説明

粉体分離装置、粉体分離システム、及び粉体分離方法

【課題】複合材料の粉体化物を好適に分離可能な粉体分離装置、及び、これを用いた粉体分離システムを提供する。
【解決手段】上下方向に延びる筒状体1と、筒状体1の下部に開口し混合粉体がガスと一緒に流入する流入開口6bと、筒状体1内に流入開口6bと対向する位置に設けられ、上部よりも下部が流入開口6bに近づくように傾斜された傾斜板4と、筒状体1の上部に開口し一部の粉体をガスと一緒に流出させる流出開口7bと、筒状体1における流入開口6bよりも下部に設けられた、粉体を選択的に排出する弁5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体分離装置、粉体分離システム、及び、粉体分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩ビ(塩化ビニル樹脂)壁紙、石膏ボードなどの、紙と樹脂又は無機素材との積層物、タイルカーペット、防音シート、防水シート、工事用安全ネット、フレキシブルコンテナー等の、樹脂層と繊維層との積層物又は繊維層に樹脂を含浸した積層物等の複合材料が広く利用されている。これに従い、これらの積層物の廃材が年に数百万トン程度発生している。しかしながら、このような、異種材料を含む複合材料の本格的なリサイクルはいまだ確立していない。
【0003】
このような複合材料をリサイクル、特に、マテリアルリサイクルするには、このような複合材料を粉体化し、材料毎に分離する必要がある。
【0004】
そして、このような複合材料を効率よく粉体化する方法として、例えば、特許文献1に開示された粉体化装置が知られている。また、粉体分離装置として、例えば、特許文献2〜7に開示された粉体分離装置が知られている。
【特許文献1】特開2008−110274号公報
【特許文献2】特開2007−216171号公報
【特許文献3】特開2004−313994号公報
【特許文献4】特開2008−279436号公報
【特許文献5】特開平11−207263号公報
【特許文献6】特開平6−329827号公報
【特許文献7】特開2003−127140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、繊維状の材料を含む複合材料を粉体化すると、繊維状粉体同士が絡まった塊状の粉体が形成され、この塊状の粉体内に粒状の樹脂粉体が取り込まれてしまう場合が多く、これらを従来の装置で効率よく分離することは困難な場合があった。また、例えば、塩ビ樹脂粉と、炭酸カルシウム粉とを含む複合材料を粉体化した場合でも、塩ビ樹脂粉に炭酸カルシウム粉が付着する場合が多く、これらの高精度の分離は困難な場合があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、異種の粉体の混合物を好適に分離可能な粉体分離装置、粉体分離方法、及び、これを用いた粉体分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粉体分離装置は、上下方向に延びる筒状体と、筒状体の下部に開口し被分離粉体がガスと一緒に流入する流入開口と、筒状体内に流入開口と対向する位置に設けられ、上部よりも下部が流入開口に近づくように傾斜された傾斜板と、筒状体の上部に開口し、一部の粉体をガスと一緒に流出させる流出開口と、を備える。
【0008】
本発明にかかる粉体分離方法は、上下方向に延びる筒状体の下部に開口する流入開口から、筒状体内に流入開口と対向する位置に設けられ、上部よりも下部が流入開口に近づくように傾斜された傾斜板に対して被分離粉体とガスとを供給して衝突させ、筒状体の上部に開口する流出開口から一部の粉体をガスと一緒に流出させる。
【0009】
本発明によれば、流入開口から供給されるガス中の被分離粉体は、傾斜板にあたり、解砕されたり解繊されたりして絡み合う粉体や付着しあう粉体が互いに物理的に分離された上で、上昇するガスと共に上方に吹き上げられる。吹き上げられた被分離粉体のうち比較的軽い粉体、小さい粉体、繊維等の飛び出しやすい粉体は、ガスと共に流出開口から排出される。一方、吹き上げられた被分離粉体のうち比較的重い粉体、大きい粉体、粒状の粉体、塊状の粉体等の飛び出し難い粉体は、筒状体内の流れがある程度安定した部分において、自重により再び落下し、流入開口から流入するガスによって再び傾斜板にあたり、解砕されたり解繊されたりした上で、比較的軽い粉体や小さい粉体や繊維等の飛び出しやすい粉体は再びガスと共に上方に吹き上げられる。一方、特に飛び出し難い粉体は、傾斜板上を下方に滑り落ちて筒状体の流入開口より下方に蓄積する。これにより、重い粉体や大きい粉体や塊状の粉体等の飛び出し難い粉体と、軽い粉体小さい粉体や繊維状の粉体等の飛び出しやすい粉体とが互いに高精度に分離される。
【0010】
ここで、筒状体の流出開口よりも下方に蓄積する他の粉体を、ガスの流通を抑制して筒状体の外に排出する弁をさらに備えることが好ましい。このようにガスに比べて粉体を選択的に排出するロータリーバルブ等の弁を設けることにより、飛び出しにくい粉体を連続的に或いはバッチ式に排出でき、連続操作性に優れる。
【0011】
ここで、傾斜板が水平方向となす角は、45〜60°であることが好ましい。これにより、分離効率を高くできる。
【0012】
また、筒状体の下部に、ガスを取り入れるガス開口をさらに設けることが好ましい。このガス開口からの流量を制御することにより、筒状体における空筒速度の制御が容易となる。
【0013】
また、流入開口から筒状体内にガスが線速10〜30m/sで流入するものであることが好ましい。
【0014】
