説明

粉体充填装置および粉体充填方法

【課題】ホッパーの吐出口と容器との間の間隔を広げなくても綺麗なグラデーションの形成を可能にする。
【解決手段】ホッパー2内の仕切り板2aを吐出口まで延在させるのではなく、その途中までに留める。これにより、仕切り板2aの下端と吐出口との間に形成された下部空間2b内において、色調が互いに異なる複数種の粉体は、その混ざり合いが規制されることなく落下する。そして、規制なく落下した粉体は、振動する格子板2cによって更に水平方向に拡散されて吐出口から吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体充填装置および粉体充填方法に係り、特に、容器内に充填される粉体表面のグラデーション表現に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、容器内に充填される粉体表面にグラデーション、すなわち、色調(濃淡を含む)が滑らかに変化する連続模様を形成するための化粧料の製造方法が開示されている。この製造方法では、図8に示すようなホッパーが用いられる。ホッパー10の内部には、複数の仕切り板11(隔壁)が設けられている。それぞれの仕切り板11は、化粧料(粉体)の投入口となるホッパー10の上端から化粧料の吐出口となるホッパー10の下端に至るまで延在している。色調の異なる複数種の化粧料13は、仕切り板11によって区切られた室12内にそれぞれが収容され、互いに完全に分離された状態になっている。また、ホッパー10には、2つの網体14,15が配置されており、前者はホッパー10の内部に、後者は下端の吐出口にそれぞれ取り付けられている。ホッパー10を振動させて化粧料を吐出する際、吐出口より落下する化粧料は、ホッパー10と共に振動する網体14と接触して水平方向に拡散する。これにより、区分された状態で吐出された複数種の化粧料は、吐出口と対向して配置された容器20に落下する過程(大気中)で互いの境界が混ざり合い、グラデーションを形成しながら容器20内に充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−97208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術によれば、複数種の化粧料の混合をホッパー10外の大気中で行うため、ホッパー10の吐出口と容器20との間の間隔を十分に広げなければ、綺麗なグラデーションを形成できないという問題がある。両者の間隔を広げると、化粧料が容器20の外にこぼれ易くなる他、不安定な大気による外乱の影響(例えば風等)を受け易くなる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホッパーの吐出口と容器との間の間隔を広げなくても、綺麗なグラデーションの形成を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、色調が異なる複数種の粉体を容器内に充填する粉体充填装置を提供する。この粉体充填装置は、水平方向に往復動させることが可能なホッパーと、ホッパーを振動させるバイブレータと、ホッパー下端の吐出口に取り付けられた格子板とを有する。ホッパーは、吐出口に至る途中まで延在する少なくとも一つの仕切り板を有する。複数種の粉体は、仕切り板によって仕切られた複数の区画内にそれぞれ収容される。これらの粉体は、吐出口から吐出され、これによって、吐出口と対向して配置された容器内に複数種の粉体が充填される。格子板は、仕切り板の下端と間隔を空けて吐出口に取り付けられており、ホッパーと共に振動することによって、吐出口から吐出される複数種の粉体を水平方向に拡散させる。
【0007】
ここで、第1の発明において、仕切り板の下端は、水平方向に凹凸状に隆起した形状を有していてもよく、また、下方に向かって鋸歯状に隆起した形状を有していてもよい。
【0008】
第1の発明において、吹出し口からのエアの噴出によって、複数の区画内のそれぞれに収容された複数種の粉体の落下を補助するエア供給管をさらに有していてもよい。
【0009】
第2の発明は、色調が異なる複数種の粉体を容器内に充填する粉体充填方法を提供する。この粉体充填方法は、ホッパーの下端に設けられた吐出口に至る途中まで延在する少なくとも一つの仕切り板によって仕切られた複数の区画内に、複数種の粉体のそれぞれを投入するステップと、吐出口からの吐出に伴いホッパー内で生じる複数種の粉体の落下によって、複数の区画内にそれぞれが収容された複数種の粉体を、仕切り板によって仕切られていないホッパーの下部空間内に導くステップと、下部空間の下方に位置する吐出口に取り付けられた格子板を振動させることによって、吐出口から吐出される複数種の粉体を水平方向に拡散させるステップと、水平方向に拡散された複数種の粉体を、吐出口と対向して配置された容器内に充填するステップとを有する。
