説明

粉体充填装置

【課題】ブロッキングの発生を回避可能であり、特に従来の方法では充填が難しかった含水性、易破壊性、付着性等の特殊な性質を有する粉体であっても高効率で、しかも小型の容器に対しても正確に製品容器内に定量充填できる粉体充填装置を提供する。
【解決手段】粉体を収容する貯留タンク3と、この貯留タンクに収容された粉体を吸引、排出する真空ポンプ5と、この真空ポンプ5によって吸引、排出された粉体を製品容器1に充填する分配器7と、開閉動作により真空ポンプの吸引経路における開口面積を変動させる経路開閉バルブ11とを備え、貯留タンク3と分配器7との相互間に、吸引、排出にかかる粉体を一旦溜めおくとともに、溜めおいた粉体に対して外気を直接流入させてその流動化を促進するチャンバー13を配設したことを特徴とする粉体充填装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空による吸引力を利用した粉体の充填装置に関し、より具体的には、粉体を、効率よく、しかも正確に製品容器へ充填しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉体を輸送・充填する方式としては、粉体の自重によって貯蔵容器からその真下に配置された製品容器に粉体を落下させて充填するオーガー方式や空気の流れを利用して粉体を輸送先に送る気力輸送方式が知られている。
【0003】
オーガー式は、円錐形のホッパーの排出口近傍内部に設けられたスクリュー状のオーガーを回転させることによって、ホッパー内の粉体を排出口から下方に排出する方式であり、一定容積の容器に粉体を効率よく充填することができるという特徴がある。
【0004】
また、気力輸送式には、大別して、圧縮空気で圧送する圧送方式(例えば、特許文献1参照。)と、真空力で吸引する吸引方式(例えば、特許文献2参照。)とがある。圧送方式では、圧力を高め混合比(粉体と空気との重量比)を大きくすることにより、いわゆるプラグ輸送のような高濃度輸送を実現することができる。従って、圧送方式には長距離かつ多量の粉体輸送ができるという利点がある。これに対し、真空吸引を利用する吸引方式には、輸送管の継ぎ目等から粉体が漏洩することがない(継ぎ目等に隙間があっても、空気は逆にそこから輸送管内に吸い込まれる)ので、防爆上安全であり、粉塵汚染もないという利点があり、また、小型かつ安価に実施可能である。
【0005】
【特許文献1】特開平8−91568号公報
【特許文献2】特開平11−139561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の輸送、充填方式では以下に述べるような不具合があり、未だ改善の余地が残されていた。
【0007】
すなわち、オーガー方式では、オーガーの回転によって粉体を加圧し粉体に過剰なストレスを与えることになるため、含水性、易破壊性、付着性等の特殊で扱い難い性質を有する粉体、例えば、特に化粧品等において有用である特許第3107891号、特許第3219886号、特許第3352381号、特許第3993833号、国際公開第2006/103879号パンフレット等に記載される、水を含み、強い外力により液化するようないわゆる含水粉末等には適用が困難である。
【0008】
これに対し、気力輸送方式では、粉体に過剰な外部ストレスを与えることは比較的少ないが、輸送源と輸送先とが配管で繋がれているため移送の際に配管内でブロッキングが生じるという別の問題がある。圧送方式においては、粉体の沈積や付着による輸送管のブロッキングの起きやすい箇所に空気吹き込み口を設け、圧縮空気を吹き込むことによりブロッキングの発生を解消可能であることが知られている(例えば、特許文献1参照。)が、圧送方式には、輸送管の継ぎ目等から粉体が漏洩することがあることから微粉末への適用は望ましくなく、また、圧送方式では耐圧のブロータンクや空気濾過装置が別途必要となることから装置が複雑化する。しかも一般に、圧送方式は、上述したように多量の輸送に適するものであって、化粧品用の製品容器のような小さな容器に極少量の粉体を定量充填する装置への適用には適さない。