本発明に係る第1の粉体分離システムは、上述の粉体分離装置が直列に複数接続され、前段の粉体分離装置は、筒状体の流出開口よりも下方に蓄積する他の粉体を、ガスの流通を抑制して筒状体の外に排出する弁をさらに備え、前段の粉体分離装置の弁から排出される粉体が、ガスと共に後段の粉体分離装置の流入開口に供給されるものである。これにより、多段の分離がなされるため、より精度よく粉体の分離が可能となる。特に、飛び出し難い粉体の高精度の分離が可能となる。
【0015】
本発明に係る第2の粉体分離システムは、上述の粉体分離装置が直列に複数接続され、前段の粉体分離装置の流出開口から排出される粉体及びガスが、後段の粉体分離装置の流入開口に供給されるものである。これによっても、多段の分離がなされるため、より精度よく粉体の分離が可能となる。とくに、飛び出しやすい粉体の高精度の分離が可能となる。
【0016】
本発明に係る他の粉体分離システムは、粉体化装置と、上述の粉体分離装置とを備え、粉体化装置で粉体化された粉体が粉体化装置の記流入開口に供給され、粉体化装置は、回転軸回りに回転される内筒と、内筒と略同軸に配置されて内筒を取り囲む外筒と、内筒の外周面上に設けられた打撃部材と、を備え、内筒の軸方向両端が閉じられ、かつ、内筒の外周面は、内筒の回転軸よりも外筒の内周面に近い位置に配置されている。
【0017】
これによれば、粉体化装置により複合材料が極めて微細に粉体化されるので、粉体分離装置での分離精度もより向上する。
【0018】
本発明に係るさらに他の粉体分離システムは、粉体化装置と、上述の粉体化装置とを備える。粉体化装置は、回転軸回りに回転される内筒と、内筒と略同軸に配置されて内筒を取り囲む外筒と、内筒の外周面上に設けられた打撃部材と、外周面に突起が形成されると共に内筒の回転軸と平行な軸周りを回転されるロールと、を備えると共に、外筒における内筒の外周面と対向する位置に、外筒の軸方向に伸びるように開口部が設けられ、ロールは、ロールの外周面の一部が開口部を介して内筒の外周面と向き合うように外筒の外に配置され、内筒とロールとは互いに向かい合う外周面同士が互いに異なる方向に移動するようにそれぞれ回転される。さらに、粉体化装置のロールで回収された粉体が前記粉体化装置の前記流入開口に供給される。
【0019】
これによれば、粉体化装置のロールにより単繊維状に解繊された繊維が精度よく分離され、この繊維をさらにより高精度に分離できる。
【0020】
ここで、粉体分離装置の弁から回収された粉体を粉体化装置に戻すリサイクルラインをさらに備えることが好ましい。これにより、複合材料のより一層の微粉化が可能となり、分級精度も向上する。
【0021】
本発明に係るさらに他の粉体分離システムは、複合材料の粉体化物を分級する篩分装置と、上述の粉体分離装置とを備え、分級された粉体が粉体分離装置の流入開口に供給される。
【0022】
これにより、予め粒度のそろった粉体が粉体分級装置に供給されるので、分級性能がより向上する。
【0023】
本発明に係るさらに他の粉体分離システムは、複合材料の粉体化物を解繊する解繊装置と、上述の粉体分離装置とを備え、解繊された粉体が粉体分離装置の流入開口に供給される。
【0024】
これにより、予め解繊がなされるので、分離性能がより向上する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、異種の粉体の混合物を好適に分離可能な粉体分離装置、粉体分離方法、及び、これを用いた粉体分離システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0027】
(粉体分離装置10)
まず、本実施形態に係る粉体分離装置の一例について、図1を参照して説明する。
【0028】
本実施形態に係る粉体分離装置10は、主として、筒状体1、流入管6、流出管7、傾斜板4、弁5、を備えている。
【0029】
筒状体1は、その軸が上下方向に延びており、断面形状は特に限定されないが、例えば、円、矩形、正方形等である。筒状体1は、架台9上に固定されていることが好ましい。筒状体1の高さや内径(円相当径)は特に限定されないが、筒内に、旋回流、渦巻き流、局部流でない、ほぼ安定した上昇気流を得るために、縦/横比は、2以上、好ましくは3以上がよい。例えば、内径(円相当径)は、100〜8000mmとすることができ、高さは、500〜6000mmとすることができる。
【0030】
筒状体1の下部には、流入開口6bが設けられており、流入開口6bには、好ましくは水平方向に延びる流入管6が接続されている。流入開口6bの形状は特に限定されないが、例えば、矩形、円形、正方形とすることができる。流入開口6bの径は特に限定されないが、例えば、20〜300mmとすることができる。また、流入管6の長さも特に限定されない。ガスの流入速度は、例えば、10〜30m/sとすることができる。
【0031】
流入管6には、ダンパ6aが設けられており、ガスの流量を調節できるようになっている。
【0032】
筒状体1の上部は閉じられており、上端に流出開口7bが形成されている。流出開口7bには、上方に延びる流出管7が接続されている。なお、流出開口7bは、筒状体の上部の側面に設けられていてもよい。
【0033】
流出開口7bの径は特に限定されないが、例えば、20〜300mmとすることができる。また、流出管7の長さも特に限定されない。流出開口7bの形状は特に限定されないが、例えば、矩形、円形、正方形とすることができる。
【0034】
筒状体1内の下部には、流入開口6bと対向する位置に、傾斜板4が配置されている。傾斜板4は、その上部4aが流入開口6bから離れ、その下部4bが流入開口6bに近づくように、すなわち、流入開口6bとの対向面が上方を向くように、傾斜して配置されている。傾斜板4の水平方向とのなす角θは特に限定されないが、50〜60°が好ましい。
