散させて粉体分散液を調製する工程と、該粉体分散液を光照射処理する工程とを含み、光照射処理によるカロテノイド系色素の褪色度合を指標とすることを特徴とする粉体の光触媒活性評価法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粉体の光触媒活性評価法は、油中における粉体の光触媒活性を評価するものであるため、化粧料や肌上における評価として実際に即したものである。また、従来困難であった疎水性粉体にも適用することができ、粉体の表面処理剤のスクリーニングにも利用可能である。さらに、粉体を分離することなく評価することができるため、簡便であるとともに、色素を吸着しやすい粉体についても正確に評価可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の評価法は、カロテノイド系色素の褪色度合を指標とするものである。使用するカロテノイド系色素は、特に制限されるものではないが、アスタキサンチン、カンタキサンチンおよびカプサンチンが好ましく、中でもアスタキサンチンが特に好ましい。これらの色素は、粉体の不存在下において、光に暴露されても褪色が少なく、かつ光触媒活性を持つ粉体との共存下においては、光照射により褪色する性質を有する。本発明に用いるカロテノイド系色素は、粉体の不存在下で、下記測定方法において、光照射前の吸光度が4.0の色素溶液を用いた場合の褪色率が10%以下であることが好ましく、さらに5%以下であることが好ましい。上記アスタキサンチン、カンタキサンチンおよびカプサンチンは、この褪色率が5%以下である。
【0011】
(褪色率の測定方法)
色素を、後述する油性成分によって、下記吸光度測定方法による極大吸収波長における吸光度が3.0以上5.0未満になる濃度に調製する。この色素溶液10gを直径5cmのポリスチレン製シャーレ(FALCON社製 PRIMARIA Tissue Culture Dish)に入れ、下記光照射処理方法により光照射を行い、遠心分離により粉体と色素溶液を分離後、色素溶液を下記吸光度測定方法により極大吸収波長における吸光度を測定し、下記算出式により褪色率を求める。
【0012】
<吸光度測定方法>
分光光度計:UV−2500P(SHIMADZU製)
セル:ポリメチルメタアクリレート製、光路長10mm(10×10×45mm)、
Kartell製
【0013】
<光照射処理方法>
ソーラシミュレータ:バイオソーラシミュレータ(ワコム電創社製)
使用ランプ:ワコムキセノンショートアークランプ
照射強度:照射面のUV−A強度10.4 mW/cm
(照度計(Honle社UVA−Meter)で測定)
照射時間:16分
【0014】
<褪色率の算出式>
褪色率(%)=(A−A’)/A × 100
A :光照射前の極大吸収波長の吸光度
A’:光照射後の極大吸収波長の吸光度
【0015】
上記カロテノイド系色素は、油性成分に溶解してカロテノイド系色素溶液として用いる。油性成分としては、特に限定されるものではないが、簡便性の観点から化粧品の原料として一般的に使用できる油性成分から選ぶことができる。油性成分は、非極性であっても極性であっても使用することができ、また植物油、鉱物油などの起源を問わない。例えば、極性油としては、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリットなどが挙げられ、また非極性油としては、流動パラフィンやスクワランなどが例示できる。その中でも、特に、透明性が高く、可視・紫外領域に吸収を持たず、変色変質を起こさない、流動パラフィンなどの炭化水素油や、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルが好ましく使用できる。
【0016】
カロテノイド系色素溶液中のカロテノイド系色素の濃度は、特に限定されるものではないが、極大吸収波長の吸光度で管理することができ、光路長10mmの石英セルもしくはポリメチルメタアクリレート製のセルを用い、分光光度計(例えば、UV−2500PC(SHIMADZU製))による当該カロテノイド系色素における極大吸収波長の吸光度が3.0以上5.0未満になるように調製することが好ましい。3.0未満であると、もともとの吸光度が小さく、色素が薄い為、試料間の差が測りづらくなる場合がある。また、5.0以上であると、色素が濃い為に、試料間の差を出す為に必要以上の時間がかかったり、試料間の差が捉えづらくなることがある。
【0017】