【0009】
一方、吸引方式においては、上記のブロッキング対策技術をそのまま適用することは好ましくない。なぜなら、真空の作用によって粉体を吸引するため、輸送管内の負圧を維持しなければならない吸引方式では、輸送管内に圧縮空気を吹き込むと一気に真空破壊が起こる結果、さらにブロッキングが発生し易い状況を作り出してしまうからである。しかも、化粧品用等の小さな製品容器に充填を行うような比較的小型の充填装置では、仮にこのような処置を講じて、輸送管内に空気を吹き込んだとしても、輸送管が細く管内に粉体の流動を十分に発生させることのできる空間を確保することができないことから、ブロッキングを解消することは難しい。
【0010】
それゆえこの発明は、ブロッキングの発生を回避可能であり、特に従来の方法では充填が難しかった含水性、易破壊性、付着性等の特殊な性質を有する粉体であっても高効率で、しかも小型の容器に対しても正確に製品容器内に定量充填できる粉体充填装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、この発明は、粉体を収容する貯留タンクと、この貯留タンクに収容された粉体を吸引、排出する真空ポンプと、この真空ポンプによって吸引、排出された粉体を製品容器に充填する分配器と、開閉動作により真空ポンプの吸引経路における開口面積を変動させる経路開閉バルブとを備え、前記貯留タンクと分配器との相互間に、吸引、排出にかかる粉体を一旦溜めおくとともに、溜めおいた粉体に対して外気を直接流入させてその流動化を促進するチャンバーを配設したことを特徴とする粉体充填装置である。なお、ここでいう「チャンバー」とは、貯留タンクと分配器とをつなぐ吸引経路の横断面積よりも大きい横断面積を有する空間を画定可能な容器を指すものとする。
【0012】
かかる粉体充填装置にあっては、貯留タンクと分配器との間にチャンバーを設けたことから、粉体の流動を十分に発生させることのできる空間を確保することができ、吸引経路の負圧に応じて流入した外気によってチャンバー内で確実に流動化を促進させることができる。そして流動化により適度な空気量を同伴した粉体は分配器によって分配され製品容器に充填される。
【0013】
従って、この発明の粉体充填装置によれば、吸引経路が細い場合でも、チャンバー内で確実に粉体を流動させることができるので、ブロッキングの発生を抑制することができる。また、圧縮空気ではなく、外気を負圧に応じてそのままチャンバー内に流入させる方式を採用したため、過度に吸引力が低下することがなく、ブロッキングの発生を誘発するおそれがない。さらに、粉体の輸送に際して気力を用いたことから粉体に過剰な外的ストレスを与えるおそれがなく、上述したような特殊で扱い難い性質をもった粉体の充填も安定して行うことができる。しかも、気力源として真空力を用いたことから吸引経路の継ぎ目等から粉体が漏洩することがなく、また粉体の少量充填が可能である。
【0014】
なお、この発明の粉体充填装置にあっては、チャンバーは、互いに間隔をおいて対向配置され、少なくとも下部が円弧状をなす一対の側壁と、この側壁にそれぞれ一体連結してその内側に粉体の流動空間を区画形成する隔壁とから構成することが好ましい。
【0015】
また、この発明の粉体充填装置にあっては、チャンバーは、水平状態に配置され、貯留タンクから吸引、排出された粉体をチャンバー内に導入する入側経路と、同じく水平状態に配置され、流動化された粉体を分配器に向けて送り出す出側経路と、側壁及び隔壁の少なくとも一方において貫通し溜めおかれた粉体に対して直接外気を流入させる一つ又は複数のピンホールとを有することが好ましい。なお、ここでいう「外気」とは、粉体充填を行う部屋自体をクリーンルームとした中のクリーンエアや、クリーンエア用のフィルターを通したエア等の、清潔な空気であることが粉体充填製品の安全性、安定性を担保する上で好ましいことは言うまでもない。(以下、このような清潔な空気を「外気」と記す。)
【0016】
