説明

粉体スラリー、その製造方法及びその使用

【課題】新規の構造粘性の水性分散液、特に粉体スラリー−クリヤー塗料を提供する。
【解決手段】本発明の構造粘性の水性分散液においては、脂環式構造単位及びガラス転移温度>15℃を有する少なくとも1つの固体のポリウレタンポリオール(C)と、貯蔵条件及び使用条件下で寸法安定な固体及び/又は高粘性の粒子(A)とを含有し、それらは、連続的な水相(B)中に分散されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の構造粘性の水性分散液に関する。さらに本発明は構造粘性の水性分散液を製造する新規方法に関する。さらに本発明は、移動用手段の車体及びこれらの部材、建築物及びこれらの部材、戸、窓、家具、工業用小部材、機械的構造部材、光学的構造部材及び電子的構造部材、コイル、コンテナ、包装物、ガラス中空体及び日用必需品の塗装、接着及びシーリングのための塗料、接着剤及びシーリング材料としての新規の構造粘性の水性分散液及び新規方法を用いて製造された構造粘性の水性分散液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵条件及び適用条件下で寸法安定な固体及び/又は高粘性の粒子(A)を連続的な水相(B)中に含有する構造粘性の水性分散液は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 27 292 A1又はDE 101 35 997 A1から公知である(これについては特にDE 100 27 292 A1、2頁、段落番号[0013]〜3頁、段落番号[0019]、又はDE 101 35 997、4頁、段落番号[0034]〜[0041]参照)。構造粘性の水性分散液は粉体スラリーとも呼ばれる。これらは、塗料、接着剤及びシーリング材料として、特に塗料として、殊に粉体スラリー−クリヤー塗料として、卓越して使用されることができる。これらは、液体塗料のようにスプレー塗布により塗布されることができる。それに反して生じる層の乾燥挙動及び硬化挙動は粉体塗料層に似ており、すなわち、フィルム化(Verfilmung)及び硬化は2つの離散した段階で行われる。とりわけ、粉体塗料の場合のように塗布、フィルム化及び硬化の際に揮発性有機溶剤は放出されない。手短に言うと、粉体スラリーは液体塗料及び粉体塗料の本質的な利点を一緒にし、このことは粉体スラリーを特に有利なものにする。
【0003】
粉体スラリーは、それらの寸法安定な粒子(B)のガラス転移温度に応じて、粉末状に並びにフィルム化されて予備乾燥することができる。
【0004】
例えば、架橋剤としての紫外線安定なブロック化脂肪族ポリイソシアナートの使用(例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 101 35 997 A1参照)により、寸法安定な粒子(B)のガラス転移温度は低下される。故に当該の粉体スラリーは、時としてもはや粉末状ではなくて、部分的にフィルム化されて予備乾燥する。その結果として、塗布された層中でのポピング限界(Kochergrenze, popping limit)は、利用者により許容される範囲未満に低下させることができる、それというのも比較的僅かな層厚で既に水蒸気泡がフィルム中に閉じ込められることができるからである。硬化、特に熱硬化の際に、そのような場合に閉じ込められた水は遅れて放出され、ついでポピング及び他の表面不整をまねく。しかしながら、これらの粉体スラリーから製造されたクリヤーコートは、かぶり(Weissanlaufen)、すなわち水分での負荷後にクリヤーコートの白色変色に対する高い安定性を有する。
【0005】
予備乾燥の際のフィルム化の問題を回避するために、ブロック化脂肪族ポリイソシアナートの代わりに、寸法安定な粒子のガラス転移温度を高めるブロック化脂環式ポリイソシアナートが使用されることができる(ドイツ連邦共和国特許出願明細書DE 198 41 842 A1参照)。当該の粉体スラリーはついで通例粉末状に乾燥するので、当該の塗布された層の硬化の際のポピングの形成は回避される。しかしながら生じるクリヤーコートは水分での負荷後に時としてかぶりを生じる。
【0006】
