説明

粉体充填装置および粉体充填方法

【課題】比較的簡易な機構で、容器内に粉体を充填する作業の効率化を図る。
【解決手段】オーガー3は、ホッパー2内に収容された粉体を吐出口3bに導いて、この吐出口3bより粉体を吐出することによって、容器7内に粉体を加圧しながら充填する。多孔質部材4は、オーガー3によって容器7内に粉体を充填する際、自己の弾性変形によって容器7の上部と密着するように、吐出口3bの全周に亘って設けられているとともに、容器7内における加圧された粉体より分離したエアを排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に粉体を充填する粉体充填装置および粉体充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器内に粉体を高密度化しながら充填する充填手法が知られている。例えば、特許文献1には、電子トナー、樹脂ビーズ、カーボン等の粉体を容器に充填する際、搬送配管の途中で粉体を高密度化する手法が開示されている。具体的には、ホッパー内の粉体にエアを導入して、粉体の流動性を高めた上で、搬送配管に粉体を供給する。搬送配管によって粉体を搬送する際、その途中で粉体中のエアが排出され、粉体が圧縮される。粉体の圧縮は、機械的な圧力または重力を用いて行われる。そして、圧縮された粉体が容器内に吐出され、これによって、容器内に粉体が高密度で充填される。また、特許文献2には、トナー、薬品、化粧品、食料品等の粉体を容器に充填する際、容器内で粉体を高密度化する手法が開示されている。この手法では、ホッパー内で攪拌された粉体は、粉体供給口より容器内にそのまま吐出されるが、この容器内には、粉体から分離したエアを排出するための排出管が別途挿入されている。そして、この排出管の先端には、吸引力によって粉体中のエアを分離するために、目の細かなメッシュ状のフィルタが設けられている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−193902号公報
【特許文献2】特開2002−347701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1,2のいずれも、容器内に粉体を充填する充填装置が複雑になるという不都合がある。なぜなら、特許文献1では、搬送配管自体に分離したエアを排出する排出管を別途設けなければならず、また、特許文献2では、容器内に挿入される排出管を別途設けなければならないからからである。
【0005】
そこで、本発明の目的は、比較的簡易な機構で、容器内に粉体を充填する作業の効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、ホッパーと、オーガーと、弾力性を有する多孔質部材とを有し、容器内に粉体を充填する粉体充填装置を提供する。ホッパーは、粉体を収容する。オーガーは、ホッパー内に収容された粉体を吐出口に導いて、この吐出口より粉体を吐出することによって、容器内に粉体を充填する。多孔質部材は、オーガーによって容器内に粉体を充填する際、自己の弾性変形によって容器の上部と密着するように、吐出口の全周に亘って設けられているとともに、容器内における加圧された粉体より分離したエアを排出する。
【0007】
ここで、第1の発明において、吐出口に対して、容器を相対変位させる昇降機構をさらに設けてもよい。
【0008】
第2の発明は、容器内に粉体を充填する粉体充填方法を提供する。この粉体充填方法は、粉体を吐出する吐出口と対向するように、容器をセットする第1のステップと、吐出口に対して容器を相対変位させることによって、吐出口の全周に亘って設けられた多孔質部材を、その弾性変形によって、容器の上部に密着させる第2のステップと、
吐出口より粉体を吐出することによって、容器内に粉体を充填するとともに、容器内における加圧された粉体より分離したエアを多孔質部材を介して排出する第3のステップと、容器の上部に密着した多孔質部材を容器の上部から離間させる第4のステップとを有する。
【0009】
ここで、第2の発明において、容器に振動を与えて、容器内に充填された粉体の表面を平滑化する第5のステップをさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
第1および第2の発明によれば、吐出口の全周に亘って設けられた多孔質部材が弾性変形して、容器の上部と密着している状態において、容器内に粉体が充填される。その際、容器内の粉体が加圧されて、粉体に含まれているエアが分離し、多孔質部材を介して容器外に排出されるので、粉体の充填密度が高まる。その結果、容器内への粉体の充填工程を比較的簡易な機構で自動化でき、作業効率の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、容器内に充填すべき対象物として、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった粉体固形化粧料の粉体を一例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、容器内に充填すべき各種の粉体に対して、広く適用可能である。
【0012】
図1は、粉体充填装置の構成図である。この粉体充填装置は、ホッパー2と、オーガー3と、多孔質部材4と、テーブル5と、昇降機構6とを主体に構成されており、ホッパー2内に収容された粉体を容器7(化粧料容器)に充填する。テーブル5上の置かれた容器7の略中央には、粉体を充填するための収容スペースが形成されている。
【0013】
オーガー3は、図示しない動力源(モータ等)によってスクリュー3a(図3を参照)を回転させ、ホッパー2内に収容された粉体を下方の吐出口3bへと導く。吐出口3bに導かれた粉体は、スクリュー3aの回転に応じた速さで下方に吐出される。後述するように、吐出口3bの近傍には、例えばスポンジ等のように、弾性変形が可能な程度の弾力性を有し、かつ、多数の微小孔が形成された多孔質部材4が取り付けられている。昇降機構6は、テーブル5上に置かれた容器7を昇降させることによって、吐出口3bに対して、容器7を上下に相対変位させる。具体的には、容器7内に粉体を充填する場合には、テーブル5を上昇させるとともに、それ以外の場合には、テーブル5を下降させる。なお、吐出口3bに対する容器7の相対変位は、テーブル5の昇降ではなく、オーガー3の昇降によって行ってもよい。