さらに、この発明の粉体充填装置にあっては、分配器に、製品容器の口部を通して挿入される供給孔を有し、その供給孔から吸引、排出にかかわる粉体を製品容器内に供給する粉体送給ノズルと、製品容器の口部を通して挿入される吸引孔を有し、真空ポンプの吸引経路に繋がる吸引ノズルとを設け、該吸引ノズル内に、真空ポンプの吸引経路における開口面積の変動に連動して弁座からの浮上、落下を繰り返して該吸引孔を開閉する自重閉塞式の吊り下げ弁体を設置することが好ましい。
【0017】
さらに、この発明の粉体充填装置にあっては、経路開閉バルブは、往復移動の繰り返しにて真空ポンプの吸引経路の開口面積を断続的に変動させて分配器による粉体のパルス充填を誘導するスライド弁と、このスライド弁を保持するケーシングからなり、スライド弁は、スライドする向きに沿って吸引経路の開口面積を変動させる異形ゲートを有することが好ましい。なお、ここでいう「異形ゲート」とは、経路開閉バルブの開度を非比例的に経時変動させることのできる形状を有するゲートを指すものとする。
【0018】
しかも、この発明の粉体充填装置にあっては、ケーシングに、該スライド弁との相互間にて、粉体の吸引、排出に際して外気の流入を許容する隙間を形成する少なくとも一本の溝部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
この発明の粉体充填装置によれば、貯留タンクから製品容器に粉体を吸引し充填する際に生じる吸引経路内でのブロッキングの発生を回避可能であり、特に従来の方法ではブロッキングし易かったり、粒子の構造が壊れ易く外力により変質し易かったりする含水性、易破壊性、付着性等の特殊な性質を有する粉体であっても高効率で、しかも小型容器に対しても正確に製品容器内に定量充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図面の実施形態を参照しつつ詳細に説明する、ここに、図1は、この発明に従う充填装置の実施の形態をその全体について模式的に示した図である。また、図2は、貯留タンクの一部を拡大して示す模式図であり、図3は、チャンバーを拡大して示す模式図であり、図4は、分配器の内部を透視して示す模式図であり、図5は、経路開閉バルブを分解して示す模式図であり、さらに図6は、粉体充填装置における経路開閉バルブの開閉動作と各箇所の圧力変動及び粉体の活性状態との関係を示すグラフである。
【0021】
この発明に従う粉体充填装置は、製品容器1に化粧品等のルースパウダー状の粉体を詰める作業等を施す箇所等に設置されて、対象となる粉体を収容する貯留タンク3と、この貯留タンク3に収容された粉体を吸引、排出する真空ポンプ5と、この真空ポンプ5によって吸引、排出された粉体を製品容器1に充填する分配器7と、貯留タンク3から真空ポンプ5まで繋がり真空ポンプ5の負圧を保持する吸引経路9における開口面積を変動させて粉体の流量調整を行う経路開閉バルブ11と、貯留タンク3と分配器7との相互間に配置され、吸引、排出にかかる粉体を一旦溜めおくとともに、溜めおいた粉体に対して外気を直接流入させてその流動化を促進するチャンバー13とを備えている。また、この実施形態では、製品容器1は高さ40〜50mm、開口部の径10〜15mm、容量9〜15ml程度の小型容器であり、この容器に充填する粉体量を管理するため、製品容器1の口部15の近傍域には粉体が所定の容量に達したことを検知する光電管17が設けられている。そして、この粉体充填装置は、製品容器1内への充填が一旦開始されると、光電管17によって検知されるまで経路開閉バルブ11を作動して吸引経路9を高速で開閉し続ける構成となっている。また、真空ポンプ5の上流側には、安定した真空圧を保証するための真空ストレージタンク18が配置され、さらに真空ストレージタンク18の上流側であって、経路開閉バルブ11の下流側には分配器7から漏洩した微量の粉体を捕集するトラップ19が配置されている。
【0022】