双方の問題は、ブロック化された脂肪族及び脂環式のポリイソシアナートがバランスのとれた量比で使用されることによって回避されることができる(ドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 40 223 A1参照)。しかし、当該の粉体スラリーから製造されたクリヤーコートの耐薬品性は、ブロック化脂肪族ポリイソシアナートに対するブロック化脂環式ポリイソシアナートの量比が高められることによってのみ増大されることができる。しかしそうすると、当該の粉体スラリーから製造されたクリヤーコートの場合に再びかぶりが増える結果となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、貯蔵条件及び適用条件下で寸法安定な固体及び/又は高粘性の粒子(A)を連続的な水相(B)中に含有する(粉体スラリー)、新規の構造粘性の水性分散液、特に粉体スラリー−クリヤー塗料を提供することであり、前記塗料は、技術水準の欠点をもはやこれ以上有するのではなく、塗布、予備乾燥及び硬化、特に熱硬化後のコーティング、接着層及びシーリング、特にコーティングが、殊に、表面不整を含まない、特にポピングを含んでおらず、水分での負荷後にかぶりをもはや示さず、かつ高められた耐薬品性を有するクリヤーコートを提供する。新規の構造粘性の水性分散液は、単純な方法で公知の構造粘性の水性分散液をベースとして製造可能であるべきであり、かつ、それ以外の応用技術的な性質に関係することが、これら公知の構造粘性の水性分散液と同等であるか又はこれらをそれどころか上回るべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それに応じて、連続的な水相(B)中に分散されている、貯蔵条件及び適用条件下で寸法安定な固体及び/又は高粘性の粒子(A)を有している新規の構造粘性の水性分散液が見出され、その場合に前記分散液は、脂環式構造単位及びガラス転移温度>15℃を有する少なくとも1つの固体のポリウレタンポリオール(C)を含有する。
【0009】
以下、新規の構造粘性の水性分散液を"本発明による分散液"と呼ぶ。
【発明の効果】
【0010】
技術水準に関連して、本発明の基礎となっていた課題が、本発明による分散液を用いて解決されることができたことは意外であり、かつ当業者には予測できなかった。特に、本発明による分散液が技術水準の欠点をもはやこれ以上有するのではなく、塗布、予備乾燥及び硬化、特に熱硬化後に、コーティング、接着層及びシーリング、特にコーティング、殊に、表面不整を含まない、特にポピングを含んでおらず、水分での負荷後にかぶりをもはや示さず、かつ高められた耐薬品性を有するクリヤーコートを提供したことは意外であった。そのうえ、本発明による分散液は、単純な方法で公知の構造粘性の水性分散液をベースとして製造可能であり、かつ、それ以外の応用技術的な性質に関係したことが、これら公知の構造粘性の水性分散液と同等であるか又はそれどころかこれらを上回っていた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による分散液の本発明に本質的な成分は、脂環式構造単位及びガラス転移温度>15℃、好ましくは>30℃及び特に>40℃を有する、少なくとも1つの、特に1つの、固体の、特に室温(23℃)で固体のポリウレタンポリオール(C)である。
【0012】
固体のポリウレタンポリオール(C)は、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、特に好ましくは少なくとも4個及び殊に少なくとも5個の脂環式構造単位を有する。
【0013】
固体のポリウレタンポリオール(C)は、2個を上回るヒドロキシル基を有していてよい。好ましくは2個のヒドロキシル基を有し、すなわち固体のポリウレタンポリオール(C)はジオールである。これは分枝鎖状、星形、くし形又は線状であってよい。好ましくは線状である。好ましくは前記ヒドロキシル基は末端ヒドロキシル基である。
【0014】
好ましくは、脂環式構造単位は、特に炭素原子〜20個を有する、シクロアルカンジイル−基である。好ましくは、シクロアルカンジイル−基はシクロブタン−1,3−ジイル、シクロペンタン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,3−又は−1,4−ジイル、シクロヘプタン−1,4−ジイル、ノルボルナン−1,4−ジイル、アダマンタン−1,5−ジイル、デカリンジイル、3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン−1,5−ジイル、1−メチルシクロヘキサン−2,6−ジイル、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイル、1,1′−ジシクロヘキサン−4,4′−ジイル又は1,4−ジシクロヘキシルヘキサン−4,4′′−ジイル、特に3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン−1,5−ジイル又はジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイル、からなる群から選択される。
【0015】
固体のポリウレタンポリオール(C)は、三次元ネットワークの成分としてそれらのガラス転移温度Tgを低下させる可とう性にする構造単位を副次的な量で含有していてよい。"副次的な量"は、可とう性にする構造単位が、当該ポリウレタン(C)のガラス転移温度が15℃を下回らない、好ましくは30℃を下回らない及び特に40℃を下回らないで低下するような量で存在していることを意味する。適している可とう性にする構造単位の例はドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 101 29 970 A1、8頁、段落番号[0064]〜9頁、段落番号[0072]から公知である。