本発明の評価法の評価対象となる粉体は、特に制限されるものではなく、例えば化粧料に一般的に配合される無機粉体や有機粉体が挙げられ、またこれらは、シリコーン、油剤、多糖類等によって表面処理されていてもよい。これらの中でも、光触媒活性があることが知られている、二酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTi49)、チタン酸ナトリウム(Na2Ti613)、二酸化ジルコニウム、α−Fe23、K4Nb617、Rb4Nb617、K2Rb2Nb617などの金属酸化物や、これらを表面処理した粉体の光触媒活性評価に本発明の評価法を好適に用いることができる。本発明の評価法では、粉体(母粉体)間だけでなく、同母粉体で、表面処理剤の違うものや表面処理量の違いによる光触媒活性の強さの比較をすることも可能である。また、親水性であっても、疎水性であっても評価可能であるが、色素溶液が油系であるため親和性が高く高分散することから特に疎水性粉体の評価に適している。疎水化処理粉体としては、トリメチルシリル化剤、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で処理された粉体や、パーフルオロアルキルリン酸、パーフルオロポリエーテルアルキルリン酸、パーフルオロアルキルシラン等のフッ素化合物で処理された粉体などが挙げられる。また、本発明の原理を用いれば、単一の粉体に限らずファンデーション、おしろい、日焼け止めといった粉体化粧料であっても評価可能である。
【0018】
これらの粉体を上記カロテノイド系色素溶液に分散させて粉体分散液を調製する。粉体とカロテノイド系色素溶液の混合比は、特に限定されず、粉体の種類によって適宜設定することができるが、例えば、光触媒活性が高いと想定される金属酸化物同士を比較したい場合には、粉体:カロテノイド系色素溶液の質量比を0.2:100〜15:100のようにして粉体がカロテノイド系色素溶液に対して薄い濃度の範囲で評価を行うと、試料間の光触媒活性の差が評価しやすい。また、例えば、光触媒活性が低いと考えられる有機粉体等を評価する際には、2:100〜50:100の範囲で評価を行うと評価しやすい。一般的には粉体とカロテノイド系色素溶液の比を0.2:100〜50:100の割合で混合させることが好ましい。この範囲よりも粉体が少ないと、光触媒活性が充分に起こらない場合があり、また、この範囲よりも粉体が多いと粉体によっては光触媒反応が進みすぎてしまい、試料間の比較がしづらくなることがある。さらに、粉体分散液の流動性が低くなり、光触媒反応の際に光が均一に当たらなくなる場合がある。
【0019】
また粉体をカロテノイド系色素溶液中に分散させる方法は、特に限定されないが、機械力によって均一に分散することが好ましい。具体的には、油溶性色素溶液と測定対象の粉体とを規格瓶に入れ、密封し、例えば、ペイントシェイカー(ASADA製)にて5分〜15分ほど分散する方法などがある。また機械力を使わずとも、手で振って分散させたり、さじなどで均一に混合してもよい。
【0020】
このように調製した粉体分散液に、光照射処理して光触媒反応を生じさせる。照射光は紫外光を含んでいることが好ましく、さらに可視光を含んでいることが好ましい。光源としては、キセノンランプ、ブラックライト、太陽光、蛍光灯などを用いることができるが、紫外光に加えて可視光を同時に照射でき太陽光に近い波長を持つキセノンランプ(照射波長:320nm〜850nm)などを好適に使用できる。また、熱がかからない条件下で反応を起こすと光触媒活性評価の精度が高まるため好ましく、例えば、バイオソーラシミュレータ(ワコム電創社製)などを好適に用いることができる。照射光の光量は、各測定で統一されていれば特に限定されるものではないが、熱エネルギー換算で5J/cm2以上50J/cm2未満であると好ましい。また、さらに好ましくは8J/cm2〜25J/cm2である。5J/cm2未満であると褪色が充分に促進されない場合があり、一方、50J/cm2以上であると褪色が進行しすぎてしまい、サンプル間の差を見出せなくなってしまう場合がある。
【0021】
上記のようにして粉体分散液を光照射処理した後、光照射処理によるカロテノイド系色素の褪色度合を評価し、これを指標として粉体の光触媒活性を評価する。カロテノイド系色素の褪色度合の測定は、種々の光学的手法による分析値を用いて評価することができ、例えば、測色値、吸光度、反射率等を用いることができる。
【0022】