貯留タンク3は、図2に示すように、下部が円錐状をなし、その下には粉体の取出し口21が水平方向(横方向)に形成されている。取出し口21は上下方向に延在させても良いが、このように水平方向に粉体を取出し可能とすることにより、粉体の自重によって取出し口21が閉塞するのを防止することができるので好ましい。また、取出し口21の略反対側には、負圧に応じて微量の外気を流入させるためのピンホール23が設けられている。これにより、貯留タンク3の取出し口21近傍にロータリーバルブ等の供給装置を別途設ける必要がなくなることから、粉体への外部ストレスの影響を低減することができるとともに、自重による影響を最も受け易い貯留タンク3下部におけるブロッキングの発生を回避して粉体の円滑な取出しが可能となる。貯留タンク3の本体外壁にはノッカー25が設けられており(図1参照。)、このノッカー25を粉体の残量に応じて昇降移動させ、貯溜タンク3の本体外壁部に衝撃を適宜加えることにより、貯留タンク3内での粉体のブリッジングも回避することができる。
【0023】
チャンバー13は、図3に示すように、互いに間隔をおいて配置された円錐状の側壁28とそれに対向する円形の側壁27、そしてこの側壁27、28にそれぞれ一体連結してその内側に粉体の流動区画を区画形成する円筒状の隔壁29からなる。チャンバー13は、貯留タンク3と分配器7とをつなぐ吸引経路9の横断面積よりも大きい横断面積を有する。さらにチャンバー13は、水平状態に配置され、貯留タンク3から吸引、排出された粉体をチャンバー13内に導入する入側経路31と、同じく水平状態に配置され、流動化された粉体が分配器7に向けて排出される出側経路33と、を有する。出側経路33は、流動化され浮遊した粉体を分配器7に排出できるように、図示のように側壁28の略中心か又はこれよりも上方に設けることが好ましい。また、出側経路33が配置された側壁28とは反対側の側壁27の下部には、チャンバー13内に貫通し、負圧に応じてチャンバー13内に溜めおかれた粉体に対して直接外気を取り入れ可能なピンホール35が設けられている。なお、入側経路31から供給された粉体が一旦チャンバー13内に溜めおかれることなくそのまま出側経路33から送出されるのを防止する観点から、これら入側経路31と出側経路33とはできる限り離間させることが好ましく、この実施形態では、入側経路31は隔壁29に配置され、かつピンホール35が形成されている側壁27の近傍に配置されている。なお、ピンホール35の孔径及び個数は適宜選択することができるが、粉体吸引時に吸引経路内で粉体が停止することのない、つまりブロッキングが生じることのない吸引速度を維持できるように設定する。
【0024】
分配器7は、分配器本体部7aと、該本体部7aに着脱自在に挿嵌され、製品容器1の口部15を通して挿入される分配ノズル7bとからなっている。この分配器7は具体的構成については図示はしないが、製品容器1の真上で昇降移動できるようになっている(図1を参照。)。分配ノズル7bの内部には、図4に示すように、供給孔37及びこの供給孔37につながる粉体送給通路39と、吸引孔41及びこの吸引孔41につながる吸引通路43とが形成され、供給孔37及び粉体送給通路39にて粉体送給ノズルを構成し、吸引孔41及び吸引通路43にて吸引ノズルを構成している。分配ノズル7bの先端部45の外周には、分配器7が製品容器1の口部15に挿入された状態にて該口部2の突端面に当接してその相互間をシール状態に保持するシール部材47が設けられている。一方、分配器本体部7aの内部には、チャンバー13の出側経路33と分配ノズル7bの粉体送給通路39とを繋ぐ入側通路49と、分配ノズル7bの吸引通路43と吸引経路9とを繋ぐ出側通路51が形成されている。これにより、吸引によってチャンバー13の出側経路33から排出された粉体は、粉体送給通路39を通って空気の流れ及び粉体の自重により製品容器1内に落下した後、実質空気のみが吸引通路43を通って吸引経路9に排出される。また、製品容器1内への送給にかかる粉体、及び吸引通路43を通って排出される空気に混入した粉体の自重によるブロッキングを防止する観点から、分配器本体部7aの内部に形成された入側通路49及び出側通路51は共に水平状態に形成することが好ましい。