【0016】
好ましくは固体のポリウレタンポリオール(C)は芳香族構造単位を本質的に又は完全に含んでいない。"本質的に含んでいない"は、固体のポリウレタンポリオール(C)が、応用技術的な性質に影響を与えない、特にポリウレタンポリオール(C)の紫外線安定性に不利な影響を及ぼさない量で芳香族構造単位を含有することを意味する。
【0017】
好ましくは固体のポリウレタンポリオール(C)は疎水性である、すなわち、無極性有機相及び水相からなる液体の二相系中で水相から離れ、かつ主に有機相中に集まる傾向を有する。故に好ましくは、固体のポリウレタンポリオール(C)は、側部にある親水性官能基、例えば(潜在的に)イオン性の基又はポリ(オキシアルキレン)基も有しないか又は少数のみ有する。
【0018】
固体のポリウレタンポリオール(C)は、ポリウレタン化学の常用かつ公知の方法を用いて製造されることができる。好ましくは、有機溶液中で溶液中でポリイソシアナート、好ましくはジイソシアナート、特に脂環式ジイソシアナート及びポリオール、好ましくはジオール、特に脂環式ジオールから製造される。
【0019】
特に、前記の脂環式構造単位を有する、脂環式ジイソシアナート及び/又は脂環式ジオールが使用される。
【0020】
適している脂環式ジイソシアナートの例は、イソホロンジイソシアナート(=5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン)、5−イソシアナト−1−(2−イソシアナトエト−1−イル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン、5−イソシアナト−1−(3−イソシアナトプロプ−1−イル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン、5−イソシアナト−(4−イソシアナトブト−1−イル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロプ−1−イル)−シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトエト−1−イル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(4−イソシアナトブト−1−イル)−シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナトシクロブタン、1,3−ジイソシアナトシクロブタン、1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン又はジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアナート(H12−MDI)、特にイソホロンジイソシアナート及びH12−MDIである。
【0021】
適している脂環式ジオールの例は、シクロブタン−1,3−ジオール、シクロペンタン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,2−、−1,3−又は−1,4−ジオール、シクロヘプタン−1,4−ジオール、ノルボルナン−1,4−ジオール、アダマンタン−1,5−ジオール、デカリン−ジオール、3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン−1,5−ジオール、1−メチルシクロヘキサン−2,6−ジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジオール、1,1′−ジシクロヘキサン−4,4′−ジオール又は1,4−ジシクロヘキシルヘキサン−4,4′′−ジオール、特に3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン−1,5−ジオール又はジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジオールである。
【0022】
固体のポリウレタンポリオール(C)の製造のためには、さらに、前記の可とう性にする構造単位を有する、脂肪族ポリイソシアナート、特にジイソシアナート及び/又はポリオール、特にジオールが前記の範囲内の副次的な量で使用されることができる。これらは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 101 29 970 A1、9頁、段落番号[0074]、及び10及び11頁にまたがる段落番号[0098]に記載されている。
【0023】