【0010】
ここで、第2の発明において、エアの噴出によって、複数の区画内のそれぞれに収容された複数種の粉体の落下を補助するステップをさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0011】
第1および第2の発明によれば、ホッパー内の仕切り板を吐出口まで延在させるのではなく、その途中までに留める。これにより、仕切り板の下端と吐出口との間に形成された内部空間内において、複数種の粉体は、その混ざり合いが仕切り板によって規制されることなく、バイブレータによる振動によって境界部分が混合されながら落下する。そして、落下した粉体は、バイブレータによって振動する格子板によって更に水平方向に拡散されて吐出口から吐出される。これにより、吐出口と容器との間の間隔をそれほど広げなくても、容器内に充填される粉体表面のグラデーションを綺麗に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】粉体充填装置の側面図である。
【図2】第1の実施形態に係るホッパーの断面図である。
【図3】仕切り板の下端形状の一例を示す図である。
【図4】仕切り板の下端形状の他の例を示す図である。
【図5】粉体充填工程の説明図である。
【図6】粉体充填工程の説明図である。
【図7】第2の実施形態に係るホッパーの断面図である。
【図8】従来のホッパーの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るグラデーション形成用の粉体充填装置の側面図である。この粉体充填装置1は、ホッパー2と、バイブレータ3と、架台4と、スプリング5とを主体に構成されている。ホッパー2は、グラデーションを形成するために必要な複数種の粉体が収容され、粉体の投入口が上端に、粉体の吐出口が下端にそれぞれ設けられている。これらの粉体は、互いの色調が異なっており、例えば、白色からピンク色に至るグラデーションを形成する場合には白色、ピンク掛かった白色、淡いピンク色、ピンク色といった如くである。また、本実施形態では、ホッパー2内に収容される粉体として、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった粉体固形化粧料の粉体を想定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、グラデーション付で容器内に充填すべき各種の粉体に対して広く適用可能である。
【0014】
ホッパー2の側面には、少なくとも水平方向にホッパー2を振動させるバイブレータ3が取り付けられている。バイブレータ3は、水平方向にのみ振動するピストン式であってもよいし、水平方向および垂直方向に回転するベアリング式であってもよい。バイブレータ3の振動量や振動幅は、バイブレータ3の種類、および、実験やシミュレーションを通じて得られたグラデーションに関する実験結果等に応じて適切に設定されている他、必要に応じて変更することができるようになっている。ホッパー2は、バイブレータ3の装着によって振動の発生源となるため、振動伝達を抑制すべく、防振部材として機能するスプリング4を介して架台5に懸架されている。また、ホッパー2は、図示しないスライド機構によって、水平方向に往復動させることができる。この往復動回数は、例えば、1サンプルあたり1〜10回の範囲で任意に設定可能である。
【0015】
図2は、ホッパー2の断面図であり、図1の側面図を左右方向から見たものである。このホッパー2の内側面には、仕切り板2aを差し込むための筋状の溝が複数箇所に設けられており、少なくとも一つの仕切り板2aを任意の溝に差し込むことによって、互いに区分された複数の区画がホッパー2内に形成される。仕切り板2aの高さや幅は任意に選択でき、本実施形態では、高さについては0〜20mmの範囲で上下させることができ、幅については中心から4mm幅、6mm幅、8mm幅のいずれかを選択できるようになっている。仕切り板2aの個数および差込位置は、グラデーションの形成に必要な粉体の色調数に応じて適宜決定される。
【0016】