【0035】
筒状体1における流入開口6bよりも下には、ガスに対して粉体を選択的に排出する、すなわち、粉体を、ガスの流通を抑制して筒状体1の外に排出する弁5が設けられている。この弁5は、具体的には、傾斜板4の下部4bと、筒状体における流入開口6bよりも下部との間に設けられている。弁5としては、ガスを実質的に流出及び流入させずに粉体を排出することができるロータリーバルブ等を用いることができる。弁5は、筒状体内に蓄積する粉体を容易に外部に排出できる。
【0036】
ここで、傾斜板4は、筒状体内において、弁5の部分を除いて、筒状体1と接している。したがって、流入管6から流入するガスは、筒状体内を上方に向かって移動する。
【0037】
続いて、このような粉体分離装置10の作用について説明する。
【0038】
まず、分離されるべき被分離粉体として、異種の粉体の混合物を用意する。異種の粉体とは、気流中に置かれたときの気流に付随した飛び出しやすさが互いに異なる粉体のことをいい、例えば、重さ(密度)が異なる、大きさが異なる、形状が異なる(繊維状と粒状)場合や、これらの複合状態が考えられる。具体的には、軽い粉体と重い粉体の混合物、大きい粉体と小さい粉体の混合物、粒状の粉体と繊維状の粉体との混合物である。
【0039】
このような混合物は、例えば、異種材料を含む複合材料の粉体化物として得ることができる。例えば、このような複合材料としては、塩ビ(塩化ビニル樹脂)壁紙、石膏ボードなどの、紙と樹脂又は無機素材との積層物、タイルカーペット、防音シート、防水シート、工事用安全ネット、フレキシブルコンテナー等の、樹脂層と繊維層との積層物又は繊維層に樹脂を含浸した積層物等の複合材料が挙げられる。
【0040】
この被分離物である混合粉体Iを、流入管6からガスと共に筒状体1内に供給する。そうすると、流入開口6bから供給されるガス中の混合粉体は、傾斜板4にあたり、解砕や解繊がなされる、すなわち、粉体同士が付着や絡んだりしていない状態で、上昇するガスAと共に上方に吹き上げられる。吹き上げられた混合粉体のうち比較的軽い粉体、小さい粉体、繊維等の飛び出しやすい粉体は、ガスと共に流出開口7bから粉体Oとして排出される。一方、吹き上げられた混合粉体のうち比較的重い粉体、大きな粉体、粒状や塊状の粉体等の飛び出し難い粉体は、筒状体1内の流れがある程度安定した筒状体1の上部において矢印Cのように、自重により再び落下し、流入開口6bから流入するガスによって再び傾斜板4にあたり、再び、解砕や解繊がなされる。そして、ほぐされることによって分離した飛び出しやすい粉体はガスと共に上方に吹き上げられる。このようにして、飛び出しやすい粉体が流出開口7bから排出され、飛び出し難い粉体が筒状体1内に留まり、互いに分離がなされる。このとき、繊維状の粉体と粒状の粉体とが絡まりあったものや、大きな粉体に付着した小さな粉体等も、傾斜板への衝突を繰り返すことにより、解砕や解繊されて互いに分離されるので、分離が極めて効率よくなされることとなる。これにより、粒子の気流中での飛び出しやすさに応じて、粒子を分離することができる。そして、粒子の飛び出しやすさとは、上述のように、形状(繊維状、粒状等)、粒径、密度等に応じて定まるものであり、通常材質によって異なる場合が多く、異種材料の分離が可能となるのである。
【0041】
さらに、重い粉体、大きな粉体、粒状や塊状の粉体等の飛び出し難い粉体は、傾斜板4上を矢印Dのように下方に滑り落ちて、流入開口6bよりも下方である、傾斜板4の下部と筒状体1との間にたまりやすい。そして、これらの粉体Pは、弁5によりガスの流れに殆ど影響を与えることなく筒状体1内から排出できる。これにより、連続運転が可能となる。
【0042】
例えば、樹脂と繊維(パルプを含む)とを含む複合材料の粉体化物を混合粉体Iとすると、粉体Oとして繊維(パルプを含む)を、粉体Pとして樹脂粉を排出することができる。また、樹脂と炭酸カルシウムを含む複合材料の粉体化物をIとすると、粉体Oとして炭酸カルシウム粉を、粉体P1として樹脂粉を排出することができる。
【0043】
ここで、粉体分離装置の運転条件は、特に限定されないが、分離の境界は、主として、筒状体1を流れるガスの空筒速度(粉体が無い状態での、流量/断面積)により任意に設定することができる。そして、筒状体1内の上部の空筒速度Vを、飛び出させることにより排出させたい粉体の終末速度と、落下させることにより排出させたい粉末の終末速度との間の値とすることが好ましい。
【0044】
ここで、上記実施形態では、傾斜板4の表面(上面)は平滑であるが、例えば、複数の凹部や複数の凸部を形成して、傾斜板4の表面付近で流れに乱れを起こし、解砕効果や解繊効果を増大させることも好ましい。また、傾斜板4にガス噴射ノズルや窓(例えば、3角形)を設けて、筒状体1内にさらにガスを、連続的、又は、間歇的に噴射することによっても、同様に解砕効果や解繊効果を増大させることができる。
【0045】
(粉体分離装置11)
続いて、本実施形態に係る他の粉体分離装置の一例について、図2を参照して説明する。本実施形態に係る粉体分離装置11が、粉体分離装置10と異なる点は、さらにガス開口8bを有し、ガス開口8bにガス流入管8及びダンパ8aが設けられている点である。なお、図2では、流入開口6b及びガス開口8bは、流入開口6bが上となるようにして上下方向に配置されているが、流入開口6bが傾斜板4と対向し、ガス開口8bが筒状体1の下部に配置されていればよく、ガス開口8bに対して流入開口6bが下となるように上下方向に配置されていてもよく、互いに水平方向に配置されていてもよく、ガス開口8bは、筒状体における流入開口6bが設けられる位置に対する側面や、筒状体における流入開口6bが設けられる位置に対する反対面に配置されていてもよい。
【0046】