好ましくは、前記有機溶液は、固体のポリウレタン(C)の製造の条件下でポリイソシアナートともポリオールとも反応しない、好ましくは低沸点の、少なくとも1つの不活性有機溶剤を含有する。適している有機溶剤の例は、書籍"Paints, Coatings and Solvents", 完全改訂第二版, D. Stoye及びW. Freitag編, Wiley-VCH, Weinheim, New York, 1998から公知である。
【0024】
ポリイソシアナート、特にジイソシアナートと、ポリオール、特にジオールとのモル比は幅広く変えることができる。本質的であることは、前記ポリオールが過剰量で使用されるので、ヒドロキシル基を末端基とするポリウレタン(C)が形成されることである。好ましくは前記モル比は、ヒドロキシル基とイソシアナート基との比が1.1:1〜2:1、特に1.3:1〜1.6:1であるように選択される。
【0025】
好ましくは、ポリイソシアナート、特にジイソシアナートと、ポリオール、特にジオールとの反応は、常用かつ公知の触媒、特にスズ含有触媒、例えばジブチルスズジラウレートの存在で実施される。
【0026】
固体のポリウレタンポリオール(C)は本発明による分散液中に、その都度本発明による分散液に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%及び特に10〜30質量%の量で含まれている。その場合に、前記ポリウレタンポリオールは別個に分散された相(C)として寸法安定な粒子(A)に加えて存在していてよい。しかしあるいは、固体のポリウレタンポリオール(C)の一部は寸法安定な粒子(A)中に、及び他の部分は別個に分散された相(C)として存在する。好ましくは、固体のポリウレタンポリオール(C)の全量が寸法安定な粒子(A)中に含まれている。
【0027】
本発明による分散液の別の本質的な成分は、貯蔵条件及び適用条件下で寸法安定な固体及び/又は高粘性の粒子(A)であり、これらは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 27 292 A1、2頁、段落番号[0013]〜[0015]に定義されている。
【0028】
好ましくは、これらは本発明による分散液中にその都度本発明による分散液に対して、10〜80質量%、より好ましくは15〜75質量%、特に好ましくは20〜40質量%、及び特に30〜65質量%の量で含まれている。好ましくは、これらは、ドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 27 292 A1、3頁、段落番号[0017]及び[0018]に記載された粒度並びに3頁、段落番号[0019]に記載された溶剤含量を有する。
【0029】
粒子(A)の物質組成は極めて幅広く変えることができ、かつ個々の場合の必要条件に従う。適している物質組成の例は、ドイツ連邦共和国特許出願公開明細書
・DE 196 13 547 A1、1欄50行〜3欄52行;
・DE 198 41 842 A1、3頁45行〜4頁44行;
・DE 199 59 923 A1、4頁37行〜10頁34行及び11頁10〜36行;及び
・DE 100 27 292 A1、6頁、段落番号[056]〜12頁、段落番号[0099]
から公知である。
【0030】
本発明により特に好ましくは使用される寸法安定な粒子(A)は、前記の常用かつ公知の成分に加えて、さらにまた少なくとも1つの、特に1つの、本発明により使用すべき固体のポリウレタン(C)を、好ましくは本発明による分散液の前記の(C)含量が生じるような量で含有する。
【0031】
連続的な水相(B)として、通常、粉体スラリーの製造に使用されるような全ての水相が適している。適している水相(B)の例は、ドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 101 26 649 A1、12頁、段落番号[0099]、それに関連して12頁、段落番号[0110]、〜16頁、段落番号[0146]、又はドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 196 13 547 A1、3欄66行〜4欄45行に記載されている。特に、水相(B)は、ドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 198 41 842 A1、4頁45行〜5頁4行に記載されている増粘剤を含有し、これにより本発明による分散液のそこに説明された構造粘性の挙動が調節されることができる。さらにまた、水相(B)はさらに少なくとも1つの添加剤を含有していてもよく、これは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 27 292 A1、11頁、段落番号[0097]〜12頁、段落番号[0099]に記載されている。
【0032】