それぞれの仕切り板2aは、ホッパー2の上方から下端の吐出口に向かって延在しているが、吐出口そのものまで延在するのではなく、そこに至る途中で途切れている。これにより、仕切り板2aの下端と吐出口との間には、仕切り板2aによって仕切られていない下部空間2bが形成されることになる。ホッパー2内において互いに隣り合った粉体は、仕切り板2aによって仕切られた区画内に留まる限り、その混ざり合いが仕切り板2aによって規制される。しかしながら、吐出口からの吐出に伴いホッパー2内の粉体が落下して、下部空間2b内に導かれると、仕切り板2aによる規制がなくなるため、隣り合った粉体同士の混ざり合いが許容されることになる。なお、仕切り板2aの下端はストレート状であってもよいが、より綺麗なグラデーションの形成を可能にすべく、例えば図3に示すように、下端に複数の切り込みを入れることによって、水平方向に凹凸状に交互に隆起させた形状にしてもよい。また、図4に示すように、仕切り板2aの下端形状を下方に向かって鋸歯状に隆起させた形状にしてもよい。この場合、ホッパー2の往復動とバイブレータ3の振動とが相俟って、仕切り板2aの下端の隙間(凹部)を粉体が通り、隣接した粉体同士の混合が生じる。
【0017】
ホッパー2の吐出口には、そこから同時に吐出される複数種の粉体を水平方向に拡散させるために、開口した格子が多数並んだ格子板2cが開口全体に亘って取り付けられている。この格子板2cは、例えば1〜10メッシュ(メッシュとは1インチの間にある目数のこと)であってもよく、その見開き(網目の内寸)は、例えば25.4〜2mmであってもよい。例えば、粉体が水分や油分を多く含み、しっとりした感触のものである場合には目の粗い格子板2cを用いることが好ましい。このように、格子板のメッシュや見開きは、粉体の処方等によって適宜設定すればよい。格子板2cは、下部空間2bが介在することから明らかなように、仕切り板2cと間隔を空けて設けられている。本実施形態では、格子板2cとして金網を用いている。また、格子板2cは、ホッパー2に取り付けられたバイブレータ3によって、ホッパー2と共に振動する。以上のような構成を有する粉体充填装置1は、仕切り板2aによって仕切られた複数の区画内にそれぞれが収容された複数種の粉体を吐出口から同時に吐出することによって、吐出口と対向して配置された容器内に複数種の粉体を一括で充填する。
【0018】
つぎに、図5および図6を参照しつつ、上述した粉体充填装置1を用いて、複数種の化粧料の粉体から粉末固形化粧料を製造する方法を説明する。まず、図5に示すように、金型6に設けられた収容スペース内に容器7(化粧皿)をセットする。なお、容器7の上端は、金型6の上面よりも低くなっているが、このようにする理由は、後工程の打型時に充填物の圧縮による減少分を見越しているからであり、グラデーション形成を意図したものでない点に留意されたい(減少分を考慮しないのであれば、このようにする必要はない)。
【0019】
つぎに、図6に示すように、容器7がセットされた金型6をホッパー2の直下にセットする。このセットに先立ち、充填対象となる複数種の粉体を、仕切り板2aによって仕切られたホッパー2の区画内にそれぞれ投入しておく。そして、バイブレータ3によって振動しているホッパー2を水平方向、すなわち同図の紙面表裏方向に往復動させる。この往復動に伴い生じる衝撃によって、ホッパー2内に収容された複数種の粉体が吐出口から吐出する。この吐出に伴うホッパー2内での粉体の落下によって、各区画内に収容された粉体は、仕切り板2aによって仕切られていないホッパーの下部空間2b内に導かれる。そして、下部空間2bの下方に位置する吐出口から吐出される際、バイブレータ3による格子板2cの振動(およびホッパー2自身の往復動)によって粉体が水平方向に拡散し、これが吐出口と対向して配置された容器7内に充填される。仕切り板2aによって規制されていない下部空間内の粉体を格子板2cを用いて拡散させることによって、容器7内に充填された粉体表面のグラデーションを綺麗に形成することができる。
【0020】
ホッパー2の下端(吐出口)と金型6の上面との擦り切りによって、所定量の粉体の充填が完了すると、充填工程が終了する。その後、容器7内の粉体に圧縮打型を施すことによって、粉末固形化粧料が完成する。
【0021】
このように、本実施形態によれば、ホッパー2内の仕切り板2aを吐出口まで延在させるのではなく、その途中までに留める。これにより、仕切り板2aの下端と吐出口との間に形成された下部空間2b内において、複数種の粉体は、その混ざり合いが仕切り板2aによって規制されることなく、バイブレータ3の振動等に起因して境界部分が混合されながら落下する。下部空間2b内に仕切り板2aを設けないことで、バイブレータ3の振動によって、ここに収容された粉体の境界を有効に混合することができる。そして、吐出口近傍まで落下した粉体は、吐出口に設けられた格子板2cの振動によって更に水平方向に拡散されて吐出口から吐出される。これにより、吐出口と容器7との間の間隔をそれほど広げなくても、容器7内に充填される粉体表面のグラデーションを綺麗に形成することができる。
【0022】
(第2の実施形態)