この粉体分離装置では、流入管6からIとして混合粉体とガスとの混合物を供給し、ガス流入管8からIとしてガスのみを供給する。このような粉体分離装置11は、粉体分離装置を直列に接続する場合に、各粉体分離装置における筒状体1における空筒速度Vを各筒で独立に調節しやすい。
【0047】
(粉体分離システム100)
続いて、図3を参照して、上述の粉体分離装置を用いた粉体分離システム100について説明する。この粉体分離システム100は、解繊装置20、粉体分離装置10a、10b、10c、篩分装置30、気固分離装置25、ガス吸引ブロア24を主として備える。
【0048】
解繊装置20は、図4に示すように、胴部20a、粉体を受け入れる受け入れホッパー20b、スクラッチロール20c、スペーサ20d,20e、ワイヤーブラシ20gを主として有する。
【0049】
胴部20aは、スクラッチロール20cを収容する空洞を形成しており、上部に粉体の受け入れホッパー20bを備える。
【0050】
スクラッチロール20cは、表面に、かぎ状の爪が多数配列されたものであり、繊維を引っ掛けることができる。このスクラッチロール20cは、図示しないモータにより矢印E方向に回転され、その上部がホッパー20b内の粉体を引っ掛けて胴部20a内に移送する。
【0051】
受け入れホッパー20bとスクラッチロール20cとの間には、スペーサ20d,20eが設けられている。スペーサ20dは、受け入れホッパー20b側から見てスクラッチロール20cの回転の上流側に設けられており、受け入れホッパー20bとスクラッチロール20cとの間のスペースを埋めて、粉体の胴部20a内への落下を防止する。スペーサ20eは、受け入れホッパー20b側から見てスクラッチロール20cの回転の下流側に設けられており、受け入れホッパー20bとスクラッチロール20cとの間のスペースを埋めて、粉体の胴部20a内への落下を防止する。また、スペーサ20eのスクラッチロール20cと対向する面には、ワイヤーブラシ20gが設けられている。ワイヤーブラシ20gは、金属の針状が多数設けられたものであり、ワイヤーブラシ20gの針は、スクラッチロール20cの回転方向と逆らう方向に傾斜することが好ましい(図4参照)。スクラッチロール20cに引っ掛けられた粉体の内の繊維は、スクラッチロール20cとワイヤーブラシ20gとの相互作用により解繊されて、単繊維状となり、胴部20a内に供給される。
【0052】
胴部20aの一端側(図4の左方)には、開口20hが設けられており、空気等のガスが開口20hから胴部20a内に供給される。また、胴部20aの他端側には流路20i及び開口20fが設けられている。スクラッチロール20cとワイヤーブラシ20gとの相互作用により単繊維状とされた繊維及び他の粉体は、開口20hから供給されるガスGによって流路20i内を移動し、開口20fから粉体Iとして排出される。
【0053】
図3に戻って、解繊装置20の開口20fは、ラインLを介して、粉体分離装置10aの流入管6に接続されている。粉体分離装置10aの弁5の出口には、粉体受け9aが設けられている。粉体受け9aには、周りの空気等のガスGと一緒に粉体受け9a上の粉体Pを吸引するラインLが設けられており、ラインLは粉体分離装置10bの流入管6に接続されている。
【0054】
粉体分離装置10bの弁5の出口には、粉体受け9bが設けられている。粉体受け9bには、周りの空気等のガスGと一緒に粉体受け9b上の粉体を吸引するラインLが設けられており、ラインLは粉体分離装置10cの流入管6に接続されている。
【0055】
粉体分離装置10cの弁5の出口には、ベルトコンベア、バケットコンベア等の粉体搬送装置29が設置されており、弁5から排出された粉体Pは篩分装置30に供給される。
【0056】
ここで、粉体分離装置10a,10b,10cの内径は、ほぼ同じとされており、それぞれの筒状体1における空筒速度Vは、3つともほぼ同じとされる。そして、これら3つの粉体分離装置10a,10b,10cは、粉体を選択的に排出する弁5と導入管6とが互いに直列に連通された状態とされている。
【0057】
篩分装置30は、粉体Pを、粒径に応じて複数に分離し、粒度のそろった粉体P,Pを生成する。
【0058】
一方、各粉体分離装置10a,10b,10cの流出管7は、ラインLを介してサイクロンやバグフィルタ等の気固分離装置25に接続されており、気固分離装置25の気体排出口がブロア24に接続される一方、固体排出口が粉体回収部27に接続されている。そして、粉体分離装置10a,10b,10cから排出される粉体O,O,Oは、気固分離装置25で回収されて、粉体回収部27に貯留される。その後、必要に応じて圧縮等により減容積処理をしてもよい。
【0059】
このような粉体分離システム100では、まず、例えば、繊維(紙を含む)と樹脂とを含む複合材料の粉体化物等の、繊維状粉体(パルプ含む)と粒状粉体との混合物Iを解繊装置20に入れる。通常、このような複合材料を粉体化した混合粉体においては、繊維が複雑に絡み合っており、繊維の複雑に絡まった塊内に、粒状粉体が取り込まれた状態となっている。特に、パルプが25wt%以上含まれる複合材料は、粉体化により体積比が20倍程度に膨らみ、このような傾向が強い。
【0060】
本実施形態では、解繊装置20を通すことにより、繊維状粉体の塊を有る程度ほぐして個々の繊維に分けることが容易であるので、後段での分離が好適に行なえる。
【0061】