方法論的には、本発明による分散液の製造は特殊なことを必要とするのではなくて、技術水準の常用かつ公知の方法を用いて行われることができる。その際に、前記の寸法安定な粒子(A)は連続的な水相(B)中に分散され、その際に固体のポリウレタンポリオール(C)は好ましくは寸法安定な粒子(A)の1つ又は複数のその他の成分と混合され、かつ生じた混合物は水相(B)中に分散される。
【0033】
例えば、本発明による分散液は、寸法安定な粒子(A)の成分から押出し及び粉砕によりまず最初に粉体塗料(A)が製造され、前記粉体塗料が水又は水相(B)中で湿式粉砕されることによって製造されることができ、これは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 196 13 547 A1、DE 196 18 657 A1、DE 198 14 471 A1又はDE 199 20 141 A1に記載されている。
【0034】
本発明による分散液は、粒子(A)の成分並びに水が有機溶剤中に乳化され、それにより水中油型の乳濁液が生じ、その後に該有機溶剤はこれから除去され、それにより乳化された小滴が凝固することによる、いわゆる二次分散法を用いて製造されることもでき、これは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 198 41 842 A1、DE 100 01 442 A1、DE 100 55 464 A1、DE 101 35 997 A1、DE 101 35 998 A1又はDE 101 35 999 A1に記載されている。
【0035】
そのうえ、本発明による分散液は、オレフィン系不飽和モノマーが乳濁液中で重合されることによる、いわゆる一次分散法を用いて製造されることができ、これは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 199 59 923 A1に記載されている。そこに記載された成分に加えて、前記乳濁液は本発明によれば少なくとも1つの前記のポリウレタンポリオール(C)を含有する。
【0036】
さらに、本発明による分散液は、粒子(A)の成分のメルトが乳化装置中へ好ましくは水及び安定剤の添加下に添加され、かつ得られた乳濁液が冷却され、かつろ過されることによる、いわゆるメルト乳化法を用いて製造されることができ、これは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 06 673 A1、DE 101 26 649 A1、DE 101 26 651 A1又はDE 101 26 652 A1に記載されている。
【0037】
特に本発明による分散液は二次分散法により製造される。
【0038】
本発明による分散液は、塗料、接着剤及びシーリング材料として卓越して適している。その際に、これらは、移動用手段の車体及びこれらの部材、建築物及びこれらの部材、戸、窓、家具、工業用小部材、機械的構造部材、光学的構造部材及び電子的構造部材、コイル、コンテナ、包装物、ガラス中空体及び日用必需品の塗装、接着及びシーリングのために卓越して適している。
【0039】
好ましくは、これらは、塗料として、特に好ましくは粉体スラリー−クリヤー塗料として使用される。特に、これらは、特にウェット・オン・ウェット−法による、色及び/又は効果を与える複層塗膜の範囲内でのクリヤーコートの製造に適しており、これは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 27 292 A1、13頁、段落番号[0109]〜14頁、段落番号[0118]に記載されている。
【0040】
常用かつ公知の粉体スラリーのように、本発明による分散液も常用かつ公知のスプレー塗布方法を用いて当該の基体上に塗布されることができ、これは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 27 292 A1、14頁、段落番号[0121]〜[0126]に記載されている。
【0041】
その都度使用される硬化法は、本発明による分散液の物質組成に従い、かつ例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 27 292 A1、14頁、段落番号[0128]〜15頁、段落番号[0136]に記載されるようにして、実施されることができる。
【0042】
全ての使用の際に、塗布された本発明による分散液は、それらの硬化後に、厚い層厚の場合にも表面不整、特にポピングを有さず、水分での負荷後にかぶりをもはや示さず、かつ卓越した耐薬品性を有するコーティング、接着層及びシーリングを提供する。さらにまた、前記のコーティング、接着層及びシーリングは、完全に問題なく上塗りされることができ、このことは例えば自動車補修塗装にとって特に重要である。
【0043】
実施例
例及び比較試験
製造例1
溶液ポリアクリレート樹脂の製造