本実施形態の特徴は、ホッパー2からの粉体の吐出効率を高めるために、エア(圧縮空気)の噴出によって粉体の落下を補助する点にある。図7は、本実施形態に係るホッパー2の断面図である。エアの噴出を除けば第1の実施形態と同様なので、特徴点以外については図2と同一の符号を付してここでの説明を省略する。
【0023】
ホッパー2には、エアを供給するためのエア供給管8が取り付けられている。このエア供給管8は、ホッパー2の側面および各仕切り板2aの双方を貫通する貫通孔に挿入され、ホッパー2を横方向に横断している。エア供給管8には、複数の吹出し口が設けられており、これらは仕切り板2aによって仕切られた区画のそれぞれに位置的に対応している。それぞれの吹出し口は、下方または斜め下方に向いている。粉体の充填時には、吹出し口からエアを噴出することによって、各区画内の粉体の落下が補助される。
【0024】
このように、本実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様の効果に加えて、エアの噴出によって粉体の落下を補助することで、粉体の吐出効率を高めることができるという効果がある。
【0025】
なお、上述した第1および第2の実施形態の構成に加えて、仕切り板2aを超音波等で振動させてもよい。これにより、隣接した粉体同士の境界を一層有効にぼかすことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明に係る粉体充填装置および粉体充填方法は、化粧料粉末の充填のみならず、グラデーション形成を必要とする各種の粉体に対して広く適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 粉体充填装置
2 ホッパー
2a 仕切り板
2b 下部空間
2c 格子板
3 バイブレータ
4 スプリング
5 架台
6 金型
7 容器
8 エア供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色調が異なる複数種の粉体を容器内に充填する粉体充填装置において、
下端に設けられた吐出口に至る途中まで延在する少なくとも一つの仕切り板を有し、当該仕切り板によって仕切られた複数の区画内にそれぞれが収容された前記複数種の粉体を前記吐出口から吐出することによって、前記複数種の粉体を前記吐出口と対向して配置された前記容器内に充填するとともに、水平方向に往復動させることが可能なホッパーと、
前記ホッパーを振動させるバイブレータと、
前記仕切り板の下端と間隔を空けて、前記ホッパーの前記吐出口に取り付けられているとともに、前記ホッパーと共に振動することによって、前記吐出口から吐出される前記複数種の粉体を水平方向に拡散させる格子板と
を有することを特徴とする粉体充填装置。
【請求項2】
前記仕切り板の下端は、水平方向に凹凸状に隆起した形状を有することを特徴とする請求項1に記載された粉体充填装置。
【請求項3】
前記仕切り板の下端は、下方に向かって鋸歯状に隆起した形状を有することを特徴とする請求項1に記載された粉体充填装置。
【請求項4】
吹出し口からのエアの噴出によって、前記複数の区画内のそれぞれに収容された前記複数種の粉体の落下を補助するエア供給管をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された粉体充填装置。
【請求項5】
色調が異なる複数種の粉体を容器内に充填する粉体充填方法において、
ホッパーの下端に設けられた吐出口に至る途中まで延在する少なくとも一つの仕切り板によって仕切られた複数の区画内に、前記複数種の粉体のそれぞれを投入するステップと、
前記吐出口からの吐出に伴い前記ホッパー内に生じる前記複数種の粉体の落下によって、前記複数の区画内に収容された前記複数種の粉体を、前記仕切り板によって仕切られていない前記ホッパーの下部空間内に導くステップと、
前記下部空間の下方に位置する前記吐出口に取り付けられた格子板を振動させることによって、前記吐出口から吐出される前記複数種の粉体を水平方向に拡散させるステップと、
水平方向に拡散された前記複数種の粉体を、前記吐出口と対向して配置された前記容器内に充填するステップと
を有することを特徴とする粉体充填方法。
【請求項6】
エアの噴出によって、前記複数の区画内のそれぞれに収容された前記複数種の粉体の落下を補助するステップをさらに有することを特徴とする請求項5に記載された粉体充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−215258(P2010−215258A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62544(P2009−62544)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】