そして、ほぐされた混合粉体Iは、Gから吸引される空気等のガスと共に、ラインLを介して粉体分離装置10a内に入る。粉体分離装置10a内で、繊維は流出管7から排出され、残りの粉体Pは弁5から排出されて粉体受け9aに回収される。その後、粉体Pは、空気等のガスG1と共にラインLを介して粉体分離装置10b内に入る。粉体分離装置10b内で、粉体Pに残る繊維は流出管7から排出され、残りの粉体Pは、弁5から排出されて粉体受け9bに回収される。その後、粉体Pは、空気等のガスGと共に、ラインLを介して粉体分離装置10c内に入る。粉体分離装置10c内で、残る繊維は流出管7から排出され、残りの粒状粉体Pは、弁5から排出され、粉体搬送装置29により、篩分装置30に供給される。その後、粉体Pは、篩い分けされ、粉体P4,P5が得られる。
【0062】
一方、混合粉体から分離された繊維状粉体は、気固分離装置25を介して粉体回収部27に回収される。
【0063】
これによれば、粉体分離装置10を直列に複数備えているため、繊維状粉体が高精度に除去された粒状粉体が得られることとなる。例えば、塩ビ樹脂と紙とを積層した、或いは、塩ビ樹脂を紙に含浸させたいわゆる塩ビ壁紙では、粉体化により、粒状の塩ビ樹脂と、繊維との混合粉体が得られるが、この分離システムによれば、繊維の含有率のきわめて低い粒状の塩ビ樹脂粉が得られる。このような粒状の塩ビ樹脂粉は、例えば、300μm以下好ましくは200μm以下であれば、必要に応じてバージン材を添加した上で、常温で塩ビペーストゾルの原料として使用可能である。また、300〜1000μmの粒子状塩ビ樹脂粉であれば、バンバリミキサー等の混錬装置を用いて、必要に応じてバージン材と共に混錬すれば、50wt%以上の割合添加しても十分に塩ビ樹脂として再生可能である。なお、1000μm以上の塩ビ樹脂粉が得られた場合には、再度粉体化して細かくすればよい。また、粉体分離装置の前段に、さらに解繊装置を備えているので、より、繊維状粉体の除去が高精度にできる。なお、解繊装置20は必須でなく、また、構造も特に上記実施形態に限定されるものではない。また、粉体分離装置10の段数も3段には限定されず、1段や2段でも字実施は可能であり、4段以上でもよい。
【0064】
また、回収された繊維粉も、粒状粉体の混入が少ないので、種々のリサイクルに適する。例えば、パルプ粉体であれば、再生紙の原料に好適である。
【0065】
例えば、各粉体分離装置10内の空筒速度Vをそれぞれ0.8m/sとし、粉体分離装置10を直列に3段又は4段とすることにより、バルプ含有率の極めて低い塩ビ樹脂粉を回収できる。
【0066】
(粉体分離システム110)
続いて、図5を参照して、上述の粉体分離装置を用いた粉体分離システム110について説明する。この分離システム110は、解繊装置20、粉体分離装置10、11、気固分離装置25を主として備える。個別の各装置の構成は、上述の実施形態と同様である。
【0067】
本システムでは、粉体分離装置10の流出管7が、ラインLを介して粉体分離装置11の流入管6に接続されており、流出管7からの排出物Oは粉体分離装置11に供給される。また、粉体分離装置11のガス流入管8からは、粉体分離装置11に対して空気等のガスGが供給される。
【0068】
本実施形態においては、混合粉体Iとして、気流中での飛び出しやすさが互いに異なる3種類の粉体の混合物を用いる。すなわち、最も飛び出しやすい粉体、2番目に飛び出しやすい粉体、最も飛び出し難い粉体の3つの成分を含む混合粉体Iを導入する。例えば、塩ビと紙とを含む複合材料の場合、最も飛び出しやすい粉体は単独の繊維、2番目に飛び出しやすい粉体はパルプが刺さった状態の樹脂粉、最も飛び出し難いのは、パルプの刺さっていない樹脂粉である。
【0069】
例えば、タイルカーペット、ターポリンシート、防水シート等の塩ビと繊維を含むシート、石膏ボード等の、樹脂と繊維との複合材料の粉体化物はこのような混合粉体である場合が多い。
【0070】
ここで、粉体分離装置10の空筒速度V10を、最も飛び出し難い粉体が飛び出さず、他の2つの粉体が飛び出す速度とし、粉体分離装置11の空筒速度V11を、最も飛び出しやすい粉体が飛び出し、2番目に飛び出しやすい粉体が飛び出さないような空筒速度とする、すなわちV11<V10とすることにより、粉体分離装置10の弁5から排出される粉体Pとして最も飛び出し難い粉体を、粉体分離装置11の弁5から排出される粉体Pとして2番目に飛び出しやすい粉体を、粉体分離装置11の流出管7から排出される粉体Oとして、最も飛び出しやすい粉体を、それぞれ分離して得ることができる。
【0071】
空筒速度の関係を、V11<V10とするには、粉体分離装置11の筒状体の内径を、粉体分離装置10の内径よりも大きくすればよい。特に、粉体分離装置11の筒状体の内径を、粉体分離装置10の内径よりも過剰に大きくしておき、必要に応じて、ガス流入管8及びダンパ8aを介して、空気等のガスGを、ラインLとは別に粉体分離装置11内に供給することにより、粉体分離装置11内の空筒速度を、粉体分離装置10とは別に自由に制御できる。すなわち、2段目以降の粉体分離装置11の内径を過剰に大きくすることにより、バイパスガス量Gがゼロの場合に粉体分離装置11の空筒速度V11が所望の速度よりも小さくなるように設定しておき、足りない分のガスをガス流入管8からバイパスガスG2として供給することが好ましい。
【0072】
例えば、粉体分離装置10の断面を500mm角とし、ガス空筒速度を0.8m/sとした場合、風量は12m/minとなる。ここで、粉体分離装置11のガス空筒速度を0.05/sにしたい場合、バイパス流量Gがゼロであるとすると、粉体分離装置11の断面を2000mm角とすればよいが、バイパス流量Gをゼロでない値とすべく、2000mm角超とすることが好ましい。例えば、バイパス流量Gを6.75m/minとすると、粉体分離装置11の断面を2500mm角とすればよい。
塩ビ樹脂と紙とを積層した塩ビ壁紙の粉体化物の場合、好適な条件は、粉体分離装置10の空筒速度を0.7〜0.9m/s程度、粉体分離装置11の空筒速度を0.05〜0.2m/s程度とすることである。