メチルエチルケトン(MEK)442.84部を反応容器中に投入し、80℃に加熱した。投入物に80℃で4hかけて2つの別個の供給容器を経てTBPEH(t−ブチルペルエチルヘキサノエート)47.6部及びMEK33.5部からなる開始剤及びt−ブチルアクリレート183.26部、n−ブチルメタクリレート71.4部、シクロヘキシルメタクリレート95.2部、ヒドロキシエチルメタクリレート121.38部及びアクリル酸4.76部からなるモノマー混合物を計量供給した。さらに反応混合物を80℃でさらに1.5h保持した。引き続いて真空中で、500mbarで5hに亘り揮発性成分の一部を反応混合物から、固形分が70質量%になるまで除去した。その後50℃に冷却し、樹脂溶液を排出した。
【0044】
前記樹脂溶液は次の特有値を有していた:
固形物:70.2%(130℃で1h)
粘度:4.8dPas(プレート−コーン−粘度計、23℃で;55%濃度溶液、キシレンで希釈)
酸価:43.4mgKOH/g固体樹脂。
【0045】
製造例2
架橋剤としてのブロック化脂環式ポリイソシアナートの製造
イソホロンジイソシアナート837部を適当な反応容器中に投入し、ジブチルスズジラウレート0.1部と混合した。ついでトリメチロールプロパン168部及びメチルエチルケトン431部からなる溶液をゆっくりと供給した。発熱反応により温度は上昇した。80℃に達した後に温度を外部冷却により一定に保持し、かつ供給を場合により軽く絞った。供給の終了後にさらに、固形物のイソシアナート含量が15.7%(NCO基に対して)に達するまでこの温度に約1時間保持した。引き続いて反応混合物を40℃に冷却し、かつメチルエチルケトン155部中の3,5−ジメチルピラゾール362部の溶液を30分間かけて添加した。反応混合物が発熱によって80℃に加熱された後に、NCO−含量が0.1%より小さく低下するまで温度を30分間一定に保持した。ついでn−ブタノール47部を反応混合物に添加し、80℃でさらに30分間保持し、かつこれを短く冷却した後に排出した。
【0046】
反応生成物は69.3%の固形分(130℃で1h)を有していた。
【0047】
製造例3
架橋剤としてのブロック化脂肪族ポリイソシアナートの製造
Desmodur(登録商標) N 3300(Bayer AG社のヘキサメチレンジイソシアナートの市販の三量体)534部及びMEK200部を投入し、40℃に加熱した。引き続いて、冷却しながら3,5−ジメチルピラゾール100部を添加し、その後、発熱反応が始まった。発熱がおさまった後に、冷却しながら3,5−ジメチルピラゾールさらに100部を添加した。発熱が新たにおさまった後に、さらに3,5−ジメチルピラゾールさらに66部を添加した。引き続いて冷却をゆっくりと停止し、そのうえで反応混合物をゆっくりと80℃に加熱した。反応混合物を、そのイソシアナート含量が<0.1%に低下するまでこの温度で保持した。引き続いて該反応生成物を冷却し、かつ排出した。
【0048】
ブロック化ポリイソシアナートは、80質量%の固形分(130℃で1h)及び3.4dPasの粘度(MEK中70%;プレート−コーン−粘度計、23℃で)を有していた。
【0049】
製造例4〜9
ポリウレタンジオール(C1)〜(C6)の製造
ポリウレタンジオール(C1)(製造例4)〜(C6)(製造例9)を次の一般的な規定に従い製造した。
【0050】
ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート及び少なくとも1つのジオールを、不活性ガス下に所望のモル比でメチルエチルケトン中に溶解させた結果、65〜70質量%の溶液の固形分が生じた。ジブチルスズジラウレートを固形物に対して0.07質量%の量で添加した。反応混合物を、遊離イソシアナート基含量が検出限界未満に低下するまで撹拌しながら還流で加熱した。第1表は、使用された出発製品及びそれらの量の概要を与える。
【0051】
ガラス転移温度の決定のために、固体のポリウレタンポリオール(C1)〜(C6)を単離した。ガラス転移温度は示差熱分析(DSC)を用いて決定した。これらは同様に第1表に見出される。
第1表:ポリウレタンポリオール(C1)〜(C6)の製造及びそれらのガラス転移温度
【0052】
【表1】

H12−MDI: ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート;
DEOD: ジエチルオクタン−1,5−ジオール;
CHDM: シクロヘキシルジメタノール;
12−HSA: 12−ヒドロキシステアリルアルコール。
【0053】
例1〜6及び比較試験V1
粉体クリヤー塗料の製造
比較試験V1:
比較試験V1を、ドイツ連邦共和国特許出願公開明細書DE 100 40 223 A1、例1、8頁、段落番号[0103]〜9頁、段落番号[0104]に記載されたようにして実施した:
製造例1による結合剤溶液321.4部、製造例2(ベース:イソホロンジイソシアナート)による架橋剤溶液57.9部及び製造例3(ベース:ヘキサメチレンジイソシアナート)による架橋剤溶液120.7部を、室温で開放撹拌容器中で15分間、撹拌しながら混合した。ついでCyagard(登録商標) 1164 (Cytec社のUV−吸収体) 7.2部、Tinuvin(登録商標) fluessig 123 (Ciba Geigy社の立体障害性アミン"HALS")2.2部、N,N−ジメチルエタノールアミン3部、ベンゾイン1.8部及びジブチルスズジラウレート0.6部を添加し、室温でさらに2h撹拌した。ついで混合物を脱イオン水225.7部で少量ずつ希釈した。15分間の一時休止後に、脱イオン水さらに260部を添加した。37%の理論上の固形分を有する乳濁液が形成された。
【0054】
前記乳濁液を脱イオン水283部で希釈し、ロータリーエバポレーターを用い真空下に、揮発性有機溶剤及び水からなる混合物の同じ量を、固形分が再び37質量%になるまで(130℃で1h)除去し、それによりスラリーが生じた。
【0055】
所望の粘度挙動に調節するために、前記スラリー1,000部にAcrysol(登録商標) RM-8W(Rohm & Haas社の市販の増粘剤) 22.6部及びViscalex(登録商標)HV 30 (Allied Colloids社の市販の増粘剤) 6.5部を添加した。生じた粉末クリヤー塗料−スラリーは次の特有値を有していた:
固形物(130℃で1h):36.6%
粒度:6.4μm(D.50;Malvern社のレーザー回折測定装置)
粘度挙動:
10s−1のせん断速度で1,920mPas
100s−1のせん断速度で760mPas
1000s−1のせん断速度で230mPas。
【0056】
例1〜6:
例1〜6については、比較試験V1を繰り返したが、但し、各例の場合に、固形物に対して、その都度20質量%に相当する、94.3質量部の、ポリウレタンポリオール(C)のその都度1つを添加した。その場合に、
・例1の場合に製造例4のポリウレタンポリオール(C1)を、
・例2の場合に製造例5のポリウレタンポリオール(C2)を、
・例3の場合に製造例6のポリウレタンポリオール(C3)を、
・例4の場合に製造例7のポリウレタンポリオール(C4)を、
・例5の場合に製造例8のポリウレタンポリオール(C5)を、及び
・例6の場合に製造例9のポリウレタンポリオール(C6)を
添加した。比較試験V1の粉体スラリー−クリヤー塗料の場合と同じ固形分、同じ粒度及び同じ粘度挙動が生じるそのような量の水及び増粘剤をその都度添加した。
【0057】
例1〜6及び比較試験V1の粉体スラリー−クリヤー塗料は貯蔵安定であった;場合により生じるごく僅かな量の沈降物は極めて容易に再撹拌されることができた。そのうえ、これらは問題なくスプレー塗布により加工することができ、基体上でフィルム化することなく乾燥した。
【0058】
例7〜12及び比較試験V2
例1〜6及び比較試験V1の粉体スラリー−クリヤー塗料からのクリヤーコートの製造
粉体スラリー−クリヤー塗料の塗布のために、いわゆる集積された構造を準備した。そのために、市販の電着塗料でカソード被覆された鋼板上に、カップガンを用いてまず最初に機能層(Ecoprime(登録商標) Meteorgrau;BASF Coatings AG)を塗布した。室温で5分間の排気(Ablueften)後に、この層上に同じようにしてBASF Coatings AGの黒色の水性ベース塗料を塗布し、引き続いて80℃で5分間予備乾燥させた。鋼板の冷却後に、同じようにして粉体スラリー−クリヤー塗料を塗布した。この後、鋼板をまず最初に5分間排気し、引き続いて40℃で15分間予備乾燥させた。粉体スラリー−クリヤー塗料層は粉末状で乾燥し、フィルム化しなかった。ついでこれらを145℃で30分間焼き付けた。
【0059】
その際に、
・例7の場合に例1の粉体スラリー−クリヤー塗料を、
・例8の場合に例2の粉体スラリー−クリヤー塗料を、
・例9の場合に例3の粉体スラリー−クリヤー塗料を、
・例10の場合に例4の粉体スラリー−クリヤー塗料を、
・例11の場合に例5の粉体スラリー−クリヤー塗料を、
・例12の場合に例6の粉体スラリー−クリヤー塗料を及び
・比較試験V2の場合に比較試験V1の粉体スラリー−クリヤー塗料を
使用した。
【0060】
色調が黒である複層塗膜が生じた。塗布されたウェット層は、焼付け後に機能層及びベースコートの乾燥塗膜の厚さがその都度15μmになるように選択していた。クリヤーコートは44〜48μmの層厚を有していた。
【0061】
第2表は、実施された試験及びその際に得られた結果の概要を与える。
第2表:例7〜12及び比較試験V2のクリヤーコートの応用技術的な性質
【0062】
【表2】

a) 測定装置、製造者Byk社;
b) b.=輝きのある(brillant);gl.=光沢のある(glaenzend);
c) 評点1=極めて良好;評点2=良好;
d) k.=なし(keine);