さらにこの実施形態では、吸引通路43内面には下方に向かって流路を狭める、弁座としてのテーパー部53が形成されるとともに、吸引通路43内には、かかるテーパー部53との協働により吊り下げ可能となった釘状の吊り下げ弁体55が配設されている。この吊り下げ弁体55は、真空ポンプ5の吸引経路9における開口面積の変動に連動して作動するものであり、すなわち吸引経路9が負圧となった場合には弁座から浮上して吸引孔41を開放し、負圧が解除された場合には自重により落下して吸引孔41を閉塞するものである。なお、かかる吊り下げ弁体55の形状は、吸引経路9の負圧の変動に応じて浮上及び落下可能であれば、釘状に限らず、例えば単なる球状のものであっても良いが、付着性の高い粉体などが排出される空気に混入し、壁面に付着してブロッキングを形成するような場合には、釘状の弁体の方がブロッキングを崩す効果が高いことからより好ましい。
【0025】
経路開閉バルブ11は、図5に示すように、流路(吸引経路9)に対して直角方向に高速で往復移動可能な薄く細い板状のスライド弁57と、このスライド弁57を2方向から挟み込んでスライド可能に保持する第1及び第2のケーシング59、61からなる。スライド弁57には、スライドする向きに沿って吸引経路9の開口面積を非比例的に変動させる異形ゲートを構成する開口部63が貫通形成されている。なお、この実施形態では、経路開閉バルブ11の1回の開放及び閉鎖動作における吸引経路9の開口面積を2次曲線的に変動させ、負圧変動による衝撃を大きくする観点から、開口部63の形状を略三角形状としているが、該開口部63の形状は図示のものに限らず円形や楕円形、多角形、曲線若しくは直線からなる不規則な形状等、種々の形状を採用することができる。また、異形ゲートはスライド弁57に開口部63を形成して構成したが、これに限らず、バルブ開度を非比例的に変動可能な特殊形状の弁体(図示省略)で構成しても良い。しかも、この実施形態では、第2のケーシング61に、スライド弁57との相互間にて、粉体の吸引、排出に際して外気の流入を許容する隙間を形成する溝部64が形成されており、スライド弁57とケーシング59、61との隙間に微細な粉体が入り込むことによる悪影響を防いでいる。なお、この実施形態では、メンテナンス性及び組立性を考慮しケーシング59、61を分割構造としたが、一体構造としても良い。
【0026】
次いで、以上の粉体充填装置の使用例及び主な作動について説明する。
【0027】
貯溜タンク3内に収納した粉体を製品容器1に充填するには先ず、粉体を充填するための製品容器1を所定位置、すなわち分配器7の真下に配置し、そして分配器7を降下させ、分配ノズル7bを製品容器1の口部15に挿入するとともにシール部47と製品容器1の口部15との間のシールを確保する。真空ポンプ5は予め始動させておき、真空ストレージタンク18に所定の真空度を確保しておく。このような状態で経路開閉バルブ11を開放させると、該バルブの上流側も負圧となり、さらにこの負圧に連動するように分配器7の吊り下げ弁体55も上昇し、真空ポンプ5から貯留タンク3に至る吸引経路9は負圧状態となる。その逆に、経路開閉バルブ11を閉鎖すると、分配器7の吊り下げ弁体55も弁座に着座し、該バルブの上流側は負圧から開放された状態となる。この経路開閉バルブ11の開閉動作と各箇所の圧力変動及び粉体の活性状態との関係を図6のグラフに示す。このグラブから明らかなように、一旦経路開閉バルブ11の開閉が開始されると、バルブの開放時は粉体が活性状態となり、バルブの閉鎖時は粉体が準活性状態となる。
【0028】
そして、この経路開閉バルブ11を約10〜250mm/sec程度、より好ましくは約30〜120mm/sec程度の平均速度で繰り返し開閉することにより、粉体は活性状態、準活性状態を交互に繰り返しつつ貯溜タンク3内の粉体は順次吸引されることになる(このような経路開閉バルブ11の開閉によって活性状態、準活性状態を交互に繰り返しつつ貯溜タンク3内の粉体を製品容器内に充填する方式をパルス充填という。)。
【0029】