カロテノイド系色素の褪色度合を測色値によって評価する場合、測色に供する試料は、粉体を含む粉体分散液であっても、粉体分散液から粉体を分離したカロテノイド系色素溶液であってもよい。このうち、粉体分散液を測色する方が、粉体の分離操作を行う必要がないため簡便であり、また、カロテノイド系色素を吸着しやすい粉体であっても、高い精度で光触媒活性を評価することができる。表色系としては、Lab表色系、XYZ表色系等が用いられ、各試料の測色値を対比してもよいが、対照となる試料との色差を求め、これを対比することもできる。例えば、光照射未処理の試料と光照射処理した試料の色差ΔE値を指標として用いることができ、ΔE値が大きいほうが、カロテノイド油溶性色素の褪色がより進んだと言えるので、光触媒活性が高いと評価することができる。光照射未処理の試料としては、光照射前の試料や光照射と同じ時間暗所の保存した試料を用いることができる。
【0023】
一方、カロテノイド系色素の褪色度合を吸光度によって評価する場合、測定に供する試料としては、粉体分散液から粉体を分離したカロテノイド系色素溶液を用いることが、粉体による吸収スペクトルへの影響を排除できるため好ましい。例えば、測定対象の粉体が金属酸化物などの場合には、遠心分離等の分離手段によりカロテノイド系色素溶液と容易に分離することが可能である。吸光度の測定に用いられる機器は、上記UV−2500PC(SHIMADZU製)などの一般に広く用いられている紫外・可視分光光度計を用いることができる。この場合、異なる粉体の光照射処理後のカロテノイド系色素の極大吸収波長における吸光度を比較し光触媒活性を評価することができる。すなわち、吸光度が低い方がカロテノイド系色素の褪色がより進んだと言えるので、光触媒活性が高いと評価することができる。また、光照射未処理の試料と光照射処理した試料との吸光度を比較して、粉体の光触媒活性の有無を評価することもできる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例等により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制限されるものではない。
【0025】
参 考 例 1
色素の検討:
下記表1に示す油溶性色素について、粉体の存在下および不存在下における褪色率を調べた。各色素をトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルで希釈した。濃度は、下記吸光度測定条件による極大吸収波長における吸光度が3.0以上5.0未満になるように調製した。この色素溶液に酸化チタン粒子(Degussa P25;Degussa社製)を添加し、ペイントシェイカー(ASADA社製)を用いて10分間分散処理を行った。酸化チタンの量は、色素溶液10gに対して0.04gとした。
【0026】
次に、粉体を添加しない色素溶液と、粉体を分散させた色素溶液それぞれ10gを、2つの直径5cmのポリスチレン製シャーレ(FALCON社製 PRIMARIA Tissue Culture Dish)に入れ、それぞれ下記光照射処理方法により光照射を行った。光照射処理前後の試料について、下記吸光度測定条件により各色素の極大吸収波長における吸光度を測定し、下記算出式により褪色率を求めた。
【0027】
<吸光度測定方法>
分光光度計:UV−2500P(SHIMADZU製)
セル:ポリメチルメタアクリレート製、光路長10mm(10×10×45mm)、
Kartell製
【0028】
<光照射処理方法>
ソーラシミュレータ:バイオソーラシミュレータ(ワコム電創社製)
使用ランプ:ワコムキセノンショートアークランプ
照射強度:照射面のUV−A強度10.4 mW/cm
(照度計(Honle社UVA−Meter)で測定)
照射時間:16分
【0029】
<褪色率の算出式>
褪色率(%)=(A−A’)/A × 100
A :光照射前の極大吸収波長の吸光度
A’:光照射後の極大吸収波長の吸光度
【0030】
【表1】

【0031】
この結果から、カロテノイド系色素であるアスタキサンチン、カンタキサンチン、カプサンチンはいずれも、光照射のみではほとんど褪色しないが、二酸化チタンの存在下では、光触媒反応により容易に褪色することが示された。一方、クルクミンまたはポルフィリン系の色素は、光照射のみで容易に褪色してしまうことが明らかとなった。
【0032】
実 施 例 1
二酸化チタンおよびシリカの光触媒活性評価:
下記表2に示す結晶型、平均粒子径の異なる二酸化チタンおよびシリカの光触媒活性を評価した。
【0033】