【0014】
図2は、粉体充填装置1の吐出口3b近傍の要部斜視図である。オーガー3の下端3cは、水平方向に平面状に拡がっており、その下面には、多孔質部材4が設けられている。この多孔質部材4は、下端3cの中央に位置する注出口3bを塞がないように、注出口3bの全周に亘って設けられている。多孔質部材4は、粉体の充填対象となる容器7と当接した際、自己が十分に弾性変形できるような十分な厚み(一定)を有するとともに、容器7の上部形状に応じた形状を有する。本実施形態では、上部が開口した略円柱状の容器7を想定しているので、略ドーナツ状の多孔質部材4が用いられる。多孔質部材4は、オーガー3によって容器7内に粉体を充填する際、自己の弾性変形によって、容器7の上部と密着する。
【0015】
つぎに、上述した粉体充填装置1を用いて、容器7内に粉体を充填する工程を、図3から図6を参照しつつ説明する。まず、図3に示すように、粉体を吐出する吐出口3bと対向するように、下降したテーブル5の上に容器7をセットする。
【0016】
つぎに、図4に示すように、容器7の上部が多孔質部材4を部分的に押し潰すまで、換言すれば、多孔質部材4が弾性変形して容器7の上部と密着するまで、テーブル5を上昇させる。テーブル5を上昇させた状態では、容器7の上部と、オーガー3の下端3cとが離れているが、この隙間に介在する多孔質部材4の弾性変形によって、この隙間は十分に塞がれる。ただし、多孔質部材4は、その材質上の特性(内部に存在する多数の微小孔)によって、粉体の通過のみを規制するフィルタとしての機能を担っている。したがって、容器7の上部と密着した状態であっても、エアは、多孔質部材4内を通過することが可能である。そして、テーブル5を上昇させた状態において、スクリュー3aを回転させる。これによって、ホッパー2内の粉体は下方へと導かれ、吐出口3bより粉体が吐出され、容器7内に所定量の粉体が充填される。
【0017】
ここで、粉体の充填量は、容器7の収容スペースの容積よりも大きく設定されている。したがって、図5に示すように、充填の後半では、スクリュー3aの高速回転に起因した粉体の過剰かつ強制的な供給によって、容器7内の粉体が下方に加圧(プレス)される。この加圧によって、粉体中に含まれているエアが粉体より分離する。分離したエアは、オーガー3の下端3cと容器7の上部との間に介在する弾性変形した多孔質部材4を通じて、容器7外へと排出される。
【0018】
そして、図6に示すように、所定量の粉体の充填が完了した時点で、スクリュー3aの回転を停止させる。その後、テーブル5を下降させて、多孔質部材4を容器7の上部から離間させる。これによって、容器7内への粉体の充填工程が完了する。なお、この状態において、容器7内に充填された粉体の表面は、平坦ではなく、吐出口3bの窪みに対応して、中央部分が凸状に盛り上がっている。そこで、次のプレス工程に先立ち、容器7に振動を与えて、容器7内に充填された粉体の表面を平滑化しておくことが好ましい。
【0019】
このように、本実施形態によれば、吐出口3bの全周に亘って設けられた多孔質部材4が弾性変形して、容器7の上部と密着している状態において、容器7内に粉体が充填される。その際、スクリュー3aの回転力によって、容器7内の粉体が加圧されて、粉体に含まれているエアが分離するとともに、分離したエアが多孔質部材4を介して容器7外に排出されるので、粉体の充填密度が高まる。その結果、容器7内への粉体の充填工程を比較的簡易な機構で自動化でき、作業効率の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】粉体充填装置の構成図
【図2】粉体充填装置の吐出口近傍の要部斜視図
【図3】充填工程の説明図
【図4】充填工程の説明図
【図5】加圧によるエア排出の説明図
【図6】充填工程の説明図
【符号の説明】
【0021】
1 粉体充填装置
2 ホッパー
3 オーガー
3a スクリュー
3b 吐出口
3c 下端
4 多孔質部材
5 テーブル
6 昇降機構
7 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に粉体を充填する粉体充填装置において、
粉体を収容するホッパーと、
前記ホッパー内に収容された粉体を吐出口に導いて、当該吐出口より粉体を吐出することによって、前記容器内に粉体を充填するオーガーと、
前記オーガーによって前記容器内に粉体を充填する際、自己の弾性変形によって前記容器の上部と密着するように、前記吐出口の全周に亘って設けられているとともに、前記容器内における加圧された粉体より分離したエアを排出する多孔質部材と
を有することを特徴とする粉体充填装置。
【請求項2】
前記吐出口に対して、前記容器を相対変位させる昇降機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載された粉体充填装置。
【請求項3】
容器内に粉体を充填する粉体充填方法において、
粉体を吐出する吐出口と対向するように、前記容器をセットする第1のステップと、
前記吐出口の全周に亘って設けらた多孔質部材を、当該多孔質部材の弾性変形によって、前記容器の上部に密着させる第2のステップと、
前記吐出口より粉体を吐出することによって、前記容器内に粉体を充填するとともに、前記容器内における加圧された粉体より分離したエアを前記多孔質部材を介して排出する第3のステップと、
前記容器の上部に密着した前記多孔質部材を前記容器の上部から離間させる第4のステップと
を有することを特徴とする粉体充填方法。
【請求項4】
前記容器に振動を与えて、前記容器内に充填された粉体の表面を平滑化する第5のステップをさらに有することを特徴とする請求項3に記載された粉体充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−269654(P2009−269654A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122346(P2008−122346)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】