吸引にかかる粉体は、チャンバー13内に一旦溜めおかれることになるが、チャンバー13内に溜めおかれた粉体は、ピンホール35を通してチャンバー13内に流入した外気により流動化された後、分配器7に排出され(吸引され)、分配器7で分配される。これにより粉体は製品容器1に断続的に充填される。上掲図6は、経路開閉バルブ11の速度を90mm/secとし、スライド弁57の昇降ストロークを15mmとして、粉体の活性、準活性状態を3回繰り返すことにより一つの製品容器1に対して定量充填を完了する場合を例として示したものであり、粉体の容量が規定値に達しているかどうかは光電管19によって検知する。なお、図6の場合は経路開閉バルブ11の開閉の速度は一定であるが、1サイクル中においてこの開閉速度が一定である必要はなく、例えば、スライド弁57の昇降速度を変えたり一時的に止める等の動作を含ませることにより、1サイクル中の特定の開状態の時間を長くしたり逆に短くしたりして、製品容器1内への定量充填をより効率良く行うことができる。
【0030】
かかる実施形態の粉体充填装置にあっては、貯留タンク3と分配器7との間にチャンバー13を設けたことから、粉体の流動を十分に発生させることのできる空間を確保することができ、吸引経路9の負圧に応じて流入した外気によってチャンバー13内で確実に流動化を促進させることができる。そして流動化により適度な空気量を同伴した粉体は分配器7によって分配され製品容器1に充填される。
【0031】
従って、この粉体充填装置によれば、吸引経路9が細い場合でも、チャンバー13内で確実に粉体を流動させることができるので、ブロッキングの発生を抑制することができる。また、圧縮空気ではなく、外気を負圧に応じてそのままチャンバー13内に流入させる方式を採用したため、過度に吸引力が低下することがなく、ブロッキングの発生を誘発するおそれがない。さらに、粉体の輸送に際して気力を用いたことから粉体に過剰な外的ストレスを与えるおそれがなく、特殊で扱い難い性質をもった粉体の充填も安定して行うことができる。しかも、気力源として真空力を用いたことから吸引経路9の継ぎ目等から粉体が漏洩することがなく、また粉体の少量充填が可能である。
【0032】
また、この実施形態の粉体充填装置にあっては、チャンバー13は、互いに間隔をおいて対向配置された円錐状の側壁28と、それに対向する円形の側壁27、そしてこの側壁27、28にそれぞれ一体連結してその内側に粉体の流動空間を区画形成する隔壁29とから構成されていることから、粉体が溜まり易く流動化を阻害する窪みを減らすことができ、流動化をさらに向上させることができる。
【0033】
また、この実施形態の粉体充填装置にあっては、貯留タンク3から吸引、排出された粉体をチャンバー13内に導入する入側経路31と、流動化された粉体を分配器7に向けて送り出す出側経路33とを共に水平状態に配置したことから、粉体の自重による影響を回避し、チャンバー13内への粉体の確実な吸引が可能となるとともにチャンバー13内で流動化された粉体の安定した送出が可能となる。
【0034】
さらに、この実施形態の粉体充填装置にあっては、側壁27を貫通するピンホール35によって、チャンバー13内に溜めおかれた粉体に対して直接外気を流入させる構成としたことから、溜めおかれた粉体をより確実に流動化させることができ、また必要以上に外気が流入し吸引経路9の真空破壊をもたらすおそれもない。
【0035】
さらに、この実施形態の粉体充填装置にあっては、粉体の分配を確実に行い得るようにするために、吸引通路43をほぼ垂直方向に延在させ、空気を上方に排出する構成としているが、このため粉体は自重の影響を受け易く、吸引通路43内でブロッキングが比較的発生し易くなっている。しかし、分配器7の吸引通路43内に、真空ポンプ5の吸引経路9における開口面積の変動に連動して弁座からの浮上、落下を繰り返して該吸引孔41を開閉する自重閉塞式の吊り下げ弁体55を設置したことから、吸引通路43内に発生したブロッキングを吊り下げ弁体55の浮上及び落下動作によって確実に破壊することができる。
【0036】