【0073】
このようなシステムは、粒子の飛び出しやすさの異なる3種類以上の粉体が混合された混合粉体を分離が可能である。
【0074】
(粉体分離システム120)
続いて、上述の粉体分離装置を用いた粉体分離システム120について図6を参照して説明する。本システムは、上流側から順に、細片化装置40、粉体化装置50、粉体分離装置10、気固分離装置25、ブロア24を備えている。
【0075】
細片化装置40は、繊維及び樹脂を含むシート状の複合材料Iを細片化して複合材料の細片Iを得る装置である。細片化方法は特に限定されないが、破砕機、粉砕機、回転爪でシートを小片に引きちぎる機械等、種々のものを利用できる。ここでは、シート状材料を、最大長さ20mm以下程度の大きさに細片化することが好ましい。
【0076】
粉体化装置50は、細片化されたシートを細かく粉体化して、複合材料を、繊維と樹脂とに機械的に分離する装置である。粉体化装置は、特に限定されないが図6に示す粉体化装置が好ましい。すなわち、回転軸51回りに図示しないモータにより回転される内筒52と、内筒52と略同軸に配置されて内筒52を取り囲む外筒54と、内筒52の外周面上に設けられた打撃部材53と、を備え、内筒52の軸方向両端が閉じられ、かつ、内筒52の外周面は、内筒の回転軸よりも外筒54の内周面に近い位置に配置されているものである。外筒54には、水冷ジャケット58、及び、緊急時に外筒内に詰まった材料の排出口55が設けられている。ここで、回転軸51の回転速度は、たとえば、打撃部材53の先端の周速、すなわち、打撃部材53の最大回転半径における線速が100m/s以上、より好ましくは120m/s以上、更に好ましくは150m/s以上となる速度であることが好ましい。粉体化装置50の吸引口50aに、ラインL10を介して、細片化されたシートIが、空気等のガスGと共に供給される。
【0077】
このような粉体化装置50によれば、複合材料の細片であるシート(たとえば、繊維と樹脂とを含む複合材料)Iは、きわめて迅速に、例えば、100〜300μm以下の樹脂粉と、数mm程度の繊維とに粉体化され、複合材料を個々の材料からなる粉体にすることが容易であり、これにより異種素材を物理的に引き離すことが容易である。
【0078】
所定の大きさにまで粉体化された粉体は、メッシュ57を通って排出口56から混合粉体Iとして排出され、ラインL11を介して、粉体分離装置10の流入管6に流入する。粉体分離装置10では、飛び出し難い粉体(例えば、樹脂粉)Pが弁5から排出される一方、飛び出しやすい粉体(例えば繊維状粉体)Oはガスと共に流出管7及びラインL12を介して気固分離装置25に供給され、飛び出しやすい粉体Oが回収される。
このような実施形態では、例えば、塩ビ壁紙等の複合材料のシートから、細片化、粉体化、分離が好適に行なえる。
【0079】
(粉体分離システム130)
続いて、上述の粉体分離装置を用いた分離システム130について図7を参照して説明する。本システムは、上流側から順に、細片化装置40、粉体化装置50、粉体分離装置10a、10b、気固分離装置25a,25b、ブロア24a,24bを備えている。粉体分離装置10b、気固分離装置25b、ブロア24bは、図6の粉体分離装置10、気固分離装置25、ブロア24と同じである。
【0080】
粉体化装置50は、さらに、図8に示すように、外周面に突起62が形成されると共に図7に示すように内筒52の回転軸51と平行な回転軸61周りを回転されるロール63、を備え、外筒54における内筒52の外周面と対向する位置に、外筒54の軸方向に伸びるように開口部54aが設けられ、ロール63は、ロール63の外周面の一部が開口部54aを介して内筒52の外周面と向き合うように外筒54の外に配置され、内筒52とロール63とは互いに向かい合う外周面同士が互いに異なる方向に移動するようにそれぞれ回転される(図8の矢印参照)。
【0081】
開口部54aの軸方向長さは、内筒52の軸方向長さとほぼ同等とされている。この開口部54aは、外筒54に設けられた開口を、開口部形成部材54bにより幅を狭めることにより形成されている。開口部形成部材54bは、回転軸61の軸方向に伸びるものであり、その軸方向長さは開口部54aの長さとほぼ同じであり、内筒52と対向する側の面とは反対側の面が斜面とされており、開口部54a側が尖るような断面楔形とされている。開口部形成部材54bは、図8の上下方向に移動可能となっており、開口幅を自由に調整可能となっている。
【0082】
図8に示すように、ロール63は、図示しないモータにより回転軸61周りを矢印B方向に回転される。ロール63の回転軸61の回転方向Bは、図7に示すように、内筒52の回転軸51の回転方向Aとそれぞれの軸周りにおいて同一とされる。これにより、図8に示すように、内筒52の外周面とロール63の外周面とが向き合うところにおいて、突起62の回転方向Bと、打撃部材53の移動方向Aとが反対方向となる。ロール63の回転速度は特に限定されないが、突起62の先端の周速が、内筒52に設けられた打撃部材53の先端の周速の1〜20%程度となるように設定することが好ましい。
【0083】
ロール63の突起62は、効率よく繊維を引っ掛けてかきとることができるように、図8に示すように、回転軸61の回転方向B側に傾斜していることが好ましい。具体的には、このような突起62としては、例えば、鋸刃状のものや、おろし金状のものが挙げられる。より具体的には、例えば、ロール63の周方向に沿って、糸鋸状の部材を多数巻きつけたものが挙げられる。
【0084】