アスタキサンチン(トリ(カプリル/カプリン酸)トリグリセリル溶液)をトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルで希釈した。濃度は、参考例1と同様の吸光度測定法による極大吸収波長(476nm)における吸光度が3.5になるように調製した。このアスタキサンチン溶液に、上記4種類の粉体を添加し、ペイントシェイカーを用いて10分間分散処理を行った。粉体の量は、色素溶液10gに対して0.04gとした。粉体を分散させた粉体分散液それぞれ10gを、2つの直径5cmのポリスチレン製シャーレ(FALCON社製 PRIMARIA Tissue Culture Dish)に入れ、参考例1と同様の光照射処理方法によって光照射した。光照射後の粉体分散液と、光照射時間と同じ時間暗所に保存した粉体分散液とのLab表色系法による色差(ΔE)を分光式色差計(日本電色工業社製,SE−2000)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
一般に、酸化チタンの光触媒活性については、結晶形はルチルよりもアナターゼの方が高く、また粒子径が小さいほうが、比表面積が大きくなるため光を受ける面積が大きくなり、反応の場が増え活性が高くなることが知られている。また、シリカは光触媒活性をほとんど有しないことが知られているが、上記結果は、これらの傾向をよく示すものであった。
【0036】
実 施 例 2
表面処理粉体の測定:
二酸化チタン(TIPAQUE CR―50;石原産業社製)をトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(KF−9909;信越化学工業社製)と加熱混合して表面処理した。表面処理量は、未処理、3質量%、5質量%、7質量%とした。実施例1と同じ濃度に調整したアスタキサンチン溶液に表面処理した二酸化チタン粒子を添加しペイントシェイカーを用いて10分間分散処理を行った。酸化チタンの量は、色素溶液10gに対して0.04gとした。二酸化チタン未添加のアスタキサンチン溶液と、二酸化チタンを分散させたアスタキサンチン溶液それぞれ10gを、2つの直径5cmのポリスチレン製シャーレ(FALCON社製 PRIMARIA Tissue Culture Dish)に入れ、参考例1と同じ光照射処理方法で光照射した。光照射後の粉体分散液から遠心分離により粉体を分離し、アスタキサンチン溶液の極大吸収波長(476nm)における吸光度を参考例1と同様の吸光度測定方法により測定した。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
一般に、粉体を表面処理することによって、粉体表面における光触媒反応の場が減少するため光触媒活性が低下することが知られているが、上記結果は、表面処理量に依存して吸光度が増加し、光触媒活性が低下することを示しており、このような知見に合致するものであった。
【0039】
実 施 例 3
色素溶液と粉体の混合比の検討:
粉体分散液における色素溶液と粉体の混合比が光触媒活性評価に与える影響について検討した。粉体は、実施例1で比較的高い活性を示した微粒子酸化チタン(平均粒子径30nm、Degussa P25;Degussa社製)および比較的低い活性を示したルチル型酸化チタン(平均粒子径250nm、TIPAQUE CR−50;石原産業社製)を使用した。また色素溶液は、アスタキサンチン(トリ(カプリル/カプリン酸)トリグリセリル溶液)をトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルで希釈し、参考例1と同様の吸光度測定法による吸光度(476nm)が4.1になるように濃度を調製したアスタキサンチン溶液を用いた。このアスタキサンチン溶液に酸化チタンを質量比100:0.01、100:5、100:20(色素溶液:粉体)となるよう添加し、ペイントシェイカーを用いて10分間分散処理を行った。各粉体分散液と粉体を添加しないアスタキサンチン溶液それぞれ10gを、前記直径5cmのポリスチレン製シャーレに入れ、参考例1と同様の光照射処理方法によって光照射した。光照射後の粉体分散液から遠心分離により粉体を分離し、参考例1と同様にしてアスタキサンチン溶液の極大吸収波長(476nm)における吸光度を測定し、褪色率を求めた。結果を表4に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
混合比100:0.01では、触媒活性が高い微粒子二酸化チタンでも褪色率が0%と評価され、一方、混合比100:20では、微粒子二酸化チタンの褪色が進みすぎてしまうため、これらの混合比では試料間の活性の差が適切に表れない結果となった。
【0042】
実 施 例 4
照射光量の検討:
照射光量が光触媒活性評価に及ぼす影響について検討した。粉体は、アナターゼ型二酸化チタン(TIPAQUE A−100;石原産業社製)および硫酸バリウム(板状硫酸バリウム・HL;堺化学工業社製)を使用した。実施例3と同じ濃度に調整したアスタキサンチン溶液に、これらの粉体を質量比100:2(色素溶液:粉体)で添加し、ペイントシェイカーを用いて10分間分散処理を行った。粉体分散液および粉体を添加しないアスタキサンチン溶液それぞれ10gを、前記直径5cmのポリスチレン製シャーレ(FALCON社製 PRIMARIA Tissue Culture Dish)に入れ、下記条件によって光照射した。光照射後の粉体分散液から遠心分離により粉体を分離し、参考例1と同様にして、アスタキサンチン溶液の極大吸収波長(476nm)における吸光度を測定し褪色率を求めた。結果を表5に示す。
【0043】
<光照射条件>
ソーラシミュレータ:バイオソーラシミュレータ(ワコム電創社製)
使用ランプ:ワコムキセノンショートアークランプ
照射強度:照射面のUV−A強度10.4 mW/cm
(照度計(Honle社UVA−Meter)で測定)
照射時間:1.6分(約1J/cm)、8分(約5J/cm)、16分(約10
J/cm)、40分(約25J/cm)、120分(約75J/cm
【0044】
【表5】

【0045】
照射光量が1J/cmの場合はいずれも褪色率が5%未満と低く、また、75J/cmではアナターゼ型二酸化チタンの褪色が進みすぎてしまうため、試料間の光触媒活性の差が適切に表れない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の粉体の光触媒活性評価法は、簡便な方法によって、油系での粉体の光触媒活性を評価できるものであり、また広範な粉体に対して適用可能なものである。さらには、粉体の表面処理剤のスクリーニングにも利用可能である。したがって、本発明の評価法は、化粧料に用いる粉体の光触媒活性評価法として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体をカロテノイド系色素溶液に分散させて粉体分散液を調製する工程と、該粉体分散液を光照射処理する工程とを含み、光照射処理によるカロテノイド系色素の褪色度合を指標とすることを特徴とする粉体の光触媒活性評価法。
【請求項2】
カロテノイド系色素の褪色度合を、測色値または吸光度により評価するものである請求項1記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項3】
測色に供する試料が、粉体分散液または粉体分散液から粉体を分離したカロテノイド系色素溶液である請求項2記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項4】
測色値が、光照射処理した粉体分散液と光照射未処理の粉体分散液との色差(ΔE)である請求項3記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項5】
吸光度の測定に供する試料が、粉体分散液から粉体を分離しカロテノイド系色素溶液である請求項2記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項6】
吸光度が、カロテノイド系色素の極大吸収波長における吸光度である請求項5記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項7】
粉体を分散させるカロテノイド系色素溶液が、極大吸収波長における吸光度を3.0以上5.0未満に調製されたものである請求項1ないし6の何れかの項に記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項8】
照射光が紫外光である請求項1ないし7の何れかの項に記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項9】
照射光がさらに可視光を含むものである請求項8に記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項10】
照射光の光量が、熱量換算で5J/cm以上50J/cm未満である請求項1ないし9の何れかの項に記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項11】
カロテノイド系色素がアスタキサンチンであることを特徴とする請求項1ないし10の何れかの項に記載の粉体の光触媒活性評価法。
【請求項12】
粉体が疎水性粉体である請求項1ないし11の何れかの項に記載の粉体の光触媒活性評価法。

【公開番号】特開2009−222706(P2009−222706A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17805(P2009−17805)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】