さらに、この実施形態の粉体充填装置にあっては、経路開閉バルブ11のスライド弁57を薄く細い板で形成していることから、摩擦による粉体の詰まりを防ぐことができる。また、経路開閉バルブ11はスライド式であることから、高速応答が可能である。さらにスライド弁57は、減圧側に圧着されるため、減圧側のシール性が保証され、確実な充填が可能となる。しかも、スライド弁57は、スライドする向きに沿って吸引経路9の開口面積を変動させる開口部63を有することから、吸引経路9の開口面積を変動させることで吸引流量を調整することができる。また開口部63を異形としたことにより、バルブ開度を非比例的に経時変動させることができるので、同一パルス内での負圧の衝撃を増大させ、ブロッキングの発生をより一層防止することができる。また、経路開閉バルブ11のケーシング61には、該スライド弁57との相互間にて、粉体の吸引、排出に際して外気の流入を許容する隙間を形成する溝部64が形成されていることから、吸引経路9の負圧時に積極的に外気を取り込み、これとともにスライド弁57と第2のケーシング61間に残留する粉体をも吸引することができるので、スライド弁57と第2のケーシング61間に粉体が付着することによる動作不良を回避することができる。また、溝部64を形成することによりスライド弁57と第2のケーシング61間の摩擦をさらに低減することができるので、スライド弁57をより円滑に往復移動させることができる。
【0037】
しかもこの実施形態の粉体充填装置は、経路開閉バルブ11を高速で開閉することにより粉体を製品容器1に断続的に充填する構成(パルス充填)であるから、充填の微細制御が可能であり、少量の充填をより正確に行うことができる(つまり、微細な定量充填が可能となる。)。なお、経路開閉バルブ11の平均開閉速度は、10〜250mm/sec、特には30〜120mm/secの範囲内であることが、充填の微細制御の観点から好ましいが、これは粉体の性質や要求される充填精度等によって適宜変更することができ、例えば、経路開閉バルブ11の速度を上記範囲よりもさらに速くすれば、より高い充填精度が得られ、またバルブの開状態の時間を長くすれば粉体の充填速度が速いことから、これらを組み合わせて1サイクル中の経路開閉バルブ11の開閉速度を変化させることにより、より速く精度の高い定量充填ができる。従って、この発明によれば、ブロッキングの発生を抑制しつつ、粉体の微量な充填をより正確かつ安定して行うことが可能となる。
【0038】
上述したところは、この発明の実施形態の一部を示したにすぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を相互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。例えば、上述した実施形態では、チャンバー13のピンホール35を、側壁27に設けたが、これに限らず隔壁29に設けても良い。またピンホール35の数も2以上としても良い。チャンバー13の形状も図示例のものに限らず、中空の多角柱形状や球状としても良い。また、本発明の対象となる粉体としては、チャンバー13にて外気の流入による流動化を行い得るものであれば、どのような粉体でも処理することができ、例えば、化粧用パウダー、小麦、金属微粉等を挙げることができる。しかも、上記実施形態では、スライド弁との相互間に隙間を形成する溝部64を第2のケーシング61に設けたが、これとともに又はこれに代えて第1のケーシング59に設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明の粉体充填装置によって、貯留タンクから製品容器に粉体を吸引し充填する際に生じる吸引経路内でのブロッキングの発生が回避可能となり、また従来の方法では充填が難しかった含水性、易破壊性、付着性等の特殊な性質を有する粉体であっても高効率で、しかも小型容器に対しても正確に製品容器内に定量充填することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明に従う充填装置の実施の形態をその全体について模式的に示した図である。