さらに、外筒54には、ロール63を覆う覆い部材60が設けられている。覆い部材60は、ロール63を取り囲む凹面状とされたロール収容部60aを有する。また、覆い部材60には、覆い部材60の外と、覆い部材60のロール収容部60aとを連通する吸引ノズル64、及び、ガス導入ノズル65が形成されている。吸引ノズル64の開口部64aは、ガス導入ノズル65の開口部65aよりも、回転軸61の回転方向Bに対して後ろ側に形成されているが、前側でもよい。さらに、吸引ノズル64の端部には、図7に示すように、ラインL14を介して、粉体分離装置10aの流入開口が接続されている。粉体分離装置10aの流出開口には、ラインL15を解して気固分離装置25aが接続され、気固分離装置25aには、ラインL16を解してブロア24aが接続されている。そして、ブロア24aを駆動すると、図8のようにガスが流れ、ガス導入ノズル65から外部の空気が覆い部材60のロール収容部60a内に吸引され、その後、ロールの63の外周面に沿ってロール63の回転方向Bと同じ方向に流れた後、吸引ノズル64を介して、粉体分離装置10aに流れる。この際に、ロール63の突起62に引っかかっていた繊維が突起62から剥離され、ガスに同伴されて粉体分離装置10aに供給される。
【0085】
このような粉体化装置50によれば、粉体は高速回転する打撃部材53によって激しく叩かれた後、攪拌力によって外筒54の内面上を回転運動する。このとき、粉体化対象物は打撃部材53との衝突や外筒54の内壁との衝突や摩擦、あるいは、粉体化対象物同士の衝突や摩擦等により迅速に粉体化される。この粉体化により内筒52と外筒54との間に、樹脂粉と繊維とが生じることとなる。このようにして得られる繊維は、外筒54と内筒52との間を移動する際に絡まって塊状になりやすい傾向があり、塊状化したまま外筒54の内周面上を打撃部材53と共につれまわりしやすい。
【0086】
そして、本実施形態では、このような繊維の塊は、ロール63の突起62に引っかかってかきとられ、好ましくは単繊維状に解繊されてロール63に捕集され、開口部54aを介して外筒54の外に排出される。さらに、覆い部材60のロール収容部60a内において、捕集された繊維は、覆い部材60内のガスの流れによって突起62から剥離され、吸引ノズル64を通過して、粉体分離装置10aに供給され、粉体分離装置10aにおいて繊維からさらに粒状の粒子P等が除去される。これにより、粒状の粒子等の不純物の少ない繊維Oが回収される。このとき、粉体化装置50の外筒54内において、塊状の繊維が多数の突起62に引っ掛けられることにより解きほぐされるので、粉体分離装置10aでの分離が極めて容易となり、きわめて純度の高い繊維が得られることとなる。また、粉体化装置50内において、繊維の塊を除去できるので、外筒54内において繊維の塊の過度な成長を抑制できる。また、図8に示すように、突起62の移動方向が、打撃部材53の移動方向と異なるので、外筒54の内周面上を移動する繊維の塊を効率よく突起62により引っ掛けて解きほぐすことができる。なお、ロール63は、塊ではない分散した繊維も捕集可能である。
【0087】
なお、粉体化装置50で得られた、繊維以外の粒子Iは、図6における粉体分離システム120と同様にして粉体分離装置10bにより分離される。
【0088】
なお、本粉体分離システムは、特に、長繊維と樹脂とを含む複合材料、例えば、タイルカーペットに好適である。この場合、粉体Oとして短繊維が、粉体Oとして、長繊維が回収され、粉体P1として樹脂粉が回収される。短繊維や樹脂粉が除去された長繊維は、特に、リサイクルに適する。
【0089】
(粉体分離システム140)
続いて、上述の粉体分離装置を用いた粉体分離システム140について図9を参照して説明する。本システムが図6の粉体分離システム120と異なる第1の点は、粉体分離装置10と気固分離装置25との間に、粉体分離装置11を設けている点である。粉体分離装置10の流出管7から排出される粉体Oは、ラインL12を介して粉体分離装置11の流入管6に供給され、粉体分離装置11の流出管7から排出される粉体Oは気固分離装置25にラインL13を介して供給される。
【0090】
第2の相違点は、粉体分離装置11の弁5から排出される粉体R1を、粉体化装置50に戻すリサイクルラインL15を備えている点である。
【0091】
本実施形態によれば、粉体Pとして、最も飛び出し難い粉体が、粉体Rとして2番目に飛び出しやすい粉体が、粉体Oとして最も飛び出しやすい粉体が得られる。特に、繊維と樹脂とを含む複合材料を粉体化する場合、樹脂粉に繊維が刺さった状態の粉体が得られ、このような粉体は粉体Rとして得られることが多いが、この粉体を再び粉体化装置50で粉体化することにより、繊維と樹脂粉とに分離することができ、繊維状粉体と、樹脂粉との収率を高めることができる。
【0092】
(粉体分離システム150)
続いて、上述の粉体分離装置を用いた粉体分離システム150について図10を参照して説明する。本システムが図8の粉体分離システム140と異なる主要な点は、粉体分離装置10と粉体化装置50との間に、篩分装置30が設けられ、粒径の小さな粉体Oが、ガスGと共に粉体分離装置10に供給される一方、粒径の大きな粉体Oがさらに別の粉体分離装置10bに供給される点である。
【0093】
具体的には、粉体化装置50のメッシュ57を通って排出口56から排出される粉体Iは、気固分離装置25aに供給される。気固分離装置25aにはブロア24が接続されており、粉体化装置50から吸引により排出された粉体Iは、気固分離装置25aで気体と分離される。粉体Iは、粉体搬送装置29により、篩分装置30に供給され、粒径の相対的に小さな粉体Oと、粒径の相対的に大きな粉体Oとに分離される。境界となる粒径は例えば、2000μmである。そして、粉体分離装置10には、粒度範囲の相対的に小さな粉体OがガスGと共に供給され、粉体分離システム140と同様に、粉体分離装置10、11での分離、及び、リサイクルラインL15を利用したリサイクルが行なわれ、飛び出し難い粉体O,飛び出しやすい粉体Oが得られる。