e) k.=なし(kein);
f) 勾配炉、製造者Byk社を用いて測定。この数値は下方の温度を示し、この温度からクリヤーコート上に施与された対応する物質の液滴が目に見える痕跡を残す。
【0063】
表中にまとめられた結果は、光学的な全体の印象及びかぶりに対する抵抗性が減少されることなく、−既に極めて高い水準から出発して−技術水準のクリヤーコートの耐薬品性をさらに上昇されることができたという根拠を固めている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的な水相(B)中に分散されており、貯蔵条件及び適用条件下で寸法安定な固体及び/又は高粘性の粒子(A)を含有している構造粘性の水性分散液において、前記分散液が脂環式構造単位及びガラス転移温度>15℃を有する少なくとも1つの固体のポリウレタンポリオール(C)を含有することを特徴とする、構造粘性の水性分散液。
【請求項2】
固体のポリウレタンポリオール(C)がガラス転移温度>30℃を有する、請求項1記載の構造粘性の水性分散液。
【請求項3】
固体のポリウレタンポリオール(C)がジオールである、請求項1又は2記載の構造粘性の水性分散液。
【請求項4】
固体のポリウレタンポリオール(C)が線状である、請求項1から3までのいずれか1項記載の構造粘性の水性分散液。
【請求項5】
脂環式構造単位が炭素原子3〜20個を有するシクロアルカンジイル−基である、請求項1から4までのいずれか1項記載の構造粘性の水性分散液。
【請求項6】
シクロアルカンジイル−基が、シクロブタン−1,3−ジイル、シクロペンタン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,3−又は−1,4−ジイル、シクロヘプタン−1,4−ジイル、ノルボルナン−1,4−ジイル、アダマンタン−1,5−ジイル、デカリン−ジイル、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,5−ジイル、1−メチルシクロヘキサン−2,6−ジイル、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイル、1,1′−ジシクロヘキサン−4,4′−ジイル又は1,4−ジシクロヘキシルヘキサン−4,4′′−ジイル、特に3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,5−ジイル又はジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイルからなる群から選択されている、請求項5記載の構造粘性の水性分散液。
【請求項7】
固体のポリウレタンポリオール(C)が芳香族構造単位を本質的に又は完全に含んでいない、請求項1から6までのいずれか1項記載の構造粘性の水性分散液。
【請求項8】
固体のポリウレタンポリオール(C)を、分散液の固形物に対して、1〜50質量%の量で含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の構造粘性の水性分散液。
【請求項9】
固体のポリウレタンポリオール(C)が寸法安定な粒子(A)中に存在している、請求項1から8までのいずれか1項記載の構造粘性の水性分散液。
【請求項10】
連続的な水相(B)中に貯蔵条件及び適用条件下で寸法安定な固体及び/又は高粘性の粒子(A)を分散させることにより請求項1から9までのいずれか1項記載の構造粘性の水性分散液を製造する方法において、固体のポリウレタンポリオール(C)を寸法安定な粒子(A)の1つ又は複数のその他の成分と混合し、生じた混合物を水相(B)中に分散させることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の構造粘性の水性分散液を製造する方法。
【請求項11】
塗料、接着剤及びシーリング材料としての、請求項1から9までのいずれか1項記載の構造粘性の水性分散液及び請求項10記載の方法を用いて製造された構造粘性の水性分散液の使用。
【請求項12】
塗料、接着剤及びシーリング材料を、移動用手段の車体及びこれらの部材、建築物及びこれらの部材、戸、窓、家具、工業用小部材、機械的構造部材、光学的構造部材及び電子的構造部材、コイル、コンテナ、包装物、ガラス中空体及び日用必需品の塗装、接着及びシーリングに利用する、請求項11記載の使用。

【公開番号】特開2011−174089(P2011−174089A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121019(P2011−121019)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2006−540440(P2006−540440)の分割
【原出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】