【図2】貯留タンクの一部を拡大して示す模式図である。
【図3】チャンバーを拡大して示す模式図である。
【図4】分配器の内部を透視して示す模式図である。
【図5】経路開閉バルブを分解して示す模式図である。
【図6】粉体充填装置における経路開閉バルブの開閉動作と各箇所の圧力変動及び粉体の活性状態との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1 製品容器
3 貯留タンク
5 真空ポンプ
7 分配器
7a 分配器本体部
7b 分配ノズル
9 吸引経路
11 経路開閉バルブ
13 チャンバー
15 口部
17 光電管
18 真空ストレージタンク
19 トラップ
21 取出し口
23 ピンホール
27、28 側壁
29 隔壁
31 入側経路
33 出側経路
35 ピンホール
37 供給孔
39 粉体送給通路
41 吸引孔
43 吸引通路
47 シール部
49 入側通路
51 出側通路
53 テーパー部
55 吊り下げ弁体
57 スライド弁
59 第1のケーシング
61 第2のケーシング
63 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を収容する貯留タンクと、この貯留タンクに収容された粉体を吸引、排出する真空ポンプと、この真空ポンプによって吸引、排出された粉体を製品容器に充填する分配器と、開閉動作により真空ポンプの吸引経路における開口面積を変動させる経路開閉バルブとを備え、
前記貯留タンクと分配器との相互間に、吸引、排出にかかる粉体を一旦溜めおくとともに、溜めおいた粉体に対して外気を直接流入させてその流動化を促進するチャンバーを配設したことを特徴とする粉体充填装置。
【請求項2】
前記チャンバーは、間隔をおいて対向配置され、少なくとも下部が円弧状をなす一対の側壁と、この側壁にそれぞれ一体連結してその内側に粉体の流動空間を区画形成する隔壁からなる、請求項1に記載の粉体充填装置。
【請求項3】
前記チャンバーは、水平状態に配置され、貯留タンクから吸引、排出された粉体をチャンバー内に導入する入側経路と、同じく水平状態に配置され、流動化された粉体を分配器に向けて送り出す出側経路と、前記側壁及び隔壁の少なくとも一方において貫通し、溜めおかれた粉体に対して直接外気を流入させる一つ又は複数のピンホールとを有する、請求項1又は2に記載の粉体充填装置。
【請求項4】
前記分配器に、製品容器の口部を通して挿入される供給孔を有し、その供給孔から吸引、排出にかかわる粉体を製品容器内に供給する粉体送給ノズルと、製品容器の口部を通して挿入される吸引孔を有し、真空ポンプの吸引経路に繋がる吸引ノズルとを設け、
該吸引ノズル内に、真空ポンプの吸引経路における開口面積の変動に連動して弁座からの浮上、落下を繰り返して該吸引孔を開閉する自重閉塞式の吊り下げ弁体を設置した、請求項1〜3の何れか一項に記載の粉体充填装置。
【請求項5】
前記経路開閉バルブは、往復移動の繰り返しにて真空ポンプの吸引経路の開口面積を断続的に変動させて分配器による粉体のパルス充填を誘導するスライド弁と、このスライド弁を保持するケーシングからなり、前記スライド弁は、スライドする向きに沿って吸引経路の開口面積を変動させる異形ゲートを有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の粉体充填装置。
【請求項6】
前記ケーシングに、該スライド弁との相互間にて、粉体の吸引、排出に際して外気の流入を許容する隙間を形成する少なくとも一本の溝部を設けた、請求項1〜5の何れか一項に記載の粉体充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−23867(P2010−23867A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186166(P2008−186166)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】