【0094】
これに対して、粒度範囲の相対的に大きな粉体Oは、ガスGと共にラインL26を介して粉体分離装置10bに供給される。粉体分離装置10bの弁5から排出される粉体Oは、リサイクルラインL30を介して、粉体化装置50に戻る。一方、粉体分離装置10bの流出管7からラインL27を介して排出される粉体Oはガスと共に気固分離装置25cに供給される。気固分離装置25cには、ブロア24が接続されており、粉体Oが回収される。
【0095】
本実施形態に係る粉体分離システムでは、粉体分離システム150で奏される効果に加え、篩分装置30で粒径により分離された粉体O,Oを、異なる粉体分離装置10、10bで分離しているため、それぞれ純度の高い粉体が、粉体O、粉体O、粉体Oとして得られる。具体的には、例えば、繊維と樹脂とを含む複合材料を原料Iとした場合、粉体Oとして樹脂粉が、粉体Oとして短繊維が、粉体Oとして長繊維が得られる。
【0096】
本発明は上記実施形態に限られずさまざまな変形態様が可能である。例えば、上述のリサイクルラインでは、ブロアによる吸引により粉体を搬送しているが、ベルトコンベア等を用いてもよいし、粉体をフレキシブルコンテナバッグ等に一時的に貯蔵し、その後、リサイクルしてもよいことは言うまでもない。
【0097】
また、上記実施形態では粉体分離装置において、粉体を、ガスの流通を抑制して筒状体1の外に排出する弁5を備えているが、これに限られず、弁を設けずに、バッチ式で分離操作を行い所定時間毎に蓄積した粉体をバッチ式で排出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】実施形態に係る粉体分離装置10を示す断面図である。
【図2】実施形態に係る粉体分離装置11を示す断面図である。
【図3】実施形態に係る粉体分離システム100を示す概略断面図である。
【図4】図4の解繊装置20を示す断面図である。
【図5】実施形態に係る粉体分離システム110を示す概略断面図である。
【図6】実施形態に係る粉体分離システム120を示す概略断面図である。
【図7】実施形態に係る粉体分離システム130を示す概略断面図である。
【図8】図7の粉体化装置のロール近傍の詳細を示す概略断面図である。
【図9】実施形態に係る粉体分離システム140を示す概略断面図である。
【図10】実施形態に係る粉体分離システム150を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1…筒状体、4…傾斜板、5…弁、6b…流入開口、7b…流出開口、10、11…粉体分離装置、20…解繊機、50…粉体化装置、52…内筒、53…打撃部材、54…外筒、54a…開口部、62…突起、63…ロール、100、110、120、130、140、150…粉体分離システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる筒状体と、
前記筒状体の下部に開口し被分離粉体がガスと一緒に流入する流入開口と、
前記筒状体内に前記流入開口と対向する位置に設けられ、上部よりも下部が前記流入開口に近づくように傾斜された傾斜板と、
前記筒状体の上部に開口し、一部の粉体をガスと一緒に流出させる流出開口と、
を備える粉体分離装置。
【請求項2】
前記傾斜板が水平方向となす角は、45〜60°である請求項1記載の粉体分離装置。
【請求項3】
前記筒状体の下部に、ガスを取り入れるガス開口をさらに設けた請求項1又は2に記載の粉体分離装置。
【請求項4】
前記流入開口から前記筒状体内に前記ガスが線速10〜30m/sで流入する請求項1〜3の何れか1項に記載の粉体分離装置。
【請求項5】
前記筒状体の前記流出開口よりも下方に蓄積する他の粉体を、ガスの流通を抑制して前記筒状体の外に排出する弁をさらに備える請求項1〜4の何れか1項に記載の粉体分離装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉体分離装置が直列に複数接続され、
前段の前記粉体分離装置は、前記筒状体の前記流出開口よりも下方に蓄積する他の粉体を、ガスの流通を抑制して前記筒状体の外に排出する弁をさらに備え、
前段の前記粉体分離装置の前記弁から排出される粉体が、ガスと共に後段の前記粉体分離装置の流入開口に供給される粉体分離システム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉体分離装置が直列に複数接続され、
前段の前記粉体分離装置の前記流出開口から排出される粉体及びガスが、後段の前記粉体分離装置の流入開口に供給される粉体分離システム。
【請求項8】
上下方向に延びる筒状体の下部に開口する流入開口から、前記筒状体内に前記流入開口と対向する位置に設けられ、上部よりも下部が前記流入開口に近づくように傾斜された傾斜板に対して被分離粉体及びガスを供給して衝突させ、前記筒状体の上部に開口する流出開口から一部の粉体をガスと一緒に流出させる粉体分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−142731(P2010−142731A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322621(P2008−322621)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(502278976)アールインバーサテック株式会社 (5)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【Fターム(参考)】